Title
酵素法によるα-amylase阻害剤の分子設計に関する研究( 内
容の要旨 )
Author(s)
高田, 正保
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第163号
Issue Date
1999-03-15
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2504
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(匡=陪) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与 の 要件 研究科及 び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 貞 高 田 正 保 (長野県) 博士(農学) 農博甲第163号 平成11年3月15日 学位規則第4条第1項該当 連合農学研究科 生物資源科学専攻 静岡大学 酵素法によるα-amylase阻害剤の分子設計に関 する研究 主査 副査 副査 副査 授授授 授 教教教教 学学学学 大大 大 大 岡阜州 岡 静 岐信 静 市治義男 泰宏 明英 氷藤野藤 堆加細衛 論 文 の 内 容 の 要 旨 近年α-アミラーゼ阻害剤は,糖尿病のような代謝疾患の治療薬として利用され ているばかりでなく,糖代謝制御物質として炭水化物依存性疾患患者に有効であると 考えられ,その開発に注目が集まっている。本研究は,ヒトα-アミラーゼに高い親 和力を有し,かつ体内消化酵素によって加水分解されない基質アナログ阻害剤を分子 設計し,そのユニークな合成法を開発するとともに,その阻害活性と構造との関係を 有機化学的精密度で解明したもので,内容は次のように3部に要約される。 1.マルトオリゴ糖の非還元末端グルコース残基の4位に酵素法によりガラクトシ ル基を導入,ガラクトシルマルトオリゴ糖とし,次に還元末端アノマー水酸基を化学 的に酸化することでマルトオリゴ糖の両夫端を修飾したガラクトシルマルトオリゴサ ッカリドノラクトン(重合度3∼4)を合成した。これらラクトン体は,晴乳類αア ミラーゼに対し,10 4∼10 7Mオーダーの阻害定数(耳値)を有する括抗型阻 害剤であることを示した。また合成したラクトン体は,水溶媒下では時間とともに対 応するアルドン酸型に構造変換し,その阻害活性は低下することから,アミラーゼ阻 害活性にはラクトン型が必須であることを主にNMR(核磁気共鳴)法により実証し た。この様に酵素阻害機構を構造の明確な合成阻害剤を用い,その反応機構を明らか にした。 2.1の研究成果をもとに,マルトトリオノラクトンの末端グルコース残基の6位 にべンジル基あるいはガラクトシル基を導入し,アミラーゼ阻害活性に及ぼす置換基
-121-の影響をヒトα-アミラーゼを用い検討した。アミラーゼ阻害試験において疎水基で あるベンジル基の導入は阻害活性を高め,親水基であるガラクトシル基のそれは著し い活性の低下をもたらすことを明らかにした。このことは,疎水性ベンジル基の導入 はアミラーゼとの親和力を向上させ,逆に親水性ガラクトシル基の導入は低下させる ことを示すものである。この様に,こうしたアミラーゼの基質アナログ阻害剤を用い た酵素反応の検討は,ヒト唾液や膵液型アミラーゼサブサイト構造を解明するための 有力な道具として利用できることを実証した。 3.上記合成した新規アミラーゼ阻害剤42-0-β-D一ガラクトシルマルトビオノラク トンの工業的生産を行うべく,本化合物のラクトン化過程を化学的酸化法ではなく, オリゴ糖酸化酵素を用いた酵素法により,還元糖アノマー水酸基を酸化した。本合成 法は極めて効率的に反応が進行し,大量調製法に適していることを示すとともに,工 程管理面での安全性など実用性にも富む汎用性の高い方法であることを明らかにした。 以上のようにマルトースやマルトトリオースを出発基材として,これらグルコシル 両末端を化学的及び酵素的に修飾,分子設計することで,極めてユニークな構造を有 するヒトα-アミラーゼに対する基質アナログ阻害剤の合成に成功した。これとは別 に工業的生産を意図とした実用性に富む合成法を開発するため,酵素利用技術のみを 活用したガラクトシルマルトビオノラクトンの大量調製法をも確立した。 審 査 結 果 の 要 旨 本論文は,ヒトα-アミラーゼに高い親和性を有し,かつ体内消化酵素によって 加水分解されない基質アナログ阻害剤として,ガラクトシルマルトオリゴ糖(重 合度3∼4)の還元末端グルコース残基をラクトン化したガラクトシルマルトオ リゴサッカリドノラクトンを分子設計し,これがヒトα-アミラーゼ阻害剤とし て有効であることを実証した成果を纏めたものである。 その内容は序論に続き第一章では,マルトオリゴ糖の両末端を化学的及び酵素 的方法で修飾したガラクトシルマルトオリゴサッカリドノラクトンを有用な晴 乳類α-アミラーゼの基質アナログ阻害剤として分子設計し,その特異な合成 法を開発している。これら阻害剤は,晴乳類α-アミラーゼに対し10 4∼ 10 6Mオーダーの阻害定数(耳 値)を有する括抗阻害剤であることを実証 した。この場合合成したラクトン体は,水溶媒下では時間とともに対応するア ルドン酸型に構造変換し,その阻害活性は低下することから,アミラーゼ阻害 活性にはラクトン型が必須であることを主に NMR(核磁気共鳴)法により明 らかにしている。 第2章では,マルトトリオノラクトンの末端グルコース残基の6位修飾に よるα-アミラーゼ阻害効果を検討した。このように分子設計したベンジル基 及びガラクトシル基を導入したオリゴサッカリドノラクトン体を合成したとこ ろ,前者の疎水基の導入は酵素との親和力を向上させ,逆に後者の親水基の導 入はそれを低下させることが判り,アミラーゼサブサイト構造周辺に疎水性領
一122-域の存在を示唆するという新しい結果を得ている。 第3章は,上記合成したアミラーゼ阻害剤ガラクトシルマルトオリゴサッ カリドノラクトンの工業的生産を考える場合,問題となるのはラクトン化する 際,安全性に乏しい化学的酸化法を採用していることにある。そこで,オリゴ 糖酸化酵素を用いてガラクトシルマルトオリゴ糖の還元末端1位水酸基を酸化 したところ,極めて効率的に反応が進行することを明らかにした。 第4章では,前章に大量調製したガラクトシルマルトオリゴサッカリドノ ラクトンのf乃 Vfvo での動物試験を行う前に本化合物の急性毒性試験及び変 異原性試験を行い,何れも問題のないことを示している。 この様に本論文は,アミラーゼの基質であるマルトオリゴ糖を出発基材と して,この両末端を化学的及び酵素的に修飾する方法を分子設計することで, 極めてユニークな構造を有する新規ヒトα-アミラーゼ阻害剤の合成法を確立 している。本研究成果は,ヒトα-アミラーゼ阻害剤の応用開発に今後大きく 貢献するものと評価できる。 以上,本論文審査会は,提出論文並びに基礎となる学術論文等について慎 重に審議し,審査委貞全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学 位論文として十分価値のあるものと判定した。 学位論文の基礎となる学術論文 1)酵素法によるα-アミラーゼ阻害剤の分子設計 高田正保,小川浩一,斉藤三四郎,村田健臣,碓氷泰市,応用糖質科学,第 44巻第2号,p213-221(1997) 2)chemo-EnzymaticSymthesisofGalactosylmaltooligosacchaaridonolactoneasa SubstrateAnalogveInhibitorfbrMammalianα-Amylase M・Takada,K・Ogawa,S・Saitou,TMurata,andT・Usui,J・Biochem・,123,P508-515 (1998) 3)ImIBITIONOFHUMANα_AMYLASESBYSYNTIiETIC63_0_BENZYL_ AND63-0-β-D-GAuCTOSYL.MAuOTRIONOLACTONES M・T止ada,K・Ogawa,T・Murata,andT.Usui,J.CarbohydtChem.,inpress 既発表学術論文 1)NovelEnzymaticSynthesisofβ一D-Galactosyl-and6-0-Benzyl-Derivativesof P-Nitrophenylα-Maltopentaoside S・Kubota,M・T址ada,K・Ogawa,N・Nakamura,andT.Usui,LAwl.Gb7COSCi.,44, p313-321(1997)