原 著
倭女医蔀、纂60巻議狙覇〕
各種白血病細胞におけるインターロイキン2受容体β鎖の発現
東京女子医科大学 第一内科学教室(主任
ホシ ノ 星 野 滝沢敬夫教授,指導 溝口秀昭教授) シ難 戊(受付平成2年6月11日)
Expression of Interleukin 2 ReceptorβChain on Various L,eukemic Cells
Shigeru HOSHINO
Division of Hematology, Department of Medicine I
(Director:Prof. Takao TAKIZAWA and Leader:Prof. Hideaki MIZOGUCHI)
Tokyo Women’s Medical College
The expression of the i玲terleukin 2 receptor(IL2R)αandβchains on various leukemic cells from 44patients was studied. Flow cytometric analysis using the IL−2Rβchain−specific monoclonal antibody (MoAb)Mik一βl demonstrated the expression of the IL・2Rβchain on granular lymphocytes(GL)from all eight patients with granular lymphocyte proliferative disorders(GLPD), on adult T−cell leukemia (ATL)cells froln all three patients with ATL, and on T−cell acute lymphoblastic leukemia(T−ALL)cells from one of three patients with T−ALL. Although GL from all the GLPD patients expressed the IL−2Rβ chain alone and not the IL−2Rαchain(Tac・antigen), ATL and T−ALL cells expressing theβchain co−expressed theαchain. In two of seven patients with common ALL(cALL)and in both patients with B−cell chronic lymphocytic leukemia, the leukemic cells expressed theαchain alone. Neither theα chain nor theβchain was expressed on leukemic cells from remaining 28 patients, including all 18 patients with acute nonlymphocytic leukemia, five of seven patients with cALL, all three patients with multiple myeloma, and two of three patients with T−ALL. These results indicate that three different forms of IL−2R chain expression exist on leukemic cells:theαchain alone;theβchain alone;and both
theαandβchains.
To examine whether the results obtain6d by flow cytometric analysis actually reflect functional
aspects of the expressed IL−2R, the specific binding of 1251−1abeled IL−2(1251−IL2)to leukemic cells in l8
0f the 44 patients was studied. In addition, in seven patients,1251−IL−2 crosslinking studies were performed. The results of IL−2R expression of both 1251−IL−2 binding assay and crosslinking studies were in agreement with those obtained by flow cytometric analysis.
These resu.lts indicate that flow cytometric analysis using MoAb, anti−Tac and Mik一β1, is useful for detecting the expression of the IL−2R.chains.
緒 言
インターロイキン2(IL2)はTリンパ球の増殖
や活性化に重要な役割を担うサイトカインであ
る1).このIL2の作用はIL−2受容体を介して細胞
内に伝達されるが,近年の研究によってIL−2受容
体を構成する蛋白には少なくとも二種類あること
が明らかになってきた.これらはIL2受容体α鎖
(Tac抗原:p55)およびβ鎖(p70−75)と呼ばれ,
両鎖がヘテロダイマーを構成することにより初め
て高親和性受容体が形成される2).この高親和性
受容体は低濃度のIL−2によるシグナルを細胞内
に伝達可能である.また,α鎖は単独で低親和性
受容体を発現し,この場合はIL−2のシグナルは伝
達されないが,β鎖は単独で中親和性受容体を発
一891一
現し,比較的高濃度のIL2によりシグナル伝達が
可能である.したがって,β鎖はIL−2のシグナル
伝達に重要な役割を担うIL−2結合蛋白と考えら
れている.各種白血病細胞におけるα鎖の発現はanti−
TacモノクP一ナル抗体を用いた研究により明
らかにされ既に報告されているが3)4),β鎖の発現
に関してはβ鎖を認識するモノクローナル抗体
がなかったためcrosslinking studyを用いた研究
が一部なされているにすぎない5).今回,β鎖を認
識するモノクローナル抗体Mik一β16)を用いて各
種白血病細胞におけるIL−2受容体β鎖の発現を
検討した.対象および方法
1.対象
急性非リンパ性白血病(acute nonlymphocytic
leukemia:ANLL)18例,急性リンパ性白血病
(acute lylnphoblastic leukemia:ALL)のうち
CD10抗原陽性のcommon ALL(cALL)7例,
T細胞型ALL(T−ALL)3例, B細胞型慢性リン
パ性白血病(B−cell chronic lymphocytic leuke−
mia:B−CLL)2例,多発性骨髄腫(multiple
myeloma:MM)3例,穎粒リンパ球増多症7)
(granular lymphocyte proliferative disorders:
GLPD)8例,成人T細胞白血病(adult T−cell
leukemia:ATL)3例を含む44例の患者を対象と
した.患者末梢血をヘパリン加採血し,フィコー
ルコンレイ比重遠心法にて単核球を分離し実験に
用いた.2.フローサイトメーターによるIL・2受容体
鎖発現の検討
IL−2受容体α鎖を認識するモノクローナル抗
体anti−Tac(CD25),およびβ鎖を認識するモノ
クローナル抗体Mik一β1(都臨床研,通堂満博士よ
り供与)を用い,間接蛍光法により陽性細胞を発
色させフローサイトメーター(FACS 440)で判定
した.3.1251標識IL−2結合能の検討
1251標識IL2(1251−IL−2)結合能の検討は通堂ら
の方法8)に従った.クμラミンT法により1251を
標識したIL・2(比活性1.05∼1.07MBq/μg)を,
過剰の非標識IL−2存在あるいは非存在下で
4℃60分間,細胞と反応言置させ,遠心後沈澱中
の放射活性を測定した.非標識IL−2非存在下での
放射活性である総結合能から,過剰の非標識IL・2
存在下での放射活性である非特異的結合能をさし
ひいた値を特異的結合能として算定し,Scatchar−
d解析により解離定数(Kd)および受容体数を算
定した.4.Crosslinking study
l251−IL−2を用いたcrosslinking studyは通堂ら
の方法8)に従い,1∼2×107個の細胞を過剰の非
標識IL−2非存在あるいは存在下で,または過剰の
Mik一β1存在下で,12‘1−IL2と4℃60分間反応さ
せ,2mMのdisuccinimidyl suberate(DSS)で
固着後,細胞を融解し,還元条件下で7.5%の
sodium dodecyl sulfate−polyacrylamide gel
electrophoresis(SDS−PAGE)を行い検討した.
結 果
1.フローサイトメーターによるIL・2受容体
α鎖およびβ鎖の発現
モノクローナル抗体anti−TacおよびMik一β1
を用いたフローサイトメーターによる各種白血病
細胞におけるIL−2受容体鎖の発現についての結
果を表1に示す.18例のANLL全例,7例の
cALLのうち5例,3例のMM全例,3例のT−
ALLのうち2例においてα鎖およびβ鎖のいず
表1 フローサイトメーターによるIL−2受容体鎖発 現の検討 α(一)β(一) α(+)β(一) α(一)β(+) α(+)β(+) ANLL (n=18) 18 0 0 0 cALL (n=7) 5 2 0 0 B−CLL (n;2) 0 2 0 0 MM (n=3) 3 0 0 0 T−ALL (n=3) 2 0 0 1 GLPD (n=8) G 0 8 0 ATL (n=3) ⑪ 0 0 3 α:IL−2受容体α鎖,β:IL−2受容体β鎖, ANLL:acute nonlymphocytic leukemia, cALL:common acute 豆ymphoblastic leukemia, B−CLL: B・cell chronic lymphocytic leukemia, MM;multiple myeloma, T− ALL:T−cell acute lymphoblastic leukemia, GLPD: granular lymphocyte proliferative disorders, ATL:A
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T・ALL縄ELATIVE FLUORESC【…NCE I凹TE吋SITY
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出 臣 ≧ 言3
15 1.5 a cALL 1.0 0.5 o 0 10 20 30 40 50 50 70 30 d ATL 20 10 o o 10 20 30 A。 1.0 0.5 o 1.o b 3・CLL o 5 1o 1.5 LO 0.5 o ・巳。 o O o Q 趾POs 15 0 5 10 15 20 0.5 o e o 下・ALL 0 5 10 15BOU閥01L−2 (moiecules×馨0』2 per cell)
図1 各種白血病細胞におけるIL2受容体α鎖あるいはβ鎖の発現
フローサイトメーターでの検討,IL−2受容体α鎖を認識するモノクローナル抗体 anti・Tac(破線),あるいはβ鎖を認識するMik・β1(実線)を用いFACSで検討した. 点線はコントロールとしてsubclassを適合させたコントロールモノクローナル抗体 (UPC 10)を用いた結果を示す.(a)cALL,(b)B−CLL,(c)GLPD,(d)ATL, (e)T−ALL。 B.各種白血病細胞での’251−IL・2特異的結合のScatchard解析パターン.れも発現していなかった.7例のcALLのうち2
例,2例のB−CLL全例でα鎖のみ発現していた
(図1Aa, b).一方, GLPD患者8例では全例でβ
鎖単独の発現を認めた(図1Ac).3例のATL全
例およびT−ALLのうち1例ではα鎖およびβ
鎖共に発現していたが,ATLとT−ALLでは蛍光
パターンが異なっており,anti−TacおよびMik一
β1共にT−ALLでの反応性はATLに比して弱
かった(図1Ad, e). 2.1251・IL、・2結合能フローサイトメーターでのIL−2受容体鎖の発
現と実際のIL−2結合能の相関を評価するため,44
例中18例において1251−IL2の特異的結合能を検討
した.特異的結合能から得られたScatchard解析
の結果を表2に示す.α鎖β鎖のいずれも発現し
ていなかった6例(ANLL 3例, cALL 1例, MM
表2 1L2受容体鎖発現と特異的1251−IL−2結合との相関
High・a伍nity IL−2R Intermediate・af五nity IL−2R Low−a伍nity IL−2R
sites/cell Kd(pM) sites/ce11 Kd(nM) sites/cell Kd(nM)
α(一)β(一)
ANLL
(n=3) 一 一 一cALL
(n=1) 一 一 一MM
(n=1) 一 一 一 T・ALL (n=1) 一 } 一 α(+)β(一)cALL
(n=1) 一 一 7,345 9.01 B−CLL (n=1) 一 一 1,044 6.67 α(一)β(+)GLPD
(n=7) 一 L425±267 1.68±0.50 一 α(+)β(+)ATL
(n=2) 465±25 15.00±2.00 一 4,978±686 8.37±1.23 T−ALL (n=1) 184 204.00 一 1,059 4.24 解離定数(Kd)と結合数はScatchard解析により算定した.結果はmean±SDで示す. α:IL−2受容体α鎖,β:IL2受容体β鎖1例,T−ALL 1例)ではIL−2の特異的結合は認
められなかった.α鎖のみ発現している白血病細
胞(cALL 1例, B−CLL 1例)では特異的な低親
和性の1251−IL−2結合のみを認めた(表2,図1Ba,
b).β鎖のみ発現しているGLPD患者7例の細胞
では中親和性の結合部位(Kd=1.68±0.50nM,受
容体数=1,425±267個/細胞)のみを認めた(表2,
図1Bc).α鎖β鎖共に発現しているATLでは
2例とも少なくとも二相性の結合部位が認めら
れ,高親和性結合部位のKdは15.0±2.OpMで受
容体数は465±25個/細胞,低親和性結合部位の
Kdは8.37±1.23nMで受容体数は4,978±686個/
細胞であった(表2,図1Bd).同様にα鎖β鎖
共に発現しているT−ALLの1例では二相性の
IL−2結合部位を認めたが, Scatchardプロットの
パターンはATLとは異なっていた(図1Be).
3.Crosslinking study
7例の患者でcrosslinking studyを検討した.
結果を図2に示す.フローサイトメこターでα鎖
β鎖のいずれも発現していなかった2例の
ANLL患者と1例のcALL患者細胞ではcross−
linking studyでも特異的なバンドは検出されな
かった(レーン1∼3).α鎖のみ発現していた
cALL患者細胞では分子量65,000∼75,000のバン
ドが検出され,これはα鎖(分子量55,000)とIL一
2(分子量15,000)が固着した結果と思われた(レー
ン4).この細胞では同時に分子量約110,000のパ
ソドも認められたが,この蛋白(分子量95,000)
はα鎖関連蛋白として報告されている
p95(T27)9)であることが示唆された.これら2本
のバンドは過剰の非標識IL2の添加によって消
失したが(レーン5),過剰のMik一β1添加では影
響されなかった(レーン6).2例のGLPD患者で
はフローサイトメーターでの結果と同様にβ鎖
のバンドのみが検出され,過剰の非標識1し2ある
いはMik一β1添加により消失した.代表的な例を
レーン7∼9に示す.ATLの1例では3本のバ
ンドが検出され(レーン10),これらは過剰のIL−
2添加で消失した(レーン11).分子量70,000と
90,000のバンドは各々α鎖とβ鎖に対応するが,
分子量約60,000のバンドの起源は明らかではな
かった.考 察
今回,各種白血病細胞でのIL2受容体β鎖の
発現について検討した.フローサイトメーターの
検討では,44例の対象患者細胞のうちIL−2受容体
β鎖の発現は8例のGLPD全例,3例中1例の
T−ALL,3例のATL全例の細胞で認められた
(表1).これらのβ鎖陽性例において,GLPDは
全例でβ鎖単独の発現であったのに対し,ATL
一894一
A 8 0
A閥U胡LLc乱し mrX10−3 200一 92.5一 69一 46一 30一一一一
0
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学頭 磯
幽上野切開。 」醐』一
1 2 3
α(一)β(一) 4 5 6 α(+)β(一)E
6LPO3一
噸■一. βゆ・ (一一α一
7 8 9
α(一)β(+) F解し
一
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輪rX10−3へ200一,㌃
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92.5一●一β
一\69_ ・ _。
鎭.噸…、一誌
一30
図2 1251・IL・2を用いたcrosslinking study臨
10 11 α(+)β(+) 各種白血病細胞は,過剰の非標識IL−2非存在下(レーン1−4,7,10)あるいは存在 下(レーン5,8,11),または過剰のMik・β1モノクローナル抗体存在下(レーン6, 9)でi251・IL・2と艀置し, DSSで固着後, SDS・PAGEを施行した.(A−B)ANLL 2 例,(C)フローサイトメーターでα鎖β鎖のいずれも検出されなかったcALL例, (D)フローサイトメーターでα鎖のみ検出されたcALL例,(E)フローサイトメー ターでβ鎖のみ検出されたGLPD例,(F)フローサイトメーターで両氏共に検出され たATL例.点線の矢印はα鎖,β鎖以外の起源不明のバンドを示す.では全例でα鎖β曲面に発現していた.また,B
細胞系の白血病の一部(cALL 7例中の2例, B・
CLL 2例中の2例)ではα鎖の単独発現を認め
た.これらの結果から,白血病細胞におけるIL・2
受容体鎖の発現は病型により差があり,α鎖単
独,β鎖単独,α鎖β鎖両者が発現している3型
があることが示された.白血病細胞におけるIL・2
受容体鎖の発現に差があることの意義は,まだ明
らかではないが,これまでの報告から2}4)8),IL2受容体鎖の発現型によりIL−2に対する感受性やシ
グナル伝達に差があることが推測され;白血病細
胞へのIL・2の作用も発現型により差があるもの
と思われる.フローサイトメーターでのIL・2受容体鎖の発
現パターンと,1251・IL・2結合とは密接な関連があ
り,α鎖単独発現細胞は一相性の低親和性IL・2結
合部位,β鎖単独発現細胞は一相性の中親和性
IL・2結合部位,α鎖β鎖両者を発現する細胞は多
相性のIL・2結合部位を各々有していることが示
された.また,crosslinking studyでも,フ巨一サ
イトメーターでのIL・2受容体鎖の発現と相関し
たパソドが検出された.したがって,フローサイ
トメーターによるIL2受容体鎖発現の検討は簡
便に白血病細胞におけるIL・2受容体の有無を評
価できる方法と思われる.
Rosolenら5)は,各種白血病細胞におけるIL・2
受容体β鎖の発現をcrosslinking studyを用い
て検討し,ANLL, cALL, B・CLL, T−ALLなど
を含む全ての白血病細胞でβ鎖が発現していた
とし,ほとんどの白血病に対してIL・2 tQxinやア
イソトープ標識したIL・2を用いて治療できる可
能性があると報告している.しかし,今回のフロー
サイトメーターでの検討では,44例中28例でIL・2
受容体はα鎖β高高に発現しておらず,ANLL
あるいはB細胞系白血病でβ鎖が発現していた
例は1例もなかったことから,IL・2 toxinやアイ
一895一
ソトープ標識したIL−2が広く白血病治療として
用いられるものではないと思われる.また,この
結果の差は手技の違いや,症例の違いなどに起因
するかもしれないが,crosslinking studyだけで
は白血病細胞以外の混在するTリンパ球などに
発現したβ鎖を増幅して評価してしまう可能性
が否定できない.今回の検討によりT細胞系白血
病細胞に比して,B細胞系白血病あるいはANLL
ではβ鎖の発現がまれであることが示唆された.
稿を終えるにあたり,御指導,御校閲を賜りました
溝口秀昭教授に深く感謝いたします.また,終始,御
助言,御鞍i捲下さいました押味和夫助教授に心より感
謝いたします. 文 献1)Smith KA:T−cell growth factor. Immunol Rev 51:337−357,1980
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