香川大学農学部学術報告 第57号 35∼41,2005
イムノアフィニティーカラムーHPLC法による国内市販コーヒー、ワイン、
ぶどうジ五−ズおよびビール中のオクラトキシンAの測定
川村理
DETERlvlINATION
OF OCHRATOXIN
A IN C01VIlvlERCIAL
COFFEE,IVINE,
GRAPEJUICE,AND
BEER
IN JAPAN
Osamu KAwAMURA
Abstract
Ochratoxin A (OTA)is a potent renal carcinogen,which is produced several species ofAぶρ。rが11s and P£?dcml£m.ェ0TA was widely contaminated to various foods and feeds, Sera 皿d tissues of livestock and !luman were polluted by this mycotoxin.ln this study,the methods of imtnunoafnnity column (IAC)-linked HPLC was established for(jetermination of OTA in commercial coffee, wine,grapejuice and beer colleとtedin Japan。 Nine out of l Q canned dofiie samples ( 90%)samples were positive (detection limit was 3 pg/inL).A11of 12 instant coffee samples (100%)werepositive,but all of 10 regular coffee samples were negative (detection limit was 60 pg/g).The averages of OTA in cailned and instant coffee were 28 pg/ml and 1,225 pg/g,
respectively. 18 out of 44 red wine (46%)was positive (detection limit was 3 pg/mL)。レThe average was 46 pg/inL.6 out to 20(30%)red wine samples made in Japan were contaminated with OTA 4 pg/mL in the average. A11 of 5 red wine samples made in ltaly and 7 red Wines in France were polluted with OTA 4 7 and 77 pg/inL in the average,respectively.M(hile,0TA were not detected in any of 12 red wine made in USA, Australia,Chile and the Republic of South Africa. 0ne out of 5 white wine (2096),3 out of 5 rose wine (60 %)and 2 out of 12 grape juice (17%)samples werepositive.The averages were 6,24 and 6 pg/m1, respectively, 13 out of 20 beer samples (65%)were contaminated with OTA 1 1 pg/mL in the !!verage.
Key Words : ochratoxin A, im加unoaffinity column, coffee, wine, grape-juice, beer
緒 言 オクラトキシンA(oehratoxin A,0TA)は,イソク マリン骨格とフェニールアラニンが酸アミド結合した構 造(Fig.1)を有.しており,7咄i面回1・Errz4caj,aや λ昂εφ11sQdzazasをはじめとするj).,lj ・lzj。属や Å聊・Γμls属の20種以上のカビによって産生されるマイ コトキシンである凹.0TAは,バルカン諸国での風土 病であるヒト腎炎(Balkan endemicnephropathy,BEN) の原因物質として認知され.(2’,ヒト尿路系がんに関与し ている可能性が示唆されており,国際がん研究機構
(The lntemational Agency for Research on Cancer)では, グループ2B(possible human carcinogen)に分類されて いるマイコトキシンである. 0TAは,トウモロコシ,小麦,大麦,ライ麦,燕麦 などの穀物や,ナッツ類,ドライフルーツ,コーヒー豆, ココア豆などを汚染し,熱に安定であり,一般の贋理の 際の加熱程度ではほとんど分解されない(3しよって,麦 類を原料とする製品(パン,パスタなど),香辛料, ビール,コーヒー及びワインなど幅広い食品類の汚染が 報告されている(1' . カナダ,ヨーロッパ諸国やアフリカ 諸国では,これら汚染食品を摂取したヒト血清中や母乳 中において,0TAは検出されている.また,国内でも 筆者らによrって,ヒトのOTA汚染は明らかになってい 芯(“. COOH O H N1H OH O CI Fig.I The structure of ochratoxin A
H
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36 香川大学農学部学術報告 第57巻(2005) しかし,最近の国内のOTA汚染食品の報告は,ビー ルc5】・のみで,ほとんどない.そこで,当研究室で作製 した抗OTAモノクローナル抗体‘6)を結合させたイムノ アフィニティーカラム作製し,これをクリーンナップ手 段として用いる分析法を確立し,国内市販のコーヒー, ワイン,ぷどうジュース及ぴピール中OTAの分析を 行った. 材料および方法 材 料 OTAは,当研究室でメ吻・,苫詔s。clz。c。s R 1003の培 養物から単離・精製したもの(HPLCで純度98%以上を 確認した)を用いた.0TA標準液はOTAをHPLC分析用 メタノールに溶解した後,吸光度を330nmで測定し, 0TAのメタノール中でのモル吸光係数ε=6,4001itter/ mole・cm‘7’から濃度を決定し,実験に用いた.0TAの 誘導体,メチルエステル化OTA,メチルエステル化 OTA(ochratoxin C,0TC)は,それぞれメタ‥ノール又 はエタノールとOTAと無水条件下で硫酸を触媒として エステル化反応させ作製した.0TA誘導体はTLC上で0.1 %リン酸−アセトニトリル(1:1)で展開しTLCかき とり法(展開溶媒;ペンゼン十酢酸=3:1(V/V)) で精製し,実験に用いた. 犬 コーヒー,ワイン,ぷどうジュース及ぴピー歩は,東 京都内で市販されているものを購入し実験に用いた. コーヒーは,カンコーヒー‘10検体,インスタントコー ヒー12検体.レギュラーコーヒー10検体,合計32検体を 分析対象とした.ワインは,白ワイン5検体,ロゼワイ ン5検体,赤ワイン44検体の合計54検体を分析した.赤 ワインは,生産国別に,国内産20検体(国内産13検体と 国内産と輪入ワインのブレンド品7検体)とイタリア産 5検体,フランス産7検体,アメリカ(カルフォルニ ア)産3検体,チリ産3検体,オーストラリア産3検体, 南アフリカ産3検体を収集した.ぷどうジュースは,黒 プドウ9検体,白プドウ3検体の合計12検体を収集した. カンピールは,‘国内産14検体,外国産6検体の合計20検 体を収集したL イムノアフィニティーカラム(IAC)の作製と基本条件 の検討 抗OTAモノクローナル抗体産生ハイブリドーマー OTA.7 ‘6’を培養後,プリスタンを前投与したBALB/cマ ウスの腹腔内に移植し,6∼10,日後,腹水を回収した.T 回収した腹水は,硫安分面を行い,フグロブリン分面を 得た.yグロブリン分面は,さらにプロテインG(Hi Trap Protein G,ファルマシアバイオテク㈱,東京)を 用い・lgG1分面に精製した.アフィニティー担体 (Affi-Gel10,バイオーラッド㈱,東京)と添付のマニ アルに従って結合させた. IACは,精製抗OTA抗体OTA.7を結合させたゲル0.1 ∼0.25mLをミニカラム(ムロマックカラム,室町化学 工業㈱,束京)に入れ,10mLのPBSを20∼40滴/分の流 速で流し平衡化した後,使用した.IACの基本条件は, 最終濃度0.1,1,10,100ng/i11LのOTA溶液(PBS溶 液)を作製したミニカラムに適用し,洗浄条件,溶出条 件を検討した. HPLCによるOTA及びメチルエステル化OTA分析 OTA及ぴその関達化合物は,0noら‘g’の方法で分析 した.すなわち,・サンプル注入量は,10μLとし,移動 相としては,0.1%(W/V)リン酸−アセトニトリル(45 :55 (v/v))士を用い,流速1.0mL/分で蛍光検出器(EX. 330nm,Em.450nm)でOTA及びその関達化合物を検出 ・定量した.カラムは,Wakosil-II 5C18 AR (和光純薬 ㈱,大阪),HPLCポンプはLC-10AD,カラムオープン はCTO-6A,蛍光検出器はRF-550A,データ処理装置は C-R3A(島津製作所㈱,京都)を用いた. く 国内市販のコーヒー,ワイン,ぷどうジュース及びビー ル中のOTAの測定 インスタント及ぴレギュラーコーヒーでは,粉末0.5g に約8mμ):1%Na・CO,を加え,超音波処理15分聞行い OTAを抽出した後,1%Na2CO3を加え10mILにメス アップした.抽出液をグラスフィルター(dF-prefilter, Minisarta GF,SartoliusAG, Gottinigen,Germany)で濾 過後,濾液を等量のPBSで希釈後,希釈液10mLをIACで クリーンナップを行った.IACは,抽出液を通した後, 10mLのPBSで洗浄後,3mLのメタノールで溶出した. 溶出液は,溶媒を留去した後,0.1mLアセトニトリルー 水(1:1)に再溶解し,HPLCで分析した.カンコー ヒーでは,約6mLをグラスフ4ルターで漣過後,濾液 を5mLをIACでクリーンナップを行った.IACは,上記 と同様に操作した. ピール,ワイン及びプドウジュースは,Scott and Kanhereの方法(g’に従いIACでクリーンナップを行い分 析した.すなわち,減圧条件下で遠心し炭酸ガス’を除去 したピール,ワイン又はブドウ液(5mL)に1mLの 2.5%Na2C03(15%NaCIを含む)を加え中和した後, IACでクリーンナップを行った.IACは,抽出液を通し た後,10mLの0.5%Na2C03(2.5%NaCIを含む)洗浄 し,さらに,10mLのPBSで洗浄後,3mLのメタノール
NLQ NLr︶Lr︶Ln cnLQLQLQ n NLQ NLQ 川村 理:IAC-HPLC法による国内市販飲料中のオクラトキシンA でOTAを溶出した.溶出液は√溶媒を留去した後,0.1 mLアセトニトリルー水(1 : 1) に再溶解し,HPLCで 分析したよ メチルエステル誘導体によるOTAの確認 三フッ化ホウ素−メタノール錯体(Boron trinuofide-methanol complex, BF3-CH30H,関東化学,束京)を用 いOTAメチルエステル誘導体を作製し(lo’,HLPCで分析 することにより,0TAの確認を行った.すなわち, HPLC分析用試料溶液0.3mLに三フッ化ホウ素−メタ ノール錯体を0.5mL加え60℃で1時聞反応させた.冷水 1.5mLを加え反応を停止した後,クロロホルム(1 mL)で2回抽出し,クロロホルム層を蒸留水(1 LQ LQ mL)で2回洗浄した/クロロホルムを留去した後,残 流を0.1mLのアセトニトリルに再溶解し,HLPCで分析 した. 結 果 イムノアフィニティーカラム(IAC)の基本条件の検討 IACの洗浄には,はじめ蒸留水を用いたが,蒸留水を 洗浄液として用いた場合,約5∼10%のOTAがカラム から溶出された.よって,PBS 10mLで洗浄を行う’こと とした.溶出条件を検討したところ,3mLのメタノー ルで99%以上のOTAを溶出できることを確認した.ま た,洗浄液をPBSに変更しなことで,溶出液中に塩類が 混入し,溶媒留去後,100%メタノールやアセトニトリ Table 1 37 ルでは,析出した塩類を溶解できないので,再溶解溶媒 としてアセトニトリルー蒸留水(1:1)を用いること にした.使用後のIACは,0.1%アジ化ナトリウムを含 むPBS中で平衡化し,4℃で保存した. 国内市販のコーヒー,ワイン,ぷどうジュース汲びビー ル中のOTAの測定 コーヒー カンコーヒー#204に最終濃度100pg/inLになるように OTAを添加して,添加回収実験を行った結果(Table 1)平均回収率は115.4%で,本法における検出感度は, 3 pg/1nLであった.カンコーヒー10検体中9検体(検出 率90%)で最小4∼最大133pg/mLのOTAを検出した. その平均値は,28pg/mLで中央値は13pg/inLであった (Table 2).インスタントコーヒー#303に最終濃度2,000 pg/gになるようにOTAを添加して,添加回収実験を行っ た結果(Table 1)平均回収率は103.2%で,本法におけ る検出感度は,60pg/gであった.インスタントコーヒー 12検体中すべて(検出率100%)で最小107∼最大4,405 pg/gのOTAを検出した.その平均値は,1,225pg/gで中 央値は420pg/gであった.また,カンコーヒーとの汚染 濃度を比較するため飲用の濃度(インスタントコーヒー 2gに熱湯140mLを加える)・に換算した場命,インスタ ントコーヒー中のOTA濃度は,最小2∼最大63pg/mLの OTAを検出し,その平均値は,18pg/inLで中央値は6 pg/mtであった(Table 2),レギュラーコーヒー#405に l最終濃度200pg/gになるように粉末にOTAを添加して,
Recovery of ochratoxin A in coffee,wine,and beer
Coffee Canned lnstant Regular wine(red) Beer Smp1SNo. #204 #303 0 5 4 井 ︰ 1 1 r a 井 #103 OTA added (pg/ml or g) 0 100 0 0 0 0 り 乙 0 200 0000 ″’D00 1り乙 000 NLQ 100 OTA found ( 記ヅ首 ) Oま‘ a aOra l l n 乙 n j 9 ● L Q Q ( X ︶ ″ 4 1 n 乙 ︵ 1 1 乙 OQり 1 1OLQ C︶ 1 O り 乙 Q り 78 171 OQり7 8 Oハび40 I I I @00Q、︶CY︶ n/`4qり 士 4.3 土,99.1 士11.8 土士士 土士士 9︵X︶︵X︶ ・ ● 昏111[’D Mean 4 1 4 1 1 a O n / ` r n り Mean Recovery (%) − 115.4 − 103.2 7 7 q ` -″hり7ハMり4 a l l af︵X︶LrM︶ 戸n︶7nx︶7 104 86 − . 6 . 8 0 n j n ぴ 只 ︶ 4 0 り
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38
Table 2
参川大学農学部学術報告 第57巻 (2005)
Ochratoxin A in commercial cofi5ee,wine,gtipejuice,andbeer in Japan
Positives / Samples
Ochratoxin A(pg/mL or go) Min/− Max.) Median Coffee − . Regular(roasted) Canned lnstant (For dinking ; 2g/140mL) Wine Red Japanes6▽
Bended japanese and improte ltalian French Other*5 White ・ Rose J GlipeljuicQ Beer Japal!ese lmprote*6 *1 *2 *3 *4 *5 *6 21 0 9 12 22 / / / / / //////// 8425701︵j l 32 OON111 55 44 13 I 75725rD 2/ 12 /// りJOQJ II 20 4 r n り l (%) -66 000 QO 1 41 619000 4Q、︶り心OO 11 17 60 17 65 71 50 【 ND ; Not detected<60pg/g ND;<3t)g/mL TR ; Trace=1∼3pg/㎞L
【】ltlside numbers were the concentrations for during (2g/140mL). From South Africa, USA,Chile,and Australia.
iirom USA, Australia and Ne1 ・ands
A OTA ↓ #202 1nstant coffee (133 pg/mL) OTA ↓ 5
#115 Beer
(32 pg/mL)
10 C mln Means 22 ND*1 28 r D り 乙 り 乙 ︱ 18 41 46 4447 77 ND*2 6 24 6 11 10 14 (5 7 0. 1 ぐ り 乙 ぐ M QO11 ぐぐ Q C︲ ︲ ぐ TR*3 (TR OTA ↓ OTA ↓-硝
245) 5 りり’ Lr︶C ︱ 59r D 2 4 ? 37) j r n り 31) 32) Q り I 420 6】*4 19=犬 19 ″︲a4 り 乙 L r ︶ 27 6 19 g ︶ 7 #502 Red wine (245 pg/mL) 7 ″ ’ o #502十standard OTC (150 pg/mL) OTC ↓ 10 15 minFig.2 The chromatograms Qf HPLC for ochratoxin A in coffee, beer,and red wine
Fig.2Aに示した.また,0TA陽性検体については,メ チルエステル誘導体を作製し,0TAの確認試験を行っ た. 添加回収実験を行った結果(Table 1)平均回収率は97.7 %で,本法における検出感度は,60pg/gであった.レ ギュラ・-コーヒー10検体からは,0TAは検出されな かった.コーとーの代表的なHPLCのクロマトグラムを
川村 理:IACこHPL,C法による国内市販飲料中のオクラトキシンA ワイン及びぶどうジュース 赤ワイン#511に最終濃度50,1100及ぴ200pg/mLにな るようにOTAを添加して,添加回収実験を行った結果 (Tablel)平均回収率は76.4%で,本法における検出 感度は,3 pg/mLであった.白ワイン5検体中1検体 (検出串17%)で6 pg/mLのOTAを検出した(Table 2). ロゼワイン5検体中3検体(検出率60%)で最小16∼最 大37pg/mLのOTAを検出し,その平均値は,24pg/mLで 中央値は19pg/mLであった.赤ワイン44検体中18検体 (検出率46%)で最小3・ヽ・最大245pg/inLのOTAを検出 し,その平均値は,46pg/mLで中央値は19pg/mLであっ た(Table 2).赤ワインの生産国別では,イタリア及び フランス産が,100%汚染されおり,その平均汚染濃度 もそれぞれ47,77pg/mLであった.また,70pg/m以上の OTA汚染検体では,0TCのピークも認められた(Fig.2 C).国内産及び国内産と輸入ワインのプレンド品の場 合は,汚染額度は約30%前後と比較的低く,平均汚染濃 度はいずれも4 pg/mLで低濃度であった.一方,輪入赤 ワインでもアメリカ(カルフォルニアワイン),オース トラリア,チリ,南アフリカ産の12検体からはいずれも ・OTAは,検出されなかっな.また,今回分析した,フ ランス産の白及ぴロゼワイン3検体すべてからOTAは 検出されていた.国内市販のぷどうジュース12検体中2 検体(検出率17%)でOTAを検出し,その平均値は, 6 pg/mLであった. ビール ビール#103に最終濃度20,50及び100pg/mLになるよ うにOTAを添加して,添加回収実験を行った結果 (Tablel)平均回収率は94.8%で,本法における検出 感度は,3 pg/mLであった.国内市販ピール20検体中la 検体(検出率65%)で最小4∼最大32pg/inLのOTAを検 出し,その平均催は,11pg/mLで中央値は7 pg/inLで あった(Table 2).また,代表的なクロマトグラムをFig 2Bに示した. 考 察 国内市販のコーヒー32検体を分析した結果,カンコー k−10検体中9検体で(検出率90%)平均値28pg/mL OTAを検出し,インスタントコーヒー12検体中すべて (検出串100%)で平均値1,225pg/g OTAを検出した. レギュラーコーヒー10検体では,いずれもOTAは検出 されなかった.カンコーヒーとインスタントコーヒーが 高頻度に汚染されていた(Table 2).国内市販のカン及 ぴインスタントコーヒーがOTAの汚染していることは, 39 初めての報告である.今回分析したレギュラーコーヒー 10検体は,いずれもOTAは検出されなかったが,過去 の日本におけるレギュラーコーヒーおよぴ焙煎前の生 コーヒー豆のOTA汚染報告{11}()2)では,汚染頻度が7.4 ∼30%,汚染濃度範囲は100∼4,600pg/gであり,今回分 析した検体数が少なかったため,0TA汚染検体がな かったと考えられる.また,レギュラーコーヒーおよび 焙煎前の生コーヒー豆のOTA汚染報告はヨーロッパ諸 国では多数分析されており,1700検体の平均汚染濃度は 760pがgであった(1).まだ,インスタントコーヒーに関 しては,290検体の平均汚染濃度は1,400pg/gであり(1), 筆者め結果とほぼ一致している.インスタントコーヒー が高頻度に汚染している理由としては,おそらく1ロッ トのインスタントコーヒーの製造の際に使用するコー ヒー豆の量が多いめで,0TA汚染が広がり,そのため 高頻度にOTAが検出されると推察される.また,0TA 汚染コーヒー豆は,手選別によりかなり除去されること が知ちれており‘11),レギュラーコーヒーは,豆または それを粉砕したものをそのまま販売するので,見た目の 悪い豆は,選別で除去される確率が高く,汚染頻度が低 くなっている可能性がある.インスタントコーヒーとカ ンコーヒーを比較した場合,数値的にはインスタント コーヒーの方が汚染濃度が高く見えるが,実際に飲む濃 度に換算した場合(インスタントコーヒーでの推奨濃度 2 g/140mLで換算),平均汚染濃度は18pg/mLになり,カ ンコーヒーの平均値28pg/mLの方が約2倍近く高い.イ ンスタント及ぴカンコーヒーの製造行程における豆の選 別を行うことなどがOTAのコーヒー汚染防除には必要 であろう. ワイン及ぴブドウ液中のOTA検出感度は,3 pg/mLで あり,Zimmerli and Dickの方法(13)と同じ感度であった. しかし,彼らはリン酸酸性クロロホルム抽出後,溶媒留 去後再溶解した溶液をIACでのクリーンナップを行って おり,毒性の強い有機溶媒を使用し,'また,操作が煩雑 であり,本法はこれらの点で彼らの方法より優れている. 赤ワイン44検体中18検体(検出率46%)で,平均値65 pg/mLのOTAを検出した.赤ワインの生産国別では,今 回分析したイタリア及ぴフランス産はすべてOTAに汚 染されおり,その平均汚染濃度も比較的高濃度であった. また,国内産及ぴ国内産と輸入ワインのブレンド品の場 合は,汚染頻度は約30%前後と比較的低く,平均汚染濃 度はいずれも4 pg/mLと低濃度であった(Table 2).一 方,輪入赤ワインでもアメリカ(カルフォルニア), オーストラリア,チリ,南アフリカ蛮の12検体からはい ずれもOTAは,検出されなかった.また,今回分析し た,フランス産の白及ぴロゼワイン3検体も含めすべて
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4 0 香川大学農学部学術報告 第57巻(2005) のワインからOTAが検出された.以上の結果より,ワ インのOTA汚染は,ヨーロッパ,特にフランスやイタ リアなどのヨーロッパが中心である可能性があり, 0TAの汚染に地域差がかなりある可能性が示唆された. なお,国内市販のワイン及ぴプドウジュースのOTA汚 染は,本研究が初めての報告である/ 国内市販のピール20検体を分析した結果,20検体中13 検体(検出率65%)で,その平均値は,11pg/mLであっ た(Table 2).また,国産と輪入品でのOTA濃度および 頻度には,有意な差は認められなかった.この結果は, 中島らの報告(5)とほぼ同じであった. 国内市販コーヒー,ワイン,ぷどうジュースおよびビー ルOTA汚染とOTAのリスクアセスメント カナダでは,ラットでの発がん実験結果とヒトOTA
曝露量を元にTDI値を4 ng/kg body weight/day,ノルデ イック諸国(Nordic Coucil of Ministers)ラットでの発 がん実験結果を元にTDI値を5 ng/kg body weight/day, 及ぴJoint FAO/WHO Expert Committee on Food additives
(JECFA)では,ブタでの腎炎を元に安全係数1 /500を 用いTD!値を,14ng/kg, body (100nがkg body weight/ week)と設定している.これらの値を,日本人の平均
体盧60kgを用いて,一人当たりの一日最大摂取許容量
(acceptabl6 daily intale, ADI,nがpreson/day)に換算す ると,それぞれ,1日一人当たり240(カナダ),300 (ノルデイック蹄国),840(耶CFA)昭/preson/dayとい う値になる.今回測定した,嗜好品のなかで最大汚染の 検体(赤ワイン245pg/ml,カンコーヒー133pg/mL,カン ピール33pg/mL)を元に規制値の一番厳しいカナダの TDIを越えるかを計算すると,赤ワインで980mL(ボト ル1本750mLとして,1.3本に相当),コーヒーで(1,850 mL Iでカン1本190mLとして,9.7本相当),ビールで は6,860ml(大瓶1本533mLとして,12.9本に相当)で, 毎日これらの嗜好品をこの量以上摂取することは現実的 には考えられず,今回得られたOTA汚染レベルでは, すぐにヒトの健康に影響はないと予想される.しかし, Kuiper-(loomanとScottが,50%発がん性を示す値に1/ 50,000を掛けて算出した(18)最も厳しいTDI値1.5 ng/kg body weight/dayより得られる許容量は,90 preson/dayであり,同様に汚染濃度が=香高い検体 (1)BENFolr),D. R.,GAYLOR, B.,PITT,J − rl.n
尿膳
BOYLE,C.,DEKANT,iV.,FUCHs, D.M/.,HARD,G.,MCGREGOR,D. I.,PLESTINA,R.,SHEOHARD,G., ワイン245pg/ml,カンコーヒー133pg/mL,カンピール33 pg/mL)を元に計算しすると,それぞれ,360mL(0.48 本),692mL(3.6本),2,750mL(7.3本)で許容量を越 えることになる.赤ワインでは,比較的容易に許容量を 越える量のOTAを摂取する可能性があり,ヒト健康ヘ の影響が危惧される.今後,国内の食品の汚染実態把握 のための調査が必要である. 要 約 オクラトキシンA(OTA)は,A辱,gφ11sやj)aj ・ljs 属のいくつかの真菌が産生する有毒代謝産物で,トウモ ロコシや麦類など汚染し,腎毒性,免疫抑制,催奇形性 や腎発がん性を示す.イムノアフィニティーカラム (IAC)-HPLC法を確立し,国内市販のコーヒー,ワイ ン,プドウジュース及ぴビール中のOTAの分析を行っ た.コーヒーでは,インスタントコーヒー12検体全て (100%),で,カンコーヒーでは10検体中9検体(90 %)でOTAを検出し,平均値はそれぞれ1,225pg/g,28 pg/mlであった.レギュラーコーヒーでは10検体すべて 検出限界以下(60pg/g)であった.ワイン及ぴぶどう ジュースでは,赤ワイン44検体中22検体(50%)で OTAを検出し,その平均値は46pg/mLであった.生産国 別では,イタリア及ぴフランス産が全てOTAで汚染さ れおり,その平均値もそれぞれ47,77pg/inLであり,70 pg/mL以上のOTA汚染検体では,0TCのピークも認めら れた.また,国内産及び国内産と輸入ワインのプレンド 品の場合は,汚染頻度は約30%前後であり,平均値もい ずれも4 pg/mLであった.一方,輪入赤ワインではアメ リカ(カルフォルニア),オーストラリア,チリー,南ア フリカ産の12検体からはいずれもOTAは検出されな かった.白ワイン5検体中1検体(20%)で,ロゼワイ ン5検体中3検体(60%)で,それぞれ平均6,24pg/ mLのOTAを檎市した.また,ぷどうジュースではに12 検体中2検体(17%)で平均6 pg/mLのOTAを検出した. ピールでは,20検体中13検体(65%)でOTAを検出し, 平均値は,11pg/mLであった.国内市販のカンコーヒー, インスタントコーヒー,ワインおよぴぷどうジュrスが 発がん性マイコトキシンであるOTAに汚染されている ことを初めて明らかにした.用文
上
献
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