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公益社団法人東京都理学療法士協会 平成 24 年度研究機器貸し出し助成報告書 1. 人工膝関節置換術後患者に対する臨床的歩容評価尺度の開発と信頼性 妥当性の検討 苑田会人工関節センター病院リハビリテーション科廣幡健二先生 2. 日本人の人工膝関節置換術後患者における患者立脚型アウトカムによる QOL

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Academic year: 2021

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公益社団法人 東京都理学療法士協会

平成

24 年度研究機器貸し出し助成報告書

1.人工膝関節置換術後患者に対する臨床的歩容評価尺度の開発と信頼性・妥当性の検討 苑田会人工関節センター病院リハビリテーション科 廣幡健二先生 2.日本人の人工膝関節置換術後患者における患者立脚型アウトカムによるQOL 評価へのレスポンスシフト現 象の影響 苑田会人工関節センター病院リハビリテーション科 美崎定也先生 3.撮影条件の違いによる測定誤差に関して 東京医療学院大学保健医療学部 羽田圭宏先生 4.ロコモティブシンドローム対象者のロコトレ実施による動作能力と転倒意識の変化 ~ロコトレ実施の有無による比較検討~ 東京大学医学部附属病院リハビリテーション部 天尾理恵先生

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1.人工膝関節置換術後患者に対する臨床的歩容評価尺度の開発と信頼性・妥当性の検討 苑田会人工関節センター病院 廣幡健二 Key Word;人工膝関節置換術、臨床的歩容評価尺度、身体活動量 【はじめに】 人工膝関節置換術後の歩容について、これまで多くの報告がある。しかし、歩容を定量的に評価する尺度は開 発されていない。本研究では人工膝関節術後患者の歩容をデジタルビデオカメラ映像から定量化する臨床的評価 尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検証することを目的とした。 【方法】 はじめに、人工膝関節置換術後患者の歩行に関する先行研究や他の評価尺度を参考に、pilot 版の臨床的歩 容評価尺度(Gait Rating Scale for Knee Arthroplasty:GRSKA)を作成した。その後当院に所属する理学療法士 から、文章表現や評価が困難な内容について聴取した。その内容を修正し暫定版GRSKA を完成させた。暫定 版GRSKA は、歩行を前額面と矢状面から評価するものとし、全般的、時間的因子、上肢運動、頸部/体幹運 動、下肢運動の5 つの大項目を 24 の小項目に分けた。各項目を 4 段階で評定して点数が高いほど歩容が悪い ことを示し、合計得点は0-72 点を取るように設定した。 次に、歩容評価に用いる動画サンプル収集のため、当院にて人工膝関節置換術を施行した54 名を対象に 2 台のデジタルビデオカメラによる快適歩行の動画撮影を行った。対象の包含基準は測定日の段階で歩行自立し ている者とした。除外基準は1)中枢神経系疾患及び重度の心疾患、呼吸器疾患を有するもの、2)認知力が低下 し、意思疎通が困難な者、3)研究の同意が得られない者とした。妥当性の検討のため歩行効率の指標として、 生理的コスト指数(Physiological Cost Index:PCI)を測定した。PCI は 3 分間歩行時の歩行速度と歩行前後の心 拍数の変化量から算出した。また、活動レベルの指標としてJapan High Activity Arthroplasty Score(以下、 JHAAS)を評価した。動画サンプルに対する暫定版 GRSKA 評価データをもとに、検者間信頼性と検者内信頼 性を検証した。合計点数に対し、級内相関係数とBland-Altman 分析を行い、各小項目に対しては重み付け Kappa 係数と一致率を算出した。妥当性の検証には PCI と JHAAS の総得点と暫定版 GRSKA の総得点を、 相関係数を用いて分析した。有意水準は5%とした。 【倫理的配慮】 本研究は、研究者が所属する病院の倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:第 6 号)。対象者には事前に研 究の趣旨を説明し、同意を得た。 【結果】 暫定版GRSKA の再評価における各項目の重み付け Kappa 係数は 0.36-0.82(p<0.05)で一致率は平均 71.6±9.3%であった。合計点に対する級内相関係数は検者内で 0.91-0.98、検者間で 0.65-0.87 であり、 Bland-Altman plot では検者内の系統誤差は示さなかったが、検者間で比例誤差を認めた。相関分析の結果、 暫定版GRSKA と PCI(r=0.46)並びに JHAAS(r=-0.60)の間に有意な相関を認めた。

【考察】 今回作成した人工膝関節置換術後患者に対する臨床的歩容評価尺度は、再評価の信頼性と妥当性が示され、 歩行効率と術後活動レベルを検討する上で、有用な評価尺度となり得る。しかし、検者間において評定の不一 致や比例誤差が存在することから、判断基準を明確にする説明の追記や文章表現の変更などの修正が必要であ る。 【理学療法学研究としての意義】 人工膝関節置換術後患者の臨床的歩容評価尺度が実用的となれば、術後歩行の質的な要素を簡便に定量化し て追跡することが可能であり、理学療法の治療効果を判断する有用な評価尺度となると考える。

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2.日本人の人工膝関節置換術後患者における患者立脚型アウトカムによるQOL 評価へのレスポンスシフト 現象の影響

美崎定也1),古谷英孝1),廣幡健二1),木原由希恵1),田中友也1),杉本和隆2)

1)苑田会人工関節センター病院リハビリテーション科,2)同整形外科 【はじめに】

近年,患者の主観に基づく患者立脚型アウトカム(Patient-reported outcome; PRO)を用いたQuality of Life (QOL)の評価が盛んに行われている.しかし,QOL に対する患者自身の価値観は,治療等の介入前後で変化 し,主観的評価の結果に影響を与えることが指摘されている.この様な時間の経過に伴う価値観の変化は,レス ポンスシフト現象(response shift phenomenon; RSP)として説明されている.本研究の目的は,日本人の人工 膝関節置換術後患者のPROによるQOL評価において,1)RSPの有無を明らかにすること,2)QOLに対する 患者満足度へのRSPの影響を明らかにすることとした.

【対象と方法】

研究デザインは,Then-test法(治療後のある時期において,治療前の状態を振り返って回答させる方法)で 行った.対象は,当院で初回人工膝関節置換術を受けた者とした.測定項目は,1)Western Ontario and McMaster University Osteoarthritis Index 疼痛および身体機能(WOMAC),2)術後QOLに対する11段階 の満足度(満足度)とした.WOMACは,術前,術後に聴取し,術後聴取しえた者に対して,Then-test(then), 満足度を郵送により回答させた.統計解析は, WOMAC術前スコアおよびthenスコアで対応のあるt検定, Bland-Altman分析を行い,CohenのEffect Size(ES)を算出した.また,満足度とWOMACスコアとの相関分析 を行った. 【結果】 質問票を郵送した150名中112名(男性21名,女性91名)から回答を得た,年齢(平均±標準偏差)は72.9±8.0 歳,BMIは24.7±3.6kg/m2,術後経過日数は350±273日であった.WOMAC術前スコアよりもthenスコアは有意 に低値を示した.術前とthenスコア差は,WOMAC疼痛において-10.1点(95%信頼区間;-16.1~-4.2)であり, ESは0.49であった.WOMAC身体機能においては,-4.4 (-8.7~-0.0)であり,ESは0.19であった.WOMAC術前 後スコア差と満足度には相関は認められなかったが,術後thenスコア差と満足度には相関が認められた (WOMAC疼痛;r=0.35, WOMAC身体機能:r=0.36). 【考察】 日本人の人工膝関節置換術後患者において,PRO による評価に RSP が存在していた.実際の術前の状態と比 較し,振り返った術前の状態のほうがより強い痛みを有し,低い身体機能であったと見積もっていることが示さ れた.加えて,術後の QOL に対する満足度は,術前後のスコア差ではなく,術後と then-test とのスコア差と 関連していたことから,PRO を用いて人工関節置換術前後の評価をする際は,術前後のスコア差だけでなく, RSP の影響を考慮すべきである.

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3.撮影条件の違いによる測定誤差に関して 羽田圭宏 1) 松本 譲2) 1) 東京医療学院大学 保健医療学部 2)帝京大学福岡医療技術学部理学療法学科 【はじめに】理学療法を行う上で日常の動作や歩行を観察し,その状態を解釈することは治療を組み立てるうえで重 要になる.近年,簡便に使用でき安価である程度の定量化が可能であることから,ビデオカメラを用いた動作分析の 信頼性に関する研究報告がなされている.しかし,これらの測定方法は,カメラの設定条件を含めた画像処理の問 題・カメラ特有の画像特性の問題,そして測定時に使用する解析システムの問題など考慮するべき点が多いこと が欠点となる.そこで,我々は学生教育や臨床現場における動作分析の一つの手段として活用できることを目的 とした動作測定プログラムMMP(Motion Measurement Program:MMP)の作成を行い,その測定精度を検 証し高い信頼性を得た. MMP は,測定の際基準となる 3 点の中心座標を検出し角度測定をするが,画像の解像 度の限界から画像特性の問題(デジタル誤差)が生じることが考えられる.そこで,画像条件の違いによりどの程 度の測定誤差が出現するかを検証し,より最適な撮影方法を検討することを目的とした. 【対象・方法】検者は,研究の趣旨について説明し同意を得た本学学生1名に設定条件の異なる画像16 枚を使用し て角度測定を行わせた.使用する画像はEXCEL のシート上に 640×480 ドットの領域を設け,自由な角度で 3 点の マーカーを描写し,画像の比率を変更ができるプログラムを作成し,16 枚の異なる画像を作成した.MMP の具体的 な操作方法としては,静止画像上の3 個のマーカー上を選択して座標を検出し,角度を算出した.各検者には事前に 実技を交えながら測定方法を説明し,16 枚の画像をそれぞれ 25 回ずつ計測させた.測定順序は,順序の影響を 除くため,乱数を使用し設定した. 解析方法は,各画像の角度に対して反復測定による分散分析をみるためにフリ ードマンの検定を用い検証した.検定における有意水準は5%とし,本統計分析には IBM SPSS Statistics 20 を 用いた. 【説明と同意】本研究は、東京医療学院大学研究倫理委員会の承諾を得ており、本研究の趣旨と内容について測定者 に十分な説明し同意を得た後、研究を開始した. 【結果】角度は,16 枚の画像の間で反復測定による分散分析を行った結果,P=0.847 で有意な差は認められなかっ た.16 枚の画像における標準誤差は,最大 0.49 で最小 0.14 であった. 【考察】ビデオカメラを使用した分析プログラムの有効性について多く論じられているが,細かな撮影条件に関 して述べている文献は少ない. 今回の結果からは画像の設定条件による角度の平均値の差は見られなかったが, 画像の比率が小さくなるほど測定値の標準誤差が大きくなった.つまり、撮影方法により一辺の長さが短いほど、 マーカーの検出誤差が角度に大きく影響することが予測された.

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4.ロコモティブシンドローム対象者のロコトレ実施による動作能力と転倒意識の変化 ~ロコトレ実施の有無による比較検討~ 天尾理恵1) ,大竹祐子2) ,緒方直史2) ,芳賀信彦2) 1)東京大学医学部附属病院リハビリテーション部 2)東京大学医学系研究科リハビリテーション医学分野 【はじめに】理学療法士によるロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)対象者の予防的介入を行う研究にお いて、ロコモーショントレーニング(以下、ロコトレ)実施の有無で、筋力・バランス等に差が生じるかの比較 検討を行ったので報告する。 【対象および方法】対象はロコチェックでロコモと判断された50~70 歳代の 25 名(男性 1 名、女性 22 名)で、 ロコトレを6 ヶ月間実施する早期介入群(12 名、以下早期群)と 3 ヶ月の待機の後、3 ヶ月間実施する介入待機 群(13 名、以下待機群)の 2 群に分けた。 評価はCybex を用いて計測した膝関節筋力、片脚立位時間、3 分間歩行距離、及び、ロコモ 25、Tinetti の転倒 不安、SF36 をスコア化した。統計は初回・3 ヶ月後、及び初回・6 ヶ月後の評価における 2 群間の比較と、群内 における初回・3 ヶ月後・6 ヶ月後の比較を行った。早期群には初回評価後、待機群は 3 ヶ月後にそれぞれの能 力に応じた方法でロコトレ(スクワット・片脚立位)を指導し、日常生活での実施を促した。 【結果】群間比較では、早期群で3 ヶ月後の片脚立位時間が有意に延長し、SF36 の 6 ヶ月後評価では日常役割 機能(身体:RP)で早期群が、体の痛み(BP)で待機群が有意に改善した。群内比較では早期群の 6 ヶ月後の 膝伸展筋力が有意に大きく、初回と比較し6 ヶ月後の転倒不安スコアが有意に向上したが、待機群では有意な差 は認められなかった。初期評価において全被験者のうち20名は、片脚立位が15秒以上可能であった。SF36 では早期群の6 ヶ月後で RP、日常役割機能(精神、RE)が、また、待機群の 6 ヶ月後の BP、3 ヶ月後の全身 的健康感(GH)が有意に改善した。 【考察】3 ヶ月のロコトレ実施により片脚立位時間が有意に改善しているが、早期群の郡内比較では初回・3 ヶ 月後の結果で有意差は認めなかったことから、3 ヶ月間のロコトレにより能力を維持できた一方で、待機群の片 脚立位時間がやや短縮した結果とも考えられる。早期群は6 ヶ月間を通しては、筋力と転倒不安スコアが向上し たが、待機群では変化しておらず、運動の頻度や負荷にもよるが機能改善には6 ヶ月程度の運動継続が必要であ ることが示唆された。両群において運動をする機会を得たことで精神的には身体・心理的な改善の実感が得られ たと考えられ、身体機能維持のための機会作りが重要であると考える。今回は片脚立位15 秒以上の被験者が 20 名と比較的動作能力が高い被験者であったことから変化が乏しかったと考えられ、今後はより動作能力の低い被 験者での検討が必要であると考える。

参照

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