読み書き障害者のための
視覚シンボルを用いた
ふりがな付与システムの開発
田中 健太・西方 敦博
読み書き障害とは
•
ディスレクシアとも呼ばれるdys (
失う、不足した)
+ lexia (
単語、言葉)
•
神経生理学的要因による読み書き能力の特異な 発達障害で、知的障害や視覚障害ではない•
社会や教育の機会によらず世界中に存在するÜ
世界人口の5%
以上,
日本でも3-4%
前後•
文字や音声言語の認識、書字の困難、適応能力 や空間認識能力の低さを主症状とする 1ディスレクシアの症例
正解 回答 読み間違い 粉を練(ね)る 粉を練(あつめ)る お肉が安(やす)いです お肉が安(おいし)いです さかな 書き間違い めがね 語・鳥・健 湖・庭・州 2ディスレクシアの症例
正解 回答 読み間違い 粉を練(ね)る 粉を練(あつめ)る お肉が安(やす)いです お肉が安(おいし)いです さかな 書き間違い めがね 語・鳥・健 湖・庭・州鏡文字
3ディスレクシアの症例
正解 回答 読み間違い 粉を練(ね)る 粉を練(あつめ)る お肉が安(やす)いです お肉が安(おいし)いです さかな 書き間違い めがね 語・鳥・健 湖・庭・州類字の混同
4ディスレクシアの症例
•
鏡文字、類字の混同、文脈からの類推•
意味と関係ない場所で区切る•
文字の順序の入れ替わり、読み方向の誤り•
直線上に綴れない、行を読み飛ばしてしまう•
句読点を使わない、文章構成の未熟さ•
音声言語でも聞き間違い、再生の困難、発話速 度に対応できないなどの問題がある 5ディスレクシアの言語処理
従来のディスレクシア支援手段
•
教育による克服・文字を読み上げる支援が主流•
人手による支援はコスト高•
音声ブラウザ、スクリーンリーダ、音声入力•
スキップ、聞き直し、再生速度の調節が難しい•
教科書を読み上げると教師の声が聞こえない•
ディスレクシアは視力が悪いわけではないÜ
視覚情報のまま提示したほうが効率的
7視覚シンボルによる支援
•
いわゆる“
絵文字” /
コミュニケーションのため に整備された図記号の体系•
言語や年齢によらず、一読して理解できる•
文字ではなく絵として処理されるので、 ディスレクシアにもわかりやすい!•
マイペースで読み飛ばし、読み返しができる•
本研究では特に、日本版PIC
シンボルを利用 8日本版
PIC
シンボルの一例
日本版
PIC
シンボルとは
• Pictogram Ideogram Communication
•
黒地に白で、視認性が高い•
臨床例や知覚・認知心理学的研究が多くあり、 有効性が実証されている•
語彙が豊富で生活に密着、適用年齢が幅広い•
「コミュニケーション支援用絵記号デザイン 原則」(JIS T 103)
に採用されている 10ふりがな付与システムの開発
• Mozilla Firefox
の拡張+ CGI
の組み合わせ• Web
ページのテキストを解析し、単語に視覚 シンボルの“
ふりがな”
をふる•
PIC
シンボルを読みのヒントに用いる•
利用可能なPIC
シンボルは1979
個•
それぞれのシンボルの類語を合わせると、 語彙はおよそ5000
語 11システムの構成
• Firefox
の拡張機能→ XUL
(XML User Interface Language)■ 実質的にはURLをサーバに送るだけ
• CGI
プログラム■ Perl 5.8.8, Chasen 2.4.2, Kakasi 2.3.4などで開発
■ 単語 → シンボルの対応関係を記述した辞書ファイル
カンマ区切りのシンプルな形式
‘‘pic xxxxx.jpg, わたし, おれ...’’
システムの動作
システムの動作
• Firefox
Ü
表示しているページのURLをCGIに送信• CGI側での処理 ■ ページのHTMLを取得 ■ HTMLファイルを形態素解析 ■ 形態素ごとに、シンボルの有無を検索 ■ シンボルがあった場合は、もとのテキストにふり がなとして付与してFirefoxに表示 14
システムの処理結果
ふりがなシンボルをクリックすると拡大表示
ディスレクシアによる評価
•
シンボルを隠して読んでいたÜ
シンボルを読みのヒントに使うという方略を 身につけていないため•
単語を指で押さえながら読んでいたÜ
シンボルが表示されるぶん、単語間に空白ができるため•
シンボルそのものには強い興味を示したÜ
シンボルを印刷したカードで母親と会話したり、 カテゴリーごとに整頓して遊ぶなどの行動 16今後の課題
•
ディスレクシアによる評価をもとに、 さらなる改良をおこなう•
ディスレクシアのピクトグラム認知や、 他の言語に関する障害への応用可能性を検討•
語彙・シンボルの拡充•
本システムとOCR
を組み合わせ、PDA
などか ら利用することでいつでもどこでも使えるシステムへ
17未来予想図
I
未来予想図
II
未来予想図
III
まとめ
•
読み書き障害(
ディスレクシア)
は言語に関す る高次脳機能障害で、学習障害の中心的症状•
視覚シンボルは脳でイメージ処理されるので、 ディスレクシアにもわかりやすい•
Web
ページに視覚シンボルのふりがなを 付与するシステムを開発した•
有効性は確認できずも、改良点が明確になった 21以下質疑用のおまけスライド
読み書き障害とは
• ふつうの学習法は効果が低く、知能が平均以上で あっても、社会進出が妨げられている • 推論、論理的思考能力、空間把握能力に優れたディ スレクシアもおり、数学などに天才的才能を示す • 科学者や弁護士、経営者や作家など成功を収めてい る人も多い ■ レオナルド・ダ・ヴィンチ、エジソン、アインシュタイ ンなどがディスレクシアであったと考えられている 23英語圏ディスレクシアの症例
1
英語圏ディスレクシアの症例
2
• 句読点がない、大文字を使わない • 単語中の文字の入れ替わり (night → nigthなど) • 文字の順序がおかしい (was → sawなど) • 接頭語、接尾辞の省略、時制が不正確 • 正確に直線上に綴ることができない、文章構成が未熟• 読みにおいても発音や読み方向の誤り (was → saw, dog
→ godなど)、句読点の無視、語の短縮 (remember →
rember, suddenly → sunlyなど)、読み飛ばし、同じ単語
を何度も読むなどの症状がみられる