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九州地方都市における持続性の比較評価に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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九州地方都市における持続性の比較評価に関する研究

堀田 眞之介 1. はじめに 1-1. 研究の背景と目的  先進国の大量生産、大量消費、大量廃棄型社会の社 会構造による資源の枯渇や環境の悪化が懸念され始 め、1987 年の「環境と開発に関する世界委員会」に おいてサステナブル・ディベロップメントの概念が提 唱されて以来、国際機関や日本の行政機関などがその 定義や評価についての研究を行っている。また、1992 年にブラジルのリオ・デジャネイロで開催された国連 環境開発会議では「アジェンダ 21」が採択され、そ の中では持続可能な社会を作るための地域単位におけ る行動計画の必要性が説かれ、地域ごとの取り組みの 重要性が高まった。その後日本でも多くの都市持続性 評価手法が研究されている。  具体的な都市の評価方法としてはトリプルボトムラ インと呼ばれる環境・社会・経済の分野から評価指標 を選定したものが多い。さらに、各指標を相対的に比 較したり、基準を設け得点化したりすることで評価を 行っている。これらの方法は定量的な評価を可能にし ているが、各都市の特徴までは考慮されていない。各 指標に数値的な重みづけを行う方法も存在するが、ど の都市も共通の重みづけを採用している。しかしなが ら、持続性に対する考え方は各地域によって異なるた め評価結果と各地域の考え方には相違が見られる。  上記のような背景を踏まえ、本研究では九州地方都 市における持続性評価の比較分析により抽出し、各県 や各都市の持続性向上の課題を明らかにする。そして、 各自治体の持続性に対する考え方と評価結果の比較か ら 2 つの関係性を明らかにすることを目的とする。 1-2. 既往研究  持続性に関する研究は制度運用や住宅、景観保全、 歴史的市街地など幅広い分野の研究があるが、都市を 多角的に評価しているものは少ない。また、環境・経 済・社会の分野で評価しているものも評価軸に偏りが ある。例えば戸川・加藤らの研究1) では 3 つの分野 の中から都市空間構造に関連する指標のみを選択して いる。また、総合環境性能評価ツール「Casbee- 都市」 2) では 3 分野からバランスよく指標を選択しているが、 共通の重み付けを採用しており、各都市の持続性に対 する考え方の違いは考慮されていない。 図 1 評価対象都市と評価結果 107 106 105 104 103 102 101 100 99 98 97 96 95 94 93 92 91 90 89 88 87 86 85 84 83 82 81 80 79 78 77 76 75 74 73 7172 70 69 68 67 66 65 64 63 62 61 60 59 58 57 56 55 54 53 52 51 50 49 48 47 46 45 44 43 42 41 40 39 38 37 36 35 34 33 3230 29 31 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 181716 15 14 13 12 11 10 9 8 7 65 4 3 2 1 評価得点 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0

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8-2 1-3. 研究の方法と対象都市  対象地域は沖縄を除く九州地方の 107 市とする。全 市の評価結果を図 1 に示す。研究の流れとしては、は じめに各都市の持続性評価を行い都市の特徴を比較分 析により抽出し、持続性向上の課題を明らかにする。 次に各自治体を対象に AHP 法を用いた WEB アンケート 調査を実施し、各評価指標の重要度の算出を行う。最 後に重要度と評価結果の対応関係から今後の都市・地 域計画の課題を考察する。 2. 都市持続可能性の定義と評価方法  都市持続可能性の定義には諸説あるが、本研究では 既往研究3) を参考に以下の3点に絞って評価方法を 選択した。①評価指標が環境・社会・経済分野の中か ら偏りなく選定されている。②指標に公的な統計資料 を用いている。③様々な都市スケールに適応可能であ る指標を用いている。さらに、各都市の持続性に対す る考え方の違いとの比較 を行うために評価方法は 指標群を統合する方法を採用する。これらの条件から 評価方法は坂本の「都市持続性評価システム」4) を用 いることとした。評価に使用する指標と使用した資料 を表 1 に示す。この評価方法は表 1 の指標を全国の統 計資料から設定した基準により 5 段階で得点化し、そ れらを評価者の設定する指標に対する重要度と表 2 の 様な階層関係に従い、掛け合わせ統合することで評価 結果を算出するものである。評価得点は 5 に近い程、 持続性が高いと判断される。重要度は AHP 法により算 出され、本研究ではその値が各自治体の持続性に対す る考え方を表す。また、以下に述べられている評価指 標と評価基準はこの方法に準拠している。 3. 評価結果 3-1. 九州地方全体の結果と各項目の特徴  評価対象都市全体の平均を表 2 に示す。総合評価得 点の平均は 3.15 と平均に近い値を取っているが、分 野別にみると環境分野は 3.57 と少し高く、社会分野 は 2.72 と少し低い。また、表 3 において各評価指標 の低評価の項目を見ると、社会分野の人口自然増減率 の 1.29、人口社会増減率の 1.75、地盤形状の 1.15、 障碍者サービス充実度の 1.31 であった。各指標の標 準偏差も低いことから、これらの項目は九州地方全体 で低い評価であることが分かった。反対に高い評価 を示した項目は環境分野では大気汚染物質量の 4.96、 自然被覆率の 4.60、社会分野では防犯が 4.46、住宅 整備水準が 4.13 であり高い値となった。経済分野で 表 3 九州地方都市の低評価・高評価指標 表 2 九州地方都市の平均 表 4 評価に影響する指標群 index APL WC WQ NC SQ DE RR NLC NPC SPC SC RE OS EQ PS HS NS MS PTS RD LF FS LI UER JOR IGR ORI 表 1 各評価指標と使用した統計データ 都市全体の 標準偏差 都市全体の標準偏差 都市全体の標準偏差 環境 全体平均 社会 経済 総合評価

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8-3 は財政安定度が 4.21 という高い値を取った。特に防 犯と住宅整備水準については標準偏差が大きく、各都 市の評価差が大きいことが分かった。 3-2. 評価への影響が大きい指標  評価に影響を与えている指標を見るために評価の低 い都市を各分野 11 都市抽出し、平均値を算出した。 九州地方全体において低い指標を除くと表 4 に示す指 標が抽出された。これらの指標は標準偏差も大きいこ とから評価得点のばらつき幅が大きいと判断できるた め、評価得点を下げている指標であることが分かる。 3-3. 各県の分野別における特徴  指標ごとに各県の平均を比較し、著しく低い評価で ある指標を課題指標として表 5 に示す。経済分野の指 標は各県における差が小さく、課題となる指標は抽出 されなかったが、全体平均の低い社会分野の指標が多 く抽出された。特に歩行者空間の安全性と情報システ ムの指標が共通しており、それぞれ福岡県、佐賀県に おいては交通安全に関する対策が必要であり、熊本県、 大分県、宮崎県ではインターネット普及率向上におけ る対策を取るべきであることが分かる。また、防犯指 標に関しては九州地方全体では高い評価であるが、福 岡県においてのみ課題として抽出されている。それは 評価得点が 1 又は 2 である都市は全て福岡県に集中し ているためであり、ことから福岡県では防犯指標の項 目の改善が重要であると考えられる。 3-3. 各都市の分野別における特徴  4 章では評価得点と重要度の対応関係を考察するた めに本節では各分野において低評価であった熊本市と 雲仙市の評価得点に着目する。 3-3-1. 熊本市・環境分野  熊本市の環境分野の得点は 2.72 であり、県内で最 も低く、対象都市全体の中でも 98 番目に位置する ( 表 6)。指標別に見ると自然的土地保全率が 1、土壌の品 質が 2、資源再利用効率が 2 と低評価である。他の指 標に関しては著しく低い評価項目は見られなかった。 しかし、自然被覆率が高い都市でもあるため土地保全 率が低評価である状態は重要な問題であると言える。 3-3-2. 雲仙市・社会分野  雲仙市の社会分野得点は 2.13 であり、県内で最も 低い評価である ( 表 6)。対象都市内でも 103 番目に 位置している。各評価指標項目を見ると 7 項目が 1 の 評価であり、地方全体で低い指標 4 項目を除くと OS 整備水準と歩行者空間の安全性、権利の多様性の項目 が該当している。これらの持続性指標の得点と自治体 の持続性に対する考え方の対応関係を次章で明らかに する。 4. 重要度を含めた評価結果の分析  各指標の重要度は AHP 法を使用したアンケート調査 を実施し算出した。熊本市・雲仙市職員の方に各項目 の指標を比較して頂き、重要である程度に合わせて図 2 のような左右 3 段階の程度で回答して頂いた。比較 する項目は指標の階層関係上、表 1 の網かけの項目に 対して回答して頂いた。回答数は熊本市 25 名、雲仙 市 19 名であった。これらの平均値を各自治体の都市 持続性の重要度として扱い、各評価得点と比較してい く。各重要度は指標に対する比重として表され、合計 が 1.0 となる割合で示す。 4-1. 熊本市の評価得点と重要度の関係  評価得点と重要度の対応関係を図 3 に示す。分野別 に見ると環境分野の低い評価得点に対して重要度は高 い値であることが分かる。このように評価得点が低く 重要度が高い場合は自治体の持続性に対する考え方が 合致していると捉られ、評価得点が低く、重要度も低 い場合は持続性に対する考え方が相違していると捉え られる。各指標に着目すると中項目の自然環境と評価 指標の資源再利用効率の項目については合致してお 表 5 各県の分野別の課題指標 合計 重み 重み 同じ値になるまで 繰り返す 図 2 AHP によるアンケートと重要度の算出方法 表 6 県内都市分野別評価結果 ( 熊本・長崎 ) 情報システム 得点平均 環境 社会 経済 防犯 歩行者空間の安全性 歩行者空間の安全性 情報システム 情報システム 権利の多様性 情報システム 公共交通利便性 権利の多様性 水質 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 環境分野 社会分野 水質 廃棄物の排出量 水消費量 自然的土地保全率 社会 環境 経済 社会 環境 経済

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8-4 り、土壌の品質の項目においては相違が見られた。社 会分野では相違している項目が中項目の人口動態、小 項目の住宅、OS、都市防災、評価指標の障碍者サービ ス充実度であり、合致している項目は中項目の都市基 盤、評価指標の人口自然増加率と情報システムであっ た。特に住宅、都市防災、障碍者サービスについては 評価得点が 1 であるため、重要度の比重の見直しが必 要である。経済分野については特に低い評価得点であ る項目が少なく、評価指標の財政安定度が合致してい る項目として挙げられる。項目数でみると社会分野の 方が相違している項目が多いという結果であった。 4-2. 雲仙市の評価得点と重要度の関係  分野別に見るとと社会分野の項目の低い評価得点に 対して重要度も低い値であることが分かる。各指標に ついて熊本市同様に合致と相違の項目を抽出すると、 中項目の都市基盤と権利の項目では得点と重要度が低 く相違していることが分かった。また、小項目の OS 整備水準、都市防災、都市空間の項目において、評価 得点と重要度の相違が見られた。反対に合致している 項目は中項目の人口動態と評価指標の情報システムの 項目であった。環境分野では相違している項目は無 く、合致している項目が小項目の水、評価指標の水質 であった。経済分野でも相違している項目は無く、小 項目の雇用、評価指標の有効求人倍率の項目が合致し ていた。雲仙市では項目数で見ると社会分野指標で相 違が多い。 5. 総括 5-1. 評価・分析の総括  3 章では九州地方都市の持続性評価結果の比較から 以下のことが明らかとなった。①九州地方都市では、 社会分野の評価が低く、持続性の向上における課題が、 人口に関する政策、地震に対する防災、障碍者施設の 充実であること。②評価に影響を与えている 10 指標 が抽出された。③全ての県において社会分野の評価が 低く、それぞれに個別の課題指標が存在すること。特 に福岡では防犯指標に関する対策が必要であることを 明らかにした。本研究で指摘した課題指標は基準値と 資料の数値から判断したものであるため、詳細な改善 策や取組についての考察は行わなかったが、著しく低 い数値の評価項目についてはそれぞれ適切な対策が必 要であると考えられる。  4 章では各自治体の持続性に対する考え方として評 価指標の重要度を算出し、評価得点との関係を見るこ とで、どの指標において自治体の認識に相違が見られ るのかを明らかにした。評価得点が低い分野の全ての 項目が相違しているとは限らなかったが、熊本市の環 境分野では土壌の品質において相違しており、雲仙市 の社会分野指標の場合では権利と都市基盤に対する相 違が確認できた。項目数ではどちらも社会分野の項目 に相違が多く見られ、重要度と評価得点の普遍的な関 係性は見られなかった。しかし、長期的には評価得点 が低い項目の重要度が低い状態は都市の持続性の低下 に影響すると考えられ、該当する評価指標に関する自 治体の取組を見直す必要がある。 5-2. 今後の課題  本研究では自治体の持続性に対する考え方を重要度 として対応関係を明らかにしたが、住民の持続性に対 する考え方を考慮した分析を行うことで自治体との差 異が明らかとなり、都市計画の方針に繋がると考える。 参考文献 1) 戸川卓哉 , 小瀬木祐二 , 鈴木祐大 , 加藤博和 , 林良嗣:環境・経済・社会のトリプル・ ボトムラインに基づく都市持続性評価システム;第 41 回土木計画学研究発表会 2)CASBEE 都市 , 建築環境総合性能評価システム , 評価マニュアル [ 発行 ] 日本サステ ナブル建築協会 3) 高橋美保子 , 鵜木千里 , 出口敦 : サステナブル・ディベロップメントの概念と都市 のサステナビリティ評価手法に関する基礎研究;九州大学大学院人間環境学研究紀要  第 11 号 4) 坂本大樹:都市持続性評価システムの構築;九州大学平成 24 年度 建築学研究卒 業論文 図 3 重要度と得点の関係 熊本市 雲仙市 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 3.29 2.54 3.69 0.31 0.30 0.39 環境 社会 経済 3.00 1.00 5.00 3.00 5.00 3.00 0.35 0.65 0.44 0.56 0.36 0.64 5.00 1.72 3.92 0.30 0.45 0.25 3.31 3.75 3.00 0.37 0.23 0.40 評価指標 WC WQ NC SQ DE RR 中項目 小項目 b1 b2 b3 c1 c2 c3 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.00 1.00 1.00 1.00 2.00 3.00 0.45 0.55 0.50 0.50 0.73 0.27 5.00 5.00 1.00 1.00 1.00 2.27 2.00 0.51 0.49 0.13 0.15 0.17 0.20 0.35 1.00 5.00 1.61 1.00 0.30 0.36 0.22 0.12 中項目 小項目 b4 b5 b6 b7 c7 c8 c9 c10 c11 c12 c13 評価指標 NPC SPC PS HS NS MS 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 3.00 5.00 3.00 2.00 0.50 0.50 0.35 0.65 評価指標 LF FS UER JOR 4.04 5.00 2.33 5.00 3.00 0.10 0.17 0.31 0.22 0.20 小項目 c15 c16 c17 c18 c19 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 重要度 評価得点 0.35 0.65 0.54 0.46 0.44 0.56 4.00 4.00 5.00 2.00 4.00 2.00 5.00 4.00 3.61 0.29 0.47 0.24 4.20 2.89 1.00 0.42 0.23 0.35 中項目 小項目 評価指標 b1 b2 b3 c1 WC WQ NC SQ DE 4.00 1.00 2.00 1.00 3.10 2.27 3.00 0.68 0.32 0.16 0.18 0.18 0.16 0.32 小項目 c7 c8 c9 c10 c11 c12 c13 2.00 3.00 4.00 1.00 2.00 3.00 0.60 0.40 0.70 0.30 0.73 0.27 評価指標 NPC SPC PS HS NS MS 0.44 0.56 0.48 0.52 5.00 2.00 3.00 3.00 評価指標 LF FS UER JOR RR c2 c3 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 2.76 3.09 3.40 0.39 0.30 0.31 環境 社会 経済 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 2.40 3.03 2.38 5.00 0.20 0.31 0.30 0.19 中項目 b4 b5 b6 b7 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 3.33 3.00 3.00 3.00 5.00 0.11 0.18 0.31 0.21 0.18 小項目 c15 c16 c17 c18 c19 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 分野別 分野別 環境分野 社会分野 環境分野 社会分野 経済分野 経済分野

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