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「屋敷地共住集団」再考 ―― 東北タイ・ドンデーン村の追跡調査(中間報告)――

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東 南 ア ジア研 究 21巻3号 1983年12月

「屋 敷 地 共 住 集 団」 再 考

- 東 北 タ イ ・ ドンデ ー ン村 の追 跡 調 査 (中 間報 告 )

生 *・武

彦 **

A

Reconsideration ofHM ultihousellOld Com pound‖in Don Daen皇 Villa皇e,NortheastThailand

M asuoK UcHIBA*and TakahikoTAKEM URA

*

*

=Multihousehold compoundH is the concept presented by KoichiMi2:uno On thebasisofhis suⅣeyasthecorestructureofthesocialsystem of thevillage・ ItisakingrouplngCOmpOSedortwo ormorehouseholdsofparents'and theirmarried daugh ters'families,anditsstructuralfeaturesare theirlivingtogetherinacompound,jointfarming, and closecooperation in daily life・ Thistypeof group appearsasa phaseofthefamily devel op-mentalcycle,wllichischaracterized by uxorilocal residence and<an inheritance pattern which e m-phasizesfemaledevisees.

Having surveyed thevillageforsix monthsin

1981,wehavefoundthatsomeofthepointsmade by Mizuno aremisleading:(1)tileCOmpOllnd is

Ⅰ は じ め に Ⅰ-1 「屋 敷 地 共 住 集 団 (multihousehold com pound)」 とい う概念 は, 水 野 浩 - 1'が東 北 タ イ農 村 ドンデ ー ン (Don Daeng)村2'の 社 会 構 造 を 理 解 す るた め の核 心 とな る もの と して, 現 地 調 査 の 結 果 , 提 示 した もの で あ *龍谷大学文学部 ;Faculty ofLetters,Ryukoku

Universlty,Shichijo Ohmiya, Shimogyo・ku,

Kyoto600,Japan

**滋賀県立 短期大学 家政学科 ; Department of Home Economics, Shiga Prefectural Junior College,1900Hassakacho,Hikone-shi,Shi ga-ken522,Japan

notintrinsicallyrelatedtosuchagrouping;(2)the nativeconceptofsum,whichisnotmentioned at allbyMi2:uno,lSusedbythevillagerstorepresent closekinrelationships;(3)closekininthiscategory arestronglyexpectedtohelpeachotherinvarious aspectsofdaily life;(4)theparent-daugh tercol Operative relationship is basically one of the cooperativerelationshipsamongsumandisclosely relatedtotheuxorilocalresidencerule;(5)although the parenトdaughter relationship is the salient featureofthecooperativesyste-,thesystem isnot restrictedonlytothatrelationship;(6)theclosekin relationship is intrinsically dyadic wi th flexible bilateralfeatures;and(7)thepatternofinheritance reaectsthisrelationship. る。 そ れ は ま た, タ イ社 会 の基 本 的 な構 造 を 捉 え るた め の, 水 野 の研 究 の 中核 とな る概 念 で もあ る。水 野 の諸 研 究 の特 徴 と問 題 点 につ いて は, す で に坪 内良 博 [1980】,口羽 益 生 ・ 前 田成 文 [1980],北 原 淳 [1981]の諸 論 文 にか な り詳 細 に論 述 され ,水 野 の分 析 視 角 の 問 題 点 は ほ ぼ指 摘 され尽 くされ て い るが, わ れ わ れ は そ の後 , ドンデ ー ン村 の社 会 学 的 追 跡 調 1)慣例に従い,敬称を省略する。 2)水野は, この村を ドンデー ングと表記 している が,グの音は鼻にかか って強 くないので,後述 の研究プロジェク トでは, ドンデー ンと表記を 統一することにな った。本論において も後者を 用いる。

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口羽,武邑 :「屋敷地共住集団」再考 査 を行 い,水 野 の指摘 した諸 点 を現 地 で確 か め る機会 を得 た。3' 地元 の方言 を解 す る通 訳 を介 して,村 内

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の世 帯 主全員 との面接 調査 や,主 な イ ンフォーマ ン トか らの聴 取 り調査 を行 い, か な りの量 の資料 を得 る ことがで き た。4) この追 跡 調査 の主 目的 は,農 学系 研究 者 と の共 同研究 によ って, 自然 と村 落 の社会 経済 構造 との関係 を集 約 的 に解 明す る ことの ほか に,水 野 の調査研究 の足 らざ る部分 を補 い, 水 野 の

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年 の調査結 果 に基 づ いて, 主 にそ の後 の村落構造 の変動 を解 明す る こ と で あ った。 ところが,現 地調 査 において, わ れわれ は,水 野 が提示 した概念 が果 た して ド ンデー ン村 の社会構 造 の核心 とな る もの か ど うか につ いて,疑 問 に思 われ る, い くつ か の点 に気 づ いた。 この問題点 の方 向性 につ いて は,す で に上記 の3論 文 に はぼ示 され て い るが,現 地 の資料 によ る 問題点 の確認 はな されて いな い。 本論 にお いて は,水 野 の屋 敷地共住 集 団論 の問題 点 につ いて,調査 村 で得 られ た若 干 の資料 を用 いて指摘 し, それ が後 述 す る水 野 の全体 的 な研究 の展 望 におい て, どの よ うな意 味 を持 つ もので あ るか を明 らか に し, タ イ社会 の研究者 か らの 教 示 を得 る素材 に した い。 そのため にま ず,(1)調査村 の概 要 と, (2)水 野 の調査分 析 の狙 い と要点 を概括 して お きた い。 3)この調査 は京都大学東南 アジア研究 セン ターの企画による文部省科学研究補助金海 外学術調査 「タイ国村落構造の動態的研究

-

20年間の追跡調査」計画 (代表石井米 雄)によるものであり,1981年 7-12月の 6カ月間にわたって行われた。口羽の調査 期間は7月20日か ら9月19日までの 2カ月 間であり,武邑の場合は 7月20日から12月 30日までの約5カ月間である。 4)本論で用いられる統計資料の収集は,われ われ以外に,タイのPrasertYamklinfung, 舟橋和夫の共同で行われたものである。

Ⅰ-2

(調 査村 につ いて の 概 要) ドンデ ー ン村 は, バ ンコクか ら約

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0km

離 れた タ イ 東北 部 の中心都 市 コ ンケ - ン (Khon Kaen) の近 くに位 置 して い る(図1参照)。行 政 的 に は コ ンケ - ン県 ム ア ング (Muang)郡 ドン-ン(Don Ham)行 政 区 の1村 で あ る。図2が 示 す よ うに, この村 は コ ンケ - ンか ら高速道 路 に沿 って南 下 し, タ ープ ラ (ThaPhra)と い う田舎 町か ら東 に入 り, サ ワ ン (Saw礼ng) 村 を経 て北 上 した地点 にあ る。 コ ンケ ー ンか ら村 まで の 道路 沿 いの 距 離 は 約

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9km

で あ る。 村 は図3の よ うに塊村状 をな して お り,南 側 に小 学校 ,北側 に講 堂 ,僧房 ,建 築 中 の布 図1 調査地 ドンデー ンの位置

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束 南 ア ジア研 究 21巻3号 Eヨ -市街 地 ○-集 落 ⑳-湖 一・・・・・トー-鉄 道 - -道路 - -川 図2 ドンデーン村とその周辺 薩堂 と僧 侶 が休浴 す る池 か らな る寺 院 (w礼t)が あ る。 寺 院 は ドンデ ー ン 村 とそ の枝村 ドンノイ (Don Noi) 村 との共 同 の管理下 にあ り,小 学枚 には ドンノイ村 の 児童 も通 っ て い る。村 内の碁 盤状 の道路 は,1942年 に村 には道路 がな くて はいけな い と い う当時 の ピブ ン首相 の発想 の もと に造 られた もので あ る。 この村 は約120年前,東方 のマ -サ ラカム

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Ma

haSa

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や ロー イエ ッ ト(RoiEt)か らの移住者 に よ って開拓 された村 で,住 民 は ラオ 系 のタ イ人 であ る。 言語 は中部 タ イの標 準語 とはかな り異 な り, イサ ー ン語 と呼 ばれて い る。 この地域 の 自然 の特徴 は凹凸状 の多 い 高原地 形 で あ る。村 は高 み にあ り,村 の 周辺 に多 い ノー ング (nQQng)と呼 ばれ る す り鉢状 の くぼみ に水 が溜 ま り,小 さな 湖 沼 が多 い。 ノー ングの低地 の軽斜 面 に 筆 面積 の非常 に小 さい 多 くの 水 田 が あ り,高地 部分 には畑 ,川沿 い には菜 園 が あ る。 天候 は雨季 と乾季 に分 かれ, 5-10月 が雨季 で, この時期 に稲 が栽 培 され る。 主食 は精米 で あ る。 上記 の地形 のため に,降雨 の多 い時 に は,低地 の水 田 は水没 し,降雨 の少 な い 時 には,高地 の水 田は千 滴 びて不作 とな り,水 稲作 の収 量 は きわ めて不 安定 で あ る。通 常,

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年 に

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度 の割合 で洪水 があ る といわれて い る。 米 はほ とん ど自家 消 費用 に用 い られ,次 の収 穫 に豊作 が確認 され るまで は,余剰米 は売却 されず に保 存 され る。 不 安定 な稲 の収 量 のため に, 農民 は化 学肥 料 を稲作 に は 全 く使 わ な い 。 水 野 が調査 した1964年 ごろ には,村 か らコ ンケ - ンや クープ ラへ行 くため の交 通 の便 は非常 に悪 か った。換金作 物 と し 表 1 世 帯 主 の 職 業 構 成 農 家 非 耕 作 地 主 賃 金 生 活 者 商 業 職 人 家 畜 飼 育 主 婦 無 職 126(95.5%) 2( 1.5 ) 3( 2.3 ) 1( 0.7 ) 1981 111(63.1%) 17( 9.6 ) 28(15.9 ) 9( 5.1 ) 3 ( 1.7 ) 1( 0.6 ) 1( 0.6 ) 6 ( 3.4 ) 132(100.0%) l 176(100.

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% )

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口羽,武邑 :「屋敷 地共住 集 団 」再 考 図3 ドンデ ー ン村 略 図 て は主 にケ ナ フが作 られ るだ けで あ った。現 荏 で は, コ ンケ - ンまで, 小 型 トラ ックに屋 根 と座 席 を取 りつ けた小 型 バ スが, 1日4便 運行 され て い る。 それ が運行 され るよ うにな った の は1975年 で あ る。1976年 には電 気 も き て い る。 バ ス が運行 され るよ うにな って か ら,村 は 急速 に変 貌 した。 換金作 物 と して の野菜 , 特 に と うが ら しが積極 的 に栽 培 され, 家 畜 (午 , 水 牛 , 競 馬 用 の馬 , 豚 ) の飼 育 は盛 ん に な り, 町 で の就 労機 会 は増加 し, 町- の通 勤 者 の数 も増 加 した。村 の人 口は810人 (1965)か ら910人 (1981)に増加 し,戸 数 や世 帯 主 の職 業 の変 化 は, 表 1に示 す通 り, 賃 金生 活 者 や 商 業従 事 者 が急 増 して い る。 ⅠⅠ 水 野 の分 析 視 角 と問題 点 Ⅰト 1(調 査 研 究 の狙 い) 水 野 の ドンデ ー ン 村 調 査 は,1964年5月 か ら1965年 4月 ま で と,1965年11月 か ら1966年 7月 まで の問 ,2 回行 わ れ て い る。 最 初 の調 査 で は村 に8カ月 住 み込 み,2回 目に は コ ンケ - ンか ら村 に 6 カ月 間通 って調 査 が行 わ れ て い る。 この調 査 研 究 の展 開 を振 り返 って み る と,彼 の研 究 に は二 つ の主 要 な狙 い が あ るよ うに思 わ れ る。 そ の一 つ は, タ イ村 落一 般 の基 本構 造 を理解 す るた め の手 がか りを得 るた め に,村 の社 会 体 系 の基 本 的 な構 造 の特徴 を把 握 す る こ と, 他 の一 つ は, そ の基 本 構 造 の うち に, タ イ社 会 に固有 な集 団 の組 織 原 理 を読 み取 る こ とに あ った。 前者 には,JhonF.Embreeが タ イ社 会 を looselystructuredsocialsystem と特 徴 づ けて 以 来 , タ イ社 会 研 究 者 の間 で論 議 され て い る 問題 に対 して,社 会 に は それ ぞ れ 固有 の基 本 構 造 が あ る とい う観 点 [Mizuno 1971:239] か ら, タ イ村 落 の基 本 構 造 を解 明す る こ とに よ って 寄与 した い とい う背 景 が あ る。 そ の よ うな基本 構 造 の解 明 は, タ イの他 の村 落 の解 明 のみ な らず ,村 落 の変 動 の理 解 に も基 本 的 に重 要 で あ る とい う視 点 を, 水 野 は持 って い る [2'bz'd.:250-256]。 後者 の狙 い は,水 野 の初 期 の研 究 に は必 ず しも明確 に表 現 されて い な い が,1975年 の論 文 「稲 作 農 村 の社会 組 織 」 に, は っ き り と打 ち出 され て い る。 この視 点 は, 微 視 的 レベ ル で の基 本 的 な集 団構成 の動 態 の集 約 的 な分 析 を通 じて ,最 小 限 に重 要 で あ る と思 わ れ る集 団 形成 の原 理 を抽 出 し, 集 団 の 原 組織 ま た は組 織 原 理 (集 団 の 形 成 や 正 当化 の 原 理)5) tSakuta 1978]を確認 し, それ を他 の 諸 集 団 にお いて検 証 し, あ る社 会 に お け る組織 原 理一般 を捉 え よ う とす る もので あ る。 水 野 の 前 者 の 狙 い は 「屋 敷地 共 住 集 団」 に, 後 者 の狙 い は 「親元 組 織」[1975:82]と い う概 念 の も とに結 実 され て い る。前 者 は ド 5)作田啓一の 「組織原理」に近い。水野は 「原組 織」 という用語を用いている。

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ンデー ン村 の調査分折 の所産 であ り,早 くか ら英文 の論文 で報告 さ れ

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],タ イ村落研究者 の間で 注 目された。後者 は, その後 あま り進展 をみ なか った仮説 で はあ る が,水 野 のタ イ社会 - の洞察 の深 さを示 す成果 の一 つで あ る。 この二 つ の成 果 は, いずれ も ド ンデー ン村 の調査研究 を起点 と し て い る。 筆 者 は水 野 の研究 の この 成 果 を踏 まえて, ドンデ ー ン村 の 社会学 的追跡調査 を行 な ったので あ るが,水 野 の捉 えた事実 には間 違 いはない と して も, その事実 を 把握 す る際 の社会 的範 境 の捉 え方 において,水 野 と村人 との間 にず 東南 ア ジア研究 21巻3号 宗教 と道徳 家 族 の周期 土地所 有規模 制度化 されて いな い権威 と階層 世代 的周期 垂 直構 造 共同耕作 日量営 ) 中心 とな る経 営者 独立経営 者 と土地 な き耕 作者 相続 の ため の労働 奉仕 耕地 を通 しての親 家族 に よる娘 家族 の支配 経済 的 ・社食 的協働 れがあ る ことに気 づ き,村全体 の 構造 を理解 す るための展望 を得 る のに手 間取 って しま った。 しか も,坪 内の指摘 に もあ る通 り

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「屋敷地共住 集団」と 「親元組織」とは, 同一 の論理 的展 開を示 す線 上 にあ るべ き もの であ るに もかかわ らず, その間 には論 理 のか み合 わ ない部分 があ る。 この部分 は,土着 の 概念 を捉 え る際 の水 野 と村人 とのずれ に起 因 す る もので,村 の基本 的社会構 造 の性質 に関 す る水 野 と村人 の解釈 のずれ と関連 して い る よ うに思 われ る。 つ ま り

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「屋敷地共 住集 団」は村人 の一次 的 解釈 か らして も,対人 関係 に, その基本 的組 織原理 が あ るよ うに思 われ るのだが,水 野 は これを集団 の 概念 を中軸 と して 捉 え, 「親元 組織」 の原 理 を捉 え る際 には,後述 す るよ う に,対人 関係 の概念 を軸 に して い る。 ⅠⅠ-2 (分析 の枠組) ドンデー ン村 の 調査研 究 に際 して の水 野 の 目標 は, 「村 の 社会体 系 の構造 モデル とその構成要 素」 の発見 にあ っ た

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。 そ の構造 モデル は図

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によ 秦 -母 方 色 彩 の 強 い 双 糸 娘- の相 続 弱 い権威,弱 い系統性,比較 的平 等 親 族集合体の1世代 原則 自己中心 の キ ン ドレ ッ ド 家族 の2基 本形 態 と家族 周期 出典 :Mizuno[1971:288] 図4 ドンデーン村の構造モデル って示 され る。 この図が示 す よ うに,水 野 は 村 の社会体系 には,三 つ の構造 局面 と, それ らを支 えて い る諸要 素 が あ る とす る。 経済構造 の特徴 は,別居 して い る親 ・娘世 帯 の共 同耕作 と, それ によ って生 ず る親 に従 属 した土地 な き耕作農家 (娘夫婦 の世帯 ) で あ る。親族構造 の特徴 は,婚姻後 の妻方居住 制 と, その居住制 の故 に母方 との親密 な関係 がみ られ る双系制 であ り, これ に農地 の相続 のあ り方 と家族 周期 が絡 んで,屋敷地共住集 団 の形成 ・展 開 ・消滅 の母体 と な る 点 に あ る。村 の垂 直構造 (社会 階層) は,構造 的 に 共 同耕作 ,農地 の所有規模 ,家族周期 と関連 して い る lz'btd.:242-245]O 村 の全体構造 は,上記3構造局面 の諸要素 の相互 関係 によ って構成 され, それ らすべて は屋敷地共住集 団 に収赦 さ れ る。 こ の よ う に,屋敷地共住集団 の理解 が ドンデ ー ン村 の 全体構造 の理解 の鍵 とな る の で, 水 野 は こ の村 の基本構造 を 「屋敷地塾社会構造 (c

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om-口羽,武 邑 :「屋敷地 共住 集 団 」再 考 pound-type or social structure)」 と 呼 ぶ lt'bz-d.:245

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Ⅰト 3 (屋 敷地共 住 集 団) 水 野 によれ ば,屋 敷地 共 住集 団 には地 元 の イサ ー ン語 の名称 は な い [1968:845;1975:65]。つ ま り, そ れ は村 人 によ って一 つ の社会 的範 境 とは意識 さ れて いな い もので あ り,水 野 の分析 概念 で あ る。 しか し, この概念 には,水 野 自身 の資料 の記述 か らみて も,誤 解 を招 きや す い面 が あ る。 そ の構成 世 帯 は必 ず しも屋 敷 地 内 に居住 す る もの に限定 されて いない か らで あ る。 水 野 に よれ ば,屋敷地 共 住集 団 は,親族 関 係 と共 同耕 作 によ って結 合 され る2世帯 以 上 によ って構 成 され る 一 種 の 農業 共 同組織 (a kind ofagriculturalcooperation)で あ る。 その構成 世帯 は, 多 くの場合, 同一 の屋敷 地 に共 住 す るか, また は隣接 す る 居住 地 に 住 み,若 干 の場 合 は構成 世帯 が村 の中 に散 居 し て い る [Zoc.cz't.]。水 野 が説 明 のた め に挙 げ る 六 つ の主 な事 例 において も, 同一 屋 敷地 に共 住 す る例 はな い 【1981:92-95]。屋 敷地共 住 集 団 に と って重要 な こ と は, 屋 敷地 で は な く,親族 関係 と共 同耕作 の よ うで あ る。 一般 的 にい って, 構成 世 帯 は親 と子 の 世 帯 ,特 に親 と娘 の世 帯 で あ る。水 野 の調 査 に よれ ば,村 の中 には19の屋 敷地共 住 集 団 が あ り,2世帯 構成 は13,3世帯 構 成 は5,4世 帯 構成 は1で あ るが, これ らの事例 は, 厳 密 な意味 で,す べ て 同一 屋 敷地 に共住 す る世帯 の事例 で はな い こ とは上記 の通 りで あ る。 構 成 世帯 は各 自の家屋 に住 み, 家屋 は別 に して い るが,農 地 を共 同耕 作 し, 日常 の あ らゆ る 生 活分 野 で で き る限 り助 け合 う。 彼 らの間 で

は 「共 働共 食 (betnam kan,kinnam kan)」

とい う強 い共 同 の規 範 が あ り [1968 : 846-847], 共 同感情 が支 配 的 で あ る [1 975:64-65]。 Ⅰト 4 (妻 方 居 住制 と相 続) この よ うな 屋 敷 地 共住 集 団 は, 家族 周期 の1段 階 な い しは1 位 相 (phase)と して 出現 す る [1981:103]。 水 野 は, そ の形成 要 因 と して,婚 姻後 の妻方 居住慣 行 と農地 の相 続 分与 の方 法 を考 えて い る。 婚 姻 した夫 婦 は,一般 的 には婚 姻後少 な く と も2- 3年 間 は,妾 方 の親 と同居 し, 親 の 農 事 を助 け る。 そ の間,夫 は妻方 の親 - の奉 仕 に努 め,何 ご とに も控 え 目な態 度 を示 す。 同居 数年 の の ち,夫 婦 は しば ら くの問,妻 方 の家 の 側 に 新 居 を 構 え るが, 夫 の 生 家 の 近 くに住 む こと もあれ ば,他 出す る こ と もあ る [同上書 :87]。 主 要 な財 産 で あ る水 田 の相 続 分 与 の方 法 に つ いて は,伝 統 的 には息子 よ りも娘 に多 く与 え られ るが, この点 につ いて は村 人 の問 で は 特 に は っき り した考 え方 が あ るわ けで はな い と水 野 は い う [1971:88]。水 野 の意見調 査 に よれ ば,娘 に多 く与 え る と答 えた者44人 ,男 女 平等 に与 え る と した者47人 で あ る。娘相 続 よ り男女均 等分 相 続 を望 ま しい とす る意見 が 若 干 多 い。6) しか し,水 野 は6事例 をやや詳細 に分析 し て,相 続 方法 につ いて の一般 的傾 向 を次 のよ うに概括 す る。(1)ほ とん どの娘 が水 田 の分 け 前 にあず か るが, 離村 した娘 の分 け前 は少 な い。 (2)村 内で親 と同居 の期 間 が長 い者 ほ ど分 け前 は多 く, 特 に末 娘 の相 続 分 が多

。 (3)耕 地 が少 な い場 合 は,姉 が妹 た ちに 自分 の相 続 分 を譲 る。 (4)息子 の場合 は,特殊 な事 情 がな い限 り,水 田 の分 け前 はな く, その代 り水 牛 や牛1頭 また は若 干 の金 を も らう。 そ の時期 は結 婚 後 間 もな くで あ る。 (5)水 田の相 続 分割 譲渡 の時期 は,両 親 が60歳 を過 ぎて実 際 に働 けな くな って か らで あ るが,分 割 予定地 は結 6)水野の意見調査の事例数は,男女均等分相続を 望む47 (47.5%),娘相続を望む44 (44.4% ) と不明8 (8.1%)である [1981:95-96]。

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婚後幾年 か過 ぎれ ば 決 ま り,分割 されな くとも, その土地 に 対 して責任 を負 わ さ れ る [1981:99]。 末娘 が結婚 して独 立す るころには,親 も老齢化 して い るの で,末娘 が 自然 に親 と同居 して老親 の世 話 を す る 立場 に 立 つ。 親 が経営主 の立 場 か ら退 いた ころ, 農地 は娘 た ちに譲渡 され るが,親 の老後 を世話す る末娘 は, の取 り分 を相続 し, 第1段 階 東 南 ア ジア研 究 21巻3号 第2段 階 屋 敷地共住集団 第 3 段 屋敷地共住集 団 図6 自分 の分 け前 の ほか に親 親 の家屋 と屋敷地 を も相 続 す る [同上書 :122]。 Ⅰト 5(家族周期) 上記 の妻方居住制 と農地 の相続 の方法 によ り, あ る固有 の家族周期 が み られ る。 水 野 は この 家族周期 の 展 開 を, 図5のよ うにみ ごとに整理 された図式 で示 し てい る [同上書 :121]。 この図式 は論理的 に 非常 によ く整 え られて い るが,問題 がない と はいえな い。た とえ ば,水 野 によれ ば,NFa

NF:NuclearFamily,SF:Stem Family 出典 :水野 【1981:121] 図5 家族の周期 (タイ) 第3段階 (A) 第3段 階 (C) 家族周期と屋敷地共住集団 と NFclまた は NFC2は屋敷地共住集団 を 構成 す るが,SFb2か らの第3回 の世帯 の分 裂 によ って生 ず る NFaのみ は,SFcと屋敷 地共住集団を構成 す ることにな る。家族周期 の この段 階で は多 くの場合 そ うな るのか, あ るいはSFb2のあ とに NFC3も考 え られ るの か。NFC3が省 かれて い るの は図式 の美 的構 成 のためか, それ とも事例数 が 少 な い た め か。図式 の論理 か らいえ ば,NFC3が必要 の よ うに思 え る

7

' また, この図式で は,末娘 世帯 は常 に分裂 しな いで SFcに組 み入 れ ら れ ることにな るが,果 た してそ ういえ るのか ど うか とい うよ うな問題 もあ る。 水 野 はさ らに家族周期 の展 開 の特徴 を3段 階 に分 けて説 明 して い る [1975:671が,他 の地域 の研究者 に とって は, この説 明 の方 が む しろ ドンデ ー ン村 の家族周期 の固有 の特徴 を容易 に理解 させ て くれ る。 その展 開過程 を 図示 すれ ば,図6の よ うにな る。 第

1

段 階 で は,世帯主 は

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歳前後で あ り, 核家族 を構成 す る。世帯主 の世帯 は,妻 の親 との同居期 間を終 えて独立家屋 に居住 してい 7)この点については,北原 【1981:95-96]も指摘 している。

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口羽,武 邑 :「屋敷地 共住 集 団 」再 考 るが, 自分 の農地 を持 た な いので,妻 の親 と 共 同耕作 を行 う。 第 2段 階 で は,世帯 主 は40 歳 前 後 で あ り,子供 は未 婚 の状 態 で あ るが, 妻 の親 は年 老 い, あ るい は死 亡 して,慶地 の 相 続 も受 け,独 立 した農 家 とな る。 第3段 階 で は,世帯 主 は50歳 以 上 で あ るが, この段 階 には さ らに三 つ の特 徴 あ る段 階 がみ られ る。 (A)最初 の娘 が結 婚 して,世 帯 主 と同居 し て い る段 階 ,(B)成 長 した娘 が順 次結 婚 し, 同居 期 間 を経 て,独 立 して い く過程 で あ る。 娘 の世帯 が親 の世帯 か ら放 出 され て別 居 す る と,親 と娘世 帯 の共 同耕 作 によ り屋 敷地共 住 集 団 が形成 され,共 同耕作 によ り農 家 の経 営 規 模 が次 第 に大 き くな る過程 で あ る。 (C)最 後 の娘 が結 婚 して親 と同居 す る過程 で, この 段 階 で は世帯 主 の平 均 年 齢 は63歳 で, 農地 は 娘 た ちに分割 相 続 され,世帯 主 は共 同耕作 の 経 営 者 の地 位 か ら退 き,残 さ れ た 農地 を 末 娘 夫婦 と と もに耕 作 して余世 を送 る [1969: 696

]

以 上 の よ うに,屋敷 地共 住集 団 は家族周期 のあ る段 階 において発生 し,妻 方 居 住 制 と相 続 のあ り方 によ って, 親 ・娘世帯 によ って構 成 され る とい うのが水 野 の論 点 で あ る。 しか し, どの世帯 も屋 敷地共 住 集 団 を経 るか ど う か は,水 野 の記述 で は判 然 と しな い。 Ⅰト 6 (屋 敷地共 住 集 団 の集 団性 ) 水 野 は 屋敷地共 住 集 団 を集 団 と して捉 えて い るが, タ イ家族 の性 質 を 日本 の家族 と比較 の観点 か ら分析 す るよ うにな る と, む しろそ の集 団性 の弱 さを指摘 し [1981:120], 屋 敷地共 住 集 団 を 「集 団 とい うよ り結 合 とい った ほ うが よ いか も しれ な い」[1975:65,82注-1と反省 し て い る。 事 実, ドンデ ー ン村 の研 究以 後 の水 野 の タ イ家族 一般 の理解 に は, そ の集 団性 の強 さを 否定 す る見方 が強 い。 た とえ ば, タ イ家族 に つ いて水 野 は次 の よ うに述 べ る。 「タ イ的家族 は社会生 活 の単位 とな りえ て も,村 落 や社 会 が構造 化 され る単位 とはな りえ な い。外 に対 して ばか りで な く, 内部 の構 造 も弱 い。父 親 の権 威 を絶 対視 す る考 え方 はな く,成 員 を律 す る役割規 範 は明確 さを欠 き,相 互 の関係 は比 較 的平等 主 義 的 で あ る。 そ して成 員 は,統 制 力 の弱い 家族 とい う集 団 を前 に して比較 的 自由で, それ ぞれ相 対 的独 立性 を保 って い る。 タ イ人 に と って家族 は個人 を超越 した集 団 と して で はな く,現 に生 存 す る親子 ,夫婦 ,兄弟 姉 妹 な どの

2

人 関係 』 の累 積体 と して認 識 されて い るにす ぎな い。 そ して損得相 互 依 存 の感覚 ,相互 に相手 を思 う気 持 を価 値 あ りとす る 『間柄 の論 理』,および仏教 的心 像 がか も しだす価 値 観 が家族 内 の秩序 を か た ど る 一般 的 原 理 を 構成 して い る」 [1981: 1101。 タ イ家族 が 「統 制 力 の弱 い家族 」 で あ り, 成 員 は 「相 対 的独 立性 を保 って い る」 ので あ れ ば, ど う して屋 敷地 共 住集 団 の よ うに強 い 共 同感情 が生 まれ るので あ ろ うか とい う疑 問 も出て くる。 ま た,水 野 の調 査 事 例 で は,屋 敷地共住 集 団 を構成 す る親 ・子 世 帯 の子 の世 帯 には,娘 の世帯 のみ で はな く, 息子 の世帯 も含 まれて い る事例 もあ るが,水 野 の説 明で は, 親 ・娘 間 の関係 のみ が強調 され て,親 ・ 息子 間 の事 例 は一般 の説 明 か ら捨 象 され て い る [同上書 :9ト95;1968:845]。 も しも成 員 相 互 の関係 が 「比較 的平等 主 義 的 で あ る」 の で あれ ば, なぜ 娘 のみ が強調 され るのか。 こ の点 につ いて の屋敷地 共 住 集 団 の性 格 が水 野 の記述 で はは っき り しな い。 Ⅰト 7(親族 構 造) 屋 敷 地共 住 集 団 の形成 母 体 で あ る親族 組織 の特徴 も,集 団性 の弱 い も ので あ る。 それ につ いて水 野 は次 の よ うに述 べ る [1969:695]。親族 組織 は基 本 的 に双 系 親族 (yaatphiinQQng)で あ り,特定 の個人

(9)

東南 ア ジア研究 21巻3号 を 中心 に して,父系 ・母系 の双方 の親族 を含 む範 境で あ る。 個 々人 の 双系親族 は 合致 せ ず,部分 的 に重 な り合 うに過 ぎな い。親族 の 範 囲 は第2い とこまで の血族 とその家族 を含 み,親族 組織 の秩序 で強調 され るの は年齢 で あ る。 古 い世代 の最年 長著 が もっとも尊敬 さ れ る。 個人 の双系 親族 は地域 的 には,村 内のみ な らず,隣接村 や時 には遠 く隔た った村 にまで 広 が って い る。村人 は多 くの親族 を村 内 に持 ち,各人 の親族 は互 い に重 な り合 うか ら,村 人 の ほ とん どすべ て が,何 らか の親族 関係 を 通 じて相 互 に 関係 づ け られ うる。 した が っ て,村 が一 つ の親族 集 団 を構成 した り, い く つ か の親族 集 団 に琵節 化 され る ことはな い。 個 々人 の双系親族 の重層性 の故 に, 「村 と は 個 々の村人 が もつ双系親族 の連鎖 的累 積体 で あ る

」[

1

9

7

5:6

3

]

とはいえ, この親族 に も社会 的境界 が全 く な いわ けで はない。 それ はまた相互扶 助 が期 待 され る範 囲で あ る。 得度式 ,冠婚葬祭 ,喜 捨行事 が親族共 同の機会 で あ り, 田植 え,稲 刈 りの労働力 の提供 も親族 組織 の経路 を通 じ て求 め られ る。 水 野 の 記述 にはな いが, 通 常, この よ うな双系 親族 の共 同が行 われ る と ころで は

,

「近 い親類」

,

「遠 い親類」の範 噂が み られ,共 同の範 囲 は 「近 い親類」 を 中心 に 行 われ るが,水 野 は この点 につ いて ほ とん ど 記述 して いな い。 また水 野 によれ ば, ドンデ ー ン村 の双 系親 族 の構造 的特徴 は単 な る双系制 のそれで はな く,秦 -母方 的要 素 の濃厚 な もので あ る。 そ れ は妻方 居住制 ,娘均分相続 ,末 娘 によ る親 の扶 養 および 家屋 の相続 , 母方親族 へ の 親 密性 な どによ って生 ず る もので あ る

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。 このよ うな親族 構造 が屋 敷地共住 集団 の母体 とな って い ると水 野 は, ドンデー ン村 の親族 の構造 的特徴 に つ い て 説 明 す る が,母方親族 間 の親密 な関係 が どのよ うな性 質 の もので あ るのか につ いて の説 明 はな い。 Ⅰト 8 (問題点) 以 上 が,屋 敷地共住集 団 を 中心 に した水 野 の ドンデ ー ン村調査 の分析 視 角 の要点 と問題点 で あ る。 この問題点 と関連 す る 「親元組織」 と村 の垂直構造 の問題点 に つ いて は後述 す る。屋敷地共 住集 団 につ いて の主 な問題 点 を, われわれが現地 で獲 得 した 資料 で検 討 す る前 に,再 度要約 して お こう。 (1)屋敷地共住集 団で は,構成 世帯 が同一屋敷 地 に共住 す る ことが基本 的 に重要で あ るので はな く,共 同耕作 を含 めた生 活上 の共 同 が よ り基本 的 に重要 のよ うに考 え られ る。 した が って,屋 敷地共 住集 団 とい う名称 は適切 で は な いよ うに思われ る。(2)妻方居住制 と農地 が 主 に娘 によ って相続 され る慣行 のた め に,屋 敷地共 住集 団 の構成 世帯 は主 に親 ・娘世帯 で あ る とされ るが,息子世帯 もその うちに含 ま れな い こ ともない 。 しか も,村人 の意見調査 で は,男女 に平等 に農地 を相 続 させ る方 が望 ま しい とい う意見 が半数 を超 えて い る。なぜ 親 ・息子 の関係 が捨象 され,娘相続 のみ重視 されて,男女 均等分相続 は捨象 され るのか。 次 に, これ らの問題 をわれわれ の追跡調査資 料 で検 討 してみ よ う。 ⅠⅠⅠ ドンデー ン村 の追跡調 査資料 にみ ら れ る屋敷 地共 住集 団の問題 点 ⅠⅠト 1 (世帯 ・家族 ・親族 と屋 敷地共住集 団 の関係 ) 水 野 の記述 で は,世帯 ,家族,演 族 ,屋敷地共住 集 団 の関係 が判然 と しな い。 も しも水 野 の主 張す るよ うに,屋 敷地共住集 団 がかな り明確 な集団性 を持 つ も の で あ れ ば, た とえそれ につ いて の土着 の概念 がな い と して も,村人 は何 らか の形 でそれを捉 えて い るに違 いな い。われわれ の追跡調査 の最初 の作業 の一 つ は, その ことを確認 す るこ とで あ った。 か な りの村人 との 聴 取 り調査 の 結

(10)

口羽,武 邑 :「屋 敷 地 共 住 集 団 」再 考 果 ,確認 され た こ とは次 のよ うな諸 点 で あ っ た。8) タ イ の 標 準語 の 家族 と い う言葉 khrQQP khrua は, ドンデ ー ン村 で は khQQphien と 表現 され る. KhrQQP と khQQP は同義 の言 葉 で,単 独 で使 用 され る こ とは少 な いが, そ れ には 「覆 う,包 む,統 治す る,所 有 す る」 とい う意味 が あ る。9) Khrua は 「か ま ど」, hien は 「家 屋

を意 味す る。 したが って, 字 義 の上 で は,khrQQP khrua は 「か ま どを 共 有 す る者」,khQQPhien は 「家屋 を 同 じ く す る者 」 と理解 で きる。 村人 によれ ば,独 立 した家屋 に住 み,一応 独 立 した生 活 の単位 を構成 す る夫婦 とそ の子 女 は, た とえ夫婦 の親 の世 帯 と共 同耕 作 を営 み,親 の援 助 を受 けて いよ うと も, それ は一 つ の khQQPhien で あ る。 す なわ ち, khQQP hien は明 白に世 帯 と理解 されて い る

「屋敷 地共住 集 団」 を構成 す る親 と娘 のそれ ぞれ の 世 帯 は khQQPhien で あ る。 親 と同居 して い る娘夫婦 の世帯 は, 親 の khQQPhien の成 員 で あ る。 この世帯 を越 え る近 親 を示 す土 着 の 概念 は sum で あ る。 Sum の概念 は 水 野 の どの論文 に も記述 さ れて いな い。 それ は イサー ン語 で近 親 を意 味 す る。水 野 がsum とい う言 葉 を親族 の説 明 に 全 く使 用 して いな いの は, どの よ うな理 由 に よ るのか不 明で あ るが,次 の よ うな事 実 と関 連 が あ るのか も しれ な い。 イサ ー ン語 のSは タ イの標 準語 で は chとな る。標 準語 のchum には, 「連 結 , 人 々の住 み処 と して の巣 , ま た は人 々の集合

とい うよ う な 意 味 が あ る 8)1981年の調査によって収集されたわれわれの統 計資料は,未だ十分な分析が加 え られて い な いが, 大凡のものは, すでに報告済みで あ る [Fukui;Kaida;andKuchiba.1983]。 本論 に

おいては,統計資料の分析よりほ,問題点の指 摘に重点を置く。 9)この言葉の意味については,石井米雄の教示を 得た。 が,親族 とい う含 意 はな い。 われ われ のタ イ で の共 同研究 者 で,村 落研 究 の経験 豊 か なチ ュ ラ ロ ンコ ン大学 の Prasert Yamklinfung は,sum に親族 の意味 が あ る こ とを,最 初 , 信 じよ うとは しなか った。何 人 か の村 人 に確 認 した の ちには じめて,sum が chum とは 異 な った意味 に使 用 されて い る こ とを認 めた くらいで あ る。 村 人 は,sum の意 味 をバ ナナの房 の ご とき 親族 関係 を指 す とい う。 Sum が示 す近 親 の 範 囲 は村人 によ って かな り異 な り,広 狭 の二 義 が あ る。 狭 く解 す る人 は,夫婦 ,親 子 , き ょうだ いを 中心 に した ご く近 い 親族 を sum といい, 広 く解 す る人 は, 親子 , き ょうだ い,祖 父母 ,孫 , お じ ・お ば, おい ・め い, い とこ,ふ た い とこを含 め る。 いず れ の場合 ら, これ らの近 親 の配偶 者 も含 めて考 え られ て い る。 しか し, sum は ど ち らか といえ ば,狭 義 の意 味 に使 用 され る方 が多 いので はな いか と 思 わ れ る点 が少 な くな い。Sum と同義 の言 葉 に neeo と seeng が あ る。 いず れ も,血 筋,血 縁 を意 味す る。 父方 ,母 方 の血 筋,系 統 を示 す 時 には, これ らの言 葉 が 用 い ら れ る。血 のつ なが りの あ る実 の息子 を指 して, 村 人 は ltluk sum とい い (luuk は子 を意 味 す る),ふ つ うの意 味 で の息子 , また は擬 制 的 に息子 とい う言 葉 を使 用 す る場合 には,標 準 語 の luukchaiが用 い られ る。近 い親族 の関 係 を指 す言葉 と して は, sumdiaokan,nee o-diaokan,liatdiaokaIl が用 い られ,特 に三 者 の うちの最後 の もの は血 縁 の意味 が強 い。遠 い親類 の間柄 を指 す 場 合 に は,phii- nQQng-kan が用 い られ る傾 向が あ る。10)Phii-nQQng は文字 通 りには 「き ょうだ い」を意 味す る。 10)現在, ドンデーン村に調査のため滞在 している 林行夫 との通信によれば,sumdiaokanと phii -nQQng・kanには,含意にニュアンスの違いが感 ぜ られるという。

(11)

東南 ア ジア研究 21巻3号 村 人 が sum とい う言葉 を使 用 す る時 に,筆 者 が そ こに多少 内輪 意識 の あ る ことを感 ず る の も,村人 の そ う した言 葉 の使 い分 け によ る のか も しれな い。 しか し, sum の カテ ゴ リーには,基 本 的 に明確 な境 界 はな い。 それ は広 義 に も使 用 さ れ る。擬 制 的 に は,村人全 体 が sumdiaokan の間柄 にあ る と もいわ れ,仏教 の四海 同朋 の 意 味 に も用 い られ, あ らゆ る人 は sumdiao -kan の関係 にあ る と もいわ れ る。 また,誰 と 誰 が sumdiaokan の関係 にあ るか は,単 に 系 譜 の問題 で はな い。夫婦 ,親 子 , き ょうだ いの近 親 を 中心 に, 住 居 の 近 接性 , 共 通 な 利 害 関係 や そ の他 の関係 によ る親 密性 によ っ て,遠 い親族 も近 親 の カテ ゴ リー に含 め られ る。 Sum の外延 は双系 親族 の親類 の概念 の 場 合 と同 じ く,本質 的 には開 かれ て い るよ う に考 え られ る。 水 野 が屋 敷地 共 住集 団 内 の相 互扶 助 の規 範 と して挙 げた 「共 働共 食 」 は, よ り詳 し くい え ば 「共 働共 食共 用 (betnam k礼n,kinれam kan,sainam kan)」 といわ れ, これ は上記 の よ うな近 親 (sum)の間 で期 待 され る価 値規 範 で あ って,屋 敷地共 住 集 団 を構 成 す る親 ・娘 の世 帯 の問 にのみ期 待 され る規 範 で はな い。 同 じ規 範 は内容 を薄 め られ て, 広 義 の sum の関係 者 に も適 用 され る。 上記 の世帯 (khQQphien)と近 い親族 (sum) 以 外 に,家族 とい う概念 は, ドンデ ー ン村 に はな い。 このよ うな状 況 は世帯 , 家族 ,親族 を土着 の概念 で整 理 しよ うとす る研究 者 を戸 惑 わせ る もので あ る。事 実 ,水 野 は,初期 の 論 文 にお いて,近 親 の うちで世帯 を異 にす る

4

5

家族 が生 産面 の共 同関係 を軸 に して

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9

の 親族 集 団 を構成 して い るが, それ を 「家族 の 特殊 形 態 と して の親族 集 団」 と規 定 して い る

1

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6

]

。 この 親族 集 団 が, 水 野 に よ っ て, の ちに屋 敷地共 住 集 団 と呼 ばれ る もので あ るが,しか し,また 同時 にそ の親族 集 団 を, 生 産, 消費,住居 を共 同 にす る同 じ構成 内容 を持 つ 「拡 大 家族 」 と同 じ類 型 と して扱 うべ きか ど うか につ いて, 明確 さを欠 くよ うな記 述 がみ られ る [同所]。家族 とい う土着 の明 白 な概念 がな い と して も, 上記 に 述 べ た sum の広 狭二 義 の うち狭 義 の もの は,坪 内 ・前 田 の い う家族 圏

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1

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7

]

に当た る といえ る。双 系制 親族 の一 つ の特 徴 は世帯 と親族 の概念 は 明 白 にあ って も,家族 ,近 親概念 の外延 は は な はだ不鮮 明で あ る点 にあ る ともいえ る。 水 野 の屋 敷地 共住 集 団 は,独 立 した世 帯 に 住 む近 親 た ちの うちで,生 産 の共 同 を行 な っ て い る 目立 った2世帯 以 上 の結合,す なわ ち, 親 と娘 の世帯 に焦点 を 当て た もので あ る。 こ の場合 , 同 じよ うな共 同結合 関係 にあ る親 ・ 息子 の世 帯 間, お ば ・め いの世 帯 間 の関係 な どは, 周辺 的 な もの と して捨 象 され る。 しか し,村人 の観 点 か らす れ ば, 親 ・娘 ,親 ・息 子 , お ば ・め い の共 同結合 は, sum で期 待 され る規 範 に沿 った結 合 で あ って,異 質 な も ので はな い。 分析 概念 の論 理 のみ を 中心 に して分析 を進 め る と, 土着 の固有 な組織構 造 の周 辺部 分 は 捨 象 されやす い。 しか し, それ は と もす れ ば 土着 の固有性 の理解 の深化 を妨 げ る こ とに も な る。 望 ま しい分析 概念 は現 実 の複雑 な生 活 の流 れ に鋭 く切 り込 ん で,土着 の固有 な組織 構 造 の論 理 を,一般 的 な レベルで よ り的確 に 理解 させ る もので あ ろ う。水 野 は,親 ・娘 世 帯 の共 同結 合 の特徴 を家族 周期 と組 み合 わせ る こ とによ って説 明す る。 これ も一 つ の洞察 で あ る ことは 否 定 で きな い。 しか し, 土着 の固有 な組織 構 造 の性 質 の理解 が 目標 で あれ ば,近 親 (sum) の間 で期 待 され る規 範 を, 親 ・娘世帯 の共 同結 合 , す な わ ち, 屋 敷地 共 住 集 団 のみ に限 って,特徴 を浮彫 りにす れ ば,親 ・息子 , お ば ・め い, き ょうだ い間 の それ ぞ れ の世 帯 の共 同結 合 は, どの よ うな意 味づ け によ り, どのよ うな状況 にお いて生 ず

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口羽,武邑 :「屋敷地共住 集団 」再考 るのかが判然 と しな くな る。 SLlm の社会 的範 晦 の性 質 を, 上記 のよ う に理解 す れ ば, それ が個人 の重要 な通 過儀礼 で あ る得度式 や冠 婚葬祭 ,寺 院 で の喜捨行 事 で の親族 共 同 の範 囲を示 す範 晦で あ り, しか も実際 の共 同 に参加 す る者 には,近 親 や遠 い 親族 や血 のつ なが りのな い村 人 も含 まれ る こ とは,容 易 に理解 され る。 水 野 が ドンデ ー ン村 の双系 親族 が妻 -母方 的要素 の濃厚 な もので あ る とい うの は,妻方 居住制 の故 に,妻 二母方 親族 の住 居 の近 接性 とその親族 間 の親密性 によ る もので あ る。 し か し, この事 実 は,妻方 を夫 方 よ り優先 させ る考 え方 が存在 す る とい うので はない 。 他村 か らや って きた夫 が妻方 の親族 に対 して控 え 目に行 動 す る とい うこ とは,結 婚 後 の初期 を 除 いて はみ られず, また近 親 が集 ま って, 亡 くな った父母 に功 徳 を施 す ため の カテ ン儀礼

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は,父方 母方 の双方 の先 祖 に対 して行 われ て い る。 ⅠⅠト 2(屋敷 地共 住 と共 同耕 作) 水 野 が屋 敷 地 共住 集 団 と して抽 出 した もの は,近 親 の間 で共 同す る頻度 の も っと も高 い世帯 , す なわ れ,親 と娘 の世帯 間 の共 同結合 関係 で あ る。 それ らの世帯 は必 ず しも,屋 敷地 に共 住 す る 屋敷地共住世帯の事例 世帯 で な い ことは,水 野 の資 料 も示 して い る 通 りで あ る。厳密 にいえ ば,水 野 の問題 に し て い るのは近 接居 住 の近 親 問 の共 同結 合 関係 で あ る。 が, この近 親 間 の共 同 の内容 も実 に 多様 で あ る。 た とえ ば,経 済生 活 にお け る主 な共 同 の内容 を挙 げ る と, それ は水 田 の共 同 耕作 ,農地 の管理 を全 面 的 に任 す農地 の委託 管 理, 収 穫米 の分与 , 世帯 を 別 に して の 共 負 ,米 の無料 供与 ,刈 分 け小 作 ,農地 の無料 貸 与,宅地 の無料 貸与 ,生 活費 の援 助 ,米倉 の部分借 用 ,家畜 の世 話 ,畜舎 の無料 借 用 な どで あ る。 これ らの うち,共 同耕 作 ,農地 の 委託管 理 がかな り重要 な もので あ る と考 え ら れ るが, この両者 と屋 敷地共住世帯 の関係 を みてみよ う。 表2は,1981年 の ドンデ ー ン村 にお ける同 一 の屋 敷地 に共住 して い る世帯 間 の関係 とそ の事例数 , な らび にその世帯 で水 田の共 同耕 作 と農 地 の委託 管理 を行 な っ て い る 事例 数 と,屋 敷地 に共住 して いな い世 帯 間 で,共 同 耕作 と農地 の委託 管理 を行 な って い る世帯 間 の関係 と事 例数 を表 に した もので あ る。 表 に示 されて い る通 り,屋 敷地共住 世帯 の 関係 はか な り変異 に富 み,親 と娘 の世帯 にの み特徴 的 にみ られ る もので はな い。屋敷地共 住 は,親 と息子 , き ょうだ い, お ば・おい ・め 蓑2 屋敷地共住世帯と共同耕作,農地の委託管理 窟敷地夷住世帯

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共両葡軒 と 農地委託

の事例 ∴ ∴

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親 +息子 姉 + 妹 姉 + 弟 おば+おい+めい 2 2 2 1 いとこ+いとこ i 1 おば+おい+めい (D.D・1981) 屋敷地非共住世帯間の共同耕作 と 農地委託管理の事例

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親 + 娘 1 13 2 親+娘+娘 . 1 1 親 +息子 1 1 姉 + 妹 2 姉 + 弟 ; 1 総 計 t 24

(13)

東南 ア ジア研 究 21巻3号 い, い とこな どの近親 の世帯 間 に もみ られ, 同 じ屋敷地 に共住 す ることは近 親 間 の互助 の 1形態 で あ ると考 え られ る。 しか も,屋敷地 共 住世帯 の間 の共 同耕作 と委託管 理 の事例数 は非常 に少 ない。 む しろ,重要 な生 産上 の共 同 は, 同一屋敷地 に共 住 しな い近 親 の間 で行 われて い る。共 同 して い る世帯 間 の関係 が, もっと も多 いのは親 と娘 の世帯 で あ るが, そ の他 の共 同関係 の事例 も全体 の30%近 くに も な る。 重要 な ことは,屋敷地 で はな く,近 くに居 住 す る近 親 間 の互 助 関係 と して の共 同耕作 で あ る。 この共 同耕 作 も,親 ・娘 の世帯 間 のみ に特徴 的 に現わ れ るので はな く,上記 のよ う に他 の近 親 の間 に もみ られ る もので あ る。共 同耕作 には,近 親 問で持 て る者 が持 た ざ る者 を助 け る とい う意味 が基本 的 にみ られ る。 こ の関係 は,親 と経済 的 に自立 して いな い既婚 の子供 の間,特 に親 ・娘 の間 で, 目立 ってみ られ るが, それ は,親 と娘 の間 に限 られ る関 係 で はな い。 したが って

,

「共 働共食共 用」の 規 範 を親 ・娘 の世帯 間 に限 って,屋敷地共住 集 団 と して捉 え る と, かえ って村 の社会体系 の基本構造 の性質 を誤 って理解 す る ことにな る。

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妻 夫 \ ドンノヽン 区 内 郡 内 ⅠⅠト 3 (妻方居住制 と相続 の形態) しか し, 共 同耕作 には親 ・娘 の世帯 間 の共 同 が特 に 目 立 って い る。 この ことは妻方居住制 と相 続 の あ り方 に関連 して い る。 ドンデー ン村 で は, 伝統 的 に妻方居住制 が一般 的で あ る。水 野 の 調査 時 の1964年 には,表3の示 す ごと く,妻 の出身地 は圧 倒 的 に村 (muubaan)内 に限 ら れ, ご くわず か の者 が行 政 区 (tambon)内 の 他村 と郡 (amphoe)内他村 の出身 で あ り,他 郡 ・他県 (changwat)の出身者 はいな い。 こ れ に対 し,男性 の はば半数 は村外 の出身で あ る。 この傾 向 は,表4の ど と く,1981年 の時 点 において も変 らな いが,他郡 ・他県 の出身 女性 が多少 増加 して い る。 これ は,主 に出稼 ぎや徴兵 によ って他 出 した男性 が妻 を連 れ帰 った ことによ る。 一般 的 にい って,現在 で も娘 は親元 に留 ま り,息子 は他 出す る とい う考 え方 は強 い。世 帯 主 に対す る 「親 が老 いれ ば, どの子 ととも に住 む のが望 ま しい と思 いますか」 とい う問 いへ の反応 は,表5の示 す よ うに,半数以 上 の54.6%が末娘 との共住 を希望 し,末娘 を も 含 めて, は っきりと娘 との共住 を望 む世帯主 の比率 は68.2%,息子 との共 住 を望 む ものは わずか6.8%で あ る。 この傾 向をみれ ば, 水 蓑 3 世 帯 主 夫 妻 の 出 生 地 ドンデーン村 他 村 タ ー プ ラ区 他 区

ご 謁 他 村 県 内 他 郡

1

内 (D.D.1964) マハ-サラカム県

8 他 県

15

計 l 出典 :水 野 [1981:87] 1 13 8 計 2 i i i l 123

(14)

口羽,武 邑 :「屋敷地共住 集団 」再考 表4 世 帯 主 夫 妻 の 出 生 地 夫 ドンハ ン区 肉 郡 内 ドンデ ー ン村 ド ン - ン 村 ド ン ノ イ 村 他 村 タ ー プ ラ区 他 区 ド ン ハ ン 区 内 ドンデ ドンハ

ドンノ

ー ン村 ン村 イ村 ._ 52 10 14 8 15 6 二二_県亡 内_二 二_他垂二 _j郡 二 三 二㌔一一 _一 ≡: =-て - 二 子 : マハ -サ ラカム県 他 県 】 郡 内

ター

._ 1 県

他郡 (D.D.1981)

マハ-サ

l

' 10 5 計 l 125 8 注 :世帯主のうち,6人の男やもめ,17人の未亡人, ていない。 野 の妻方 居住 制, 娘 ・末 娘相続 の定 式化 に は 全 く問題 はな い よ うに思 え る。 問題 にな るの は, この定 式化 によ って他 の重要 な要 素 が捨 象 され,現 実 の固有 な性 質 の理解 の深 化 が妨 げ られ る点 にあ る。事 実 ,男性 の村 内姫 も多 く, ま た老 後 に息子 とと もに住 み た い と思 う 親 もあ り, 老 後 の親 の 世話 をす る 者 で あ れ ば,子 供 の性 を問わ な い とす る親 も皆 無 で は な い。 この辺 の事情 は, 単 に近 年 の変化 によ る とい うので はな く,親 の子 供 に対す る基本 的 な考 え方 に関連 して い るよ うに患わ れ る。 相 続 につ いて も同様 の ことが いえ る。 水 野 の意見調 査 で は,主要 な財 産 と して の 水 田を娘 に多 く相続 させ るの と, 息子 と娘 に 均等分 に相 続 させ る とい う意見 とで は,前

の通 り,後者 の意見 を持 つ村人 の方 がやや多 い。水 野 は この事 実 は社会経 済条 件 の変化 に よ る もので あ る こ とを示 唆 し,

6

事例 の分析 か ら, 結局 , 主 な相 続者 は娘 で あ り, 息子 が相 続 す るの は特殊 な場合 のみ で あ る とす る [1981:95-96, 99]。 1981年 の調 査結 果 も,水 野 の場合 とあま り 1 l r ( TI 1 山 一 5人の離婚者 3 i EiiiJ 4 女 1 男. 1 帆 ㌦ / . 「 -・丁 1 . 1 二 二 -÷ この表に含め 変 りはな い。村 内 で面 接 され た世帯 主夫 婦全 員 の うち, き ょうだ い関係 にあ る ものを1事 例 と計算 す る と,集 め られ た相 続 の事例総数 は227で あ る。 この うち村外生 まれ の103人 の 事例 を除 くと, 村 内生 まれ の者 の事例 は124 表5 「親が老いれば,どの子と住むのが 望ま しいと思いますか」 (D.D.1981) 1.長 女 2.末 娘 3.長 男 4.末 男 5.末 子 6.老親の世話をする子供 7.ひとりっ子 8.娘 9.息 子 10.どの子とも住まずに僧になり たい ll.状況による 12.D.K. 計 回答者数(%) 16 (9.1) 96 (54.6) 3 (1.7) 7 (4.0) 4 (2.3) 7 (4.0) 3 (1.7) 8 (4.5) 2 (1.1) 2 (1.1) 25 (14.2) 3 (1.7) 176 (100.0)

(15)

東南 ア ジア研究 21巻3号 表6 相 続 の 実 態 (D.D.1981) 相 息子 ・娘 とも 相続 した事例 娘 のみ相続 し た事例 息子のみ相続 した事例 計 続 の 形 態 息子 ・娘均等分 娘がよ り多 く相続 した例 老親 の世話をす る娘がよ り多 く相 続 した例 一部の娘がよ り多 く相続 した例 子供 によ って相続量が異なる例 財を子供で共 同所有 している例 均等分 老親 の世話をする娘のみが相続 し た例 老親の世話をす る娘が他 の娘 よ り 多 く相続 した例 子供 によ って相続量が異 なる例 老親の世話をす る息子のみが相続 した例 老親の世話をす る息子が他 の息子 よ り多 く相続 した例 で あ る。 さ らに この う ち, ひ と り っ子 の事 例 (2), 同性 の き ょ うだ い の み の事 例 (9), 金 品 の み の相 続 事 例 (3), 相 続 な しの事 例 (1), 未 相 続 事 例 (29),相 続 内容 不 明 の事 例 (8)の52事 例 を 除 い た, 異 性 の き ょ うだ い を 持 った者 の場 合 の農 地 の相 続72事 例 の 内容 を 表 示 す る と, 表 6の よ うに な る。 こ の事 例 は いず れ も, 相 続 を 受 け る立 場 に あ った者 に異 性 の き ょ うだ い が い る場 合 で あ る。 表6に み られ る よ う に, 忠 子 ・娘 と も に相 続 を 受 けた 事 例 数 は38(52.7%),娘 の み が 相 続 を 受 け た事 例 は31 (43.1 % ), 息 子 の み 相 続 を 受 け た 事 例 は3 (4.2%)で あ る。 し 4 8 4 1 3 8 1 . 2 . 1 一 8 . 27. 1.4 5.6 2.8 1.4 0 00 1 か し,息 子 ・娘 と も に均 等 分 の 相 続 を 受 けた 事 例 は10 (13.9 % ) と非 常 に少 な く, 息 子 が あ る に もか か わ らず , 娘 が よ り多 く相 続 した 事 例 と娘 の み が相 続 した事 例 数 は56 (77.8 % ) と圧 倒 的 に多 い。 しか し, 意 見 調 査 で は, 義 7の ど と く, そ の 内容 は か な り多 様 で あ るが , 息 子 ・娘 問 の均 分 相 続 を よ し とす る考 え 方 は68.1%, 娘 中心 相 続 に傾 く考 え方 は13.

7

% , 親 の世 話 を す る者 に相 続 させ る とい う の は6.2%, 息 子 相 続 は0.6% で あ り, 両 性 の子 供 に均 等 分 に農 地 を相 続 させ る とい う意 見 が圧 倒 的 に多 い。 以 上 の よ うに, 相 続 の実 態 と して は, 息 子 ・娘 間 の均 分 相 続 事 例 が 非 常 に少 な く, 娘 中心 相 続 の 蓑7 農地相続の もっとも望ま しい方法 (D.D.1981) No. (%) 1.子供たちと親の問で均等分す る 2.親 の面倒をみる子 に農地を与える 3.子供たちの問で均等分す る 4.娘たちと親の間で均等分する 5.娘たちの間で均等分す る 6.息子よ りは娘 に多 く与える 7.原則 として子供たちの問で均等分するが,困 っ ている子供 には多 く与える 8.すべての農地をひ とりの子供 に与える 9.原則 と して娘たちに与えるが,困 って いる息子 がおれば息子 にも与える 10.原則 と して子供たちの間で均等分す るが,親 の 世話をす る娘 には多 く与える ll.相続 に関 して は, あとに残 った家族に任せ る 12.何 らかの方法で子供たちに分与す る 13.息子たちの問で均等分する 14.親の世話をす る末子に与え る 15.D.K. 計 100 (56.7) ll (6.2) 10 (5.7) 7 (4.0) 7 (4.0) 7 (4.0) 7 (4.0) 4 (2.3) 3 (1.7) 3 (1.7) 2 (1.1) 1 (0.6) 1 (0.6) 1 (0.6) 12 (6.8) 176 (100.0)

(16)

口羽,武邑 :「屋敷地共住 集団 」再考 事例 が圧 倒的 に多 いの に,意見調査 で は, 忠 子 ・娘 の間で の均分相続 が非常 に強 く望 まれ て い る。 特 に,われわれの意見調査 で は,水 野 の調査 と比 べれ ば,均分相続 の意見 が多少 強 くな ってい る。 この点 につ いて は, どのよ うに解釈 すれ ばよいのであ ろ うか。 農地 は娘 にのみ, また は娘 によ り多 く相続 させ るとい う慣行 が伝統 的 に強 いの は,息子 は婚入 先 で妻 の親 か ら農地 の相続 を受 け る こ とがで きる とい う相続慣行 を 前提 に して い る。村人 は,娘 に多 くの農地 を与 え る と,婿 の候補者 が多 い とい う。 男女 ともに農地 を均 等 分す るとい う考 え方 は,部分 的 には,農地 の開拓 の余地 がな くな り,息子 が婦人先 の妻 方 か らの農地相続 があま り期待 で きな くな っ た こ とを反映 して い るよ うに思 われ る。 しか し, この ことにつ いて は,娘 中心相続 とい う 考 え方 が経済条 件 の変化 によ って息子 ・娘均 分相続 の考 え- と変化 した とのみ いえない点 があ る。 聴取 り調査 によ る と,親 の子供 に対す る態 度 は本来平等主 義的であ る。 しか も,性別 を 問わず,困 って い る子 が 自立で きるよ うにす るため に親 は援 助す るのが望 ま しい とい う姿 勢 が親 の方 にあ る。 親 が生 前,子 に農地 を与 え る場合 には,原則 と して援 助 を必要 とす る 子 に農地 を与 え る。 これ は貸 与で はな く,譲 渡 で あ る。 この際,親 は他 の子 に も,農地 を 均等分 す ることを考 え, また は他 の子 に も相 当の ものを与 え ることを 口約束 す る。 した が って,妻方居住 制,娘 中心相続 が一般 的で あ る間 は,相続 は娘 を中心 に行 われ ることにな り,息子 は婚入先 で農地 を得 る可能性 があれ ば, 農地 を実 の親 か らも らわな い こ と に な る。 しか しまた,息子 に農地 がな くて困 って い る時 には,息子 に も農地 は分割譲渡 され る のが望 ま しい とい う考 え方 が強 く存在 す る。 このよ うな子供 に対す る親 の基本 的 に平等主 義 の姿勢 があ るため に,意見調査 で は,両性 均分相続 が強 く望 まれ ることにな る。 さ らに相続 につ いて特徴 的 に み ら れ る の は,親子 の間 といえ ど も,子供 の独 立性 が比 較 的強 く,親 は老後 を世話 して くれ る子 には よ り多 くの財 を与 え ることによ って,子 の秦 仕 に応 えな けれ ばな らな い。 あ るいは,逆 に そのよ うに親 の世話 を して くれ そ うな子 に多 く与 え る とい うことを前提 に して,子 の奉仕 を親 は期待 で きる とい う面 もあ る。つ ま り, 末 娘 といえ ど も,親 は全 くの報酬 を用 意せ ず に老後 の世話 を末娘 に期 待 で きな い面 がみ ら れ る。水 野 の表現 を借用 すれ ば,子 は 「比較 的 自由」 で

,

「相対 的独 立性」を保 って いて, 家族 の成員 を律 す る明確 な 「役割規範」 がな く,親子 の間で も

,

「損得相互依存 の感覚,相 互 に相手 を思 う気持 を価値 あ りとす る間柄 の 論 理」 がみ られ る。 表7にみ られ るよ うに,子供 の間で農地 を 均等 分す るとい う場合 で も,親 の取 り分 も含 めて,農地 は親 と子供 の問で均分 され る。 こ の親 の取 り分 を残 す方法 は, か な り古 くか ら 行 われて い るよ うであ る。 それ は,bi且phao phii また は bia phao phii khQQng PhQQ mEE と イサ ー ン語 で呼 ばれ, 文字通 りには 「両親 の霊 phiiを供養 す るお金 も しくは費 用」 とい う意味 であ るが,両親 の財産 を意味 す る言葉 であ る。 最近 で は,30歳代, 40歳 代 の村人 で も, この言葉 を知 ら な い 人 が い る。11) 親 は,生前 には困 って い る子 には農地 を譲 渡 す るが, その際,他 の子 に も均等 分 に与 え る口約束 を し, 口約束 した農地 の一部 な い し はすべてを,状況 によ って,子供 に無料貸与 また は委託管 理 させ る。 親 が老 い て, 自 ら の取 り分 を管 理 で きな くな ると,親 の世話 を よ くす る子 (末娘 とは 限 らぬ) に 管理 さ せ る。12'農地 の完全譲渡 は原則 と して,両親 の ll)これは,林行夫の現地からの通信によって得た 資料である。

(17)

束 南 ア ジア研 究 21巻3号 没 後 に行 われ る。 両親 の没 後 に,親 の農地 の相続 に関 して重 要 な ことは,原則 と して子供 き ょうだ いが集 ま って,親 の供養 のためのタ ンブ ン儀礼 につ いて話 し合 うことで あ る。子供 に, この供 養 を行 う費用 (この額 は定 ま って いな い) を捻 出す る力 がな けれ ば,親 の財産 は売却 され, まず供養 の費用 に用 い られ る。 子供 き ょうだ いが,親 の供 養 のため の費用 を分 け合 って 出 した場合 は, き ょ出された金額 に応 じ,話合 い によ って,親 の財 は分割 され る。 親 の財 産 をひ とりの子供 が相続 す る場合 には,親 の供 養 のための費用 は, その子供 が負担 しな けれ ばな らな い。 しか し,一般 には, 親 の老 後 の 世話 をす る者 が, 自分 の取 り分 の ほか に親 の 取 り分 ,つ ま り,農地 と家屋敷 を相続す ると い う考 え方 が強 い。 問題点 を整理 して お こう。妻方居住制 と娘 中心相続 は,一 見親 と娘 の関係 が息子 との関 係 よ り重視 されて い る考 え方 を反映 して い る よ うにみ え るが,必 ず しもそ うで はな い。親 の子供 に対 す る態度 は,性別 に関係 な く基本 的 に平等主 義 的で あ る。 した が って,相 続 形 態 の意見 と して は,性別 を問わな い均等分相 続 がかな り強 く望 まれ る。 しか し,妻 方居住 刺 ,娘 中心相 続 が一般 的 で, 息子 が婚入先 で 農地 を得 られ る間 は,娘 を 中心 に行 われ る相 12)結婚 した夫婦が妻方の親 と同居 してのち,独立 の家屋に住むことは,QQkhien(家を出る)とい われる。その後,経済的に自立できない場合に, その夫婦は妻方の親 と共同耕作を行うが,やが てその夫婦は親の農地の一部を,将来はその土 地を与えるという親の約束のもとに,任され, あるいは無料で貸与され,分割譲渡される。こ れらのことはQQknaa(文字通 りには水田が出 ていくの意)と呼ばれている。このQQknaaの 性質が,委託管理であったり,無料貸与であっ たり,実質的な分割譲渡であったりして,あい まいであることが多い。このため,QQknaaの 段階の親と娘夫婦の関係や農地の貸借関係を捉 えることは,簡単ではない。われわれが,この 事実に気づいたのも調査のあとであった。 続 が実 際 に 目立つ こ とにな る。 農地 は性別 を 問わず, まず困窮 して い る子 に与 え られ るべ きもので あ るか らで あ る。 このため,親 か ら 順次独 立 して い く子 の うちで,経済 的 に 自立 困難 な者 に,親 の援 助 はまず与 え られ る。 水 野 のい う屋敷地共住集 団が形成 され るの も, この.段階 で あ る。 しか し, どの子 にどの程 度 の親 の援 助 が与 え られ るか ば,子 の親 - の奉仕 の度合 いや親 の個人 的満足 の度合 いによ って, かな り親 の 窓 意 に依存 す る面 があ る。両者 の利害 関係 が 一致 すれ ば,親子 の結合 関係 もかな り強 くな るが, それ は,水 野 のい うよ うな強 い共 同規 範 や共 同感情 によ る とい うので はな く,相 互 の利害計算 のバ ラ ンス によ る面 が強 い。 ⅠⅠⅠ-4 (相 続 の事 例) 相続 に関す る上記 の 原 則 を,具体 的 な事例 の うちにみてみ よ う。 図7は,村 内居住 4人姉妹 の世帯 の,先代 か らの相続 と次代 - の財 の部分譲渡 を示 した 1 事例 で あ る。 村外 に他 出 して い る兄弟 はそれ ぞれ水 田 5rai13) を相続 ,長女 は水 田 8rai と菜 園 3rai,次女 は水 田 10rai,三女 は水 田

1

4

rai,畑

2

rai,菜囲 O.5rai,水 牛

1

頭, 四女 は水 田 15rai,畑 2rai,菜 囲 O.5rai,水 牛1 頭 と家屋 と屋敷地 を相続 して い る。 こ の 場 令, 男子 の相 続面積 は少 な く,女子 は多 く, 娘 の間 で は妹 の方 の相続 の量 が多 く,末 娘 は 一番 多 く相続 して い る。 長女 で あ る世帯番 号27-33の女世帯主 には, 亡夫 が相続 した

4

raiの水 田を合 わせ て

1

2

raiの水 田,購 入 した 1raiの畑 と相続 され た 3raiの菜 園 があ る。4人 の息子 を持 ち, 長男 (150-157)は結婚 して独 立 の 世帯 を 持 ち,小 学校 の用務員 を して い る。 次 男 は村 外 に他 出 して い る。 この4人 の息子 に,母 親 は おの おの水 田

2

raiを分割 す る と口約束 し, 2raiの水 田は長男 に耕作 させ, 他 は 自分 と 13)1raiは0.16haに当たる。

(18)

□ 出 , 免 田 ︰ 「 柳 津 蕗 沖 荷 瀬 切 」 胡 瀬 (30-34)世帯の通 し番号と家屋番号 S-0.5菜 園の相続面積 (単位 rai) L=i

=

J

(

1

-

a

_

_

o

,

)相 場 住世帯 p-5 水 B]の相続両横(単位rai) B-1 水牛1頭 U-2 畑の相続面積(単位 rai) 〔p- 1 .5〕口約束の相続面積 匡≡ヨ 経営面積 図

7

相 続 の 事 例

(19)

東南 ア ジア研 究 21巻 3号 同居 して い る独身 の三 ・四男 とともに耕 作 し て い る。 口約束 で もよいか ら分割 して おかな い と,あ とで兄弟 げんか にな る と村人 はい う。 しか し, 口約束分以外 に, まだ親 の取 り分 に 当た る水 田 4rai,畑 1rai,菜 園 3raiは, ど のよ うに分割 す るか ば決 め られて いない。 世帯番号28-3で は, 3人 の娘 がお り,母方 か ら相続 された 10raiの水 田 と 0.25raiの 菜 園 を所有 して い る。長女 は結婚 して,す で に独 立 して い るが,わずか0.25raiの菜園 を 持つ のみであ り, この娘世帯 は親 と共 同耕作 を して い る。未 だ農地 は分与 されて いない。 世帯番 号29-35の世帯主 の妻 は,親 か ら 14 raiの水 田を相続 し,夫 とともに 19.5raiの 水 田を購 入 し,計 33.5rai の水 田を所有 し て い る。1男6女 の子 持 ちで, その うちの1 男4女 は結婚 して独立 の世帯 を持 って い る。 この独立 した 4人 の娘 には,各 3raiの水 田 がすで に 所有権証書14)の 名義変更 によ り 分 割譲渡 されて い るが,実際 には手渡 されて い ない。長女 は離村 し,次女 (世帯番号23-152) は夫 が水 田

7

raiを相続 し,他 に も大工 仕事 が あ るが,親 と共 同 耕 作 を して い る。長男 (世帯番 号171-204) は親 の水 田 4raiを耕作 し,他 に収入 もないので,親 の水 田 も共 同耕 作 して い る。 これ らの事例 にみ られ るよ うに,農地 の分 割相続 は決 して単純 な もので はな く,親 は一 応,子供 に対 して は平等 に対す る姿勢 を保 つ が,実 際 にどの子 にどの程度 の農地 を与 え る か につ いて は,親 の計算や懇 意 によ る ところ がかな りあ る.長子 か ら農地 は)煩次分与 され るとい うので はな く,困 って い る子供 には何 14)土地の完全な法的所有権を得るには,知事 と県 の土地局の名のもとに交付される土地所有証書 チャノー ドを必要とする。住居の屋敷地に関し ては,1964年の水野の調査時にはチャノー ドは 交付されていた[1981:76-77】が,農地に関し ては1978年 か ら航空写真による実測図 によ っ て,チャノー ドは交付されている。 らか の形 で援助す るとい う親 の態度 が一方 に あ るが, 同時 に他方 で は,親 に仕 えれ ば報 わ れ るとい う親 に対 す る期 待 を子 に持 たせ るよ うな ところ もあ る。 子供 は結婚 して 経済 的 に 独 立可能 で あ れ ば,親 の農事 の忙 しい時 (田植 え,稲刈 り) に手 伝 う程度 で,親 の世話 を積極 的 に行 わな い。結婚 は,子供 が婚 後 た とえ親 と同居 して いて も,親 か ら独 立す る契機 とな り,同居 は厳 密 な意味で の同財 を意味 しな い。15)親 の世話 をす る者 に特 に多 くの ものを与 えね ばな らな い こと自体 ,子供 の相 対 的 な独立性 の強 さを 前提 に しての ことで あ り,財 の処分権 が最 後 まで原則 と して子 に与 え られ ないの も, その ためで あ る。 しか し

,

「共 働共食共 用」の互 助 の価値規 範 が空文化 して内面化 されて いな い とい うので はない。互助 の規範 はあ って も, 近 親 間 の共 同 の関係 には,計算 に基づ く損得 相 互依存 関係 がかな り強 くあ る ことが読 み取 られ る とい うことで あ る。 実際 の互助 関係 は,近親 の うちの持 て る者 が持 た ぎ る者 を助 けるとい う形 で行 われ る。 それ は親 か ら子供-,子供 か ら老親- の助力 にみ られ, また兄姉 か ら弟 妹- の助力 にみ ら れ る。 た とえ ば, 世帯番号141-113の世帯 主 (55歳) は,

4

人 の弟 を持 って い る。彼 は親 の死 後,親 か ら 11rai の水 田を相続 し, そ れを売却 して, 家畜 の仲買 で 利 益 を 上 げ, 自分 の農地 を新 た に購入 し,次 男 の弟 には 8 rai の 水 田 を 与 え, さ ら に 9年前 24,000 Bahtで 9.5raiの水 田を売 り渡 して い る。 その金額 の うち,4,000Baht を亡 くな った 両親- の供 養 に使 い,三 男 と四男 の弟 におの おの 10,000Baht を与 えて い る。 そ して, 五 男 の弟 には 15,000Baht を与 えて い る。 15)親の世帯と同居 している既婚の子供夫婦は,た とえ親と同居 し,同一の世帯(khQQPhien)の成 員であっても,財布を別にし,可能な場合には, 部屋の鍵も別にするようなところもある。

参照

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