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モンテカルロシミュレーション法による各用法用量のpiperacillinと注射用抗菌薬とのターゲット値達成確率の比較

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Academic year: 2021

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(1)

〈原 著〉

モンテカルロシミュレーション法による各用法用量の

piperacillin

と注射用抗菌薬とのターゲット値達成確率の比較

宮嶋友希

1

・上野亨敏

1

・川筋仁史

1

・河合暦美

1

・福井康貴

1

酒巻一平

1

・大西由美

2

・野村伸彦

3

・水永真吾

2

・山本善裕

1 1富山大学学術研究部医学系感染症学講座 2富士フイルム株式会社 3富士フイルム富山化学株式会社 (2020年9月28日受付) Piperacillin(PIPC)の高用量における有用性を検討するため,2018年∼2019年に 富山大学附属病院で分離された12菌種の薬剤感受性を測定し,モンテカルロシミュ レーション(MCS)法を用いて,各菌種に対する PIPC の各用法用量におけるター ゲット値の達成確率を算出した。

12菌種のうち,Methicillin-susceptible Staphylococcus aureus(MSSA), Streptococcus pneumoniae, Enterococcus faecalis, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Moraxella catarrhalis及びPseudomonas aeruginosaのPIPCに対する感受性は,2016年又は2018 年の全国サーベイランス結果と概ね同程度であった。一方,Escherichia coli 及び Serratia marcescensのPIPCに対する感受性は,全国サーベイランス結果より良好で あった。 各菌種の薬剤感受性データを基に,MCS法を用いて解析を行ったところ,PIPCは 1日2回投与の2 g×2回/日及び4 g×2回/日より,2 g×4回/日,4 g×3回/日及び4 g ×4回/日の用法用量が,各菌種に対する増殖抑制作用及び最大殺菌作用の観点から 優れた治療効果を期待できると考えられた。

序文

Piperacillin (PIPC)は,富山化学工業株式会 社(現:富士フイルム富山化学株式会社)にて 創製されたペニシリン系注射用抗菌薬1)であり, Staphylococcus属等のグラム陽性菌からPseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性菌及び嫌気性菌まで 幅広く抗菌活性を示す。国内では1980 年の発売 以来,呼吸器系,泌尿器系,外科系,産婦人科系 など各種感染症の治療に広く臨床使用されてき た。発売当時の成人における用法用量は,「PIPC として,1日2∼4 gを2∼4回に分けて静脈内に投 与する。なお,難治性又は重症感染症には症状に 応じて,1日8 gまで増量して静脈内に投与する。」 であり,1日16 gまでの使用が標準的治療と位置

(2)

付けられている欧米の承認用法用量とは異なって いた。近年,適正使用の観点から,抗菌薬の使用 は,高用量・短期間での用法用量が推奨されてい る。2008 年に国内で発売された tazobactam/PIPC の最大投与量は治験を踏まえ,PIPC 換算で 1 日 16 gに変更された2)。PIPCに関しても,2010年12 月,厚生労働省から最大投与量変更のための開発 を要請され,企業治験が実施された。 2015年,PIPCは,適応を有する難治性又は重 症感染症における1日最大投与量及び投与回数に 関する用法用量の変更が承認され,1回4 gを1日 4回,1日最大16 gまでの増量投与が可能となった。 しかし,これまでに,その投与量及び投与回数に おける有効性の詳細な検討は行われていない。 抗菌薬の領域は,医薬品の中でも薬物動態学 (pharmacokinetics: PK) と薬力学 (pharmacodynamics: PD)を組合せたPK-PDに関する研究が進んでお り,抗菌薬の有効性と PK-PD パラメータとの相 関性が知られている3)。有効性の指標として用 いられる PK-PD パラメータには,最高血中濃度 (Cmax)/最 小 発 育 阻 止 濃 度 (minimum inhibitory

concentration: MIC),血中濃度—時間曲線下面積

(area under the curve: AUC)/MIC, time above MIC (T>MIC) 等がある4)。ペニシリン系薬,セファロ スポリン系薬,カルバペネム系薬等のβ-ラクタム 系抗菌薬は時間依存的な殺菌作用を示し,%T> MICが臨床効果と相関するとされている。ペニシ リン系薬では,%T>MICが30%以上で増殖抑制 作用が,50%で最大殺菌作用が得られ,セファロ スポリン系薬では,%T>MICが40%以上で増殖 抑制作用が,60∼70%で最大殺菌作用が得られ, カルバペネム系薬では,%T>MICが20%以上で 増殖抑制作用が,40%で最大殺菌作用が得られる と報告されている5) 今回,2018 年∼2019 年に富山大学附属病院で 分離された 12 菌種の薬剤感受性を測定し,モン テカルロシミュレーション(MCS)法を用いて, 各菌種に対するPIPCの各投与量及び投与回数に おけるターゲット値の達成確率を算出すること で,PIPC の高用量での用法用量に関する有用性 について検討したので報告する。

I. 材料と方法

1. 使用菌株 2018年∼2019年に富山大学附属病院にて患者 背景,分離材料を限らず各菌種につき 30 株程度 収集し,試験に供した(Table 1)。 2. 使用薬剤 Piperacillin (PIPC),tazobactam/piperacillin

(TAZ/PIPC, TAZ は 4 μg/mL 固定),sulbactam/

ampicillin (SBT/ABPC, SBT : ABPC=1 : 2), clavulanic acid/amoxicillin (CVA/AMPC, CVA : AMPC=1 : 2),ceftriaxone (CTRX),cefepime

(CFPM),meropenem (MEPM),oxacillin (MPIPC),penicillin G (PCG) 及び ABPC を用い た。Table 2 に試験菌種と測定薬剤の組合せを示 す。 3. 抗菌薬感受性試験 最 小 発 育 阻 止 濃 度 (minimum inhibitory

concentration: MIC)は Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI) の微量液体希釈法に準

じて測定した6∼8)。Haemophilus influenzaeのβ-ラ クタマーゼ定性試験はニトロセフィンスポットプ レート法にて行った。測定濃度は,CVA/AMPCで 1∼16 μg/mLの5段階,MPIPC及びPCGで0.06∼ 64 μg/mL の 11 段 階,ABPC で 0.5∼16 μg/mL の 6 段階,それ以外の薬剤で0.06∼128 μg/mLの12段 階とした。 4. MCS法による解析

(3)

Table 1 試験菌株

(4)

びMEPMの6薬剤について,臨床での有効性を予 測するため,PK-PD理論によるMCS法を用いた 解析を行った。MCSには,尾田が作成したBMs-Pod ver.7 (フリーソフト)9)を用い,積算回数を 10,000 回として,%fTMIC(f:非蛋白結合率) の分布を予測した。 各薬剤のPKパラメータをTable 3に示す。SBT/ ABPCは,ABPCの母集団薬物動態解析モデルの 結果を使用した。CTRXは非蛋白結合体のPK パ ラメータを用いた。各薬剤のクレアチニンクリア ランス(CLcr)及び体重(BW)は,母集団解析 を行った際の平均値を使用した。CFPMについて は腎機能正常患者の設定値を,SBT/ABPCについ ては腎機能正常グループの値を用いた。 各薬剤の用法用量として,PIPCは2 g×2回/日, 2 g×4回/日,4 g×2回/日,4 g×3回/日及び4 g× 4回/日とした。また,TAZ/PIPCは4.5 g×3回/日, SBT/ABPCは3 g×4回/日,CTRXは1 g×2回/日, CFPMは1 g×2回/日,MEPMは1 g×3回/日とし た。なお,増殖抑制作用のターゲット値はPIPC, TAZ/PIPC及びSBT/ABPCで30%fTMIC, CTRX

及びCFPMで40%fTMIC, MEPMで20%fTMIC

として達成確率を算出した。また,最大殺菌作用 のターゲット値はPIPC, TAZ/PIPC及びSBT/ABPC で50%fTMIC, CTRX及びCFPMで60%fTMIC, MEPMで40%fT>MICとして算出した。

II. 結果

1. 薬剤感受性 2018年∼2019年に当院で分離された菌株に対

す る 各 薬 剤 の MIC range, MIC50及 び MIC90

Table 4に示す。

1-1)MSSA

MSSA 30 株に対する PIPC の MIC range, MIC50

及び MIC90はそれぞれ,0.5∼128 μg/mL, 1 μg/mL

及び16 μg/mLで,MIC90は測定薬剤の中で最も高

かった。

1-2)S. pneumoniae

S. pneumoniae 31 株に対する PCG の MIC range

は 0.06∼2 μg/mL で, penicillin-intermediate S.

pneumoniae (PISP) 及 び penicillin-resistant S. pneumoniae (PRSP) は認められなかった。PIPCの MIC range, MIC50及び MIC90はそれぞれ, 0.06∼

4 μg/mL, 0.06 μg/mL及び2 μg/mLであった。測定

薬剤のうち,CLSI の薬剤感受性基準が設定され ているCTRX, CFPM及びMEPMに対する感性率 はそれぞれ,100%, 96.8%及び96.8%であった。 1-3)E. faecalis

E. faecalis 30 株 に 対 す る PIPC の MIC range,

(5)

MIC50及びMIC90はそれぞれ,1∼4 μg/mL, 4 μg/mL

及び4 μg/mLで,MIC90はTAZ/PIPCと同値,CTRX

の>128 μg/mL, CFPMの64 μg/mL, MEPMの8 μg/mL

より低く,SBT/ABPCの1 μg/mLより高かった。 1-4)E. coli

E. coli 30 株に対する PIPC の MIC range, MIC50

及びMIC90はそれぞれ,0.5∼>128 μg/mL, 2 μg/mL

及び>128 μg/mLであった。測定薬剤に対する感

性率は PIPC 及び SBT/ABPC で 80.0%, TAZ/PIPC

で 96.7%, CTRX, CFPM 及び MEPM で 100% であ り,MEPM耐性株は認められなかった。

1-5)K. pneumoniae

K. pneumoniae 30株に対するPIPCのMIC range, MIC50及 び MIC90は そ れ ぞ れ,2∼>128 μg/mL, 16 μg/mL 及び 64 μg/mL であった。測定薬剤に対 する感性率はPIPCで60.0%, SBT/ABPCで83.3%, TAZ/PIPC, CTRX, CFPM 及 び MEPM で 100% で あった。MEPM耐性株は認められなかった。 Table 4 各種抗菌薬に対する感受性

(6)

1-6)E. cloacae

E. cloacae 30 株 に 対 す る PIPC の MIC range, MIC50及 び MIC90は そ れ ぞ れ,1∼>128 μg/mL, 4 μg/mL及び128 μg/mLであった。測定薬剤に対 する感性率はSBT/ABPCで20.0%, CTRXで63.3%, PIPC 及 び TAZ/PIPC で 70.0%, CFPM で 86.7%, MEPMで100%であった。 1-7)S. marcescens

S. marcescens 30 株に対する PIPC のMIC range, MIC50及び MIC90はそれぞれ,1∼32 μg/mL, 2 μg/ mL及び16 μg/mLであった。測定薬剤に対する感 性 率 は SBT/ABPC で 10.0%, PIPC 及 び CTRX で 96.7%, TAZ/PIPC, CFPM 及 び MEPM で 100% で あった。 1-8)M. catarrhalis

M. catarrhalis 30株に対するPIPCのMIC range, MIC50及び MIC90はそれぞれ, 0.06∼0.5 μg/mL,

0.25 μg/mL及び0.25 μg/mLであった。測定薬剤の

うち,CLSI の薬剤感受性基準が設定されている

CTRXに対する感性率は100%であった。

(7)

1-9)H. influenzae ABPCに対する感受性及びβ-ラクタマーゼ産生 の有無を指標に H. influenzae 32株を分類すると, β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン感受性 H. influenzae (BLNAS) は 7 株(21.9%),β-ラ ク タ マ ー ゼ 非 産 生 ア ン ピ シ リ ン 中 等 度 耐 性 H. influenzae (BLNAI) は1株(3.1%),β-ラクタマー ゼ 非 産 生 ア ン ピ シ リ ン 耐 性 H. influenzae (BLNAR) は21株(65.6%),β-ラクタマーゼ産生 アンピシリン耐性 H. influenzae (BLPAR)は 3 株 (9.4%)であった。

H. influenzae 32 株に対する PIPC の MIC range, MIC50及び MIC90はそれぞれ, 0.06∼16 μg/mL,

0.06 μg/mL及び0.5 μg/mLであった。測定薬剤の

うち,CLSI の薬剤感受性基準が設定されている

TAZ/PIPC, SBT/ABPC, CTRX, CFPM及びMEPM

(8)

に対する感性率はそれぞれ,100%, 37.5%, 100%,

84.4%及び90.6%であった。

1-10)P. aeruginosa

P. aeruginosa 30 株に対する PIPC の MIC range, MIC50及 び MIC90は そ れ ぞ れ,0.5∼128 μg/mL, 4 μg/mL及び8 μg/mLであった。測定薬剤のうち, CLSI の薬剤感受性基準が設定されている PIPC, TAZ/PIPC, CFPM 及び MEPM に対する感性率は それぞれ,93.3%, 93.3%, 93.3%及び100%であっ た。 1-11)Bacteroides fragilis

B. fragilis 29 株 に 対 す る PIPC の MIC range, MIC50及び MIC90はそれぞれ,0.5∼>128 μg/mL,

16 μg/mL及び128 μg/mLであった。測定薬剤の

うち,CLSI の薬剤感受性基準が設定されている

PIPC, TAZ/PIPC, SBT/ABPC, CTRX 及 び MEPM

に対する感性率はそれぞれ,51.7%, 96.6%, 93.1%,

31.0%及び89.7%であった。

1-12)Prevotella species

Prevotella species 23 株 に 対 す る PIPC の MIC range, MIC50及びMIC90はそれぞれ,0.12∼>128

μg/mL, 16 μg/mL及び128 μg/mLであった。測定

薬剤のうち,CLSI の薬剤感受性基準が設定され て い る PIPC, TAZ/PIPC, SBT/ABPC, CTRX 及 び

MEPMに対する感性率はそれぞれ,65.2%, 100%, 100%, 60.9%及び100%であった。 2. MCS解析による検討 2-1)増殖抑制作用に関する検討 PIPCの各用法用量における増殖抑制作用のター ゲット値である30%fT>MICの達成確率をTable 5 Table 4 (Continued)

(9)

に示す。2 g×2回/日では,今回検討した12菌種 のうち,MSSA, S. pneumoniae, E. faecalis, E. coli,

E. cloacae, S. marcescens, M. catarrhalis, H. influenzae

及びP. aeruginosaの9菌種に対する達成確率はい ずれも 80% を超えていたが,K. pneumoniae, B.

fragilis及びPrevotella spp.に対する達成確率はそ

れぞれ,44.5%, 61.7%及び58.8%であった。投与 回数を増やした 2 g×4 回 / 日では,9 菌種に加え て,K. pneumoniae, B. fragilis 及 び Prevotella spp. に対する達成確率はそれぞれ,88.7%, 78.7%及び 77.6%で,12菌種全てに対してほぼ80%以上の達 成確率が得られた。また,1回投与量を増やした 4 g×2回/日では,2 g×2回/日と同様に,9菌種に 対して80%を超える達成確率が得られ,上記3菌 種に対しても達成確率の上昇が認められたが,2 g ×4回/日の達成確率には及ばなかった。 4 g×3 回 / 日及び 4 g×4 回 / 日では 12 菌種全て に対して80%を超える達成確率が得られた。 TAZ/PIPC 4.5 g×3 回 / 日及び MEPM 1 g×3 回 / 日では12菌種全てに対して80%を超える達成確 率が得られた。一方,SBT/ABPC 3 g×4 回 / 日で は,E. cloacae, S. marcescens及びP. aeruginosaに

対する達成確率がそれぞれ,32.7%, 27.6% 及び

36.1%, CTRX 1 g×2 回/日 で は, E. faecalis, P. aeruginosa, B. fragilis及びPrevotella spp. に対する

達成確率がそれぞれ,18.1%, 25.6%, 23.4% 及び

50.9%, CFPM 1 g×2回では,E. faecalis, B. fragilis

及びPrevotella spp.に対する達成確率がそれぞれ, 3.5%, 9.2%及び58.0%であり,80%に達しない菌 種が見られた(Table 6)。 2-2)最大殺菌作用に関する検討 PIPC の各用法用量における最大殺菌作用の ターゲット値である 50%fT>MIC の達成確率を Table 5に示す。2 g×2回/日では,S. pneumoniae, M. catarrhalis 及 び H. influenzae の 3 菌 種 の み で 80%を超える達成確率が得られた。投与回数を増 やした2 g×4回/日においては,3菌種に加えて,

MSSA, E. faecalis, E. coli, E. cloacae, S. marcescens

及びP. aeruginosaの9菌種で80%を超える達成確 率が得られた。また,1回投与量を増やした4 g× 2回/日では,2 g×2回/日と同様に,3菌種のみで 80%を超える達成確率が得られ,他菌種に対して も達成確率の上昇が認められたが,80%には満た なかった。

Table 5 PIPC の各用法用量における 30% 及び 50%f T>MIC の達 成確率

(10)

4 g×3 回 / 日では,K. pneumoniae, B. fragilis 及 び Prevotella spp. を除く 9 菌種で,4 g×4 回 / 日で は12菌種全てに対してほぼ80%以上の達成確率 が得られた。 TAZ/PIPC 4.5 g×3回/日及びMEPM 1 g×3回/日 では,12菌種全てにおいて80%を超える達成確率 が得られた。一方,SBT/ABPC 3 g×4回/日では,

E. coli, K. pneumoniae, E. cloacae, S. marcescens, P. aeruginosa 及び B. fragilis に対する達成確率が

それぞれ,76.0%, 64.0%, 19.4%, 13.0%, 24.3% 及 び78.1%で,80%に達しなかった。CTRX 1 g×2 回 / 日 で は,MSSA, E. faecalis, P. aeruginosa, B.

fragilis及びPrevotella spp. に対する達成確率がそ

れぞれ,72.6%, 16.0%, 22.9%, 19.7% 及び 47.5%,

CFPM 1 g×2 回 / 日 で は,MSSA, E. faecalis, H. influenzae, P. aeruginosa, B. fragilis 及び Prevotella spp.に対する達成確率がそれぞれ,57.2%, 2.3%, 70.6%, 55.1%, 5.9%及び44.8%であり,80%に達 しない菌種が見られた(Table 6)。

III. 考察

2018年∼2019年に富山大学附属病院で分離さ れた 12 菌種について,各種抗菌薬に対する薬剤 感受性を測定し,2016年18)又は2018年19)の全国 サーベイランスデータと比較した。

12菌種のうち,MSSA, S. pneumoniae, E. faecalis, K. pneumoniae, E. cloacae 及び M. catarrhalis の薬

剤感受性は,全国サーベイランスの結果と比較し て,抗菌活性又は感性率に大きな違いは認められ なかった。また,P. aeruginosaについては,PIPC, TAZ/PIPC, CFPM 及び MEPM に対する感性率が いずれも80%以上であり,全国サーベイランス結 果とほぼ同程度の感性率であった。

一方,E. coli については,PIPC, SBT/ABPC 及 びCFPMに対する感性率はそれぞれ,80.0%, 80.0% Table 6 増殖抑制作用a及び最大殺菌作用bのターゲット値達成確率

(11)

及び 100% で,全国サーベイランスの 50.4%19)

65.2%18)及び 81.2%19)より高く,当院で分離さ

れた株の薬剤感受性は良好であった。また,S.

marcescens の PIPC 及び TAZ/PIPC に対する感性

率はそれぞれ,96.7% 及び 100% で,全国サーベ イランスの76.4%19)及び85.8%19)より高かった。 H. influenzaeについては,近年,本邦でもBLNAR の増加が問題となっている20)。当院における BLNARの分離率は65.6%であり,全国サーベイ ランスの55.9%18)より高かった。 各菌種の薬剤感受性を基に最適な抗菌薬及びそ の用法用量を検討する場合には,各施設における 臨床分離株の薬剤感受性の特性を把握しておく必 要がある。 今回,MCS法を用いて,PIPCの用法用量別に 12菌種に対する増殖抑制作用及び最大殺菌作用に ついて検討した。増殖抑制作用について,1日2回 投与の2 g×2回/日及び4 g×2回/日は9菌種に対 して80%を超える達成確率が得られたものの,K.

pneumoniae, B. fragilis 及び Prevotella spp. に対し

ては達成確率が80%に達しなかった。一方,2 g× 4 回 / 日,4 g×3 回 / 日及び 4 g×4 回 / 日は 12 菌種 全てに対してほぼ 80% 以上の達成確率が得られ た。なお,2 g×4回/日と4 g×3回/日は概ね同程 度の達成確率であった。最大殺菌作用については, 2 g×4回/日及び4 g×3回/日はK. pneumoniae, B. fragilis及びPrevotella spp.を除く9菌種で,4 g×4 回/日は12菌種全てに対してほぼ80%以上の達成 確率が得られた。一方,1日2回投与の2 g×2回/日 及び4 g×2回/日は,他の用法用量に比べ,達成確 率が80%に達しない菌種が多かった。なお,2 g× 4 回 / 日と 4 g×2 回 / 日では,1 日総投与量が同じ であるにも関わらず,2 g×4 回 / 日の方が 80% を 超える達成確率を得られた菌種が多かった。本結 果は,分割投与による%T>MICの変化を反映し ていると考えられた。 成人肺炎診療ガイドライン 2017 では,院内肺 炎/医療・介護関連肺炎のエンピリック治療にお いて,重症度が高い又は耐性菌リスクのある場合 には,TAZ/PIPC, MEPM, CFPM 等の使用が推奨 されているが,原因菌が特定された時点で標的治 療に切り替えることが推奨されている21)。標的治 療に使用する薬剤は,エンピリック治療に使用す る薬剤と比べ,原因菌に対して同等以上の効果を 期 待 で き る 薬 剤 を 使 用 す る 必 要 が あ る。P. aeruginosaは院内感染を引き起こす日和見感染菌 であり22),本菌が原因菌と特定された場合には, PIPC及びTAZ/PIPCが第一選択薬として推奨され ている。そこで,P. aeruginosaに治療効果を期待 できる PIPC の用法用量について検討した。増殖 抑制作用については,2 g×4回/日,4 g×2回/日, 4 g×3 回 / 日及び 4 g×4 回 / 日で約 95% の達成確 率が得られ,TAZ/PIPC 4.5 g×3回/日の97.7%と 同程度であった。また,最大殺菌作用については, 2 g×4 回 / 日,4 g×3 回 / 日及び 4 g×4 回 / 日で約 90% の達成確率が得られ,TAZ/PIPC 4.5 g×3 回 の88.7%と同程度で,CFPM 1 g×2回/日の55.1% より高かった。一方,1日2回投与の2 g×2回/日 及び4 g×2回/日は40%未満の達成確率で,用法 用量としては不十分と考えられた。P. aeruginosa は,耐性菌のリスク因子を有する場合に検出され やすく,免疫能が低下している患者の感染症を重 症化させることから,本菌が原因菌の場合には, TAZ/PIPC 4.5 g×3回/日と同程度の最大殺菌作用 の達成確率が期待されるPIPCとして2 g×4回/日, 4 g×3回/日又は4 g×4回/日の用法用量で使用す ることが望まれる。 E. faecalisは心内膜炎,尿路感染症,腹腔内感 染症等の原因菌として知られ,ペニシリン系抗菌 薬が治療薬として推奨されている23)。E. faecalis に対する最大殺菌作用については,PIPC 2 g×4 回 / 日,4 g×3 回 / 日及び 4 g×4 回 / 日で 90% を超 える達成確率が得られたことから,E. faecalisが 原因菌として特定された疾患に対する本用法用量

(12)

での治療効果が期待された。 今回の検討からPIPCは増量することで,各菌種 に対する高い達成確率を得られることが確認され た。PIPC 2 g×4回/日及び4 g×3回/日での増殖抑 制作用について,市中肺炎の細菌性肺炎の入院治 療及び院内肺炎/医療・介護関連肺炎の耐性菌の リスクがない/低い場合に使用が推奨されている23) SBT/ABPC 3 g×4回/日及びCTRX 1 g×2回/日と 比較した。PIPCは多くの菌種に対し,SBT/ABPC と同程度の達成確率が得られ,特に,E. cloacae 及び S. marcescens に対して SBT/ABPC よりも高 い達成確率が得られた。また,PIPCはCTRXと比 べ,B. fragilis及びPrevotella spp.に対して高い達 成確率が得られた。E. cloacae24),S. marcescens21)

及びPrevotella spp.25)は,頻度は低いものの院内 肺炎/医療・介護関連肺炎等で分離される菌種で あることから,PIPC 2 g×4回/日及び4 g×3回/日 はJAID/JSC感染症治療ガイド201923)及び成人肺 炎診療ガイドライン201721)で推奨されているSBT/ ABPCやCTRXと同等以上の治療効果が期待でき ると考えられた。 一方,PIPCの最大殺菌作用について,院内肺炎 の耐性菌のリスクがある場合に使用が推奨されて いる23)TAZ/PIPC 4.5 g×3回/日,CFPM 1 g×2回/ 日及び MEPM 1 g×3 回 / 日と比較した。PIPC 2 g ×4回/日及び4 g×3回/日では,今回検討した菌 種のうち,K. pneumoniae及びPrevotella spp.に対 して約60%の達成確率しか得られなかった。PIPC 4 g×4回/日では,これらの菌種に対して約 80% の達成確率が得られたものの,TAZ/PIPC 及び MEPM より低かった。また,PIPC 2 g×4 回 / 日, 4 g×3回/日及び4 g×4回/日はCFPMと比べ,K. pneumoniae に対する達成確率は低かったが,P. aeruginosa 及び Prevotella spp. に対して高い達成 確率が得られた。 なお,今回,当院で分離されたE. coliのPIPCに 対する感受性は,全国サーベイランス結果18, 19) り良好であった。本株の基質特異性拡張型β-ラク タマーゼ(extended spectrum β-lactamase; ESBL) 産生性の有無については検討していないが,近年 では ESBL 産生腸内細菌科細菌の増加26)が問題 となっていることから,E. coliに治療効果を期待 できるPIPCの用法用量をMCS法にて予測する場 合には,全国レベル及び各施設における分離株の 薬剤感受性データを基にした更なる検討が必要と 考える。 また,今回のMCS法による解析では,腎機能に ついては考慮しなかった。PIPC1)やTAZ/PIPC27) は腎排泄型の薬剤であり,外国人では腎機能の低 下とともに血中濃度半減期が延長することが報告 されている。TAZ/PIPCでは腎機能正常患者にお ける 4.5 g×3 回 / 日投与時に得られる有効性は腎 機能低下患者における4.5 g×2回/日又は2.25 g× 3 回 / 日に相当するとの報告がある28)。従って, PIPCに関しても腎機能低下患者での至適投与量 及び投与回数を別途検討する必要がある。 以上,PIPCの高用量における有用性を検討する ため,2018年∼2019年に富山大学附属病院で分離 された12菌種の薬剤感受性を測定し,MCS法を 用いて,各菌種に対する PIPC の各用法用量にお けるターゲット値の達成確率を算出した。PIPCは 1日2回投与の2 g×2回/日及び4 g×2回/日より, 2 g×4回/日,4 g×3回/日及び4 g×4回/日の用法 用量が,各菌種に対する増殖抑制作用及び最大殺 菌作用の観点から優れた治療効果を期待できると 考えられた。新薬が開発されにくい現状を鑑み, 既存薬の治療効果を最大化するために,今後も全 国サーベイランス結果を参考にしながら各施設に おける臨床分離株の薬剤感受性を基に,PK-PDの 観点から最適な用法用量を検討していく必要があ ると考えられた。 利益相反 著者 宮嶋友希,上野亨敏,川筋仁史,河合暦

(13)

美,福井康貴,酒巻一平,山本善裕は申告すべき ものなし。著者 大西由美,水永真吾は富士フイル ム株式会社の社員である。著者 野村伸彦は富士 フイルム富山化学株式会社の社員である。

引用文献

1)富士フイルム富山化学株式会社:ペントシリ ®注射用1 g2 gインタビューフォーム, 20204月(改訂第19版) 2)大鵬薬品工業株式会社:ゾシン®静注用2.25 4.5インタビューフォーム,20194月(改訂 21版) 3 PK/PD検討委員会:抗菌薬のPK/PDガイドラ イン。日本化学療法学会雑誌2016; 642): 139–51.

4 Craig WA: Pharmacokinetic/pharmacodynamic parameters: Rationale for antibacterial dosing of mice and men. Clin Infect Dis. 1998; 26: 1–10. 5 Drusano GL: Prevention of resistance: A goal

for dose selection for antimicrobial agents. Clin Infect Dis. 2003; 36 Supple 1: S42–S50. 6 Clinical and Laboratory Standards Institute:

Methods for dilution antimicrobial susceptibility tests for bacteria that grow aerobically, 11th edition. M07 2018; 38.

7 Clinical and Laboratory Standards Institute: Methods for antimicrobial dilution and disk susceptibility testing of infrequently isolated of fastidious bacteria, 3rd edition. M45 2015; 35. 8 Clinical and Laboratory Standards Institute:

Methods for antimicrobial susceptibility testing for anaerobic bacteria, 9th edition. M11 2018; 38. 9)尾田一貴:モンテカルロシミュレーションに 対応したMicrosoft® Office Excelによる抗菌薬

PK/PDシミュレーションソフトの開発。医 療薬学2011; 37: 335–44. 10)渡辺 彰,青木信樹,二木芳人,斎藤 厚,河 野 茂,柴 孝也:市中肺炎患者を対象とし tazobactam/piperacillin(配合比1 : 8製剤)の 臨床薬理試験。日本化学療法学会雑誌2010; 58S-1: 11–28. 11)前田利松,小室昌仁,松下 仁:Tazobactam/ Piperacillinの 各 種 動 物 に お け る 体 内 動 態。 Chemotherapy. 1994; 42S-2: 206–16.

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13 Iida S, Kinoshita H, Kawanishi T, Hayashi M: The pharmacokinetics of ceftriaxone based on population pharmacokinetics and the prediction of efficacy in Japanese adults. Eur. J. Drug Metabol. Pharmacokinet. 2009; 34: 107–15. 14)吉次広如,桜井隆雄,平岡聖樹,中名生宏: 腎障害患者に対するcefepimeの用法・用量の 検討。日本化学療法学会雑誌2005; 53: 302–8. 15)中名生宏,江角凱夫,高市松夫,他:塩酸セ フェピムの体内動態(第2報)イヌにおける単 回静脈内投与時の体内動態,各種動物における 蛋白結合。Jpn J Antibiotics. 1992; 45: 938–42. 16 Ikawa K, Morikawa N, Ohge H, et al.:

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20 Shiro H, Sato Y, Toyonaga Y, Hanaki H, Suna-kawa K: Nationwide survey of development of drug resistance in the pediatric field in 2000–2001, 2004, 2007, 2010, and 2012: Evaluation of the changes in drug sensitivity of Haemophilus influenzae and patients background factors. J Infect Chemother. 2015; 21: 247–56.

21)日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017

作 成 委 員 会:成 人 肺 炎 診 療 ガ イ ド ラ イ ン

(14)

22)松本哲哉,山口恵三:緑膿菌感染症。日本内 科学会雑誌2002; 91: 2927–33.

23 JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作 成委員会:JAID/JSC感染症治療ガイド2019 日本感染症学会・日本化学療法学会,2019 24 Sanders WE Jr, Sanders CC: Enterobacter spp.:

Pathogens poised to flourish at the turn of the century. Clin Microbiol Rev 1997; 10: 220–41. 25)金子明寛,山根伸夫,渡辺大介,他:誤嚥性

肺炎の起炎菌として高頻度に分離される口腔 内細菌の薬剤感受性。日本化学療法学会雑誌

2007; 55: 378–81.

26 Willemsen I, Oome S, Verhulst C, Pettersson A, Verduin K, Kluytmans J: Trends in extended spectrum beta-lactamase ESBL producing

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Identification of optimal renal dosage adjustments for traditional and extended-infusion piperacillin-tazobactam dosing regimens in hospitalized patients. Antimicrob Agents Chemother 2010; 54: 460–5.

28)柴 孝也:PK-PD解析を考慮したタゾバクタ ム/ピペラシリンの腎機能低下患者における 用法・用量の調節。日本化学療法学会雑誌

(15)

Comparison of target attainment rates of piperacillin

for various dose regimens with antibiotics for injection

using monte carlo simulation

Yuki Miyajima

1

, Akitoshi Ueno

1

, Hitoshi Kawasuji

1

, Koyomi Kawago

1

,

Yasutaka Fukui

1

, Ippei Sakamaki

1

, Yoshimi Oonishi

2

, Nobuhiko Nomura

3

,

Shingo Mizunaga

2

and Yoshihiro Yamamoto

1

1)

Department of Clinical Infectious Diseases Graduate School of Medicine

and Pharmaceutical Sciences University of Toyama

2)

FUJIFILM Corporation

3)

FUJIFILM Toyama Chemical Co., Ltd.

Antimicrobial susceptibilities of 12 bacterial species isolated at Toyama University Hospital

between 2018 and 2019 were measured. We calculated the target attainment rates for several

dosing regimens of piperacillin

PIPC

against 12 bacterial species using monte carlo simulation

with a view to examining the effect by increase in dose of PIPC.

Antimicrobial susceptibilities of methicillin-susceptible Staphylococcus aureus

MSSA

,

Streptococcus pneumoniae, Enterococcus faecalis, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae,

Moraxella catarrhalis and Pseudomonas aeruginosa of 12 bacterial species to PIPC were similar

levels to those in nationwide surveillance in 2016 or 2018. On the other hand, antimicrobial

susceptibilities of Escherichia coli and Serratia marcescens to PIPC were superior to those in

nationwide surveillance.

In analysis using monte carlo simulation, the regimens of 2 g four times daily, 4 g three times

daily and 4 g four times daily of PIPC were expected to show more excellent clinical efficacy than

those of 2 g twice daily and 4 g twice daily of PIPC in terms of bacteriostatic effect and maximum

bactericidal effect.

Table 2 試験菌種と測定薬剤の組合せ
Table 4 (Continued)
Table 5  PIPC の各用法用量における 30% 及び 50%f T > MIC の達 成確率
Table 6  増殖抑制作用 a 及び最大殺菌作用 b のターゲット値達成確率

参照

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