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剣道における女子大学生の競技力に関する研究

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Academic year: 2021

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要旨

 近年、女子大学生剣士の活躍は顕著であり、全日本女子剣道選手権大会や世界剣道選手 権大会で存在感を示している。平成24年、27年に行われた世界剣道選手権大会では日本 代表選手10名の中に女子大学生が選出され団体戦のメンバーとして出場し優勝に貢献し た。また、平成30年に韓国で行われる世界剣道選手権大会に向けて新たな日本代表候補 選手が選出されたが、平成27年12月現在33名中14名が女子大学生であり、これからの日 本の剣道界、そして世界の女子剣道を牽引する存在である。このように、今後も女子剣道 界を支えていく可能性が高い女子大学生であるが、これまで女子大学生剣士の競技力に関 する研究はほとんどなく、彼女たちがどのような環境の中で剣道を続け現在に至っている のか、また、そこに何かしらの共通点があるのか明確ではない。

 そこで本研究では、大学女子学生の最高峰である全日本女子学生剣道優勝大会の決勝戦 に進出した選手に焦点を当て、彼女たちの競技成績を調査することとした。女子大学生剣 士の競技力を向上させるために必要な条件やトップ大学にみられる共通点を明確にするこ とで、今後の意識付けや活動の方向性、指導法の一例になると考え研究を進めることとした。

キーワード  女子大学生 競技力 競技実績 運動量 稽古量

岡田守正 神奈川大学非常勤講師   新里知佳野 日本体育大学 古澤伸晃 日本体育大学スポーツ局  八木沢誠  日本体育大学 研究論文

剣道における女子大学生の競技力に関する研究

―全日本女子学生剣道優勝大会における上位チームの 選手構成に見る個々の競技実績が結果に与える影響及

び関連性についての研究―

櫻井美子 岡田守正 新里知佳野 古澤伸晃 八木沢誠

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1、研究の背景と目的

 女子大学生剣士の競技力向上は近年目覚まし く、全日本女子剣道選手権大会注1)や世界剣道 選手権大会注2)での活躍が目立っている。表1 は平成17年から平成26年に全日本女子剣道選 手権大会に出場した学生数と入賞者である。年 によって多少のばらつきはあるが10年間の学 生出場者を平均すると全体の26%を占め、約 三分の一は大学生の出場となっている。表2は 過去4大会、世界剣道選手権大会に出場した学 生入賞者の結果である。第13回大会・14回大 会に大学生は選出されていないものの、第15 回大会、16回大会には大学生が選出されてお り、団体戦の5名の選手として優勝に大きく貢 献している。第16回大会では、平成27年度に 大学を卒業したばかりの選手が2名含まれてお り、大学時に世界剣道選手権大会の選手になり、

卒業後すぐの5月に出場した状況である。第16 回大会の団体戦決勝戦のメンバーは教員1名、

警察官3名、大学生1名だが、警察官3名のうち 2名は平成27年度に大学を卒業した選手である。

そのようなことからも、第16回大会の団体戦 世界一は大学生に支えられていると言っても過 言ではない。

 また、平成27年5月、16年振りに日本開催と

なった第16回世界剣道選手権が終わり、新た に全日本剣道連盟注3)が選考した日本代表強化 選手が決定したが、大学生は全体の33名中14 名選出されている。内訳は警察官12名、教員 1名、実業団1名、大学生14名、高校生5名と、

大学生が占める割合がとても多い1)。このよう に大学生の存在は、競技面において現在の剣道 界にはなくてはならない存在であり、今後も日 本の中心選手として、代表選手として剣道界を 牽引してく可能性が極めて高いと言える。

 しかし、ここで一つの疑問点が生じた。全日 本女子剣道選手権大会や世界剣道選手権大会に 入賞している選手は、ほとんどの者が高校時に 全国大会で上位に進出した経験を有する選手で はないだろうか、いうことである。全日本女子 剣道選手権大会で入賞した選手5名全員が、高 校時の全国大会で個人優勝や団体優勝、準優勝 を経験した選手である。また、世界剣道選手権 大会に出場した松本弥月選手、高橋萌子選手の 2名は全国高校総合体育大会の個人戦で優勝経 験を持つ選手だ。このように大学時に各種大会 で活躍している選手は高校時にも好成績を残し て可能性が極めて高いと推察できる。ここで、

女子大学生の一番大きな大会である全日本女 子学生剣道優勝大会注4)での大会結果をもとに、

①大学の最高峰で試合した選手は高校時にどの

表1 全日本女子剣道選手権大会学生出場者数と学生入賞者

  学生数 出場数 学生入賞者 大学 県 学年 大会成績 平成17年 14 64 宮川 瑠璃子 筑波大学 茨城 3 3位

      恩田 望 浜松大学 静岡 1 3位

平成18年 18 64      

平成19年 21 64 鈴木 愛梨 筑波大学 山形 2 3位

平成20年 17 64      

平成21年 15 64      

平成22年 16 64      

平成23年 19 64      

平成24年 9 64 山口 美紀 筑波大学 神奈川 4 3位

平成25年 14 64      

平成26年 23 64 松本 弥月 法政大学 福岡 4 2位 出所 全日本女子剣道選手大会プログラムより抜粋

(3)

ような成績を残した選手なのか②個々の競技成 績が結果に与える影響や関連性はあるのか、に ついて調査し大学時の強化の在り方について考 察する。

2、方法と調査対象

(1)平成17年から平成26年までの10年間、全 日本女子学生剣道優勝大会で決勝戦に進出した 20大学とし、決勝戦に出場した1チーム5名の 選手とする。個々の高校での競技実績をそれぞ れポイント化(以下、Pt)し集計する。対象選 手は決勝戦に出場した1チーム5名、全20大学 の100名となる。

(2)剣道時代注5)、剣道日本注6)に記載されて いる新人データバンク注7)、各種大会の試合結 果をもとに調査する。また、大学名、個人名に ついては書籍に記さている記録をもとに表記す る。

(3)競技実績の対象となる大会

①全国高校総合体育大会団体戦

②全国高校総合体育大会個人戦

③全国高校選抜大会

④国民体育大会

(4)Ptは優勝、準優勝、3位とする

(5)各大会のPt

①・③・④

(団体戦) 優勝3Pt 準優勝2Pt 3位1Pt

(個人戦) 優勝5Pt 準優勝4Pt 3位3Pt

・Ptの差異について

団体戦と個人戦のPtに差異については、団体戦

は補欠を入れると7名で勝ち上がる総合力に対 して、個人戦は個人一人で勝ち上がるという点 から2点の差をつけた。

3、結果

3-1決勝戦進出大学名とPt結果

 表3は決勝戦進出大学名と合計Ptの結果であ る。Pt集計の結果、全体でみると一番低い合計 Ptは0Pt(平成19年日本体育大学)、一番高い のは44Pt(平成26年法政大学)となった。優 勝大学でのPtの差は、一番低いPt数が0Pt(平 成19年日本体育大学)、一番高いPt数が44Pt(平 成26年法政大学)であり44Ptの差がある。準 優勝大学では、一番低い大学が3Pt(平成17年 東海大学、平成21年日本体育大学)、一番高い Pt数が28Pt(平成24年筑波大学)となり25Pt の差があった。優勝大学の平均Ptは18.8Pt、準 優勝大学の平均Ptは13.2Ptとなり優勝大学と準 優勝大学ではかなりの差があることが分かる。

決勝戦に進出した20大学の平均Ptは16Ptであ る。また、表の右側にはポイント保有者の数 が示されているが、5名全員がPtを保有してい るのは4大学あり、4名保有しているのは7大学、

3名が3大学、2名が2大学、1名が3大学、0名 が1大学となった。

表2 世界剣道選手権大会学生出場者と学生入賞者

大会数 開催国 学生入賞者 大学 学年 大会成績 平成18年 13回 台湾

平成21年 14回 ブラジル        

平成24年 15回 イタリア 松本 弥月 法政大学 2 団体優勝

      高橋 萌子 法政大学 1 団体優勝

平成27年 16回 日本 高橋 萌子 法政大学 4 団体優勝 出所 剣道時代、剣道日本の世界大会特集より抜粋

(4)

下記については、決勝戦に進出した5名の選手 の高校時の競技実績である。

【平成17年】

優勝 清和大学 団体戦 優勝2回 2位2回  3位1回

準優勝 東海大学 団体戦 優勝1回

【平成18年】

優勝 埼玉大学 団体戦 優勝2回 2位3回  3位2回

準優勝 法政大学 団体戦 2位3回 3位2回

【平成19年】

優勝 日本体育大学  なし

準優勝 筑波大学 団体戦 優勝3回 2位1回  3位3回 個人戦 優勝1回

【平成20年】

優勝 筑波大学 団体戦 優勝6回 3位1回  個人戦 優勝1回

準優勝 法政大学 団体戦 2位3回 3位2回

【平成21年】

優勝 筑波大学 団体戦 優勝2回 2位3回  3位2回 個人戦 優勝2回

準優勝 日本体育大学  団体戦 優勝1回

【平成22年】

優勝 早稲田大学 団体戦 優勝2回 2位3回  3位5回

準優勝 龍谷大学 団体戦 優勝1回 2位2回  個人戦 2位1回

【平成23年】

優勝 筑波大学 団体戦 優勝2回 2位5回  3位1回 個人戦 優勝2回

準優勝 東海大学 団体戦 優勝1回 2位2回  3位1回 個人戦 3位1回

【平成24年】

優勝 鹿屋体育大学 団体戦 優勝3回 2位4 表3 決勝戦進出大学とポイント結果

年度 成績 大学名 合計ポイント ポイント保有者数

平成17年 優勝 清和大 11 2

準優勝 東海大 3 1

平成18年 優勝 埼玉大 14 4

準優勝 法政大 8 3

平成19年 優勝 日本体育大 0 0

準優勝 筑波大 19 4

平成20年 優勝 筑波大 24 4

準優勝 法政大 8 4

平成21年 優勝 筑波大 24 5

準優勝 日本体育大 3 1

平成22年 優勝 早稲田大 17 4

準優勝 龍谷大 11 1

平成23年 優勝 筑波大 27 5

準優勝 東海大 11 2

平成24年 優勝 鹿屋体育大 22 4

準優勝 筑波大 28 5

平成25年 優勝 国士舘大 10 3

準優勝 大阪教育大 14 3

平成26年 優勝 法政大 44 5

準優勝 筑波大 26 4

出所 ポイント合計結果をもとに著者作成

(5)

準優勝 筑波大学 団体戦 優勝3回 2位5回  3位1回

個人戦 優勝1回 3位1回

【平成25年】

優勝 国士舘大学 団体戦 優勝1回 2位3回  3位1回

準優勝 大阪教育大学 団体戦 優勝1回 2 位1回 3位2回 

個人戦 2位1回 3位1回

【平成26年】

優勝 法政大学 団体戦 優勝3回 2位3回  3位4回

個人戦 優勝2回 2位3回 3位1回

準優勝 筑波大学 団体戦 優勝5回 2位2回  3位2回

個人戦 優勝1回

 個々の競技実績を調査した結果、各大学とも 高校時に非常に優れた成績を残した選手が数多 くおり、全日本女子学生剣道優勝大会の決勝 戦に進出していることが明らかとなった。上 述した通り一番Ptの高い大学は44Pt、低い大 学は0Ptである。しかし、44Pt(優勝大学)の 次に高いのは28Pt(準優勝大学)であり44Pt というPt数がずば抜けて高い数値を示している。

44Ptを有する法政大学は5名全員が全国高校総 合体育大会個人戦で入賞経験のある選手で構成 されているため、高い数値になることは当然の 結果と言える。

4-2決勝戦進出回数と内訳

 表4は決勝戦進出回数と内訳である。決勝 戦進出チームを大学別でみると、筑波大学6回、

法政大学3回、東海大学2回、日本体育大学2回、

清和大学、埼玉大学、早稲田大学、龍谷大学、

鹿屋体育大学、国士舘大学、大阪教育大学が1 回となった。

4、考察と分析 4-1勝利ケースの分析

 Ptの高い大学が勝利したケースは10回中7回、

Ptの低い大学が勝利したケースは10回中3回と なった。

Ptの高い大学が勝利したケース

①平成17年 清和大学11-3東海大学

②平成18年 埼玉大学14-8法政大学

③平成20年 筑波大学24-8法政大学

④平成21年 筑波大学24-3日本体育大学

⑤平成22年 早稲田大学17-11龍谷大学

⑥平成23年 筑波大学27-11東海大学

表4 決勝戦進出回数と内訳

優勝/回 準優勝/回 決勝進出/回

筑波大学 3 3 6

法政大学 1 2 3

東海大学   2 2

日本体育大学 1 1 2

清和大学 1   1

埼玉大学 1   1

早稲田大学 1   1

鹿屋体育大学 1   1

国士舘大学 1   1

龍谷大学   1 1

大阪教育大学   1 1

出所 大会結果をもとに著者作成

(6)

⑦平成26年 法政大学44-26筑波大学

Ptの低い大学が勝利したケース

①平成19年 日本体育大学0-20筑波大学

②平成24年 鹿屋体育大学17-28筑波大学

③平成25年 国士舘大学10-14大阪教育大学

 Ptの高い大学が勝利したケースでは、優勝大 学と準優勝大学にかなりのPt差がみられ、高校 時に優れた成績を残した選手で構成された大学 が優勝した結果となった。平成26年の筑波大 学は準優勝ながら26Ptと高い数値である。優 勝大学の平均Ptが18.8Ptから考えると優勝して もおかしくない数値ではあるが、法政大学は選 手の5名全員が全国高校総合体育大会の個人戦 で入賞経験を有するだけあって筑波大会は勝利 することができなかったと考えられる。

 次にPtの低い大学が勝利したケースは、平成 19年の日本体育大学-筑波大学、平成24年の 鹿屋体育大学-筑波大学、平成25年の国士舘 大学-大阪教育大学の3例である。その中で も唯一決勝戦に進出した20大学のうち、高校 時に大会実績を有する選手がいないのが日本体 育大学である。また、決勝戦に進出した大学 のPt差が一番大きいのも平成19年の日本体育 大学-筑波大学であった。0Ptでの勝利、20Pt の差がある大学に勝利できた要因は何だったの か、追跡調査が必要であると考える。次に、平 成24年の鹿屋体育大学-筑波大学については、

準優勝大学の筑波大学は28Ptと法政大学に次 ぐ2番目に高い数値を有しているが、鹿屋体育 大学も22Ptと高いPt数と言える。Pt差は6Ptあ るが、優勝大学の平均Ptが18.8Ptであることを 考えると、優勝してもおかしくはない選手構成 だ。また、Pt保有者が鹿屋体育大学は4名、筑 波大学は5名と、両大学とも高校時の実績では 全国トップレベル同士での決勝戦であった。平 成25年の国士舘大学-大阪教育大学は全体か らみるとあまり高くないPt数での決勝戦となっ た。優勝した国士舘大学は優勝大学の平均Ptと 比較するとかなり低い数値である。日本体育大

学と同様、今後さらに分析することで、高いPt 数を有する大学に勝つための要因が見えてくる かもしれない。

 勝利ケースをそれぞれ分析すると、Pt数で高 い数値を示している大学が勝利しているケー スが7割となった。このデータ結果からみても、

高校時の競技実績は大学時の競技実績に大きく 影響している。

4-2優勝大学・準優勝大学の分析

 4-1でも述べたが優勝大学、準優勝大学の競 技実績をみると高校時に入賞経験のない選手で 構成され決勝戦に進出した大学は平成19年の 日本体育大学のみである。次に団体戦個人戦の いずれかで優勝経験を有しない選手構成で決勝 戦に進出した大学は、平成19年の日本体育大 学と平成18年・平成20年の法政大学だけであ る。その他の17大学は全国大会で優勝した経 験を持つ選手が1名は在籍している。高校生の 全国大会では段別や年齢別などない。また、個 人戦の全国大会は高校総合体育大会のみで行わ れている。そのことから考えても、全国大会で 優勝を経験した選手は元々数が少なく、希少価 値が高い。そのような選手を獲得することは各 大学にとって容易なことではないが、高校時に 高い成績を持つ選手が同じ大学に進学している 傾向が合計Ptからも、Pt保有者数からも見受け られる。

 次に特徴のある大学に注目したい。龍谷大学 は合計Pt数が11Ptと、準優勝チームの平均か らするとさほど劣っているわけでないが、Pt保 有者数をみると1名の選手が残した成績が11Pt であることが分かる(表3)。その他にも平成 17年に準優勝となった東海大学や平成21年の 日本体育大学も1名の選手が全国大会で優勝し た経験があるだけで、他の選手は全国大会で成 績を残していない。このような事からも、チー ムに1名でも全国大会での優勝経験や上位に進 出したことがある選手を有している場合、何か しらの作用により上位に進出できる可能性があ ると言えよう。しかし、逆に全日本女子学生剣

(7)

道優勝大会の決勝戦に進出するためには高校時 代に全国大会で入賞した経験を有する選手が一 人は在籍していなければ決勝戦に進出すること は極めて難しい実情である。

4-3学年比

 表5は選手5名の学年を合計した学年合計数 である。大学は4学年で構成されており、最大 で20Ptとなる。一番若い学年合計数は清和大 学の9Ptである。構成の内訳は2年生4名、1年 生1名であるが、清和大学の学年合計数が低い 理由として挙げられることは優勝した平成17 年が創部2年目であったため、最高学年が2年 生ということである。2番目に若いのは平成26 年の筑波大学、学年の構成は1年生2名、2年生 2名、3年生1名と4年生がいない選手構成となっ ている。また4年生が出場していない選手構成 は清和大学と筑波大学の2大学のみである。3 番目に若いのは平成18年の法政大学、1年生 2名、2年生1名、3年生1名、4年生1名である。

次に学年合計数が高い大学は17Ptで5大学あっ た。その中でも3年生と4年生だけで構成され た大学は平成20年の筑波大学のみである。4年 生が一番多く出場していたのは平成21年の日 本体育大学、平成24年の鹿屋体育大学、平成 25年の大阪教育大学の各大学3名となった。

 この学年比の結果は女子競技力に関して注目 すべき内容である。また、大学競技として4年 生の存在を考える場合の理想と現実とも言える。

4年生のみで決勝戦に進出した大学はなく、3 年生と4年生の上級生チームで構成され決勝戦 に進出した大学は10年間でたったの1度だけで ある。4年生にとって大学生生活最後の大会と なる全日本女子学生剣道優勝大会は、これまで 培った精神力や技術力といった総力を発揮する 場と言っていいだろう。心技体を鍛え上げ、自 分に足りない部分を課題とし目標達成のために 取り取り組んできた4年間は、並々ならぬ努力 であったと考えられる。4年生は自分が選手と なり、有終の美を飾りたいと誰もが願うはずで ある。しかし、学年を分析すると、4年生を4

名以上起用している大学はなく、むしろ、3年 生以下を多く起用している。(表6)。しかし、

現在の女子剣道界は印象としては競技年齢が上 がっている。全日本女子剣道選手権大会で最多 優勝5回の村山千夏選手は初優勝が32歳、5回 目の優勝が37歳である。平成17年からの過去 10年間、優勝者の年齢を平均すると29.5歳で ある。30歳を過ぎてもなお全日本女子剣道選 手権など第一線で活躍している選手が大勢いる ことを考えたとき、若さ=試合に勝てる、には ならないということだ。これは剣道の特性と言 える部分で、体力やスピードではなく、技術力 の高い選手が勝つ要素が多いということである。

剣道は打突の機会を捉えることが重要で、その 打突の機会を得るためにはたくさんの稽古と経 験が必要である。もちろん体が軽やかに動くと いうことも必要不可欠な要素ではあるが、何よ り技術力が勝負のカギである。大学の4年間で たくさんの経験と稽古を積み、打突の機会を捉 え、高い技術力を得る稽古が成されていれば、

高校時に好成績を残した下級生よりも4年間大 学で積んだ稽古と経験を有している4年生が技 術力や精神力に最も優れているはずであり、4 年生を主体としたチーム編成が理想ではないだ ろうか。しかし、若い選手を使っても勝てると いう状況や、4年生の少ないチーム編成の大学 が決勝戦に多く進出している結果をみると、大 学時に技術力を向上させる稽古を積んでも高校 時に好成績を上げている下級生に追い付くこと は並大抵のことではない。4年生を多く起用し、

全国大会で好成績を挙げることが各大学で育て た証と磨いた技術の総決算であり、大学の評価 に繋がることだと考えられるが現実はそうでは ない結果となった。

(8)

4-4ポイント結果からみる上位進出大学の特徴

(1)入学試験においてスポーツ推薦制度の実 施

 過去10年間で全日本女子学生剣道優勝大会 の決勝戦に進出した大学は11大学である。ス ポーツ推薦制度の方法や学費等の免除は各大学 様々であると考えられるが、11大学すべてで 入学試験においてスポーツ推薦制度が実施され ている。スポーツ推薦制度に実施はひとつの特 徴である。

(2)国立大学のPt数、上位進出の高さ

 表7は競技実績のPt順である。優勝、準優勝 に関係なくPt合計の高い大学から順番に記した ものである。1番目から11番目までの中に、国 立大学が9回入っており(その他の2回は1番目 の法政大学、8番目の早稲田大学)12番目以降 に国立大学はないという結果となった。特に筑 波大学においては、平成17年から26年までの 間に6回決勝戦進出を果たしているが、Pt数に おいても2番目から7番目を占めている。また、

全日本女子学生剣道優勝は平成26年で33回目

を迎えたが、筑波大学はこれまでの優勝回数は 鹿屋体育大学と並ぶ最多の8回であり、準優勝 を加えると16回決勝戦に進んでいる。鹿屋体 育大学は平成17年からの10年間では、決勝戦 に進出したのは1回のみだが、これまでの大会 成績は優勝8回、準優勝3回と、合計で11回決 勝戦進出を果たしている強豪大学である。

 このようなデータ結果から見ても、高校時に 好成績を残した多くの選手が国立大学に進学す る傾向がある。

(3)Ptの低い大学の共通点

 特にPtの低い日本体育大学(平成21年3Pt、

平成19年0Pt)と東海大学(平成17年3Pt)選 手は共に体育学部に所属しているということだ。

保健体育の教員免許を取得できる制度があり、

授業の中で体を動かすケースが一般大学より多 い。また、日本体育大学は全員学生寮、東海大 学は剣道部が所有する寮に居住しており生活環 境が整っている。大学までの通学距離が短いこ とも挙げられる。日本体育大学は平日の朝はラ ンニング等のトレーニング、東海大学も朝稽古 表5 学年合計数

大会順位 年 大学名 学年合計 大会順位 年 大学名 学年合計 1 平成17年 清和 9 1 平成25年 国士舘 14 2 平成26年 筑波 10 1 平成26年 法政 14 2 平成18年 法政 11 2 平成17年 東海 15 2 平成19年 筑波 12 1 平成23年 筑波 15 1 平成21年 筑波 12 2 平成21年 日体 16 2 平成22年 龍谷 12 1 平成18年 埼玉 17 1 平成19年 日体 13 1 平成20年 筑波 17 2 平成20年 法政 13 1 平成24年 鹿屋 17 2 平成23年 東海 13 2 平成24年 筑波 17 1 平成22年 早稲田 14 2 平成25年 大教 17

出所 大会結果をもとに著者作成 表6学年別内訳(n=100名)

学年 4年生 3年生 3年生 1年生

人数 33名 27名 25名 15名

出所 大会結果をもとに著者作成

(9)

やトレーニングが週2回確保されており、運動 量や稽古量が一般大学に比べると確保しやすい。

 上記に挙げた以外にも要因があるとは考えら れるが、このように環境が整えば実績の少ない 選手でも決勝戦まで進める可能性があると言え るだろう。

5、結論

 Pt結果、考察、分析から明確になったことは、

①女子大学の最高峰である全日本女子学生剣道 優勝大会の決勝戦で試合をした5名の選手は高 校時にも高い競技実績を有していた。

②個々の競技実績が大学時の大会結果に与える 影響は大きく、高校時の競技実績との関連性は 明らかとなった。

5-1 競技実績

 大会に参加する各大学は、選手の高校時の競 技実績の有無に関わらず長期にわたって強化し 優勝を目指し臨むわけだが、本研究の示すデー タから、競技実績を持たない大学にとって極め て辛辣であると言わざるを得ない結果となった。

競技実績の有る選手の度合いが高い構成の大学 ほど優勝または上位に多く進出していることが 明らかとなり、大学優勝チームの90%は高校 時に優勝経験者を擁していた。優勝経験の有る

選手を持たない大学が、その経験を有する選手 を多く持つ大学に勝利するのは極めて困難なこ とであり、高校時の競技実績は大学時の競技実 績に大きく影響していると言える。今回の研究 からPtの低い大学が優勝したケースは3回のみ であり、その中でも、5名全員が大会実績を有 さない大学で決勝戦に進出したケースも、優勝 したケースも一度だけしかなかった。女子大学 生の試合はトーナメント制で行われ、言わば一 発勝負だ。その日の体調やモチベーションが良 い状態でなければ5人制の試合で安定し勝ち続 けるということは容易ではない。男子以上に調 整力が必要となってくる。同時にチームの精神 状態も重要である。このようにコンディション をコントロールすることが難しいと考えられる 要素が多々ある中、高いPt数を有する大学が順 調に上位に進出している結果をみると、それだ け全国の舞台で活躍をした経験やそれに伴う自 信は勝負の世界ではとても大きいと言える。同 時に、そのような選手を1名でも有している場 合、上位に進出できる可能性が高くなるとも 言える。4-1でも述べたが、龍谷大学や東海大 学、日本体育大学も1名の選手が全国大会で優 勝した経験があるだけだ。3大学とも準優勝と いう結果にはなったが、1名の選手の影響によ り、実績を有さない他の選手が触発され、切磋 表7競技実績ポイント順

大学名 年 結果 ポイン

ト数 大学名 年 結果 ポイン

ト数 1 法政大学 平成26年 優勝 44 11 大阪教育大学 平成25年 準優勝 14 2 筑波大学 平成24年 準優勝 28 12 清和大学 平成17年 優勝 11 3 筑波大学 平成23年 優勝 27 12 龍谷大学 平成22年 準優勝 11 4 筑波大学 平成26年 準優勝 26 12 東海大学 平成23年 準優勝 11 5 筑波大学 平成20年 優勝 24 15 国士舘大学 平成25年 優勝 10 6 筑波大学 平成21年 優勝 24 16 法政大学 平成18年 準優勝 8 7 筑波大学 平成19年 準優勝 19 16 法政大学 平成20年 準優勝 8 8 早稲田大学 平成22年 優勝 17 18 東海大学 平成17年 準優勝 3 8 鹿屋体育大学 平成24年 優勝 17 18 日本体育大学 平成21年 準優勝 3 10 埼玉大学 平成18年 優勝 14 20 日本体育大学 平成19年 優勝 0

出所 大会結果をもとに著者作成

(10)

琢磨する過程の中で高い技術力や精神力を自然 と身につけ、高校時の全国大会で大会成績を有 する選手と互角以上の戦いができるようになっ たとも考えられる。

5-2活動の環境

 Pt合計数が低い中で決勝戦に進出した大学を 分析すると一つの共通点が見受けられた。それ は体育学部を有する大学ということである。寮 生活ということから大学近隣で生活しているこ ともあり、朝夕の稽古やトレーニングの時間が 一般大学に比べて十分確保できている。  

平成17年から決勝戦に一番多く進出した大学 は筑波大学であるが、筑波大学剣道部も体育専 門学群に在籍する学生がほとんどであり、日本 体育大学や東海大学と同じように体育を中心に 学習している。今回の研究では平成16年以前 の決勝戦に進出した大学について個々の調査は 行っていないが、これまでの決勝進出大学で分 析すると「体育学部」という共通点は現在以上 に色濃く表れるのではないかと推察できる。こ こで平成16年以前に決勝戦に進出した大学を 調査し比較する。

 全日本女子学生剣道優勝大会は平成26年11 月に第33回目の大会を終え、これまで決勝戦 に進出した大学は66大学である。詳細につい ては下記の通りとなっている。

1、筑波大学16回(優勝8回、準優勝8回)

2、鹿屋体育大学11回(優勝8回、準優勝3回)

3、国士舘大学9回(優勝7回、準優勝2回)

4、中京大学8回(優勝2回、準優勝6回)

5、日本体育大学6回(優勝1回、準優勝5回)

6、東海大学4回(優勝2回、準優勝2回)

7、法政大学3回(優勝1回、準優勝2回)

8、大阪体育大学2回(準優勝)

その他の大学が決勝戦に進出したのは1回のみ

 1、2番目は国立大学という結果である。上 位大学の特徴でも触れたが平成17年からの10 年間で鹿屋体育大学は1回しか決勝戦に進出し ていないが、平成9年から13年まで5連覇した

強豪大学である。この5連覇の記録はまだ更新 されていない。次に3番目から8番目まで2回以 上決勝戦に進出した大学は私立大学だが、法政 大学を除けば国士舘大学、中京大学、日本体育 大学、東海大学、大阪体育大学は、体育学部

(中京大学はスポーツ科学部)のある大学であ る。上述したように、体育学部という視点から みると、筑波大学、鹿屋体育大学も体育学部(筑 波大学は体育専門学群)のある大学である。平 成26年まで決勝戦に進出した66大学のうち56 大学が体育学部を有する大学ということになる。

これまで決勝戦に進んだ大学の約85%を体育 学部の有る大学が占めており、体育学部を有さ ない大学はたったの15%しか決勝戦へは進出 していないのだ。このデータは非常に興味深い ものであるが、第1回大会から第33回までの大 会結果を分析すると、体育学部を有する大学が 圧倒的に結果を残していることが分かる。やは り運動量や稽古量の確保は女子大学生にとって 非常に重要なポイントを示していると言える。

これまで決勝戦に進出した大学の運動時間や稽 古時間を比較すると明確な違いが見えてくるの かもしれない。高校時に高い競技実績を有しな い選手で構成されている大学が高い競技実績を 有する大学に勝利するためには十分な稽古やト レーニング等の運動量の確保は必須条件になる と言えだろう。生活環境や授業の形態、キャン パスが複数存在するなど、それぞれの大学が抱 える問題点は異なるとは考えられるが、十分な 稽古やトレーニング時間を確保することで大会 成績が変わる可能性が高くなることは明らかで ある。

5-3 剣道の特性

 これまで結論で述べた通り、高校時に高い競 技実績を有する選手は大学でも力を発揮してい る。そしてこれは、剣道の持つ特殊性とも考え られるもので、低年齢期から鍛錬を続け会得し た心技体、更に試合の経験を含めたものがより 頑強な崩しがたいものだと言えるのではないだ ろうか。今回の科学的なデータから示されたの

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は、高校時に高い競技実績を有する選手は大学 の大会でも上位に進出していること、高い競技 実績を有さない大学の共通点は十分な稽古量や 運動量があることだ。高い競技実績の有る学生 を数多く持ち、十分な運動量や稽古量が確保で きる大学が常に安定した成績を残せるというこ とになってしまうが、上述したように日々の鍛 錬で会得した心技体はそう簡単に覆すことがで きることではないと言える。

6、最後に

 稽古量や運動量(トレーニング等)の確保は 剣道の技術向上そのものではなく、それを助力 してくれる一つの方法論である。女子大学生の 競技力は高校時の競技実績に依存していること は明らかとなったが、それは高校時の競技実績 に留まらず、低年齢期から会得していたものだ とも考えられる。しかし、競技実績の全くない 大学が勝利しているケースが一度だけでもある ということは、大学での稽古内容や取り組み、

指導者の意義付け、学生の勝利への思いによっ て逆転する可能性があると言うことである。大 学剣道の更なる発展を目指すためには、高校ま での実績や経験ではなく大学での成長が本来の 姿であり、それこそが、今後女子大学生の更な る競技力向上に必要なことと言える。

 今回の研究から見えたことは、「高校時に高 い競技実績」を有し「運動量」・「稽古量」が確 保できる「環境」が整っている大学が上位に進 出する可能性が高いということである。しかし、

体育学部を有さない大学や、稽古量や運動量を 授業やキャンパス等の事情により確保すること が難しい大学、また、高校時に好成績を残した 選手を獲得できない大学は多い。大学剣道に携 わっている指導者が考えなければならないこと は上位に進出できる条件を持っていない大学で も、上位に進出できる要素を見出し、学生の潜 在能力を引き出すことである。容易なことでは ないが、我々指導者が育成力を高める指導の在 り方を模索しなければならないと強く感じる。

注1)全日本女子剣道選手権大会

平成27年で第55回を迎える女子限定の大会で ある。

趣旨は、女子剣道の普及振興を図るために、各 都道府県剣道連盟登録会員の中から最も心気力 に優れた女子選手により、皇后盃の獲得を目指 し優勝を争い、広く剣道愛好者に披露すると共 に剣道の真価を世に示し、一般の認識を深めよ うとするものである。

注2)世界剣道選手権大会

第1回大会は1970年日本の東京で開催、それ以 降3年に一度開催される。男女団体戦、男女個 人戦が行われ平成27年第16回大会では56 ヶ国 と地域が参加した。

注3)全日本剣道連盟 

1952年(昭和27年)に設立。日本の伝統文化 に培われた剣道、居合道及び杖道(以下「剣道 等」という。)を各統轄する団体である。

目的は「日本を代表する唯一のものとして、広 く剣道等の普及振興、『剣の理法の修練による 人間形成の道である』との剣道理念の実践等を 図り、もって、心身の健全な発達及び国際相互 理解の促進に寄与すること」としている。また、

財団法人全日本剣道連盟は、平成24年4月1日 をもって、新法人「一般財団法人全日本剣道連 盟」に移行された。

注4)全日本女子学生剣道優勝大会

平成27年で第34回を迎えた女子の団体戦で各 地区の予選を通過し出場することができる大会 である。大会には56大学が出場できる。出場 枠は以下の通りである。

北海道剣道連盟4大学 東北剣道連盟4大学  北信越連盟3大学 関東連盟16大学

東海連盟6大学 関西連盟12大学 中四国連盟 5大学 九州連盟6大学

注5)剣道日本 スキージャーナル株式会社が 毎月1回発行する剣道専門雑誌

注6)剣道時代 (株)体育とスポーツ出版社 が毎月1回発行する剣道専門誌

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注7)新人データバンク 書籍「剣道日本」書 籍「剣道時代」が中学校、高校、大学などで活 躍した選手を選抜し大会実績や進路について明 記したもの。

参考文献

(1)剣窓 2016.1月号P28 全日本剣道連盟

(2)全日本剣道連盟HP

 (http://kendo.or.jp)2015.1023アクセス

(3)剣道日本 スキージャーナル株式会社  2001年5月号P57  2002年5月号P72  2003年5月号P80

(4)剣道時代 (株)体育とスポーツ出版社  2004年5月号P96 2005年5月号P108  2006年5月号P100 2007年5月号P82  2008年5月P81 2009年5月号P70  2010年5月号P70

参考資料

第33回全日本女子学生剣道優勝プログラム

参照

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施設 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 10年比 松島海岸 㻟㻘㻠㻝㻥㻘㻜㻜㻜

(単位:千円) 平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 1,772 決算 2,509 2,286 1,891 1,755 事業費 予算 2,722 2,350 2,000. 1,772 決算

大正13年 3月20日 大正 4年 3月20日 大正 4年 5月18日 大正10年10月10日 大正10年12月 7日 大正13年 1月 8日 大正13年 6月27日 大正13年 1月 8日 大正14年 7月17日 大正15年

第1回 平成27年6月11日 第2回 平成28年4月26日 第3回 平成28年6月24日 第4回 平成28年8月29日

※短期:平成 30 年度~平成 32 年度 中期:平成 33 年度~平成 37 年度 長期:平成 38 年度以降. ②

平成 26 年度 東田端地区 平成 26 年6月~令和元年6月 平成 26 年度 昭和町地区 平成 26 年6月~令和元年6月 平成 28 年度 東十条1丁目地区 平成 29 年3月~令和4年3月

2011年(平成23年)4月 三遊亭 円丈に入門 2012年(平成24年)4月 前座となる 前座名「わん丈」.

(参考)埋立処分場の見学実績・見学風景 見学人数 平成18年度 55,833人 平成19年度 62,172人 平成20年度