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The impact of Kanji ability to readingcomprehension in intermediate to pre-advancedJapanese learners

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

The impact of Kanji ability to reading

comprehension in intermediate to pre-advanced Japanese learners

斉藤, 信浩

九州大学留学生センター : 准教授

武田, 英里子

九州大学留学生センター : 非常勤講師

https://doi.org/10.15017/4782067

出版情報:九州大学留学生センター紀要. 23, pp.61-68, 2015-03. International Student Center, Kyushu University

バージョン:

権利関係:

(2)

2015, No.23, 61-68

1 .はじめに

日本語の初級学習者においては、漢字圏学習 者(注1)が漢字や漢語知識を有していることか ら、語彙習得の点で優位であったり、準漢字圏 学習者が第一言語の文法との類似性のために文 法習得が比較的容易であったりすると感じられ る。しかしながら、文法能力が中上級レベルの 日本語力に達すると、日本語力全般において一 定の言語知識を有し、語圏(注2)ごとの能力差は 小さくなるということも予測される。それで は、実際に、中上級レベルの日本語学習者を漢 字圏学習者、準漢字圏学習者、非漢字圏学習者 に大別して言語能力を測定した場合、どのよう な能力差が見られるのであろうか。

本研究では、まず、これらの3群の学習者を 文法能力で同一に統制した後、聴解テストと読 解テストを行い、聴解能力と読解能力にどのよ うな差が生じるかを検証する。次いで、語彙能 力と漢字能力を問う調査を行い、それぞれの能

力の細部を検討していく。これらの2つの検証 から、漢字圏学習者、準漢字圏学習者、非漢字 圏学習者の間の能力差を分析し、中上級レベル でのそれぞれの語圏ごとの言語能力の差を記述 することを本稿の目的とする。

2 .被験者の抽出

調査に際し、まず被験者のレベルを同一に し、中上級学習者を抽出した。中上級学習者を 調査対象としたのは、ある一定レベルの日本語 力を有していることが必要であるからである。

全く日本語に関する基礎知識が欠けているので あれば、読解自体が困難であり、読解と語彙能 力との関係は測定できない。また、非漢字圏は 当然のことながら、漢字能力は日本語学習と共 に養われるため、一定レベルの日本語力がなけ れば、漢字圏学習者との比較は意味をなさな い。このような条件のため、被験者のレベルを 文法能力で統制し、中上級学習者を抽出した。

九州大学留学生センター准教授 [email protected]

** 九州大学留学生センター非常勤講師 [email protected]

漢字圏、非漢字圏、準漢字圏の日本語学習者の 読解テストにおける漢字能力の影響

キーワード:読解テスト、漢字能力、中上級、分散分析、重回帰分析

The impact of Kanji ability to reading comprehension in intermediate to pre-advanced Japanese learners

斉 藤 信 浩

武 田 英里子

**

(3)

62 斉藤 信浩・武田英里子

統制に使用する文法テストは、旧日本語能力 試験1級~4級に準拠したレベルで作成された 1問1点のテスト60問で、四肢選択式で正しい ものを選択する。試験時間は30分、この制限時 間内で回答させた。試験問題の一部を以下に示 す。実際のテストでは漢字にはふりがなが振ら れており、漢字の読みによる負担を軽減してあ る。

問1)せんしゅう ぜんぜん テレビを        

①みます ②みません ③みました 

④みませんでした

問2)社会の高齢化は日本人     、   大きな問題です

①に対して ②のために ③にとって 

④によって

問3)先生、この論文を

       のですが。

①拝見したい ②ご覧になりたい ③見たい

④見られたい

この文法テストを153名の日本語学習者に実施 し、文法能力を測定した。この文法テストの信 頼性を検証するために、内部一貫法と呼ばれ る、クロンバックのα信頼度係数を導き出し た。文法テストのクロンバックの信頼度係数は α=.937(N=60)であり、極めて高い信頼度を示 した。

得点は図1の通りに分布をしている。縦軸は 度数(人数)であり、横軸は得点である。全60 問(60点満点)の平均値は38.12点、標準偏差は 13.93であった。平均点から+1標準偏差がこの テスト分布の上位に当たる。この平均値38.12点 から+1標準偏差の52点 (注3)を中上級レベル と設定し、52点±2点の範囲から抽出された学

習者を本稿が対象とする中上級学習者と認定し た。抽出された中上級学習者は27名で、語圏別 の内訳は、非漢字圏学習者13名、準漢字圏学習 者8名、漢字圏学習者6名である。これら27名 の学習者を文法能力が同一に統制された調査対 象(被験者)と見做し、本調査を行った。

3 .文法能力に対する聴解能力と読解能力 の比較

文法能力を同一に統制した被験者の聴解能力 と読解能力の関係がどのようになっているのか を検証するために、聴解テストと読解テストを 実施した。聴解テストは、旧日本語能力試験の 1級~4級に準拠したレベルで、文章レベルの 聴解テープを流した後、内容について四肢選択 式の設問で問うものである。1問1点の18問を 用意し、うち前半の9問は絵や図などを見て聴 解問題の設問に回答するもの、後半の9問は聴 解問題の設問が音声のみで流れる形式のもので ある。聴解テストの制限時間は50分である。読 解テストも旧日本語能力試験の1級~4級に準 図1 文法テストの得点分布(60点満点)

(4)

拠したレベルで読解文を用意し、内容について 問う設問を1問1点の38問用意した。読解テス トの制限時間は45分である。

これら文法テスト、聴解テスト、読解テスト の そ れ ぞ れ の 平 均 点(M) お よ び 標 準 偏 差

(SD)は以下、表1の通りである。文法テスト の平均点は、非漢字圏学習者(n=13)が52.15点

(SD=3.262)、準漢字圏学習者(n=8)が53.13点

(SD=2.475)、漢字圏学習者(n=8)が50.50点

(SD=3.937)である。この文法能力に対して、

18問からなる聴解テスト(α=.730)と38問から なる読解テスト(α=.849)の得点を、語圏ごと に差があるかどうか、一元配置の分散分析

(one way ANOVA)によって検討した。結果は 表1に展開した通りである。

文法テストで統制しているため、当然だが、

文法テストの平均点には主効果に有意差が見ら れない。聴解テストの平均点においても主効果 に有意差が見られず(F(2,24)=1.588, p=.225))、

語圏ごとの平均点に差がなかった。一方、読解 テストにおいては主効果に有意差が見られた

(F(2,24)=4.440, p<.05))。そこで、シェフェの 多重比較によって検証したところ、非漢字圏

(M=47.38、SD=12.907)と準漢字圏(M=59.50、

SD=14.051)の間には有意差が見られず、準漢 字圏と漢字圏(M=64.00、SD=8.944)の間にも

有意差が見られなかったが、非漢字圏と漢字圏 の間には有意差が見られ、漢字圏が非漢字圏よ りも有意に平均点が高かった。この結果、文法 力が同一に統制された場合、聴解においては語 圏ごとの差がないが、読解においては漢字圏学 習者が僅差であるがやや有利に読解を進めてい るということが分かった。

4 .読解力に対する語彙力の検証 4 . 1 .語彙選択問題の概要

それでは、語圏ごとの語彙力と読解力との関 係はどのようになっているのであろうか。この 検証のために、表2に展開されている外来語と 漢字語によって、被験者の語彙能力を測定する ためのテストを行った。設問は文章に( )が あり、選択肢の中から外来語を選択する外来語 選択問題が10問、同様に漢字語彙を選択する漢 字語選択問題が10問、計20問の選択式の問題が あり、これらの20問の語彙を選択する能力から 被験者の語彙を予測的に記述する。

提示される語彙は、中上級レベルで使用され る日本語教科書から抽出したものである。

4 . 2 .語彙選択問題の結果

まず、全体の語彙力を予測するために、語圏 表1 語圏ごとによる文法テスト、聴解テスト、読解テストの平均点の比較(ANOVA)

文法テスト 聴解テスト 読解テスト

平均 標準偏差 平均 標準偏差 平均 標準偏差

非漢字圏 n=13 52.15 3.262 64.15 14.588 47.38 12.907

準漢字圏 n=8 53.13 2.475 73.50 14.010 59.50 14.051

漢字圏 n=6 50.50 3.937 57.33 25.073 64.00 8.944

分散分析 主効果 F(2,24)=1.15, p=.333 F(2,24)=1.588, p=.225 F(2,24)=4.440, p<.05

多重比較 ns ns 準=漢>非

注1:p<.05. **p<.01. ***p<.001. ns=not significant

(5)

64 斉藤 信浩・武田英里子

ごとに外来語選択問題と漢字語選択問題におい て差が出るかどうか、その平均点を一元配置の 分散分析で検証した結果が表3である。

この結果、選択問題においては、語圏ごとに 主効果で有意差が見られず、文章の中で適切な 語彙を選択する能力は漢字圏であっても非漢字 圏であっても特有の差は見られなかった。

4 . 3 .漢字の書き能力と読み能力の概要 それでは、漢字の読み能力、書き能力の面に おいてはどのような差が見られるのであろう か。中上級レベルで使用される日本語教科書か ら抽出した語彙を文章として提示し、文章内に ある下線のひらがなでの語彙を漢字に書きかえ る「漢字書き問題」が15問、下線の漢字を読む

「漢字読み問題」が15問、合わせて30問の漢字問 題を作成した。漢字の書き問題の一部を以下に 示す。

①ダイヤモンドは世界でいちばんかたい石で す。

②日本は自動車や機械などをたくさんゆしゅ つしています。

漢字の読み問題は以下のようになっている。

①彼はこの会社に入って、得意な日本語の能 力を発揮して、すぐにトップになった。

②みんなのまえで先生にほめられて、照れて しまった。

漢字テストの全体の出題問題を以下、表4に 示した。表2の語彙選択テスト20問と表4の漢 字書きと読みテストは同一のテスト用紙の中 で、一斉に解答させたものである。

4 . 4 .漢字の書き能力と読み能力の結果 漢字の読み問題の平均点を語圏ごとに一元配 表2 語彙テスト概要

外来語選択問題 漢字語選択問題

カーテン リラックス そくばく あっとうてきな

パスワード サポート しんや たはつする

エプロン カンニング いくじ そうなんする

イベント リニューアル じゅうなんな きゅうじょする

ベージュ リサイクル れいせいな ぼうはん

表3 語圏ごとの選択問題の平均点の比較(ANOVA)

非漢字圏 準漢字圏 漢字圏 全体

n=13 n=6 n=8 n=27 F値

外来語選択問題 平均 9.31 8.75 8.33 8.93

F(2,24)=1.432, p=.258  ns 標準偏差 1.11 1.04 1.63 1.24

漢字語選択問題 平均 9.23 9.38 8.67 9.15

F(2,24)=1.163, p=.330  ns 標準偏差 .73 .52 1.51 .91

注1:p<.05. **p<.01. ***p<.001. ns=not significant

(6)

置の分散分析で比較検討した結果を表5に示し た。筆者らの予想に反して、語圏ごとの差は殆 ど見られず、ほぼ全ての項目で主効果に有意差 が見られなかった。「待合室」「照れる」の2項 目のみで有意差が見られたが、寧ろ、漢字圏学 習者の平均点の方が低いという結果であった。

次に、漢字の書き能力の結果を表6に示し た。読み問題と同様に、一元配置の分散分析で 語圏ごとの平均点を比較したものである。その

結果、漢字の書き能力においても語圏ごとの差 が見られず、ほぼ全ての項目で主効果に有意差 が見られなかった。主効果で有意差が見られた 項目は「輸出」「迷惑」の2項目だけであり、特 定の傾向も見られなかった。

それでは、表1の検証で明らかになった、漢 字圏学習者が非漢字圏学習者よりも若干である が、読解テストの得点が高かったという現象は 何に起因しているのであろうか。読解テストの 表4 漢字の書きと読みのテスト概要

漢字書き問題 漢字読み問題

制服 平等な 発揮する 明け方 硬い 輸出する 水車 自主的な 着用する 部位 迷惑な 揺れる 待合室 不可欠な 照れる 色彩 気軽な 支度する

赤道 甚大な 載る 日差し 記録的な 際立つ

お薦め 非凡な 見直す 景気 貴重な 持参する

表5 漢字の読み能力における語圏ごとの比較(ANOVA)

設問 解答 非漢字圏n=13 準漢字圏n=6 漢字圏n=8 全体n=27 F値

制服 せいふく 1.00(.000)1.00(.000)1.00(.000)1.00(.000) - - 平等 びょうどう 0.92(.277)1.00(.000)1.00(.000)0.96(.192) F(2,24)=.519, p=.602 ns 発揮 はっき 0.77(.439)0.88(.354)1.00(.000)0.85(.362) F(2,24)=.847, p=.441 ns 着用 ちゃくよう 1.00(.000)1.00(.000)0.83(.408)0.96(.192) F(2,24)=1.867, p=.176 ns 自主的 じしゅてき 0.92(.277)0.50(.535)0.67(.516)0.74(.447) F(2,24)=2.618, p=.0.94 ns 不可欠 ふかけつ 1.00(.000)1.00(.000)0.83(.408)0.96(.192) F(2,24)=1.867, p=.176 ns 水車 すいしゃ 1.00(.000)1.00(.000)0.83(.408)0.96(.192) F(2,24)=1.867, p=.176 ns 待合室 まちあいしつ 1.00(.000)1.00(.000)0.67(.516)0.93(.267) F(2,24)=4.667, p<.05 甚大 じんだい 0.46(.519)0.75(.463)0.50(.548)0.56(.506) F(2,24)=.840, p=.444 ns 赤道 せきどう 0.85(.376)0.63(.518)0.83(.408)0.78(.424) F(2,24)=.725, p=.494 ns 照れる てれる 1.00(.000)0.50(.535)0.50(.535)0.74(.447) F(2,24)=5.778, p<.01 **

載る のる 0.92(.277)0.75(.463)0.83(.408)0.85(.362) F(2,24)=.556, p=.580 ns 見直し みなおし 1.00(.000)1.00(.000)1.00(.000)1.00(.000) - - お薦め おすすめ 1.00(.000)1.00(.000)1.00(.000)1.00(.000) - - 非凡な ひぼんな 0.46(.519)0.75(.463)0.50(.548)0.56(.506) F(2,24)=.840, p=.444 ns 注1:p<.05. **p<.01. ***p<.001. ns=not significant

注2:数値は平均値、( )内は標準偏差

(7)

66 斉藤 信浩・武田英里子

得点とそれぞれの得点項目との因果関係はどの ようになっているのかを検証していく。

ここまでの調査で行った「漢字読みテスト」

「漢字書きテスト」「外来語選択」「漢字語選択」

「文法テスト」を独立変数(予測変数)、読解テ ストを従属変数(説明変数)としてその得点を 予測する重回帰分析(5%有意のステップワイ ズ法)を行った (注4)。その結果、「読みテスト」

の得点のみが読解テストの得点と有意な因果関 係が見られた(R2=.280, β=.529, p<.05)。結果は 表7の通りである。

この結果は読解力の得点の向上には、「漢字読 みテスト」の得点の向上が関係しており、他の

「漢字書きテスト」「外来語選択」「漢字語選択」

「文法テスト」の得点の変化は読解の得点の向上 とは関連性がないということを示している。

5 .おわりに

語圏別の被験者を、文法能力で同一に統制し た場合、読解テストにおいて、やや漢字圏学習 者の得点が高い結果となった。しかし、一方で、

聴解テストにおいては差が見られなかった(表 1参照)。このことは、聴覚情報としては、非漢 字圏も準漢字圏も漢字圏も関係なく、同一の文 法力、語彙力、聴解力で回答を進めており、語 圏間での有利さの差はないが、読解テストにお いては視覚情報という識字面でやはり漢字圏学 習者がやや有利であるということを意味してい る。このことから、これらの理由について予測 されうるのは、非漢字圏や準漢字圏の学習者よ りも漢字圏学習者は漢字力が高く、それが読解 テストを有利に進めているということである。

表6 漢字の書き能力における語圏ごとの比較(ANOVA)

設問 解答 非漢字圏n=13 準漢字圏n=6 漢字圏n=8 全体n=27 F値

かたい 硬い 0.85(.376)0.75(.463)0.83(.408)0.81(.396) F(2,24)=.144, p=.866 ns ゆしゅつ 輸出 1.00(.000)0.63(.518)1.00(.000)0.89(.320) F(2,24)=5.067, p<.05 ひざし 日差し 0.46(.519)0.88(.354)0.67(.516)0.63(.492) F(2,24)=.1891, p=.173 ns いくぶん 幾分 0.77(.439)0.50(.535)0.67(.516)0.67(.480) F(2,24)=.764, p=.477 ns あけがた 明け方 0.85(.376)0.50(.535)0.67(.516)0.70(.465) F(2,24)=1.442, p=.256 ns したく 仕度 0.69(.480)0.75(.463)0.50(.548)0.67(.480) F(2,24)=.480, p=.625 ns きがる 気軽 0.92(.277)0.75(.463)0.83(.408)0.85(.362) F(2,24)=.556, p=.580 ns ぶい 部位 0.85(.376)0.88(.354)0.83(.408)0.85(.376) F(2,24)=.024, p=.976 ns きろくてき 記録的 0.62(.506)0.75(.463)0.67(.516)0.67(.480) F(2,24)=.182, p=.835 ns きわだたせる 際立たせる 0.69(.480)0.63(.518)0.67(.516)0.67(.480) F(2,24)=.045, p=.956 ns きちょう 貴重 0.54(.519)0.88(.354)0.83(.408)0.70(.465) F(2,24)=1.678, p=.208 ns めいわく 迷惑 0.38(.506)0.75(.463)1.00(.000)0.63(.492) F(2,24)=4.508, p<.05 しきさい 色彩 0.69(.480)0.75(.463)0.83(.408)0.74(.447) F(2,24)=.194, p=.825 ns じさん 持参 0.69(.480)0.75(.463)0.67(.516)0.70(.465) F(2,24)=.058, p=.944 ns けいき 景気 0.62(.506)0.75(.463)1.00(.000)0.74(.447) F(2,24)=1.595, p=.224 ns 注1:p<.05. **p<.01. ***p<.001. ns=not significant

注2:数値は平均値、( )内は標準偏差

(8)

次に、この語彙力について、語圏間の語彙能 力の差を検証すべく実施した外来語選択と漢字 語選択問題では、予測に反して、外来語も漢字 語も特に漢字圏学習者が高いわけではなく、語 圏間に差が全く見られなかった(表3参照)。更 に、漢字自体の能力を測定するために実施した 漢字読み問題と漢字書き問題では、これも予測 に反して、語圏ごとの差が見られず、漢字の読 み書きに対して、語圏ごとに大きな差が無いこ とが分かった(表5、表6参照)。

この結果を受けて、読解テストの得点には何 が影響しているのか、5つの項目(「文法テス ト」「漢字読みテスト」「漢字書きテスト」「外来 語選択」「漢字語選択」)との関係を検証した結 果、「漢字読みテスト」のみが読解テストの得点 を有意に予測していることがわかった(表7参 照)。非漢字圏と準漢字圏の学習者と漢字圏学 習者の間で聴解テストの得点に差がなかったこ とと併せて分析すると、これは即ち、非漢字圏 と準漢字圏の学習者は表意文字としての漢字を 読んで音声情報化されれば、その意味を取るこ とができ、その能力の促進が読解の得点を向上 させると考えることができる。それに対して、

漢字圏学習者は識字力があるために、他の語圏

の学習者よりも、やや読解テストで有利に得点 していたと考えることができるが、この差を もって、漢字圏学習者が他の語圏の学習者より も特段に日本語学習に有利であるということは 言えないことが観察された。

参考文献

加納千恵子,大神智春,清水百合,郭俊海,石井奈保美,

谷部弘子,石井恵理子(2011)『日本語教育叢書つ くる 漢字教材を作る』,スリーエーネットワーク.

国際交流基金,日本国際教育協会(2004)『日本語能力 試験出題基準(改訂版)』,凡人社.

小森和子(2010)『中国語を第一言語とする日本語学習 者の同形語の認知処理過程』,風間書房.

斉藤信浩,菊池富美子,山田明子(2012)「漢字圏学習 者の文法テストと読解テスト得点の非対称性の検 証-読解問題の検証を通して-」『韓国日本文化学 報』54,pp.51-63,韓国日本文化学会.

1) 本研究では、第一言語での漢字および漢字語の使 用状況から次のように定義する。まず、漢字圏学習者 とは、第一言語に漢字語彙を有し、且つ、漢字を表記 として常用している主に中国大陸出身者(中国語母語 話者)のことである。次に、第一言語に漢字語彙を有 しているが、漢字を表記として日常的に使用していな い、主に韓国出身者(韓国語母語話者)を準漢字圏学 習者とする。そして、第一言語に漢字語彙を有してい ない言語圏の学習者を非漢字圏学習者と定義する。

表7 読解を予測する重回帰分析(ステップワイズ法)

従属変数(予測変数) R2=.280(調整済みR2=.232)

読解テスト 54.67(14.115)

独立変数(説明変数) β t

漢字読みテスト 12.85(1.912) .529 2.416 漢字書きテスト 10.93(3.751) -.007 ns 外来語選択 8.93(1.238) -1.308 ns 漢字語選択 9.15(0.907) -1.150 ns 文法テスト 52.07(3.234) -.268 ns 注1:p<.05. **p<.01. ***p<.001. ns=not significant

注2:数値は平均値、( )内は標準偏差

(9)

68 斉藤 信浩・武田英里子

2) 語圏の定義については、加納千恵子(2011)、小森

和子(2010)を参照。本稿においても、第一言語での 漢字使用状況からの3分類(漢字圏、準漢字圏、漢字 圏)の視点から語圏という用語を用いている。

3) 平均点38.12点+標準偏差13.93=52.05であり、52点

が+1標準偏差である。

4) 回帰分析は、従属変数の数値に対して、独立変数

の数値が比例的、あるいは反比例的な変動を示すの か、即ち、従属変数の得点が上昇すれば、独立変数の 得点も上昇し、従属変数の得点が減少すれば、独立変

数の得点も減少するというような因果関係を検証す るものである。R2の値は従属変数の得点変動のうち 何%を説明できるかを示しており、例えば、表7での R2=.280は従属変数の得点変動の28%を説明する説明 力があるということになる。βは標準化係数であり、

その数値は.000 ~ 1.000の間で推移し、その数値の大 きさが因果関係の強さを示している。独立変数が複数 で検証される場合を重回帰分析と言い、本検証では回 帰分析が複数回繰り返されるステップワイズ法を採 用し検証を行った。

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