APC NEWSLETTER 【アゴラ】
No.24
広 げ よ う ア ジ ア 太 平 洋 の 知 的 交 流 ネ ッ ト ワ ー ク
アジア太平洋センター
平成11年度の事業紹介
フェローシップ事業招へい研究者インタビュー 市民カレッジ要旨
資料・情報室(アジア開発銀行寄託図書館)紹介 主催事業の紹介
ダダン・クリスタント《官僚主義》
インドネシア/1991-92年制作 福岡アジア美術館所蔵
自 主 研 究
自主研究は、アジア太平洋センター が国内外の研究者や研究機関とのネッ トワークを構築・拡充し、質の高い独 自の情報を集積・発信していく上での 基幹事業として実施するものです。
4Aプロジェクト
(平成10年度から継続)
「中国東北の経済発展と北部九 州の役割」
研究主査 小川 雄平 氏
(西南学院大学商学部長・教授)
研究会構成
日本6、中国5 計11名
4Bプロジェクト
(平成10年度から継続)
「アジアの観光政策に関する比較研究
〜日本・韓国・中国・台湾・タイを中心として〜」
研究主査 駄田井 正 氏
(久留米大学経済学部長・教授)
研究会構成
日本3、韓国1、中国1、台湾1、
タイ1 計7名
5Aプロジェクト
(新 規)
「アジア太平洋諸国の分権
〜中央・地方の政府間関係の分析〜」
研究主査 藪野 祐三 氏
(九州大学法学部教授)
研究会構成
日本3、シンガポール1、タイ1、
オーストラリア1 計6名
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若 手 研 究 者 研 究 活 動 助 成
フ ェ ロ ー シ ッ プ
日 韓 共 同 研 究
アジア太平洋地域の異なる文化理解 の促進または地方発展に関する研究に 取り組んでいる若手研究者(40歳未満で 助教授クラス以下)の研究活動(海外現 地調査・国際研究会参加者招へい・研究 成果出版)を資金的に支援することによ り、その育成を図ることを目的とする ものです。
福岡県・佐賀県・長崎県・大分県の九州 北部4県の研究者を対象に、4月と9月 の年2回募集します。
アジア太平洋地域の若手・中堅研究 者に日本における調査・研究の機会を 提供し、地元研究者との共同研究や交 流を促進します。また、招へい研究者 との人的ネットワークの確立を図るこ とにより、アジア太平洋地域に関する 学術研究交流を推進します。
国 際 研 究 交 流 会 議
( 新 規 )
自主研究テーマをより広い観点から 討議するため、自主研究のメンバーの ほか国内外からの研究者等を招いて、
シンポジウムを開催します。
1993年の日韓海峡知事会議での提案 に基づき、日韓の10の研究機関によっ て1994年に設立された「日韓海峡圏研 究機関協議会」において、日韓海峡圏 の発展と繁栄を目的とした共同研究を 実施します。平成11年度も前年度に引 き続きアジア太平洋センターが日本側 の事務局を務めます。
平 成 11 年 度 の 事 業 紹 介
アジア太平洋センターは、地球規模での国際化の進展という時代的・社会的流れを背景に、 「異なる文化 理解」と「地方発展」 を基本テーマに掲げ、 「若手研究者育成」を推進しながら、アジア太平洋地域の相互理解 の促進と発展に寄与したいと考えています。
平成11年度は、1992年10月の設立以来実施してきた事業の蓄積や、国際的な共同研究等を通して築いて きた国内外の研究者・研究機関とのネットワークを生かして、学術研究推進や市民のアジア太平洋地域への 理解を深める事業、幅広い情報の収集・発信等の各種事業をより一層充実させていきます。
特に新規事業として、第5期自主研究、国際研究交流会議、博多港開港100周年記念シンポジウムを実施
するとともに、資料・情報室(アジア開発銀行寄託図書館)の改装により、情報提供の充実を図ります。
博 多 港 開 港 1 0 0 周 年 記 念 シ ン ポ ジ ウ ム ( 新 規 )
●期日1999年9月中旬
平成11年度に実施される博多港開港100周年事業の開催を記念して、アジアの交流拠点都 市福岡の玄関口の役割を担う博多港に対しての市民理解を促進し、国際交流化時代における 文化交流を中心とした21世紀の港のあり方を考えます。
「アジア大交流時代における港文化の新たな展望」
福 岡 発・
ア ジ ア 研 究 報 告
ア ジ ア 都 市 づ く り 学 生 フ ォ ー ラ ム
市 民 カ レ ッ ジ
ア ジ ア 情 報 懇 話 会
平成10年度に若手研究者研究活動助 成を受けた研究者が、助成を受けた テ−マに関し、市民、研究者、企業関 係者に対して、研究報告を行います。
福岡市のアジアマンス事業の一環と して10月に報告会を開催するほか、報 告書を作成し、国内外の研究機関、大 学図書館等に配布します。
市民のアジア太平洋地域に関する学 習機会の提供と理解の促進を図ること を目的とした連続講座です。それぞれ の国・地域の政治、経済、社会、歴史、
文化、風俗、習慣などについて、これ まで築いてきたアジア太平洋センター の国内外のネットワークを活用して体 系的な理解を図ります。
アジアにかかわる企業・団体・行政機 関が、情報の交流を通じて、多角的な 視点からアジアに関する理解と認識を 深めるとともに、これからのアジアと の交流について考えることを目的とし た意見交換会です。2カ月に1回程度 開催します。
都市計画を専攻する福岡の大学院生 とアジア工科大学院大学(タイ)の学 生が「福岡」の望ましい姿に関して共 同研究を実施し、提言を行うプログラ ムで、共同研究を通じて、アジアの若 い世代の知的交流と相互理解を深める ものです。8月から9月にかけて共同 研究を行い、福岡市で研究発表会を開 催します。
資 料・情 報 の 収 集・発 信
アジア太平洋地域を理解する上で基礎的な情報である各国・地域の新聞(10か国・地域、
38種)・雑誌(12か国・地域、154種)をはじめ、同地域の相互理解を深める年鑑、統計書、
白書等国内外の基本文献を幅広く収集します。海外の研究機関との資料交換、現地での直 接購入などの方法により収集した、日・韓・中・英4言語の資料・情報を広く市民の皆さ んに公開しています。
当センターは1998年5月にアジア開発銀行(ADB)の寄託図書館の指定を受け、寄託資料と して受け入れたADBの事業紹介やアジア太平洋地域にかかわる調査報告書等を一般に公開 しています。
また、収集資料、データベースなどを活用したレファレンスサービスも行っていますの で、どうぞお気軽にお問い合わせください。
定期刊行物
研究誌「APCアジア太平洋研究」(日・英版) 「福岡発・アジア研究報告」
ニューズレター「アゴラ」(日・英版) 「年報」(日・英版)
APCニュース・レポート「中国動向」 「図書目録」
APCニュース・レポート「韓国動向」
自主研究成果の出版(平成11年度)
3Aプロジェクト(英語版)
「アジア諸国都市政府・自治体の機能に関する比較研究」
3Bプロジェクト(日本語版)
「アジア諸国の勤労者福祉現状に関する比較研究」
ワ ー ク シ ョ ッ プ
市民や研究者、企業関係者を対象に、
国内外の研究者や有識者を講師に招い て随時開催する講演会で、「知的交流、
情報交流、相互啓発」の場を提供する とともに、「情報」を軸とした人的ネッ トワークの拡充や相互啓発を促進する ものです。平成11年度は6回程度開催 します。
フェローシップ事業は、アジア太平洋地域の若手・中堅研究者を招へいし、
日本における調査研究の機会を提供し、地元研究者との交流を促進するととも に、招へい研究者との人的ネットワークの確立を図ることを目的としています。
琴氏は、約1カ月の滞在期間中、「日韓海峡圏における経済協力の活性化の課 題と展望」を研究テーマとして、行政や研究機関、研究者を訪問し、調査・研 究を行いました。フェローシップ事業への抱負や日韓海峡圏の経済協力のあり 方等についてお聞きしました。
平成10年度の新規事業としてスタートした、アジア太平洋センターのフェ ローシップ事業の初代の招へい研究者として、韓国・釜山発展研究院責任 研究員の琴性根
(くむ そん ぐん)氏が来福されました。
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APCフェローシップの 招へい研究者が来福
市民のバイタリティーを感じさ せる活気ある釜山のまち
○琴先生の出身地である釜山市は福岡市の行 政交流都市であり、両市では官民の交流も活 発に行われているようですが、釜山市につい て簡単にご紹介いただけますか。
釜山市は韓国の六つの広域市(釜山、大邱、
仁川、光州、大田、蔚山)のうち、最も人口 が多い都市です。(面積は、蔚山市が一番で す。)しかし、釜山市の人口は数年前から少し ずつ減少しています。その主な理由は、土地 の値段が高騰し、製造業が郊外に移転してい ることによると思います。また、IMF体制下 で閉鎖を余儀なくされた企業もあったようで す。韓国で工業化の先陣を切ったのは釜山で した。釜山の工業化は軽工業を中心に進めら れたのですが、70年代半ば頃から韓国は軽工 業から重工業へと産業政策を転換し、蔚山や 仁川が重工業を基盤に発展し始めました。し かし、釜山ではその後も工業の中心は軽工業 であったため、工業化の先陣を切った経済的 な勢いは若干影を潜めています。
しかし、経済が停滞しているにもかかわら ず、まちの活気は失われておらず、市民のバ イタリティーを感じます。また、食べ物(特 に素材)がおいしい点も釜山の魅力だと思い ます。釜山では、ぜひ刺身、キムチと焼き肉 は食べていただきたいですね。また、野菜が とても新鮮でおいしいため、普段の食事にも
(財)釜山発展研究院 責任研究員
琴 性 根
氏(くむ そん ぐん)
琴氏プロフィール:
1959年生まれ
1983年 国立釜山大学校経済学科卒 1985年 同大学校大学院修士課程修了 1992年9月〜1993年3月
九州大学研究生として来日 1992年より現職。
ふんだんに使われています。
【広域市】
1995年の地方自治制度の改革によって「広域市」とい う呼称になるまでは、「直轄市」と呼ばれていた。「直 轄市」の市域は「区」に分割されていたが、「広域市」に なってからは、「区」と並んで「郡」を市域に含むことが 認められるようになった。日本の「政令指定都市」制度 に似ているが、自治体としての地位は「道」並みに扱わ れ、行政が道から全く独立していることなど、相違 点も多い。
○琴先生は、釜山市の研究機関である(財)釜 山発展研究院に勤務されていますが、釜山発展 研究院について簡単にご紹介いただけますか。
釜山発展研究院は、釜山を中心とした地 域経済活性化と地域の開発促進のため、産・
学・官が共同で設立した研究機関です(1992年 8月開院)。主要な研究課題は、経済、産業、
社会、都市計画、港湾、環境など幅広い分野 にわたっています。基本財産約110億ウォン のうち、釜山市から約30%、その他地元の金 融機関や商工会議所等から支援を受けていま す。スタッフは総勢約40名ですが、今年から は研究生8名程度を新たに受け入れる予定で す。この研究生は研修生として受け入れるも ので、国が失業対策の一環として資金援助を 行い、派遣することになっています。
*釜山発展研究院の事業概要については、ア ジア太平洋センターの研究誌「APCアジア太 平洋研究」第2号で紹介されています。
地域経済の活性化に重要な観光 の振興
○先生のご専門についてお話いただけますか。
私は地域経済論が専門なのですが、特にサ ービス産業の振興による地域経済の活性化に ついて関心を持って研究を進めています。地 域経済活性化のための柱は、一つは港湾を中 心とした物流、二つ目は観光の振興です。これ まで、経済交流と言えば、企業間の交流が主な ものでしたが、グローバル化が進展する中で、
個人レベルでの交流を促進する観光の役割が 重要になってきています。これから地域経済 の活性化を図っていくには、観光の振興を抜 きにしては語れないのではないでしょうか。
都市の魅力をアピールするための重要な ポイントは、1◯「らしさ」を創造すること。
平成10年度新規事業
海雲台のビーチ
人でにぎわう国際市場
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◯「個人レベルの観光」に対応できるように すること、だと思います。
その都市に行けば、その国や地方の文化を 感じることができるという点が重要ではない でしょうか。欧米の文化やファッションばか りを追い求めていてはだめだと思います。都 市の魅力をアピールするにはコンセプトを明 確にすることが大変重要なのです。その点、
アジアの近現代芸術を展示する福岡アジア美 術館や日本の伝統芸能等を上演する博多座の 開設は、とても福岡らしいユニークな発想だ と思います。
○経済の活性化という視点で、韓国の外資導 入の状況についてお話いただけますか。
外資導入に際し、韓国は価格競争の面では 東南アジア諸国には負けますが、製品の品質 や優秀な労働力という点では勝っており、外 国企業が進出するに当たって、手続き面が繁 雑でないことや物流面が整備されているも大 きな魅力だと思います。また、これは韓国が 外国企業を誘致する政策を積極的にとってい るあらわれでもあります。釜山でも、外国企 業を誘致するため、従来は分譲の形態をとっ ていた(港湾に隣接した)工業団地を、賃貸あ るいは無料化することも検討しています。ま た、この工業団地は、国際的な事業展開の上 でも、港湾に隣接しているというメリットを 十分生かせるのではないかと思います。精巧 な技術を要する電子機器等については、韓国 製品は信頼性において高い評価を得ているの ではないでしょうか。精密機器や家電製品等 については、特に欧米に製品を売り込む際に は、韓国ブランドの優位性があると思います。
釜山と福岡で物流面での連携を図るた め、また両都市の地理的な近接性を考慮し て、港湾、空港、コンベンション施設、大 型保冷庫などについて、競合するだけでは なく、役割分担することも考えていいので はないでしょうか。
フェローシップ事業の成果を今 後の研究に生かしたい
○今回のフェローシップ事業で取り組まれる 調査・研究についてお聞かせください。
韓日経済圏の経済交流の活性化について、
北部九州の県や市町村等の国際課、観光課、
経済振興課などで、ヒアリング調査を行い、
必要な資料の収集を行う予定です。また、そ の他にも研究者や研究機関も訪問し、1カ月 という短い期間ですが、滞在中の調査を実り 多いものにしたいと思います。帰国後は、フ ェローシップ事業で得た成果をまとめて、有 効に活用できるようにしたいと思います。ま た、日本と韓国は経済面でも大変深い関係に あるので、日韓海峡圏さらに日韓両国の経済 交流のあり方について、研究を続けていきた いと考えています。
○最後に、福岡の印象についてお聞かせください。
福岡について印象的なことは、釜山に比べ て交通の便が非常によく、都市の中心部に大 濠公園があるなど、市街地でも自然との調和 が十分配慮されている点です。大濠公園のよ うに、都市の中心部に大きな公園がある例は、
とても珍しいのではないでしょうか。
しかし、私は来福する機会が多く、福岡に ついてはある程度は知っているのでそんなに 不便を感じたことはありませんが、まだ福岡 のことをあまりよく知らない韓国人にとって は、福岡の街を一人で動き回るのは容易では
ないでしょう。福岡ではまだハングルの案内 表示が十分ではなく、またバスや電車の乗り 方がわからない(同じ行き先番号で経路が違 う、整理券を取る、市内が均一料金ではない、
ハングル表記がない)などの理由から、特に市 の中心部から郊外の観光地(志賀島、海の中道 など)に行くときは苦労するのではないでし ょうか。また、ビートルに乗って釜山から博 多港の国際ターミナルに着いた韓国人も、市 の中心部に出る際、ほとんどはタクシーを利 用せざるを得ないと思います。ハングルの案 内を目にすると、韓国人は福岡市民から温か い歓迎を受けている気持ちになるでしょう。
また、観光の大きなターゲットである家族 連れを考えた場合、「海の中道海浜公園」は遊 園地、水族館や小動物園もそろっており、家 族で楽しめるスポットだと思いますが、韓国 人のほとんどはその存在すら知りません。一 方、北九州市のテーマパーク・スペースワー ルドは韓国でもよく知られています。海の中 道海浜公園は、海や自然と調和した公園内に 家族ぐるみで楽しめる施設が集まっており、
まさに福岡らしい魅力の一つだと思うので、
もっと積極的にPRをすべきだと思います。ま た、海の中道に続く砂丘は、韓国ではあまり 見ることができない光景なので、とても印象 に残っています。
○どうもありがとうございました。
1998年12月23日、アジア太平洋センター尾上司専務理事が韓 国・釜山日報社本社の金尚勲社長を訪問し、釜山日報社の協力を 得て「韓国動向」の発刊が実現できたことを報告しました。
金社長からは「韓国動向」発刊の趣旨を高く評価していただき、
「釜山日報の掲載記事を活用し、韓国の社会事情を広く日本の皆さん に知らせて、お互いの文化を理解するのに役に立てばこの上ない喜 びです」と激励の言葉をいただきました。
また、12月24日付けの釜山日報に金尚勲社長との対談記事(左の写真)が掲載されました。
「韓国動向」の発刊を釜山日報本社に報告
海雲台の新市街地
世界有数のコンテナ取扱量を誇る釜山港
98年度市民 カレッジ開催
アジアのシビルソサエティとはなにか
第 1 回
1998年11月25日(水)
講師:毛受 敏浩 氏
(財団法人日本国際交流センターシニアプログラムオフィサー)
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ビルソサエティという言葉は、日本 語では一般的に「市民社会」と訳され ており、「市民が中心となる社会」というよう な漠然とした概念を持っている人が多いよう であるが、欧米では主にNGOやNPOなどの 市民活動を行う団体の総称として使われてい る。もともとシビルソサエティという言葉自 体非常に抽象的な概念なので、人によってさ まざまな解釈がなされているが、私は「市民 によって自発的に結成された、社会活動を行 う多種多様な組織の総体」と定義づけている。
アジアにおけるシビルソサエティの成熟 度は、欧米に比べてまだまだ未熟である。
その理由としては、多くのアジア諸国が発 展途上であるため、市民活動よりも国全体 の発展を優先していたことが挙げられる。
実際、90年以前には、市民活動は敵対視さ れていた時期もある。また、個人主義のヨ ーロッパとは異なってアジアの人々は儒教
的な思考を持っており集団主義の傾向にあ るので、自発的に活動するシビルソサエテ ィはあまり発展しなかったのではないかと いう見方もある。
このような状況の中でも、近年、アジア地 域でシビルソサエティは確実に根づいてきて いる。アジアの開発途上国でも、充分な市民 へのサービスを行えない国家に対し、市民活 動が補完的な役割を果たし、ボトムアップ方 式 で 国 の 開 発 を 支 え て い る 。 タ イ で は 、 NGOが国家の経済社会開発計画の策定過程 に加わったり、97年に新憲法が制定される過 程においては、約84万人の市民、300のNGO 団体が話し合いに参加した。また、NGO大 国といわれるフィリピンでは、NGOと政府 との連携を強化するため、91年に施行した地 方自治法の議員の定数にNGO代表の枠を設 けたりしている。共産主義国である中国でも、
海外で経験を積んで帰って来た人が中心とな
って環境NGOなどが生まれており、(政府と 独立した機関であるが)政府とは良好な関係 を維持しながら活動を行っている。
日本においても、他のアジア諸国と同様、
非営利セクターの活動はこれまであまり活 発ではなかったが、ここ数年NGOをはじめ とする市民活動が着実に根づいてきており、
地域レベルでも70年代以降地方自治体間の 国際交流が活発に行われてきている。国際 交流はオープンな社会を作り、日本社会の 閉塞性を変えていくのに大きな役割を果す。
開かれた連帯感を必要とするシビルソサエ ティの発展にも重要な意味を持つ。これか らの時代の国際交流・協力は、富める国か ら貧しい国への一方的な関係から、お互い の国の地域の住民が顔を合わせて、(信頼関 係を構築してから)対等な関係で協力して いくようになっていくだろう。これは、国 レベルではできない地域レベルならではの 関係であり、自治体だけではなく市民が参 加する国際協力こそ、21世紀型の地球市民 の国際協力ではないだろうか。新しい歴史 づくりに市民が参画する時代を、今我々は 迎えている。
持続可能な発展を支える『市民社会』−フィリピンの事例を手がかりに−
第 2 回
1998年11月30日(月)
講師:シルビア マユガ 氏(フィリピン/作家・コラムニスト)
コメンテーター:清水 展 氏(九州大学大学院比較文化研究科教授)
この市民カレッジは、アジア太平洋地域について体系的に理解する連続講座として実施し ているものです。今年度は、メインテーマを「市民が創るアジアの新時代〜台頭する『市民社 会』の現状と展望〜」とし、全6回シリーズで行いました。
近年、さまざまな分野における市民活動が活発化し、アジアでも国を超えた市民レベルの 連帯ネットワークが広がっています。
GOの活動が非常に活発に行われ、
NGO大国とも呼ばれているフィリピ ン。この国のNGOの起源はスペイン植民地 時代にまでさかのぼる。フィリピンは1521年 から3世紀半以上にもわたってスペインの統 治下にあったわけだが、土地の没収、重税や 劣悪条件下での労働に苦しんでいた当時のフ ィリピン人を救うために結成された慈善団体 がフィリピンの最初のNGOである。その後、
このような慈善団体やカトリックの宗教団体 の他にも、スペイン人の指導のもとで教育を 受けたり利益を得ていたフィリピンの富裕層 の人々によって非営利団体が次々と設立され た。彼らは、スペイン人の統治のあり方に疑 問を感じ、その状態を変えようと試みたので ある。1898年に、アメリカの植民地になると、
アメリカの国益のために資源や人材が使わ れ、多くの農民による反乱が起こったが、そ れらはアメリカの強大な軍事力に弾圧され、
地下活動へと変わっていった。
戦後、1946年にフィリピンが独立したとき には、経済は破綻状態で、長年の植民地支配
の影響により土着文化はめちゃくちゃな状態 だった。その頃には旧ソビエトに影響を受け た共産主義の団体が農民や労働者の間に急増 し、またキリスト教の伝統を引き継いだ学生 の活動家による団体や、社会開発NGO団体 の発展などがみられる。70年代から80年代に かけては、国家民族主義者であり暴力的で革 命的なノックデムと呼ばれるNGOと、大都市 の貧困地域や田園などで広まっていた非暴力 的なソックデムと呼ばれるNGOの間で理念 の違いから大きな対立が起こり、国際教会団 体や他の国際団体からの基金獲得をめぐって の競争が起こったりしていた。
83年に、マニラ空港でアキノ氏が暗殺され たのをきっかけに、フィリピン市民は一致団 結して3年間にわたる抗議運動や街頭での集 会を行う。NGOの歴史の中で大きな動きと なったのである。そしてついに86年、マルコ ス大統領を追い出し、市民が勝利をかち取る。
これがピープルズパワーと呼ばれるものであ り、非暴力の手段でフィリピンの憲法を書き 換えさせたのである。また、80年代後半は、
フィリピンNGOにとって「黄金の時代」で あり、市民がボランティア精神にのっとって、
自分たちの時間と財源を寄付して公共の利益 のために尽力した時期でもあった。
何世紀もの長い間、植民地支配を受けてき たフィリピンの人たちにとって、国家とはま さに「自分たちの祖国」であり、だからこそ 市民一人一人が参画してNGOなどの組織を つくって何かを実現しようという強い思いが ある。現在、フィリピンには数千ものNGO 団体があり、本来なら政府がしなければいけ ないことを肩代わりし、また国際的なネット ワークづくりや活動を行っている。私も、フ ィリピンにある神秘的な山「バナハウ山」の 文化と環境を守ることを使命とするNGO
「バナハウ山みどりの連合」の発起人の一人 として、議長を務めるなどフィリピン社会の ために精力的に活動している。
21世紀は、国民国家という枠がはずれて、
地域や世界というより大きな枠の中で市民一 人一人が中心的なアクターとなる時代と言わ れている。したがって市民団体やNGOはま すます重要な役割を担っていくと思われるが、
強力で活発なNGOを擁するフィリピンの例 が、これからわれわれが地球時代をつくって いく際の手がかりになることを期待している。
シ
N
アジアと連帯する日本の市民活動
第 3 回
1998年12月4日(金)
講師:伊藤 道雄 氏
(NGO活動推進センター 常務理事・事務局長)
アジアにおける女性の社会的地位−マレーシア、シンガポールを中心として−
第 4 回
1998年12月7日(月)
講師:田村 慶子 氏
(北九州大学法学部教授)
今回の市民カレッジでは、「市民社会」の動向に焦点を当て、それぞれの分野の専門家や活動家をお招きし、環境、女性、マスコミ などさまざまな視点からアジアにおける「市民社会」の現状と展望についてお話いただきました。各回とも多数の市民の皆さんが熱心 に聴講され、大変好評のうちに終了いたしました。
*各回とも会場と時間は、アクロス福岡大会議室 18:30〜20:30 各回の要旨は次のとおりです。
年、海外だけでなく日本でも、「市民 社会」が非常に注目され始めてきたが、
その理由として次の二つのことが挙げられ る。一つ目は、95年の阪神大震災をきっかけ として、市民にボランティアの意識が強くな ったことである。阪神大震災のときには、と にかく自分たちがなにかしてあげたいという 気持ちで、日本各地から100万人を超えるボ ランティアが現地にかけつけた。二つ目は、
98年12月に「特定非営利活動推進法」が施行さ れたことである。これは、日本の社会を政府・
企業・市民の三つに分け、そのうち市民セク ターの活動(特にNGOやNPOのような任意の ボランタリーな市民グループの活動)を推進 するためにできた法律である。これまで政 府・企業主導型であった日本が、ここにきて行 き詰まり、社会全体の構造を揺るがすような ひずみが起きている。こうした中で、官にも左 右されず、企業のように利潤も追及しない自
由なグループとして市民セクターが注目され てきたことは、非常に意義のあることである。
さて、NGOを中心とした日本の市民活動の 歴史をひもといてみると、NGOの設立件数は 60年代から増え始め、特にインドシナ難民の 大量流出の時期である78年から80年に急増し ている。現在日本では400から450の市民団体 が活動しているが、この中でもアジアに対す る関心は深く、アジアにかかわる団体は全体の 約8割を占めている。アジアの国々を活動の 対象とする理由としては、やはり地理的に近 い、歴史的・文化的背景が似ていることなどが 多いようだ。また、国別に見ると、東南アジア のフィリピンが一番の対象国で58団体ある。
NGOで活動している人たちをタイプ別に分 けてみると、次の六つのグループに分けること ができる。1)宗教活動をしている人 2)青 年、学生 3)主婦や退職者など余暇ができは じめた人たち 4)医者、弁護士、大学教授等の 専門家 5)週末や休日に集まって活動する企 業人 6)自分たちの住んでいる地域の活性化 に取りくんでいる人々である。
そして、これらの人々に共通しているのが、も
う一つのNGO(N…なんと、G…がんこで、O
…お人よし)のところである。このように、がん こでお人よしの人たちがいろんな現実に直面 し、試行錯誤を繰り返しながらアジアの人々と 市民同士のネットワークを広げていったのだ。
日本社会全体から見たら、アジアの人たち との連帯はまだまだ限られたものではある が、以前に比べるとかなり前進してきている ことを実感できる。しかしその一方で、こち ら側の活動がかわいそうだからというだけの 一過性のものが多いとか、運営資金、言葉や コミュニケーションの問題など今後の課題は 多く残されている。また、個人的な意見とし ては、戦争中にアジア諸国に対して行った行 為に対し、日本はきちんと整理をつけてから アジアとの信頼関係に基づく連帯をつくらな ければいけないと思う。
日本は行政がしっかりしすぎていたので、
本当の意味での市民意識というものは脆弱で あるが、アジア地域全体に市民社会をつくろ うという方向に流れが変わろうとしていると きに、日本も(市民社会の方向に)変わらな い限り取り残されていくだろう。自分が何を 見て、何を考え、何をなすべきか、そういう 意識が今、日本人に問われている。
ジアの多くの国々では、さまざまな理由で 伝統的に女性の社会的地位が低く、女性が 政治の場で発言権を持ったり、公の場で自由に社会 的活動をする機会をあまり持てなかったという歴 史がある。アジア諸国は、ここ20年のうちに経済面 を中心としてすばらしい発展を遂げたが、これによ って、女性の社会的地位はどのように変わったのだ ろうか。東南アジアの二つの国、マレーシア(ここ では西マレーシアに限定)とシンガポールについて 両国の発展を女性という観点から検証してみたい。
マレーシアの伝統社会(昔はマレーシアもシン ガポールも一つの国でイギリスの植民地であった のでここではシンガポールも含む)においては、
女性の地位は非常に低かったと言える。というの は、マレーシアではイスラム教とマレー人の生活 習慣が憲法にうたってあるほど非常に重要視され ているが、このどちらににおいても女性の地位が 非常に低かったからである。ただし、マレー人の慣 習においては、結婚し子どもができると社会での 影響力が強くなるということで、子供を持つ既婚 女性については少し状況が違っていたようだ。19 世紀中頃になると、イギリスによってゴムと鈴の
採掘のためインド人と中国人が連れて来られ、三 つの人種に分けた分割統治が始まるが、もともと マイノリティだった上に中国人は儒教の影響で、
インド人はヒンドゥ教の影響によって女性の地位 が低かったため、中国系とインド系の女性が歴史 の表舞台に出てくることはほとんどなかった。
独立後、70年代からマレーシアは労働集約型産 業により経済発展を始めるが、この時期に女性は 男性と同程度の高い教育を受け社会に進出した。
男性よりも多くの女性が製造業に従事し、また労 働力の質を上げるために男性とほとんど同等の教 育を受けるようになったのだ。ところが、これによ って女性は意思決定の場に参画できるはずだった のに、実際は期待したほどにはならなかった。そ れには、二つの理由が挙げられる。一つは経済発展 と同時期にイスラム教の復興運動が起こったこと だ。ある意味では時代と逆行するようなかたちで、
伝統的なイスラム教の控え目な女性らしさが求め られたのである。二つ目は、人口7千万人計画で ある。この計画では、女性は5人の子どもを産むこ とを奨励されるが、マレーシアでは、保育園や学童 保育など社会福祉面が整備されていないため、女 性にとってはかなりの負担になっている。以上の 二つが特に政治面において女性の社会進出を妨げ る大きな要因になっていると思われる。
次に、シンガポールの状況を見てみる。天然資 源がないこの国にとっては、人的資源の利用が最 大の課題であるので、以前から教育に力を入れて いた。そのため、男性も女性も平等に高い教育を 受け、行政管理職の女性の割合が34%(日本は9%)
であるなど、東南アジアではフィリピンと並んで 女性の社会進出が非常に進んでいる国である。し かし、80年代からの家族計画の転換により高学 歴・高収入者には多産を、低学歴者には避妊を奨 励する「産めよ、増やせよ」計画になり、マレーシ アと同様、女性にとっては仕事と子育てという二 重の負担となっている。もちろん、この両立は非 常に難しくシンガポールでは、少子化が進んでい るのが現状だ。
マレーシアもシンガポールもここ数十年の発展 で確かに女性の社会進出は進んだものの(日本よ り進んでいる部分も多い)、伝統的な女性の役割 である子育て支援面での社会福祉の発展が遅れた まま家族計画の転換をしたので、両国の女性にと って重い負担となっているのが現状である。そう いう意味では、経済は発展してもその恩恵は男女 平等には受けておらず、特に政治面における女性 の発言権はあまりない。したがって、社会福祉面 での充実を図りながら男女に平等に開かれた場を つくっていくことが、今後の課題だと思われる。
ア
近
8
『市民社会』の発展とマスコミの役割
第 5 回
1998年12月15日(火)
講師:多田 昭重 氏
(西日本新聞社 専務取締役編集局長)
『市民社会』の形成とアジアの未来
第 6 回
1998年12月18日(金)
講師:鈴木 佑司 氏
(法政大学法学部教授)
州、特に福岡は、地理的・歴史的条 件も加わって近年、アジア諸国との 国際交流に非常に力を入れ、さまざまなレ ベルでアジアとの交流を積極的に行ってい る。アジアについてはマスコミの関心も高 まっており、21世紀のアジア地域の情報の 重要性を見据えて、市民によりよい情報を 提供するため、新聞社間の交流や提携が非 常に活発になってきた。西日本新聞社も韓 国の釜山日報と提携しているほか、中央日 報、中国の華南文社とも交流を深めるなど、
アジア各国新聞社と積極的に交流事業を展 開している。
このような状況の中、97年のアジア開発 銀行福岡総会の折に、アジアジャーナリス ト会議を開催し、同地域の12カ国から新聞 記者を招いて、これからのアジアの相互発 展について活発な議論が交わされた。この 会議の最終目的は、アジア地域の交流、協 力や提携の促進であったが、会議中には歴
ジア(ここでは主に東南アジア)にお ける「市民社会」はヨーロッパ型の 市民社会とは異なる過程で形成されてきた。
市民社会について歴史的に考える際に重要 な大前提となるのが、アイデンティティと 経済という二つの問題である。まず、前者 について、われわれは自分と他者とを区別 し、他者と同化しようという認識を持ちつ つ(協力)、他者と違うということを認識し ながら(競争)、同時にこの二つを繰り返し 生活している。われわれが最初に出会う他 者とは家族であり、その次に共同体、それ から社会、民族、国家というようにカテゴ リーが大きくなっていくが、その中で上下 関係ができ、ピラミッド型の封建社会を形 成してきた。そのピラミッドの下部にいる 商業に従事する人々が、もう一つの全く別の ピラミッド型の共同体の商人と国境沿いで 経済活動を始め、二つの共同体の間に経済 的統合が生まれる。そし下からの統合を行 い、利益のあるところには国境を超えて結 びつき市民社会が形成される。その意味に おいて、国境を超えた経済活動は市民社会 の形成に非常に重要な役割を果たしている
史認識や従軍慰安婦問題など具体的な質問 も多くあり、日本が解決しなければいけな い数多くの問題があることを改めて認識さ せられた。
アジアとの交流を進めていく際に、もう 一つ重要なのはわれわれ日本人の意識の問 題である。アジアとの関係が深い九州・山 口では4000人以上の留学生を受け入れてい るが、そのうちの9割がアジアからの留学生 である。もちろん私たちは、留学生に日本 に対していい印象を持ってほしいという気 持ちで接しているつもりだが、実際日本に いる留学生の意見を聞くと、時々日本人の アジア人に対する心の底の差別感を感じる のだという。日本はアジアの一員だといい ながらも、「脱亜入欧」という言葉があるよ うに、アジアから抜けて欧米にあこがれる という昔の意識が、いまだに日本人の心の 奥底に根強く残っているのではないだろう か。
これからは、市民レベルでの交流を深め ることが一番必要だと言われているが、そ の実現はそう簡単なものではない。生活習 慣も、考え方も、経済状況も異なる人たちと
付き合っていくのだから、ただ単に善意の 施しとか同情とかという表面的な意識では いけない。歴史問題はもちろんのこと、自分 たちの考えについても明確な意見を持った 上で、アジアの人々と付き合っていくことが 大切だと思われる。
その一方で、「大衆はマスコミを超えた」
と言われる時代になってきている。誰もが 大量の情報を持てるようになり、マスコミ の分析に左右されずに自分で状況を判断で きるようになってきたのだ。かつてのアジ アの成長は、ほとんどが政府主導型で、大 企業、政府や官界の一握りの人たちが国を 動かしてきたが、今はそれをチェックする 力、また市民が中心となって国を動かして いくようなエネルギーを持った市民組織が 次第に増えてきた。このチェック機能を有 効に働かせるために、世の中の膿を出し、
世論に問うていく役割をマスコミは果たし ていかなければならない。同時に、21世紀 のアジアのよりよい社会の構築へ向けて、
民意の側に立って適正な情報を提供しなが ら市民と共に成長していくのがマスコミの 使命なのではないだろうか。
のである。また、市民社会は決して平和主 義や平等主義ではなく、「競争」と「協力」を 同時に行っているエゴイストの集まりで、
自分の理想に燃え、利益を共有したときに は連帯し、運動を起こし、かつ勝ったとた んに分裂するという、「協力」と「競争」を繰 り返していく能力と社会的自由を持ってい る人たちがつくっていく社会なのである。
しかし、アジアでは、ヨーロッパ諸国の 植民地支配によって共同体が分割支配され てしまい、二つの共同体の間の国境を超え た経済活動が封じ込められてしまった。そ の結果これを統合するような市民運動や市 民社会が発展しなかったのである。ところ が、このように市民社会の成熟があまり見 られないにもかかわらず、先取りする形で NGOという市民団体が異常な形で爆発的 に強くなっているのが東南アジアの現状で ある。これらの国では、本来国家が行うは ずの基礎的かつ重要な役割をNGOが補完 的に果たしているのである。さらに、近年 になって、東南アジアでは都市人口が急速 に増え、民と民の国境を超えた接触が異常 に増加し始めている。植民地時代に経験し なかった変化を彼らは今経験しているので ある。したがってこの地域には、国境を超 えて、ある共通の考え方や行動様式、価値 意識を持つ人たちによってアジア型市民社
会が形成されつつあるのである。
このような変化を経た後の今後の展望と しては、1)開発独裁体制に対して批判的 になり、政治体制を倒すのではないか(フ ィリピンやインドネシアの例など)、2)都 市部への一極集中の経済パターンが終わ り、都市と農村の格差是正への取り組みが 行われ、地方開発が進むのではないか、3)
都市部においては、人権、女性、環境、平 等など福祉社会の実現に市民社会が本格的 に動くのではないか、という三つのことが 予想される。
日本には、「シビルミニマム」というイ ンフラ整備などの最低限の市民社会を保証 するようなルールを地方政府が行ってきた 長い伝統がある。したがって東南アジア諸 国にこのプロセス、人材や制度を移転する ことが大切である。そのためには、日本の 地方自治体とNGOが協力し、相手の地方 自治体とNGOとも協力してシビルミニマ ムを実現する複合的協力と、お互いに干渉 できるルールを作っていく建設的関与が必 要である。これからの市民社会は、一極集 中、国家主導、独裁型に代わる非常に大き な可能性を持っていると思う。今後は、よ り地域社会同士、市民同士の結びつきを強 め、市民社会がリードしてアジアの統合を 進めていかなければならないだろう。
九
ア
中国の再生可能エネルギー開発に 関するADBのプロジェクトについ て調べたいのですが・・・。
当センターがADBから受け入れて いる寄託資料の中から、アジア各 地への開発援助プロジェクトにつ いての報告資料「Technical Assistance Report」に、中国の風力発電開発プロジェ クト(1998年)及び中国の再生可能エネル ギー開発プロジェクト(1998年)に関する 報告が掲載されています。
アジアを知る、アジアについての理解を深める書籍や新聞・雑誌が閲覧できます。
アジア太平洋センター内には資料・情報室を設置してお り、「異なる文化理解」と「地方発展」をキーワードに、ア ジア太平洋地域についての理解を深めるための各種資料を 幅広く収集し、市民の皆さんに公開しています。なかでも、
特に国内外の注目を集めているアジア地域の資料の充実に 力を入れています。アジア各地の生の情報をお伝えするた め、収集資料の言語は、日本語のほか韓国語、中国語、英 語を基本としています。
また、1998年5月に国立国会図書館に次いで国内で2番目 に、アジア開発銀行(ADB)寄託図書館に指定され、寄託 資料(主として英文)を継続して受け入れています。
アジア太平洋センターの収集資料は、どなたでも自由に 閲覧いただけますので、どうぞお気軽にご利用ください。
●各国・地域の実情を踏まえた、 相互理解 を深めるための基本文献(年鑑、統計書、
人名録、白書、地図等)
●社会制度や社会事情についての市販書籍
●官公庁や研究機関が発行する調査報告 書・研究紀要等
海外現地(タイ、マレーシア)で最近購 入した資料について、ほんの一例をご紹介 します。これらの資料は原則として英文で すが、なかなか日本では入手できない現地 情報が満載されています。
タ イ
タイの会社情報(1997-98)、運輸総合基本 計画(1997-2006)、タイの金融システム、
タイの株式市場(1997)、タイの健康統計
(1995-96)、タイ人名録(1997-98)、タイ・
ビジネスガイド、タイの税制、その他各種 統計資料等
マレーシア
マレーシアの慣習とエチケット、マレーシ アの年金法、マレーシア税金ガイド、マレ ーシアの法制度、 国家予算1998、マレーシ アの環境問題、マレーシア人名録(最新版)、 マレーシアにおける事業設立とマネジメン ト、その他各種統計資料等
アジア開発銀行(ADB)は、アジア太平洋地 域の開発を促進し、同地域の社会的・経済的 発展と福祉の改善・充実に貢献する、各種の 支援事業やプロジェクトを推進しています。
寄託図書館の制度は、ADBの幅広い活動に 対する関心の高まりと、ADBの事業に関する 情 報 を 広 く 普 及 す る 必 要 性 に 対 応 し て、
1994年に発足しました。主な受け入れ資料 は、ADBの広報資料、出版物カタログ、技術 援助に関する報告書、年次報告書などADB 事業を概観できる資料をはじめ、アジア太平 洋地域の経済協力、財政、教育、環境、資源開 発に関する研究報告など多岐にわたります。
10カ国・地域の3
8紙の新聞
12カ国・地域の1
54誌の雑誌 アジアを中心に 6,000冊を超える蔵書
【利用案内】
利用条件/どなたでも自由にご利用いただけます。
開室時間/9:30〜17:30(土・日曜日、祝日、年末年始は閉室)
主な収集資料
海外現地における購入資料の紹介
レファレンス コーナー
ADB寄託図書館の紹介
Q A
タイを訪れる日本人は年間どのく らいいるのでしょうか?
タイの主要な統計数値が掲載され た「THAILAND IN FIGURES 1997- 1998」(Alpha Research Co.,Ltd、
1997)では、国別にタイを訪れた人数(出 張、会議参加を含む。)が集計されています。
1996年にタイを訪れた日本人は93万4111 人で、外国人の中ではマレーシアの105万 6172人に次いで2番目であったことが分か ります。その他、月や年次により、観光客 数、空港利用者数をはじめ興味深い各種の 情報が掲載されています
A Q
アジア太平洋センター資料・情報室
(アジア開発銀行寄託図書館)
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アジア情報懇話会開催
この懇話会は、業務としてアジアにかかわっている企業・団体・行政機関が、情報の交流を通して多角的な視点から アジアに関する理解と認識を深め、業務展開上の参考としていただくことを目的とした意見交換会です。
アジア太平洋センター市民セミナー開催
「変わりゆく高齢者ケアのかたち〜アジア太平洋諸国からの現状報告」
第15回例会
(1998年12月16日)話題提供
「台湾の現状レポート」
台湾の対外貿易促進活動を日本で行って いる(財)遠東貿易サービスセンター福岡 事務所の鍾 次 誠所長から、標記のテーマで 話題提供をしていただきました。
鍾所長から、以下の説明がありました。
1.台湾の経済事情について
2.台湾と日本との経済における相違点 について
3.遠東貿易サービスセンターについて
懇話会での意見交換の主なもの は次のとおりです。
・台湾は、学生の留学指向が強い。
しかし、留学先はアメリカが圧 倒的に多く、日本への10倍であ る。このことは、人的ネットワ ーク等、将来への影響が大きい。
・最近、日本では台湾の情報が乏 しい。台湾でも年輩の人は親日 的であるが、これからは若い世 代の交流をもっと促進すべきで ある。
・日本経済は、東京あるいは大阪経由である。
貿易についても九州(福岡)は支店経済であり、
この市民セミナーでは、アジア太平 洋センターの自主研究3Bプロジェクト
「アジア諸国の勤労者福祉現状に関す る比較研究」 (1997年4月〜1999年3月)
の参加研究者が、各国の高齢者ケアの 現状について報告しました。
高齢者の自立を支える福祉システムの再 構築が求められる中で、特に経済力や住居 形態、生きがい、家族構成等が高齢者ケア を考える際の重要な要素になります。今回 のセミナーでは、宗教・文化、高齢化率等 で対照的な特徴を持っている、中国、マレ ーシア、オーストラリアの高齢者ケアの現 状について、家族や女性の視点を取り入れ て報告していただきました。
中国(楊 建 栄 氏)
・中国では、老齢年金は都市部に限られて おり、農村部には及んでいない。
・老齢年金は、政府・企業・個人の三者が 財源を拠出する形態に変わってきている。
・政府は、高収益企業に対して、年金受給 のための保険に積極的に加入することを 提唱している。
マレーシア
(ラヒマ・アブドゥル・アジズ 氏)
・まだ比較的若い国であるマレーシアでは、
高齢者を家庭で介護するという考え方が 根強く残っているものの、家族構成や価 値観の変化に伴い、高齢者ケアに対する 考え方も変わってきている。
オーストラリア
(ジョン・マッカラム 氏)
・家族が高齢者を一方的に介護するという だけではなく、高齢者も家族に貢献して いるという考え方を尊重している。
・例えば、孫の世話や家族の相談役、また 金銭的な援助等、双方向の支え合いなど がある。
最後にコーディネーターの片多教授から、
①高齢者のケアが在宅中心に移行してきて いること
②介護の中心が女性であること
③高齢者に対して教育・訓練の機会を与え 仕事を提供することの必要性、などにつ いてコメントをいただきました。
日時:平成11年3月2日(火)13:00〜16:00 場所:アクロス福岡会議室
【報告者】
楊 建 栄 氏
(中国/上海市人民政府発展研究センター対外経済研究処処長)
ラヒマ・アブドゥル・アジズ 氏
(マレーシア/マレーシア国民大学人類・社会学部長・教授)
ジョン・マッカラム氏
(オーストラリア/ウェスタン・シドニー・マカーサー大学衛生 学部長・教授)
【コーディネーター】
片多 順 氏
(福岡大学人文学部教授)
バイパス・ゾーンとなっている。(財)遠東貿 易サービスセンターに関係先リストがあるの で、活用していただきたい。
主 催 事 業 の 紹 介
アジア太平洋センターワークショップ開催
「IMF体制からの自立をめざして
〜21世紀の韓国産業政策への提言〜」
講 師:韓国・産業研究院院長 李 氏
コメンテーター:九州国際大学国際商学部教授 林 一信 氏 日 時:1999年1月22日(金)13:30〜16:00
場 所:福岡市庁舎講堂
韓国の経済政策に大きな影響力を持つ韓国政府のシンクタンクである産業研究院の 李院長から、韓国がIMF(国際通貨基金)管理体制からの脱却をめざして進めている構 造改革の現状や将来の韓国産業の展望などについて報告していただきました。
韓国経済の成長潜在力を回復させるためには、構造改革による経済体質の改善だけでは限界があり、知識基盤産業を積極的に育成するなど、新 たな産業振興政策の必要性を強調されました。
講演終了後、韓国経済に詳しい林教授に、会場からの質問を交えながらコメントをいただきました。
「日韓海峡経済圏の形成をめざして
〜福岡・釜山の役割について〜」
講 師:韓国・財団法人釜山発展研究院責任研究員 琴 性 根 氏 日 時:1999年2月3日(水)18:30〜20:30
場 所:アクロス福岡会議室
アジア太平洋センターのフェローシップ事業として招へいした初代の研究者である 釜山発展研究院の琴先生に、日韓の経済交流の促進及び日韓海峡圏経済圏の形成に当 たり、福岡と釜山の果たす役割とその可能性について報告いただきました。
日韓両国における経済交流について、韓国と九州の相互経済連携を一層強化することにより日韓海峡経済圏の形成が期待されていますが、福岡 と釜山は日韓協力のモデル地域であり、拠点都市としての果たす役割は大きいと解説していただきました。
「 『秘境』から世界の観光地へ
〜中国・雲南省における観光資源開発の現状と展望〜」
講 師:中国・雲南省政府経済技術研究センター副主任 車 志 敏 氏 コメンテーター:中国・雲南省政府経済技術研究センター主任 欧陽 国斌 氏 コーディネーター:久留米大学経済学部長・教授 駄田井 正 氏
日 時:1999年3月10日(水)13:30〜16:00 場 所:福岡市庁舎講堂
かつて「秘境」と言われた中国・雲南省は、本年の5月には中国初の世界園芸博覧会
が開催されるなど世界的な観光地に成長しつつあります。雲南省政府のシンクタンクの研究者である車氏に雲南における観光資源開発の現状と将 来への政策展望について報告いただきました。
また、コメンテーターの欧陽氏からは、報告に対する補足説明とコメントをいただき、後半はコーディネーターの駄田井教授の進行で会場から の質問を交えながらパネルディスカッションが行われました。
第5回ワークショップ
第6回ワークショップ
第7回ワークショップ
■表紙 ダダン・クリスタント《官僚主義》
インドネシア/1991-92年制作 福岡アジア美術館所蔵
ダダンは、観衆がインドネシアの社会現状に甘 んじるのではなく、彼の作品を通して批判的に考 えてほしいと願う。この作品では、よどんだ目で 薄気味悪く笑うヘルメットの男を頂点に、舌を出 し半ば狂ったような頭が続く。それは、スハルト 政権下の腐敗した官僚機構への痛烈な皮肉/批判 であるだろう。
INFORMATION
財団法人アジア太平洋センター
発 行 日/1999年3月31日
編集・発行/財団法人アジア太平洋センター
〒814 -0001 福岡市早良区百道浜二丁目3番26号 福岡タワーセンタービル2階
TEL092-852-1155 FAX092-845-3330 編 集 協 力/(有)サンアクト
印 刷/白木メディア(株)
●[アゴラ]は再生紙を使用しています。●[Agora]とは古代ギリシャの集会所、広場を意味する言葉です。
URL http://www.iijnet.or.jp/apc/
E-mail [email protected] Vol.7 No.24
編 集 後 記
年会費(毎年度1口以上納入いただきます)
個人会員:1口 3,000円 法人会員:1口30,000円 賛助会員の特典
◆センターが発行しているニューズレター「アゴラ」やニュース・レポー ト「中国動向」及び「韓国動向」、研究誌「A P Cアジア太平洋研究」等 の刊行物をお送りいたします。
◆センター主催の講演会、ワークショップ等にご案内いたします。有料のもの は受講料が割引になります。
◆企業内セミナーなどの講師についてご相談に応じます。ほかにもいろいろな 特典がありますので、この機会にぜひご加入ください。
福岡アジア美術館が3月6日華々しくオープンした。アジアの近現代美術を専門とする世界で初め ての美術館の誕生である。アジア各国のアーティストが来福し交流型の美術館をめざすという。福 岡市が推進している「アジアの学術・芸術の交流拠点づくり」の核となる施設が、また新しく加わ ったことになる。
アジア太平洋センターは、1992年の設立以来、共同研究や国際シンポジウムの開催等を通じ国内 外の研究者との交流を続けてきたが、ようやくそのネットワークが実を結びつつある。学術・芸術 の交流は一朝一夕に成果があらわれるものではないが、福岡アジア美術館とともに、今後もアジア を中心とした国際的な学術・芸術のネットワークづくりを地道に進めていきたい。
当センターの事業・趣旨に賛同し、アジア太平洋地域の知的交流や国際理解を深めるためのAPCの活動を応援していただける 賛助会員の方を募集しています。会員には個人、法人の2種類があります。
ニューズレター
今回新たにご加入いただいた会員の皆様をご紹介いたします。
ご加入誠にありがとうございます。
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井竿 富雄 一星 高公 梅木 利巳 梶原 泰治 北村 敏郎 楠 保典 小副川人司 小松 清一 小柳 秀次 坂口 勝春 高木 道明 南 炳順 橋本 修一 渕上 裕子 三浦 邦彦 水野 正幸 宮上 良二 三宅 教道 山川 昌昭
(五十音順・敬称略)
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アジア太平洋センター(APC)賛助会員募集中
研究誌「APCアジア太平洋研究」第3号を刊行
この度、当センターの研究誌「APCアジア太平洋研究」(1997年3月創刊)
第3号の日本語版と英語版を刊行しました。この研究誌では、当センターの 基本テーマである「異なる文化理解」と「地方発展」に沿った研究や取り組み を取り上げ、アジア太平洋地域における学術研究交流の推進と同地域が共に 抱えている課題の解決のための一助となればと考えています。
第3号では、「アジアに見る分権・参加・民主主義」というテーマで特集を組 み、日本、中国、シンガポールの研究者の論文を掲載しています。また、特 集のほかにも国内外の研究者・研究機関から多数のご寄稿をいただいていま す。購読をご希望の方は、アジア太平洋センターまでお問い合わせください。