Title
NMRによる茶成分の抗酸化機構の解析 - 安定ラジカル捕捉
剤とポリフェノール類との反応 -( 内容の要旨 )
Author(s)
澤井, 祐典
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 乙第102号
Issue Date
2005-09-14
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/3119
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本個)籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 会 滞 井 祐 典 (静岡県) 博士(農学) 農博乙第102号 平成17年9月14日 学位規則第3条第2項該当 NMRによる茶成分の抗酸化機構の解析一安定ラジカ ル捕捉剤とポリフェノール類との反応-主査 静岡大学 教 授 渡 遮 副査 岐阜大学 教 授 木 曽 副査 信州大学 教 授 鹿 田 副査 静岡大学 助教授 轟 副査 静岡大学理学部教 授 村 井 泰 久 治 真 満 司 雄 論 文 の 内 容 の 要 旨 本研究では、茶葉に含有される抗酸化成分と安定ラジカルDPPHとの反応液をNMR測定する 手法を用いて、その抗酸化機構の解明を試みた。 (+)-CatechinとDPPHを反応させ、これを13c-NMR測定すると、(+)一CateChinのB環のシグナル の消失とともにふたつのカルポニルシグナルが現れた。0-Phenylenediamineの付加物の単離、同定 により、(+)-CateChinの抗酸化機構は、B環が最初にキノン構造をとることによると示された。 同様に、CateChol、(+)-taXifolin、eriodictyd、methylhydr∝afftateもcatechol構造のキノンヘの変 化が観測されたが、querCetin、1uteolin、methylcafftate、ethylprot∝ateChuateのように、CateChol構 造にオレフィンニ重結合あるいはカルポニル基が共役する化合物については、DPPBと反応させて もカルポニルシグナルは現れず、0-キノン構造として安定化することなく、ラジカルとして安定 化していると推測された。Quercetinと(+)-taXifblinの混合液にDPPHを加えたところ、DⅢⅥは quercetinと先に反応したことが認められ、CateChol構造に共役するオレフィンニ重結合(2、3位) を有する化合物の方が、有しない化合物よりも早くフリーラジカルを消去できると考えられた。 しかし、CateCholはethylprot∝ateChuateよりも早くDPPHのフリーラジカルを消去でき、CateChol 構造にカルポニル基が共役した場合は、ラジカル消去能は減退すると考えられた。 Pyrogallol誘導体については、PyrOgallol、myricetin、ethylgallateのいずれも、D門Ⅵと反応して も。_キノン構造に変化することはなく、この順に、フリーラジカルを先に消去することができた。 Catecbd構造の場合では、オレフィンニ重結合が共役する化合物の方が、共役のない化合物よりも 早くフリーラジカルを消去できたのに対し、pyrOgallol構造の場合は、PyrOgallol構造に二重結合が 共役する化合物よりも、共役のない化合物の方が先にフリーラジカルを消去する結呆となった。 また、ethylgalIateの方がquercednよりも先にフリーラジカルを消去でき、このことから、CateChol 構造を有するいかなる化合物よりもpyrogallol構造を有する化合物の方がラジカル消去能が高いこ とがわかった。 Ascorbicacidは、dehydroascorbicacidに変化することによってDPPHのフリーラジカルを消去で きることがわかった。また、α-tOCOPherolは、DPPHと反応して、α-tOCOPheroxylradicalとして安定 化していると考えられた。Ascorbicacid、α-tO00匝erol、ethylgal1ateは、(+)-CateChinよりも先にフ リーラジカルを消去できることがわかった。DPPHによりB環がキノン構造に酸化された(+)-catechinは、aSCOrbicacidまたは0トtOCOPherol、ethylgal1ateを添加することにより、もとの構造に 還元できることが確認できた。Ascorbicacidは、α-t∝OPherolやethylgal1ateよりも先にフリーラ ジカルを消去できたが、一度DPPHにより酸化されてしまったcL-tOCOPherolやethylgallateは、
-154-ascohicacidを用いても容易には遼元できないようであった。Ascorbicacidは、PyrOgallolよりも先 にフリーラジカルを消去できた。したがって、aSCOrbicacidは、いかなるポリフェノ∵ルよりも早 くフリーラジカルを消去できると考えられた。 cL-Tbcopherolは、先にDPPHにより酸化されていたethyIgalIateを還元することはできず、また、 ethylgal1ateは、先にDPPHにより酸化されていたα-tOCOPherolを還元することはできないため、 a-tO00匝erolとethylgal1ateはほぼ同じ抗酸化能力を有すると考えられた。同様の調査の結果、α-tocopherolのラジカル消去能力は、aSCOtbicacidより劣り、(+)-CateChinやcatechol、ethylprotuatechuate よりは優れているものの、(+)-CateChinやcatecholよりラジカル消去能力が優れているその他のポ リフェノールすべてとは優劣をつけることはできず、似たような能力を有しているのではないか と考えられた。 以上のように本研究で用いた13c-NMRにより茶葉起源の各種抗酸化物質のラジカル消去能を評 価するとともに、その機構の一部を解明できた。 審 査 結 果 の 要 旨 本研究論文は、茶菓に含有される抗酸化成分とフリーラジカルDPPHの反応寺夜を 13c-NMR測定し、ここで得られるシグナル強度の変化、ケミカルシフトの変化に基 づき、反応生成物の構造を明らかにし、その抗酸化機構の解明を試みるとともに、 2種類の抗酸化成分とDPPHをNMRセル中で反応させ、DPPHとの反応速度の相 違を明らかにすることで、その化学構造と反応速度、反応機構との関係を検討した 結果について論述したものである。 本論文の公開学位論文轟表会は、審査委員会全員を含む関連教員、学生の出席の
もと、平成17年8月22日午後1時より静岡大学農学部において実施した。発表後直ち
に審査委員会を開催し、論文内容を中心にして審査した。 本論文の構成・診査結果は以下の通りである。 はじめに、(+)-CateChinとDPPHを反応させ、これを13c-NMR測定すると、(+)-catechin のB環のシグナルの消失とともにふたつのカルポニルシグナルが現れた。 0-PhenyIenediamineの付加物の単離、同定により、(+)-CateChinの抗酸化機構は、 B環が最初にキノン構造をとることによることが示された。 同様に、CateChol、(+)-taXifoIin、等もcatechoI構造のキノンへの変化が観測され たが、querCetin、暮uteoIin等のように、CateCho)構造にオレフィンニ重結合あるいは カルポニル基が共役する化合物は、■DPPHと反応させても0-キノンとして安定化す ることなく、ラジカルとして安定化していると推測された。 次に、各抗酸化成分の反応性の程度を、DPPH存在下で2成分を混ぜ、それぞれ のシグナルの変化に基づいて比較、検討した。その結果、CateChol構造に共役する オレフィンニ重結合を有する化合物の方が、有しない化合物よりも早くフリーラジ カルを消去できると考えられた。しかし、CateChol構造にカルポニル三基が共役した 場合は、ラジカル消去能は減退した。 Pyroga"oI誘導体はかキノーン構造に変化することはなく、フリーラジカルを先に 消去し、二重結合が共役する化合物よりも、共役のない化合物の方が先にフリーラ ジカルを消去した。また、CateChol構造を有するいかなる化合物よりもpyroga"oI 構造を有する化合物の方がラジカル消去能が高いことがわかった。 さらに、抗酸化能が大きい、aSCOrbicacid、a-tOCOPherolとDPPHあるいは茶カテ キン類の存在下での反応を比較検討することにより、aSCOrbicaddは dehydroasoorbicacidに変化することによってDPPHを消去し、α-tOCOPheroIは、 DPPHと反応して、α-tOCOPheroxyIradicalとして安定化すると考えられた。Ascorbic acid、α-tOCOPhero]は、(+)-CateChinよりも先にフリーラジカルを消去できることが わかった。DPPHによりB享幕がキノン構造に酸化された(+)-CateChinは、aSCOrbic-155-acidまたはα10COPheroIにより、遭元されることが確謬できた。 以上のように本研究では13c-NMRにより茶葉起源の各種抗酸化物質のラジカル消 去能を評価す、るとともに同時にその反応機構の一部を解明できた。本研究で得られ た知見は、関連分野に新たな分析化学的手法を与えるとともに、本手法を用いるこ とにより、他の分析手法も組み合わせることで未解明であった抗酸化機構の解明が 期待される。 以上を踏まえ,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の 学位論文として十分価値あるものと認めた。 【基礎となる学術論文】
1.NMR analyticalapproach to clarify the antioxidative molecular mechanism of catechins usingl,1-diphenyト2-picrylhydrazyl,SAWAI,Yusuke,SAKATA,Kanzo,J・
Agric.Food Chem.,46,11卜114(1998).
2.NMR analyticalapproach to clarify the molecularmeChanisms of the antioxidative and radical-SCaVenging activities of antioxidantsin tea usingl,1-dipheny卜2-picrylhydrazyl.SAWAI,Yusuke,MOON,Jae-Hak,J・Agric・FoodChem・,48,6247-6253
(2000).
3.Effects of structure On radica卜scavenging abilities and antioxidative activities of tea polyphenoIs:NMR analyticalapproach usingl,1-diphenyl-2-picrylhydra甲1
radicals.SAWAI,Yusuke,MOON,Jae-Hak,SAKATA,Kanzo,WATANABE,Naoharu,J・AgrlC・ Food Chem.,53,3598-3604(2005). 【既発表学術論文】 1.嫌気処理した茶菓の茎におけるγ-アミノ酪酸含量.澤井祐典,許斐健一,小高保亀吉冨 均,山口優一,深山大介,日本食品科学工学会零し46,_._早74-㌍7.け野9)㌧_山._⊥
芥「石詣警鵠完甑董鵠,霊芝志;ま妻賢
2.嫌気一好気交互処理による茶葉の 喜,、吉富 均,、山口優一,深山大3.Methylanthranilateis the cau占e of ct]1tivar-SpeCific aromairitheJapahese tea cultivar`sofu,.SAWAI,Yusuke,YAMAGUCHI,Yuichi,TANAKA,Junichi,JARQ-Japan
AgriculturalResearch Quarterly,38,271-274(2004)