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れ 一 定 数 の 新 たな 養 育 が 開 始 される 他 方 生 まれた 子 どもは 成 長 し 成 年 に 達 して 育 児 は 終 わっていく この 循 環 の 中 でいったいどれくらい の 数 の 育 児 において 子 どもの 安 全 に 重 大 な 危 険 をもたらすような 事 態 が

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Academic year: 2021

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子ども虐待の現状

Ⅰ.総論

キーワード 子ども虐待、虐待の早期対応、虐待の未然防止 母子愛育会日本子ども家庭総合研究所子ども家庭福祉研究部部長

 山

やま

 本

もと

 恒

つね

 雄

1.子ども虐待件数が示していること

-私たちは何を知っているのか

 全国児童相談所が平成24年度1年間に取り扱っ た子ども虐待相談件数は 6 万 6 千件を超えた1) これまで児童相談所の子ども虐待相談件数は、全 国の総計件数としては増加の一途をたどってき た。これは全国自治体のうち、約半数強の自治体 の増加状況を反映したものである。厚生労働省の 統計報告を児童相談所設置自治体別にみると、毎 年およそ 3 割前後の自治体の子ども虐待相談件数 は前年度比ではむしろ減少しており、平成 24 年 度においても 20 自治体では相談件数は減少を示 している。全体件数の増加はこの一部自治体の減 少分も飲み込んだ上での増加である。  もともと、全国児童相談所は毎年 30 万件台の 相談に対応している。子ども虐待相談 6 万件はそ の一部である。ただし 1 件当たりの業務量として は、子ども虐待相談はその他の一般的相談の 10 倍以上といわれている2, 3)。6 万件の子ども虐待相 談は、その他の一般相談に換算すると 60 万件を はるかに超える業務量を要しているとみられる。  平成 16 年の児童福祉法改正により、子ども虐 待相談の通告受理から安全確認までの初期対応 は、児童相談所だけでなく、全国約 1,900 か所の 区市町村でも対応することとなった。さらにはそ れらの事案の進行管理を区市町村が主催する要保 護児童対策地域協議会において、行うこととなっ た。区市町村でも、従来から子どもについての相 談は毎年 30 万件台あり、子ども虐待相談はその うちのおよそ 5 ~ 6 万件と見込まれる。  ちなみにここで計上されている子ども虐待相談 件数は、厚生労働省の報告基準によれば、通告さ れるか、あるいは何らかの情報提供によって特定、 認知された事案のうち、初期調査、目視現認等に よる安全確認調査により、結果として何らかの子 どもの安全に関する養育上の問題があると確認さ れた件数のみを示している。もとの通告件数や調 査対応となった全件数は計上されていない。

2.子ども虐待の発生件数と発見・発覚件数

-私たちが知っておくべきこと

 図 1は平成 2 年度からの全国児童相談所が扱っ た子ども虐待相談件数の推移である。統計を取り 始めた平成 2 年度に比べて、平成 24 年度はその 61 倍、虐待防止法が制定された平成 12 年からで も 4 倍という増加になる。年度単位ではこの間、 に示すように注目すべき増加を示した 3 つの時 期がある。いずれも社会的な事件による世間への 注意喚起刺激に応じての件数増加がうかがえる。 社会的に耳目を集める事件があったからといっ て、わざわざ不適切養育を始める家庭が増加した とは考えにくい。だとすればこの件数増加は、も ともとその時点で巷に散在していた「気になる事 案」を、誰かが新たに通告し始めた結果としての 発覚件数であると考えるのが妥当である。このこ とから透けて浮かび上がるのは、この巷に、平 成 2 年当時から、あるいは現在、いったい何件の 養育における子どもの安全問題が発生しているの か、という疑問である。毎年子どもは新たに生ま

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無いとしても、およそそれ位の差があるとすれば、 まだまだ圧倒的に未発見の件数が多いということ になる。この巨大な暗数の中で、改善の無いまま 終結していく育児もあり、一時の危機を超えて修 復される親子もあるのだろうが、何よりも残念な のは、毎年度新しく開始される育児の中からも一 定数の不適切養育が繰り返し発生していると見込 まれること、そしてそのいくつかは虐待死に至る 深刻な事態を形成していることである。  図 2は平成 11 ~ 23 年度までの各年度別虐待種 別別の件数推移を示す。平成 21 ~ 22 年度の心理 的虐待の急激な増加と、それに次ぐ身体的虐待、 ネグレクトの増加が注目される。性的虐待でも実 は平成 23 年度は 11 年度の 2.5 倍に達しているの だが、それがまったく目立たないほど、他の虐待 種別の発見・発覚件数の増加が激しい。

3.子ども虐待相談件数増加の背景-私たち

が知らなければならないこと その 1

 子ども虐待相談件数増加の背景を理解するに は、図 3を見る必要がある。児童相談所における 虐待相談が、どこからもたらされた情報によるか を図 3は示している。もっとも急激な増加を示し れ、一定数の新たな養育が開始される。他方、生 まれた子どもは成長し、成年に達して育児は終 わっていく。この循環の中でいったいどれくらい の数の育児において、子どもの安全に重大な危険 をもたらすような事態が発生しているのか、とい うのが疑問の核心である。  2006(平成 18)年の WHO の報告書よれば、全 世界で子ども虐待事案の疫学的な発生数は未知数 であり、相当数の潜在状況が推定されている4) 先進国での予備的な調査としては 3 歳以上の子ど もを対象としたランダム調査がFinkelhorらによっ て 2005(平成 17)年にアメリカ合衆国で報告され ている。調査によると、虐待通告受理件数のおよ そ 40 倍の身体的虐待、15 倍の性的虐待が発生し ているとみられた5)。3 歳未満の子どもは調査の対 象外となった数値であり、実際はさらにこれより 多いことになる。地域における児童人口の比率や 社会・経済状態、家族形態、全般的な育児問題の 発生率、通告システムの違い等々があり、単純に これを日本に当てはめることはできないが、40 倍、 15 倍という数値に照らすと、わが国ではおよそ 86 万件の身体的虐待、2 万件の性的虐待が発生して いることになる。具体的な数値に妥当な信頼性は 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 (件数) (平成) 1,101 1,171 1,3721,161 1,9612,722 4,102 5,3526,932 11,631 17,725 23,274 23,738 26,569 33,40834,472 37,32340,618 42,66244,211 56,384 59,919 66,807 児童虐待防止法の制定 岸和田事件 大阪市監禁死事件 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 101112131415161718192021222324図 1. 全国児童相談所の虐待相談件数の推移

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図 2. 全国児童相談所の虐待種別別相談件数推移(平成 11 年〜 23 年) 図 3. 全国児童相談所における虐待相談の経路別件数の推移(平成 17 年〜 23 年) 0 5000 1999 平成11 590 1527 3441 5973 10000 15000 20000 25000 2000 平成12 754 1776 6318 8877 2001 平成13 778 2864 8804 10828 2002 平成14 820 3076 8940 10932 2003 平成15 876 3531 10140 12022 2004 平成16 1048 5216 12263 14881 2005 平成17 1052 5797 12911 14712 2006 平成18 1180 6414 14365 15364 2007 平成19 1293 7621 15429 16296 2008 平成20 1324 9092 15905 16343 2009 平成21 1350 10305 15185 17371 2010 平成22 1349 14617 身体的虐待 Physical Abuse 18055 21133 2011 平成23 1460 17670 18847 21942 ネグレクト Neglect 心理的虐待 Psychological Abuse 性的虐待 Sexual Abuse (件数) (年) 0 2000 6000 4000 8000 10000 14000 12000 2005 平成17 平成182006 平成192007 平成202008 平成212009 平成222010 家族 2011 平成23 親戚 泣き声通告 DV通告 近隣・知人 児童本人 福祉事務所 児童委員 保健所 医療機関 児童福祉施設 警察等 学校等 その他 (件数) (年)

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ているのが「近隣・知人」からの通告で、これは 大阪で発生した 2 人の子どもの監禁死事件に触発 された一般市民からの「泣き声」通告の急増を反 映しているとみられる。通告増加は特に都市部に おいて顕著で、近隣との人間関係・交流が持ちに くい地域での増加が著しいとみられる。次に注目 されるのは「警察等」からの通告の増加で、平成 17 年度からの増加では「近隣・知人」を上回る 増加率を示している。この増加の中核は「警察で の DV 相談における同伴児についての通告」の増 加である。従来から警察が扱う DV 問題では、子 どもの安全がしばしば脅かされる事態が発生して おり、身体的虐待をはじめとしていろいろな虐待 通告が行われてきているが、子どもの目の前で配 偶者間暴力が発生している事態を重大視し、これ らを「面前暴力」として通告すべき事案とする方 針が拡がっており、結果として通告数の激増をみ ているのである6)。平成 22 年度から始まる急激 な件数増加には、こうした背景がみてとれる。こ のうち「泣き声」通告は当然、初期調査を経て何 らかの支援課題があるとされた件数の増加を基準 としている。おそらく実際の通告件数、初期調査 の対応件数はこれをはるかに上回る増加を示して いるとみられる。「DV 同伴児通告」は警察から の通告受理の場合、子どもについての初期調査を 待たずとも、基本的に計上しなければならず、事 後の支援課題の有無に基づく件数報告と、通告受 理段階での件数が混在している可能性がある。  こうした状況を含め、平成 22 年度からの大幅 な虐待相談件数増加の背景と現状の理解をまとめ ると、概ね以下のようになる。これらは 3 つに分 けられる。表層的現象、組織体制、社会・文化的 状況の 3 つである。

4.虐待相談件数増加の背景と現状理解-

私たちが知らなければいけないこと 

その 2

1)表層的な現象:発見・発覚の急増の背景 ⑴ 大阪の監禁死事件を初め、いくつかの虐待死 事件が大きく報道された影響により、近隣・一般 市民の通告が喚起され、特に子どもの「泣き声」 についての通告が急増した。「泣き声」の通告では、 怒鳴り声や叱責の声、ものが壊れる・倒れるよう な物音など、不穏な状況を示す中での子どもの「泣 き声」だけでなく、単に子どもの「泣き声」が聞 こえるというもの、場所の特定が漠然としている ものなども含まれ、初期調査が難航するものも少 なくない。ただし結果的には要支援となる事例が 相当数発見されているのも事実であり、これまで は通告されずにいた事例が、新たに通告されるよ うになってきたとみることができる。 ⑵ 警察が受理する DV 相談事案に同伴児がいた 場合、原則的にとりたてて子どもの直接被害が特 定されなくとも、「面前暴力」による心理的ダメー ジの危険性、今後重大な被害が発生する危険性と いう点から虐待通告されるという状況が認められ る。平成 17 ~ 22 年までの 5 年間で通告件数は約 9 倍となっている7)。DV 被害の同伴児問題では、 子どもが DV 家庭に在宅したままの相談か、母子 が離脱した後の相談かで、子どもの安全問題の緊 急性には違いがある。 2)組織的対応体制:発見と支援の体制整備に属す ること ⑴ 重大事件発生の結果対応の一つに、通告シス テムの強化、共通ダイヤルの周知、ホットライン やフリーダイヤルの設置など、通告窓口の強化・ 増設がある。当然、それらの窓口に新たな通告が もたらされ、結果として通告件数は相当数増加す ることになる。周知にマスメディアが活用された こと(CM 放送など)も急激な反響を呼ぶことと なった。ただし、これらの結果として、要支援と なる事例数が実質的に増加したことは、それまで は何も支援に結びついていなかった事案がまだ相 当数あったことを示している。 ⑵ 児童相談所は平成 17 ~ 23 年度の間で 12 か所 増設となっている。新設だけでなく、分室や支所 が本所となるなど、以前からあったところが昇格 したところも含まれるが、いずれにしても体制整 備は進んでおり、受理件数は設置か所数の増加に

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応じて増加している。 ⑶ 体制整備は児童相談所だけにとどまらず進め られている。全国の区市町村の要保護児童対策地 域協議会の設置は 9 割を超え、設置の努力義務化 の後押しもあって、体制整備が進んでいる。実質 的な活動状況にはかなりのばらつきがあるのも事 実だが、それでも全国規模でみれば、かなりの地 域で活動が浸透しており、その結果、発見・発覚 する子ども虐待、要支援家庭の数は相当数に上る とみられる。 3)社会・文化的状況:不適切養育の発生そのもの に関すること ⑴ 計画外妊娠、生活準備や支援の無いままの妊 娠・出産の増加は、その背景となっている妊娠・ 出産全体の社会的傾向を踏まえて理解することが 必要である。児童虐待防止法が制定された平成 12 年の時点で、結婚前の妊娠で第 1 子を出産し た人は、15 ~ 19 歳では 81.7%、20 ~ 24 歳では 58.3%であった8)という事実からも社会全体の動 向を考慮すべき状況がある。  もはや妊娠・出産は結婚を前提としたことでは なく、妊娠・出産が前提となって結婚を考えると いう傾向が主流となっている。こうした社会の動 向の中、その一部で生活準備が整わないまま、あ るいは全く生活設計の無いままの妊娠・出産が一 定数、出現することは、充分予想される現象であ る。こうした妊娠のうち、いくらかは中絶という 経過をとっているとみられるが、それ自体も、当 事者・関係者の人生経過にとっては、特に女性に とっては予期せぬ重大事案である。妊娠の可能性 や、その結果責任に対する理解や自覚の低さも、 生活準備の無いままの妊娠・出産の背景としては 大きな課題である。そうした事案において、関係 する親族・知人の育児支援能力や当人自身やパー トナーの育児能力、生活能力の低さが重なれば、 出産直後からの生活・育児に関する危険な状況が 常時、一定数発生していることが想定される。若 年者の生活・経済状況の悪さが常態化している現 在、その発生比率は増加する危険性が高くなって いるとみるべきである。 ⑵ 妊娠・出産期の妊婦の生活全般を含む継続的 な支援、思春期からの準備無き妊娠問題、育児や 乳幼児慢性泣き現象の周知、揺さぶられっ子症候 群(SBS:shaken baby syndrome)の予防教育 など、いわゆる妊娠・出産、育児支援と不適切養 育の未然防止のための体制整備は、社会の現実に 比べると実効性において遅れを取ってきており、 新しい育児世代における不適切養育の発生率を低 下させるところまで進んでいない。 ⑶ 根本的には、現状は未だ多数潜在したままの 不適切養育の掘り起しが進んでいる段階とみられ る。一般市民の注意喚起水準が少し動くだけで、 予防医学的に言えば、疑陽性率も徐々に上げてし まいながらではあるが、発見される子ども虐待件 数はどんどん増加し、結果的にはまだまだ、発見・ 発覚すべき子ども虐待が潜在していたことを示し 続けている。当分の間、こうした状況が続くもの とみておかなければならないだろう。

5.子ども虐待問題についての課題

-私たちに何ができるのか

 子ども虐待問題には大きく分けて二つの課題領 域がある。一つ目は、もう起こってしまった虐待 への早期対応と、修復的ケアである。二つ目は未 然防止・予防的措置である。 1)早期対応と修復的ケア  一つ目の早期対応と修復的ケアについては、早 期対応の体制整備がまだ完全でないことが見受け られる。通告件数の増加がずっと続いていること がその最も有力な査証である。すべての国民、一 般市民があらゆる場面をとらえて「子どもの安全 と最善の利益の保障」について努力するならば、 いずれこれは上限に達することがあるのかもしれ ないが、現在のところ、その可能性は未知数であ る。対象が固定されず、ずっと流動している「ひ と」の特性から見ても、社会・経済的な流動性に 強く影響される「ひと」の特性からみても、対象 が固定されない課題に定点的な到達点は無いのか

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もしれない。  発見・発覚の課題としては、妊娠から出産期へ の注目、0 歳児の養育への注目が最重要事項とし て焦点化されつつあり、これは予防や未然防止と もつながっていくものである。  もう一つの課題は対象側にではなく、体制側に ある。児童福祉の専門性はこれまでの長きにわ たって、治療的ケースワークにその軸足を置いて きた。児童相談所も各区市町村の児童福祉部門も、 あるいは母子保健や医療部門もそれは共通してい る。わが国が子ども虐待への早期介入体制を作っ た時、法定化された司法関与システムを作らな かったことが、これには大きく影響している。し ばしば混同された扱いを受けてきたが、アメリカ の児童保護機関:CPS(Child Protect Service) とわが国の児童相談所は全く異なる組織である。 多くの国が子どもの権利条約の規定に従い、司法 関与下での親権制限の法的手順として、子ども虐 待における子どもの安全確認や一時保護、その他 の介入手順を規定し、条例等による専従機関・体 制を構築してきたのに対して、わが国ではもっぱ ら育児支援のための行政サービスの担当機関がそ の例外的対応として、しかも司法機関とは独立し て、それらの介入作業を担当してきた。結果的に 突出した介入的ソーシャルワークが、従来の支援 的・治療的ケースワークと併行して必要となった のだが、それは未だに十分な確立をみていない。  この問題はさらに、例えば一度、通告を受けた 機関は、その業務上の対応力の上限を問わず、介 入判断の責任が永続的にあり、さらには多年にわ たってその事案の動向の結果責任を問われるかの ような社会通念をもたらしている。なぜなら、児 童福祉機関には初期の対応から長期の治療的支援 までの連続的責任があると、シナリオが描かれて いるからである。子ども虐待問題についての初期 対応・介入機関には、その介入行為権限そのもの に時限が設けられるのと同時に、その結果責任に も時限が設けられるというのが基本であるが、わ が国ではその観点は確立されていない。  修復的ケアは見つかった課題に応じてすでに全 国各地で展開中である。それは行政課題としては、 広く次世代育成のエコシステム的な対応課題とし ても取り組まれてきたが、わが国では特に児童福 祉の専門部門が、増大し続ける初期対応、緊急対 応に追われ続けており、その次の修復課題に余力 をもってあたることが出来ていない状況がある。 2)未然防止・予防的措置  二つ目は未然防止・予防的措置である。先の WHO の報告書でも、起こってしまった子ども虐 待問題に対する早期発見、早期対応の体制をいく ら精緻に整備したとしても、子ども虐待の未然防 止には何の役にも立たないだろうと指摘されてい る。  未然防止については大きく分けて二つの対策の 効果が、いくつかのエビデンスをもって見込まれ ている。その一つ目は、妊娠期から出産後までの 継続支援である。多くの深刻な虐待が新生児期か ら乳幼児期に発生・発覚している。その未然防止 には、妊娠期からの支援が特に重要である。これ には出産と同時に子どもが保護される可能性も選 択肢に含まれるが、その多くは妊娠期からの出産 後の生活・育児全般への支援を視野に入れた体制 の整備・充実に核心がある。特定の要支援妊婦は その時点から、出産後の生活、育児に関する継続 的な支援が約束される。  二つ目は、乳幼児期からの個別的な継続訪問に よる長期支援である。これには金銭給付や直接的 な家事支援が含まれる。概ね 3 年以上の継続に効 果があり、2 年以内の終結ではほとんど実証的な 効果は認められなかった点が注目される。いずれ の支援も、提供側においては危険な育児状況の未 然防止・発生予防が狙われているが、提供される 側にとっては、誰もが利用できる広範囲な育児支 援(虐待対応ではない)としての枠組みが必要で あり、それが無いと支援効果は低下することが報 告されている9, 10)  これらの点からみて、母子保健分野が今後の虐 待の未然防止に果たす役割が極めて大きいことが 理解できる。これまで母子保健分野は主に医療的

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*    *    * な対応を含むヘルスケアの専門領域として、健診 とその後のフォローアップ、予防接種や医療処置 を含む治療支援的な専門領域として展開してきた が、今後は、児童福祉ソーシャルワークと結びつ き、生活全般を含む育児支援と不適切養育の未然 防止にその重要な役割が求められることとなる。 もとより、それらの課題における体制整備はまだ その緒についたばかりであるが、これまで児童福 祉分野、母子保健分野が歩んできた経過を踏まえ、 その残された課題のさらなる解決を目指し、母子 保健分野と福祉分野とのさらなる協働が進むこと が期待されている。 文献 1.『平成 25 年度全国児童福祉主管課長・児童相談 所長会議資料 2013/7/25』厚生労働省、2013 2.才村純ほか「虐待対応等に係る児童相談所の業 務分析に関する調査研究」日本子ども家庭総合 研究所紀要、40:159-164、2004 3.才村純ほか「児童相談所の業務分析に関する研 究(2)」日本子ども家庭総合研究所紀要、47: 181-191、2011

4.Preventing Child Maltreatment:a guide to taking action and generating evidence, WHO, 2006 5.Finkelhor et al, Victimization Survey, 2005 6.国家公安委員会・警察庁編『平成 25 年版警察白書』 日経印刷、27、2013 7.日本子ども家庭総合研究所編『日本子ども資料 年鑑 2012』中央出版、2012 8.粂美奈子「結婚式・披露宴の準備 / 結婚式アー カイブ:できちゃった結婚をちょっとまじめに 考えてみる 結婚が先か、妊娠が先か」http:// allabout.co.jp/gm/gc/225471/ 更新日:2005 年 08 月 31 日

9.Daro Donnelly, Prevention of Child Maltreat-ment- results and subjects, Myers et al, The APSAC Handbook on child Maltreatment, Sage Publications, 2002

10.小木曽宏監修『マルトリートメント 子ども虐待 対応ガイド』明石書店、2008

図 2. 全国児童相談所の虐待種別別相談件数推移(平成 11 年〜 23 年) 図 3. 全国児童相談所における虐待相談の経路別件数の推移(平成 17 年〜 23 年)050001999平成11590152734415973100001500020000250002000平成127541776631888772001平成1377828648804108282002平成1482030768940109322003平成15876353110140120222004平成1610485216122631488120

参照

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