OECD 化学物質共同評価プログラム:第 5 回化学物質共同評価会議概要
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連絡先:〒158-8501 世田谷区上用賀 1-18-1 Email: [email protected] 受付日:2014 年 2 月 4 日 受理日:2014 年 5 月 15 日
【特集】
OECD 化学物質共同評価プログラム:第 5 回化学物質共同評価会議概要
OECD Cooperative Chemicals Assessment Programme: Summary of 5th Cooperative Chemicals Assessment Meeting
松本真理子1、宮地繁樹2、菅谷芳雄3、広瀬明彦1
1:国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター総合評価研究室 2:(一財)化学物質評価研究機構安全性評価技術研究所
3:(独)国立環境研究所環境リスク研究センター
Mariko Matsumoto1, Shigeki Miyachi2, Yoshio Sugaya3, Akihiko Hirose1
1. Division of Risk Assessment, Biological Safety Research Center, National Institute of Health Sciences, 2. Chemicals Assessment and Research Center, Chemicals Evaluation
and Research Institute, Japan, 3. Research Center for Environmental Risk, National Institute for Environmental Studies
要旨:第5回OECD化学物質共同評価会議が、2013年10月15-17日に米国のワシントンD Cで開催された。この会議では計24物質(初期評価21物質、選択的初期評価3物質)につい て審議され、物質カテゴリー:C6 Aliphatic Hydrocarbon Solvents(計9物質)を除く15物 質に合意が得られた。日本は、政府作成の4,4’-methylenebis(2-chloroaniline) (CAS:101-14-4) の 初 期 評 価 文 書 、 ま た diethylbiphenyl (CAS:28575-17-9) 、 3,3-bis(p-dimethylaminophenyl)-6-dimethylaminophthalide (CAS:1552-42-7)、4-amino-1- naphthalenesulfonic acid, sodium salt (CAS:130-13-2)の計3物質の選択的初期評価文書を提 出し合意された。その他の議題として、証拠の重みを用いた評価手法についてや、化学物質分 類方法について討議された。本稿では、第5回化学物質共同評価会議の討議の概要を報告する。
キーワード:経済協力開発機構、化学物質共同評価会議、有害性評価
Abstract:The 5th Cooperative Chemicals Assessment Meeting was held in Washington DC, USA on 15th-17th October 2013. The initial assessment documents of 24 substances (SIDS Initial Assessment for 21 substances, Initial Targeted Assessment for 3 substances) were discussed, and the conclusions of initial risk assessment for 15 substances were approved at the meeting. Japan submitted the SIDS initial assessment documents for 1 substance, 4,4’-methylenebis(2-chloroaniline) (CAS:101-14-4), the initial targeted assessment documents for 3 substances, diethylbiphenyl (CAS:28575-17-9), 3,3-bis(p-dimethylaminophenyl)-6-dimethylaminophthalide (CAS:1552-42-7), and 4-amino-1- naphthalenesulfonic acid, sodium salt (CAS:130-13-2) prepared by the Japanese Government, and all of them were agreed. As other topics, discussions were made on the weight of evidence method, and pilot exercise on classifications for chemicals. This paper reports the summary of the 5th Cooperative Chemicals Assessment Meeting.
Keywords: OECD, Cooperative Chemicals Assessment Meeting, Hazard Assessment
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はじめに
経済協力開発機構(OECD: Organisation for Economic Co-operation and Development)
では、市場にある全ての化学物質に対する環境影響および人健康影響に対する初期有害性情報 を収集・評価する「化学物質共同評価プログラム(CoCAP:Cooperative Chemicals Assessment
Programme)」を 2011 年より行っている。年 2 回の化学物質共同評価会議(CoCAM:
Cooperative Chemicals Assessment Meeting)が行われており、第5回CoCAMが2013年 10月に開催された。本プログラムでは、化学物質の有害性の初期評価に必要なスクリーニング 情報データセット(SIDS: Screening Information Data Set)をすべて満たしているSIDS評 価と、SIDS 項目を満たしていないが、国や地域の評価書などを基に作成したり、有害性評価 に最も関連の強い一つもしくは複数のエンドポイントに焦点を絞って評価する選択的評価
(TA:Targeted Assessment)のどちらかの区分により、化学物質の有害性を評価している。
日本は化審法の評価を基に、人健康影響、物理化学的性状および曝露情報の一部に限定して選 択的初期評価文書をとりまとめ提出している。OECD加盟国または企業が作成した初期評価文 書の原案は、スポンサー(スポンサー国、またはスポンサー国が定まらない場合には BIAC(Business and Industry Advisory Committee、経済産業諮問委員会))を通じて提出され 審議を受けている。審議のためには、初期評価プロファイル(SIAP: SIDS Initial Assessment Profile)、初期評価レポート(SIAR: SIDS Initial Assessment Report)および網羅的資料集
(Dossier)の 3 文書の一式または、選択的初期評価プロファイル(ITAP: Initial Targeted Assessment Profile)、選択的初期評価レポート(ITAR: Initial Targeted Assessment Report)
および Dossier の 3 文書の一式の提出が必要である。Dossier は IUCLID(International Uniform Chemical Information Database)というデータベースのソフトウェアを用いて作成 されているが、出力方法をエクスポートファイルにすることによって、生データのやり取りが 可能となる。したがって、最終的にはエクスポートファイルの提出も必要となっている。合意 された初期評価文書は、信頼性の高い国際文書として認識されており、各国の規制などを定め る際の資料としても用いられている。
第5回CoCAMは2013年10月15-17日に米国のワシントンDCで開催され、OECD加盟 国および産業界からの参加者に加え、非加盟国のロシアからの計 45 名が参加した。日本から は政府専門家の3名が出席した。本稿では第5回CoCAMでの討議内容として、2013年4月 に実施された第4回CoCAM以降の進捗状況、初期評価文書の審議結果および本プログラムの 全般的な懸案事項に関する討議内容について報告する。本稿が、化学物質評価についての国際 的な動向を知る一助となれば幸いである。なお、本稿は第5回CoCAMの会議報告書(OECD 2013)を参照して作成した。
1.第4回CoCAM以降の進捗状況
(1)初期評価文書の公開状況
CoCAMで合意された初期評価文書(SIAP/ITAP)は、ハザード評価タスクフォース(以下、タ
スクフォース)および「OECD化学品委員会および化学品・農薬・バイオテクノロジー作業部 会合同会合」に提出して承認を得る。承認が得られたSIAP/ITAPについては、OECDが既存 化学物質データベース(OECD 2014)を通じて公開している。一方、文書作成を行った国または
企業はCoCAMでの審議をもとにその他の最終版の初期評価文書(SIAR/ITAR、Dossierおよ
びエクスポートファイル)を作成し、CoCAM後3ヶ月を目途にOECD事務局に提出する。も し最終版の初期評価文書の提出が6ヶ月以上滞っている場合、スポンサーは状況説明と提出予 定期日を示す必要がある。
SIAP/ITAP の公開後、最終文書が整い次第SIAR/ITAR、Dossierおよびエクスポートファ
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イルについても、OECDの既存化学物質データベースより入手が可能となる。また、欧州連合
(EU:European Union)の初期評価文書を基にして評価を行った物質については、EUのウェ
ブサイトに公開されている(EC 2014)。第4回CoCAMで合意された初期評価文書は、titanium dioxide (CAS: 13463-67-7)および「物質カテゴリー:Monomeric Chlorosilanes」に対する初 期評価文書以外について公開の許可が得られた。Titanium dioxideについては、産業界から新 たな情報が提出されたため、どのように取り扱うべきか検討中である。本件については、方針 が決まり次第、OECD の電子掲示板であるクリアスペース上で審議される予定である。また、
「物質カテゴリー:Monomeric Chlorosilanes」については、スポンサー国からの要望により 文書が修正されることになった(詳細は後述)。第4回CoCAM開催時にEUおよび OECD のウェブサイトに公開されている公開物質数は、本プログラムの前身となる「OECD高生産量 化学物質(HPV:High Production Volume Chemicals)点検プログラム」での評価物質を含 め、計959であった。なお、HPV点検プログラムの歴史およびCoCAPへと移行した経緯につ いては、松本他が報告しているので参照されたい(松本他, 2012)。
2.第5回CoCAMでの審議状況
(1)初期評価文書・選択的初期評価文書の審議結果
初期評価文書および選択的初期評価文書の審議は、スポンサーが評価文書の原案をクリアス ペースに掲載し、クリアスペース上で行う事前討議(コメントの提出、コメントへの返答、コ メントに応じたSIAP/ITAPの修正)およびCoCAMでの対面討議で行われる。第5回CoCAM での初期評価文書の審議は、クリアスペースでの事前討議を基に修正した SIAP/ITAP を用い て行われた。日本は政府が作成した4,4’-methylenebis(2-chloroaniline) (CAS:101-14-4)の初期
評 価 文 書 、 ま た diethylbiphenyl (CAS:28575-17-9) 、
3,3-bis(p-dimethylaminophenyl)-6-dimethylaminophthalide (CAS:1552-42-7)、4-amino-1- naphthalenesulfonic acid, sodium salt (CAS:130-13-2)の計3物質の選択的初期評価文書を提 出し合意された。この会議では計24物質(初期評価:21物質;選択的初期評価:3物質)に ついて審議され、物質カテゴリー:C6 Aliphatic Hydrocarbon Solvents(計9物質)を除く 15物質に合意が得られた。付表には、今回の会議で審議された物質を示した。次の物質につい ては、通常の審議と異なる点があった。
1) Dibromomethane (CAS: 74-95-3)
イスラエルが担当したdibromomethaneの初期評価文書は、第4回CoCAMで審議するた めに提出されたが、コメントが多く寄せられ、修正に時間が必要と判断されたため、前回の
CoCAM では審議されなかった。今回の会議では、コメントに従って修正された文書が審議さ
れ、合意に至った。
2) 物質カテゴリー:C6 Aliphatic Hydrocarbon Solvents (CAS: 110-54-3、107-83-5、 64741-84-0、64742-89-8、68410-97-9、68476-50-6、92062-15-2、64742-49-0、92112-69-1)
BIACが担当した本物質カテゴリーについては、カテゴリー化の根拠が適切であるかという 点と、ヒト健康影響について審議されたが、合意されず次回のCoCAMで審議されることにな った。修正した文書は次回のCoCAMに先立って、クリアスペース上に公開される予定である。
また、ヒト健康影響以外の内容(物理化学的特性及び環境影響)については、次回の CoCAM で審議されることになった。なお、読み易さの観点からSIAPのセクションに番号を振ること になった。
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3)物質カテゴリー:Highly Soluble Molybdenum Salts (CAS: 10102-40-6 (7631-95-0)、
27546-07-2、12054-85-2 (12027-67-7))
BIACが担当した本物質カテゴリーについては、もともと「Molybdenum & Molybdate Salts」
というカテゴリー名で提出された。しかし、第 5 回 CoCAM において、名称を「Highly Soluble Molybdenum Salts」に変更することで、合意が得られた。
(2)化学物質共同評価プログラムにおける全般的な懸案事項の討議結果 1)皮膚感作性評価手法
第3回CoCAM(2012年10月)で日本が提出し合意された4-isopropylaniline(CAS: 99-88-7)
は、皮膚感作性の情報がない。そして、類似物質情報などを証拠の重みとして皮膚感作性を評 価する手法を、デンマークおよびオランダが OECD 事務局と共に提示していた(松本他、
2014a)。デンマークおよびオランダの意向は、皮膚感作性の評価をITARおよびITAPに取
込み、評価が再合意されることであった。しかし、前回の会議では、この皮膚感作性評価手法 を用いたITARとITAPの提案は評価手法検討のための題材として扱われ、修正すべき点が整 理されるにとどまった。このため、今回の会議に先立って、クリアスペース上で書面討議され、
会議では「証拠の重みの評価文書」の最終化に合意が得られた。
今回の証拠の重みを用いた評価手法について、テンプレートを作成するという考えについて も討議されたが、デンマークは今回の様式が他の物質の評価にそのまま利用できないかもしれ ないので、一つの事例として利用される方がよいと答えた。OECD事務局は、証拠の重み評価 はカテゴリー評価の概念に基づいているため、本プログラムのマニュアルに収載されている「化 学物質のグループ化に関するガイドライン」に加えることも可能であると述べた。しかし、カ ナダは、ガイドラインの大きな改定が終わったばかりなので、参照を入れることであれば可能 であるとコメントした。オランダは、カナダの意見に合意し、「証拠の重みの評価文書」はガ イドラインの引用文書として扱われることになった。しかし、文書作成者の一人が、査読付き 雑誌に評価手法を投稿するため、公開は、論文が掲載された後とする調整が必要である。
次に、今回合意された文書を第3回CoCAMで合意された初期評価文書にどのように利用す るかという点が討議された。カナダは、主要な情報は初期評価文書に記載すべきであると述べ た。オランダは、まず「証拠の重みの評価文書」を公開し、その後に、ITAR及びITAP を改 定すべきであると発言した。スポンサー国である日本は、「証拠の重みの評価」を採用するこ とに合意した。また、デンマーク及びオランダの文書作成者らが、選択的評価文書改定を手伝 うことが合意された。
2) 化学物質分類の試験的な作業
OECD事務局が、化学物質の分類に対する調和について本プログラムで実施する試験的な試 みについて紹介した。本作業は、化学品の国際的な分類リストの作成を試みている国連小委員 会に貢献するため、GHS分類を行って提出することを目的として始まったが、前回の会議で、
合意された化学物質の分類をCoCAMから国連小委員会に提出することには賛成できないとい う意見が複数の国からあった。しかし、GHS分類に国際的に調和が得られるかどうかという点 を確認するためにも、作業自体は継続することとなった。これらの経緯などについては、松本 他(2014a,b)が報告している。今回の会議に先立って、有志国(デンマーク、フランス、日 本、オランダ、ロシア、スイス)が本プログラムで合意された初期評価文書(SIAP、SIARお よびDossier)を基に以下の3物質のGHS(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals:化学品の分類および表示に関する世界調和システム)分類を作成 した。なお、ロシアはOECD非加盟国であるが、本作業の内容に興味があり討議に参加した。
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・2-Vinylpyridine (CAS: 100-69-6)
・2,4-Dimethylaniline (CAS: 95-68-1)
・Nonane (CAS: 111-84-2)
この試験的な分類作業の最も難しかった部分について、有志国は以下の通り報告した。
①スイス(会議には参加していなかった為、書面での報告)
複雑なエンドポイントの場合、SIAR および SIAP の記述だけで分類することは難しく、
Dossierを確認しなければならないことがあった。特に、2-vinylpyridineの生殖発生毒性につ いては、発生毒性か母体毒性由来のものかが明瞭に記載されていなかったため、専門家の判断 が必要とされた。
②オランダ
スイスと同じようなコメントであったが、人健康影響のGHS のカテゴリー2とカテゴリー 3の違いは解釈が難しく、専門家による判断が必要であり単純でないという点を付け加えた。
2-vinylpyridine の眼の刺激性については、皮膚の刺激性の情報を用いて分類を行った。また、
nonaneの皮膚刺激性について、Dossierでは3匹の動物の平均値しか記載されておらず、分類
を行うには情報が不十分であり、Dossier のテンプレートを変える必要があるかもしれない点 に言及した。2-vinylpyridineの生態毒性の慢性影響については、情報がなかったため、その化 学物質の周辺情報を用いて分類を行った。生態毒性の慢性影響評価についての問題をプレゼン テーションで示した。
③ロシア
ロシアは、2-vinylpyridineの眼刺激性、遺伝毒性、特定標的臓器毒性(反復投与)について、
他の国と異なる分類を行った点について、プレゼンテーションを行った。特に、遺伝毒性と特 定標的臓器毒性については、他の国より厳しい分類を行った。眼の刺激性については、他の国 が行っているように皮膚刺激性の情報を用いたが、眼の刺激性についての情報があるのでそち らを優先的に利用するほうが望ましいとした。
④日本
2-Vinylpyridineの皮膚刺激性のDossierの記載は、分類を行うためには情報が不足しており、
したがって眼の刺激性への利用も行わなかった。また、眼の刺激性の情報も不足していたため、
分類は行えないと結論した。また、生殖毒性については、2 次的な毒性であるとし分類はでき ない(分類のためには更なる情報が必要)と判断した。
⑤フランス(人健康影響担当者が参加できなかったため環境影響のみの報告)
2-Vinylpyridinの環境影響については、オランダと同様に周辺情報を代用して分類を行った。
また、2,4-dimethylaniline のいくつかのエンドポイントについては、リードアクロス(類縁物 質からの補完)を行った。
⑥デンマーク
2-Vinylpyridin の急性経口毒性、皮膚刺激性、眼刺激性については、SIARを用いて分類を
行ったが、生殖発生試験については母体毒性と発達毒性の判断といった他の国と同様の問題が あった。また、皮膚感作性についてはサブカテゴリーを定めるのが難しかった。
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討議の結果、上記6カ国で意見の一致に至らなかったエンドポイントは、次の通りであった。
2-Vinylpyridin
①急性毒性:経皮
1カ国を除くすべての国が、モルモットのLD50の値を基にカテゴリー1か2に分類した。
違いがあった理由は、GHSのカットオフ値について表中の記載が判りにくく、混乱を招いたた めと考えられた。しかし、6カ国中5カ国は、カテゴリー2とすることで合意した。なお、一 カ国は、ガイドライン試験でなかったために、分類は出来ないと判断した。
②急性毒性:経口
すべての国がラットのLD50の値を基に分類を行ったが、LD50値には幅があり、2カ国は カテゴリー2に分類し、4カ国はカテゴリー3に分類した。2カ国は、真のLD50値が幅の下 限付近にあると考え、保守的な分類を行った。一方、4 カ国は反対の意見を持っていたため、
今回の会議では分類に合意が得られなかった。
③刺激性:眼
2カ国は、皮膚刺激性の情報を用いてカテゴリー1に分類した。一方、1カ国は、眼の刺激性 試験からカテゴリー2A に分類した。残りの 3 カ国は、眼の刺激性試験の情報は不十分のため 分類できないとした。皮膚刺激性の情報を用いることについて、意見の一致は見られなかった が、眼の刺激性を分類不可能としていた1カ国が皮膚刺激性の情報を用いることが可能である ことに合意した。今回の会議では分類に合意は得られなかった。
④遺伝毒性
4カ国は、in vivoの情報がなかったため分類しなかったが、2カ国はin vitroの情報を基に カテゴリー2に分類した。これは、GHSのin vitro情報の用い方についての記載の解釈の違い によるものであった。本件についても今回の会議では、意見の一致は得られなかった。
⑤生殖毒性
生殖に対する影響が曖昧であったため、すべての国が分類が困難であると感じていた。3カ 国は難産を理由にカテゴリー2に分類したが、母体に特化した影響であり生殖毒性として分類 したくないという意見もあった。また、母体毒性は2次的な影響で分類が出来ないという意見 もあった。本件についても今回の会議では意見の一致は得られなかった。
⑥特定標的臓器毒性:反復投与毒性
4カ国は全身性の毒性影響がなかったことから分類しなかったが、2カ国は胃への影響を考 慮してカテゴリー2とした。特定標的臓器毒性とは何かという解釈の違いの問題なのかもしれ ないが後者の2カ国は、分類を変更するという決断をする前に国の関係者に相談する必要があ るとコメントした。
2,4-Dimethylaniline
水生生物に対する慢性毒性影響については、周辺情報(生分解性)を用いて分類したのか、
類縁物質の慢性影響を用いて分類したのかによって、分類が異なった。ほとんどの国はリード アクロス(類縁物質の慢性影響からの補完)によってカテゴリー1と分類したが、生分解性を 基に分類した国はカテゴリー2とした。しかし、より厳しい分類となるリードアクロスの方が 適切であるかもしれないとコメントした。
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前回の会議では、CoCAM がGHS 分類を公的に行う場としてふさわしくないという意見が あったが、デンマークとオランダは、CoCAMは、GHS分類の解釈の仕方や分類データの使用 方法に関わる問題を討議するのにふさわしい場であったとコメントした。米国は、OECDにお ける今回の試みを支持した。OECD 事務局は、上述の通り、GHS分類をする際に意見の一致 が見られない場合があることについて、報告書を作成することになった。報告書の内容に合意 が得られた後、国連小委員会に提出することで合意が得られた。
3)OECD CoCAMの今後の展開
本プログラムで審議されている初期評価文書の数は減少傾向にあり、現在の審議対象や会議 形態での継続に難色を示す参加者が多いことから、本プログラムとしての活動は近い将来に終 了することが決まっている。本件については、2014年2月の「OECD化学品委員会および化 学品・農薬・バイオテクノロジー作業部会合同会合」で OECD 事務局が報告を行うことにな っており、次回の CoCAM で決定事項が報告される。2014 年 4 月に予定されている第 6 回
CoCAMが最後の正式な会議となることが予測されることから、OECD事務局は、加盟各国及
びBIACに初期評価文書の提出予定をあらかじめ報告するよう要求した。米国は、CoCAMが 終わることに対する祝賀会のセッティングを要求し、会議参加者も賛成した。なお、今回の会 議後、2014年4月のCoCAM に間に合わせるように評価文書を作成することは、スケジュー ル的に難しいとする国があったため、第6回CoCAMは、2014年10月に開催されることに決 まった。
4)クリアスペースにおける審議状況
会議で合意が得られた初期評価文書に新しい情報を追加する場合や会議で審議する必要性の ない(問題の少ない)初期評価文書などは、対面会議ではなく書面会議としてクリアスペース 上で審議されている。最近の書面会議での審議状況を下記する。
① 日 本/ICCA が 第 21 回 SIAM(2005 年 10 月 ) に 提 出 し 合 意 が 得 ら れ た 2-propen-1-ol(CAS:107-18-6)については、急性吸入毒性試験について新たな情報が入手で きたため、初期評価文書に追加された。クリアスペース上で審議され初期評価文書に合意 が得られたので、今回の会議で合意された物質と共にタスクフォースに提出されることに なった。
② 米国/ICCA が担当した 2-aminoethanol は、クリアスペース上で審議され、オランダ、デ ンマーク、OECD事務局、カナダ、スイスがコメントを提出した。発生毒性の部分につい て、レビュー国で意見が分かれたため合意には至らなかった。今回の対面会議(第 5 回 CoCAM)では、発生毒性についてのみ審議され合意が得られた。
③ 米国/ICCAが第4回CoCAMに提出し合意された物質カテゴリー:Monochlorosilanesに ついては、タスクフォースで合意が得られ、「OECD化学品委員会および化学品・農薬・
バイオテクノロジー作業部会合同会合」に送られたが、スポンサー国が SIAP の記載に誤 りを見つけ修正依頼を提出したため、クリアスペース上で再審議されることになった。修 正したSIAPに合意が得られた後、再びタスクフォースに提出される。
OECD事務局は、今後、米国/ICCAから1物質の初期評価文書が書面審議用に提出される予 定があることを述べた。
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5)化学物質のグループ化についてのガイドライン
化学物質のグループ化に関する本プログラムのマニュアルに記載されているガイダンスにつ いて、修正作業を行っている。2013 年 8 月までに修正案に対するコメントを募っていたが、
ドイツ、デンマーク、BIAC、ECHAが字句の修正に対するコメントを提出した。OECD事務 局はコメントに対する修正作業を行った後、ガイドラインの草案を作成したグループに送るこ とになっている。もし、合意が得られれば、タスクフォース及び「OECD化学品委員会および 化学品・農薬・バイオテクノロジー作業部会合同会合」に送られ、公開の手続きを行う。
おわりに
第5回OECD化学物質共同評価会議では、計24物質(初期評価:21物質;選択的初期評価:
3物質)について審議され、物質カテゴリー:C6 Aliphatic Hydrocarbon Solvents(計9物質)
を除く 15 物質に合意が得られた。日本は、政府作成の 4,4’-methylenebis(2-chloroaniline) (CAS:101-14-4) の 初 期 評 価 文 書 、 ま た diethylbiphenyl (CAS:28575-17-9) 、 3,3-bis(p-dimethylaminophenyl)-6-dimethylaminophthalide (CAS:1552-42-7)、4-amino-1- naphthalenesulfonic acid, sodium salt (CAS:130-13-2)の計3物質の選択的初期評価文書を提 出し合意された。
一方、GHS分類の試行結果は、GHS分類の解釈を調和することが困難であることを明らかに したが、現実的な調和を達成させるためには、本件に特化した国際的な議論の場が必要であろ う。
REACHが開始されて以来、欧州諸国からの本プログラムへの初期評価文書提出が減少してお
り、今回の会議に初期評価文書を提出したスポンサーは、イスラエル、日本、米国およびBIAC のみであった。今後も欧州諸国の積極的な評価文書の提出が期待できず、次回の会議が最後の
CoCAM となることが決まった。しかし、新たな作業グループ・会議の設置なども検討されて
おり、今後の展開に注目したいと考える。
参照資料:
1. EC(2014)European Commission, Existing chemicals.
http://ecb.jrc.ec.europa.eu/existing-chemicals/
2. OECD (2013) Draft Summary Record Fifth Cooperative Chemicals Assessment Meeting 15-17 October 2013, American Chemistry Council Offices, Washington, D.C.
ENV/JM/HA/COCAM/M(2013)2
3. OECD (2014) OECD Existing Chemicals Database.
http://webnet.oecd.org/hpv/ui/Default.aspx
4. 松本真理子, 高橋美加, 平田睦子, 小野敦, 広瀬明彦 (2012) OECD高生産量化学物質点検 プログラムからOECD化学物質共同評価プログラムへ. 化学生物総合管理8(2), 173-233 5. 松本真理子, 宮地繁樹, 菅谷芳雄, 長谷川隆一, 広瀬明彦 (2013)OECD 化学物質共同
評価プログラム:第2回化学物質共同評価会議概要、化学生物総合管理 9(1), 100-111 6. 松本真理子, 宮地繁樹, 菅谷芳雄, 長谷川隆一, 小野敦, 広瀬明彦 (2014a)OECD化学物
質共同評価プログラム:第 3 回化学物質共同評価会議概要、化学生物総合管理 9(2), 222-231
7. 松本真理子, 大久保貴之, 宮地繁樹, 菅谷芳雄, 広瀬明彦 (2014b)OECD 化学物質共同 評価プログラム:第4回化学物質共同評価会議概要、化学生物総合管理 9(2), 232-240
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付表 第5回CoCAMで審議された化学物質
CAS番号 化学物質名・物質カテゴリー名 スポンサー 区分
74-95-3 Dibromomethane IL SIDS
109-83-1 2-methylaminoethanol US/ICCA SIDS
C6 Aliphatic Hydrocarbon Solvents *
BIAC SIDS
110-54-3 n-Hexane
107-83-5 2-Methylpentane (Isohexane)
64741-84-0 Naphtha, (petroleum), solvent-refined, light 64742-89-8 Solvent naphtha, (petroleum), light aliphatic
68410-97-9 Distillates, (petroleum), light distillate hydrotreating process, low boiling
68476-50-6 Hydrcarbons, C5-C6 rich
92062-15-2 Solvent naphtha, (petroleum), hydrotreated light naphthenic 64742-49-0 Naphtha, (petroleum), hydrotreated, light
92112-69-1 Hexane, branched and linear
101-14-4 4,4’-methylenebis(2- chloroaniline) JP SIDS
Highly Soluble Molybdenum Salts **
BIAC SIDS
10102-40-6 (7631-95-0)
Sodium molybdate: for sodium molybdate dihydrate for sodium molybdate (anhydrous)
27546-07-2 Ammonium dimolybdate 12054-85-2
(12027-67-7)
Ammonium heptamolybdate: for ammonium heptamolybdate
tetrahydrate for ammonium heptamolybdate (anhydrous)
2627-95-4 1,1,3,3-tetramethyl-1,3-divinyldisiloxane US/ICCA SIDS
141-43-5 2-aminoethanol US/ICCA SIDS
80-10-4 Diphenyldichlorosilane (DDS) US/ICCA SIDS
Phenylchlorosilanes
US/ICCA SIDS 98-13-5 Trichlorophenylsilane (TClPS)
149-74-6 Dichloromethylphenylsilane (DClMPS)
110-91-8 Morpholine US/ICCA SIDS
28575-17-9 diethylbiphenyl JP TA
1552-42-7 3,3-Bis(p- dimethylaminophenyl)-6-
dimethylaminophthalide JP TA
130-13-2 4-Amino-1- naphthalenesulfonic acid, sodium salt JP TA IL:イスラエル、JP:日本、US:米国、BIAC:経済産業諮問委員会、ICCA:国際化学工業協 会協議会による原案提出、SIDS:有害性の初期評価に必要なスクリーニング情報データセット を満たしている評価、TA:特定のエンドポイントのみによる評価
* 物質カテゴリー:C6 Aliphatic Hydrocarbon Solventsは、今回の会議で合意されなかったため次回 の会議で再審議される。
**物質カテゴリー名は、「Molybdenum & Molybdate Salts」として提出されたが、会議で審議した結果、
「Highly Soluble Molybdenum Salts」という名称に変更された。