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Generalized Reciprocity and Solidarity in the Net-base Theoretical Framework

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Kyushu University Institutional Repository

Generalized Reciprocity and Solidarity in the Net-base Theoretical Framework

三隅, 一人

九州大学大学院比較社会文化研究院社会情報部門社会変動講座

https://doi.org/10.15017/1456061

出版情報:比較社会文化. 20, pp.77-86, 2014-03-25. Graduate School of Social and Cultural Studies, Kyushu University

バージョン:

権利関係:

(2)

『比較社会文化』 第20号 (2014) 77~86 Bulletin of the Graduate School of Social and Cultural Studies, Kyushu University vol.20 (2014),pp.77~86

一般化された互酬性と連帯

―関係基盤論の枠組みから―

Keywords: Solidarity, generalized reciprocity, net-base, social capital 2013年10月28日受付,2013年12月27日受理

三 隅 一 人

Kazuto MISUMI

キーワード:連帯、一般化された互酬性、関係基盤、社会関係資本

1 社会関係資本としての連帯

 連帯の概念には常に、まとまりと広がりの両方の側面 が関わる。この両義性がもつ難しさは、連帯している

<われわれ>の輪を少しでも広げようとするときに、明 示的となる。Hechter(1987)は、メンバシップが明確で 排他的に共同財 joint goods を供給できることが、集団 がより連帯的であるための条件だという。だとすると一 般には、<われわれ>は小規模である方が強い団結を保 ちやすく、価値ある集合財を供給できる。しかし、連帯 の目的に、スケールメリット(ないしある種の臨界点)

をともなう集合行為が関与する場合には、<われわれ>

が規模を拡張することは不可欠である。なおかつ、共同 財はその規模拡張によってはじめて実現されるのであろ うから、当初は十分な誘引なしで規模拡張が図られなけ ればならない。したがって、連帯の規模拡張が孕むフ リーライダー問題は依然として残る。このように連帯の 第一義的な理論的課題は、まとまりと広がりの両義性を どう説明するかというところにみいだされる。

 連帯は、それによってはじめて一定の行為を人びとか ら引き出しうる社会構造の要素である点において、社会関 係資本として考えることができる。社会関係資本は、資 本の類推概念として、資本蓄積に類した社会過程を社会 構造の中に見いだし、その過程に関わる社会構造のメカ ニズムを分析焦点とする(三隅, 2013)。そうした分析焦点 として注目されてきたのが、結束型の資本蓄積と橋渡し 型のそれとの調整問題である(Burt, 2001)。明らかにこれ は、連帯のまとまりと広がりの両義性とパラレルな問題で あり、その意味で、社会関係資本としての連帯の主題を 結束型と橋渡し型の調整問題として定めることができる。

 前述のように、大規模連帯については、基本は人びと の合理的選択にあるとしても、一方では大きな不確実性 をともなうので、少なくとも人びとの認知においてそれ によるリスクは小さく見積もられる必要がある。そうし た認知リスクの軽減に関わる社会的装置として、本稿で は規範的なメカニズムに着目する。例えばÉ. Durkheim の有機的連帯は、分業化した社会の大規模連帯を問題化 しているが、分業により高度に異質化した諸要素が機能 的に関係づけられるために、その基盤として道徳的紐帯 が不可欠だとされる(松田・三隅, 2004)。こうした社会 の基盤的な規範的メカニズムが、共同財の実現可能性に 関する人びとの信念に影響を与え、大規模連帯の行方を 左右することは十分に考えられる。

 そのような規範として「信頼」や「寛容」とともに注目 されてきたものとして、「一般化された互酬性」general- ized reciprocity がある。古典的には、非直接交換の社 会統合機能を論じた Lévi-Strauss(1967)や Malinowski

(1922) の人類学的研究が思い起こされる。この主題は その後も、とりわけ社会心理学の分野で実験的な交換 ネットワーク研究として展開されてきた。そこでのより 特定化された主題は、間接的な互酬性(かつ一方向的な 交換)による協力行動(ないし連帯感)の促進(Molm et al., 2007; Takahashi, 2000)であり、そこに介在するフ リーライダー問題への対処である(Yamagishi and Cook, 1993)。ただし、そこでいう間接的互酬性は交換形態を 指しており、フリーライダーの抑止に関わる規範とし ては、むしろ一般的信頼(山岸, 1998)、あるいは、社会 的カテゴリーの共有による内集団互酬性 in-group reci- procity(Yamagishi and Kiyonari, 2000)ないしは境界を もって一般化された互酬性[Yamagishi et al., 1999])等

論 文

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が論じられてきた。こうしてみると、これらの研究にお ける規範としての互酬性は、その作用力ベクトルとして は Hechter の集団連帯と同様に「広がり」の抑止に向い ている。その一方で R.D.Putnam は、「正しく理解され た自己利益」の類推として、一般化された互酬性を市民 社会の規範的な条件として論じ、一気に全体社会レベル の議論に乗せた。

  互酬性は、一九世紀の経済不安に対応するために編み 出された相互扶助協会と同様に、中世イタリア北部の コムーネ共和政の市民にとって、安全をめぐるジレン マを和らげる「塔仲間」やその他の自助団体の核をな した。一般化された互酬性の規範は、利己心と連帯を 調和するのに役立つ。(Putnam, 1993: 訳214)

 いまわれわれに求められるのは、この2つのレベルを つなぐメゾ・レベルにおいて、一般化された互酬性の規 範的な影響に関わる社会的プロセスをとらえる視点であ ろう。

2 一般化された互酬性が連帯を促す仕組み-関係 基盤論に立脚して

 連帯の広がりは、社会関係資本の橋渡し型の蓄積過 程として捉えられるが、そこで留意されるのが弱い紐帯 weak tieとの関係である。Granovetter(1973)は、弱い紐 帯が社会統合機能をもつことを論じた。強い紐帯の場合 は推移律が成り立つ(AとBおよびBとCが友人であれば AとCは友人である)ことを前提にすれば、ブリッジは弱 い紐帯でなければならない。このブリッジの意味におい て、弱い紐帯は、分断された下位集団の間を連結して社 会統合に貢献する、まさにそのような紐帯になっている。

 この議論のポイントは、弱い紐帯の概念が、紐帯そ のものの性質ではなく、それがブリッジないし Burt

(1992)のいう構造的空隙 structural holes の所在を示す 社会構造指標であることを明示するところにある。いい かえれば、弱い紐帯は、異なる結束型社会関係資本の蓄 積を互いに結びつける橋渡し蓄積を主題化する概念なの である。

 Misumi(2008)によれば、社会関係資本の蓄積場は関 係基盤net-baseである。関係基盤とは、集団よりも高い 抽象度において人びとのつながりの基盤となる(Schutz

[1962]に則していえばシンボルとして < われわれ > 関 係を間接呈示する)共有属性を指す。個人は、生得的に または選択的に、血縁、民族、国民、同郷、同窓等、さ まざまな関係基盤に関与する。関係基盤は、一定の明確

さである種のメンバシップを有するので、1つの関係基 盤上に、その基盤を共有するすべての人びとから成る1 つのソシオセントリック・ネットワークを定義すること ができる。そうすると、複数の関係基盤に積極的に関与 する個人は、それらの基盤上のネットワークを互いにつ なぐ連結点のような存在としてみることができる。より 一般的にいえば、個人が関与する関係基盤の多様性は、

その人自身が弱い紐帯となって橋渡し資本蓄積に関わ る、その蓋然性の高さを示すのである。

 Markovsky and Lawler(1994)が定式化した社会ネッ トワーク論的な連帯概念によれば、行為者の集合は到達 可能性が高いとき凝集的であり、なおかつクリークが 少ない(構造一体性が高い)とき連帯的である。さらに Markovsky and Chaffee(1995)は、共有された自己同 定にもとづくある種の集団メンバシップ(社会的アイデ ンティティ)に着目し、それを社会的誘引として形成さ れる同定結合 identity bonds が、大規模な行為者集合に おいて到達可能性を高める仕組みを論じた。すべての関 係基盤は潜在的に、シンボル化して社会的アイデンティ ティの対象となりうる。したがって基本的には、連帯の 関係基盤論を Markovsky らの定式化に則して考えるこ とは可能である。

 関係基盤論では、社会的アイデンティティのレベルを 関係基盤の抽象度(ないし包括度)に則して捉えること ができる。連帯の広がりに関わるのは、より抽象度が高 く、したがって包括的な関係基盤である。そのような抽 象的な関係基盤が社会的アイデンティティの対象として 顕在化する度合いが低い、ないし、局所的にしか顕在化 しない場合、具体的な関係基盤ネットワークが全体とし て示すクリーク構造がより明示的になるだろう。一方、

それが社会的アイデンティティとして広域的に顕在化す ると、抽象的レベルでの人びとの結びつきがより密にな り、具体的水準の関係基盤ネットワークにおける構造的 空隙が埋められる。このように、すべてのレベルの関係 基盤ネットワークを包含するソシオセントリック・ネッ トワークを考えるとき、同定結合はそのネットワークに おける到達可能性を高める効果をもつと考えられる。

 一方、抽象度の高い(例えば「日本人」のような)同定 結合が、種々の具体的な関係基盤ネットワークの間に生 み出す結びつきは一般にきわめて粗であろうから、それ が全体としての構造一体性を高める効果は限られるであ ろう。それを補ってより具体的な水準で構造一体性を高 める仕組みは、人びとが関わる関係基盤の多様性であ る。人びとが多くの共通でない関係基盤に積極的に関わ ると、彼ら自身がブリッジとなって、ある関係基盤にお けるクリークが別の異なる関係基盤のクリークと結びつ

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一般化された互酬性と連帯―関係基盤論の枠組みから―

くようなことが、錯綜的に展開しやすくなる。そのよう な関係基盤間の結びつきが、ある同じ関係基盤を共有し ながら互いに遠い位置にいた人びとを結びつけることも あるだろう。こうして、人びとの関係基盤の多様性は、

すべてのレベルの関係基盤ネットワークを包含するソシ オセントリック・ネットワークにおいて、全体的に構造 一体性を高める効果をもつ。

 したがって、ここでいう多様性に、関係基盤の種類と ともに抽象度の水準の違いを含めれば、Markovsky ら に則した連帯のネットワーク構造条件として、人びとが 関与する関係基盤の多様性を考慮すればよいことにな る。

 以上のような連帯のネットワーク構造条件は、社会関 係資本の視点から社会ネットワークと連帯の関係を問う われわれの分析枠組みに適合的であるだけでなく、計測 が比較的容易であるという大きな強みをもっている。た だし、前述したDurkheimの有機的連帯の議論を思い起 こすとき、少なくとも連帯については、Putnam が社会 関係資本の3要素とする社会ネットワーク、信頼、互酬 性のうち、社会ネットワークだけで十分だとは考えにく い。連帯には、もちろん信頼や寛容も関係しているだろ うが、その形成プロセスに焦点をあてる際にはとりわけ 一般化された互酬性との関係が深いと考えられる。むし ろ、先のネットワーク構造条件の、道徳的紐帯としての 規範的表出が一般化された互酬性なのだ、という見方も ありうるだろう。

 そこで本稿では、一般化された互酬性が連帯を促す仕 組みについて、次のような基本仮説をたてる。

  関係基盤の多様性が、何らかの関係基盤で誰か(自分)

と誰かがつながっているという経験・記憶・想像力を 培い、一般化された互酬性の規範を強める。これが、

ネットワーク構造条件とは別に連帯を条件づける。

3 データと主要変数

 データは、著者が代表の科学研究費補助金(付記参照)

の補助を得て実施したインターネット調査データを用い る。この調査では委託業者の登録モニターから、九州 在住の25~55歳の条件で計画標本6,000人を無作為抽 出した。ただし、インターネット・モニターは男女比に ゆがみが大きいので、性別均等割り当てとした。実施は 2012 年 11 ~ 12 月、有効回答 970(回収率 16.2%)であ る。回答900を超えたところで一度督促を行い、期日を 区切って回答を締め切った。

 主要変数を説明する。

 分析の中心となる規範意識として「一般化された互酬 性」は、表1に示すような、著者が独自に考案した4つ の質問項目で測定した。1)回答は賛否4段階なので、そ の回答を得点化して因子分析(最尤法)にかけたところ 一因子のみの一元的な構造を確認できた。ここでは、そ れらの単純合計得点を用いる。

  第1因子

親切は巡り巡っていつかは我が身を助ける 0.78

人は親切にされると他人にも親切になる 0.78

ちょっとした出会いを大切にする 0.63

人と人とはどこでつながるかわからない 0.62

負荷量 49.9

表1 一般化された互酬性4項目の因子分析

 以下の分析では、信頼と寛容の規範的働きについても 検証する。「信頼」は、いわゆる一般的信頼の質問項目 としてよく用いられる次の3項目を用いる。「私は人を 信頼するほうである」、「ほとんどの人は信頼できる」、「ほ とんどの人は基本的に善良で親切である」。一般化され た互酬性と同様に、賛否4段階の回答を得点化してそれ らの合計点を用いる。「寛容」は、次の2項目の、同様 の合計点を用いる。「自分と意見が違う人とつきあうの が苦にならない」、「自分と意見の違う人がいてもかまわ ない」。

 連帯のネットワーク構造条件である「関係基盤の多様 性」は、2種類の指標を用いる。ひとつは友人の関係基 盤数である。本調査では、年に数回は会食したりともに 余暇活動をする親しい人(家族・親族以外)の人数を聞い たうえで、あらかじめ列挙した15種類の関係基盤(縁)

からその人たちとの関係としてあてはまるものをすべて 挙げてもらった。ここではその関係基盤数を用いる。1 人の友人について複数の関係基盤が選択されている場 合、それはその2人の関係の拠り所となる縁が重層的で あることを示す。このような関係基盤の重層性は、当該 の二者関係からみれば強い紐帯で結ばれた冗長な関係と もいえるが、関係基盤の視点からみれば、複数の異なる 関係基盤がその2人の強い紐帯をブリッジとしてより揺 るぎなく連結しあい、橋渡し型の資本蓄積が活発化して いる可能性がある。したがって、重層性も多様性の一側 面と考え、友人数の多寡に関わらず関係基盤数を多様性 の指標とする。

 いまひとつは団体基盤数である。これは、あらかじめ 列挙した18種類の団体のうち、過去2年のうちに参加 したものとして選択された団体個数を用いる。

 あらかじめ列挙した関係基盤や団体のカテゴリーは、

(5)

実際にはさらにその中に多種多様な関係基盤や団体を含 む。例えば、友人との関係基盤が「同郷」だと答えた2 人の回答者がいたとしても、その「同郷」がまさに同じ 地域を指していることは稀であろう。つまり、その2人

(および彼らの友人)が「同郷」として具体的に同一の関 係基盤ネットワークのメンバーであるわけではない。こ のように、本調査で測定される関係基盤の多様性は、無 数に想定される故郷をすべて含んだ「同郷」関係基盤や、

全国数多くある高校をすべて含んだ「高校同窓」関係基 盤を指している。2)

 連帯意識は、「同類(地域)連帯」と「異類連帯」をみる。

同類連帯は「同じ○○だから助け合いましょう」といわ れたときに共感するか否かを聞いた質問において、○○

に地域に関わる6項目を挿入したときの回答を用いる。

挿入した6項目は表2左欄に示す。この表は、それぞれ 賛否4段階の回答を得点化し、主成分分析を施した結果 を示している。第1主成分は負荷量からしても十分に総 合得点としての意味あいをもつので、この主成分得点を 同類連帯のスコアとする。一方、異類連帯は、「△△の ように立場の異なる人たちと助け合いましょう」といわ れたとき共感するか否かを聞いた質問を用いる。△△に 挿入した6項目と、これらの回答を先と同様に得点化し て主成分分析にかけた結果が表1右欄である。こちらも 一元的構造をもち負荷量が高いので、この第1主成分得 点を異類連帯のスコアとする。

寛容 一般化され

た互酬性 友人基盤数 団体基盤数 年齢 教育年数 世帯収入

(万) 居住年数

一般的信頼 .26** .47** .09** .18** .11** .08*  .15** .01    寛容   .37** .18** .19** -.07*  .06    .05    -.09**

一般化された互酬性     .24** .23** .03    .04    .03    .01   

※ピアソン相関係数。**は1%有意、*は5%有意(有意水準の表記法は以下同様)。

同類連帯 第1主成分 異類連帯 第1主成分

同じ市町村民だから 0.87 世代が異なる人達と 0.82

同じ県民だから 0.91 収入や生活水準が異なる人達と 0.80

同じ出身地だから 0.85 学歴が異なる人達と 0.87

同じ九州の人間だから 0.87 国内の国籍が異なる人達と 0.88

同じ日本人だから 0.79 国内の見知らぬ土地の人達と 0.89

同じアジア人だから 0.64 海外の見知らぬ土地の人達と 0.83

負荷量 68.22 負荷量 71.98

表2 連帯意識の主成分分析

4 一般化された互酬性の性質

 はじめに、本調査で初めて測定を試みた一般化された 互酬性がどのような性質をもつかを吟味しよう。表3 は、一般的信頼や寛容のような他の規範意識、関係基盤 の多様性、そしていくつかの基本属性との相関をみたも のである。これをみると一般化された互酬性は、一般的 信頼とも、寛容とも、高い相関をもち、とりわけ一般的

信頼と反応しやすい。けれども、関係基盤の多様性や属 性との反応の仕方は異なる。関係基盤の多様性について は、友人基盤数でみても団体基盤数でみても、他の規範 意識より高い相関を示している。また、一般的信頼が階 層変数に反応しやすいのと対照的に、一般化された互酬 性は階層変数と無相関である。このように、一般化され た互酬性は、一般的信頼や寛容と関連しつつも、それら とは異なる性質をもつことが示唆される。

表3 一般化された互酬性と諸変数との相関

 この一般化された互酬性に固有の性質として、とりわ け関係基盤の多様性との関連の強さから推察されるの は、社会学的想像力に類したネットワーク想像力とで もいうべき実践知だと考える(伊奈・中村 , 2007; 三隅 , 2010)。一般化された互酬性は長期的自己利益を見越し た利他的行為を動機づけるとされるが、そのためには、

今ここの見返りを求めない手助けが、巡り巡って他の誰 かから将来自分に返ってくることに、ある程度リアリ ティが感じとられなければなるまい。これは個人的な価 値観や信念の問題ではなく、社会規範レベルの問題とし て、そうなのである。長期的自己利益を補強する社会規 範がうまく構築されれば、人びとは将来的見返りの不確

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一般化された互酬性と連帯―関係基盤論の枠組みから―

実さによるリスクを小さく見積もることができ、場合に よってはほとんどそれを意識することなく当然の行為と して、今ここの手助けを行うであろう。筆者は、その社 会規範こそが一般化された互酬性であり、そして、実践 知としてその構築を促進するのがネットワーク想像力だ と考えるのである。

 このネットワーク想像力は、本調査では一般化された 互酬性の質問項目に趣旨的に含まれており、表1でみた 一元的な因子構造からしても、そこからネットワーク想 像力だけを取り出すことは難しい。けれども、ネット ワーク想像力を強める要因についてはいくつか手掛かり がある。今回の調査では、他者から助力を受けた経験の ひとつとして、「まったくの他人、または他人同然の遠 い関係の知人から、生涯忘れられないような助力を得た」

経験があるか否かを聞いている。この経験と記憶は、巡 り巡る見返りのリアリティを実感して、記憶の中でネッ トワーク想像力を醸成する契機になると考えられる。

 そこで、この経験の有無によって3種類の規範意識の 平均値を比較したのが、表4である。これをみると、こ のネットワーク想像力の種は、信頼や寛容よりも一般化 された互酬性により明瞭な差をもたらすことがわかる。

単純相関(表3)では一般化された互酬性は一般的信頼 との反応がよかったが、ネットワーク想像力の視点から みた性質はやや異なるといえるだろう。

 一般化された互酬性の性質を考えるうえで、もうひと つ示唆的な分析結果がある。本調査では他者から助力を 受けた経験として他にも、具体的にイベントを指定して 最近5年間で助力を得たか否かを聞いている。ひとつは

「家族以外の誰かから金銭面の助力(お金の貸借や保証 人)を得た」か、もうひとつは同じく「情報面の助力(仕 事・進学・健康・生活設計に関わる情報や助言)を得た」

か、という質問である。3)これらの被助力の有無によっ て、先ほどと同様に3種類の規範意識の平均値を比較し たのが、表5である。「あり/弱い紐帯」とあるのは、そ の助力が弱い紐帯を介してもたらされたことを示す。こ こで弱い紐帯は次の操作的定義による。先のそれぞれの 質問に付帯して、助力提供者との関係基盤および関係の 強さ(連絡をとりあったり会ったりする頻度)を尋ねて

一般的信頼 寛容 一般化された

互酬性 経験あり 7.4    5.7    13.0    経験なし 7.1    5.2    11.8   

F値 2.8    27.4** 37.3**

※検定は分散分析による。

表4 見知らぬ他者からの被助力経験と規範意識

いる。その頻度が「年に1回」よりも少ない場合を弱い 紐帯とする。さらに、もうひとつ付帯質問として、そ の被助力の際に人から人への紹介があったかを聞いてい る。そのような間接的人間関係が媒介した場合も弱い紐 帯とする。表中の「弱い紐帯」は、これら2種類の弱い 紐帯の少なくともどちらかが関与したケースである。

 さて、表5から気づかれる第一のことは、表4と同様 に、これらの被助力の有無は一般的信頼に有意な差異を 生まないことである。そして、これもまた表4と同様に、

分散分析の結果はむしろ一般化された互酬性と寛容の親 近性を示唆している。

 第二に、弱い紐帯を介した被助力は、強い紐帯の場合 よりもネットワーク想像力を刺激しやすいと考えられた が、少なくともそれは紐帯の強弱による明瞭な違いを生 むものではない。表の下欄に報告した多重比較の結果を みればわかるように、一般化された互酬性および寛容に みられる有意な分散比は、主に被助力「なし」との級間 分散に起因している。その級間分散はイベントによって やや異なり、「金銭面」では強い紐帯を介した被助力の 方が、また、「情報面」では弱い紐帯を介した被助力の 方が、それぞれ寛容や一般化された互酬性を強める傾向 が強い。推測としていえば、「金銭面」では強い紐帯を 介してより多額の金銭貸借が生じている可能性があり、

「情報面」では逆に弱い紐帯を介してより稀少な情報授 受が生じている可能性がある。助力として提供された資 源価値が大きければ、それだけ強い恩義が生まれるの で、それがネットワーク想像力を刺激して一般化された 互酬性や寛容を高めるのでないだろうか。このように考 えると、上記のイベントによる違いを一貫して説明でき る。ただし、この推論の妥当性は今回の調査ではこれ以 上確かめられない。

 気づかれる第三のことは、分散比はおしなべて表5よ り表4の方が大きいことである。表5の被助力は5年以 内という比較的最近の出来事であり、しかも既知の人間 関係がからむケースが多いと思われる。そのため、当該 の助力提供者に対する恩義はあるとしても、それが一般 化されるような契機になりにくいのではないかと考えら れる。逆にいえば、表4の被助力経験は、そのときに十 分返礼もできなかった当該の助力提供者が、見知らぬ他 者のまま記憶されていることが重要なのではないだろう か。Coleman(1990: Chap.12)は社会関係資本の重要要 素として、社会における「未決済の義務」の蓄積を論じ ている。相手もわからぬ未決済の記憶は、より一般的な 形でこの Coleman の論点に結びつき、一般化された互 酬性を強める社会関係資本の資本蓄積に関わると考えら れる。

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5 一般化された互酬性の連帯規定

 それでは、一般化された互酬性は連帯意識をどのよう に規定するのだろうか。本調査では同類連帯と異類連帯 を測定したが、一般化された互酬性の趣旨からすると、

それは異類連帯に対してより強い規定力をもつことが期 待される。仮説に則して、関係基盤の多様性や他の規範 意識に還元されない、一般化された互酬性の連帯に対す る独自の効果を吟味するために、表6のような重回帰分 析を行った。コントロール変数としての属性は、教育年 数や居住年数等も検討したが、モデル全体の適合度や主 要変数の規定力に大きな違いはなかったので、年齢だけ を統制変数として残した。

 同類連帯からみていこう。モデル1では関係基盤の多 様性が同類連帯を有意に規定しているが、モデル2から わかるように、その効果は規範意識、とりわけ一般的信 頼の効果に吸収される。そのうえで、一般化された互酬 性を付加したモデル3の決定係数(R2)の増分は有意であ り、ベータ係数をみても一般化された互酬性は一般的信 頼に比肩する有意な規定力を示す。以上から、一般化さ れた互酬性は同類連帯に対して、関係基盤の多様性や他 の規範意識に還元されない独自の効果をもつといえる。

 異類連帯も、基本的な規定構造は類似している。モデ ル1では関係基盤の多様性の有意な寄与が認められる が、モデル2ではそれが規範意識の効果に吸収される。

ただし異類連帯の場合は、一般的信頼のみならず寛容の 規定力も比較的強い。そしてこれに一般化された互酬 性を付加したモデル3は有意な決定係数の増分を示し、

ベータ係数をみても一般化された互酬性は3つの規範意 識の中でもっとも高い規定力を示す。以上から、一般化 された互酬性は、異類連帯に対して、関係基盤の多様性 や他の規範意識に還元されない独自の効果をもち、なお かつ、その規定力は相対的な意味で同類連帯に対してよ りも強いといえる。

 以上のことは、一般化された互酬性の媒介変数的な位 置づけをより忠実に反映したパス解析でも確認できる。

文末の Appendix にパス解析の結果を示すので参照され たい。

 なお、同類連帯よりも異類連帯をより強く規定する点 は、寛容も同じである。前節で、一般化された互酬性は 規範意識としてむしろ寛容と親近性をもつことを論じた が、それと同じことは連帯に対する規定関係についても いえる。

金銭面の助力 情報面の助力

一般的信頼 寛容 一般化され

た互酬性 一般的信頼 寛容 一般化され

た互酬性 あり/弱い紐帯 7.6    5.5    12.1    7.6    5.5    12.7    あり/強い紐帯 7.1    5.7    13.0    7.3    5.4    12.5    なし 7.2    5.3    12.1    7.1    5.2    11.8    F値 1.0    5.3*  3.9*  2.7    5.1** 11.0**

多重比較 あり/強い

紐帯>なし あり/強い

紐帯>なし あり/弱い

紐帯>なし

あり/弱い 紐帯、あり /強い紐帯

>なし

※検定は分散分析、多重比較はTukeyの方法による。

表5 最近5年のイベントを特定した被助力有無と規範意識

同類連帯 異類連帯

モデル1 モデル2 モデル3 モデル1 モデル2 モデル3

(定数) (-0.43*)(-1.66**)(-2.08**)(-0.56**)(-2.02**)(-2.56**)

年齢 0.05    0.02    0.02    0.07    0.06    0.06    友人基盤数 0.08*  0.06    0.03    0.08*  0.06    0.03    団体基盤数 0.12** 0.07    0.05    0.12** 0.06    0.05   

一般的信頼 0.32** 0.26** 0.23** 0.15**

寛容 0.06    0.02    0.18** 0.11**

一般化された

互酬性 0.18** 0.24**

決定係数R2 0.029** 0.142** 0.164** 0.033** 0.132** 0.171**

R2増分 0.113** 0.022** 0.099** 0.039**

※定数を除き、数値はベータ係数。

表6 連帯を説明する重回帰分析

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一般化された互酬性と連帯―関係基盤論の枠組みから―

 同類連帯は、抽象度の異なる地域を含んでいる。抽象 度の高い地域にもとづく関係基盤、例えば「日本人」は、

当然その中に多様な属性の人びとを含むので、ある意味 で異類連帯に近い面をもつ。このように抽象度の高い連 帯を、高次の連帯とよぼう。一般化された互酬性が異類 連帯を強める効果が一貫しているならば、同類連帯の中 で抽象度の異なる地域を比べたとき、それはより高次の 同類連帯に対して強い規定力をもつことが期待される。

そこで、同類連帯から地域的範囲とその広がりを定義し やすい「市町村の市民」、「県民」、「九州の人間」、「日本人」

の4つを取り出して、それぞれ表6と同じ枠組みで重回 帰分析を行った。その結果が表7である。4)

 これをみると一般化された互酬性の規定力は、あくま で相対的な意味であるが、確かにより高次の連帯に対し て顕著である。それとは逆に一般的信頼は、より低次の 同類連帯を強く規定する傾向がある。また、寛容は全般 に規定力が弱く、一般化された互酬性に類した特徴は何 も認められない。したがって、より高次の同類連帯を促 す点で、一般化された互酬性は他の規範意識にはない独 自の影響力をもっているといえるだろう。

6 結 論

 本稿では、関係基盤の着想のもとに、個人の関係基盤 の多様性を連帯のネットワーク構造条件とみなす分析枠 組みを用いた。より厳密には、人びとが関与する関係基 盤の多様性が平均的に高い社会は、多種多様な関係基盤 をとり結ぶ弱い紐帯を多く含む社会構造である、そのよ うな視点をとる分析枠組みである。さらに、その社会構 造特性が、ネットワーク想像力を介して一般化された互 酬性の規範を強めるという理論的仮定を導入した。この 一連の仮定のもとに、関係基盤の多様性という社会構造 特性が一般化された互酬性の規範化を促し、それが独自 に連帯を規定する効果をもつという(趣旨的にはメゾ・

レベルの)仮説を吟味したのだった。

同じ「市町 村の市民」

連帯

同じ「県民」

連帯

同じ「九州 の人間」連帯

同じ「日本 人」連帯

(定数) (1.03**) (0.96**) (0.96**) (1.34**)

年齢 0.01    0.01    0.04    0.00    友人基盤数 0.05    0.03    0.04    -0.02    団体基盤数 0.05    0.04    0.00    0.02    一般的信頼 0.25** 0.21** 0.20** 0.18**

寛容 0.05    0.03    -0.02    0.02    一般化され

た互酬性 0.11** 0.15** 0.16** 0.16**

決定係数R2 0.127** 0.118** 0.101** 0.092**

※定数を除き、数値はベータ係数。

表7 抽象度の異なる同類連帯の規定(重回帰分析)

 その結果、一般化された互酬性は連帯に対して、関係 基盤の多様性や他の規範意識をコントロールしてもなお 一定の規定力を示し、とりわけ異類連帯を強く規定する ことが示された。また、同類連帯についても、より高次 の連帯に対して強い規定力を示すことが確認された。こ れらにより、仮説は支持されたといえる。

 ただし、関係基盤の多様性が、ネットワーク想像力を 介して一般化された互酬性の規範を強めるプロセスは、

理論的仮定であって直接検証されたわけではない。一般 化された互酬性に限らず、本稿では規範をもっぱら個人 の規範意識として分析してきた。けれども、一般化され た互酬性が効果的なサンクションをともなう社会規範と してあるかどうかは、実は個人意識の集計以上の問題を 含んでいる。だからこそ本稿はそこに、ネットワーク想 像力が規範化を促す社会的プロセスを仮定したのであ る。このプロセスの実証的探求は今後の課題であるが、

そのためにも、一般化された互酬性が規範としてもつ性 質を掘り下げておくことは重要である。本稿では、主に 被助力経験との関係から、その性質についていくつかの ことを確認した。

 一般化された互酬性は、見知らぬ他者から得た助力の 記憶に反応するが、かといって、助力をもたらす紐帯 が弱いほど反応が強まるかというと、そう単純ではな い。そこでは、紐帯の弱さよりも、被助力イベントとし てのインパクトの大きさが注目された。また、Coleman

(1990: Chap.12)に引きつけて、返礼の相手を特定でき ない「未決済の恩義」がもつ意義にも注意を喚起した。

Anderson(1983)は、「想像の共同体」にとって名も無き 兵士の碑がもつ重要性を指摘し、それこそがナショナリ ズムを刺激するという。一般化された互酬性が社会規範 として人びとの間に深く根ざす際に、この Anderson の 類推において、見知らぬ他者から受けた恩義は、単に弱 い紐帯ということではなく特別な意味をもつことが考え られる。5)

 以上のように、いくつか課題は残るものの、異類連帯 およびより高次の連帯を規定する一般化された互酬性の 規範的働きが確認されたことは重要である。われわれは 冒頭で、連帯の第一義的な理論的課題はまとまりと広が りの両義性であると論じた。実は異類連帯と同類連帯は ある部分は裏表の関係にあり、異類連帯による広がりに どうまとまりをつけるかという課題に、高次の同類連帯 が応える側面がある。つまり高次の同類連帯は、低次の 同類連帯間の結びつき(つまり異類連帯)を包み込みな がら、それらに全体的な同定先を与えるのである。この ように、まとまりと広がりの両義性を連帯それ自体が解 決しようとする仕組みに、その両義性ゆえの脆弱さを補

(9)

る。

5)  注4でみたように、一般化された互酬性は同じ「アジア 人」連帯にはさほど強い規定力をもたなかった。このこと も、連帯とナショナリズムとの関係、あるいはネットワー ク想像力における国境(ないしエスニシティ)の壁の問題を 考えるうえで、示唆的である。

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Markovsky, Barry and Mark Chaffee, 1995 , “Social Iden- 強する規範として、一般化された互酬性が重要な役割を

果たしていることが示唆される。

付記)本稿は、平成22~25年度科学研究費補助金・基盤 研究(C)『関係基盤による連帯とその制度化』(代表:三 隅一百[三隅一人]、課題番号23530621)の補助を受け た研究成果です。関連した内容は、第71回西日本社会 学会大会(2013年5月、琉球大学)および第86回日本社 会学会大会(2013年10月、慶應大学)で報告しました。

貴重なコメントをいただいた方々に感謝します。

1)  わが国には一般化された互酬性に近い諺がいくつかあ る。例えば「情けは人の為ならず」は、今ここの手助けがも たらす将来方向の長期的自己利益の側面から、一般化され た互酬性をよく表していると思われる。ただしこの諺は、

別の意味(安易に他人に情けをかけるのは良くない)で理解 されることが少なくないようである。また「袖振り合うも 多生の縁」という諺もある。この諺は、過去(前世の因縁)

に遡って、今ここの手助けを返礼として動機づける意味 で、一般化された互酬性に関わる。わかりやすい反面、誤 解を招きやすい面もあるので、これらの諺を直接用いるこ とは避けたけれども、その趣旨は表1の4項目で汲んだつ もりである。

2)  このように抽象的なレベルで「同郷」や「高校同窓」の関 係基盤を考慮する意義が明示的になるのは、当該社会にお いて人びとの関係づくりや社会参加に際して顕在化してい る関係基盤は何か、といった探求視点に立つ場合である。

筆者は、このような社会構造論的視点が、社会関係資本概 念の理論的効用をもっともよく高めると考えている(三隅, 2013)。

3)  この質問形式は、社会関係資本の測定法として Snijders

(1999)が提唱する資源想起法 resource generator に近い が、測定のポイントは紐帯ではなく関係基盤にある。筆 者によるオリジナルなパイロット調査については Misumi

(2008)を参照。

4)  残りの2つ、「出身地」と「アジア人」についても、一般 的信頼と一般化された互酬性のベータ係数を確認しておく と、まず、同じ「出身地」連帯に対してはどちらも0.2水準 で有意である。同じ「アジア人」連帯に対しては、どちらも 規定力が落ちるが、その中では一般的信頼(0.16)が一般化 された互酬性(0.10)よりも強い規定力を示す。「アジア人」

は「日本人」よりもさらに抽象度が高いと想定できるが、一 般化された互酬性の顕著な効果はここでは認められず、国 ないしエスニシティを越えるネットワーク想像力のリアリ ティの問題を想起させる。この点の探求は今後の課題であ

(10)

一般化された互酬性と連帯―関係基盤論の枠組みから―

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Putnam, Robert D., 1993 , Making Democracy Work: Civil

Traditions in Modern Italy, Princeton: Princeton Univer-【Appendix】連帯に対する一般化された互酬性の媒介効果:パス解析

.02 .92

.18**

.16**

.38

友人基盤数

団体基盤数

一 般 化 さ れ

た互酬性 同類連帯

.08*

.30**

.89

.92

異類連帯

.17**

.16**

.38

友人基盤数

団体基盤数

一般化され た互酬性

.01

.08*

.35**

.86

【Appendix】連帯に対する一般化された互酬性の媒介効果:パス解析

85

(11)

Abstract

Large scale solidarity must meet the problem of establishing both unity and expansion, which is parallel to the adjusting problem between bonding and bridging social capital. In this paper, we explore the functioning of social norms, especially generalized reciprocity, as a social device to promote large scale solidarity beyond the above-mentioned problem. In our original net-base theoretical framework, the key factor that cultivates generalized reciprocity is net-base diversity, because it should stimulate network imagination (i.e. belief that help will be returned someday, by someone, in terms of various net-base linkage). Considering this net-base condition, we examine the original effects of generalized reciprocity on solidarity by utilizing internet survey data we gathered in 2012 . Main findings are as follows. Controlling for net-base diversity, generalized reciprocity indicates significant effects, especially on heterogeneous solidarity and on higher order homogeneous solidarity as well. Secondly, generalized reciprocity has different characteristics than trust and tolerance. For instance, it is more strongly correlated with the experience of receiving help from somebody unknown. We discuss that the underlying mechanism of this property is related to ‘imagined community’ rather than ‘strength of weak ties.’

Keywords: Solidarity, generalized reciprocity, net-base, social capital

Generalized Reciprocity and Solidarity in the Net-base Theoretical Framework

Kazuto MISUMI 

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