学 位 請 求 論 文
在宅介護場面における専門職連携教育
平 成 2 7 年 度
岡山大学大学院 社会文化科学研究科
学籍番号 75425109 藤
ふじ
田
た
益
よし
伸
のぶ
論文の要旨
本研究は在宅介護に従事する医療・介護専門職の行動面に着目し,連携を促進する行動 の同定と強化に向けた専門職連携教育のあり方について検討することを目的とした。
第 1章では,多職種連携が求められる背景として,高齢化の進展と国の連携促進に向け
た施策について概観した。高齢者が安心して最期まで在宅で暮らすことができる環境整備 に向けて地域包括ケアシステムが提唱され,その実現には医療・介護の専門職が円滑に連 携して一体的な支援を行うことが不可欠である。
第 2章では,多職種連携の教育手段としての専門職連携教育の特徴と課題を述べた。専
門職連携教育は異なる学習背景を持つ各々の専門職が,「連携」の知識・技術を習得して相
互の価値観や行動様式の違いを理解し,よりよい協働の実現を目指すものである。先行研 究では,多職種混成による意見交換,観察,共同作業による学びを通じて,知識・自信の 向上,他職種や患者に対する肯定的・協調的態度が促進されるといった効果が示されてい る。そこで在宅介護場面における適切な連携行動を同定し,強化に向けた専門職連携教育 のあり方を検討することを研究目的とした。
第 3章では,姫路市介護サービスと地域医療の連携促進協議会の活動経緯と特徴をまと
めた。姫路市の委託事業として医療・介護の職能団体による協議会が設置され,地域の連 携課題の調査と解決策の提言,解決に向けた実践が継続して行われた。この協議会は在宅 介護の実践者が参加する少人数のコンセンサスパネルが特徴であり,形式的な情報共有の 会議にとどまらずに具体的な問題解決機能を有していた。また協議会の活動経緯を振り返
ると CAP-Doの一連のサイクルに沿った実践が行われており,介護実践現場から地域全般
の施策へ反映させるボトムアップ手法として地域の実情に即した介入方法として効果的で あった。
第 4章では,協議会の実施した実態調査から提示された地域における連携上の課題と解
決策を整理した。課題として多職種が顔を合わせる会議・研修の機会が少なく,相互の役 割理解が不十分であること等が指摘された。そこで,行政と医師会のツートップ体制によ る連携促進と連携拠点センターの設置,多職種連携を目的とした研修・交流会の実施とい った解決策が提示された。協議会活動の終了後も組織間連携が実現して着実に課題解決が 進められているが,多職種連携を目的とした個人に焦点を当てた研修の具体的手法につい ては課題として残されている。
第 5章では,在宅介護場面における専門職連携教育の実施に向けて,医療・介護専門職
が共通して実行している連携行動を明らかにすることを目的に面接調査を実施した。専門
職 15 名を対象に,他職種との連携する際に上手くいった,上手くいかなかったエピソー
ドを聞き取り,カテゴリーごとに分類した。その結果,多職種連携に必要な条件として,
「高齢者中心の生活支援」「専門職の役割と限界の把握」「顔の見える関係形成」の 3要素
を抽出した。
第 6章では連携行動を量的に評価するための連携行動尺度を作成した。第一に姫路市の
訪問系介護サービス事業所へ質問紙調査を実施した。因子分析の結果,連携に際して他者 と自分の置かれた状況を察する「内省的洞察」,利用者の思いを尊重して連携相手と共有す
る「利用者本位の意識」,連携相手に配慮をしながらも自分の意見を伝える「配慮の伝達」
の 12 項目 3 因子構造の尺度を作成した。第二に医療系専門職を対象としたインターネッ ト調査を実施し,姫路市での質問紙調査と同様の因子構造であることを確認した。そして
同一の対象者に 2度の調査を実施し,尺度の再検査信頼性を確認した。
第 7章では,連携行動尺度に影響を与える要因を分析し,経験年数が長いほど,介護職
より相談援助職の方が連携行動尺度の得点が高いこと,得点が高い者ほど多職種との交流 頻度やサポートの数が高いことが明らかになった。次に連携行動尺度得点の違いによって 連携の困難場面における状況推測と対処に差異がみられるか検討した。その結果,尺度得 点が高い専門職は,連携が困難な状況におかれた場合に単眼的見方ではなく多角的な視点 に立ち,困難要因の分析と解決策の提示をしていた。
第 8章では,連携行動尺度の「内省的洞察」の強化を目指した専門職連携教育の作成・
実施,効果検証を試みた。在宅介護の専門職を対象に介入を繰り返し,「内省的洞察」得点
を増加させる専門職連携教育を作成した。ただし,ランダム化比較試験を伴う研修では,
両群に有意差が認められず,教育内容に改善の余地があることが示された。
第 9章では,専門職が自他のおかれた状況を内省・洞察できる技能が知識と実践の乖離
を埋めて円滑な連携に寄与することを記述し,在宅介護場面における専門職連携教育に省 察を伴う体験学習を導入する意義を考察した。
目次
第 1章 多職種連携が必要な背景 1 1.高齢化の進展と疾病を抱える高齢者の増加
2.高齢者の在宅生活への意向と現実
3.高齢者の在宅生活を支える在宅医療・介護サービス 4.地域包括ケアシステム
5.在宅医療・介護の連携推進に係る施策の動向
第 2章 専門職連携教育と研究目的 11 1.連携の定義
2.専門職連携教育
3.専門職連携教育の国際動向
4.専門職連携教育の実践とその成果 5.専門職連携教育の評価
6.地域における専門職連携教育の導入上の課題 7.本研究の目的
第 3章 多職種連携に向けた組織間連携の実践とその特徴 28 1.はじめに
2.姫路市の高齢者介護の実態
3.姫路市介護サービスと地域医療連携促進協議会
4.姫路市介護サービスと地域医療連携促進協議会の活動経緯 5.姫路市介護サービスと地域医療連携促進協議会の特徴 6.多職種連携を促進する CAP-Doサイクル
7.まとめ
第 4章 介護サービスと地域医療の連携上の課題と解決策 39 1.姫路市の医療・福祉の連携状況に関する実態調査
2.介護サービスと地域医療の連携促進における課題 3.介護サービスと地域医療連携促進に向けた提言 4.提言後の連携促進への実践と残された課題
第 5章 在宅介護場面に求められる多職種連携の技能(面接による調査) 55 1.目的
2.方法 3.結果 4.考察 5.まとめ
第 6章 在宅介護場面における多職種連携行動尺度の作成 65 1.研究1 在宅介護場面における連携行動尺度の作成
2.研究2 医療系専門職を対象とした在宅介護場面における連携行動尺度の検討 3.研究3 連携行動尺度の再検査信頼性の検討
4.考察
第 7章 連携行動に影響を与える要因とアウトプットの検討 81 1.研究1 回答者の基本属性ごとの連携行動尺度の尺度得点の比較
2.研究2 内省的洞察が多職種連携を促進する効果 3.まとめ
第 8章 在宅介護場面における多職種連携教育の効果検証 98 1.研究1 在宅介護場面における専門職連携教育の試案作成
2.研究2 試作版専門職連携教育の修正(1) 3.研究3 試作版専門職連携教育の修正(2)
4.研究4 前後比較による専門職連携教育の効果検証
5.研究 5 ランダム化比較試験による専門職連携教育の効果検証
6.まとめ
第 9章 総合考察 115
1.各章の総括
2.多職種連携に求められる省察
3.在宅介護場面における専門職連携教育のあり方 4.本研究の波及可能性
5.今後の課題
引用文献 127
付録 136
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第 1 章
多 職 種 連 携 が 必 要 な 背 景
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「 連 携 は 重 要 か ? 」と い う 問 い か け に 対 し て ,「 い い え 」と 答 え る 人 は い な い だ ろ う 。医 療・介 護 の 専 門 職 間 の 連 携 の 必 要 性 は 古 く か ら 指 摘 さ れ 続 け て い る 。 一 般 的 に 専 門 職 が 個 々 に ケ ア を 提 供 す る よ り も , 相 互 に 連 携 し て 長 所 を 生 か し た ケ ア を 提 供 す る 方 が 良 い 結 果 を も た ら す と 考 え ら れ て い る 。 様 々 な と こ ろ で 連 携 の 重 要 性 が 主 張 さ れ る 一 方 で , 遅 々 と し て 連 携 が 進 ま な い 現 実 が あ る 。 第 一 章 で は 多 職 種 連 携 が 求 め ら れ る 背 景 と し て , 高 齢 化 の 進 展 と 国 の 連 携 促 進 に 向 け た 施 策 に つ い て 概 観 す る 。
1 . 高 齢 化 の 進 展 と 疾 病 を 抱 え る 高 齢 者 の 増 加
内 閣 府(2010)の 2010 年 版 高 齢 社 会 白 書 に よ る と ,65 歳 以 上 の 高 齢 者 世 帯 数 は 2,071 万 世 帯 で , 全 世 帯(4,864 万 世 帯)の 42.6% を 占 め て い る 。 高 齢 者 の い る 世 帯 の 構 造 別 割 合 は , 夫 婦 の み 世 帯 が 最 も 多 く 3 割 程 度 を 占 め , 単 独 世 帯 を 合 わ せ る と 過 半 数 を 超 え る 状 況 で あ る 。 さ ら に 65 歳 以 上 の 高 齢 者 が 世 帯 主 で あ る 高 齢 世 帯 も 年 々 増 加 し て お り ,2030 年 に は 1,903 万 世 帯 と 2010 年 か ら 約 1.2 倍 に 増 加 す る と 見 込 ま れ て い る 。
ま た ,高 齢 者 は 複 数 の 病 気 を 持 っ て い る こ と が 多 く ,若 年 者 と 比 較 し て 骨 折 , 脳 血 管 疾 患 や 認 知 症 を は じ め と し た 病 気 の リ ス ク が 高 ま る 。前 掲 白 書 に よ る と , 介 護 保 険 制 度 に お け る 要 介 護 者 ま た は 要 支 援 者 と 認 定 さ れ た 者 の う ち ,65 歳 以 上 の 者 の 数 は 2009 年 度 末 で 469.6 万 人 で あ り ,2001 年 度 末 か ら 181.9 万 人 増 加 し て お り , 第 1 号 被 保 険 者 の 16.2% を 占 め て い る 。 ま た ,2010 年 に お け る 人 口 1,000 人 あ た り の 有 訴 者 率 は 471.1 と , 半 数 近 く の 者 が 何 ら か の 自 覚 症 状 を 訴 え て い る 。 こ の よ う な 疾 病 構 造 の 変 化 は , 障 害 状 態 を 有 し た ま ま 長 期 に わ た っ て 生 活 し て い く 人 を 増 加 さ せ る こ と に な り , 医 療 と 福 祉 が 否 応 な し に 接 近 さ せ る 環 境 と な っ て い る 。
こ の よ う な 実 態 に 対 し て , 日 本 で は 高 齢 者 の 支 援 を 家 族 の み に 頼 る こ と が 年 々 困 難 と な っ て い る 。 前 掲 白 書 に よ れ ば 要 介 護 者 等 の 主 な 介 護 者 の 続 柄 は , 同 居 家 族 が 6 割 で , 主 介 護 者 60 歳 以 上 で あ る 割 合 が 男 性 64.9% , 女 性 61.0% と 半 数 以 上 を 占 め て い る と 報 告 さ れ て い る 。 こ の こ と か ら 「 老 老 介 護 」 の ケ ー ス , あ る い は 家 族 等 に 介 護 を 頼 れ な い ケ ー ス が 相 当 数 存 在 す る こ と が 伺 え る 。 そ の 他 , 一 人 暮 ら し で 家 族 が い な い か , い て も 行 き 来 が ま れ で 隣 人 や 友 人 と の 付 き 合 い も 乏 し く , 日 常 的 な 人 と の 交 流 の な い 社 会 的 に 孤 立 し た 生 活 を 送 る 人 の 増 加 も 推 測 さ れ る 。 前 掲 白 書 に よ れ ば , 誰 に も 看 取 ら れ る こ と な く , 亡 く な っ た あ と に 発 見 さ れ る よ う な 孤 立 死 を 身 近 な 問 題 だ と 感 じ る 人 の 割 合 は ,60 歳 以 上 の 高 齢 者 の 4 割 を 超 え , 単 身 世 帯 で は 6 割 を 超 え て い る 。 岸(2004)は 単
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身 世 帯 , 未 婚 者 ・ 離 別 者 , 暮 ら し 向 き が 苦 し い 者 , 健 康 状 態 が よ く な い 者 が 社 会 的 に 孤 立 し や す い と 指 摘 す る 。 地 縁 , 血 縁 と い う 従 来 の 絆 が 薄 れ た 中 で , 高 齢 者 に 必 要 な 介 護 や 見 守 り を 行 う こ と は 容 易 で は な い 社 会 が 到 来 し つ つ あ る 。 岸 ・ 吉 岡 ・ 野 村 ・ 望 月(2011)の 調 査 で は 孤 立 死 に 至 っ た 事 例 の 約 8 割 が セ ル フ ・ ネ グ レ ク ト の 状 態 で あ っ た 可 能 性 も 指 摘 さ れ , 生 命 や 健 康 に 関 わ る 状 態 に 対 し て 支 援 の 必 要 性 が あ る と さ れ て い る 。 さ ら に セ ル フ ・ ネ グ レ ク ト の 状 態 に あ る と さ れ る ケ ー ス の う ち , 内 科 的 疾 患 と し て 糖 尿 病 罹 患 が 約 1 割 , そ の 他 治 療 が 必 要 な 疾 患 が 約 4 割 も み ら れ て い る 。 新 井(2010)の 調 査 で は 孤 立 死 は 前 期 高 齢 者 の 男 性 に 多 く , 男 性 の 場 合 は 平 均 寿 命 に 達 す る 前 に 死 亡 し て い る ケ ー ス が 多 い こ と も 分 か っ て い る 。
こ の よ う に 高 齢 化 が 進 展 す る と と も に , 何 ら か の 疾 病 を 抱 え る 高 齢 者 が 増 加 し て い る 。 そ の 反 面 , 家 族 や 近 隣 か ら の 支 援 が 得 ら れ に く く , 疾 病 を 抱 え な が ら 高 齢 者 一 人 ま た は 高 齢 夫 婦 の み で 自 立 生 活 を 営 む こ と は 非 常 に 難 し い も の と な っ て い る 。
2 . 高 齢 者 の 在 宅 生 活 へ の 意 向 と 現 実
終 末 期 医 療 の あ り 方 に 関 す る 懇 談 会(2012)に よ れ ば , 自 分 が 治 る 見 込 み が な く 死 期 が 迫 っ て い る と 告 げ ら れ た 場 合 の 療 養 の 場 所 に つ い て ,63.3%の 国 民 が 自 宅 で 療 養 し た い と 回 答 し て い る 。 一 方 で , 国 民 の 66.2%は 自 宅 で 最 期 ま で 療 養 す る こ と は 実 現 困 難 で あ る と 回 答 し て い る 。 そ の 理 由 と し て , 介 護 し て く れ る 家 族 に 負 担 が か か る(79.5%),症 状 が 急 に 悪 く な っ た と き の 対 応 に 自 分 も 家 族 も 不 安 で あ る(54.1%),と い っ た 高 齢 者 と 家 族 を 支 援 す る 体 制 が 不 十 分 な 点 が 挙 げ ら れ て い る 。
そ の 後 の 調 査 で は , 医 療 ・ 介 護 の 負 担 の 大 き さ に よ り 最 期 を 迎 え た い 場 所 が 変 化 す る こ と が 明 ら か に な っ た(終 末 期 医 療 に 関 す る 意 識 調 査 等 検 討 会 ,2014)。 末 期 が ん で あ っ て も 食 事 は よ く と れ , 痛 み が な く 意 識 や 判 断 力 は 健 康 な 時 と 同 様 に 保 た れ て い る 場 合 は 回 答 者 の 71.1%が 在 宅 を 希 望 す る こ と に 対 し , 身 体 的 な 支 援 を 要 し , 意 識 ・ 判 断 力 が 低 下 し た 場 合 に は 医 療 機 関 ・ 施 設 で の 療 養 を 希 望 す る 割 合 が 在 宅 を 上 回 っ て い た 。 自 宅 死 亡 率 は 15.1%, 介 護 保 険 施 設 を 含 め た 在 宅 死 亡 率 は 23.6%と 低 く , 多 く の 人 は 自 宅 で は な く 病 院 で 最 期 を 迎 え て い る の が 現 実 で あ る ( 厚 生 労 働 省 ,2014)。 さ ら に 高 齢 者 の 急 増 に 比 し て 病 院 ・ 施 設 数 は 微 増 で あ る た め ,病 院 で も 自 宅 で も 亡 く な る こ と が で き な い 人 が 2025 年 に は 147 万 人 に 上 る と 推 計 さ れ て い る(厚 生 労 働 省 ,2012)。
か つ て は 自 宅 で 家 族 や 親 族 に 見 守 ら れ な が ら 静 か に 息 を 引 き 取 る と い う 最 期
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を 迎 え る こ と が 自 然 な 形 で あ っ た 。 し か し な が ら , 自 宅 で 看 取 る た め は 身 体 介 護 や 病 気 の 治 療 を は じ め 大 変 な 労 力 が 必 要 と さ れ る 。祖 父 母 か ら 孫 ま で 同 居 し , 妻 が 家 事 を し て 家 を 支 え る こ と が 当 然 だ っ た 時 代 に は , 家 族(主 に 娘 ま た は 嫁) が 力 を 出 し 合 っ て 何 と か 看 取 り に 取 り 組 む こ と が で き た 。 し か し 仕 事 と 家 庭 の 両 立 が 求 め ら れ る 時 代 に な り , 高 齢 者 の 息 子 ・ 娘 も 自 ら の 家 庭 を 支 え る こ と も 大 変 な 労 力 を 要 し , 彼 ら の 手 を 借 り て 高 齢 者 の 介 護 を 委 ね る と い う の は 現 実 的 と は い え な く な っ た 。 高 齢 者 は 可 能 で あ れ ば 住 み 慣 れ た 家 で 生 活 を 続 け た い と 思 う と と も に , 自 分 ま た は 配 偶 者 の み で 病 気 に は 対 応 で き な い と い う 不 安 を 抱 え て 日 々 の 生 活 を 送 っ て い る 。 そ し て 自 分 た ち の 手 に 余 る 疾 病 や 介 護 状 態 が 見 込 ま れ た 時 に は ,「 家 で の 生 活 は 不 可 能 だ 」と い う 思 い が 強 く な り ,病 院 や 施 設 を 希 望 す る 。 結 果 的 に 病 院 で 最 期 を 迎 え ざ る を 得 な く な り , む し ろ 今 で は 「 最 期 は 病 院 で 」 と 考 え る こ と が 当 た り 前 に な っ て い る 。
3 . 高 齢 者 の 在 宅 生 活 を 支 え る 在 宅 医 療 ・ 介 護 サ ー ビ ス
高 齢 化 が 進 展 し て 高 齢 者 の 単 独 世 帯 と 夫 婦 の み 世 帯 が 増 加 す る 一 方 で , 家 族 に よ る 介 護 力 に は 限 界 が あ る 。 高 齢 者 夫 婦 や 家 族 だ け で 在 宅 生 活 を 支 え る こ と は 困 難 で あ る が , 医 師 , 看 護 師 , 介 護 支 援 専 門 員 を は じ め と す る 医 療 ・ 介 護 の 専 門 職 に よ る 支 援 を 得 る こ と で , 介 護 者 の 不 足 を 補 い , 疾 病 に 対 す る 不 安 を 払 拭 し て 在 宅 生 活 が 可 能 に な る 。 介 護 保 険 制 度 に よ る 介 護 サ ー ビ ス は , 施 設 に 長 期 間 入 所 し て 介 護 を 受 け る 施 設 サ ー ビ ス , 施 設 に 通 っ て 介 護 を 受 け る 通 所 サ ー ビ ス , 自 宅 で 介 護 を 受 け る 訪 問 サ ー ビ ス に 大 別 さ れ る 。 特 に 訪 問 診 療 , 訪 問 看 護 , 訪 問 介 護 と い っ た 訪 問 サ ー ビ ス を 効 果 的 に 利 用 す る こ と が , 中 重 度 の 要 介 護 者 の 在 宅 生 活 の 継 続 に は 不 可 欠 で あ る 。 さ ら に , 筋 萎 縮 性 側 索 硬 化 症(ALS) と い っ た 難 病 や 末 期 が ん の よ う な 死 に 至 る 病 気 を 抱 え て い て も , 医 療 ・ 介 護 の 専 門 職 , 専 門 機 関 が 有 す る 機 能 に 応 じ て 効 果 的 ・ 効 率 的 に ケ ア を 提 供 す る こ と で , 在 宅 に お け る 看 取 り を 実 現 す る こ と が で き る 。
医 療 ・ 介 護 保 険 制 度 上 の サ ー ビ ス を 活 用 し た 在 宅 介 護 支 援 に あ た っ て は , 地 域 に よ っ て は 様 々 な 工 夫 が な さ れ て い る 。 在 宅 医 療 ・ 介 護 を 率 先 し て 取 り 組 ん で き た 地 域 の 取 り 組 み 例 と し て 以 下 の よ う な 事 例 が み ら れ る 。
(1)兵 庫 県 洲 本 市 五 色 町 ( 旧 五 色 町 )
松 浦(1996)に よ れ ば , 五 色 町 で は ケ ー ブ ル テ レ ビ を 活 用 し た 「 在 宅 保 健 ・ 医 療 ・ 福 祉 支 援 シ ス テ ム 」 を 構 築 し た 。 こ れ は 在 宅 療 養 を 希 望 す る 重 症 患 者 の 自 宅 と 主 治 医 医 療 機 関 を 通 し た 在 宅 療 養 支 援 シ ス テ ム 網 を 構 築 し た も の で , 映 像
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と 音 声 を 双 方 向 に や り と り を 可 能 に し た も の で あ る 。 バ イ タ ル セ ン サ ー を 家 庭 に 設 置 し て , 患 者 の 血 圧 や 心 電 図 等 の デ ー タ を 病 院 な ど に 送 る こ と で 患 者 や 家 族 の 相 談 に 随 時 応 じ な が ら 適 切 な 介 護 の 指 導 を 行 う こ と が で き る 。 こ れ に よ っ て 重 度 の 疾 患 で 通 院 治 療 や 入 院 が 困 難 な 患 者 や 家 族 を 支 え , 先 駆 的 に 在 宅 療 養 を 実 現 し て き た 。
(2)東 京 都 新 宿 区
東 京 都 新 宿 区 医 師 会 診 療 所 で は ,2008 年 か ら 区 内 に 在 住 す る お よ そ 6,000 人 の 独 居 高 齢 者 に 「 し ん じ ゅ く 医 療 あ ん し ん カ ー ド 」 を 配 布 し た(英, 2008)。
高 齢 者 が 自 ら の 心 身 状 態 , 既 往 歴 等 を 新 宿 区 医 師 会 診 療 所 に 登 録 す る と カ ー ド が 交 付 さ れ る 。 高 齢 者 が 調 子 の 悪 い 時 や 急 変 時 に カ ー ド に 記 載 さ れ た 電 話 番 号 に 電 話 し て , 医 師 に よ る 往 診 を 受 け ら れ る た め , 独 居 高 齢 者 が 病 院 に 通 っ て 長 時 間 診 療 を 受 診 す る 負 担 を 軽 減 す る こ と が で き る 。 同 時 に 地 域 の か か り つ け 医 と 医 師 会 診 療 所 が 連 携 す る こ と で , 往 診 を 行 う か か り つ け 医 の 負 担 を 軽 減 す る こ と に も 寄 与 し て い る 。
(3)長 崎 県 長 崎 市
長 崎 県 長 崎 市 で は 「 長 崎 在 宅 D r. (ド ク タ ー)ネ ッ ト 」 を 発 足 し , 在 宅 生 活 を 希 望 す る 入 院 患 者 が 退 院 す る 際 に 地 域 で の 主 治 医 が 見 つ か ら な い 場 合 に , 在 宅 主 治 医 と 副 主 治 医 を 紹 介 す る 仕 組 み を 構 築 し た(白 髭, 2009)。 主 治 医 が 訪 問 診 療 や 往 診 を 行 う が , 学 会 ・ 出 張 等 で 主 治 医 が 不 在 の 時 に , 副 主 治 医 が サ ポ ー ト を 行 う 。 切 れ 目 の な い 支 援 に よ っ て 重 症 患 者 で も 安 心 し て 在 宅 療 養 が で き , 実 際 に 在 宅 で 最 期 を 迎 え た 人 数 が 増 加 し た こ と が 報 告 さ れ て い る 。
(4)広 島 県 尾 道 市
広 島 県 尾 道 市 で は ,1994 年 か ら 開 始 し た「 尾 道 方 式 」と い わ れ る カ ン フ ァ レ ン ス を 特 長 と し て い る(フ ァ ー マ ス コ ー プ, 2009)。 急 性 期 病 院 か ら 回 復 期 病 院 へ の 転 院 , 病 院 か ら 在 宅 へ の 退 院 時 な ど , 長 期 間 継 続 す る ケ ア の 各 段 階 で 計 画 的 に ケ ア カ ン フ ァ レ ン ス を 行 い , 医 療 と 介 護 を 効 率 的 に 提 供 で き る 体 制 を 構 築 し て い る 。 ケ ア カ ン フ ァ レ ン ス に は , 患 者 本 人 ・ 家 族 ・ 主 治 医 ・ 介 護 支 援 専 門 員 , 病 院 医 療 ソ ー シ ャ ル ワ ー カ ー , 看 護 師 ・ 訪 問 介 護 員 等 が 出 席 し て , 患 者 の 療 養 上 の 希 望 を 確 認 し , 支 援 情 報 の 共 有 を 図 っ て い る 。
こ の 他 の 地 域 で も 地 域 特 性 を 考 慮 し た 上 で , 様 々 な 在 宅 医 療 ・ 介 護 の 普 及 に
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向 け た 取 り 組 み が み ら れ る 。 高 齢 者 本 人 ・ 家 族 の み な ら ず , 在 宅 医 療 ・ 介 護 に 従 事 す る 専 門 職 も ま た , 高 齢 者 が 在 宅 生 活 を 継 続 で き る よ う 支 援 し て い き た い と い う 思 い を 抱 い て お り , そ の 実 現 に 向 け た 実 践 上 の 工 夫 が な さ れ て い る 。 在 宅 医 療 ・ 介 護 を 支 援 す る 事 例 に 共 通 す る 点 は , 医 療 ・ 介 護 の 専 門 職 が 円 滑 に 連 携 し て 一 体 的 な 支 援 を 行 っ て い る こ と で あ る 。 つ ま り , 各 々 の 専 門 職 が 有 す る 長 所 と 短 所 を 理 解 し て , 高 齢 者 の 医 療 ・ 介 護 の ニ ー ズ に 合 致 し た 形 で 専 門 性 を 機 能 さ せ る こ と で , 高 齢 者 の 一 体 的 な 生 活 支 援 を 実 現 し て い る 。
前 述 し た 一 部 地 域 の 先 進 的 な 取 り 組 み だ け に と ど ま ら ず , 近 年 で は 全 国 的 に 在 宅 介 護 を 展 開 さ せ る 方 針 が 示 さ れ て き た 。 高 齢 者 介 護 の 担 い 手 は 家 族 の み で は な く , 医 療 保 険 ・ 介 護 保 険 制 度 に 加 え て , 高 齢 者 が 生 活 を す る 地 域 が 一 体 と な っ て お 互 い に 支 え 合 う 必 要 が あ る こ と が 提 唱 さ れ た 。 こ れ が 地 域 包 括 ケ ア 研 究 会(2010)に よ る 「 地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム 」 の 概 念 で あ る 。 地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム の 提 唱 と と も に , そ れ に 応 じ る 形 で 様 々 な 医 療 ・ 介 護 施 策 が 施 行 さ れ て お り ,特 に 多 職 種 連 携 の 実 現 に 向 け た 取 り 組 み が 強 力 に 推 進 さ れ る よ う に な っ た 。 次 項 で は 地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム の 概 要 と 在 宅 医 療 ・ 介 護 の 推 進 に 係 る 国 の 動 向 に つ い て 説 明 す る 。
4 . 地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム
地 域 包 括 ケ ア 研 究 会(2013)に よ る と , 地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム と は 高 齢 者 の 尊 厳 の 保 持 と 自 立 生 活 の 支 援 の 目 的 の も と , 可 能 な 限 り 住 み 慣 れ た 地 域 で 自 分 ら し い 暮 ら し を 人 生 の 最 期 ま で 続 け る こ と が で き る 地 域 の 包 括 的 な 支 援 ・ サ ー ビ ス 提 供 体 制 の こ と を 指 す 。 こ こ で の 地 域 と は お お む ね 30 分 以 内 の 日 常 生 活 圏 域 内 ( 中 学 校 区 ) を 想 定 し , 高 齢 者 が 生 活 上 の 安 全 ・ 安 心 ・ 健 康 を 確 保 す る た め の 多 様 な サ ー ビ ス を 利 用 し な
が ら ,24 時 間 365 日 の 生 活 を 継 続 す る こ と を 目 指 し て い る 。
地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム は 介 護 , 医 療 , 介 護 予 防 , 住 ま い , 生 活 支 援 ・ 福 祉 サ ー ビ ス の 5 つ の 要 素 か ら 構 成 さ れ る(図 1-1)。ま ず 生 活 の 基 盤 と し て 必 要 な 住 ま い が 整 備 さ れ , 本 人 の 希 望 と 経 済 力 に か な っ た 住 ま い 方 が 確 保 さ れ て い る こ と 図 1- 1 . 地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム(地 域 包 括 ケ ア 研 究 会, 20 13)
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が 前 提 で あ る 。 食 事 の 準 備 や 近 隣 住 民 の 声 か け や 見 守 り な ど の イ ン フ ォ ー マ ル な 生 活 支 援 を 幅 広 く 活 用 す る 。そ し て ,個 々 人 の 抱 え る 課 題 に あ わ せ て「 介 護 ・ リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 」「 医 療 ・ 看 護 」「 保 健 ・ 予 防 」 の サ ー ビ ス が 専 門 職 に よ っ て 提 供 さ れ る 。
つ ま り , 自 分 の こ と は 自 分 で す る 「 自 助 」 と 近 隣 住 民 や ボ ラ ン テ ィ ア に よ る 支 え 合 い の 「 互 助 」, 医 療 ・ 介 護 保 険 制 度 に よ る 「 共 助 」 の 組 み 合 わ せ を 想 定 し て お り , 特 に 自 助 と 互 助 の 果 た す 役 割 が 大 き く な る こ と を 意 識 し た 取 組 み が 必 要 と さ れ て い る 。 そ の 他 , 単 身 ・ 高 齢 者 の み 世 帯 が 主 流 に な る 中 で , 在 宅 生 活 を 選 択 す る こ と の 意 味 を 本 人 家 族 が 理 解 し , そ の た め の 心 構 え を 持 つ と い う 本 人 ・ 家 族 の 選 択 と 心 構 え も 同 時 に 強 調 さ れ て い る 。
報 告 書 内 に お い て 医 療・介 護 サ ー ビ ス を 切 れ 目 な く 統 合 的 に 提 供 す る た め に , 顔 の 見 え る 関 係 づ く り を 基 盤 に し た 多 職 種 の 相 互 理 解 と 連 携 の 必 要 性 を 強 調 し て い る 。 具 体 的 な 手 段 と し て , 多 職 種 合 同 の 事 例 研 究 等 の 機 会 を 増 や す , 入 院 患 者 が 早 期 に 在 宅 復 帰 で き る よ う 専 門 機 関 間 で の 情 報 共 有 に 向 け た 地 域 連 携 パ ス を 構 築 す る , 情 報 通 信 技 術 を 活 用 し た 連 携 環 境 を 整 備 す る , そ し て 他 職 種 が と も に 学 び 実 践 を 共 有 す る 専 門 職 連 携 教 育 を 実 施 す る こ と 等 が 例 示 さ れ て い る 。
5 . 在 宅 医 療 ・ 介 護 の 連 携 推 進 に 係 る 施 策 の 動 向
地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム の 概 念 が 提 唱 さ れ て か ら , 在 宅 医 療 ・ 介 護 の 連 携 の 促 進 を 目 指 す 様 々 な 施 策 が 打 ち 出 さ れ る よ う に な っ た 。2011 年 の「 介 護 サ ー ビ ス の 基 盤 強 化 の た め の 介 護 保 険 法 等 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 」 に お い て , 法 律 上 に 地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム の 実 現 が 明 確 に 位 置 づ け ら れ た 。2012 年 2 月 17 日 に 閣 議 決 定 さ れ た 「 社 会 保 障 ・ 税 一 体 改 革 大 綱 」 に お い て も , 地 域 の 実 情 に 応 じ た 医 療 ・ 介 護 サ ー ビ ス の 提 供 体 制 の 効 率 化 ・ 重 点 化 と 機 能 強 化 を 図 る こ と が 示 さ れ た 。
こ れ を 受 け て 厚 生 労 働 省(2012)は「 在 宅 医 療 ・ 介 護 あ ん し ん 2012」プ ロ ジ ェ ク ト を 発 表 ,実 施 し た 。こ の プ ロ ジ ェ ク ト は(1)在 宅 チ ー ム 医 療 を 担 う 人 材 育 成 , (2) 個 別 の 疾 患 等 に 対 応 し た サ ー ビ ス の 充 実 ・ 支 援 ,(3) 実 施 拠 点 と な る 基 盤 の 整 備 の 3 本 柱 に ,「 社 会 保 障 ・ 税 一 体 改 革 大 綱 」 に 沿 っ て , 病 院 ・ 病 床 機 能 の 分 化 ・ 強 化 と 連 携 , 在 宅 医 療 の 充 実 , 重 点 化 ・ 効 率 化 等 を 実 現 す る こ と を 目 指 し た も の で あ る 。
(1)は 地 域 の 医 療 ・ 介 護 の 多 職 種 が チ ー ム と な っ て 患 者 ・ 家 族 を 支 援 で き る よ う 研 修 を 実 施 す る 事 業 で あ る 。(2)は 在 宅 医 療 推 進 の た め の サ ー ビ ス の 充 実 ・ 支 援 や 個 別 の 疾 患 等 に 対 応 し た 取 り 組 み に 係 る 事 業 で あ る 。(3)は 多 職 種 が 連 携 で
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き る た め の 体 制 の 構 築 と 実 施 拠 点 と な る 基 盤 の 整 備 を 行 う 「 在 宅 医 療 連 携 拠 点 事 業 」 と 称 さ れ る 。 具 体 的 に は , 在 宅 医 療 を 提 供 す る 機 関 等 を 連 携 拠 点 と し て 定 め ,(ア)多 職 種 連 携 の 課 題 に 対 す る 解 決 策 の 抽 出 ,(イ)在 宅 医 療 従 事 者 の 負 担 軽 減 の 支 援 ,(ウ)効 率 的 な 医 療 提 供 の た め の 多 職 種 連 携 ,(エ)在 宅 医 療 に 関 す る 地 域 住 民 へ の 普 及 啓 発 ,(オ)在 宅 医 療 従 事 者 の 人 材 育 成 , の 5 項 目 を 実 施 す る も の で あ る 。
厚 生 労 働 省( 2 0 1 3 )に よ れ ば 在 宅 医 療 連 携 拠 点 事 業 は ,2 0 11 年 度 は 1 0 ヶ 所 , 2012 年 度 は 105 ヶ 所 の 地 域 に て 試 験 的 に 取 り 組 ま れ た と 報 告 さ れ て い る 。 活 動 対 象 の 地 域 の 人 口 規 模 は 1 万 人 以 下 か ら 100 万 人 以 上 と 幅 が 広 く , 医 療 ・ 介 護 の 提 供 及 び 連 携 体 制 は 地 域 ご と に 多 種 多 様 で あ っ た 。 在 宅 医 療 ・ 介 護 連 携 を 推 進 す る た め に は , 公 的 機 関 が 公 平 ・ 中 立 な 立 場 で 中 心 的 役 割 を 担 う こ と , 医 師 会 等 と 協 働 す る こ と , な る べ く 多 く の 関 係 機 関 が 参 加 し て 負 担 を 分 散 し な が ら 全 員 が メ リ ッ ト を 得 ら れ る 体 制 を 構 築 す る こ と が 必 要 で あ る と 示 唆 さ れ て い る 。 そ し て 多 職 種 協 働 の 中 で 地 域 課 題 を 解 決 す る 方 略 と し て , 連 携 拠 点 を 設 置 す る こ と の 有 効 性 が 示 さ れ た 。
2013 年 度 は 医 療 計 画 の 見 直 し が な さ れ ,「 在 宅 医 療 に つ い て 達 成 す べ き 目 標 , 医 療 連 携 体 制 」 の 項 目 内 に , 介 護 と 連 携 し た 在 宅 医 療 の 体 制 整 備 を 目 指 す 在 宅 医 療 推 進 事 業 と い う 施 策 が 新 た に 加 え ら れ た 。 新 施 策 は 在 宅 医 療 連 携 拠 点 事 業 を 引 き 継 ぐ も の で あ り ,2 年 間 の 実 績 を も と に 市 町 村 や 地 域 医 師 会 等 と の 関 係 者 に よ る 体 制 整 備 を 促 す 内 容 で あ っ た 。
2014 年 に は「 地 域 に お け る 医 療 及 び 介 護 の 総 合 的 な 確 保 を 推 進 す る た め の 関 係 法 律 の 整 備 等 に 関 す る 法 律 」 が 公 布 さ れ た 。 地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム を 構 築 す る こ と を 通 じ , 地 域 に お け る 医 療 及 び 介 護 の 総 合 的 な 確 保 に 向 け て 国 を 挙 げ て 推 進 す る こ と が 明 示 さ れ た 。そ の 後 ,201 5 年 の 介 護 保 険 制 度 の 改 正 に 伴 い ,「 在 宅 医 療 ・ 介 護 連 携 推 進 事 業 」 が 介 護 保 険 法 の 地 域 支 援 事 業 に 位 置 付 け ら れ た 。 こ れ ま で の 希 望 す る 地 域 を 対 象 に 試 行 的 に 実 施 さ れ た 連 携 拠 点 事 業 を , 介 護 保 険 法 で 恒 久 的 な 制 度 と し て 位 置 づ け て 全 国 的 に 取 り 組 む こ と が 定 め ら れ た 。 在 宅 医 療 ・ 介 護 連 携 推 進 事 業 は 2015 年 度 か ら 市 区 町 村 が 主 体 と な っ て 取 り 組 み を 開 始 し ,2018 年 4 月 に は 全 市 区 町 村 で 実 施 さ れ る 予 定 で あ る 。
在 宅 医 療 ・ 介 護 連 携 推 進 事 業 の 具 体 的 な 内 容 は , 在 宅 医 療 ・ 介 護 連 携 推 進 事 業 の 手 引 き ( 案 ) に 示 さ れ た 次 の 8 点 で あ る 。(ア)地 域 の 医 療 ・ 介 護 の 資 源 の 把 握 ,(イ)在 宅 医 療・介 護 連 携 の 課 題 の 抽 出 と 対 応 策 を 検 討 す る 会 議 の 開 催 ,(ウ) 切 れ 目 な い 在 宅 医 療 と 介 護 の 提 供 体 制 の 構 築 推 進 ,(エ)医 療 ・ 介 護 関 係 者 の 情 報 共 有 の 支 援 ,(オ)在 宅 医 療 ・ 介 護 連 携 に 関 す る 相 談 支 援 ,(カ ) 医 療 ・ 介 護 関
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係 者 の 研 修 ,(キ)地 域 住 民 へ の 普 及 啓 発 ,(ク)在 宅 医 療 ・ 介 護 連 携 に 関 す る 関 係 市 区 町 村 の 連 携 。(オ)は 介 護 保 険 の 知 識 を 有 す る 看 護 師 , 医 療 ソ ー シ ャ ル ワ ー カ ー 等 を 配 置 し , 地 域 の 医 療 ・ 介 護 関 係 者 , 地 域 包 括 支 援 セ ン タ ー 等 か ら 相 談 を 受 け 付 け る 在 宅 医 療 ・ 介 護 連 携 支 援 セ ン タ ー ( 仮 称 ) の 設 置 す る こ と が 示 さ れ て お り , 医 療 ・ 介 護 連 携 の 拠 点 と し て の 機 能 が 期 待 さ れ て い る(図 1-2)。
特 に(カ)の 項 目 は ,( 1)多 職 種 が 連 携 す る た め の グ ル ー プ ワ ー ク 等 の 研 修 ,(2) 医 療 ・ 介 護 関 係 者 に 対 す る 研 修 の 2 つ の 取 組 内 容 か ら 構 成 さ れ る 。(1)は 研 修 を 通 し て 専 門 性 等 の 異 な る 多 職 種 が 共 通 の 課 題 や 困 難 な 状 況 を 理 解 し , か つ 解 決 の プ ロ セ ス を 共 有 し な が ら 同 じ 方 向 に 向 か っ て い く 手 法 を 体 得 す る こ と を 目 指 す も の で あ る 。 加 え て そ れ ぞ れ が 抱 え る 現 状 の 課 題 を 単 に 共 有 す る た め の 情 報 交 換 会 と は 異 な る , と 記 載 さ れ て お り , 多 職 種 連 携 の 手 法 を 獲 得 す る 点 が 強 調 さ れ て い る 。(2)は 医 療 ・ 介 護 関 係 者 が 双 方 の 分 野 に つ い て の 知 識 を 習 得 す る 類 の 研 修 で あ る 。 医 療 関 係 者 に 対 し て は 介 護 サ ー ビ ス の 種 類 と 内 容 , 介 護 支 援 専 門 員 の 業 務 , 地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム 構 築 を 推 進 す る た め の 取 組 み 等 , 介 護 保 険 制 度 の 理 解 を 図 っ た 内 容 が 例 示 さ れ て い る 。 介 護 関 係 者 に 対 し て は 医 療 機 関 の 現 状 , 予 防 医 学 や 栄 養 管 理 の 考 え 方 , 在 宅 医 療 を 受 け る 患 者 ・ 利 用 者 に 必 要 な 医 療 処 置 や 療 養 上 の 注 意 点 等 , 医 療 の 理 解 を 図 る 内 容 が 例 示 さ れ て い る 。
超 高 齢 社 会 の 中 で , 高 齢 者 が 住 み な れ た 地 域 で 最 期 ま で 生 活 す る と い う 希 望 を 叶 え る た め に , 国 を あ げ て 多 職 種 連 携 が 強 調 さ れ て い る 。 そ し て , 職 能 団 体 等 の 組 織 間 の 連 携 を 推 し 進 め る と と も に , 医 療 ・ 介 護 の 専 門 職 個 々 人 の 連 携 に 係 る 知 識 ・ 技 能 の 向 上 が 強 く 求 め ら れ て い る 。
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図 1- 2. 在 宅 医 療 ・ 介 護 連 携 支 援 セ ン タ ー(厚 生 労 働 省, 20 15)
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第 2 章
専 門 職 連 携 教 育 と 研 究 目 的
脚 注
本 章 の 内 容 の 主 要 部 分 は 以 下 の 表 題 の 公 刊 論 文 に 含 ま れ て い る 。
藤 田 益 伸(2014). IPE( 専 門 職 連 携 教 育 ) の 概 観 と 地 域 包 括 ケ ア に 向 け た 検 討 . 地 域 福 祉 サ イ エ ン ス, 1, 73-81.
12 1 . 連 携 の 定 義
専 門 職 間 の 連 携 の 必 要 性 は 古 く か ら 指 摘 さ れ 続 け て い る 。 一 般 的 に 専 門 職 が 個 々 に ケ ア を 提 供 す る よ り も , 相 互 に 連 携 し て 長 所 を 生 か し た ケ ア を 提 供 す る 方 が 良 い 結 果 を も た ら す と 考 え ら れ て い る 。Mickan(2005)に よ れ ば ,多 職 種 連 携 の 効 果 と し て 入 院 期 間 の 減 少 や 治 療 の 受 け や す さ , 患 者 満 足 度 の 向 上 , 専 門 職 の 専 門 能 力 と 職 務 満 足 度 の 向 上 を は じ め と し た 多 数 の 効 果 な ど が 示 さ れ て い る 。 多 職 種 間 で 支 援 の 目 標 と 方 向 性 を 共 有 す る こ と や 知 識 ・ 技 術 を 分 か ち 合 う こ と で , 各 専 門 職 が お 互 い に 求 め る 役 割 が 明 確 に な る 。 そ し て 患 者 及 び 家 族 の 多 様 で 複 雑 な ニ ー ズ に 対 し て , 各 専 門 職 が 固 有 の 専 門 性 を 発 揮 し て よ り よ く 対 応 し , 結 果 的 に 患 者 の 生 活 の 質 の 向 上 に 寄 与 す る こ と が で き る 。 医 療 ・ 福 祉 の 専 門 機 関 に 対 す る 調 査 に お い て も , 多 く の 専 門 機 関 が 相 互 の 連 携 が 必 要 で あ る と 回 答 し て い る(永 井 ・ 山 本 ・ 横 山 ,2008)。
し か し , 連 携 と い う 用 語 は 統 一 的 な 定 義 が な さ れ て お ら ず , 非 常 に 曖 昧 に 用 い ら れ て い る 。 野 中(2007)は ,”linkage”,“coordination”,
“cooperation”,”collaboration”が , 翻 訳 の 際 に す べ て 「 連 携 」 と 訳 さ れ て し ま う こ と や , 連 携 の 類 義 語 と し て 「 協 働 」,「 協 同 」「 協 業 」 な ど の 様 々 な 言 葉 が あ る た め に 用 語 間 の 区 分 が 厳 密 で は な い と 指 摘 し て い る 。 連 携 の 定 義 も 様 々 で , 山 中(2004)は 「 援 助 に お い て 異 な っ た 分 野 , 領 域 , 職 種 に 属 す る 複 数 の 援 助 者 が , 単 独 で は 達 成 で き な い , 共 有 さ れ た 目 標 を 達 成 す る た め に , 相 互 促 進 的 な 協 力 関 係 を 通 じ て , 行 為 や 活 動 を 展 開 す る プ ロ セ ス 」 と 定 義 し て い る 。 筒 井 (2003)の 定 義 で は ,「 連 携 と は 異 な る 専 門 職 や 機 関 が ,よ り よ い 課 題 解 決 の た め に , 共 通 の 目 的 を 持 ち , 情 報 の 共 有 化 を 図 り , 協 力 し 合 い 活 動 す る こ と 」 と さ れ る 。 吉 池 ・ 栄(2009)は 「 共 有 化 さ れ た 目 的 を も つ 複 数 の 人 及 び 機 関 が , 単 独 で は 解 決 で き な い 課 題 に 対 し て , 主 体 的 に 協 力 関 係 を 構 築 し て , 目 的 達 成 に 向 け て 取 り 組 む 相 互 関 係 の 過 程 で あ る 」 と 定 義 す る 。 こ の よ う に 研 究 者 に よ っ て も 連 携 の 定 義 が 多 様 で 曖 昧 な た め , 医 療 , 介 護 の 仕 事 に 従 事 す る 専 門 職 の 連 携 の 捉 え 方 は そ れ 以 上 に 大 き く 異 な る 恐 れ が あ る 。 連 携 に 対 す る 意 識 の ず れ が 専 門 職 間 の す れ 違 い を 生 じ さ せ , か え っ て 連 携 が 阻 害 さ れ る こ と も 懸 念 さ れ る 。 連 携 の 定 義 が 一 致 し な い 理 由 の 1 つ と し て , 連 携 そ れ 自 体 が 教 育 科 目 と し て 体 系 化 さ れ て い な い こ と が 挙 げ ら れ る 。 従 来 の 専 門 職 教 育 は 専 門 ご と の 縦 割 り 教 育 が 主 体 で あ り , 異 な る 分 野 の 学 生 や 専 門 職 が 一 堂 に 会 し て 学 ぶ 教 育 方 法 は あ ま り 取 り 入 れ ら れ て い な か っ た 。 そ し て ど の 分 野 も 学 問 領 域 が 高 度 ・ 複 雑 化 し て ,専 門 教 育 へ の 偏 重 と カ リ キ ュ ラ ム の 過 密 さ が 年 々 増 し て い る(水 本 ,2011)。 加 え て 松 岡(2009)に よ れ ば , 効 果 的 な 連 携 の 手 法 は 臨 床 現 場 で 経 験 を 重 ね る こ
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と で 自 然 に 習 得 さ れ る と 考 え ら れ て お り , 意 図 的 な 教 育 が 必 要 で あ る と 認 識 さ れ る こ と は 少 な か っ た と さ れ る 。 そ の た め 専 門 職 間 の 連 携 を 達 成 す る た め の 手 段 ・ 方 法 は こ れ ま で 十 分 に 研 究 さ れ な か っ た の が 実 情 で あ る 。
近 年 , 学 生 や 専 門 職 を 対 象 と し て 連 携 の あ り 方 ・ 実 践 方 法 を 学 ぶ た め の 教 育 方 法 と し て 専 門 職 連 携 教 育 の 体 系 化 が 進 め ら れ て い る 。 異 な る 学 習 背 景 を 持 つ 各 々 の 専 門 職 が ,「 連 携 」の 知 識 ・ 技 術 を 習 得 し て 相 互 の 価 値 観 や 行 動 様 式 の 違 い を 理 解 し , よ り よ い 協 働 の 実 現 を 目 指 し た 取 り 組 み が 世 界 各 地 で 始 め ら れ て い る 。 こ れ ま で 蓄 積 さ れ た 専 門 職 連 携 教 育 の 研 究 成 果 に つ い て 概 観 し , 本 研 究 の 目 的 で あ る 在 宅 介 護 場 面 に お け る 専 門 職 連 携 教 育 の あ り 方 に つ い て 検 討 し た 。
2 . 専 門 職 連 携 教 育
専 門 職 連 携 教 育 は「2 つ 以 上 の 専 門 職 が ,協 働 と ケ ア の 質 を 改 善 す る た め に , と も に 学 び , お 互 い か ら 学 び 合 い な が ら , お 互 い の 事 を 学 ぶ こ と 」 と 定 義 さ れ る(Barr, 2002)。Barr, Freeth, Hammick, Koppel,& Reeves(2006)に よ れ ば 専 門 職 連 携 教 育 は 専 門 職 個 々 人 の 教 育 と サ ー ビ ス の 改 善 , 専 門 職 間 の 連 携 の 向 上 を 主 眼 に 置 い て い る 。 ま た , 専 門 職 連 携 教 育 の 類 義 語 と し て 多 種 専 門 職 教 育 (Multiprofessional Education)と い う 用 語 が 存 在 す る 。 こ れ は 「 共 通 の ト ピ ッ ク を 学 習 す る 際 , 相 互 作 用 が 計 画 さ れ な い 状 態 で 2 種 類 以 上 の 専 門 職 が 学 習 す る 」 こ と を 指 し , 専 門 職 連 携 教 育 と 区 別 さ れ る 。
専 門 職 連 携 教 育 で は 集 合 型 講 義 の よ う に 一 方 的 ・ 受 動 的 に 知 識 を 伝 達 す る だ け で は な く , 多 数 の 専 門 職 が お 互 い か ら お 互 い に つ い て 学 ぶ と い う 相 互 作 用 が 重 視 さ れ る 。 専 門 職 連 携 教 育 を 通 じ て 各 々 の 専 門 職 が 協 働 実 践 に 向 け た 準 備 を し て , 臨 床 場 面 で 複 数 の 専 門 職 が 協 働 の 実 践 を 成 し 遂 げ て , 患 者 の 生 活 の 質 の 向 上 を 実 現 す る こ と を 目 指 し て い る(WHO, 2010)。WHO(201 0)に よ る 専 門 職 連 携 教 育 と 協 働 実 践 の 関 係 を 図 2-1 に 示 す 。
図 2 - 1 . 専 門 職 連 携 教 育 と 協 働 実 践 ( W H O ( 2 0 1 0 ) を 著 者 が 一 部 修 正 ) 現 在 ・
未 来 の 保 健 医 療
従 事 者
専 門 職 連 携 教 育
保 健 医 療 従 事 者 の 協 働 実 践 へ の 準 備
協 働 実 践
最 適 な 保 健 医 療 サ ー ビ ス
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専 門 職 連 携 教 育 は① 教 育 者( ス タ ッ フ の 訓 練 ,組 織 的 支 援 ,経 営 者 の 関 与 等 ),
② カ リ キ ュ ラ ム ( ロ ジ ス テ ィ ッ ク , ス ケ ジ ュ ー ル , 出 席 の 強 制 , 目 的 の 共 有 ) と い う 2 つ の テ ー マ で 構 成 さ れ る 。 た だ し , 教 育 内 容 及 び 教 授 法 に 関 し て 2 種 類 以 上 の 専 門 職 間 の 相 互 作 用 を 含 む と い う 点 の ほ か に特 段 の 定 め は な い 。専 門 職 連 携 教 育 の教 育 期 間 や 時 間 数 , 参 加 す る 専 門 職 の 種 類 や 人 数 , 教 育 方 法 ・ 内 容 は 多 岐 に 渡 る 。 な お 専 門 職 連 携 教 育 は 大 学 に お け る 専 門 資 格 取 得 前 の 教 育 だ け で は な く , 資 格 を 取 得 し た 後 の 臨 床 場 面 で の 学 び も 含 む も の で あ る 。
専 門 職 連 携 教 育 に お け る 学 習 者 間 の 相 互 作 用 を 促 す 学 習 形 態 と し て ,異 な る 専 門 職 が ペ ア ま た は グ ル ー プ を 組 ん で ,意 見 交 換 や グ ル ー プ ワ ー ク を 行 う こ と が 多 い 。実 際 の患 者 や 模 擬 患 者 の 事 例 を 検 討 し て 支 援 の あ り 方 や 方 向 性 を 再 確 認 す る 問 題 解 決 型 学 習 や 事 例 研 究 も 頻 繁 に 使 用 さ れ る 。 そ の 他 , 患 者 を 支 援 す る 過 程 の 中 で 具 体 的 に 目 標 を 定 め て 協 働 す る ア ク シ ョ ン ベ ー ス の ア プ ロ ー チ を は じ め ,多 種 多 様 な ア プ ロ ー チ が 採 用 さ れ て い る 。イ ン タ ー ネ ッ ト サ イ ト に ア ク セ ス し て シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 型 の 学 習 を 行 っ た り , メ ー ル や オ ン ラ イ ン 会 議 を 通 じ て 相 互 作 用 を 促 し た り す る e ベ ー ス の 学 習 方 法 も み ら れ る 。 こ れ ら の 学 習 形 態 は 単 独 で 採 用 さ れ る こ と も あ れ ば ,2 つ 以 上 の ア プ ロ ー チ が 採 用 さ れ る こ と も あ る 。 専 門 職 連 携 教 育 は 全 て が 相 互 作 用 を 促 進 す る カ リ キ ュ ラ ム の み で 構 成 さ れ て い る わ け で は な く , 講 義 や 自 主 学 習 , 時 間 外 で の 宿 題 等 が 含 ま れ る こ と も あ る 。先 行 研 究 に よ れ ば ,専 門 家 に よ る 講 義 と 参 加 者 間 の セ ミ ナ ー , 討 論 の 組 み 合 わ せ が 最 も 多 く 採 用 さ れ て い る(Barr, Koppel, Reeves,
Hammick,& Freeth, 2005)。
日 本 の 大 学 に お け る 専 門 資 格 取 得 前 の 専 門 職 連 携 教 育 の 一 例 と し て , 吉 備 国 際 大 学(2011)の 取 り 組 み が 挙 げ ら れ る 。 同 大 学 は 社 会 福 祉 士 , 看 護 師 , 作 業 療 法 士 の 専 門 職 養 成 課 程 を 有 し て い る 。 従 来 の 養 成 段 階 で は 関 連 す る 専 門 領 域 の 接 点 が な く , 具 体 的 な 連 携 の 実 情 を 考 慮 し て 各 専 門 職 の 役 割 や 使 命 を 理 解 す る 養 成 機 会 が な い こ と が 課 題 で あ っ た 。 そ こ で , 学 科 を 越 え た 合 同 演 習 の 場 を 構 築 し ,3 領 域 の 専 門 職 者 が 協 働 す る 場 面 を 提 示 し , シ チ ュ エ ー シ ョ ン ロ ー ル プ レ イ を 中 心 と す る 体 験 型 演 習 を 実 施 し た 。
シ チ ュ エ ー シ ョ ン ロ ー ル プ レ イ の 内 容 は 以 下 の 通 り で あ る 。 例 え ば 食 事 を 拒 否 さ れ る 場 面 , 家 族 か ら リ ハ ビ リ を 拒 否 さ れ る 場 面 等 ,3 領 域 の 専 門 職 の 連 携 と 役 割 理 解 に 関 す る 場 面 が 設 定 さ れ ,日 常 性 の 高 い 生 活 場 面 が 設 定 さ れ て い る 。 設 定 さ れ た 場 面 に お い て , 学 生 各 自 に 声 か け 方 法 や コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン , 立 ち 位 置 や 動 作 を , 実 際 に ロ ー ル プ レ イ を さ せ る 。 ロ ー ル プ レ イ を 通 じ て , ど の 職 種 に 何 を ど の よ う に , 連 絡 や 相 談 を す る べ き な の か を 具 体 的 に 検 討 し , 望 ま し
15 い 連 携 に つ い て 考 察 す る ,
と い う 流 れ で あ る 。
同 大 学 の 2010 年 度 合 同 演 習 の カ リ キ ュ ラ ム を 表 2-1 に 示 す 。 オ リ エ ン テ ー シ ョ ン は 3 学 科 の 教 員 に よ り , 各 学 科 の 専 門 領 域 の 特 徴 や 専 門 性 , 得 意 分 野 , 役
割 な ど の 講 義 を 実 施 し た 。2 限 か ら 4 限 は 場 面 設 定 さ れ た シ チ ュ エ ー シ ョ ン に 応 じ た 形 で ロ ー ル プ レ イ を 行 っ た 。5 限 は 4 限 ま で の 演 習 を 振 り 返 り ,「 他 職 種 と 連 携 す る 時 , ど う す れ ば う ま く で き る か ? そ の た め に は , ど ん な こ と が 必 要 に な る か ? 」と い う 課 題 に つ い て グ ル ー プ デ ィ ス カ ッ シ ョ ン と 発 表 を 行 っ た 。 合 同 演 習 は 実 習 教 育 の 前 段 階 と し て , 集 中 講 義 形 式 で 実 施 さ れ て い る 。
シ チ ュ エ ー シ ョ ン ロ ー ル プ レ イ は , ス モ ー ル ス テ ッ プ の 目 標 を 設 定 し て 達 成 感 も 感 じ ら れ る 仕 組 み が 特 徴 で , 最 初 の 演 技 で は 戸 惑 い を 示 す 学 生 も 多 か っ た が , 回 数 を 重 ね る こ と で 専 門 職 と し て の 振 る 舞 い が で き る よ う に な っ た 。 他 職 種 と の 信 頼 関 係 の 築 き 方 を 学 び , 自 ら の 専 門 性 に つ い て 再 確 認 す る 機 会 と な っ て い る 。 こ の 他 , 合 同 演 習 で は 各 グ ル ー プ に 進 行 を 補 佐 す る 担 当 者 が 付 き , そ れ と と も に 医 療 ・ 介 護 の 現 場 の 実 践 者 が 演 習 評 価 者 と し て 参 加 し て い る 。 大 学 教 育 に 現 職 者 が 参 加 す る こ と に よ っ て , リ ア リ テ ィ の あ る 演 技 指 導 が な さ れ , さ ら に 学 生 ・ 大 学 ・ 実 践 者 の 学 び の コ ミ ュ ニ テ ィ 形 成 も 実 現 さ れ て い る 。
3 . 専 門 職 連 携 教 育 の 国 際 動 向
WHO(2010)に よ れ ば , 世 界 396 ヶ 所 の う ち ,42 ヶ 国 で 専 門 職 連 携 教 育 プ ロ グ ラ ム が 実 践 さ れ , 医 師 や 看 護 師 , ソ ー シ ャ ル ワ ー カ ー を は じ め 多 種 多 様 な 専 門 職 が 参 加 し て い る 。 専 門 職 連 携 教 育 の 歴 史 自 体 は 古 い が , 近 年 注 目 さ れ る 契 機 と な っ た の は イ ギ リ ス の CAIPE(Centre For The Advancement of
Interprofessional Education) で あ る(新 井, 2007)。 イ ギ リ ス で は 国 営 に よ る 病 人 を 対 象 と し た 医 療 サ ー ビ ス と , 地 方 自 治 体 に よ る 虚 弱 者 を 対 象 と し た 社 会 サ ー ビ ス が 区 別 さ れ て い る 。 し か し 領 域 の 縦 割 り と 役 割 や 権 限 の 違 い に よ る 弊 害 と し て , サ ー ビ ス 供 給 が 重 複 し た り , 両 者 が カ バ ー し な い 隙 間 が 生 じ た り し て サ ー ビ ス の 質 の 向 上 が 阻 害 さ れ て い た 。 こ う し た 状 況 を 改 善 し , 専 門 領 域 の 枠 を 超 え た 連 携 に 向 け て ,1987 年 に 専 門 職 連 携 教 育 の 促 進 を 目 指 す 非 営 利 団 体 と し て CAIPE が 設 立 さ れ た 。CAIPE の 会 員 数 は 約 300 で , 公 立 及 び 私 立 の
時 限 内 容
1 限 オ リ エ ン テ ー シ ョ ン
2 限 合 同 演 習 1 - 高 齢 者 へ の 声 か け - 3 限 合 同 演 習 2 - 他 専 門 職 と の 連 携 - 4 限 合 同 演 習 3 - 連 携 の 流 れ -
5 限 グ ル ー プ デ ィ ス カ ッ シ ョ ン
表 2- 1 吉 備 国 際 大 学( 20 11)の 合 同 演 習 カ リ キ ュ ラ ム
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教 育 機 関 , 保 健 及 び 社 会 福 祉 , 司 法 関 連 の 団 体 や 個 人 が 入 会 し て い る 。 オ ー ス ト ラ リ ア と ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド で は ,AIPPEN(Australasian
Interprofessional Practice and Education Network)が ケ ア 部 門 , 大 学 , 職 業 教 育 訓 練 部 門 , 政 府 , 開 業 医 , サ ー ビ ス 利 用 者 を つ な ぐ ネ ッ ト ワ ー ク 構 築 を 目 指 し て い る 。 カ ナ ダ で も 組 織 や 部 局 内 外 で の 最 善 の 協 働 実 践 モ デ ル の 構 築 に 向 け て CIHC(Canadian Interprofessional Health Collaborative)が 設 立 さ れ て い る 。EIPEN(European Interprofessional Education Network)は , 北 欧 諸 国 の 専 門 職 種 が 加 入 し て 国 境 を 越 え た 大 学 ・ 職 域 の ネ ッ ト ワ ー ク の 発 展 を 目 指 し て い る 。
日 本 で は 2008 年 に JAIPE (Japan Association for Interprofe ssional Education: 日 本 保 健 医 療 福 祉 連 携 教 育 学 会)が 設 立 さ れ た 。 設 立 時 の 将 来 展 望 と し て , 現 場 協 働 に お け る 連 携 の 必 要 性 を 連 携 教 育 の 内 容 に 反 映 す る , 保 健 医 療 福 祉 分 野 に お け る 評 価 指 標 ・ 成 果 指 標 の 共 有 化 , 現 場 協 働 の 発 展 と 普 及 の た め の 現 場 研 修 と 連 携 教 育 と の 関 係 強 化 , の 3 点 を 掲 げ て 機 関 , 組 織 の 枠 を 超 え た 活 動 が 展 開 さ れ て い る(高 橋 ,2009)。
4 . 専 門 職 連 携 教 育 の 実 践 と そ の 成 果
専 門 職 連 携 教 育 に よ っ て 各 々 の 専 門 職 が 自 他 に 求 め ら れ る 役 割 を 理 解 し , 患 者 中 心 の ケ ア と い う 共 通 目 標 を 持 っ て 協 働 す る こ と が 実 現 さ れ る 。 ま ず 資 格 取 得 前 の 学 生 を 対 象 に し た 専 門 職 連 携 教 育 は , 演 習 , 問 題 解 決 型 学 習 , 臨 床 実 習 を は じ め 様 々 な 場 面 で 導 入 さ れ て い る 。 例 え ば Lin, Chan, Lai, Chin, Chou,&
Lin(2013)は 医 学 生 と 看 護 学 生 に 対 し て 問 題 解 決 学 習 を 用 い た 専 門 職 連 携 教 育 を 設 定 し ,臨 床 場 面 に お け る 倫 理 観 の 態 度 変 容 を 試 み て い る 。ま た ,McCaffrey, Tappen, Lichtstein,& Friedland(2013)は 医 学 生 と 看 護 学 生 が 共 同 し て ア ル ツ ハ イ マ ー 病 の 診 断 ・ 治 療 の 実 習 に 臨 み , 双 方 の 特 長 を 学 び 合 う 成 果 が 得 ら れ た こ と を 報 告 し て い る 。Just, Schnell, Bongartz,& Schulz(2010 )は 医 学 生 と 看 護 学 生 に 緩 和 ケ ア の 事 例 を 読 ま せ た 後 に 意 見 交 換 を さ せ , 専 門 職 固 有 の 視 点 の 情 報 が 伝 達 さ れ た 回 数 が 増 加 し た , と い う 具 体 的 な 行 動 変 化 を 指 摘 し て い る 。 ま た 看 護 学 生 と ソ ー シ ャ ル ワ ー カ ー 学 生 が 在 宅 へ 同 行 訪 問 す る 経 験 を 通 し て , 看 護 師 に よ る 具 体 的 な ケ ア の 提 案 の 仕 方 と ソ ー シ ャ ル ワ ー カ ー の 対 象 者 へ 寄 り 添 う コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 方 法 等 , 相 互 の 専 門 職 の 強 み を お 互 い に 学 ぶ こ と が で き た と い う 報 告 も あ る(Chan, Lam,& Yeung, 2013)。 こ の よ う に 多 職 種 混 成 に よ る 意 見 交 換 , 観 察 , 共 同 作 業 に よ る 学 び を 通 じ て , 知 識 ・ 自 信 の 向 上 , 他 職 種 や 患 者 に 対 す る 肯 定 的・協 調 的 態 度 が 促 進 さ れ る と い っ た 効 果 が 示 さ れ て い る 。
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現 職 者 を 対 象 に し た 専 門 職 連 携 教 育 も 急 性 期 病 院 ,慢 性 期 病 院 や 高 齢 者 施 設 , 地 域 医 療 な ど 様 々 な 場 面 で 実 施 さ れ て い る 。Weaver, Rosen, DiazGranados, Lazzara, Lyons, Sal as, Knych, McKeeve r, Adler, Barker,& King(2010)は 手 術 室 の チ ー ム 向 け 専 門 職 連 携 教 育 を 活 用 し , チ ー ム ワ ー ク に 臨 む 態 度 や 行 動 の 質 や 手 術 前 の 患 者 へ の 説 明 の 仕 方 が 改 善 さ れ た と 述 べ て い る 。 新 生 児 治 療 チ ー ム の チ ー ム ワ ー ク を 向 上 し て , 手 術 の 判 断 の 意 思 決 定 に か か る 時 間 短 縮 に 寄 与 し た と い う 報 告 も み ら れ た(Nielsen, Goldman, Mann, Shapiro, Marcus, Pratt, Greenberg, McName e, Salisbury, Bi rnbach, Gluck, Pearlman, King ,
Tornberg, Sachs, 2007)。Rask, Parmelee, Taylor, Green, Br own, Hawle y,&
Schild(2009)の 研 究 で は 高 齢 者 施 設 に お い て 転 倒 防 止 に 向 け た 専 門 職 連 携 教 育 を 実 施 し , 転 倒 数 の 低 減 は み ら れ な か っ た も の の , ス タ ッ フ が 高 齢 者 を 身 体 拘 束 す る 頻 度 が 低 減 し た と い う 効 果 が み ら れ て い る 。
そ の 反 面 ,当 初 想 定 し て い た 成 果 が 得 ら れ な か っ た と い う 報 告 も 散 見 さ れ る 。 Thompson, Kinmonth, Stevens, Pe veler, Stevens, Ostler, Pickering, Baker, , Henson, Preece, Cooper,& Campbell(2000)の 臨 床 場 面 に お け る 研 究 で は , う つ 病 の 早 期 発 見 に 向 け て 専 門 職 連 携 教 育 を 導 入 し た も の の 統 制 群 と 差 が み ら れ な か っ た 。Brown, Boles, Mullooly,& Levinson(1999)は 医 師 ・ 患 者 間 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 改 善 に 向 け た 専 門 職 連 携 教 育 を 実 施 し た が , 全 般 的 な 患 者 満 足 度 に 変 化 が み ら れ な か っ た 。McKee, D'Eon,& Trinder(2013)は 学 生 を 対 象 に 緩 和 ケ ア の 問 題 解 決 型 学 習 を 用 い た 専 門 職 連 携 教 育 を 導 入 し た と こ ろ , 所 属 学 部 に よ っ て 知 識 の 増 加 や 専 門 職 連 携 教 育 が 有 効 か と い う 評 価 に ば ら つ き が み ら れ た と 報 告 し て い る 。Curran, Sharpe,& Forristall(2007)の 研 究 で は 男 性 よ り も 女 性 の 方 が , 専 門 職 連 携 教 育 を 経 験 し た 者 の 方 が そ う で な い 者 よ り も 教 育 に 対 す る 姿 勢 が 肯 定 的 で あ っ た と さ れ て い る 。
そ の 他 専 門 職 連 携 教 育 に 要 す る 時 間 が 長 い ほ ど 効 果 が 高 ま る か と い う 関 係 も 明 ら か に さ れ て い な い 。 Helitzer, La noue, Wilson, Hern andez, Warner,&
Roter(2011)の 研 究 は わ ず か 1 日 の み の 介 入 で あ っ た に も か か わ ら ず ,患 者 中 心 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と い う 教 育 効 果 が 2 年 間 保 持 さ れ た と 報 告 さ れ て い る 。 そ の 一 方 ,Mager & Lange(2014)は 高 齢 者 施 設 に て チ ー ム ワ ー ク 改 善 を 目 指 し て 3 年 間 継 続 し て 介 入 を 実 施 し た が , 統 計 的 に 有 意 な 改 善 に は 至 ら な か っ た と し て い る 。
こ う し た 専 門 職 連 携 教 育 の 諸 研 究 を メ タ 分 析 し た 報 告 を 紹 介 す る 。 ラ ン ダ ム 化 比 較 実 験 を 中 心 と し た 研 究 を 評 価 し , 根 拠 に 基 づ く 医 療 情 報 を 提 供 す る コ ク ラ ン 共 同 計 画 で は , 専 門 職 連 携 教 育 に つ い て 3 回 の シ ス テ マ テ ィ ッ ク ・ レ ビ ュ
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ー を 行 っ て い る 。2001 年 の レ ビ ュ ー で は ,ラ ン ダ ム 化 比 較 試 験 や 前 後 比 較 試 験 等 レ ビ ュ ー に 求 め ら れ る 研 究 の 厳 格 さ 基 準 に 合 致 し た も の が 存 在 し な か っ た (Zwarenstein, Reeve s, Barr, Hammick , Koppel,& Atkins, 2001)。2008 年 の レ ビ ュ ー で は 6 研 究 の う ち 4 つ が 肯 定 的 な 成 果 を も た ら し た が , 専 門 職 連 携 教 育 の 鍵 と な る 要 素 と 効 果 に つ い て 全 般 的 な 結 論 は 出 さ れ な か っ た(Reeves,
Zwarenstein, Goldman, Barr, Freeth, Hammick,& Koppel, 2008)。2013 年 の レ ビ ュ ー で は 15 研 究 の う ち 7 つ に 肯 定 的 成 果 が み ら れ , 4 つ が 肯 定 と 中 立 の 混 合 さ れ た 評 価 , 4 つ が 効 果 な し と 判 定 さ れ た(Reeves, Perr ier, Goldman, Freeth,& Zwarenstein, 2013)。た だ し ,専 門 職 連 携 教 育 の 全 般 的 な 効 果 に 関 す る 結 論 は 留 保 さ れ た 。 専 門 職 連 携 教 育 の 科 学 的 根 拠 を 高 め る た め に は , 専 門 職 固 有 の 教 育 と の 効 果 の 比 較 , 実 践 に よ る 変 化 の 過 程 に 係 る 質 的 研 究 , 費 用 対 効 果 分 析 が 求 め ら れ る , と 報 告 書 に お い て 指 摘 さ れ て い る 。
5 . 専 門 職 連 携 教 育 の 評 価
上 記 の 通 り 専 門 職 連 携 教 育 の 取 組 み が 広 が り を み せ て い る も の の , 効 果 検 証 の 取 組 み は 発 展 途 上 の 段 階 で あ る 。 ま た コ ク ラ ン 共 同 計 画 の レ ビ ュ ー で は , 専 門 職 連 携 教 育 が 根 拠 の あ る 医 療 に 効 果 的 で あ る と い う 結 論 が 出 さ れ な か っ た が , そ の 指 摘 が 専 門 職 連 携 教 育 を 否 定 す る も の で は な い 。 専 門 職 連 携 教 育 に は 患 者 ・ 家 族 ・ 専 門 職 ・ 教 育 者 を は じ め 様 々 な 利 害 関 係 者 が 関 与 し , 各 々 が 専 門 職 連 携 教 育 に 期 待 す る 有 効 性 の 価 値 , 判 断 基 準 は 異 な る と 想 定 さ れ る 。 根 拠 あ る 医 療 も 有 効 性 の 1 つ の 価 値 , 判 断 基 準 で あ り , そ れ が 全 て で は な い 。Barr et al.(2005)は Kirkpatr ick の 教 育 評 価 を も と に , 専 門 職 連 携 教 育 の 評 価 内 容 を 以 下 の 6 つ に 分 類 ・ 整 理 し て い る(表 2-2)。
表 2 - 2 . 専 門 職 連 携 教 育 の 成 果 の 類 型 ( B a r r e t a l . ( 2 0 0 5 ) を 著 者 が 一 部 修 正 )
レ ベ ル 類 型 評 価 内 容 具 体 的 な 指 標
レ ベ ル 1 反 応 専 門 職 連 携 教 育 の 経 験
へ の 見 解 と 反 応 学 習 者 の 満 足 度 ,学 習 へ の 好 感 度 レ ベ ル 2 a 態 度 /認 識 の 修 正 学 習 者 相 互 の 態 度 ・ 認
識 の 変 容
他 専 門 職 に 対 す る 態 度 ,共 に 働 く 事 に 対 す る 態 度
レ ベ ル 2 b 知 識 /技 能 の 習 得 協 働 に 関 連 し た 知 識 ・ 技 能 の 習 得
専門職の役割と責任の理解,チーム ワークの特質に対する知識・技能 レ ベ ル 3 行 動 の 変 容 専 門 的 実 践 に 関 す る 行
動 の 変 化
コミ ュニ ケ ーシ ョン , 協 働的 行動 の変化
レ ベ ル 4 a 組 織 的 実 践 の 変 化 組 織 的 実 践 の 変 化 組 織 間 の 労 働 形 態 の 変 化 ,患 者 記 録 の 作 成 , コ ス ト 削 減
レ ベ ル 4 b 患 者 /ク ラ イ エ ン ト の利益
患 者/ク ラ イエ ン ト の満
足度の改善 患 者 満 足 度 ,感 染 率 ,事 故 発 生 率
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レ ベ ル 1 か ら レ ベ ル 3 は 主 に 専 門 職 個 人 の 知 識 , 態 度 , 行 動 変 化 を 測 定 し た 成 果 で あ る 。 レ ベ ル 4 は 専 門 職 が 所 属 す る 組 織 や 専 門 職 か ら 支 援 を 受 け る 患 者 の 変 化 を 測 定 し た 成 果 と い え る 。 あ る い は レ ベ ル 1 か ら 3 は 専 門 職 連 携 教 育 の 実 践 が も た ら す 直 接 的 な 結 果(ア ウ ト プ ッ ト), レ ベ ル 4 は 専 門 職 連 携 教 育 の 結 果 と し て 生 じ る 環 境 変 化 ( ア ウ ト カ ム ) と 言 い 換 え る こ と が で き よ う 。
専 門 職 連 携 教 育 の 実 践 に お い て , 資 格 取 得 前 の 教 育 で は レ ベ ル 1,2a,2b の ア ウ ト カ ム 評 価 が , 資 格 取 得 後 の 教 育 で は レ ベ ル 4a,4b の ア ウ ト プ ッ ト 評 価 が 多 用 さ れ る 傾 向 が み ら れ る 。 大 学 教 育 の 場 面 で は 異 な る 学 部 学 生 同 士 の 相 互 学 習 を 通 じ て , 専 門 職 連 携 に 係 る 知 識 ・ 技 術 の 習 得 と 肯 定 的 態 度 を 形 成 す る こ と に 主 眼 が 置 か れ る 。 一 方 で 介 護 ・ 医 療 現 場 に お い て は 医 療 事 故 の 減 少 や 患 者 満 足 度 の 向 上 な ど , 提 供 さ れ る ケ ア の 質 の 改 善 や 患 者 満 足 度 の 向 上 等 の 成 果 が 重 視 さ れ る 。 な お レ ベ ル 3 の 行 動 に 関 し て 単 純 な 自 己 報 告 に よ る 行 動 変 化 が 測 定 さ れ る こ と が 多 く ,概 念 化 や 取 り 扱 い が う ま く い っ て い な い 傾 向 が み ら れ る 。
利 害 関 係 者 に よ る 関 心 は 多 様 で あ り , そ れ に 応 じ て 必 要 と す る 評 価 基 準 も 変 化 す る 。 専 門 職 は 自 身 の ス キ ル ア ッ プ に 高 い 関 心 を 寄 せ る か も し れ な い 。 彼 ら が 所 属 す る 組 織 は コ ス ト 削 減 や 収 益 の 増 加 に 関 心 が あ る か も し れ な い 。 患 者 は 安 全 で 効 果 的 な ケ ア に 強 く 関 心 が あ る か も し れ な い 。 そ し て 専 門 職 連 携 教 育 の 教 員 や フ ァ シ リ テ ー タ ー は 参 加 者 の 知 識 ・ 技 能 の 統 計 的 有 意 差 に 焦 点 を 置 く か も し れ な い 。 こ の 他 , 特 定 の 専 門 職 に は 利 益 に な る こ と が 他 職 種 に と っ て は 不 利 益 を も た ら す こ と も あ り , 時 に は 利 害 が 対 立 す る こ と も 予 想 さ れ る 。 専 門 職 連 携 教 育 の 評 価 に お い て は , 多 様 な 利 害 関 係 者 の 関 心 を 把 握 し , ど の 側 面 を 重 視 し て 測 定 す る べ き か 設 定 す る こ と が 奨 励 さ れ て い る(Freeth, Hammick , Reeves, Koppel,& Barr, 2005)。
6 . 地 域 に お け る 専 門 職 連 携 教 育 と 課 題
現 在 ,団 塊 の 世 代 が 75 歳 以 上 に な る 2025 年 を 目 途 に 地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム が 国 を 挙 げ て 推 進 さ れ て い る 。 こ の 地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム に お い て も , 専 門 職 連 携 教 育 に つ い て 次 の 通 り 言 及 し て い る(地 域 包 括 ケ ア 研 究 会, 2013)。
地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム の 構 築 に お い て , 在 宅 医 療 の 存 在 は 欠 か せ な い も の で あ る が , 開 業 医 の 在 宅 医 療 へ の 参 入 は , 依 然 と し て 必 要 な 水 準 に 達 し て い な い 状 況 で あ る 。 と 述 べ た 上 で , 多 職 種 協 働 (IPW:Inter-Professional Work) の 成 功 事 例 を 効 果 と し て 体 感 し て も ら う こ と , 市 町 村 が 公 的 な 立 場 か ら 地 区 医 師 会 や 関 係 事 業 者 ・ 専 門 職 団 体 を 活 動 の 中 に 巻 き 込 ん で 行 く こ と , そ し て 専 門 職