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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 鈴 木 章 之

     学位論文題名

S100A2 expression asapredictive marker for late cervical     metastasis in stageIand II invasive squamous cell     carclnomaoftheoralCaVity

    (StageI・ u口 腔 扁 平 上 皮 癌 に お け る 後 発 頚部 リ ン パ 節 転 移 予 測 因 子 と してのS100A2発 現)

学位論文内容の要旨

(背景)頭頚部癌において、頸部リンパ節転移は最も重要な予後規定因子である。頸部リン パ節 転移 の診 断にはCTやMRI、頸 部エ コー 、PET等の 画像検査が施行されているが、諸検 査にてりンパ節転移が陰性(NO)と診断された症例の一部に後発頸部リンパ節転移(late cervical metastasis;以下LCM)が認められる。stageI.IIの早期口腔癌では、約30%にLCM が認められ、それに如何に対応するかが予後を大きく左右するが、それらの潜在性転移症例 に対し、予防的頚部郭清を行うべきかには未だ議論がある。現在、事前に潜在性転移を診断 する有用な方法はなく、もし、その危険性を予測可能なマーカーが存在すれぱ、頸部リンパ 節に対して適切な治療を選択する事が可能となる。これまでにも臨床病理学的因子や転移の 過程に関与する各種の遺伝子産物に関する検討がなされており、いくっかの因子の有用性が 報告されてはいるものの、臨床的にNOと診断された早期の口腔扁平上皮癌(squamous cell carclnoma of the oral cavity;以下OSCC)におけるLCMの予測因子として実用化されている ものはなく、そのようなマーカーを見っける事は重要な課題のーつである。S100A2はSl00 カルシウム結合蛋白の一員で、細胞の増殖・分化・運動・形質変化さらにはアポトーシスや 癌転移に関与すると考えられている。これまでに腫瘍細胞内のS100A2発現が喉頭癌やりン パ節転移のなぃ食道癌における予後と相関する報告がある。また、S100A2発現が肺の癌化の 早期 過程 で抑 制され てお り、肺癌の進行要因となる可能性が示唆されている。OSCCのLCM に 関 す るSIOOA2発 現 の 報 告 は なく 、本 研究 ではstageI・nのOSCCに おい てLCMとS100A2 との関連を検討した。

(対 象)1994年1月 から2004年3月までの期間に治療を施行したTl‑2NO(stageI・H)OSCC 新鮮例のうち、他の頭頸部癌治療歴がなく、1次治療を完遂でき、全身化学療法や頚部放射 線照射を施行せず、1年以上の経過観察が可能であり、かっ治療前の病理組織標本が検索可 能であった52例を対象とした。頸部リンパ節は触診で触知できず、CTスキャンおよぴ頸部 エコーでlcm未満かっ中心壊死を認めない場合にNOと判断した。

(免疫組織染色)10%緩衝ホルマリン固定パラフイン包埋標本より切片を作成後、抗原の賦 活化 を行 った 。抗S100A2抗体としてSH‑L1(SIGMA St.Louis、USA、1:100希釈)を用い、

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通常のABC法にて免疫組織染色を行った。S100A2発現は最も腫瘍が濃染した領域において、

全腫 瘍細 胞の うちS100A2陽 性細 胞の 比率 を測 定し、20% 以上 の場 合に 陽性と判断した。

(統計学的解析)S100A2発現の有無と対象患者の臨床病理学的因子(年齢・性別.T因子・

分化 度・ 腫瘍 の厚 み.LCMや 再発 の有 無) との関連をx2検定(またはFisher検定)にて解 析し た。 またLCMと各因子との関連も同様に解析した。5年粗生存率と後発頸部リンパ節転 移陰性生存率をKaplan‑Meier法にて算出した。p値が0.05未満の場合に有意の差があるとみ なした。

(対象の特徴と結果)対象52例の年齢は28―85歳(中央値60歳)であり、性別は男性33例、

女性19例であった。経過観察期間は9.5−109.8月(中央値32.1月)で、全症例の5年粗生存 率は81% であ った 。こ のう ち21例(40.4%)にLCMを認め、治療からLCMまでの期間は0− 23月(中央値4.6月)で、うち19例は1年以内であった。5例に局所再発を認め(再発までの 期間: 13.3−87.6月、中央値48.1月)このうち3例は局所再発よりも以前にLCMを認めてい た。 単変 量解 析ではLCMを認めた症例は認めない症例と比較して有意に5年粗生存率が低か った(P=0.0061)。多変量解析においても臨床病理学的因子の中でLCMだけが5年粗生存率に 有意に影響を及ばす因子であった。

  腫瘍細胞におけるSIOOA2の発現をみると14例(26.9%)が陰性で、38例(73.1%)が陽性 であり、そのうちLCMはそれぞれ10例(71.4%)、11例(28.9%)に認められた。単変量解 析 で はS100A2発現 が陰 性の 症例 は陽性 の症 例と 比較 して 有意 にLCMの比 率が 高か った 。 S100A2発 現の 有無 と他 の臨 床病 理学 的因 子との相関は認められなかった。また、LCMの比 率においても、他の臨床病理学的因子との相関は認められなかった。多変量解析ではS100A2 発現の有無がLCMに有意に影響を及ばす唯一の因子であった。

(考察) stageI・Hosccは手術または放射線治療により良好な局所制御が得られるが、LCM が21―41%に 認め られ 、そ れが 最も 重要 な予後規定因子となる。本研究においてもLCMは 40.4%に 認め られ 、LCM例は 有意 に5年粗 生存率が低かった。したがって、LCMを予測する 因子を発見し、LCMを生じる危険性が高い症例に対し、予防的頸部郭清等の適切な治療を行 う事 が重 要と 考え られ る。OSCCにお いてLCMを予測する幾っかの臨床病理学的因子や免疫 組織 化学 的マ ーカーが検討されている中で、後者ではE‑cadherinやFIt‑4とLCMとの相関が 報告されているが、統一の見解はなく、より信頼性の高いマーカーの報告が待たれている。

本研 究で は多 変量 解析 にてS100A2がLCMに 影響 を及 ばす 唯一 の因 子で あり、S100A2がLCM を予測するマーカーとして示唆された。われわれはE‑cadherinを含む他の免疫組織化学的マ ー カ ー に つ い て も 検 討 し た が 、 LCMと の 相 関 は 認 め ら れ な か っ た 。   SIOOA2は腫瘍組織におけるその発現の低下が報告されている。その腫瘍抑制作用の詳細に つい ては 不明 な点 も多 いが 、腫 瘍抑 制遺 伝子であるp53がS100A2発現を亢進させるとの報 告があり、S100A2は細胞の癌化を防ぐ働きがあると考えられている。また、喉頭癌の予後と 相関 する との 報告や気道上皮の癌化モデルの研究などからS100A2は癌抑制因子であると推 察さ れて いる 。本 研究 でもS100A2とOSCCにお けるLCMと の関 連が 示唆 されたが、S10 0A2 がどのようにLCMを制御しているのかについては不明であり、その作用機序の解明は今後の 研究 課題 であ る。 また 、S100A2単独 ではLCMのすべてを予測する事は困難であり、更なる マーカーの検索が必要である。S100A2と最良の組み合わせとなるマーカーの検出には、網羅 的な遺伝子発現解析が有用と考えられる。

  (結語)早期口腔扁平上皮癌症例において、S100A2発現と臨床病理学的因子や後発頚部リ

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ンパ節転移との関連を検討した。S100A2発現の低下は後発頸部リンパ節転移を予測する重要 な因子である事が示唆された。

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学位論文審査の要旨

    

学 位論 文 題名

S100A2 expression asapredictive marker for late cervical     metastasis in stageIandHinvasive squamous cell     carcinoma of the oral cavity

    (StageI

H

口 腔 扁 平 上 皮 癌 に お け る 後発頚部リンパ節転移予測因子としてのS100A2発現)

口腔 癌に おい て、 頸部 リ ンパ節転移は最 も重要な予後規定因子である。頸部リンパ節転移の診断 に はCTやMRI、頸 部エ コー 、PET等の 画像 検査 が施 行さ れて いる が、 諸検 査に てり ンパ節転移が陰 性 (NO)と診断された症例の一部に後発頸部リンパ節転移(late cervical metastasis;以下LCM)が認められ る。stageIuの初 期口 腔癌 では、約30%にLCMが認められ、原発巣の制御が良好であるにも拘わ ら ず予後を悪化させる要因となっている。 現在、事前にLCMを診断する有用な方法はなく、もし、その危 険性を予測可能なマーカーが存在すれぱ 、頸部リンパ節に対して適切な治療を選択する事が可能とな る。 本研 究で はそ のよ う なマーカーを見 っける目的で、潜在性癌抑制遺伝子産物と考えられてい る S100A2に 注目 し、stageI・II口腔 扁平 上皮 癌52例を 対象 とし 、S100A2発現 およ び臨床病理学的 特 徴とLCMと の関 連を 検討 した 。S100A2はSl00カ ルシ ウ ム結合蛋白の一員で、細胞の増殖・分化・ 運 動・形質変化さらにはアポトーシスや癌 転移に関与すると考えられている。これまでに腫瘍細胞内の S100A2発現が喉頭癌やりンパ節転移のな い食道癌における予後と相関する報告があり、また、S100A2 発現が肺の癌化の早期過程で抑制されて おり、肺癌の進行要因となる可能性が示唆されている。方法 は 対 象 例 の 腫 瘍 切 除 標 本 を 用 い 、 抗S100A2抗体 によ る免 疫組 織 染色 を行 い、 全腫 瘍細 胞の うち S100A2陽 性 細 胞 の 比 率 を 測 定 し 、20% 以上 の場 合に 陽性 と判 定 した 。S100A2発現 の有 無と 対象 例 の 臨 床 病 理 学 的 因 子 ( 年 齢 ・ 性 別 .T因 子 ・ 分 化 度 ・ 腫 瘍 の 厚 み .LCMや 再 発 の 有 無 ) と の 関 連 をx2検 定 ( ま た はFisher検 定 ) に て 解 析 し た 。 ま たLCMと 各 因 子 と の 関 連 も 同 様 に 解 析 し た 。 そ の 結 果 、 腫 瘍 細 胞 に お け るS100A2の 発 現 は14(26.9% ) が 陰 性 で 、38(73.1% ) が 陽 性 で あ り 、 そ の う ちLCMは そ れ ぞ れ10(71.4% ) 、11(28.9%) に認 めら れた 。単 変量 解 析 で はS100A2発 現 が 陰 性 の 症 例 は 陽 性 の 症 例 と 比 較 し て 有 意 にLCMの 発 生 頻 度 が 高 か っ た

(P 0.0098)。S100A2発現 の有 無と 他の 臨床 病理 学 的因子との関係は認められなかった。また 、 LCMの 発 生 頻 度 に お い て も 、 他 の 臨 床 病 理 学 的 因 子 と の 関 係 は 認 め られ なか った 。多 変量 解析 で はS100A2発 現 の 有 無 がLCMに 有 意 に 影 響 を 及 ば す 唯 一 の 因 子 で あ っ た (P0.0013)。 以 上 の 結 果 よ り 、S100A2発現 の低 下は 、stageIH口 腔扁 平上 皮癌 に おけ る後 発頸 部リ ンパ 節転 移を

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俊 哲 諭 弘 田 藤 田 秋近 福 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

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予 測する重 要な因子 である事が 示唆され た。しかしながら、S100A2がどのようにLCMを制御 し ているの かについ ては不明であり、その作用機序の解明は今後の研究課題である。また、

S100A2単 独ではLCMの すべてを 予測する事 は困難であり、更なるマーカーの検索が必要であ る。S100A2と最良の組み合わせとなるマーカーの検出には、網羅的な遺伝子発現解析が有用と 考えられる。

  口頭発表後、副査の近藤教授からS100A2発現の判定におけるカットオフ値の根拠について、

進 行例・再 発例や遠 隔転移例におけるS100A2発現について、副査の福田教授から、センチネ ルリンパ節生検との併用について、初期対象例の頸部リンパ節転移診断精度について、主査の 秋 田教授か ら、S100A2のりンパ節転移における作用機序について、組み合わせが期待出来る 他のマーカーについてそれぞれ質問がなされた。申請者は研究結果や臨床的データ、文献的知 識に基づいて、いずれに対しても適切に解答した。

  この論文は、stageI・u口腔扁平上皮癌における後発頸部リンパ節転移を分子生物学的マーカ ーにより予測できる可能性を示した点が高く評価され、今後の口腔扁平上皮癌治療に応用し、

その予後を改善させる事が期待される。

  審査員一同はこれらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な 資格を有するものと判定した。

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