不平衡給電超低姿勢逆 L アンテナで構成された高機能アンテナ
田口 光雄
†a)Functional Antennas Composed of Unbalanced Fed Ultra Low Profile Inverted L Antenna
Mitsuo TAGUCHI
†a)あらまし 長方形導体板上に配置した不平衡給電超低姿勢逆Lアンテナと,このアンテナと寄生素子を組み合 わせた高機能アンテナについて説明する.最初に,不平衡給電超低姿勢逆Lアンテナの特性を示し,低姿勢アン テナとしてよく知られている逆Lアンテナとの比較を行う.次に,逆Lアンテナの近傍に寄生素子を配置する ことで,2周波共用アンテナ,2周波共用MIMOアンテナ,高利得アンテナ,広帯域アンテナを実現できること を示す.また,逆Lアンテナの近傍に電磁界が強く励振される特徴を利用したマイクロ波帯の無線電力伝送シス テム用アンテナの特性を説明する.最後に,逆Lアンテナを構成する同軸ケーブルをコプレーナ線路に置き換え たアンテナを紹介する.
キーワード 超低姿勢アンテナ,不平衡給電,逆Lアンテナ,2周波共用アンテナ,広帯域アンテナ,無線電 力伝送用アンテナ
1.
ま え が き無線通信システムの高度化に伴い,アンテナの小形,
高性能化への要求は年々高まっている.その要求に応 える方法として,給電素子上の電流伝搬位相定数が特 定の周波数で負または
0
である媒質を用いたメタマテ リアルアンテナが提案されている[1]
.これは,多数の 金属小片を金属平板上に周期的に配列することで,給 電素子上の電流伝搬位相定数を,特定の周波数帯域で 負にするもので,隣り合う金属小片間隙からの漏れ波 が放射に寄与することでアンテナ高を1/100
波長に低 姿勢にすることができる.また,小形,平面アンテナ に,直列共振と並列共振,TE
モードとTM
モード,電流と磁流などの複合モードを組み込んで広帯域化す る方法が提案されている
[2]
.本論文で議論する低姿勢 アンテナは,これらのアンテナと異なり,ナチュラル アンテナの特性を改善しようとするものである[1]
.導体板上に置かれた半波長水平ダイポールアンテ
†長崎大学大学院工学研究科,長崎市
Graduate School of Engineering, Nagasaki University, 1–14 Bunkyo-machi, Nagasaki-shi, 852–8521 Japan
a) E-mail: [email protected] DOI:10.14923/transcomj.2017APS0001
ナでは,アンテナの電流と逆位相の電流が導体板に よるイメージ素子に流れるので,アンテナの入力抵 抗は,自己抵抗と相互抵抗の差で表される.アンテナ の高さが低くなるとともに,イメージ素子との結合 が強くなるので,相互抵抗が大きくなり,結果として 入力抵抗は小さくなる.しかし,アンテナ高が
0.1
波 長と低くなっても,ダイポールアンテナとイメージ素 子でエンドファイアアレーとなって,垂直方向の利得 は大きくなることが示されている[3]
.文献[4], [5]
で は,無限導体板に接近して配置可能な,アンテナ中央 からオフセットした位置で給電した,水平ダイポール アンテナが提案されている.アンテナと導体板との 間隔を30
分の1
波長程度と極めて低くしても,アン テナ給電位置を中央からずらす事で,入力インピー ダンスを50 Ω
に整合させることができ,指向性利得8.4 dBi
を実現している.アンテナはセミリジッド同 軸ケーブルで構成されている.このアンテナでは,ア ンテナ素子中心からオフセットされた2
点で逆相給電 するために,給電回路が複雑となっている.著者らは,文献
[4], [5]
の給電方法を逆L
アンテナに応用し,大 きさ0 . 245
波長× 0 . 49
波長の長方形導体板上に配置 した,高さ30
分の1
波長の不平衡給電超低姿勢逆L
(
ULPIL: Ultra Low Profile Inverted L
)アンテナで指向性利得
4.14 dBi
を実現した[6]
.ULPIL
アンテナ は,文献[3], [4]
のダイポールアンテナに比べて長さは 半分であり,給電構造も簡単である.また,接地導体 板の形状を調整して放射素子として利用し,周波数帯 域幅や利得を変化させている.アンテナの設計では,指定された周波数帯域で所望 の放射特性を実現するために,アンテナ上に電流,等 価磁流分布を大きく励振し,更に,アンテナに電力を 効率良く供給するためにアンテナの入力インピーダ ンスを給電線路と整合させることが重要である.マイ クロストリップアンテナでは,パッチの端から給電点 をずらすことで,すなわち,オフセット給電を行うこ とでインピーダンスを整合させることが知られてい る
[7]
.また,逆L
アンテナの垂直素子と水平素子の 屈曲部に短絡スタブを取り付けて,インピーダンスを 整合させる逆F
アンテナが低姿勢アンテナとしてよく 知られている[8]
.本論文では,最初に,
ULPIL
アンテナと逆F
アン テナの特性を比較している.次に,ULPIL
アンテナ の近傍に寄生素子を配置した高機能アンテナとして,寄生素子を
ULPIL
アンテナで共振させる2
周波共用 アンテナ,2
周波共用MIMO
アンテナ,寄生素子の 共振周波数をULPIL
アンテナと一致させて高利得を 実現したアンテナを紹介する[9]
〜[11]
.また,ULPIL
アンテナと寄生素子の結合を利用して広帯域とする地 上波テレビ放送受信アンテナ[12]
や高さを43
分の1
波長と低くして超狭帯域とした2
個のULPIL
アンテ ナを向かい合わせに配置した,無線電力伝送システム を紹介する[13]
.次に,ULPIL
アンテナをセミリジッ ド同軸ケーブルから,コプレーナ線路に変更したアン テナを紹介する[14]
.各種アンテナの数値解析には,モーメント法に基づ く電磁界シミュレータ
WIPL-D
を用い,数値解析結 果からアンテナ特性を議論している[15]
.ULPIL
ア ンテナでは,設計周波数でS11
特性を− 10 dB
以下に できるので,2.
の逆F
アンテナとの比較例を除いて,放射特性の評価には指向性利得を用いている.
2. ULPIL
アンテナと逆F
アンテナの 比較2. 1 ULPIL
アンテナ図
1
に,長方形導体板上に配置した,ULPIL
アン テナを示す.アンテナはセミリジッド同軸ケーブルで 構成されている.同軸ケーブルの外導体は先端から図1 ULPILアンテナ
Fig. 1 ULPIL antenna. h = 4 mm, pxm = pxp = 15 mm,pym= 10 mm,pyp= 44 mm, Radii of outer and inner conductor of semi-rigid coax- ial cable = 1.095 mm and 0.255 mm.
図2 ULPILアンテナの入力インピーダンス特性
Fig. 2 Input impedance of ULPIL antenna. h = 4 mm, L = 31 mm, pxm = pxp = 15 mm, pym= 10 mm,pyp= 44 mm.
L − L
1の長さの位置で切断されており,そこの同軸開 口から電磁界が放射されるので,ここが給電点となる.導体板からの水平素子の高さは
h
であり,水平素子の 長さはL
である.設計周波数は2.45 GHz
である.同 軸ケーブルの外導体半径は1.095 mm
,内導体半径は0.255 mm
である.同軸ケーブルはアンテナ給電点に 電力を供給するための給電線路であり放射には寄与し ないので,数値解析では完全導体円柱でモデル化して いる.図
2
に,垂直素子との屈曲点から給電点までの長 さL
1 を変化させた場合のULPIL
アンテナの入力 インピーダンス特性を示す.パラメータh = 4 mm,
L = 31 mm, pxm = pxp = 15 mm, pym = 10 mm,
pyp = 44 mm
は固定している.「×
」印は,2.45 GHz
での入力インピーダンスを示す.入力インピーダンス は,印加電圧と給電点電流の比で定義される.給電位 置をアンテナ基部に近づけるとともに給電点電流が大図3 ULPILアンテナのS11特性
Fig. 3 S11 characteristics of ULPIL antenna. h = 4 mm,pxm =pxp = 15 mm,pym = 10 mm, pyp = 44 mm, L = 30 mm, L1 = 21.6 mm;
L = 31 mm, L1 = 22.6 mm; L = 32 mm, L1= 23.5 mm.
図4 ULPILアンテナの電流分布(2.45 GHz).
Fig. 4 Current distribution on ULPIL antenna at 2.45 GHz. h = 4 mm, L = 31 mm, L1 = 22.6 mm; pxm = pxp = 15 mm, pym = 10 mm,pyp= 44 mm.
きくなるので,入力抵抗は低下する.図
3
に,水平素 子の長さL
を変化させた場合のS11
特性を示す.給 電点までの長さL
1は,S11
が最小となるように調整 している.図4
に,ULPIL
アンテナの電流分布の計 算値を示す.表1
に,水平素子の高さh
を変えた場合 にS11
が− 10 dB
以下となる帯域幅,設計周波数での 指向性利得の計算値を示す.ULPIL
アンテナでは,水平素子の長さL
がほぼ4
分の1
波長となる長さで共振し,給電点の位置を調整 することで入力インピーダンスを変えることができる.また,アンテナの高さを低くすれば狭帯域となる.
2. 2
逆F
アンテナとの比較図
5
に,長方形導体板上に配置した,逆F
アンテナ を示す.逆L
アンテナの垂直素子と水平素子の屈曲点 から長さLs
の短絡スタブを設けている.アンテナ素 子の半径は,ULPIL
アンテナの同軸ケーブル外導体 半径と等しく1.095 mm
としている.表1 水平素子の高さhに対するS11帯域幅と指向性利得 Table 1 S11 bandwidth and directivity as a function
ofh.
図5 逆Fアンテナ
Fig. 5 Inverted F antenna. pxm = pxp = 15 mm, pym= 10 mm,pyp= 44 mm, Radius of con- ductor = 1.095 mm.
図6 hに対する逆Fアンテナの入力インピーダンス特性 Fig. 6 Input impedance characteristics of inverted F antenna for differenth. pxm=pxp= 15 mm, pym= 10 mm,pyp= 44 mm,Ls= 3.3 mm.
図
6
に,水平素子の高さh
に対する逆F
アンテナの 入力インピーダンス特性を示す.短絡スタブの長さはLs = 3 . 3 mm
である.水平素子の分岐部から先端ま での長さL
は,S11
が設計周波数2.45 GHz
で最小と なるように調整している.図7
に,短絡スタブの長さ図7 Lsに対する逆Fアンテナの入力インピーダンス 特性
Fig. 7 Input impedance characteristics of inverted F antenna for different Ls. pxm = pxp = 15 mm, pym = 10 mm, pyp = 44 mm, h = 10 mm.
図8 ULPILアンテナと逆FアンテナのS11帯域幅と 水平素子の長さの比較
Fig. 8 Comparison of S11 bandwidth and length of horizontal element between ULPIL antenna and inverted F antenna. pxm = pxp = 15 mm,pym = 10 mm, pyp= 44 mm, Ls = 3.3 mm.
Ls
に対する入力インピーダンス特性を示す.アンテ ナの高さはh = 10 mm
である.アンテナ高h
を低く すると,入力リアクタンスが容量性となるので,S11
を− 10 dB
以下とするためには短絡スタブの長さLs
を短くする必要がある[16]
.しかし,図7
の結果から わかるように,Ls
を短くしても大きな誘導性リアク タンスは得られない.図
8
に,ULPIL
アンテナと逆F
アンテナのS11
帯域幅と水平素子の長さの比較を示す.水平素子の 長さは,ULPIL
アンテナではL
,逆F
アンテナではL + Ls
である.逆F
アンテナでは,アンテナ高h
を図9 ULPILアンテナと逆Fアンテナの動作利得の比較
Fig. 9 Comparison of actual gain between ULPIL antenna and inverted F antenna. pxm = pxp = 15 mm,pym = 10 mm,pyp= 44 mm, Ls= 3.3 mm.
5.4 mm
より低くすると,S11
が− 10 dB
以下となら ない.それに対し,ULPIL
アンテナではアンテナ高を2 mm
としてもS11
特性は− 10 dB
以下を満足する.図
9
に,両アンテナの動作利得の比較を示す.アンテ ナ高h
が8 mm
以上であれば,両者の動作利得はほぼ 等しいが,h
が低くなると,逆F
アンテナではS11
特 性が悪化するために,動作利得は低下する.3.
寄生素子を配置した高機能アンテナ3. 1 2
周波共用アンテナ基部給電逆
L
アンテナを折り返して平行線路とし,先端を短絡することで
1.5 GHz
帯で50 Ω
給電線路と 整合をとり,更に,その横に逆L
形状の寄生素子を 配置して1.5 GHz
帯,2.5 GHz
帯の2
周波共用アン テナが提案されている[17]
.しかし,給電アンテナ単 体では,1.5 GHz
帯でアンテナの高さを13
分の1
波 長より低くすると,S11
特性は劣化する.著者らはULPIL
アンテナの上部に直線状寄生素子を配置した,2.45 GHz
帯,5.2 GHz
帯の2
周波共用アンテナを提 案した.寄生素子の高さh2
は2.45 GHz
帯で13
分の1
波長と文献[16]
とほぼ同じである.図
10
に,2.45 GHz
,5.35 GHz
で共振する2
周波共 用アンテナを示す.2.45 GHz
で共振する逆L
アンテ ナのすぐ上に,5.35 GHz
で電流振幅が最大となる長さ の寄生素子を置いている.寄生素子の高さh 2
が高く なれば,長さL 2
は短くなる.図11
,図12
に,S11
特 性,指向性利得特性を示す.2.4
〜2.472 GHz
,5.15
〜5.35 GHz
でS11
の計算値,実測値とも− 10 dB
以下 となっており,それぞれの帯域で指向性利得は3.73
〜図10 2周波共用アンテナ
Fig. 10 Dual band antenna. pxp = pym = 7 mm, pyp= 50 mm,pym= 10 mm,h1 = 6.12 mm, L= 30 mm,L1 = 11.5 mm,h2 = 9.17 mm, L2 = 24.7 mm, Radii of outer and inner con- ductors of coaxial cable = 0.8 mm, 0.255 mm, Radius of parasitic element = 0.8 mm.
図11 2周波共用アンテナのS11特性 Fig. 11 S11 characteristics of dual band antenna.
図12 2周波共用アンテナの指向性利得特性 Fig. 12 Directivity characteristics of dual band an-
tenna.
3.78 dBi
,6.25
〜6.52 dBi
となっている.3. 2 2
周波共用MIMO
アンテナULPIL
アンテナでは,逆L
素子の高さが波長に 比べて極めて低く,アンテナ近傍に電磁界が集中し ているという特徴がある.そこで,2
個のULPIL
ア ンテナを近くに配置してもアンテナ間の相互結合は図13 2周波共用MIMOアンテナ
Fig. 13 Dual band MIMO antenna. pxp = 7 mm, pym = 10 mm,pyp = 45 mm,d = 41 mm, h1 = 6 mm,h2 = 9 mm,L= 28.9 mm,L1 = 14.4 mm,Lp= 27.1 mm,pyl= 4.6 mm.
図14 2周波共用MIMOアンテナのSパラメータ特性 Fig. 14 S parameter characteristics of dual band
MIMO antenna.
小さいと考えて,
MIMO
アンテナを提案した.図13
に,2.38
〜2.52 GHz
,4.87
〜5.17 GHz
帯の2
周波共用MIMO
アンテナを示す.素子間隔d = 41 mm
は,S21
が− 20 dB
以下となる最小の値に選んでいる.図14
に,MIMO
アンテナのS
パラメータを示す.二つの 周波数帯で,S11
は− 10 dB
以下,S21
は− 20 dB
以 下となっている.図15
に指向性利得を示す.指向性利 得は2.45 GHz
で4.11 dBi
,5 GHz
で8.11 dBi
となっ た.図16
にS
パラメータから計算した相関係数を示 す.相関係数は次式で定義される[18]
.ρ
e= |S
11∗ S
12+ S
21∗ S
22|
2(1 − (|S
11|
2+ |S
21|
2))(1 − (|S
22|
2+ |S
12|
2))
(1)
二つの周波数帯で0.02
以下の相関係数を得た.こ のアンテナでは,二つのアンテナ素子を長方形導体板図15 2周波共用MIMOアンテナの指向性利得特性 Fig. 15 Directivity characteristics of dual band
MIMO antenna.
図16 2周波共用MIMOアンテナの相互相関係数特性 Fig. 16 Correlation coefficient characteristics of dual
band MIMO antenna.
上に配置しているために,導体板上の
x
軸方向の電流 が大きくなり,1
個のアンテナが置かれている場合に 比べて指向性パターンが変化している.そのために,相関係数が小さくなっていると考えられる
[19]
.3. 3
高利得平面アンテナ3.1
で説明した2
周波共用アンテナにおいて,ULPIL
アンテナ上部に配置した寄生素子の共振周波数をULPIL
アンテナの共振周波数に一致させれば,高利得アンテナが実現できる.ここでは,寄生素子の長さ を短くするために長方形導体板を用いたアンテナを 図
17
に示す.寄生素子のx
軸方向の幅は接地導体板 と同じであるが,y
軸方向の長さは短い.図18
に,高 利得平面アンテナのS11
特性を示す.寄生素子の長 さdy
を変えることで共振周波数を変えることができ る.図19
に,このアンテナの指向性利得特性を示す.図17 高利得平面アンテナ
Fig. 17 High gain planar antenna.h= 4 mm,pxm= pxp= 20 mm,pym= 13 mm,pyp= 47 mm, dh = 9 mm, dx = 40 mm, dy = 51 mm, L= 39 mm,L1 = 11 mm.
図18 高利得平面アンテナのS11特性 Fig. 18 S11 Characteristics of high gain planar an-
tenna.
図
20
に,寄生素子の有無によるxz
面内の放射電界指 向性パターンの比較を示す.寄生素子を置くことで水 平方向の放射が弱くなっている.マイクロストリップ アンテナでは,給電線路との整合が取りやすい給電法 としてL
プローブ給電が知られている[20]
.L
プロー ブ給電では,プローブの長さと給電位置(垂直素子の 位置)を調整することで整合を取るが,提案アンテナ では,水平素子の長さと給電位置を調整できるため,垂直素子の位置を変化させずに整合を取ることができ る
[21]
.図19 高利得平面アンテナの指向性利得特性 Fig. 19 Directivity characteristics of high gain pla-
nar antenna.
図20 放射電界指向性パターン(xz面内)
Fig. 20 Electric field radiation pattern in xz-plane.
図21 地上波テレビ放送受信アンテナ Fig. 21 Receiving antenna for terrestrial TV broad-
casting. pxm = pxp = 20 mm, pym = 34 mm, pyp = 210 mm, h = 30 mm, h2 = 15 mm, L = 139 mm, L1 = 43 mm, L2 = 96 mm.
3. 4
テレビ放送受信用広帯域アンテナULPIL
アンテナ単体の帯域幅を地上波テレビ放送周波数
470 MHz
〜710 MHz
に広げるために,接地導 体板の寸法を調整し,逆L
アンテナと導体板の間に逆L
構造の寄生素子を配置した.図21
に,テレビ放送 受信アンテナの構造を示す.図22
,23
に,S11
特性,指向性利得特性を示す.このアンテナでは,導体板の 幅
pxm + pxp
を狭くすると,逆L
アンテナと導体板 の結合が弱くなり広帯域特性となる.放射電磁界はア図22 地上波テレビ放送受信アンテナのS11特性 Fig. 22 S11 characteristics of reception antenna for
TV broadcasting.
図23 地上波テレビ放送受信アンテナの指向性利得特性 Fig. 23 Directivity characteristics of reception an-
tenna for TV broadcasting.
図24 地上波テレビ放送受信アンテナの電流分布 Fig. 24 Current distribution on reception antenna
for TV broadcasting.
ンテナ上の電流の積分で表されるので,導体板が狭く なれば放射パターンがブロードになり指向性利得が低 下している.図
24
に寄生素子の有無による電流分布 の違いを示す.逆L
アンテナは低周波数で共振するよ うに設計し,寄生素子は逆L
アンテナによって励振さ れ,高周波で共振するようにしている.また,導体板 の長さは低周波数ではほぼ半波長となって,導体板上 の電流も放射に寄与している.4.
強近傍電磁界を利用したアンテナ 近傍界結合アンテナを用いる電磁界共振(共鳴)方 式は,2007
年にMIT
の研究グループがループアンテ ナを用いた共鳴方式による無線電力伝送を発表して以 降,多くの研究が発表されている[22], [23]
.この方式 の伝送効率を高めるためには,アンテナと回路部との インピーダンス整合をとり,送受信アンテナ間の電力 伝送特性をいかに改善するか,システム外への電磁波 の漏洩をいかに抑制するかが重要となる.ULPIL
ア ンテナでは,整合回路を必要とせず,アンテナの高さ を低くすることで狭帯域にできるので,2
個のULPIL
図25 無線電力伝送システム
Fig. 25 Wireless power transmission system. h = 7 mm (λ/43), w = 10 mm, L = 74.55 mm, L1 = 63.84 mm, pxm = pxp = 23mm, pym = 21 mm, pyp = 108 mm,外導体の半 径が0.8 mm,内導体の半径が0.16 mm
図26 無線電力伝送システムのSパラメータ Fig. 26 S parameters of wireless power transmission
system.
アンテナの高さを低くして,超狭帯域特性をもつ共振 器とし,向かい合わせに配置することで,無線電力伝 送システム用アンテナを提案した.図
25
に,ULPIL
アンテナを用いた無線電力伝送システムを示す.設計 周波数は1 GHz
である.図26
に,送受信アンテナのS
パラメータ特性を示す.S11
が−10 dB
となる周波 数帯域は,996 MHz
〜1,004 MHz
(0.8%
)で,設計周 波数1 GHz
でのS21
の計算値は− 0.143 dB
となった.それに対し,実測値は
− 1 dB
程度と伝送効率が低下 している.これは,製作精度を高くすることができな かったためである.5. CPW
で構成したULPIL
アンテナこれまでは,セミリジッド同軸ケーブルを用いた
ULPIL
アンテナで構成された高機能アンテナを紹介した.アンテナを試作する場合,同軸ケーブルでは製 作誤差を生じやすい.そこで,共平面給電線(
CPW:
Coplanar Waveguide
)を用いたULPIL
アンテナを 提案した.図27
に,誘電体基板表面にCPW
を印刷図27 誘電体基板に印刷した逆Lアンテナ Fig. 27 Printed inverted L antenna on dielectric sub-
strate. Wideband antenna: L = 23.3 mm, L1 = 16.4 mm, h= 2.4 mm, g= 0.32 mm, w= 3.57 mm,pxm =pxp= 8 mm,pym = 8 mm, andpyp= 35 mm. High gain antenna:
L= 21.6 mm,L1 = 17.4 mm,h = 2.4 mm, g= 0.32 mm,w= 3.57 mm,pxm =pxp = 14 mm,pym= 8 mm, andpyp= 31 mm.
図28 誘電体基板に印刷した逆LアンテナのS11特性 Fig. 28 S11 characteristics of printed inverted L an-
tenna on dielectric substrate.
図29 誘電体基板に印刷した逆Lアンテナの指向性利得 特性
Fig. 29 Directivity characteristics of printed inverted L antenna on dielectric substrate.
したアンテナを示す.
CPW
の外側の接地導体は垂直 素子を介して,接地導体板に短絡し,接地導体板と垂 直素子の間で励振している.設計周波数は2.45 GHz
である.誘電体基板の幅を広くすると,S11
特性は狭 帯域に,指向性利得は大きくなり,更に,誘電体基板 の長さを調整することで,設計周波数で指向性利得を 最大となるようにしている.図28
,図29
に,二つの アンテナのS11
特性と指向性利得特性を示す.CPW
を用いてアンテナ素子を形成すれば,等価的な給電点 を素子の途中に置くことができる[24]
.6.
む す び本論文では,長方形導体板上に配置した
ULPIL
ア ンテナと,ULPIL
アンテナで構成した高機能アンテ ナを紹介した.最初に,ULPIL
アンテナと低姿勢ア ンテナとして知られている逆F
アンテナの特性と比 較し,逆F
アンテナではアンテナの高さが低くなる と短絡スタブを短くしてもインピーダンスを50 Ω
に整合させることが難しくなるのに対し,
ULPIL
アン テナではアンテナの高さによらず整合が取れることを 明らかにした.次に,ULPIL
アンテナを用いた高機 能アンテナの例として,アンテナの上に寄生素子を配 置したアンテナを紹介し,寄生素子をULPIL
アンテ ナと別の周波数で動作させることで2
周波共用アンテ ナを,同じ周波数で動作させることで高利得アンテナ を,また,ULPIL
アンテナと寄生素子間の結合を利 用した広帯域アンテナを紹介した.また,長方形導体 板上に2
個の2
周波共用アンテナを配置した2
周波共 用MIMO
アンテナを紹介した.2
周波共用アンテナ では,ULPIL
アンテナの長さを低周波数で4
分の1
波長となるように設定し,寄生素子が高周波数で半波 長となるようにしている.二つの共振周波数が近くな ると広帯域アンテナとして動作する.これまでに,低 周波数の2
倍程度の高周波数で2
共振を実現している が,周波数差をどこまで広くできるかは今後の検討課 題である.次に,
ULPIL
アンテナ近傍に電磁界が強く励振さ れる特徴を生かしたマイクロ波帯の無線電力伝送シス テム用アンテナの特性を説明した.最後に,ULPIL
ア ンテナを構成する同軸ケーブルをコプレーナ線路に置 き換えたアンテナを紹介した.提案した不平衡給電アンテナでは,アンテナ素子に 同軸ケーブルまたは
CPW
伝送線路を用いることで,等価的な給電点を給電線路との整合の取りやすい素子 途中に置くことができるので,アンテナ設計が容易で ある.
文 献
[1] 中野久松,“メタマテリアルアームから成るライン,ルー プ,及びスパイラルアンテナからの放射,”信学論(B),
vol.J99-B, no.8, pp.564–571, Aug. 2016.
[2] 野口啓介,“複合モード励振による小形・平面アンテナの 広帯域化,”信学論(B),vol.J99-B, no.9, pp.655–664, Sept. 2016.
[3] J.D. Kraus, Antennas, pp.303–307, McGraw-Hill, New York, 1950.
[4] A. Thunvichit, T. Takano, and Y. Kamata, “Ultra low profile dipole antenna with a simplified feeding structure and a parasitic element,” IEICE Trans., vol.E89-B, no.2, pp.576–580, Feb. 2006.
[5] A. Thunvichit, T. Takano, and Y. Kamata, “Char- acteristics verification of a half-wave dipole very close to a conducting plane with excellent impedance matching,” IEEE Trans. Antennas Propag., vol.55, no.1, pp.53–58, 2007.
[6] 山下徹也,田口光雄,“有限導体板上の超低姿勢逆Lアン
テナ,” 2009信学ソ大(通信),B-119, Sept. 2009.
[7] D.R. Jackson and N.G. Alexopoulos, “Simple approx- imate formulas for input resistance, bandwidth, and efficiency of a resonant rectangular patch,” IEEE Trans. Antennas Propag., vol.39, no.3, pp.407–410, March 1991.
[8] K. Fujimoto, A. Henderson, K. Hirasawa, and J.R.
James, Small antennas, pp.116–127, Research Stud- ies Press, Letchworth, 1987.
[9] M. Taguchi and K. Kozaki, “Dual band antenna com- posed of ultra low profile inverted L antenna for Wi-Fi router,” Proc. 29th International Review of Progress in Applied Computational Electromagnet- ics, pp.785–788, March 2013.
[10] E. Rohadi and M. Taguchi, “Dual band MIMO an- tenna composed of two low profile unbalanced fed inverted L antennas for wireless communications,”
Wireless Engineering and Technology, vol.5, pp.54–
61, July 2014.
[11] M. Taguchi and T. Kida, “High gain planar antenna composed of unbalanced fed inverted L antenna,”
Proc. IEEE APWC 2013, pp.810–813, Torino, Italy, Sept. 2013.
[12] M. Taguchi and Y. Sakamoto, “ Compact TV an- tenna composed of unbalanced fed ultra low pro- file inverted L antenna,” Proc. 2013 International Symposium on Electromagnetic Theory, 21AM1E-04, pp.92–93, Hiroshima, May 2013.
[13] M. Taguchi and I. Mine, “Wireless power transmis- sion system with two receiving antennas,” Proc. 6th Global Symposium on Millimeter-Waves 2013, T6-5, pp.1–4, Sendai, April 2013.
[14] M. Taguchi and T. Kida, “Printed inverted L an- tenna on dielectric substrate,” Proc. 2014 Interna- tional Conference on Advanced Technology for Com- munication, pp.582–585, Hanoi, Vietnam, Oct. 2014.
[15] WIPL-D Pro v11: http://www.wipl-d.com
[16] M. Taguchi and E. Rohadi, “Unbalanced fed ultra low profile inverted L antenna on a rectangular con- ducting plane Equivalent circuit expression,” Proc.
3rd Asia-Pacific Conference on Antennas and Propa- gation, pp.533–536, Harbin, China, July 2014.
[17] K. Oh and K. Hirasawa, “A dual-band inverted-L- folded-antenna with a parasitic wire,” IEEE AP-S Int. Symp., vol.3, pp.3131–3134, 2004.
[18] J. Thaysen and K.B. Jakobsen, “Envelope correla- tion in (N,N) MIMO antenna array from scattering parameters,” Microwave Opt. Tech. Letter., vol.48, pp.832–834, 2006. DOI: 10.1002/mop.21490.
[19] K. Tsunekawa and K. Kagoshima, “Analysis of a cor- relation coefficient of built-in diversity antennas for a portable telephone,” Proc. 1990 IEEE Antennas and Propagation Society International Symposium, pp.543–546, 1990.
[20] C.L. Mak, K.M. Luk, and F. Lee, “Experimental
study of a microstrip patch antenna with an L-shaped probe,” IEEE Trans. Antennas Propag., vol.48, no.5, pp.777–783, May 2000.
[21] 田口光雄,下井悠汰,藤本孝文,“マイクロストリップア ンテナからの電磁波放射のアニメーション,”映像学技報,
BCT2017-12, Jan. 2017.
[22] 稲垣直樹,堀 智,“近傍界結合アンテナを用いる無線接 続の基礎,”信学論(B),vol.J94-B, no.3, pp.436–443, March 2011.
[23] 陳 強,小澤和紘,袁 巧微,澤谷邦夫,“近傍界結合に よる線電力伝送のアンテナの設計法についての検討,”信 学技報,A·P2011-9, May 2011.
[24] 田紘也,田口光雄,“平面状の素子形状を有する不平衡給 電逆Lアンテナ,”信学技報,MW2016-117, Nov. 2016.
(平成29年1月23日受付,4月27日再受付,
6月2日早期公開)
田口 光雄 (正員:シニア会員)
1970第一大学・工卒.1972同大大学院 修士課程在学中.現在,通信分野の研究に 従事1975佐賀大・理工・電気卒,1977同大 学院修士課程了.同年佐賀大教務員.1979 同助手.1987長崎大助教授.1996文部省 在外研究員(UCLA).2007長崎大教授,
現在に至る.工博.各種アンテナの開発,数値解析法の研究 に従事.著書「Antenna Engineering Handbook 4th ed., 30 章」など.