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腸管出血性大腸菌感染症を予防しよう

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Academic year: 2021

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小児保健研究

感染症・予防接種レター(第48号)

1 日本小児保健協会予防接種・感染症委員会では「感染症・予防接種」に関するレターを毎号の小児保 1健研究に掲載し,わかりやすい情報を会員にお伝えいたしたいと存じます。ご参考になれば幸いです。

       日本小児保健-協会予防接種・感染症委員会   委員長加藤 達央 副委員長岡田 賢司   庵原 俊昭   平野江 進   古賀 伸子      住友眞佐美     多屋 馨子   馬場 宏一   三田村敬子

腸管出血性大腸菌感染症を予防しよう

   ・一予防の基本は正しい知識と手洗い一

工。はじめに

 大腸菌はすべての哺乳類の腸管に生息してい る。そのほとんどは宿主にとって無害であるが 一部には下痢などの消化器症状を起こすものが ありこれを病原性大腸菌と呼ぶ。腸管出血性大 腸菌はべロ毒素を産生し,出血を伴う腸炎や溶 血性尿毒症症候群(:HUS)をおこす。菌の成 分によりいくつかに分類され「腸管出血性大腸 菌O157」「026」「0111」など代表的である。

腸管出血性大腸菌は牛などの家畜の糞便中に 時々見つかるが,家畜では症状を出さないこと が多く,外から見ただけでは菌を保有する家畜 かどうかの判別は困難である。

皿.動物からの感染が疑われた1例

 患者は1歳女児。9月28日から水様性下痢,

発熱で発症。9月29日近医受診,検便実施し抗 生剤の投与を受けた。10月3日腸管出血性大腸 菌0157▽TIVT2が検出され,腸管出血性大腸 菌感染症と診断された。同日主治医から保健所

に感染症法に基づく届出が出された。

 10月3日,届出を受理した保健所は家族に聞 き取り調査を実施した。発症日からさかのぼっ て2週間の喫食調査の結果,焼肉など外食はし ていない。行動調査で9月24日に牧場に行き搾 乳体験に参加したという。8歳の兄は実際に搾 乳を体験この女児は牛に触れている。搾乳を 体験した兄は水道水で手洗いを行ったが,女児 はおしぼりで手をふいただけで,持参のお弁当 を食べたという。家族3人の検便を行ったとこ

ろ,無症状の8歳兄からも0157VTIVT2が検

出された。

 保健所は10月3日牧場に立ち入り調査を行 い,9月24日の牛を含む搾乳用牛5頭の便検:査 を行った。乳牛41頭の健康状態には異常は見ら れなかった。牧場の管轄する手洗い場には液体 せっけんが常備されていた。搾乳体験の前後に 牛の乳房を消毒し搾乳体験的には職員が体験者 に手洗いをするよう声かけをしていた。牧場で は牛に触ることができたが周囲の施設の手洗い 場にはせっけんは設置されていなかった。9月 24日の搾乳体験には約250名が参加したが,10 月3日現在下痢などを発症したとの情報は他に なかった。

 10月6日,5頭のうち2頭の便から0157 VTIVT2が検出された。9月24日に搾乳体験に 出ていた牛からは菌は検出されなかった。同日 から牧場は搾乳体験を一時中止した。

 牛から検出した0157のパルスフィールドゲ ル電気泳動(PFGE)によるDNAパターンが 患者・感染者のDNAパターンと一致したため,

10月13日,保健:所は「搾乳体験で感染した腸管 出血性大腸菌感染症(0157)患者発生について」

記者発表を行った。発表後保健所に相談窓口を 設置したが,その後の患者発生は見られなかっ

た。

 女児に合併症はなく10月11日治療終了。兄と 女児の除菌の確認も終了した。

 牧場では,保健所と家畜衛生研究所の指導を 受け,衛生管理面の改善を行い搾乳体験を再開

した。

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第68巻 第3号,2009

 来園者に対しては「動物に触れた後にはせっ けんで十分に手洗いをしましよう」とポスター を貼るなど注意を喚起すべての手洗い場に せっけんを設置するなど手洗い施設の改善が行

われた。

 子どもたちがあたたかな動物と触れ合うこと で得るものは大きい。周囲の大人が牛などの家 畜の腸内には腸管出血性大腸菌がいることが あることを当たり前のこととして理解するこ と,動物を不潔なものとして遠ざけることなく,

触った後の手洗いや食前の手洗いなどを十分に 行うことを子どもの時代から習慣づけていくこ

とが重要である。

皿,患者発生動向

 腸管出血性大腸菌感染症患者および無症状病 原体保有者は平成19年には全国で4,606例が報 告されており,平成11年以降最多となった。例 年季節変動が大きく,夏季に流行のピークが見 られる。年齢別に見ると0~4歳が最も多く 23%,5~9歳がこれに次いで14%で,15歳未 満がほぼ半数を占める。有症状者の割合は,15 歳未満では77%と高く,70歳以上でも71%と高 いのに比べ,30歳40歳代は41%以下であった。

有症状者のうちHUSを起こす割合は15歳未満 で約5%,15歳以上では0.7%であるのに比べ 優位に高い。腸管出血性大腸菌感染症は小児に おける重要な感染症である。

1V.感染経路

感染経路や感染源の推定・確定は詳細な聞き

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取り調査と,便・食材の細菌検査等によって行 うが,本症の潜伏期間が2~14日と比較的長い こともありはっきりしないことが多い。平成19 年報告された例の感染経路は経口感染45%,接 触感染13%,動物からの感染0.4%となってい る。経口感染とされたうち生肉を食べていた例 が12.5%,その6割が生レバー・レバ刺しを食 べていた。

 平成19年に地方衛生研究所から報告された腸 管出血性大腸菌感染症による集団発生は45例あ り,うち11件が保育所・幼稚園での発生であっ た。腸管出血性大腸菌は赤痢菌と同様に微量の 菌により感染が成立するため人一人感染で感染 が拡大しやすい。ひとりでは手をきれいに洗え ない乳幼児が集団生活を営む保育施設において は特に感染症発生の早期探知と二次感染予防を 含めた拡大防止策の徹底が重要である。

V.おわりに

 気温の高くなる6月から10月に多発する腸管 出血性大腸菌感染症を予防するために

 1.動物の腸内には病原性大腸菌が存在する   ことを前提に,新鮮であっても肉はよく加   熱して食べること。

 2.牛や羊などの反すう動物に触ったら必ず   せっけんと流水で十分に手洗いをするこ

  と。

 3.排泄の後や食事の前にはせっけんと流水   で手を洗うこと。

乳幼児について,特にこの3点をしっかり守っ ていくことをお勧めしたい。

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