がん患者の治療と仕事の両立支援
~就労継続に際し、どのような情報提供が求められるか~ 志摩 梓 (株)平和堂健康管理室 滋賀医科大学臨床看護学講座 2013年9月7日(土) 国立がん研究センター 相談支援センター相談指導者 フォローアップ研修 「働くこと」を支えるために「がん」は、高齢者に多い
⇒定年が65歳になると在職患者数は増える
国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービス2008年統計から作図
発見数が増え、5年生存率が高くなれば、
⇒就労を継続するがん患者も増える
国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービス2008年統計から作図 人 年重症度・部位により支援の必要性は違う
■人間ドックで胃早期がんを発見、有給休暇を利用して内視 鏡で切除、職場には特に何も話さなかった ■乳がん切除で1ヵ月休職。もともとは販売職だが、抗がん 剤治療中は感染症予防のため事務職に転換した ■胃全摘のため2ヵ月入院、退院後はダンピング症候群と抗 がん剤副作用で就労困難となり、退職 ■肝臓がんで入退院を繰り返した。職場の理解を得て事務職 に転換、時短勤務制度を利用して末期まで就労を継続 どのような「がん」でも原則として治療が必要となる。 治療のためには少なくとも数日の休みが必要となる。 時短勤務や業務転換なども必要となる可能性がある。「がん」治療に必要な休みを取れるかは勤
務先により異なる
労働基準法 「がん」を含む私傷病による休職制度についての規定はない ⇒各企業の就業規則や規程等を確認 就業規則 従業員10人以上の事業所に作成義務がある。 私傷病による休職制度の定めがあれば、休職可能 (休職可能な期間、休職中の賃金は企業による) ⇒傷病手当金を受給可能かも確認 「休日・早退・遅刻」が可能かどうか、まず勤務先の制度を 確認することが重要企業において
「休日・早退・遅刻」が必要となる例
新婚旅行で2週間休み 人事交流で6ヵ月間、別会社に出向 夫が海外転勤になり、2年間休職して赴任先に同行 認知症の母のために、1年間介護休暇 産前産後休暇 育児のため6時間勤務に短縮 大学院のスクーリングに参加 ボランティア休暇 企業では、予め予定された休みは比較的取りやすい。企業において
急な「休職・早退・遅刻」が必要となる例
盲腸で1週間休み 忌引き スキーで骨折、そのまま入院 うつ病で休職、3ヶ月で復職したが1年後に再び休職 昨日まで元気そうだったが、脳梗塞で入院、左半身麻痺 定期健康診断で結核罹患が判明、隔離病棟に入院 子供が肺炎で入院 病気やケガの場合には、急な休みが必要となる。 業務計画に支障が出ることも多い。「がん」治療のための休日は計画できる
~病気としての特徴から考える~
部位・重症度がいろいろ 予後不良の場合がある 慢性に経過する 予後見通しが立てやすい 決着が早い 機能低下がわかりやすい 周囲に感染しない コンプライアンスが比較的良い 他の病気と比べ「休日・早退・遅刻」の計画を立てやすい。 企業側から見ると、対応しやすい。 他の病気も同じ 他の病気よりも 見通しを立てやすい 職場の理解を得やすい「がん」診断時に働いていた患者の
約4分の1は退職
治療と就労の両立に関するアンケート調査 (がん患者427人の分析)より抜粋 働くがん患者と家族に向けた包括的就業支援システムの構築に関 する研究班(研究代表者:高橋都) サイト http://www.cancer-work.jp/wp-content/uploads/2012/08/investigation_report2012.pdf就労者のうち、大企業勤務者は少数派
従業者規模別の就業者数(単位 万人) 1~ 29人 30~ 99人 100~ 499人 500~ 999人 1000人 以上 合計 1546 814 976 344 1058 4738 32.6% 17.2% 20.6% 7.3% 22.3% 100.0% 総務省統計局「労働力調査年報」2011年 就業規則作成義務 :従業員10人以上 産業医選任義務 :従業員50人以上(1000人以上で専属産業医) 産業看護職を雇用する法的根拠はない。 休職等の制度が整っていないことがある。 産業保健職はいないことが多い。
職場にとって「がん」患者の受け入れは
初めてである場合がある
「がん」は「死ぬ病気」ではないか? 仕事を続けても悪化しないのか? どんどん弱っていくのではないか? 「がん」なのに働いてもらっていいのか? 受入側は不安に思っていることが多い わかりやすい情報提供が必要就業継続のための配慮が望めないことも
企業の経営が厳しい場合 企業の理解が得られない場合 職種限定で雇用されている場合 非正規雇用の場合 休職前のポストが塞がっている場合 「がん」だからではなく、他の病気でも同じ 徐々に環境を整えていくことが必要まず、勤務先の状況を確認する
患者の雇用条件~ポイントは休めるか~ 雇用は確保 ⇔ 退職を迫られている 正規 ⇔ 非正規 大企業 ⇔ 中小企業 どんな仕事をしているのか 現場作業 ⇔ デスクワーク 職場の中心 ⇔ 定年まであと1年 職住接近 ⇔ 通勤に2時間かかる 就労を継続したいのか 職場にがん患者がいたことはあるか 産業保健職はいるか 患者本人と職場の情報を共有する企業が必要とする情報を整理
休職前 必要な休業期間の目安 復職後の身体機能の見通し 復職時 どのような配慮がいるのか? 腹部に力が入らない、右腕が上がらない 抗ガン剤治療を1か月に1回受けたい 木・金・土・日と休みたい オストメイト用トイレを使いたい 配慮の期間はいつ頃までか? 職場の同僚のどの範囲に病名を伝えるのか 患者本人と、「何を希望するか」を具体的に整理するどのように伝えるかを検討
誰を窓口にするのか 産業保健職がいれば連携を取る 主治医⇒産業医 支援相談員⇒産業看護職 本人が上司に話す どう話すのか 病名を開示した方が理解を得やすいことが多い 書面による診断書等を利用するとよい。 職場の誰までに病名を伝えるか考えておく 患者本人が、自分の言葉で説明できるように支援する企業に提出する診断書
診断書 乳腺腫瘍 上記加療を要す ●月●日 医師:山田花子 診断書 右乳がん 上記により手術が必要である が、約1ヵ月で職場復帰可能 と思料します。 ●月●日 医師:山田花子 情報が少なすぎると、必要な配慮ができない。 患者の了解を得て、病名を記載することを検討する。産業医宛の診療情報提供書(復職時)
産業医に書類がわたる場合はより詳しく
診療情報提供書 右乳がん 検査データは●●×× 従前処方は▽▽それから△△ ●月●日 医師:山田花子 診療情報提供書 右乳がん 腋窩まで廓清しました。右手 での重量物取扱は困難です。 抗がん剤を来月から予定。 仕事できるか不安そうです。 ●月●日 医師:山田花子 過去の臨床情報よりも現在の状況・未来の予想を教えてほし い状況が変わったら、また情報提供
抗ガン剤治療が追加になった 出血傾向が出てきた 腹膜炎を起こしてしまった 再発・転移が見つかった 継続して的確な情報提供をいただいていれば、病状が悪く なってからも連携できる可能性がある困った事例
あなたの重大な個人情報なのだから会社に病名を言う必 要はないかもしれませんね。診断書には腫瘍と書いてお きます。あとは自分で適当に説明してください。 →患者はどうしたらいいかわからない。 「がん」は仕事によって悪化するわけじゃないから、仕 事はしてもらったらいいですよ。え?いつ悪くなるかっ てそれは病気だからわかりません。 →企業は支援計画を立てられない。 誰でも抑うつ的になって眠れないのは当然です。気分転 換に仕事に行くことを勧めました。 →メンタル不全では、仕事はうまくいかない。職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適 な職場環境の形成を促進すること(労働安全衛生法)