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意とすること 2ATSC 3.0 に移行する地上波テレビ放送局は ASTSC 3.0 と ATSC 1.0 によるサイマル放送を 5 年間実施すること 3ATSC 3.0 による放送番組は多チャンネル映像番組配信事業者 (MVPD) に課せられている マストキャリー規則 (Must-Carry Ru

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米国次世代地デジ規格 ATSC 3.0 の自主的運用スタート

~ビジネスモデルの転換を狙う地上波テレビ放送事業者~

一般財団法人マルチメディア振興センター(FMMC) 情報通信研究部 研究員 米谷 南海

概要

米国において地上波デジタル放送の次世代規格である「ATSC 3.0」の自主的運用が正式に開 始した。ATSC 3.0 と現在用いられている「ATSC 1.0」には互換性がないほか、移行はあくま でも任意であるなど、その導入にはリスクが伴うが、地上波テレビ放送事業者は前向きだ。本 稿では、ATSC 3.0 の概要を説明した後、米国放送市場に関するデータを参照し、地上波テレビ 放送事業者がATSC 3.0 導入に積極的な姿勢を見せる背景について考察する。さらに、地上波 テレビ放送事業者による実際の取組みについても紹介する。

1. FCC、ATSC 3.0の自主的運用を認める案を採択

米国は世界でいち早く地上波デジタル放送規格である「ATSC 1.0」を策定・採用し、1998 年からデジタル放送を開始、2009 年にはアナログからデジタルへの完全移行を完了した。しか し、その後、欧州や日本がマルチキャリアを用いた「DVB-T」や「ISDB-T」を採用したこと で、シングルキャリアで伝送を行うATSC 1.0 は、その他の規格と比べると伝送特性が劣ると いう課題に直面することになった1。そこで、伝送特性の改善や送信可能な情報量の増加を図る ために、高度テレビジョン・システムズ委員会(ATSC)が 2013 年頃から開発・検討を開始し たのが、IP パケットをデジタル放送に用いる次世代規格「ATSC 3.0」である2。IP 伝送方式の

ATSC 3.0 では通信との融合が容易になるため、高画質・高音質の映像配信やターゲット広告、 複数言語による字幕放送、災害情報の送信といった新しい通信・放送連携サービスの実現が可 能になると考えられている(図表1)。 2017 年 11 月には連邦通信委員会(FCC)が、地上波テレビ放送局による ATSC 3.0 運用開 始に関する「報告・命令と規則改正案(FCC 17-158)3」を採択し、①ATSC 3.0 への移行は任 _ 1 無線通信はキャリア(搬送波)と呼ばれる高い周波数を持つ電波に情報信号を乗せて伝送を行う。このうち 単一のキャリアによって伝送する方式をシングルキャリア方式、周波数等の特性が異なる複数のキャリアを同 時に利用して伝送する方式をマルチキャリア方式という。マルチキャリア方式は大容量通信に多く使われてお り、限られた周波数帯域を有効に使用できるほか、マルチパス干渉などへの耐性も強いという特徴がある。な お、地上波デジタル放送規格のうち ATSC はカナダ・メキシコ・韓国で、DVB-T は欧州・アジア・アフリカで、 ISDB-T は日本・フィリピン・南米でそれぞれ採用されている。 2 高度テレビジョン・システムズ委員会によれば、ATSC 3.0 の策定には、地上波テレビ放送事業者、ケーブル テレビや衛星報道等の有料放送事業者、映画事業者、放送機器メーカー、コンピュータ・半導体メーカー等、 約 120 の企業が参加した。(https://www.atsc.org/)

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意とすること、②ATSC 3.0 に移行する地上波テレビ放送局は ASTSC 3.0 と ATSC 1.0 による サイマル放送を5 年間実施すること、③ATSC 3.0 による放送番組は多チャンネル映像番組配 信事業者(MVPD)に課せられている「マストキャリー規則(Must-Carry Rules)4」の対象 外とすることを決定した。これにより、2018 年 3 月 5 日、FCC の承認を得た地上波テレビ放 送局によるATSC 3.0 の自主的な運用が正式に開始されることになった。 図表1 ATSC 3.0 によって実現する新サービス 出所:ONE Media 公式ウェブサイト

2. ATSC 3.0導入に際しての課題

ATSC 3.0 を活用した新しい通信・放送融合サービスの誕生には大きな期待が寄せられている が、その導入には課題もある。 第一に、ATSC 3.0 は現在用いられている ATSC 1.0 と互換性がないため、設備導入に多額の 初期投資が必要となる。具体的には、新サービスを制作、編成、送出するために機器を一新し たり、ビッグデータを処理するためのクラウドサービスを準備したりする必要があるほか、視 聴者側もATSC 3.0 チューナー内蔵のテレビや ATSC 3.0 対応チップを組み込んだ新機種のモ バイル端末を新たに購入しなければならない5 第二に、ATSC 3.0 導入はあくまでも任意であるため、テレビやモバイル端末への ATSC 3.0 チューナー搭載義務はない。メーカー各社がATSC 3.0 標準準拠機器の製造・販売にどれほど (https://apps.fcc.gov/edocs_public/attachmatch/FCC-17-158A1.pdf) 4 米国では、ケーブルテレビ事業者にその地域で視聴できるすべての地上波テレビ放送局のチャンネルを再送 信することを義務付けており、これをマストキャリー規則という。 5 旧機種のテレビやモバイル端末であっても、チューナーを購入、設置すれば受信は可能である。ただしモバ イル端末の場合は WiFi 環境が必要となる。

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積極的な姿勢を見せるかについては、現時点では不確定要素が多い6

第三に、ATSC 3.0 の運用を開始する地上波テレビ放送局には ATSC 1.0 と ATSC 3.0 による サイマル放送を5 年間実施することが義務付けられるが、アナログからデジタル(ATSC 1.0) への移行の時とは異なり、地上波テレビ放送局にATSC 3.0 用の新しいチャンネルが割り当て られることはないため、放送局はこの義務を果たすために同じ地域の他局とチャンネル共用の 契約を結ばなければならない。チャンネル共用の最も単純なケースとしては、異なる周波数と チャンネルでそれぞれATSC 1.0 サービスを提供する二つの放送局が協力し、片方の周波数と チャンネルをATSC 1.0 用、もう片方の周波数とチャンネルを ATSC 3.0 用に指定して、サイ マル放送を行うというものが想定される(図表2)。 図表2 ATSC 3.0 移行のためのチャンネル共用モデル 出所:高度テレビジョン・システムズ委員会公式ウェブサイトを基に筆者作成 しかし、このような課題があるにもかかわらず、地上波テレビ放送局の多くはATSC 3.0 の 導入に前向きだ。WideOrbit が 2017 年 4 月に発表した調査報告によれば、地上波テレビ放送 局の71%が ATSC 3.0 を放送産業に恩恵をもたらす新技術であるとの認識を共有しており、56% は既にその導入について検討しているという(図表3)。さらに、地上波テレビ放送局は ATSC 3.0 の任意的移行に賛成しており、その義務化は求めていない。義務化するとなった場合には 法律の制定等に時間がかかるため、早急にATSC 3.0 への移行に着手したい地上波テレビ放送 局からすれば、任意的な移行であるほうが、都合が良いためである。地上波テレビ放送局がこ _ 6 とはいえ、4 月 9 日~12 日にかけて米国ネバダ州で開催された全米放送事業者協会(NAB)主催の放送・映像 技術の祭典「NAB ショー」では放送の IP 化に対応した様々な機器が展示され、『映像新聞』はその様子につい て「放送の全工程で IP がすさまじい進化を見せつけ、IP が放送の世界標準になる予感を抱かせた」と報告し ている。(映像新聞「“世界標準”か既存路線か 放送業界に変革を迫る NAB 広がる SMPTE の IP 規格」2018 年 4 月 16 日付, 第 2332 号, 1 面.)

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れほどまでにATSC 3.0 導入を急ぐのはなぜなのか。次節では、その背景について放送市場の 構造的変化という観点から整理する。

図表3 ATSC 3.0 についての地上テレビ放送局の意識

出所:WideOrbit(2017)ATSC 3.0 and The Future of Broadcasting The Industry Viewを基に筆者作成

3.地上波テレビ放送局がATSC 3.0移行を急ぐ理由

2017 年 3 月現在、米国には 1,777 の地上波テレビ放送局があり、そのうち商業放送局が 1,383 局を占める7。商業放送局の主な収入源はスポンサーからの広告料とケーブルテレビ事業者から 徴収する再送信料から成るが、ブロードバンドの普及や主要メディアのテレビからモバイルへ の変化を背景に、その収益構造に徐々に限界が見え始めている。 第一に、米国ではインターネット広告費が増大し、これまで圧倒的な地位を誇っていたテレ ビ広告費を抜きつつある(図表4)。広告市場の動向については多くの調査会社が独自の調査を 実施しているが、2018 年中にインターネット広告費がテレビ広告費を追い越すという見立てが あらかたであり、これまでテレビ広告費に依存してきた地上波テレビ放送局にとっては見通し の暗い予測となっている8 第二に、これまで米国世帯の約8 割がケーブルテレビを中心とした有料テレビ放送サービス に加入し、それを通して地上波テレビ番組を視聴してきたが、2000 年代半ば頃から Netflix 等 のOTT サービスが台頭したことでコード・カッティング(cord-cutting)が進み、有料テレビ 放送事業者の市場支配力に陰りが見え始めている。Leichtman Research Group の調査によれ _

7 NHK 放送文化研究所(2018)『NHK データブック 世界の放送 2018』.

8 米国市場では 2016 年にインターネット広告費がテレビ広告費を上回ったという調査結果もある。

Magna(2017)US Advertising Forecast.

(https://magnaglobal.com/magna-releases-us-advertising-forecast-march-2017/) 27% 44% 21% 3% 5% 強くそう思う そう思う どちらでもない そう思わない 全くそう思わない 56% 28% 16% はい いいえ わからない Q. 現在、ATSC 3.0への移行を検討していますか? Q. ATSC 3.0 は放送産業に恩恵をもたらす刺激的な新技術だと思いますか?

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ば、近年、有料テレビ放送サービス加入者数が減少傾向にあるのに対し、Netflix は順調にその 加入者数を伸ばしている(図表5)。このような市場構造の変化は有料テレビ放送事業者のみな らず、コンテンツの配信を有料テレビ放送サービスに頼っている地上波テレビ放送局をも窮地 に立たせている。 ATSC 3.0 は、このような厳しい現状に対し、地上波テレビ放送局が打ち出した切り札だとい えよう。いち早くATSC 3.0 へ移行し、高・多機能を備えた新しい通信・放送融合サービスを 提供することで、放送サービスを収益事業の中心に据える従来のビジネスモデルから脱却し、 日々勢力を拡大しているOTT 事業者に歯止めをかけることが目指されている。 図表4 米国におけるメディア別広告費シェア(2000~2017 年)

出所:Zenith. Adspend Forecast Liveを基に筆者作成。

図表5 ケーブルテレビと Netflix の加入者数(2012~2017 年)

出所:Leichtman Research Group 提供データを基に筆者作成。 0% 10% 20% 30% 40% 50% 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 テレビ ネット ラジオ 新聞 9,500 9,490 9,480 9,440 9,370 9,220 2,550 3,170 3,770 4,340 4,790 5,280 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 2012 2013 2014 2015 2016 2017 有料テレビ放送 Netflix [万]

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4.ATSC 3.0移行へ向けての取組み

ATSC 3.0 移行に最も熱心な地上波テレビ放送事業者としては、米国最多のローカルテレビ局 を保有するシンクレア・ブロードキャスティング・グループ(Sinclair Broadcasting Group) が挙げられる。同社は所有する全放送局をATSC 3.0 に移行することを発表しており、2017 年 3 月には、インドのサーンキヤ・ラボ(Saankhya Labs)とテレビ、携帯電話、モバイル、ド ングル、自動車への搭載を想定したATSC3.0 チップセットの開発で提携している。また、地上 波テレビ放送事業者大手のネクスター・メディア・グループ(Nexstar Media Group)とは、 ATSC 3.0 関連製品・サービスの開発等で協力するためのコンソーシアムを結成しており、全米 に97 ある地上波テレビ放送区域すべてに ATSC 3.0 を導入することで合意を交わした。97 区 域のうち、ネクスターとシンクレアがそれぞれテレビ放送局を所有している区域は43 あり、残 りの54 区域ではどちらかが局を所有あるいは運営している。両社は ATSC 3.0 への移行期間中 にATSC 1.0 とのサイマル放送を行うために周波数を共用する予定だという。 そのほか、キャピトル・ブロードキャスティング・カンパニー(Capitol Broadcasting Company)傘下のローカルテレビ局である WRAL-TV も 2018 年 2 月に、平昌オリンピック中 継を使ってATSC 3.0 のデモンストレーションを実施している。デモンストレーションは、全 米放送事業者協会(NAB)とメディア・コングロマリットの NBC ユニバーサル(NBCU)9 の協力の下で行われたもので、4K UHD 映像の伝送や地域を特定したインタラクティブな警報 を発令する「Advanced Emergency Alerting(AEA)」が実際に動作しているところが披露さ れた。また、インタラクティブ・アプリケーションとして、番組ガイドやVOD、ユーザがカス タマイズできる競技データ及びアスリート情報の表示サービスも公開された。 先に述べたように、ATSC 3.0 の移行には多額の初期投資が必要となるため、放送市場におい て広く普及するためには時間がかかると予想される。しかし、その運用に向けた取り組みは、 大手地上波テレビ放送事業者や業界団体が牽引する形で着実に進んでおり、今後はこのような 動きが徐々にテレビ放送業界全体に広がっていくことになりそうだ。

5.おわりに

2018 年に入り、日本では安倍晋三首相の肝煎りで放送法改正を巡る議論が本格化している10 官邸は通信と放送の融合を進めるにあたり、放送規制を撤廃するなどして、通信と放送とで異 なる規制を一本化する方針だが11、放送業界は慎重な姿勢を保っている12。一方米国では、新し _ 9 NBCU は、ケーブルテレビ大手コムキャストの子会社であると同時に、地上波ネットワークの NBC をグループ 会社として有している。 10 内閣府(2018)「規制改革推進会議 会議情報 投資等ワーキング・グループ」 (http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/meeting.html) 11 首相官邸(2018)「平成 30 年 1 月 22 日 第 196 回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説」 (https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement2/)、首相官邸(2018)「平成 30 年 2 月 1 日 第 13 回未来 投資会議」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/)首相官邸(2018)「平成 30 年 2 月 6 日 衆議院予算委員会」(https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201802/06shuyosan.html) 12 日本テレビ(2018)「3 月 26 日 定例記者会見 要旨」(http://www.ntv.co.jp/info/press/press.html)、フ ジテレビジョン(2018)「3 月度 社長会見 要旨」(https://www.fujitv.co.jp/company/news/)、TBS テレビ(2018)

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い通信・放送融合サービスの提供を目指す地上波テレビ放送事業者に後押しされる形で、ATSC 3.0 への移行が実現されつつある。日本のテレビ業界とは異なる方向に進む米国のテレビ業界 の行く末は今後も注視していく必要があるだろう。 なお、米国と同じ地上波デジタル放送規格を採用している韓国では、2017 年 5 月に KBS、 MBC、SBS の 3 局がソウルを含む首都圏地域で ATSC 3.0 を用いた地上 4K 放送を既に開始し ており、2021 年までに全国での導入を完了する計画である。しかしながら、一足先を行く韓国 の事例が米国の道標になるかというと、残念ながらそうではない。米国ではATSC 3.0 が任意 規格であるほか、地上波テレビ放送局の数が多く、市場規模も大きいため、ATSC 3.0 の導入過 程は独自の様相を見せることが予想される。米国でのATSC 3.0 導入がどのように進められる のか、また放送業界の構造や市場をいかに変化させるのか、引き続き注目していきたい。 「3 月 社長定例記者会見 概要」(http://www.tbs.co.jp/company/news/)、テレビ東京(2018)「3 月 小孫社長 定例会見」(http://www.tv-tokyo.co.jp/kaisha/message/)、テレビ朝日(2018)「3 月 27 日 定例会見 要旨」 (http://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/index.html)

図表 3  ATSC 3.0 についての地上テレビ放送局の意識
図表 5  ケーブルテレビと Netflix の加入者数(2012~2017 年)

参照

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