県職員による公文書資料の利用
豊見山 和美 I
は じめに
1 県職員 による利用の実際
1‑1 どの ような文書が どの ような 目的で利用 されているか
1‑2 保存期 間延長文書 とその利用 ‑第1種文書 の20年保存期 間は妥 当か 2 利用の促進のために
2‑1 検索用デー タベースの充実
2‑2 公文書館‑引 き渡す文書 の 「質」 の転換 2‑3 むす びにかえて
表1 年度別 間覧申請件数 と県職員 による閲覧 申請件数 (平成7年度か ら13年度 まで) 表2 県職員 による閲覧申請件数の所管別内訳 (平成7年度か ら平成13年度 まで) 表3 資料群別 県職員による利用状況 (平成7年度か ら平成13年度 まで)
は じめに
沖縄県公文書館 (以下 「公文書館」 という。)の設置に伴 って開通す る文書規程等の整備が な され、
保存期 間が満了 し廃棄決定 された文書 は保存期 間の経過 とともに、すべ て公文書館へ引 き渡 され るこ ととなった。 大量の県文書 の受入お よび選別 といった業務 は、大 きなエ ネルギー を必要 とす る、公文 書館のL再亥業務であ り、沖縄 県公文書館業務基本体系 中の運営基本方針 において、次の ように表現 さ れている。
「公文書等 は、行政の活動 の過程で 日々膨大 に作成 され、 目的が達成 された後 は、一・走期 間保存 さ れ、やがて現用文書 としての役割 を終 える。公文書館 は、 これ ら一応 の役割 を果 た した公文書等 の中 か ら歴 史資料 として重要 な もの を収集 し、整理 し、保存す る とともに公開す る責務 を負 う。資料の収 集選別 にあたっては沖縄県公文書館が、沖縄 における行政の記録 セ ンター と して充分 に機能 し得 るよ
う、後世の評価 に堪 える適正 さをもって行 わなければな らない」
公文書館 が 「行政の記録 セ ンター」 と して充分 に機能す るとい う目標 は、適切 に管理 された県文書 に記録 されている歴 史情報が活用 され ることによって、達成 されるだろ う。県文書 (に限 らず公文書 資料 とい うこともで きるが)の有す る歴 史情報の特色 のひとつは、その証拠的機能 にあると言 える0 それは主 として、公文書の多 くが、法規等 に根拠 を持 ちかつそれに規定 される権力行為の一環 として、
さまざまな手続 と点検 の諸段 階 を経 て作成 ・収受 される ものであることか ら派生す る ものである。公 文書館が蓄積す る県文書 の歴 史情報 にアクセスす る後世の利用者 は、現在のわれわれには思い もよら ない ような方法で文書 を活用す るか もしれないが、その文書 が公文書 であることによる客観性 ・信用 性‑の期待 は変わ らないだろ う。
I財団法人沖縄県文化振興会公文書管理部公文書専門員
この ように歴史資料 としてス トックされる県文書 は、その発生源である沖縄県 とい う組織 の構成員 (職員) にとっては、一般の利用者 とは異なる意味合い を持つ.県文書 はまず組織 の業務記録 であ り、
職員が現在 の業務 の遂行 に必要 な情報 を得 るため に、た とえば参考 となるような過去の事例 を検証 し た り、客観的事実や意思決定の過程 を確認す るため に用い られる。すべ ての廃棄文書が公文書館‑読 れて行 く現在 の システムにあっては、歴 史研究の素材や権利 関係 の確認 を求める一般の利用者 と並 ん で、県職員は公文書館の主 な顧客である。本稿 では、そ う した県職員の公文書の利用状況 について述 べ、この顧客 に対 して、公文書館 はどの ようなサー ビスを提供することがで きるか を考察 してみたい。
1 県職員による利用の実際
本稿 の執筆 にあたって基礎 としたデー タは、平成7年4月の公文書館設置か ら平成13年度末 までの 閲覧記録である。その中か ら県職員 による公文書館資料 の利用 をカウン トして作成 したのが表 1であ る1。所管別 (部単位)での内訳 は表2に示 した2。
表 1 年度別 閲覧申請件数 と県職員による閲覧申請件数 (平成7年度 か ら13年度 まで)
年 度 閲 覧 申 請 件 数 閲 覧 申 請 件 数うち県職員 に よる 全体 に 占め る割合県 職 員 に よ る閲 覧 件 数 の 平 成 7 年 度 3677 1923 52.3% 平 成 8 年 度 2483 315 12.7% 平 成 9 年 度 3881 174 4.5% 平 成 10 年 度 5410 239 4.4% 平 成 11 年 度 6430 754 ll.7% 平 成 12年 度 5306 379 7.1% 平 成 13年 度 6645 285 4.3%
これ に よれば、県職 員 に よる閲覧 申請件 数 は4,069件 で、 トー タルでみ る と閲覧 申請総件数の12.0
% を占める。平成7年度 の利用件数が際立 って多 いのは、開館 と同時 に琉球政府文書の閲覧 を開始 し たこともあるが、行政 史を編纂す る 目的で宮古支庁 による公文書館資料の大量調査が行われたことに よる。宮古支庁 を別 に して申請者 を部別 に見る と、総務部686件 、農林水産部622件 、土木建築部333 件 、教育庁284件 の順 に利用が な されてい るこ とがわか る3。ただ し、総務部の うち423件 は平和祈念
l 一般利用の場合 は個 人情報の保護 などの理由で資料 を非公開 とす ることもあるが、所管課の職員が業務 として資 料 を閲覧す る場合は閲覧 を制限 しない。 したが って閲覧申請が公務であるか どうか を判断す る手続 は慎重 になされ る。 また、国や市町村 の閲覧申請 に応 じた例 も多 くあるが、それについては本稿の 目的が県職員の利用の実際 を知 るとい うことなので除外 した。
∠同 じ資料 を複数回申請 した場合で もその まま件数 として計上 した0
‑平成10年度の県組織改正で、それ までの環境保健部 と生活福祉部、総務部の一部の間で大幅 な改組が行われ、文 化環境部 と福祉保健部が発足 したため、申請課の振 り分けが難 しい もの もあった。
資料館の展示資料調査 ・収集のために閲覧 された ものである。それを除 くと、総務部の通常業務 とし ての利用は263件 となる。それで も閲覧件数は教育庁 に次いで4番めに多い。
農林水産部の うちで閲覧件数が多いのは農政経済課245件、農林総務課132件、農林土木事務所90件 (各農林土木事務所の総計)である。総務部 をみると、前述 した平和推進課に次いで、管財課136件、
人事課40件 となっている。 また、土木建築部の内訳 は土木事務所113件 (各土木事務所の総計)、都 市計画課88件、用地課79件の順である。教育庁 は保健体育課196件、文化課28件、施設課22件が申請 件数上位3機関であった。
表2 県職員による公文書館資料の閲覧 (平成7年度か ら平成13年度) 縦軸 は閲覧申請件数
1800 1600 1400 1200 10008006400200000
llー
l一l ■■ l■■■
‑∴∴ ■■ ‑ 一‑ ‑ ■■ ‑
1‑1 どのような文書がどのような目的で利用 されているか
県職員が閲覧 した資料 は、県文書および沖縄県の前身機関である琉球政府の文書 (土地台帳 を含む
)4が全体の870/.を占め、残る130/.は刊行物や米国で収集 した沖縄統治関係資料 (主に写真資料) となっ ている。
閲覧申請の際に、職員には当該文書の閲覧を必要 とする理由 も記入 して もらうが、 「業務上必要」
という素っ気ない記述が多い。理由として特記 された ものや、閲覧 した資料か らその利用の 目的を推 測 して挙げてみる。
・公有財産に関する訴訟資料 ・国体開催時の交付金事務の調査
・開示請求対応 ・団体交渉のための資料調査
・都市計画の見直 しに必要 ・沖縄の都市計画 (賓料編)作成
・土地売払代金の振込み確認 ・公園整備事業 に係 る用地取得のための調査
概略がわかるよう便宜的に処理 してある。
4 土地台帳 (土地所有 申請書 と一筆限調書) は琉球政府時代 に作成 された文書 だが、特 に利用の多い シ7)‑ズなの で、一般の琉球政府文書 とは別に計上 した。
・災害実績の資料 ・旧琉球政府か らの承継債権整理のため
・琉球政府営土地改良事業財産調査 ・土地改良区の解散資料
・記念誌編纂の参考資料 ・展示資料
・発掘のための資料収集
表3 資料群別 県職員による閲覧申請状況 (総件数は4,069件)
公文書館で管理す る公文書等 は、機関の記念誌や沿革史 を編纂する際 に大量 に利用 される。先 にふ れた宮古支庁の行政史編纂事業のための閲覧申請がその例である。資料 を提供する側か らすると、こ の ように組織体史の編纂資料 となるような文書 は優先的に評価 ・選別 して、長期 の保存 に堪 えるよう 心がけるべ きとい うことになろう。
では、組織体史編纂 とい う特別 な理由以外 に、通常の業務遂行か ら必要 とされる文書 にはどうい う ものがあるだろうか。最 も申請件数の多かった農林水産部の例 を見ると、毎年一定の利用がある文書 シリーズには 「土地改良事業認可関係」「農地転用関係」「用地取得関係」「開拓者資金融資関係」
「関係法人の設立関係」 などがある。総務部の場合 は 「土地台帳 (土地所有 申請書 ・一筆限調書)5
」
「給料の調整額 に関す る書類
」
「生存者叙勲 申請書類」 をみることがで きる。土木建築部か らは 「公 有水面埋立関係」 「都市計画決定関係」 「工事 に関す る書類 (工事設計書 など)」「公共財産用途廃 止 申請書」
「用地買収 に関する書類」の閲覧申請が多い。教育庁か らは 「公有財産関係」
「文化財指 定関係」 などが利用 されている。この ように見てみると、県職員 によって利用 される公文書館資料 は、社会的インフラの基盤である 土地その他公有財産 に関わる権利義務 関係の証明 となる もの、また所管の許認可事務の事実関係 を記 録 した ものが大半 を占めることがわかる。現在の業務 を処理す るために必要 な過去の社会的事実 を確 認す る 目的での利用が中心 となっている6。
5土地台帳 は総務部(主 と して管財課が利用)だけで な く全庁的 に利用が多い。沖縄戦で公図 .公簿類 を失い、終戦直 後 に米軍 の指示 に よって作成 された土地所有 申請書 .一筆 限調書 とい った土地台帳 は、不備 が指摘 され なが らも土 地の権利関係 の基礎資料 と して現在 で も用 い られている。
6土地 その他 公有財 産 に関す る文書 には工事 図面が多 く含 まれてい る。県職員 に多 く利用 されている図面 は槌色 し やすい青焼が多用 されてお り、将来 にわたってその可読性 を保証す ることが重要である。
これには、ある程度沖縄 の特殊事情 の反映がある と思 われ る。第二次世 界大戦で行 われた地上戦の 結果 としての県土の変容、通常 ではあ りえない ような土地所有権者 の大量 の死亡、権利 関係 を証明す る書類の焼失、米軍 による土地の接収、大量の政策移民 、そ して戟後 とくに日本復帰後の急激 な開発 による県士の変容 な ど、これ らの要 因は県業務 の遂行 に今 なお色濃 く影 を落 とす。歴 史資料の利用の あ り方それ 自体 に も、歴 史的 な必然性が に じみ出て こざるをえないのである。その帰結 と して、先 に 挙げたような文書 の利用が多いのであって、当然 なが ら、公文書館 は今後受 け入れ るこうい った文書
に対 して最大限の手当 をすべ きであろ う。
1‑2 保存期間延長文書の利用〜第1種文書 の20年保存期間 は妥当 か
公文書館の設置 に伴 う関連規定の整備 によ り、第一種文書 の保存期 間が、長期保存 か ら20年 に変更 され、所定の保存期 間が経過 した文書 は、公文書館長へ引 き渡す ことが定 め られた。ただ し、 この保 存期 間は所管課の 申請 によ り延長す るこ とがで き、 これ まで保存期 間経過 した第‑種 文書 の7割近 く が保存期間延長 されて きた。廃棄 されない限 り公文書館長へ は引 き渡 されず、非現用段 階 に至 った文 書 と して公文書館 での閲覧 に供す るこ とはで きない7。延長の理 由は、それ まで長期保存 (永年保存 に準 じる) とされて きた第・一一種文書 を手続的 にではあれ廃棄決定す ることが難 しいか らではないか と 観測 して きた。 しか し一方で、20年 とい う保存期 間の設定 自体 に問題 はないかい う疑問 も生 じた。 た とえば作成後30年 を経過 した文書 を公開す る とい う、いわゆる30年原則 とい うルールにはやは り何 ら かの経験則があ り、非規用 と して所管課の手 を離れ るには20年経過時点は時期 尚早 なのではないか、
とい うことである。
表3で示す ように、県文書 閲覧 申請全631件 (全体 の16%)の うち、保存期 間 を延長 した第一種文 書 は176件、年限 どお りに廃棄決定 して公文書館 ‑引 き渡 した第1種 文書 は222件 、第 1種 以外 の種別 の文書 は233件 となってお り、県文書利用全体 との比率でみ る と、順 に27.8%、35.2%、37%である。
これか らす る と、む しろ延長せず に廃棄決定 した文書 の利用率の方が高 い とい う結果 にな り、保存期 間延長の理 由はその文書が まだ現用あるいは半現用段 階 にあって利用頻度が高いか らとい うのではな い ようである。
この7年間のデー タでは、延長第‑種文書の総数約1,700件 の うち、10%が利用 されたに とどまる。
所管課 にとって も、20年経過後 には文書 の現用 と しての使用 回数 はこれだけ逓減す る とい うことが納 得で きれば、保存期 間 を延長す る要 因 もい くらか解消す るので はないか。 7年 間でその1割、176回 (年間25回)使用す る とい う文書 の固 ま りに、空間 コス トの高い都心部 にある本庁舎の保存 スペース を充てるよ りは、公文書館‑場所替 えす ることが合理的である。
しか し 「どこで」保存す るか とい うことよ りも本質的な点 は、 「だれが」管理す るか とい うことで ある。文書の硯用 と しての廃棄決定 は、文書 の処分 を意味す るのではな く、公文書館 とい う新 しい段 階での管理下 に送 ることである。所定の保存期 間 を経過 した文書 をいつ まで も現用 あるいは半現用 と してお くよ りも、保存場所 や公 開の責任 まで含 めて公文書館で管理す る もの とい う認識 を職員 に持 っ て もらうことだろう。公文書館 で文書の 目録 を作成 し8、検索 に便利 な 目録情報 を追加 してホームペ‑
7保存期間を延長 した第1種文書 は、保管場所 だけが公文書館‑移 る (第‑種文書のみ)。 この文書 にアクセスす る 手段 は、公文書館への閲覧請求ではな く、情報公開条例 に基づ く所管課‑の開示請求である。
8廃棄決定 して引渡 を受けた第1種文書 はすべて簿冊単位で整理 し目録 を公開することになっている。 また公開に関 しては、公文書館で も個 人情報保護の趣 旨を尊重 して判断 している。
ジで も提供 してい る検索 デー タベースに登載すれば、業務上必要 な過去 の文書 の特定 を容易 に し、業 務 の効率化 を図るこ とがで きる。 また この ように行政情報 を一般利用者 と共有す ることによって 「開 かれた県政」 とい う目標 に近づ くこともで きるだろ う。 この点 について これ まで県職員 を対象 に行 っ た普及展 な どの活動 を通 して、文書 の ライフサ イクルや公文書館 での閲覧提供の意義 などについて理 解 を求めて きた。60%台で推移 して きた第一種文書 の延長率が、平成14年度 に34%まで低下 したこと はその成果の表 われであるように思 う。
第一種文書以外 の種別の文書 の利用 について も述べ てお きたい。かつては10年、5年、3年保存の 文書 は、保存期 間経過後すべ て焼却 ・裁断 されて きた。 しか し公文書館設置後 は第一次選別 を経 てあ る程度 の量 を公文書館 で受 け入れてい る。興味深 いのは、 これ らの文書 の利用が県文書 に対す る閲覧 申請の37%を占めていることである。前述 した ように、保存期 間延長第1種文書の利用 は県文書全体 か らみて27.8%、廃棄決定 して公文書館へ引 き渡 した第 1種文書 は35.2%となってお り、第2‑ 4種 文書の利用 はそれ を上 回っている。 「いつか使 うか もしれない文書」 と、保存期 間の設定 との相関関 係 は、文書 の評価 ・選別 とも関係 のあるテーマ として別 に検証す る機会 を持 ちたい。
2 利用 の促進の ために
2‑1 検索用データベ ースの充実
公文書館 に廃棄文書 を引 き渡す ことで利用 のための付加価値 を高め るよう県職員 に働 きかけるにあ たっては、必要 な文書 の所在がで きるだけす ばや く確認で きるような環境 を提供す ることが重要であ る。公文書館 に引 き渡 された文書 は、中間書庫 に配架 され、選別 と目録作成 を終了 して公開 されるま で には相応 の時間 を要す る。 この間 も、文書 を利用 したい とい う県職員 のニーズに対応す ることが要 求 されるが、すで に3万箱近い文書が搬入 されてお り、公文書館 の第一次選別 によ り廃棄処分 された もの、簿冊単位で整理 し目録 を公 開 して閲覧 に提供 している もの、保存期 間延長文書であるため保管 しているだけの もの、選別待 ちの もの と、その管理状況や、公文書館 内での ロケーシ ョンも分かれて いる。
この ような所在情報 を提供す るため、公文書館 ホームペ ー ジ 「ね っ とOPA」 の 「引渡文書 目録」
によ り文書 の検索がで きるようになっている。 このデー タベース を用 いて、県職員は何 を公文書館 に 送 ったか、あるいは廃棄処分 に付 されたか、整理 された歴 史資料 として一般 の検索 デー タベースで 目 録公開 されてい るのかが わかる9。所管課 の職員 は文書廃棄台帳や文書引継 目録 お よび保存箱番号 と いった最小 限の検索手段 を持 っているので、文書 の存否 さえわかればひ とまず必要 と思われる文書 に た ど り着 くこ とがで きる。公文書館 は県庁所在地の那覇 か ら車 で30分 を要す る南風原町 に位置 してお り、 この距離 は県職員 に とって決 して近い ものではない。 しか し検索 デー タベースの充実 は、 この不 便感 をい くらかな りとも解消す るの に役立つだろ う。
公文書館が引 き渡 しを受 けて整理 した文書 については、一般 の 「所蔵資料検索 日録」 で 目録情報 を 公開 してお り、 これ もホームペ ージで利用 で きる。 「引渡文書 目録」が文書保存箱単位の 日録記述で あるの と違 って、 「所蔵資料検索 目録」 では簿冊単位 で 目録情報 を記述 し、 よ り絞込み を容易 にす る ような情報 を追加 している。 目録 には 「引渡文書 目録」 とリンクす るコー ドを付与 してあるので、県 か ら公文書館へ引 き渡 された文書 の追跡 は可能である川。
̀'検索キーは、文書廃棄台帳に記載された文書の類名、文書保存箱番号、部課名を用いることができる。
2‑2 公文書館へ引き渡す文書の 「質」の転換
ト1で見た ように、県職員 による利用 の多い文書 は、社会的イ ンフラの基盤である土地の権利 関係 に関するもの、その他公有財産 に関わる権利義務関係の証明 となる ものが中心である。文書 は社会的 な事実の確認お よび証明の手段 として利用 されているわけだが、組織内部の意思決定過程 に関する記 録 としての利用は、会議録等の閲覧が数点あるほかは見受け られない。 この ことはすべ ての内部調整 が終わって清書 された決裁文書 だけをいわゆる公文書 として綴 じて引継 ぐもの とい う文書概念 による ことが大 きい ように思 う。文書 には表 されない ところに真実があるとい うことだろうか。 また、たい ていの人は意思決定過程 を文書化 して残す とい う行動様式 に も不慣 れである。先験者の得 た経験 は、
記録化することによって後任者 と共有するのが望 ましいが、現状では業務 に関する情報や ノウハ ウの ス トックの継承 とい うことにはなかなか結 びつ きに くい。
公文書資料 は、それを生み出 した組織 の者 にとっては、一般の利用者が接す るの とは別の意味合い を持つ。文書 は歴 史資料 として読 まれる以前 に、蓄積 された先例 として現在の彼 らの行動の指針 な り 新たな政策決定の基礎資料 として読 まれるものだか らである。県職員がほん とうに欲 しい記録 を残 し てい くためには、彼 ら自身を トレーニ ングすることが必要 になって くる。その トレーニ ングとは、ファ イリングのテクニ ックや、手順書の様式化、あるいは電子 ファイルの基準表制定 な どであるのか もし れないが、 どちらに しろ記録化す ることによる情報の共有化 を意識 して もらうことが、業務手法改善 につながる。最終的にはそれが公文書館で保存 される文書の質 を上 げてい くことになるだろうし、公 文書館側では 目録情報の整備 をは じめ とす る利用のニーズ‑の迅速 な対応 と、残す に値す る文書 を確 実に選別すること、記録内容 をいつ まで も読めるように保つ努力が求め られる。
2‑3 むすびにかえて
冒頭で述べたように、歴 史資料 としての公文書 を生産 し公文書館へ引 き渡す県職員 は、公文書館 に とってはユニークな顧客である。沖縄県 とい う組織 のアーカイブである公文書館 はまずその組織 の先 例の蓄積 として継承すべ き文書 を適切 に管理 して提供 し、文書管理 コス トの節減お よび業務効率の上 昇 を図 らねばならない。 この営みの結果 として、後世の利用者 もまた、 よ く管理 された歴 史資料のス トックを活用することがで きる。そのような記録 ‑記憶の共有 を制度的に保障することによってこそ、
公文書館 は社会的記憶装置 として独 自の地位 を占めることがで きるのだろ う。
(とみや ま ・かずみ)
川 しか し、県職員による利用の66%を占める琉球政府文書 は、資料解説の情報が採取 されていない。本稿 のバ ック デー タは平成13年度 までの ものなので数値 には含 んでいないが、平成14年度 に米軍 に接収 された土地 に関 して所管 課か ら大量の軍用地関係文書 (琉球政府法務局の文書)の閲覧があった。問題の土地 は一筆 だったので、 目録情報 が もう少 し整備 されていれば、これほど多 くの資料 を閲覧す ることはなかっただろう。