密 教 文 化
カ ー ヴ ィヤ 文 体 の 研 究
カー ヴ ィヤの語順
I
三
井
淳
司
序
カー ヴ ィ ヤ文体 の研 究 とい うテ ー マ の も とに、 二 つ の観 点 か らの分 析 を 行 な って み る。 一 つ は カー ヴ ィヤ の 語 順 の 問題、 も う一 つ は カ ー ヴ ィヤ に お け る比 喩 の 問題 で あ る。 この 分 析 は、 カー ヴ ィヤ とい う素 材 を文 学 作 品 と して 扱 うの で は な く、 単 な る言 語 デ ー タ と して扱 う。イ ン ド文 学 史 に おい て 最 高 の 美 しさ を持 つ 芸 術 を、 抽 象化 し、記 号 化 し、そ して分 析 す る。 そ の 目的 は、 カー ヴ ィ ヤ の 目に 見 え な い特 色 や 文 法 的 規 則 を 見 え る よ うにす る こ とで あ る。 そ の よ うに して 現 れ て き た結 果 を、 作 品 の真 偽 決 定 や 年 代 決 定 に応 用 して ゆ くこ とが、 次 の段 階 の 目的 とな る。 そ の た め に こ の研 究 で は、 い くつ か の 新 し い術 語 を用 い な けれ ば な らな か っ た。 そ れ らの 説 明 は、 分 析 の方 法 論 の説 明 と と もに、 順 次 段 階 的 に行 な う。<> で 囲 む こ とに よ って、 そ の 中 の 語 ま た は句 が、 特 殊 な意 味 で 新 し く設 定 され た 術語 で あ る こ と を示 す こ と にす る。 こ の論 文 は、 第1章 で カー ヴ ィ ヤの 語 順 を、 第2章 で は修 辞 学 上 大 き な テー マ とな る比 喩 に つ い て、 語 合成(samasa) とい う観 点 か ら形 態 的 な分 析 を試 み る。 第1部 とな る 本 稿 で は、 第1章 とそ れ に付 属 す る デ ー タ を付 録 と して 示 す。 第2章 以 下 は 第2部 とな る。-122-目 次 第1章 カー ヴ ィヤ の語 順 (1) カ ー ヴ ィヤ に語 順 はあ るの か (2) 分 析 デ ー タ の サ ン プル 選 定 に つ い て (3) <直 接 限定 要 素> (4) <限 定 距 離> (5) <枝 分 かれ 図> (6) <主 語 句 集 団> (7) <補 語 句 集 団> (8) 要 素 の 記 号 化 (9) 語 合 成 の 記 号 化 (10) <分 布 図> (11) <群> (12<補 語 句 焦 同 の競 飛沸 の 渡魯> 付録 分 析 デ ー タ 「ラグ ヴ ァン シ ャ」 第2章 く 分 布 図> 第1章 カ ー ヴ ィ ヤ の 語 順 (1)カ ー ヴ ィヤ に語 順 はあ るの か カー ヴ ィ ヤ の語 順 は散 文 と異 な り、韻 律 に合 わせ て 自 由 に入 れ替 え られ る とい う印 象 が 強 い。 しか し、本 当 にそ うな の だ ろ うか。 サ ンス ク リッ トの 散 文 にお い て は、 語 順 に若 干 の 傾 向 が認 め られ る。 例 え ば、 動 詞 は 文 末 に位 置 す る こ とが 多 い。 あ るい は 接 続 詞 の位 置 な ど も決 って い る。 この よ うな例 か ら考 えて も、 サ ンス ク リッ トの 文 章 が文 法 的 に 成 立 す る た め に は、 あ る程 度 の 語順 規則 が 守 られ な けれ ば な ら ない こ とが 予 測 され る。 こ の よ うな語 順 を文 法 的語 順 とい う。で は、 サ ンス ク リ ッ ト の韻 文 につ い て は ど うだ ろ う。一 般 に詩 を作 る とき に は、 そ れ ぞ れ の 詩 の タイ プ に従 っ た作 詩 法 が存 在 す る。 詩 人 はそ の作 詩 法 の規 定 に従 って、 そ カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 の範 囲 内 で個 性 を発 揮 す る。 力緊 ヴ ィヤ に お い て も、 カ ー ヴィ ヤ作 家 は、 詩 の 目的 に か な っ た韻 律 を用 い る とい うよ うな 「詩 の制 約 」 を守 り、ま た 同時 に、 同音 語 を並 べ て 音 調 を整 え る等 の 積極 的 な 「詩 の技 巧 」 を用 い た りす る。 こ の よ うな中 で、 カー ヴ ィ ヤ作 家 は必 要 に応 じて、 各 語 を移 動 さ せ、 「詩 の制 約 」 や 「詩 の技 巧 」 に 適:合して個 性 的 な作 品 を生 み 出 す の で あ る。 こ の よ うな語 順 を文 体 的 語 順 とい う。 上 で述 べ た文 法 的 語 順 が、 この 文 体 的 語 順 に対 して何 か の形 で 制約 を加 え て は い な い だ ろ うか。 韻 律 を始 め と して カー ヴ ィ ヤ を作 る場 合 に用 い ら れ る技 巧 は非 常 に多 い。 そ の よ うな 技 巧 を駆 使 しつ つ、 な お か つ 美 し さ を 追 及 す る文 体 にお い て、 自然 な 語 順 とい うもの は 見 え な くな っ て い る けれ ど も、 目に見 え ない とこ ろ に何 か規 則 性 や禁 則 の よ うな も の は な い だ ろ う か。 カ ー ヴ ィ ヤ の作 り手 で さ え も、 無 意識 の うち に従 って い る原 則 の よ う な もの の存 在 は充 分 予 測 で き る。 文 法 に か か わ る語 順 の規 則 に 支 配 さ れ た、 そ の よ うな 原 則 の よ うな もの を発 見 す る こ とが、 以 下 の分 析 の 大 きな テ ーマ とな る。 「カ ー ヴ ィ ヤ に語 順 は あ るの か 」 とい うサ ンス ク リッ トの文 体 研 究 に お け る最 も基 本 的 な 疑 問 を解 明 す るた め に、 こ の論 文 で は で き る 限 り客 観 的 な分 析 が 行 え る よ うな シ ス テ ム を考 案 した。 以 下 に順 次 説 明 して ゆ こ う。 (2)分 析 デ ー タ の サ ンプ ル 選 定 に つ い て (イ)〈 デ ー タ単 位 〉 の純 度 分 析 の 方 法 論 を確 立 す る た め に作 業 仮 説 を立 て るわ けで あ る が、そ の際、 サ ン プル と して用 い る ひ とか た ま りの デ ー タ をく デ ー タ単 位 〉 と呼 ぶ こ と にす る。 第1章 に お い て、 カー ヴ ィヤ の語 順 につ いて 分 析 し、作 業 仮 説 を 設 け る際 に は、 カ ー リダ ー サ(Kalidasa)作 『ラ グ ヴ ァ ン シ ャ』(Raghuvaa) くユ の 第2章 をく デ ー タ単 位 〉 と して サ ンプ ル に した。 また、 第2章 の 比 喩 に (2)(3) 関 す る 分 析 で は、 マ ン ダ ソー ル 碑 文 と ア ー イ ホ ー レー 碑 文 と を 各 々 〈 デ ー
タ単 位 〉 と して サ ンプ ル に した。 こ の サ ンプ ル の選 択 の仕 方 に は理 由が あ る。 分 析 方 法 を確 立 す る た め の デ ー タ は、 単 に量 が 多 けれ ば よい とい うもの で は な い。 こ の種 の分 析 は、 問題 とな る文 献 にお い て、 限 定 され た範 囲 内 で、 そ の分 析 方 法 の有 効 性 が 問題 と され るの で あ る。 例 え ば、 あ る文 献 の 第何 章 かが 真 作 で あ る か ど う か とい うよ うな、 部 分 的 な範 囲 を測 定 す る尺 度 とな る もの で あ る。 あ るい は、 短 い碑 文 の 中 の文 体 が、どの 時 代 の文 体 に最 も近 い の か とい うよ うに、 分 析 を行 う対 象 が限 定 的 な もの で あ る こ とが 予 測 され る。 そ の よ うな分 析 の方 法 を確 立 す るた め に は、 大 量 の デ ー タ か ら仮 説 を立 て る よ り も、分 析 の 目的 に適 った性 質 を もつ、 良質 の サ ンプ ル を選 び、 そ こ か ら作 業 仮説 を設 け、 順 次 デ ー タ の枠 を広 げ て ゆ くべ きで あ ろ う。作 業 仮 説 を立 て る段 階 で デ ー タ の枠 を広 げ る と、 か え って く デ ー タ単 位 〉 の純 度 が損 な われ る ので、 仮 説 自体 の 信 頼 度 が 落 ち るお そ れ が あ る。具 体 的 に い え ば、 こ こで は 『ラ グ ヴ ァ ン シ ャ』 第2章 をサ ンプ ル と して、<補 語 句 集 団 の群 形 成 の法 則 〉 とい・う作 業 仮説 を立 て た わ け で あ る が、 こ の 第2章 とい うの が、 一 つ のく デ ー タ単 位 〉 に な って い る。 も しこ こ で、 『ラ グ ヴ ァ ン シ ャ』 の他 の多 くの章 を 同時 に サ ン プル とす る と、問題 が生 じて くる。
(注) (1) M. R. Kale, The Raghuvamsa of Kalidasa, Motilal Banarsidass,
Reprint Edition, 1972.
(2) J. F. Fleet, Mandasor stone inscription of Kumaragupta and Ban-dhuvarman. The Malava years 493 and 529, Corpus Inscriptionum Indicarum, Vol. 3, Inscriptions of the Early Gupta Kings and their successors, No. 18 ; Plate XI. Calcutta, 1888, pp. 79-88.
Revised by Devadatta Ramakrishna Bhandarkar, Mandasor inscrip-tion of Kumaragupta (1) & Bandhuvarman years 493 & 529, Archaeo-logical Survey of India, Corpus Inscriptionum Indicarum, Vol. 3, Inscriptions of the Early Gupta Kings, New Delhi, 1981, pp. 323-332. (3) J. F. Fleet, Sanskrit and old-Canarese inscriptions, The Indian
Antiquary, A Journal of Oriental Research, Vol. 8, Bombay, j'1879, pp. 237-246. カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 そ れ はく デ ー タ単 位 〉 の純 度 とい う問題 で あ る。 『ラ グ ヴ ァ ンシ ャ』 の各 章 は、 は た して 同 じ ぐ らい の 確 か さで、 どの章 もカー リダ ー サ の真 作 な の だ ろ うか。 また、 そ れ を確 か め る た め の分 析 方 法 の確 立 が 目的 で あ る とい うの に、 い くつ か の章 をひ とま とめ に してく デ ー タ単 位 〉 と して しま うの は、 本 末 転 倒 で あ る。 ま た 第2章 の 中 に も、 カ ー リダー サ 自身 の作 で な い 部 分 が 挿 入 され て い る こ と も考 え られ る が、 そ れ は、 第2章 を サ ンプ ル と して 仮 説 を設 定 した後 で、 考 察 す べ き問 題 で あ ろ う。 (ロ)「ラ グ ヴ ァン シ ャ」 を用 い た理 由 まず 第 一 に、 カー ヴ ィ ヤの 語 順 とい う分 析 の 目 的 は、 カー ヴ ィ ヤ は 本 来、 韻 律 が優 先 され る た め に、 語 順 は か な り自 由で あ る と され て き た が、 そ こ に何 か 目に 見 えな い 規 則 性 の よ うな もの が な い か と 探 る こ とで あ っ た。 そ して、 そ の よ うな語 順 の表 面 化 しに くい 規 則 性 は、 言 語 の 一 般 的 な性 質 か ら考 え て、 カ ー ヴ ィヤ が作 られ た様 々 な時 代 とか作 者 と か を超 え て、 普 遍 的 に存 在 す る もの で あ る とい うのが 分 析 の 大 前提 とな って い る。 言 う ま で もな く、 こ の前 提 が成 り立 た な けれ ば、 この分 析 は行 う意 味 が な い の で あ る。 そ こ で、 こ の サ ン プル は、 年 代 の明 白 さ よ りもむ し ろ作 品 と して の質 の高 さ、っ ま り、模 範 的 な カー ヴ ィ ヤ と して通 用 す る もの で な けれ ば な らな い。 そ して、 作 者 の質 につ い て も同 じ よ うな こ とが言 え る。 カ ー ヴ ィヤ は芸 術 的 意 図 に よ って 作 られ た人 工 的作 品 で あ る か ら、作 者 個 人 の文 体 的 特 徴 の存 在 も予 測 され る。 先 に述 べ た よ うに、 カー ヴ ィ ヤ の 語 順 の規 則 につ い て は、 普 遍 的 な も ので あ る と考 え てい る が、 そ の 規 則 が どの程 度 守 られ て い るか とい うの は、 作 家個 人 の特 徴 と して 捉 え る こ とが で き る か も しれ な い。 そ うな れ ば、 作 品 の真 偽 決 定 に貢 献 す る こ と が可 能 で あ ろ う。そ の た めに も、 サ ン プル とす る の は著 名 度 の 高 い 作 家 が 望 ま し か っ た ので あ る。そ の よ うな条 件 を満 たす も の と して、カー リダ ー サ の 『ラ グ ヴ ァン シ ャ』 第2章 をサ ンプ ル と し、 そ の 第2章 のみ を〈 デ ー タ単 位 〉 と した ので あ る。
-118-残 念 な が ら この サ ン フ. ル は、 作 者 の年 代 が 明 らか で は な い。 作 者 の年 代 につ い て の通 説 の 不 確 か さは第2章 で詳 説 す る。 しか し、 カ ー リダー サ と い う大 詩 人 の真 作 で あ る こ とは か な り信 頼 度 が あ り、そ の第2章 とい うの は、 後 代 の付 加 で あ る可 能 性 もず っ と少 ない も ので あ る。 つ ま り、年 代 の 確 実 さ よ り も、作 品 と作 者 の質 の方 を選 定 基 準 と した の で あ る。 の 碑 文 を用 い た 理 由 次 に、 第2章 の比 喩 の分 析 の 目的 で あ るが、 カー ヴ ィヤ の比 喩 とい うも の は、 年 代 と とも に質 的 な 変 化 をす る と言 わ れ て い る。 詳 し くは 第2章 で 述 べ る が、 この 変 化 の 様子 を客観 的 に捉 え る こ とは で きな い か とい うの が 分 析 の 目的 で あ る。 そ の た め、 何 よ り も年 代 の正 確 さが 問題 とな る。 カ ー リダ ー サ が い か に有 名 な詩 人 で あ っ て も、 そ の年 代 とい うこ とに な る と、 サ ン プ ル にす る に は頼 りな い も の と言 わ ざ る を得 ない。 そ こ で、 サ ン プル は碑 文 を選 択 した の で あ る。 残 念 なが ら、 カ ー リダ ーサ の よ うな非 常 に有 名 な 作 家 の碑 文 は存 在 しない。 しか し、 カー ヴ ィ ヤ調 で 書 かれ た ま と ま っ た量 の 文 章 を含 む碑 文 は存在 す る。 そ の 中 か ら、二 つ の サ ン プル を選 び、 二 つ の く デ ー タ単 位 〉 と した の で あ る。 この二 つ の 碑文 に つ い て は 第2章 で詳 し く述 べ るが、 こ こで は、 そ れ が作 品 と作 者 の 質 よ りも、年 代 の確 実 さを選 定基 準 と した こ と を述 べ る に と どめ る。 以 上 が 第1章 と第2章 とで用 い た分 析 デ ー タの サ ン プル の選 定基 準 で あ る。 (3)〈 直 接 限 定 要 素 〉 (イ) 動 詞 の扱 い サ ン ス ク リ ッ ト文 の文 法 的 要 素 の中 で、 何 が最 も重 要 な要 素 で あ る の か とい う問 題 は保 留 して お く。古 来 よ リイ ン ドの様 々 な学 派 で論 じ られ て き た この テ ー マ は、 結 局、 語 根(dhatu)の 根 源 性 とい う多 分 に形 而 上 的 な議 論 に 発 展 し、現 実 の問 題 を解 決 す る助 け に は な らない か らで あ る。 そ れ よ りも こ こで は、実 際 的 な観 点 か ら、動 詞 を文 章 の基 幹 に据 え る こ とにす る。 カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 こ れ は あ く ま で 作 業 上 の 設 定 で あ っ て、 文 法 的 な 結 論 で は な い。 (ロ) 動 詞 を 限 定 す る も の サ ン ス ク リ ッ トの 動 詞 は 単 独 で も主 語 を含 む 文 意 を 表 し得 る。 そ の 場 合 の、 動 詞 の 形 態 変 化 部 分 に 含 ま れ る 主 語 を表 す 変 化 部 分(人 称 語 尾)は、 以 下 の 分 析 で は 独 立 し た 主 語 表 示 機 能 と し て は 扱 わ な い。 次 に、 本 論 に お け る 〈 限 定 〉 と い う語 の 意 味 を 示 して お く。 〈 限 定 〉 と は、 あ る 単 語 の 意 味 を 別 の 単 語 が よ り 明 白 に す る こ と で あ る。
(例 文1) devadatto vanam gacchati. デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 森 に 行 く。 こ の 文 に お い て、 最 も基 幹 と な る 語 を、 動 詞 の gacchati (行 く)と す る。 主 語 の devadattah (デ ー ヴ ァ ダ ッ タ)は、 「行 く」 の が 誰 な の か と い う こ と を 明 白 に し て い る。 目的 語 のvanam (森)は、 「行 く」 所 が ど こ な の か を 明 白 に して い る。 こ の よ う な 場 合、devadattah は gacchatiを 限 定 して い る と い い、 ま た、vanamはgacehatiを 限 定 し て い る と い う。 と こ ろ が、devadattah と vanamと の 関 係 は、 ど ら ち か が ど ち ら か の 単 語 を 明 白 に して い る と は 言 え な い。 こ の よ うな 時、 こ の 二 つ の 語 の 問 で は 限 定 して い る と は 言 わ な い。 (例 文1)に お い て は、 動 詞 を 限 定 す る も の は 主 語 と 目 的 語 で あ っ た。 こ の よ う に 動 詞 を 限 定 す る 可 能 性 の あ る も の に は ど の よ うな も の が 考 え ら れ る で あ ろ う。 い く つ か の 考 え ら れ る も の を挙 げ て み よ う。 【1】 主 語 (例 文1)に お け る devadattahの よ うな も の。 主 語 が 複 数 個 あ る 可 能 性 も あ る。 そ の 場 合 に 注 意 し な け れ ば な ら な い の は、 全 く 異 な る主 体 が 各 々 主 語 と し て 存 在 す る の で は な く、 主 語 に 対 す る エ ピ テ ー トの よ うな 名 詞 が 主 語 の 他 に 存 在 す る 場 合 で あ る。 こ れ は 主 語 を 限 定 す る 形 容 詞 と 同 じ扱 い に す る。 【2】 目的 語
(例 文1)に お け る vanalh の よ う な も の。
【3】 補 語
(例 文2)devadatto bhavati brahmanah. デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は バ ラ モ ン で あ る。
こ の 例 文 に お く る 補 語 brahnlapah (バ ラ モ ン)は 動 詞 bhavati (で
あ る)を 限 定 し て い る。
【4】 副 詞
(例 文3) mandalh devadatto vanam gacchati. デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は ゆ っ く り と 森 に 行 く。
こ の 例 文 に お け る 副 詞(不 変 化 詞) manda (ゆ っ く り と)は 動 詞
gacchati (行 く)を 限 定 して い る。
【5】 否 定 辞
(例 文4) devadatto vanalh na gacchati. デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 森 に 行 か な い。
こ の 例 文 に お い て、naは 否 定 と い う意 味 で 動 詞gacchati(行 く)を
限 定 して い る と考 え られ る。
【6】 接 続 詞
(例 文5)atha devadatto vanalh gacchati. そ れ か ら デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 森 に 行 く。
aPi, ca, atha, hi等 の 接 続 詞 が あ る が、 こ の 例 文 のatha(そ れ か ら)
の 場 合 は 「さ そ 」 の ニ ュ ァ ン ス が あ る の で、 動 詞gacchati (行 く)を
限 定 し て い る と い う よ り も、 む し ろ 文 全 体 を 限 定 して い る と 見 る 方 が よ り正 確 か も し れ な い が、 他 の 接 続 詞 と 同 じ よ う に 扱 う こ と に す る。
【7】 関 係 代 名 詞
(例 文6) yad vanam devadatto gacchati tad nrpah pasyati. デ ー ヴ ァ ダ ッ タ が 行 く森 を 王 は 見 る。 こ の 例 文 に お け るyat…tat… の よ うな 関 係 代 名 詞 は、 二 つ の 文 の 単 語 を 有 機 的 に 結 合 し て お り、 動 詞 を 限 定 し て い る わ け で は な い と 言 カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 え る か も しれ な い が、 別 の 考 え 方 を す れ ば 七a七な ど は、「デ ー ヴ ァ ダ ッ タ が 行 く と こ ろ の そ の 森 を 」 と い う内 容 を 指 し て お り、 そ れ をnrpah (王)はpayati(見 る)の で あ る か ら、 「見 る 」 と い う動 作 の 内 容 を よ り 明 白 に し て い る と い う理 由 で、 動 詞pasyatiを 限 定 し て い る も の と して 扱 う こ と に す る。 【8】iti
(例 文7) devadatto vanam gacchatlti sroti nrpah. デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 森 に 行 く と 王 は 聞 く。
こ の 例 文 のiti(-と)と い う よ うな 場 合 は、 動 詞Srpoti(聞 く)
の 内 容 を 明 白 に して い る の で、 動 詞 を 限 定 し て い る も の とす る。
(例 文8)iti devadatto vanalh gacchati.
以 上 の よ うな わ け で デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 森 に 行 く。 こ の 例 文 のiti (以 上 の よ うな わ け で)と い う よ う な 場 合 は、 接 続 詞 に 近 い も の と な り、 動 詞 を 限 定 して い る と言 うよ り も文 全 体 を 限 定 す る も の か も しれ な い が、 【6】 の 接 続 詞 の 取 扱 に 準 拠 し て、 動 詞 を 限 定 す る も の と し て 処 理 す る こ と に す る。 【9】 疑 問 代 名 詞 上 に 挙 げ た も の の 中 に は、 動 詞 を 限 定 し て い る と は 考 え に く い も の も あ る。 し か し、 前 に 述 べ た よ うに、 こ の 分 析 方 法 で は、 動 詞 を 文 の 基 幹 に 据 え る こ と に して い る。itiや yathaが 動 詞 と 同 じ レベ ル に あ っ て は 処 理 が 複 雑 に な る の で あ る。 も と も と動 詞 を文 の 基 幹 に 置 く と い う こ と 自 体 が、 作 業 仮 説 で あ っ た。 そ こ で、 上 に 挙 げ た 【6】 か ら 【9】 と い う動 詞 と の 限 定 関 係 が 【1】 か ら 【5】 ほ ど に は 明 ら か で は な い も の も、 【1】 か ら 【5】 の も の と 同 じ レ ベ ル に あ る と い う作 業 仮 説 を 設 け て 処 理 す る こ と に す る。 た だ し、 分 析 の 途 中 で、 こ の 作 業 仮 説 の 妥 当 性 が 疑 わ れ る よ うな 事 態 が 生 じ た と き に は 訂 正 が 容 易 で あ る よ うな 方 法 で、 処 理 を 進 め る こ と に す る。 の 動 詞 と結 び つ か な い も の
【10】 感 嘆 詞
【11】 呼 格 の 語
(例 文9)nrpa devadatto vanam gacchati. 王 よ。 デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 森 に 行 く。 こ れ は 明 ら か に 動 詞 と は 無 関 係 に、 遊 離 した 状 態 で 存 在 す る。 こ の よ うな 語 は、 動 詞 と の 限 定 関 係 を 考 え ず、 独 立 し た 存 在 と して 処 理 す る こ と に す る。 (ニ)名 詞 を 限 定 す る も の 上 に 挙 げ た 【1】 か ら 【11】 ま で の 語 の 他 に、 形 容 詞 と い・う 要 素 も あ る。 形 容 詞 は 名 詞 に 懸 か る と い う言 い 方 をす る が、 こ こ で は、 形 容 詞 は 名 詞 を 限 定 す る と い う。 【12】 形 容 詞
(例 文10) devadatto vanam pavitralh gacchati. デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 神 聖 な 森 に 行 く。 こ の 文 で は、pavitram(神 聖 な)と い う形 容 詞 がvanam(森)と い う名 詞 を 限 定 し て い る。pavitramは 動 詞gacchatiと は 直 接 の 限 定 関 係 を 持 た な い。 つ ま りdevadattahやvanamと は 動 詞 と の 関 係 の 仕 方 に 相 違 が あ る わ け で あ る。 こ の 他 に、 名 詞 を 限 定 す る も の に は、 形 容 詞 的 な 働 き を す る 分 詞 や 語 合 成、 そ し て、 前 に 述 べ た よ う に、 主 語 と な る 名 詞 に 対 す る エ ピ テ ー ト等 も あ る。 (ホ)〈 直 接 限 定 要 素 〉 上 に 述 べ た よ うに、 語Aが 語Bを 限 定 して い る場 合、 語Aは 語Bの く 直 接 限 定 要 素 〉 で あ る と い う。 ま た そ の 場 合、 語Bは 語Aの 〈 被 限 定 要 素 〉 で あ る と い う。
(例 文10) devadatto vanampavitram gacchati. デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 神 聖 な 森 に 行 く。 こ の 例 文 の 場 合、devadattah(デ ー ヴ ァ ダ ッ タ)はgacchati(行 く)の カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 〈 直 接 限 定 要 素 〉 で あ り、 ま たvanam(森)もgacchatiの く 直 接 限 定 要 素 〉 で あ る。 さ ら に、pavitralh(神 聖 な)はvanamの く 直 接 限 定 要 素 〉 で あ る。 こ の よ う に、 動 詞 以 外 の 語 に 対 し て も、 そ の 語 を 限 定 す る も の は く 直 接 限 定 要 素 〉 と 呼 ぶ。 〈 直 接 限 定 要 素 〉 と な る 語 は た だ 一 つ の 語 の み を 限 定 す る こ と に す る。 し か し、 動 詞 が 二 つ あ る よ うな 文 に お い て、 一 つ の 副 詞 が そ の 二 つ の 動 詞 両 方 を 限 定 す る よ うな 場 合 は、 同 じ 副 詞 が 一 つ 省 略 さ れ て い る と考 え る。 こ の よ うに、 〈 直 接 限 定 要 素 〉 と く 被 限 定 要 素 〉 と の 間 に は、 原 則 と し て 一 対 一 対 応 が 成 り立 っ て い る と す る。 そ して、 そ れ が 成 り立 た な い 場 合 で も、 省 略 等 の 可 能 性 を設 定 す る こ と が で き れ ば、 そ の よ うに して 処 理 す る こ と に す る。 (4)〈 限 定 距 離 〉 (イ)〈 限 定 距 離 〉
(例 文1)devadatto vanalh gacchati. デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 森 に 行 く。 こ の 例 文 に お い て、 最 も 基 幹 に な る の は 動 詞gacchati(行 く)で あ る と 設 定 す る。 主 語deadattab(デ ー ヴ ァ ダ ッ タ)と 目的 語vanam(森)と は 各 々 別, 々 に 動 詞 を 限 定 して い る。 こ の よ う な と き、devadattahとvanam と はgacchatiの く 直 接 限 定 要 素 〉 で あ る と い う。 そ して、devadattahと vanamと はgacchatiの く 直 接 限 定 要 素 〉 で あ る とい う点 に お い て 同 値 で あ る。 こ の よ う な 同 値 の 関 係 に あ る 語 を示 す た め に、 こ こ で、 〈 限 定 距 離 〉 と い・う術 語 を 設 定 す る。 こ の 場 合、 「devadattahとvanamと は 同 じ 〈 限 定 距 離 〉 に あ る 」 と い う こ と に す る。
(例 文10)devadatto vanam pavitram gacchati. デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 神 聖 な 森 に 行 く。
こ の 例 文 の 場 合、 文 の 基 幹 に 動 詞gaechatiが あ り、 そ の く 直 接 限 定 要
段 階 の く 直 接 限 定 要 素 〉 と して、vanamを 限 定 す る 形 容 詞pavitram(神 聖 な)が あ る と い・うよ うな く 限 定 〉 の モ デ ル を 考 え る。 つ ま り、 こ の 文 は 三 つ の 段 階 の く 限 定 〉 か ら成 っ て い る と 見 る の で あ る。 devadattahとvanamは と も にgacchatiの く 直 接 限 定 要 素 〉 で あ る こ と に お い て 同 値 で あ る。 し か し、pavitramはvanamの く 直 接 限 定 要 素 〉 で あ り、 こ の 点 に お い て、 つ ま り動 詞 と の 関 係 に お い て、pavitramはdeva-dattahやvanalhと 同 値 と は 言 え な い の で あ る。 そ れ 故 に、devadattahや vanalh よ り も 下 の 限 定 段 階 に 置 く の で あ る。 こ の よ う に、 こ の 分 析 で は 一 つ の 文 の 中 に い くつ か の 限 定 の 段 階 を 設 定 す る。 こ れ を く 限 定 距 離 〉 と呼 ぶ こ と に す る。 (ロ)〈 限 定 距 離 〉 の 記 号 化
(例 文10) devadatto vanam pavitram gacchati. デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 神 聖 な 森 に 行 く。 こ の 例 文 に お い て 一 番 始 め に く 限 定 〉 が 行 な わ れ る の は、 動 詞gacchati (行 く)に 対 す るdevadattah(デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は)とvanah(森 に)と で あ る。 こ れ を く 第1次 限 定 〉 と呼 ぶ こ と に す る。 そ してvanalh(森 に) を 限 定 す る 形 容 詞pavitram(神 聖 な)の 働 き は く 第2次 限 定 〉 で あ る と い う こ と に す る。 こ れ は つ ま り、pavitram(神 聖 な)が 動 詞gacchati(行 く)か ら 見 て2番 目 の く 限 定 〉 で あ る こ と を 示 して い る。 こ れ ら の く 第n 次 限 定 〉 と い う術 語 は、 混 乱 を避 け る た め、 動 詞 に 対 して の み 用 い る こ と に す る。 つ ま り動 詞 か ら 見 て 第n番 目 の く 限 定 〉 を く 第n次 限 定 〉 と い うの で あ る。 そ し て、 動 詞 と 〈 第n次 限 定 〉 を 行 う語 と の 距 離 を く 限 定 距 離 〉 と呼 び、 こ れ をD(n)と 書 き 表 す こ と に す る。 こ の 例 文 に お い て は、 devadattah(デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は)とvanalh(森 に)と が く 第1次 限 定 〉 で あ り、 〈 限 定 距 離 〉 はD(1)で あ る。 そ し て、pavitram(神 聖 な) は く 第2次 限 定 〉 で あ り、 〈 限 定 距 離 〉 はD(2)で あ る。 さ ら に 動 詞 gacchati(行 く)は く 第0次 限 定 〉 で あ り、 〈 限 定 距 離 〉 はD(0)で あ カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 る こ と に す る。 つ ま り、 ど の よ うな 場 合 も、 動 詞 自 体 の く 限 定 〉 は く 第0 次 限 定 〉 で あ り、 動 詞 自体 と の く 限 定 距 離 〉 はD(0)で あ る と い うこ と に 決 め て お く。
(例 文11) devadatto yuva vanam pavitram gacchati.
若 い デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 神 聖 な 森 に 行 く。 こ の 例 文 も(例 文10)と 同 じ く、 三 つ の く 限 定 〉 か ら成 っ て い・る。 上 に 述 べ た(例 文10)の 例 の 他 に、 主 語devadattah(デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は)を 限 定 す る 形 容 詞yuva(若 い)がpavitramと 並 ん で く 第2次 限 定 〉 を行 な っ て い る 点 が 異 な っ て い る。 す な わ ち、 <第0次 限 定>gacchati(行 く)<限 定 距 離>D(0) <第1次 限 定>devadattah(デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は)<限 定 距 離>D(1) vanalh(森 に)〈 限 定 距 離>D(1) 〈 第2次 限 定 〉yuva(若 い)<限 定 距 離>D(2) pavitram (神 聖 な)<限 定 距 離>D(2) と な っ て い る の で あ る。 そ して、yuvzはdevadattahに 対 す る く 直 接 限 定 要 素 〉 で あ り、pavitralhはvana血 に 対 す る く 直 接 限 定 要 素 〉 で あ る が、 と も に く 第1次 限 定 〉 を 行 な う語 を 限 定 し て い る と い う点 で 同 じ性 質 を 持 っ て い る。 こ の よ うな 場 合、yuvaとpavitramと は く 同 値 関 係 〉 に あ る と い う こ と に す る。 〈 同 値 関 係 〉 に あ る 複 数 の 語 は、 各 々 動 詞 か ら の く 限 定 距 離 〉 が 等 しい も の で あ る。 こ の 場 合 は、yuvaとpavitramと は と も に D(2)と い う等 しい く 限 定 距 離 〉 を 有 し て い る こ と に な る の で あ る。 以 下 の 分 析 で は、 文 に 含 ま れ る 語 は、 こ の よ う に して 〈 直 接 限 定 要 素 〉 と い う観 点 か ら分 類 さ れ、 〈 限 定 距 離 〉 を 明 ら か に さ れ て 再 構 成 さ れ る の で あ る。 (5)〈 枝 分 か れ 図 〉
(例 文11) devadatto yuva vanam pavitralh gacchati.
こ の例 文 のく 限 定距 離 〉 と各 語 の関 係 を有 機 的 に図 示 して み よ う。 D(0)D(1)D(2) gacchati devadattah yuva vanam pavitram こ の よ う な 図 を く 枝 分 か れ 図 〉 と 呼 ぶ こ と に す る。 (6)〈 主 語 句 集 団 〉
(例 文11) devadatto yuva vanalh pavitram gacchati.
若 い デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 神 聖 な 森 に 行 く。 こ の 例 文 の く 枝 分 か れ 図 〉 は 下 の 通 りで あ っ た。 D(0)D(1)D(2) gacehati devadattah yuva vanam pavitram こ の 図 に お い・て、 単 語 か ら単 語 に の び て い・る 線 を く 枝 〉 と 呼 ぶ。 こ の 中 の、 主 語devadattah(デ ー ヴ ァ ダ ッ タ)と そ れ を修 飾 す る 形 容 詞 で あ るyuva(若 い・)と を 含 む く 枝 〉 を、 〈 主 語 句 集 団 〉 と 呼 ぶ こ と に す る。 こ の く 枝 〉 は、1本 で あ る と は 限 ら な い・。例 え ば、
(例 文12)devadatto yuva caturo vanalh pavitram gacchati.
若 く て 賢 い・デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 神 聖 な 森 に 行 く。 D(0)D(1)D(2) gacchati カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 devadattah yuvd caturah vanam pavitraih
こ の 文 で はyuva(若 い)とcaturah(賢 い)と の 二 つ の 形 容 詞
がdeva-dattah の く 直 接 限 定 要 素 〉 と な っ て い る。 こ の よ う に、 一 つ の 単 語 の く 直
接 限 定 要 素 〉 の 数 ほ どく 枝 〉 は で き る の で あ る。 こ の 例 文 に お い・て く 主 語
句 集 団 〉 の く 枝 〉 はD(2)で2本 に な っ た が、 〈 主 語 句 集 団 〉 の く 枝 〉 が
D(1)で 複:数:にな る こ と も あ る。 例 え ば、
(例 文13) devadatto yuva caturah pita ca tasya vanam pavitram gacchatah 若 く て 賢 い・デ ー ヴ ァ ダ ッ タ と、彼 の 父 と は 神 聖 な 森 に 行 く。 D(0)D(1)D(2) gacchatah devadattah yuva caturah ca pita tasya vanam pavitrarh こ の 例 文 で は、gacchatah(行 く)の く 直 接 限 定 要 素 〉 は 二 つ の 主 語 で あ
るdevadattah (デ ー ヴ ァ ダ ッ タ)とpita(父)と、 目的 語vanam (森)
と、 接 続 詞caと の 四 つ と な る。 こ れ ら の 四 つ の 要 素 は く 同 値 関 係 〉 に あ
ッタ)とpita(父)と は、 と もに主 語 であ る とい う 性 質 に よ っ て、 他 の く 同値 関 係 〉 に あ る語 とは 区別 され る。 こ の よ うな場 合、 こ の二 つ の 語 は く 並 列 関 係〉 に あ る と言 うこ とに す る。 この よ うな場 合 に は、D(1)で く 主 語 句 集 団〉 の く枝 〉 が2本 に な る。 こ の例 とは別 の形 で、 一 見 す る と主 語 が二 つ以 上 あ る よ うに 見 え る場 合 が あ る。 そ れ は主 語 とな る名 詞 に対 す る エ ピテ ー トが複 数 存 在 して い る場 (1) 合 で あ る。 例 え ば、 こ の 後 に 出 て く る(例 文17)の 中 に 「守 護 者 た る 王 は 」 と い う句 が あ る。 こ の 原 文 で は、 「守 護 者(Sarapyah)」 と 「王(nrpatir)」 と が 共 に 主 格 の 名 詞 と し て 現 れ て い・る の で、 あ た か も主 語 が 二 つ あ る よ う に 見 え る。 しか し、 「王 」 と 「守 護 者 」 と は そ の 指 す 内 容 が 一 体 の も の で あ る。 こ れ は 上 の 例 の 「デ ー ヴ ァ ダ ッ タ 」 と 「父 」 と い・う〈 並 列 関 係 〉 に あ る 二 つ の 主 語 と は 性 格 を 異 に す る も の で あ る。 こ の 「守 護 者 」 と い・う語 の よ うに エ ピ テ ー トの よ うな 働 き を す る 語 は、 「王 」の よ うな 核 と な る 主 語 を 限 定 し て い・る と み な す こ と に す る。 そ し て、 エ ピ テ ー トが 存 在 し て い・る の に、 核 と な る 主 語 名 詞 が 存 在 し な い・よ うな 場 合 は、 そ れ が 省 略 さ れ て い・る と み な す。 こ の よ うに、 一 つ の く 主 語 句 集 団 〉 に つ い て、 そ の く 主 語 句 集 団 〉 を 構 成 す る 要 素 の 中 で 核 と な る 語 が、 動 詞 に 対 し て く 第1次 限 定 〉 を 行 な う主 語 で あ る と定 め る の で あ る。 (7)〈 補 語 句 集 団 〉
(例 文11) devadatto yuva vanah pavitram gacchati.
若 い デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 神 聖 な 森 に 行 く。
こ の 例 文 の く 枝 分 か れ 図 〉 は 下 の 通 りで あ っ た。
D(0)D(1)D(2)
gacchati
(注)(1) tato mrgendrasya mrgendragmai vadhaya vadhyasya saram sarapyab/ jatabhisango nrpatir nisahgad uddhartum aicchat prasabhoddhrtarih//
カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 devadattah yuva vanam pavitrazn 目 的 語vana血(森)と そ れ を 修 飾 す る 形 容 詞 で あ るpavitra血(神 聖 な) と を 含 む く 枝 〉 を く 補 語 句 集 団 〉 と呼 ぶ こ と に す る。 こ の よ う に く 補 語 句 集 団 〉 と い う場 合 の 「補 語 句 」 と は、 普 通 に 言 う補 語 だ け で は な く、 目的 語 や そ れ ら を 限 定 す る 形 容 詞、 そ し て 副 詞 な ど も 含 む も の と す る。(例 文 11)で は く 補 語 句 集 団 〉 の 〈 枝 〉 は1本 で あ る が、 〈 主 語 句 集 団 〉 と 同 じ よ う に 複 数 に な り得 る。 例 え ば、
(例 文14) devadatto yuva vanam nadim ca gacchati.
若 い デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 森 と川 に 行 く。 D(0)D(1)D(2) gacchati devadattah yuva vanam nadirim ca こ のく枝 分 か れ 図 〉 で は、vanam (森 に)とnadim (川 に)と の 二 つ が gacchatiに 対 す るく 補 語 句 集 団 〉 で あ り、2本 の く枝 〉 に な っ て い る。 つ ま り、vanam と nadlm とは く並 列 関 係〉 に あ る。 ま た前 述 の 「(3)<直 接 限 定 要 素 〉(ロ)動 詞 を限 定 す る もの」 の 項 で述 べ た よ うに、 接 続 詞ca も動 詞 の〈 直接 限 定要 素 〉 とす る の で、 こ のく枝 分 か れ 図 〉 で も、1本 の く枝 〉 を作 って い る。 しか し、 このく 枝 〉 はく 補 語 句 集 団 〉 に属 す る もの で は な い。 つ ま り、vanamやnadimに 対 して このcaは く 同 値 関 係 〉 に は あ る けれ ど もく 並 列 関 係 〉 に は な い の で あ る。 この場 合 の く 補 語 句 集 団〉
-106-は、vanam と nadilh と の 二 つ で あ る。 た だ、 集 団 の 要 素 が 各 々 一 つ ず つ
し か な い の で、 集 団 と は 思 い に くい が、 こ れ も 最 小 の 集 団 で あ る。 集 団 の
要 素 を 増 や し た 例 は、 例 え ば、
(例 文15) devadatto yuva vanam visalam pavitram nadlm ca ga-cchati. 若 い デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 広 くて 神 聖 な 森 と川 に 行 き ま し た。 D(0)D(1)D(2) gacchati devadattah yuva vanam visalam. pavitrarn nadim ca この く枝 分 か れ 図 〉 で はvana血(森 に)か ら さ らに く枝 〉 が分 か れ て い・ る。 これ は、vanamの く 直 接 限定 要 素 〉 がvisalam (広 くて)とpavitram
(神 聖 な) との二 つ で あ る か らで あ る。 この場 合、vanamの く補 語 句 集 団 〉 は三 つ の要 素 を含 ん で い る。 そ して、visalam と pavitralh とは く 並 列 関 係〉 にあ る こ と に な る。 この よ うに く補 語 句 集 団 〉 や く 主 語 句 集 団 〉 はD(1)で 決 定 され る。 そ こでD(1)に あ る単 語 を集 団 の代 表 と して、 「vanalh の く 補 語 句 集 団〉 」 とか「nadih のく 補 語 句 集 団 〉 」 と か 「devadattahの く 主 語 句 集 団〉 」 と い うよ うな 呼 び 方 をす る。 〈 補 語 句 集 団〉 や く主 語 句 集 団〉 とい うの は、 別 の 言 い・方 をす れ ば、D(1)以 下 で結 ばれ るく 直 接 限定 要 素 〉 の 集 ま りで あ る。 ま た、〈 主 語 句 集 団〉 や く 補 語 句 集 団〉 を構 成 す る 諸単 語 や 句 を、そ れ ぞ カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 れ 〈 主 語 句 集 団構 成 要 素 〉 とく 補 語 句 集 団 構 成 要素 〉 と呼 ぶ こ とにす る。 (8)要 素 の記 号 化 以 上 の よ うに、「この単 語 は く主 語 句集 団 構 成 要 素〉 で あ り、そ の単 語 は く 補 語 句 集 団構 成 要 素 〉 で あ る 」 とい・うよ うな、文 章 の構 成 要 素 を分 類 整 理 す る操 作 が、 文 の要 素 の 抽 象 化 で あ る とす れ ば、 そ の 抽 象 化 され た要 素 を、 今 度 は 記 号 化 して、 カー ヴ ィヤ の文 体 構 造 の記述 を簡 略 化 しな け れ ば な らな い・。そ こでXを サ ンス ク リッ トの各 単 語 とす る と、 x={xS, V, V*, C, J, N, R, Q, 1, v#} S: 主 語 V: 動 詞 V*: 準 動 詞 が述 語 動 詞 の よ うに扱 われ て い る もの C: 補 語 句
J: api, ca, atha, hi, etc. (D(1)に あ る もの の み) N: na etc. R: 関 係代 名詞 Q: iti I: 疑 問代 名 詞 kim etc. V#: 呼格 あ るい は感 嘆 詞 の よ うな動 詞 か ら独 立 した もの た だ し、 これ らの記 号 は く 第0次 限 定〉 とく 第1次 限 定 〉 とに お い て 決 定 され る も ので あ り、〈 第2次 限定 〉 以 下 の 要 素 は、〈 第1次 限 定〉 の記 号 をそ の ま ま受 け継 ぐこ と にす る。 例 え ば、 〈 第2次 限 定〉 を行 な う接 続 詞 の記 号 は、Jで はな く、 そ の接 続 詞 が く枝 〉 で つ な が って い る く 第1次 限 定 〉 の語 の記 号 と同 じも の と な るの で あ る。 こ の記 号 を用 い て、 上 に挙 げ た く 枝 分 かれ 図 〉 を 記 号 化 して み よ う。() の中 に記 号 を入 れ てみ る。
(例 文11) devadatto yuva vanam pavitram gacchati. 若 い デ ー ヴ ァダ ッタ は神 聖 な森 に行 く。
-104-D(0) D(1) D(2) gacchati (V) devadattah (S) yuva (S) vanarn (C) pavitram (C) で は、 こ の く 枝 分 か れ 図 〉 か ら サ ン ス ク リ ッ ト を 除 き、 記 号 の み に し て み る。 D(0)D(1)D(2) V S S C C こ こ で、 こ の〈 枝 分 かれ 図〉 に はSやCが 二 つず つ あ る。 これ ら を区別 す るた め に、 これ らの各 々 に番 号 をつ け る こ とにす る。Xを サ ン ス ク リ ッ トの 単語、 また はそ の記 号 化 した も の、 そ してzを そ の番 号 とす る と、 Xz z=(xy) x: 語 句Xの く被 限 定 要 素 〉 のz。 y: 語 句Xに 対 してく 並 列 関 係 〉 に あ る複 数 のく 直 接 限定 要 素 〉 が存 在 す る と き、各 々 の く 直接 限 定 要 素 〉 が そ の何 番 目の枝 に位 置 す る か を示 す。 〈 直 接 限 定 要 素 〉 が一 つ の場 合 は、1で あ る。 ま た、 こ の何 番 目の枝 とい うの は、 実 際 の文 の上 で、 そ の語 が現 れ て くる順番 とは無 関 係 に して お く。分 析 の結 果 に影 響 しな い か らで あ る。 X=V#の 場 合:XがV#で あ る揚 合 は、zは そ の文 に現 れ る何 番 目 の V#で あ る か を示 す こ とに す る。 カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 具 体 的 に上 の例 文 に番 号 をつ けて み よ う。 D(0)D(1)D(2) V1 511 5111 C11 C111 こ こ で、 例 え ばV1と はD(0)に あ る1番 目 の 動 詞 で あ り、S11と はD (1)に あ っ てV1を 直 接 限 定 す る1番 目 の 主 語 句 で あ り、S111と はD(2) に あ っ てS11を 直 接 限 定 す る1番 目 の 主 語 句 で あ る。 ま た、C11と はD (1)に あ っ てV1を 直 接 限 定 す る1番 目 の 補 語 句 で あ り、C111と はD(2) に あ っ て、C11を 直 接 限 定 す る1番 目 の 補 語 句 で あ る。 こ の よ うな 番 号 は、 繁 雑 に 思 わ れ る か も しれ な い・が、 文 の 中 の 各 語 を 完 全 に 個 別 化 す る た め に は 必 要 な も の で あ る。 こ の 分 析 で は、 文 中 の 各 語 を 個 別 化 し、 座 標 軸 に あ る 点 と して 扱 うの で あ る。 そ の 座 標 軸 が 〈 枝 分 か れ 図 〉 な の で あ る。 今 後、 単 に く 枝 分 か れ 図 〉 と い・え ば、 こ の 記 号 化 し た 方 の 図 を 指 す こ と に す る。 ま た、Zの 桁 数 か ら1を 引 い・た 数nは、 そ のXが く 第n次 限 定 〉 に あ る こ と を 示 し て い る。 他 の 例 文 に つ い て も 見 て み よ う。
(例 文12) devadatto yuva caturo vanam pavitram gacchati. 若 くて 賢 い デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 神 聖 な 森 に 行 く。 D(0)D(1)D(2) gacchati devadattah yuva caturah
vanam pavitrarh D(O) D(1) D(2) Vi 511 Sill Sl12 C11 C111 こ こ で はD(2)に 二 つ の く 主 語 句 集 団 構 成 要 素 〉 が あ る。 これ は、yuva (若 い)とcaturah (賢 い)と い うdevadattah (デ ー ヴ ァ ダ ッ タ)を 直 接 限 定 す る 二 つ の 形 容 詞 で あ る。 こ の 二 つ は く 並 列 関 係 〉 で あ る か ら、2本 の く 枝 〉 と な っ てS11か ら出 て い・る の で あ る。 そ して、S111は そ の1番 目 の く 枝 〉 で あ る か ら、Sxyの う ち のyが1で あ り、 も う一 つ 前 の く 限 定 距 離 〉 で あ るD(1)のS11のzの11を そ の ま まxと し て い る の で あ る。 ま た、S112は そ の2番 目 の 〈 枝 〉 で あ る か ら、Sxyの うち のyが2で あ り、 も う一 つ 前 の く 限 定 距 離 〉 で あ るD(1)のS11のzの11を そ の ま まxと し て い る の で あ る。 で は、devadattahと い・う主 語 句 を 限 定 す る 語 句 が く 並 列 関 係 〉 で な い・場 合 を 考 え て み よ う。
(例 文16) ativa yuva devadatto vanam pavitram gacchati.
とて も 若 い・デ ー ヴ ァ ダ ッ タ は 神 聖 な 森 に 行 く。 D(0)D(1)D(2)D(3) gacchati devadattah yuva カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密, 教 文. 化 ativa vanam pavitratn D(0) D(1) D(2) D(3) vi 511 Sill 51111 C11 0111 こ こ で はdevadattahを 限 定 す るyuvaをativa(と て も)が さ ら に 限 定 して い る の で、atia はD(3)と な り、 そ の 記 号 はS1111で あ る。 以 上 で く 枝 分 か れ 図 〉 の 記 号 化 と 番 号 付 け を 説 明 し た の で、 今 度 は そ れ を 実 際 の カ ー ヴ ィ ヤ で 試 し て み よ う。 (例 文17)『 ラ グ ヴ ァ ン シ ャ 』2. 30
tato mrgendrasya mrgendragami vadhaya vadhyasya saramA saranyah /
jatabhisango nrpatir nisangad uddhartum aicchat pra-sabhoddhrta-rih // 歩 き方 が ライ オ ンで あ り、力 に よ って敵 が滅 ぼ され て お り、 屈 辱 感 を生 じた、 そ の よ うな守 護 者 た る王 は、 そ の時、 殺 され るべ き で あ る ラ イ オ ン の殺 害 の た め に、 矢 入 れ か ら矢 を引 き出 す こ とを しよ う と しま した。 D(0)D(1)D(2)D(3) し よ う と し ま し た (aicchat)
王 は (nrpatir) 歩 き 方 が ラ イ オ ン で あり(*) (mrgendragami) 力 に よ つ て 敵 が 滅 ぼ さ れ て お り(*) (prasabhoddhrtarih) 屈 辱 感 を 生 じ た(*) (jatabhisango) 守 護 者 た る (舌arapyah) そ の 時 (tato) 殺 害 の た め に (vadhaya) ラ イ オ ン の (mrgendrasya) 殺 さ れ る べ き (vadhyasya) 引 き 出 す こ と を (uddhartum) 矢 を (6ara血) 矢 入 れ か ら (nisangad) カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教, 文 化 D(0) D(1) D(2) D(3) vi S11 S111 (*) 5112 (*) S 113 (*) S 114 J11 C11 C111 C 1111 C12 C121 C1211 さて、 この く 枝分 か れ 図 〉 の 中、(*)印 の付 い た 箇 所 は 語 合 成 に な っ て い る。 こ こで は 語 合成 の こ と を 考 慮 しな い で く枝 分 かれ 図〉 を作 っ た が、 実 際 の カー ヴ ィヤ で は 語 合成 が多 用 され る こ とが多 い。 次 の 節 で語 合 成 の表 記 法 を説 明 して お き た い・。 (9)語 合 成 の記 号 化 カ ー ヴィ ヤ で は、 限 られ た スペ ー ス の中 にで きる だ け た くん の 詩 的 情 報 を盛 り込 ま な けれ ば な らな い・。かつ、 韻 律 の 制 約 を大 き く受 け る。 こ の よ うな状 況 の 中 で、 条 件 を満 た しつ つ 詩 作 を行 うた め に、 語 合 成 が多 用 され る。 語 合 成 の用 い方 自体 でそ の カー ヴ ィ ヤの 出来 具 合 が左 右 され る とい っ て も過 言 で は ない・。こ の よ うな語 合 成 の使 用 法 の分 析 は第2章 で扱 う。 こ こ で は、 そ の記 号 化 の方 法 につ い・て 述 べ て お きたい・。そ れ は、<枝 分 か れ 図 〉 の中 に語 合 成 の記 号 を書 き込 んで、 よ り正 確 に カー ヴ ィ ヤ の構 造 を記
-98-号 化 す る た め で あ る。 ま ず、 各 種 の 語 合成 の記 号 を示 して お く。 B: bahuvrihi T: tatpurusa g: karmadharaya D: dvandva G: dvigu A: avyayibhava E: そ の 他 の 特 殊 な 語 合 成 こ れ ら の 記 号 を使 っ て 語 合 成 を ど の よ うに 表 記 す る の か と 言 え ば、 例 え ば、
(例 文18) tuhinasuklagajo vanam gacchati. 雪 の よ う に 白 い ゾ ウ が 森 に 行 く。 こ の 例 文 の tuhinasuklagajah(雪 の よ うに 白 い ゾ ウ)は 語 合 成 で あ る。 こ れ は、tuhinaとsuklaが カ ル マ ダ ー ラ ヤ を 形 成 し、 さ ら に そ れ とgajah と が カ ル マ ダ ー ラ ヤ を形 成 す る と い う、 二 つ の 階 層 構 造 を 持 つ 複 合 的 な 語 合 成 に な っ て い る。 こ の よ うな 語 合 成 を<複 合 型 語 合 成>と 呼 ぶ こ と に す る。 こ れ を 図 示 す る と、 tuhina-sukla-gajah K4 K2 と い う構 造 に な っ て い る。 こ れ を<語 合 成 の 枝 分 か れ 図>と 呼 ぶ こ と に す る。 こ の<語 合 成 の 枝 分 か れ 図>の 内 容 を 詳 し く説 明 し て み よ う。tuhina (雪)とsukla(白 い)と は 【名 詞(n)+形 容 詞(a)】 型 の カ ル マ ダ ー ラ ヤ で あ り、 こ の 型 の カ ル マ ダ ー ラ ヤ は 「nの よ うにaで あ る 」 と い う比 喩 カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 を 含 む 形 容 詞 に な る か ら、 こ こ で は 「雪 の よ う に 白 い・」 と い・う形 容 詞 に な る。 そ の 形 容 詞 とgajah(ゾ ウ)と が、 今 度 は 【形 容 詞(a)+名 詞(n)】 型 の カ ル マ ダ ー ラ ヤ を 作 る。 こ れ は、 単 に 「aな るn」 と い う意 味 に な る だ け で あ る か ら、 「雪 の よ う に 白 い・ゾ ウ 」 と な る わ け で あ る。 こ のtuhina-sukla と い う カ ル マ ダ ー ラ ヤ をK1と し、K1-gajah と い う カ ル マ ダ ー ラ ヤ をK2と す る。 こ れ を1行 に 書 く と、 K2(K1) と な る。 こ れ を く 語 合 成 の 構 造 図 〉 と呼 ぶ こ と に す る。 こ の 記 述 方 法 で は、 〈 複 合 型 語 合 成 〉 の う ち、 よ り大 き い 語 合 成、 す な わ ち そ の 内 部 に さ ら に 語 合 成 を 含 ん で い・る よ うな 語 合 成 を()の 外 側 に 書 く こ と に す る。 つ ま り、:K2と い・う よ り大 き な 語 合 成 の 中 にK1と い・う よ り小 さ な 語 合 成 が 含 ま れ て い・る こ と を、:K2(:K1)と い・う表 記 は 示 して い・る の で あ る。 実 際 に く 語 合 成 の 構 造 図 〉 を 書 く時 は、K1や:K2の よ う に 記 号 の 後 に 数 字 を 加 え る こ と は し な い・。同 じ記 号 が た く さ ん 並 ん だ と し て も、()の 内 に あ る か 外 に あ る か に よ っ て、 ど の 記 号 の 語 合 成 が よ り大 き い・か が 判 断 で き る か ら で あ る。 こ の よ う な 表 記 方 法 を 用 い・る こ と に よ っ て、 カ ー ヴ ィ ヤ の 語 合 成 の 構 造 を モ デ ル 化 す る こ と が 可 能 で あ る。 す な わ ち、 こ の く 語 合 成 の 構 造 図 〉 か ら前 述 の よ うな く 語 合 成 の 枝 分 か れ 図 〉 を 復 元 す る こ と が で き る の で あ る。 こ の よ うな 記 述 法 は、 前 述 し た よ うな 性 格 を も つ カ ー ヴ ィ ヤ の 文 体 を 把 握 す る 上 で 是 非 と も 必 要 な も の で あ る。 これ に よ っ て カ ー ヴ ィ ヤ の 複 雑 な く 複 合 型 語 合 成 〉 の 構 造 を 一 目 瞭 然 に し、 し か も他 の カ ー ヴ ィ ヤ と の 客 観 的 な 比 較 を 可 能 に す る か ら で あ る。 (1) こ こ で、 第2章 で サ ン プル に したマ ン ダ ソー ル碑 文 の カー ヴ ィ ヤ を例 に 挙 げ てみ よ う。 こ の碑 文 は カ ー ヴ ィ ヤ体 で 書 か れ て お り、 ま た 〈 複 合 型 語 合 成 〉 が多 用 され て い・る の で、 〈 語 合 成 の枝 分 か れ 図〉 や く 語 合 成 の 構 造 図〉 を作 る こ との効 用 を示 す の に よい・実 例 だか らで あ る。
-96-(2) マ ン ダ ソー ル碑 文 の第23詩 は19個 の 単 語 よ り成 り、3個 の パ フ ヴ リー ヒ が形 容 詞 とな って あ る語 に か か って い る。19個 の単 語 を1か ら19ま で の 数 字 に置 き換 え て、 この詩 をく 語 合 成 の枝 分 かれ 図 〉 に して み よ う。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 / 11 12 13 14 15 16 17 18 19 // T K D T T K T T K B B K B これ をく 語 合 成 の構 造 図 〉 にす る と、 B(T(T):K)B(DK:(T)):B(:K(T(T)K)) と な る。 〈 語 合 成 の枝 分 かれ 図 〉 を見 な くて も、 こ の〈 語 合 成 の構 造 図 〉 を見 れ ば、 こ の カ ー ヴ ィ ヤ の中 で最 も大 き な語 合 成 は三 つ のパ フ ヴ リー ヒ
(注) (1)J. F. Fleet, Mandasor stone inscription of Kumaragupta ahd
Bandh-uvarman. The Malaya years 493 and 529, Corpus Inscriptionum Indicarum, Vol. 3, Inscriptions of the Early Gupta Kings and their successors, No. 18 ; Plate XI. Calcutta, 1888, p. 82.
Revised by Devadatta Ramakrishna Bhandarkar, Mandasor inscription of Kumaragupta (1) & Bandhuvarman years 493 & 529, Archaeological Survey of India, Corpus Inscriptionum Indicarum, Vol. 3, Inscriptions of the Early Gupta Kings, New Delhi, 1981, p. 326.
(2) catussamudrambuvilolamekhalarh sumerukailasabrhatpayodharam / vanantavantasphutapuspahasinim kumaragupte prthivim prasasati //
カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 で あ る こ とが一 目で解 る。 また 語 合 成 は13個 用 い られ て お り、そ の 階 層構 造 は最 高4層 で あ る こ と も一 目で 解 るの で あ る。 最 も大 きな語 合 成 を知 る に は、 〈 語 合 成 の 構 造 図 〉 に お い て何 重 に も書 かれ て い る()の 完 全 に外 側 に あ る記 号 を見 れ ば よい。 上 の例 で は、()の 完 全 に外 側 に あ る、 す な わ ち、 どの()に も含 ま れ て い な い記 号 は三 つ のBだ け で あ る。 ま た、 用 い られ て い る語 合成 の数 を知 る に は、 〈 語 合 成 の構 造 図 〉 の中 に あ る記 号 の 数 を数 え れ ば よ い。 上 の例 で は、BやTやK等 の 記 号 は全 部 で13個 あ る か ら、語 合成 の数 も13に な る の で あ る。 そ して、 階 層構 造 につ い て 知 る に は、〈 語 合 成 の 構 造 図 〉 の 中 に 書 か れ て い る()の 数 に1を 加 え れ ば よ い。 上 の例 で三 重 に()が 書 かれ て い る所 は 語 合 成 が4層 に な って い るの で あ る。 こ の よ うに カー ヴ ィ ヤの 各 々 につ い て、 そ の 語 合成 の構 造 を一 目で 客 観 的 に理 解 で き る よ うな表 記 法 が く 語 合成 の構 造 図〉 な の で あ る。 これ を用 い た カ ー ヴ ィ ヤ文 体 の 分 析 の方 法 は 第2章 に 譲 り、 ここ で は た だ 「(8)要 素 の記 号 化 」 の 項 にお け る(例 文17)の く枝 分 かれ 図〉 の語 合 成 部 分 の表 記 を どの よ うに す るか を示 して お くに と どめ る。 (例 文17)『 ラ グ ヴ ァ ンシ ャ』2. 30
tato mrgendrasya mrgendragami vadhaya vadhyasya saram saranyah /
jatabhisango nrpatir nisangad uddhartum aicchat pra-sabhoddhrtarih // 歩 き方 が ライ オ ンで あ り、力 に よ って 敵 が 滅 ぼ さ れ て お り、 屈 辱 感 を生 じた、 そ の よ うな 守護 者 た る王 は、 そ の 時、 殺 され るべ き で あ る ライ オ ン の殺 害 の た め に、 矢 入 れ か ら矢 を引 き出 す こ とを しよ うと しま した。 D(0) D(1) D(2) D(3) vi 511
5111 (*) S112 (*) S113 (*) 5114 J11 C11 C111 C 1111 C12 C 121 C1211 この く枝 分 か れ 図 〉 の 中 の(*)印 が つ い たS111、S112、S113は 〈 主 語 句集 団〉 の 中 のD(2)に あ る語 句 で、 語 合 成 をそ の 中 に含 んで い る。 語 合 成 に な った語 句 の 中 の要 素 は 固定 化 され て い る か ら、 言 うまで も な く語 順 の分 析 に は 関 係 な い。 それ 故 に、 語 合 成 を含 む 語 句 をひ とか た ま りの も の、例 え ばパ フ ヴ リー ヒな らば 一 つ の形 容 詞 と して 扱 うこ とが可 能 で あ り、 ま たそ うす る方 が分 析 方 法 が よ り単 純 化 され る の で望 ま しい。 た だ し、別 の観 点 か ら分 析 を行 うとき、 語 合 成 を抽 出 しな けれ ば な らな い場 合 が あ る こ と を予 測 して、 そ れ が可 能 で あ る よ うな 記 述 方 法 を採 用 した い。 まず、 〈 枝 分 かれ 図 〉 で は語 合 成 を含 む 語 句 は一 つ の もの と して 扱 う。 た だ し、補 助 記 号 をつ け る こ と にす る。 前 述 のS111、S112、S113は 語 合 成 を含 む 語 句 で あ った が、 これ をSc111、Sc112、Sc113と い うよ うに、 〈c>を 数 字 の 前 に付 け る こ とに す る。 そ して 語 合 成 の 内容 は、 そ の後 必 要 に応 じて く 語 合 成 の 構 造 図 〉 を示 す こ と に して お け ば よ い で あ ろ う。例 え ば、 この場 合 な ら ば、 カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 王 は (nrpatir) 歩 き方 が ラ イ オ ン で あ り(*) (mrgendragami) 力 に よ っ て 敵 が 滅 ぼ さ れ て お り(*) (prasabhoddhrtarih) 屈 辱 感 を 生 じ た(*) (jata, bhisango) で あ っ た か ら、Sc111に つ い て は く 語 合 成 の 枝 分 か れ 図 〉 は mrgaindragami T B と な る。 こ れ をく 語 合 成 の 構 造 図 〉 に 直 す と、 B(T) と な る か ら、 こ れ を Sc111=B(T) と書 く こ と に し て、 〈 枝 分 か れ 図 〉 と は 別 に デ ー タ と し て 残 し て お け ば、 前 述 し た よ うな 必 要 が 生 じ た と き に 活 用 で き る の で あ る。 同 様 に し て prasabha uddhrta arih
T
Sc112 = B (T) jata abhisango B Sc113=B とい うよ うに語 合 成 を含 む語 句 の構 造 を記 述 す る こ とに す れ ば、 上 の(例 文17)の く 枝 分 か れ 図〉 は、 D(0) D(1) D(2) D(3) V1 Sll Sclll Sc112 Sc113 5114 ill oil 0111 01111 012 0121 C1211 Sclll=B(T) Sc112=B(T) Sc113 = B と書 い て初 めて 完 全 な もの とな ろ う。 カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 (10)〈 分 布 図 〉 以 上 に よ っ て、 カ ー ヴ ィ ヤ の要 素 に関 す る構 造 を記 号 化 した く 枝 分 かれ 図 〉 の作 り方 を説 明 した が、 これ は文 の 意 味構 造 を 明 らか に す る 図 で あ る。 そ して、 そ の 図 を座 標 軸 と して 各要 素 に座 標 を与 え た。 そ れ がXz, z=(xy)で 与 え られ る記 号 と数 字 で あ った。 これ に よ って、 カ ー ヴ ィヤ の 各 語 は抽 象 化 され た。 つ ま り、各 々 の意 味 を離 れ、 そ の文 法 的 な機 能 に よ って のみ 分 類 され て お り、か つ、 座 標 に よって 一 語 一 語 が 弁 別 可 能 な状 態 にお かれ て い る。 言 い換 え れ ば、 概 念 的 に結 ばれ た く 枝 分 かれ 図 〉 の各 語 を ば ら ば らに して も、 そ の概 念 的 な関 係 は復 元 可 能 だ とい うこ とで あ る。 この 状態 を利用 して、 現 実 の カ ー ヴ ィヤ をそ の語 順 の ま ま で記 号 に置 き 喚 え て み よ う。つ ま り、Xz, z=(xy)と い う記 号 に置 き換 え られ た サ ンス ク リッ トの単 語 を、 実 際 の文 章 の語 順 の ま まに 並 べ て み よ うとい うの で あ る。 まず(例 文16)を 見 よ う。
(例 文16) atlva yuva devadatto vanam pavitram gacchati. とて も若 い デ ー ヴ ァ ダ ッタは神 聖 な森 に行 く。 D(0) D(1) D(2) D(3) gacchati devadattah yuva ativa vanam pavitram D(0) D(1) D(2) D(3) v1 Sll Sill 51111
C11
C111
こ の 〈 枝 分 か れ 図 〉 を 見 る と、 文 中 のativaに はS1111と い う記 号 が 与
え ら れ て お り、devadattahに はS11が、yuvaに はS111が、vana血 に は
C11が、pavitralhに はC111が、gacchatiに はV1が そ れ ぞ れ 与 え ら れ て
い る。 そ こ で、 こ れ ら の 記 号 を現 実 の 文 で あ る
ativa yuva devadatto vanarim pavitram gacchati.
に あ て は めて み る と、 slill Sill Sll C11 C111 vi とな る。 これ をく 分 布 図 〉 と呼 ぶ こ とに す る。 〈分 布 図〉 の メ リッ トは、 1行 で あ りな が ら、 〈 枝 分 かれ 図 〉 の よ うな構 造 図 を再 現 で き る こ とで あ る。 しか も現 実 の 文 の 語 順 も表 して い・る。 そ こで、 これ を実 際 の カー ヴ ィ ヤ にあ て は めて み る。(例 文17)の く 枝 分 か れ 図〉 に 日本 語、 サ ンス ク リ ッ ト、記 号 の 情報 を書 き込 んだ もの をあ げて み よ う。 (例 文17)『 ラ グ ヴ ァ ン シ ャ』2. 30
tato mrgendrasya mrgendragami vadhaya vadhyasya
saram saranyah /
jatabhisango nrpatir nisangad uddhartum aicchat pra-sabhoddhrtarih // 歩 き方 が ライ オ ンで あ り、 力 に よ って 敵 が 滅 ぼ され て お り、 屈 辱 感 を生 じた、 そ の よ うな守 護 者 た る王 は、 そ の 時、 殺 され るべ きで あ る ライ オ ンの殺 害 の た め に、 矢 入 れ か ら矢 を引 き出 す こ と を し よ うと しま した。 D(0) D(1) D(2) D(3) し よ う と し ま し た (aiechat) (V1) カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 王 は (nrpatir) (S11) 渉 き方 が ライ オ ン で あ り (mrgendragami) (Scull) 力 に よっ て敵 が滅 ぼ され て お り (prasabhoddhrtarih) (Sc112) 屈 辱感 を生 じた (jatabhisan. go) (Se113)
守 護者たる (saranyah) (S114) そ の時 (tato) (J11) 殺 害 の た め に (vadhaya) (CU) ライオ ン の (mrgendrasya) (C111) 殺 され るべ き (vadhyasya) (C1111) 引 き 出 す こ と を (uddhartum) (C12) 矢 を (sararii) (C121) 矢 入れ か ら (nisaingad) (C1211) Sclll =B(T) Sc112-B(T) Sc1l3=B
これ らの記 号 を(例 文16)の 場 合 と同 じよ うに して、 対 応 す る現 実 の サ ンス ク リッ ト文 の要 素 に置 き換 え て み る と、
tato mrgendrasya mrgendragami vadhaya vadhyasya saram saranyah/
ill C111 Sclll C11 C1111 C121 S114
jatabhisango nrpatir nisangad uddhartum aicchat prasabhoddhrtarih// Sc113 S11 C1211 C12 V 1 Sc112 // とな る。 これ を記 号 のみ に してみ る と、 J11 C111 Sc111 C11 C1111 C121 S114 Sc113 S11 C1211 C12 V 1 Sc112 // と な る。 こ れ が 『ラ グ ヴ ァ ン シ ャ』2. 30の く 分 布 図 〉 で あ る。 こ の く 分 布 図 〉 に よ っ て、カ ー ヴ ィ ヤ の ど の 語 が く 主 語 句 集 団 〉 に 属 す る 語 で あ る か、 ど の 語 が く 補 語 句 集 団 〉 に 属 す る 語 で あ る か、 動 詞 は ど こ か、 な ど と い う こ と が 一 目 で 解 る。 そ れ で は、 こ の 抽 象 化 さ れ、 記 号 化 さ れ た カ ー ヴ ィ ヤ を ど の よ う に 分 析 し て ゆ く の か を こ れ か ら説 明 し よ う。 (II)〈 群 〉 〈 群 〉 と い う語 を 説 明 す る た め に 次 の よ うな 簡 単 な 例 文 か ら 始 め よ う。
(例 文19) tuhinasuklagajo devadattas ca yuva caturo vanam visa-lam pavitram nadlm ca gacchatah.
雪 の よ うに 白い ゾ ウ と若 くて 賢 い デ ー ヴ ァ ダ ッタ は、 広 く て 神 聖 な森 と、川 と に行 き ま した。 〈枝分 かれ図〉 gacchatah (VI) tuhinasuklagajah (Sell) ca (ill) devadattah (S12) yuva (S121) カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 caturah (S122) vanam (C11) visalam (C111) pavitram (C112) ca (J12) nadim (C12) 〈分布図〉 Sell S12 Jll S121 5122 C11 C111 C112 C12 J12 V 1 / こ のく 分 布 図〉 を よ く見 てみ よ う。
Sell S12 Jl1 S121
5122:
C11 C111
C112 C12
J12 V1/
この文 の 〈主 語 句 集 団〉 は二 つ あ る。 一 つ はSG11を 頂 点 とす る もの、 も う一 つ はS12を 頂 点 とす る もの で あ る。 ま た、 〈 補 語 句 集 団 〉 も二 つ あ る。 一 つ はC11を 頂 点 とす る もの、 も う一 つ はC12を 頂 点 とす る もの で あ る。これ らの集 団 の うち、Se11とC12と は 集 団 の要 素 が一 つ な の で 問題 に な らな い が、S12の 〈 主 語 句 集 団 〉 とC11の く 補 語 句 集 団〉 とは、各 々三 つ ず つ の要 素 を持 って い る。そ して、これ らの要 素 が実 際 の文 章 上 で も各 集 団 で 集 ま って、群 を形 成 して い る。 この よ うな もの をく群 〉 と呼 ぶ こ と にす る。 こ こで は、S12の く主 語 句集 団 〉 を形 成 す るS12とS121とS122と い う 三 つ の 要素 は、J11を は さん で く群 〉 を形 成 して い る とい い、ま た、C11の 〈 補 語 句 集 団 〉 を形 成 す るC11とC111とC112と い う三 つ の要 素 は く群 〉 を形成 して い る とい う。 こ こで、 〈 主 語 句 集 団〉 や く補 語 句 集 団〉 とく 群 〉 との違 い を説 明 して お こ う。〈 主 語 句 集 団 〉 とく補 語 句 集 団〉 とが、 文 法 的 な視 点 か ら分 類 整 理 され た 観 念 的 な 集 団 で あ る の に対 し、 〈群 〉 とは現 実 の文 章 の上 で、 近 接 した 箇所 に か た ま って 現 れ る とい う現 象 自体 を指 す もの で あ る。-86-そ れ で は、 こ の よ うな〈 群 〉 は 実 際 の カー ヴ ィヤ で は どの よ うに形 成 さ れ て い るの だ ろ うか。 次 の節 で 見 て み よ う。
(12)〈 補語 句 集 団 の 群 形成 の法 則 〉 (イ)実 際 の カー ヴ ィヤ に お け るく 群 〉
カ ー リダ ー サ作 の叙 事 詩 『ラ グ ヴ ァ ン シ ャ』の 第2章 の 第3番 目の 詩 は、
nivartya raja dayitam dayalus tam saurabheylm surabhir yasobhih/
payodharibhutacatuhsamudram jugopa gorupadharam ivorvim//
親 切 な、 名 声 に よ って 芳 しい 王 は、 愛 され るべ き彼 女(妻)を 引 き返 さ せ、 牛 の形 を した 大 地 の よ うな、 四 つ の海 が 乳房 で あ る よ うな ス ラ ビの 娘 を守 りま した。 とい う もの で あ る。 この 詩 の く枝 分 かれ 図 〉 とく 分 布 図〉 は 次 の よ うな も ので あ る。 D(0) D(1) D(2) D(3) D(4) 引 き 返 さ せ (nivartya)(V1) (王 は) 一彼 女 を (懐 血) (C11) 愛 さ れ る べ き (dayitam) (C111) 守 りま し た (jugopa)(V2) 王 は braja)521) 親 切 な (dayalus)(5211) カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究
密 教 文 化 芳 し い (surabhir) (5212) 名 声 に よ っ て (yasobhih) (52121) ス ラ ビ の 娘 を (saurabheyim) (C21) 四 つ の 海 が 乳 房 で あ る よ う な (payodharibhutacatuhsamudram) (Cc211) の よ うな (iva)(C212) 大 地 (urvim) (C2121) 牛 の 形 を し た (gorupadharam)(Cc21211) V1 S21;C111 S211 C11C21 S212 S2121 / Cc211 V2 Cc21211 C212 C2121// (C11群) (C21群) こ のく 枝 分 かれ 図 〉 に よ る と、C11を 代 表 とす るく補 語 句 集 団 〉 と、C 21を 代 表 とす るく 補 語 句 集 団 〉 と、S21を 代 表 とす る 〈主 語 句 集 団 〉 とが あ る。 次 にく 分 布 図 〉 を見 る と、C11を 代 表 とす るく補 語 句集 団 〉 の二 つ の要 素 はS211を は さ ん で く群 〉 を形 成 して お り、C21を 代 表 とす る〈 補 語 句 集 団 〉 の 五 つ の 要 素 はS212、S2121、V2を は さん で く 群 〉 を形 成 して い る。 この 二 つ の 〈 群 〉 を各 々C11群 とC21群 と呼 ぶ こ とに す る。 す な わ ち、 この 詩 で は、 二 つ のく 補 語 句 集 団 〉 がC11群 とC21群 とい う二 つ の
〈 群 〉 を形 成 して い るの で あ る。 解 りや す く言 え ば、 一 つ の く 補 語 句 集 団 〉 に属 す る諸 単 語 は、 実 際 の カ ー ヴィ ヤ の表 面 で 群 れ と して 固 ま って 現 れ て くる とい うこ とで あ る。 これ を く補 語 句 集 団 の 群 形 成 の法 則 〉 と呼 ぶ。 た だ し、 こ のく 群 〉 は、 そ の中 にく 主 語 句 集 団 〉 に 属 す る単 語 や 動 詞 を混 在 させ る こ とが あ る。 つ ま り、実 際 の カ ー ヴ ィヤ か ら、〈 主 語 句 集 団 〉 の 語 や 動 詞 等 を除 くと、 諸 々の 補 語 句 は 同 じく枝 〉 ど うしで 集 ま り合 う傾 向 が あ る とい うこ とで あ る。 こ こ で く補 語 句 集 団 の群 形 成 の法 則 〉 を文 章 化 して お く。 〈 補 語 句 集 団 の群 形 成 の法 則 〉 一 つ の カ ー ヴィ ヤ に お い て、 複 数 のく 補 語 句 集 団 〉 が あ る場 合、 各 々 の〈 補 語 句 集 団 構 成 要 素 〉 はく 群 〉 を形成 す る傾 向 が あ る。 ま た、 そ のく 群 〉 の中 に は、 〈 補 語 句 集 団〉 に属 さな い 他 の要 素 が含 ま れ る こ とが あ る。 この法 則 を別 の 言葉 で 説 明 す る と、 次 の よ うに な る。 カ ー ヴ ィヤ が 作 ら れ る とき、 韻 律等 を合 わ せ る た め に単 語 を移 動 しな けれ ば な らな くな った と しよ う。 そ して、 そ の カ ー ヴ ィヤ の中 に は、 複 数 の 目的 語 や 補 語 が あ る とす る。 そ して、 それ らは ま た、 複 数 の 形 容 詞 等 で 修 飾 され て い る とす る。 そ の よ うな状 況 で 単 語 を移 動 させ るな ら、相 互 に関 係 し合 って い る単 語 ど うし を、 で き る だ け近 くに置 い た ほ うが 文 意 は理 解 され や す い。 い く つ か の 目的語 が あ って、 そ れ ぞ れ に形 容 詞 が つ い て い た場 合、 修 飾 関 係 に あ る 目的語 と形 容 詞 との 間 に、 修 飾 関 係 に な い別 の形 容 詞 が 割 り込 む よ う に置 かれ る と、文 意 は理 解 しに く くな る。 だ か ら、語 順 を入 れ 換 え る に し て も、 な るべ く関 係 の あ る語 ど うしは か た め て配 置 した い の で あ る。 しか し、そ の よ うに語 の配 列 を変 え て もな お、 韻 律 が み た され な い場 合 は、 主 語 に対 す る エ ピテ ー トや 形 容 詞 を必 要 な場 所 に挿 入 す る こ とに よ って 韻 律 を整 え る ので は な い だ ろ うか。 韻 律 の た め の エ ピテ ー トの多 用 は よ く言 わ れ る こ とで あ る し、 また、 主 語 を修 飾 す る形 容 詞 は、 目的 語 を修 飾 す る形 カ ー ヴ ィ ヤ 文 体 の 研 究