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恵庭における「花のまちづくり」の形成と市民活動

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Academic year: 2021

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恵庭における「花のまちづくり」の形成と市民活動

鈴木  貢

抄録:本研究は、北海道恵庭市における「花のまちづくり」の形成に関わるプロセスを検討し、市民 と行政の協働による「花のまちづくり」活動の現況と課題を探究することを目的とする。恵庭の「花 のまちづくり」は、北海道内有数の花苗の生産地という地域の特性を生かして形成されたものである。 そして特筆すべきは、市民主導で始まったまちづくりという点である。その市民主導のまちづくりを 支えたのが、「花いっぱい文化協会」と「花苗生産組合」である。花苗の流通を「花いっぱい文化協会」 が斡旋し、「花苗生産組合」が供給するというシステムが、「花のまちづくり」形成の基盤である。市 民活動と両者との連携、行政の支援が、「花のまちづくり」の構造である。恵庭の「花のまちづくり」 は、北海道内有数の花苗の生産地という地域資源を活用し、新たな価値を創造するまちづくりである。

1.はじめに

 全国各地で「地域おこし」が活発に展開されている。「地域おこし」とは、魅力ある地域づくりの 形成である。その多様な取り組みを、類型化して考えてみたい1) ①地域の伝統や文化で忘れられつつあったものを甦らせたり、新しい祭りやその土地ならではの名 物をつくりだして、町や村をいきいきさせたもの。 ②仕事や商売に新しい価値や方法を発見し、それが「まちづくり・村おこし」につながっていった もの。 ③自分の夢やこだわりをかたちにして、それが結果的に地域おこしになったもの。 ④行政が主体となった活動でも、いわゆるお役所仕事らしくない成果を上げたもの。  この類型化した事例の風土や条件は異なるが、様々な創意工夫が「地域おこし」の成果を上げてい る。ここでは、恵庭における「花のまちづくり」について検討していく。恵庭の「花のまちづくり」は、 類型①の「その土地ならではの名物をつくりだして、町や村をいきいきさせたもの」として捉えるこ とができる。恵庭は北海道内有数の花苗の生産地で、生産量、品質、種類のどれをとっても、トップ クラスである。恵庭の「花のまちづくり」の背景には、有数の花苗供給地を地域内に抱えていること が大きな要因となっている。  また類型①は、伝統文化と創造文化の問題として捉えることもできる。両者の相違点は、「文化は、 歴史性の有無によって、伝統文化と創造文化に分かれる。伝統文化は、ある都市で長い時間をかけて 蓄積し、世代を超えて受け継いできた文化的遺産」2)である。それに対して創造文化は、地域の特性 を生かしながら新たな価値を創造する文化である。恵庭の「花のまちづくり」は、地域の特性を生か しながら新たな価値を創造する文化活動を展開してきた。  まちづくりが、「人と人の間、人と環境の間に良き相互関係を創造すること」であるならば、有効 北海道文教大学人間科学部こども発達学科

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性という観点から三つの意義を考えることができる3) ①身近な環境づくりからまちづくりを進めていくことは、それらが全体の計画とどのように整合す るのか、住民に理解してもらうことを可能にする。 ②地域の住民の生き方を充実させる。 ③住民参加のまちづくりは、物、金、制度にたよるのではなく、人と人の関係にたよるので、「人 間が生きることの秘密ともいえる遊び心」をたえまなく発揮できる。  恵庭の「花のまちづくり」は、身近な環境づくりから始めて徐々に住民に浸透していき、ガーデニ ングという精神を通して住民の生き方を充実させ、その一方で創意工夫の遊び心を発揮してきたので ある。本研究は、全国的に知られた恵庭の「花のまちづくり」形成プロセスの検討を通して、地域の 特性を生かしながら新たな価値を創造するまちづくりを考える。

2.研究の目的と方法

 本研究では、恵庭における「花のまちづくり」形成に関わるプロセスを検討し、市民と行政の協働 による「花のまちづくり」活動の現況と課題を探究することを目的とする。  研究方法は、「花のまちづくり」の形成と展開について、ヒアリング調査を通して分析を行った。なお、 ヒアリング調査は、恵庭市役所・企画調整課(2010.11.12)と恵庭市役所・花と緑・観光課(2010.12.1、 2011.1.14)において実施した。その他花マップ等の関連資料の検討を行った。

3.「花のまちづくり」形成のプロセス

(1)「花のまちづくり」の発端  「花のまちづくり」は、恵庭市の全般にわたり展開されているが、オープンガーデン注 1)は恵み野 地区が中心となっている。1980 年に恵庭ニュータウン恵み野が分譲された。恵み野に定住した住民 の多くは、市外から引っ越してきた人々である。その住民たちは、このまちのために何かできないか と、自主的にオープンガーデンを実践した。  恵庭市制施行 20 周年の 1990 年に、第 1 回「恵庭・花とくらし展」の講演会が恵み野地区で開催 された。その時の講演者が、恵庭の「花のまちづくり」の推進には、ニュージーランドのクライスト チャーチが参考になると推奨した。このアドバイスを受けて、1991 年に市民・市職員等有志 13 名が ニュージーランドのクライストチャーチを視察した。クライストチャーチは、ニュージーランド南島 の最大都市で、ゴシック調の建物が数多く残るガーデンシティ(庭園のまち)と呼ばれる美しい街並 みを誇っている。「この街に住む人々は庭づくりをとても大切にし、庭の手入れが行き届いていて、 道行く人々の目を楽しませてくれる。毎年庭園のコンテストも開かれているほど」4)である。この視 察は、恵庭の「花のまちづくり」に大きな影響を与えた。  ニュージーランド視察後、報告書の作成やスライドの上映会が行われた。その上映会に参加した住 民が大変感激し、恵み野地区で「花づくり愛好会」を立ち上げ、粘り強く「花のまちづくり」を宣伝 した。そして、「花いっぱい文化協会」等から花苗を購入し、自宅の家を花で飾り「ガーデニング」 を実践した。当初は 1 年草を植えていたが、近年は 1 回植えたら毎年継続的に花を咲かせるバラを

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はじめ宿根草が中心となっている。花の季節には、多くの観光客が恵庭を訪れ、「花マップ」を手に して美しい庭園めぐりを楽しんでいる。「花のまちづくり」は、恵庭のシンボルともなっている。 図 1 クライストチャーチの美しい庭5) (2)「花のまちづくりプラン」  花のまちづくりプランは、1998 年に「花のまちづくり」を実践してきた多くの市民と行政の協働 により策定された。このプランは、市民の願いを集約したものと考えることができる。花のまちづく りプランは、2008 年に改定版が完成した。改定版は基本的な考え方は踏襲することとし、花の効用 によるまちづくり 12 か条を示し、行動指針ではその推進と支援の仕組みに重点をおいた6)。「花のま ちづくり」を推進するために、市役所には「花と緑の課(現 : 花と緑・観光課)」が設置された。また、 プランの推進団体として「恵庭花のまちづくり推進会議」が設立された。「恵庭花のまちづくり推進 会議」は、花とくらし展をはじめ様々な事業や連絡調整の役割を担うこととなった。  【花の効用によるまちづくり 12 か条】  第 1 条 コミュニティの形成とコミュニケーションが広がります  第 2 条 生命の大切さを知ることができます  第 3 条 美しさに感動し、環境を大切にする心が生まれます  第 4 条 心が安らぎ癒されます  第 5 条 健康になれます  第 6 条 教育効果があります  第 7 条 まちがきれいになり、イメージアップにつながります  第 8 条 犯罪やごみが減ります  第 9 条 拠点づくりや情報発信が促進されます  第 10 条 観光の推進が図られます  第 11 条 経済効果があります  第 12 条 研究・開発の効果があります

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 【恵庭花のまちづくり推進会議(1998 年設立)】 ①構成員:花の関係者を始め教育・文化・経済団体等から選出された 17 名 ②事 業:花とくらし展の開催、フラワーガーデニングコンテストの実施、花のまちづくり講演会 開催、花マップ作成協力等  【推進と支援の仕組みを整える】  (1)市民と行政の協働の仕組みを整える  (2)花の供給システムを整える  (3)国内外と交流する  (4)効果的な助成制度を整える  (5)推進拠点をつくる  (6)行動指針を推進する組織づくりを図る  (7)ボランティア活動を確立する  (8)ガーデニングコンテストの充実を図る  (9)花の関連商品を開発する  (10)花観光を推進する  (11)恵庭花とくらし展を進化させる  (12)リサイクルや環境対策を考える  (13)フラワーマスターや花ガイド活動を推進する  (14)花と緑の普及員や指導者など人材を育成する  (15)花カレンダーによる情報提供を促進する  (16)花や緑による市民の共有財産を育てる 図 2 恵庭市内のオープンガーデン7)

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 (17)花の公園を市民みんなでつくる  (18)公園や学校グランドの芝生化を検討する  (19)ガーデニングに合う宅地を考える  (20)プランの周知と推進する方法を考える  「花のまちづくりプラン」は、市民と行政の協働作業により花の効用によるまちづくり 12 か条を 策定し、恵庭花のまちづくり推進会議が核となって、その推進と支援の仕組みづくりの実現を図って いく計画である。このプランは、目標を達成するための計画期間を設定していない。多様な主体が関 わる行動指針等に、目標を達成するための期間を設けることは困難である。そのために、10 年毎に このプランの反省・検証を行い、プランを見直すこととなっている。 (3)花いっぱい文化協会  1961 年に秋田県雄物川町出身者 7 名で、花いっぱい文化協会は設立され、花いっぱい運動を実践 している。主な事業内容は8)は、花苗の安価な安定供給と花壇づくりの推進、グリーンベルト、黄 金フラワーロード花壇の造成、花壇コンクールの実施や水と緑のまちづくり推進事業等に積極的に取 り組んでいる。花いっぱい文化協会が 40 数年にわたり花壇コンクール等の活動を継続してきたこと は、「花のまちづくり」形成への多大な貢献を物語るものである。  「郷土を花いっぱい・緑いっぱい」を合言葉に活動を重ね、2010 年に 50 周年を迎えた。会員は 70 数団体で、その内で約 40 団体が町内会である。公的な場所の花壇の設置には、町内会が花いっぱい 文化協会の斡旋により花苗生産組合から花苗を購入し、花壇の造成から維持管理までを担っている。 図 3 2010 年度 花壇コンクール9) (4)花苗生産組合  1984 年に設立され、市内の花苗生産者 6 社で構成されている。主な事業内容10)は、花苗の生産(2007 年度 500 万株)、花いっぱい文化協会斡旋花苗生産、イベント等を通じて植栽技術の向上や情報提供 図 4 花壇の植栽11)

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を目的に、各種講習会を開催している。  花苗生産組合は、花苗を一括生産して会員に供給している。公的な場所での花壇の植栽には、花苗 を花いっぱい文化協会に提供し、会員である町内会が代表して花苗の供給を受けている。多くの市民 や観光客の目を楽しませている札幌・大通公園の花壇の花は、その大半が恵庭産である。恵庭が、花 苗生産の産地としての実績と人材の育成を積み重ねていることが理解できる。

4.「花のまちづくり」の構造

 恵庭の「花のまちづくり」は、北海道内有数の花苗の生産地という地域の特性を生かして形成され たものである。そして特筆すべきは、市民主導で始まったまちづくりという点である。その市民主導 のまちづくりを支えたのが、「花いっぱい文化協会」と「花苗生産組合」である。花苗の流通は、町 内会(会員)を通して花苗の購入を申込み、「花いっぱい文化協会」が斡旋し、「花苗生産組合」が供 給するというシステムである。そのシステムが、「花のまちづくり」形成の基盤である。市民と両者 との連携、行政の支援が、「花のまちづくり」の構造である。なお、現在では市民のガーデニングの 花苗は、販売店も増えたので一般の店舗で購入できる。  行政が「花のまちづくり」の市民活動を支援するという体制は、ある意味では理想的なまちづくり の展開ということができる。行政主導から市民主体のまちづくりへの移行が模索されている中で、「花 のまちづくり」は先進的な取り組みとして評価できる。       図5 花のまちづくりの構造

5.「花のまちづくり」の現状と課題

(1)「花のまちづくり」の現状  ここでは、恵庭の「花のまちづくり」に焦点を当て、まちづくりを検討してきた。しかし、恵庭の まちづくりが「花のまちづくり」に尽きるわけではないことは言うまでもない。恵庭の子育て支援等 の活動は、他の地域に先駆ける取り組みとして高い評価を得ている。その中で、「花のまちづくり」 を取り上げる意義は、その取り組みが魅力ある地域社会の形成に寄与できるものと考えるからである。 地域住民にとっても、来訪者にとっても、美しい花々に彩られたまちは魅力的に映るに違いない。な ぜなら、快適な生活環境の形成は、まちづくりにとって重要な課題だからである。 市民活動(公共施設の植栽・ガーデニングの実践活動) 花いっぱい文化協会 購入 斡旋 供給 購入申込 (町内会) 花苗生産組合 花のまちづくり

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 恵庭の「花のまちづくり」は、市民主導で行政が支援するという体制で実践されてきた。各地のま ちづくりの大半が行政主導で推進されてきたことを考えると、活発な市民活動が「花のまちづくり」 を推進してきたことは高く評価できる。一方、行政による「花のまちづくり」形成への環境整備や助 成制度等の支援活動は、市民と行政の連携による「花のまちづくり」の進展に大きな役割を果たして きたということができる。 (2)「花のまちづくり」の課題  「花のまちづくりプラン」における重要課題であった行動指針の進捗状況が、必ずしも十分なもの ではない。その点を踏まえて、主な課題を列挙する。  ①市民と行政の協働体制の確立  ②情報発信の拠点づくり  ③来訪者に対する受け入れ体制の整備  ④「花のまちづくり」に対する市民の共通理解の促進  列挙された課題の中で、特に重要なものは、市民と行政の協働体制の確立である。この課題は「花 のまちづくり」に留まらず、恵庭のまちづくり推進のキーワードでもある。市民と行政の連携は、試 行錯誤を繰り返しながら課題を遂行するプロセスを通して深化していくのである。    情報発信の拠点づくりと来訪者に対する受け入れ体制の整備は、両者を一つの課題と捉えることに よって新たな展開が期待できる。また、「花のまちづくり」という目標像に対する市民の共通理解の 促進については、関連事業への参加者の促進を図るために人的なネットワークを活用すること、同時 にきめの細かい情報発信を継続することが重要である。  「花のまちづくり」は、地域の特性を生かしたまちづくりである。今後の展開としては、恵庭花の まちづくり推進会議を核に、様々な課題に着実に取り組んでいくことが肝要である。そして、留意す べき点は組織や課題を固定したものと考えるのではなく、いろいろな局面において変更や修正を柔軟 に検討することである。前進と後退を繰り返すことは、まちづくりにとって必然のプロセスである。 恵庭の「花のまちづくり」は、北海道内有数の花苗の生産地という地域資源を活用し、新たな価値を 創造するまちづくりである。

文献

1)陸井眞一・池田志朗編 : 地域術、10-11、東京、晶文社、1992 2)井上繁 : 都市づくりの発想、8、東京、丸善、1996 3)延藤安弘 : まちづくり読本、12-13、東京、晶文社、1990 4)ジャパン・メディア・クリエーションズ : ニュージーランド、36、東京、実業之日本社、2007 5)ニュージーランド視察の資料(恵庭市):1991 6)恵庭花のまちづくり推進会議・恵庭市(花と緑・観光課): えにわ・花のまちづくりプラン、 13 − 14・21 − 28、恵庭、2008 7)恵庭市(花と緑・観光課): 花のまちづくり(恵庭)、表紙、恵庭、2010 8)恵庭花のまちづくり推進会議・恵庭市(花と緑・観光課): えにわ・花のまちづくりプラン、6、恵庭、 2008

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9)恵庭市(花と緑・観光課): 花のまちづくり(恵庭)、5、恵庭、2010 10)恵庭市(花と緑・観光課): 花のまちづくり(恵庭)、6、恵庭、2010 11)恵庭市(花と緑・観光課): 花のまちづくり(恵庭)、6、恵庭、2010

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A Study Regarding Town Developmennt by Flower Growing Movement in

Eniwa City

SUZUKI Mitsugu

Abstract : This study is the current situation in Eniwa City how “ Town Development by Growing Flowers”

has added new value to the city. This movement originates in the advantage of Eniwa City that produces high quality flower seedlings in all Hokkaido. “Cultural Flower Association” and “Productive Society of Flower Seedlings” in the city have played an important role in this movement. Above all, citizens of Eniwa took the initiative to start this movement. Good cooperation among these groups supported by the city administration has led to the success of this movement. This is a good example of how the regional resources of Hokkaido has been utilized in creating new value of the city.

参照

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