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液晶基を導入した新規塗膜設計と塗装鋼板への応用

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 吉 田 啓 二

学 位 論 文 題 名

液晶基を導入した新規塗膜設計と塗装鋼板への応用 学位論文内容の要旨

  家電 、建 材 分野では、予め塗装された塗装鋼板が使用 されており、環境調和の点からもその 適用拡 大が期待されている。塗装鋼板は、成形加工後に最終製品となるため、加工時に傷や亀裂

(クラ ック)の無い、高品質の外観が求められる。しかしながら、塗装鋼板において、塗膜硬度 と加工 性は相反する特性であり、これらを高度に両立させることは、従来の技術では困難であっ た。申 請者は、液晶化合物の特性に着目し、これを塗膜成分として導入した独自の塗膜設計を行 う こ と に よ り 、 本 課 題 の 解 決 が 可 能 で あ る と 考 え 、 研 究 に 着 手 し た 。   本研 究では、塗膜成分として導入可能な液晶化合物を合成し、その特性を検討するとともに、

本成分 を導入した新たな塗膜設計を行い、その基本特性について評価した。この結果、従来の塗 装鋼板 の限界を超えた、優れた塗膜硬度.と曲げ加工性が得られることを初めて見出した。また、

本塗膜 が動的粘弾性挙動においても、従来の塗膜とは異なる特異な挙動を示すことを明らかにし た。

本論文は6章から構成されている。

  第1章では、塗装鋼板の現状と課題および液晶 技術について述べるとともに、本論文の構成を 示した。

    丶斗  一

  第2章で は 、ア クリ ル骨 格に スベ ーサ ーを 介してメソジェンを結合さ せた側鎖型液晶ポリマ ーを紫外線照射によ って形成させ、その塗膜の相転移などの熱的特性および塗装鋼板としての基 本特性を評価した。 この結果、液晶基を導入した塗膜では、優れた曲げ加工性と硬度のバランス が得られることを明 らかにした。

  第3章で は 、熱 硬化 可能 な樹 脂系 を選 択し 、液晶基の塗膜への導入効果について検討した。

本章では、水酸基末 端を有する液晶性化合物を合成しこれらを塗装鋼板の硬化剤として代表的な メラミン樹脂硬化剤 と反応させることで新たな硬化剤(液晶基含有メラミン樹脂硬化剤)を合成 した。合成した硬化 剤はポリエステルポリオールとの反応で塗膜を形成させ、その挙動および塗 装鋼板としての基本 特性を評価した結果、本研究においても、液晶基の導入により、塗膜硬度と 曲げ加工性の性能バ ランスが向上すること見出した。

(2)

    第4章で は 、 液晶 基の 効果を工 業的に 適用可能 な型で実 現する ための研 究につ いて述べ た。

  本研 究では 、ナフタ レンジ カルボン 酸骨格をメゾジェンとし、これにジオール化合物を組み合わ   せたオリゴマーを合成した。液晶性を示すこれらのオリゴマーをポリエステル樹脂塗膜に導入し、

  その 特性を 評価した 結果、 現在、実 用化されている塗装鋼板の限界を超えた、優れた加工性と塗

、膜 硬度の バランス を有する 塗膜を 工業化可能な製造プ口セスで得ることに成功した。本研究の成   果 は 、 液 晶 塗 膜 を 有 す る 家 電 用 塗 装 鋼 板 と し て 、1997年 に 世 界 で 初め て 商 品化 さ れ た。

  第5章では、振動リード法による動的粘弾性測定において、液晶性オリゴマーを含有した塗膜は 貯蔵弾性率E.とともに損失弾性率E¨も増加するとぃう、従来の有機樹脂塗膜とは異なる挙動を示す ことを見出した。偏光赤外分光分析では液晶性オリゴマーを含有した塗膜からは配向性を示唆する結 果は得られなかった。これらの結果より、液晶基含有塗膜では、液晶基が配向したドメインが塗膜中 にミクロに分散した形で存在し、配向した液晶基の補強効果と配向効果により、塗膜の強靭化と応力 緩和が同時に達成されるとぃう機構を提案した。

  第6章で は、耐 食性優位 なめっ き鋼板と して建材 分野を 使用が増 加して いる55%ア ルミ・亜 鉛 合金めっき鋼板の重要課題である曲げ加工性について、めっき皮膜・塗膜両面から解決を図っ た 研究に関し、塗膜技術を中心に述べた。本研究における塗膜の技術課題は曲げ加工性と素地と の密着性であり、高延性のポリエステル樹脂末端にエポ.キシを反応させた樹脂を適用することで 上記課題を解決した。本研究の成果は、加工性、加工部耐食性に優れた建材用塗装鋼板として、2001 年に実用化された。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

液晶基を導入した新規塗膜設計と塗装鋼板への応用

  あ ら か じ め 鋼 板 上 に 塗 装 し て 使 用 さ れ る 塗 装 鋼板 は 経 済性 や 環 境調 和 の 観点 か ら 、 家 電 や 建 材 分 野 で そ の 使 用 拡 大 が 期 待 され て い る 。塗 装 鋼 板は 成 形 加工 後 、 その ま ま 最 終 製 品 と な る た め 、 加 工 時 の 傷 や 亀 裂の 無 い 高 品質 の 外 観の 保 持 が求 め ら れる 。 し か し 、 塗 装 鋼 板 に お い て 、 塗 膜 硬 度 と 加工 性 は 相 反す る 特 性で あ り 、こ れ ら を高 度 に 両 立 さ せ る こ と は 従 来 の 技 術 で は 困 難 であ っ た 。 そこ で 、 本研 究 は 液晶 化 合 物の 特 性 に 着 目 し 、 こ れ を 塗 膜 成 分 と し て 導 入 した 独 自 の 塗膜 設 計 を行 う こ とに よ り 本課 題 の 解 決 を 目 指 し た 。 本 論 文 は 塗 膜 成 分 と して 導 入 可 能な 液 晶 化合 物 を 合成 し 、 その 特 性 を 検 討 す る と と も に 、 本 成 分 を 導 入 し た新 た な 塗 膜設 計 を 行い 、 そ の基 本 特 性に つ い て 評 価 を 試 み 、 そ の 結 果 を ま と め た も ので あ る 。 その 主 な 結果 は 次 の点 に 要 約さ れ る

1) 紫 外 線 照 射 に よ ル ア ク リ ル 骨 格 に ス ベ ー サ ー を 介 し て メ ソ ジ ェ ン を結 合 さ せた 側 鎖 型 液 晶 ポ リ マ ー を 鋼 板 上 に 形 成 さ せ 、 その 塗 膜 の相 転 移 な どの 熱 特 性お よ び 塗装 鋼 板 と し て の 基 本 特 性 を 評 価 し た 。 そ の 結 果、 液 晶 基を 導 入 し た塗 膜 で は、 優 れ た曲 げ 加 工 性 と 硬 度 の バ ラ ン ス が 得 ら れ る こ と を 明 ら か に し た 。

2) 液 晶 基 の 塗 膜 へ の 導 入 効 果 に つ い て 、 熱 硬 化 可 能 な 樹 脂 系 を 用 い て 検 討 した 。 具 体 的 に は 、 水 酸 基 末 端 を 有 す る 液 晶 性 化 合 物 を 調製 し 、 こ れを 塗 装 鋼板 の 硬 化剤 と し て 代 表 的 な メ ラ ミ ン 樹 脂 硬 化 剤 と 反 応 さ せ る こ とで 新 た な 硬化 剤 ( 液晶 基 含 有ヌ ラ ミ ン 樹 脂 硬 化 剤 ) を 合 成 し た 。 得 ら れ た 硬 化 剤 と ポリ エ ス テ ルポ リ オ ール と の 反応 に よ り 生 成 し た 塗 膜 成 分 の 液 晶 挙 動 お よ び 塗 装 鋼 板 とし て の 基 本特 性 を 評価 し た 結果 、 こ の 塗 膜 系 に お い て も 、 液 晶 基 の 導 入 に よ り 塗 膜 硬度 と 曲 げ 加工 性 の 性能 バ ラ ンス が 向 上 す る こ と を 明 ら か に し た 。

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3) 工 業的 な 応 用 の観 点 か ら、 液 晶 基を 有 す る塗 料 お よび 塗 膜 の研 究 と 開発 を行った 。

次 巌

樹 夫

   

覚 山

市 宮

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

具体的には、ナフタレンジカルボン酸骨格をメゾジチンとし、これにジオール化合物 を組み合わせたオリゴマーを合成した。この液晶基を有するオリゴマーをポリェステ ル樹脂塗膜に導入し、その特性を評価した結果、現在、実用化されている塗装鋼板の 性能より優れた加工性と塗膜硬度のバランスを有する塗膜は、工業的な製造プ口セス での生産が可能であることが示唆された。この知見をもとに、液晶塗膜を有する家電 用 塗 装 鋼 板 が 世 界 で 初 め て 実 用 化 さ れ 、 本 研 究 の 有 効 性 が 実 証 さ れ た 。

4

)振 動リ ード 法を用いた動的粘弾性測定により、液晶オリゴマーをポリェステル樹 脂に導入した塗膜が従来の塗膜と異なる粘弾性挙動を示し、応力緩和作用を有してい ることを明らかにした。また、液晶オリゴマーの塗膜中での配向挙動についても考察 した。

5

55

% アル ミ・ 亜鉛合金めっき鋼板は、建材分野において耐食性に優れためっき鋼 板としての使用が増加している。その重要課題である曲げ加工性について、めっき皮 膜・塗膜両面からの解決を塗膜技術の観点から行った。本研究における塗膜の技術課 題は曲げ加工性と素地との密着性であり、高延性のポリェステル樹脂末端にェポキシ を反応させた樹脂を適用することで本課題を解決した。この成果をもとに、加工性、

加工部耐食性に優れた建材用塗装鋼板が実用化され、本研究の有効性が実証された。

  

これ を要するに、著者は液晶基を有する紫外線硬化型塗膜、液晶基を導入したヌラ ミ ン系 熱硬化型塗膜、および液晶性オリゴマーを導入した塗膜を設計し、得られた塗 膜 の動 的粘弾性などの物性を明らかにし、加工性と耐食性に優れた建材用塗膜鋼板へ の応用を展開しており、高分子化学および塗装工学に寄与すること大なるものがある。

  

よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

参照

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