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消費者法の課題と展望-香川大学学術情報リポジトリ

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司会 それでは定刻になりましたので,法学会講演会を始めたいと思います。司会は連 合法務研究科の松久が担当します。よろしくお願いいたします。本日は弁護士で京都産 業大学法科大学院教授,野々山宏先生に「消費者法の課題と展望」というタイトルでご 講演をいただきます。それでは法学会の副会長であります柴田先生の方からご挨拶をい ただきたいと思います。 柴田 皆さんこんにちは。連合法務研究科の柴田でございます。開会にあたり一言私の 方からご挨拶させていただきます。まずは今日ご講演をお引き受けいただきました野々 山先生に心よりお礼申し上げたいと思います。また今日は多数の学生さんにここにお集 まりいただきまして,講演会を盛り上げていただき大変ありがたく思っております。さ て,香川大学法学会講演会では,毎回法律,政治に関しまして様々な分野の先生からご 講演いただいており,また大きな成果を上げていると信じております。今回は京都産業 大学法科大学院教授でおられます野々山宏先生をお迎えして「消費者問題の課題と展 望」というテーマでご講演をいただきます。野々山先生は研究者としてだけでなく,国 民生活センターの理事長を歴任されており,弁護士としても現在幅広くご活躍されてい ます。 消費者問題ということですけども,この複雑化した消費者問題ということにつきまし て,民法の観点から実務と法理論の切り口から,今日は大変貴重なお話をしていただけ るというふうに思っております。ここにおられる学生さんも消費者の一員ということで あります。どうか消費者として熱い心をもって今日のお話を聞いていただき,更に社会, 法律に関する理解を深めていただきますように私は期待しております。それでは野々山

消費者法の課題と展望

野 々 山

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先生,ご参加の皆さんとこの講演で有意義な時間を共有させていただけることを期待い たしまして,開会のあいさつとさせていただきます。 司会 ありがとうございました。それでは私の方から簡単に,今日の講演をお願いしま した野々山先生のご紹介をさせていただきたいと思います。野々山宏先生は,京都大学 法学部をご卒業後,弁護士としてご活躍されています。また先ほどお話ししましたよう に,京都産業大学法科大学院で消費者法や民事法の講義を担当されています。離婚問 題,相続問題も取り扱われておりまして,特に消費者問題に関してはこれまで大変ご活 躍されています。著書や論文も多数公表されております。先ほど柴田先生のお話にもあ りましたが,国民生活センターで消費者を守る非常に重要な役割を果たしてこられまし た。今日はそういった実務のご経験から大変貴重な話をお聞かせいただければと思って おります。それでは先生,よろしくお願いいたします。 野々山 皆さん,こんにちは。只今ご紹介いただきました野々山です。肩書はいろいろ ありますが,本業は弁護士をしています。それから京都産業大学の法科大学院で教鞭を とらせてもらっています。私が弁護士になったのは 年,今からちょうど 年ほど 前です。弁護士になってから,主に消費者問題をライフワークとしており,消費者事件, あるいは消費者法の改正や新しい消費者法の制定について関わってきました。京都産業 大学におきましても,弁護士会の法曹養成の取り組みでも,消費者問題に関する様々な 知識や体験をお話しさせていただきまして,消費者の権利の実現という視点を理解して いただくように活動しています。 消費者法は身近な問題を取り扱っている これからお話しする消費者問題,あるいは消費者法は,私がこれまで 年取り組ん できた経験から,社会の中で非常に身近であり,かつ変化に富んでいる法分野であると 考えております。日々変化する社会の中で,様々な消費者問題が新しく起きています。 例えばインターネットや携帯電話などの新しい情報機器に関する様々な紛争が身近に起 きています。それから高齢化社会がどんどん進んで行く中で,高齢者に対する被害が多 く起こってきています。消費者法は,社会の中の動きをより直接的に感じとれる分野で あります。それから,財産や身体・健康への被害があるので,その被害者と向き合って 被害救済に取り組んで,被害者の皆さんの被害が回復した時には大きな充実感や喜びが あります。それから,どんどん変化する消費社会に対して法は対応して作られています

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が,作られた法は必ず,消費社会の進展や変化から遅れてくるのですね。その社会の現 状に合わなくなった法を今の社会に合うように改正していく,あるいは解釈を変えてい く,判例を変えていくことが取り組まれています。消費者法では,広い意味で新しい法 律を作っていくことを積極的にやっていける,そういう分野です。 消費者法の行政規制法の側面と民事法の側面 消費者法と一口でいっていますけども,いくつかの法律の分野にまたがっています。 消費者事件が起こると,被害予防や救済のために法規制がされます。まず,消費者被害 の主として予防のために,事業者に対する行政規制をする,行政規制法の分野がありま す。それからもう一つは民事実体法の分野があります。これは消費者と事業者の間の契 約に関する紛争,あるいは欠陥商品など健康や身体の安全を侵害する被害があった時 に,それぞれ事業者と消費者の当事者間の契約関係,あるいは不法行為ですね。そうい う当事者間の法律関係をどう調整していくかの民事実体法の分野があります。それから もう一つは民事手続法の分野です。例えば,訴訟手続の分野にも新しく消費者裁判手続 特例法という消費者に独特の制度というものが作られてきています。そういう意味では 行政規制法,民事実体法,民事手続法,この つの分野で消費者法は展開しているとい えます。

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それが,今,新しい動きをどんどん見せておりまして,弁護士として取り組んでいる と非常に面白い。被害者の悲しみとか喜びを実感しながら,かつ社会をよりよくしてい く法制度を作り上げていく,そういうことが体感できる分野です。弁護士は弁護士法で 定められた二つの社会的な任務があります。一つは社会正義の実現,もう一つは基本的 人権の擁護,この二つです。弁護士は,この二つの実現を目ざして日夜いろいろな活動 をしています。消費者法など消費者問題への取り組みは,弁護士の二つの任務の実現を 体感できる,そういう分野です。 それから,私は三年半ほど消費者行政の世界に身を置いてきました。ちょうど一年前 まで,今ご紹介がありました「国民生活センター」の理事長に就任していました。皆さ ん国民生活センターはご存知ですか。消費者被害にあったときに相談をする消費生活セ ンターが都道府県や市などの各自治体にあります。高松市にもあると思います。国民生 活センターは,各地の消費生活センターの活動の支援をする国家機関です。最新の消費 者被害のいろいろな情報を提供したり,各地の消費生活センターの相談員の皆さんの研 修をしています。消費者問題を行政の立場で取り組む様々な機関を支援する組織で,三 年半ほど理事長をやらせてもらっていました。そんな経験も含めて今日お話しする内容 や,私の問題意識が形成されてきました。 世紀の消費者問題の体験的歴史と法の活用・展開 年代 私は先ほど申し上げましたように, 年に弁護士になっています。弁護士として の経験から消費者問題には歴史があり,それに対応して弁護士の様々な取り組みや新し い法ができあがってきています。私の体験を含めた消費者問題の歴史をお話しして,消 費者法の展開と今の課題についてお話しをします。 私が弁護士になった 年代はいわゆる大型悪徳商法被害が次々と起こってきた時 代です。一つの大型被害が解決しても,すぐ次に新しい大きな問題が起きるという状態 でした。被害が日常的にそこにあって,そこで苦しんでいる人がいる,だから目の前の 問題から取り組むというのが私の新人弁護士の頃の毎日でした。具体的には,まず「サ ラ金被害」がありました。いまも多重債務問題というのがあります。多くの金融業者か らたくさんお金を借りてにっちもさっちもいかなくなったという問題です。今は業者か らの取り立ては貸金業法などが整備されて厳しいことはできません。しかし,私が弁護 士になった頃はそのような法律がなく,非常に暴力的な取り立てが日常的にされていま した。金融機関でも,銀行というのはお金を貸す時の最初の審査がすごく厳しい。担保 となる家があるかとか,資力のある保証人がいるかなど,借りるときの審査が非常に厳

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しい。一方サラ金というのは,借りるときの審査は厳しくありませんでした。非常に入 口が広かったのです。身分を証明する運転免許証や健康保険証を見せればそれである程 度借りられます。銀行は借りた人がお金を返せなくなった時に,取り立てをするのに強 引なことはしません。不動産などに設定した担保権を実行して,それで回収していくと いうのが銀行の主要なやり方です。ところが, 年代非常に増えてきた消費者金融 というものは,担保権をほとんどとりません。何をよりどころとするかというと,借り 主の住所です。住民票に登録している住所が分かればどこまでも追いかけてくるという のです。貸すときは甘く貸しても,住所地へ行って取り立ては非常に厳しくする。しか もこの当時,金利は年間 %くらいのところが多くありました。少しずつ返していっ てもすぐに,一年,二年を過ぎるとすぐに二倍ほどになる。それを返してもらうために 非常に暴力的な取り立てがあったということです。 例えば,夜中に私の事務所に電話がかかって来たのででると,「金を返せ」と怒鳴ら れることがありました。これは私が借り主の代理人として就任通知を金融業者に出した ために,それを見て本人と私の電話番号を間違えて,本人への電話のつもりでかけたの ですね。夜中に「なんで弁護士なんかをつけるのだ」と怒鳴るのです。ほかには,たら いみたいなものを叩いて,その家の周りを「金返せ」といって歩き回るとか,あるいは ポストに入りきらないような大きなはがきに金を返せと大きく書いて出す。郵便法は預 かった郵便物はそのまま届ける義務があるのです。そうすると金を返せと大きく書いた はがきを,郵便屋さんは届けるけれども,郵便受けに入らないからドアに立てかけてお くのです。そうするとお金を借りて返せなくなっていることが近所に知らされるという ことです。それから,職場に電話をかけて「金返せ」と怒鳴るのは当たり前の時代でし た。そういうものに対して,弁護士や法は対処していかなくてはならないということで ありました。 それから豊田商事事件という大きな事件がありました。最終的には報道陣がみている 前で,豊田商事の社長のいる家に賊が入っていって,社長を殺して血だらけで出てきた というショッキングな事件です。事案は,豊田商事というトヨタ自動車の関連会社に見 えるような名前をつけて,金のまがい商法をしたのです。高齢者のところに行って金を 売るのですが,金を売ったあと,それを運用するので預からせて下さいと言って金を預 かるのです。金を運用して高い率の配当を出すと言って金は持って帰ってしまいます。 金を見せるのですが,それを顧客には渡さずそのまま預かって預かり証だけを渡してい くのです。手元に残るのは預かり証だけなのですね。金を買ったつもりだけど預かり証 しか残らない。当初は配当がありましたが金を運用するなんてことはありえないことな ので,破たんをして,多くの人が苦しんできたという事件です。

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それから霊感商法事件がありました。これは不幸や不安に悩んで占いや相談に来た人 に対して,この不幸についてはあなたに因縁があるといって,その因縁を解くには数十 万円から数百万円,数千万円する壺や多宝塔を売って,それを毎日磨くと幸せになり, 因縁が解けるということを広げていくという商法です。これはかなり攻撃的な対応をし てきました。私達が弁護士会でこの問題の相談会をしていると,相談会を止めろとデモ をしてきたり,それから取り組んでいる弁護士たちの顔写真をビラに刷って,悪徳弁護 士として京都の主要な駅で撒いたりする妨害行為がありました。 それから原野商法事件というのもありました。北海道とか京都だと丹後半島など日本 海の方などの非常に安い土地,例えば 坪 円くらいのエリアの土地を 坪 , 円くらいで売る, 坪 万円ですから安く感じるのですね。ここはこれから開ける から値上がりする,と言って,二束三文の土地を売る原野商法にも対処してきました。 後は海外商品先物取引というものをやってきました。そういう事件がどんどん起こって いた頃です。 この当時を思い出すと,これらの商法はみんな事務所を持っていたのですが,最近の 消費者被害では,ほとんど電話とかインターネットで勧誘しています。事務所なんかど こにあるか分かりません。そこが大分違います。その当時は何百人,何千人,あるいは 何万人という人たちが被害者となる事件が沢山ありました。 これに対して実務家としてどういう手段で,またどういう法律を使って対処したか。 もちろんまず交渉をするのですが,保全処分をよく取りました。とくに有名なのはサラ 金被害において,先ほどの暴力的な取り立てに対して,「取り立て禁止の仮処分」をす るのです。取り立てをしてはいけないという仮処分です。あるサラ金がAという借主に 対して暴力的な取り立てをしたらそういう実態を明らかにして,裁判所から取り立てを してはいけないという仮処分をとり,取り立てたら逆に損害賠償を請求して相殺する。 こんなことをやってきました。 それからもちろん訴訟もやりました。豊田商事事件,霊感商法事件については勧誘方 法では噓を言ったり,あるいは脅迫的なことを言う。これを買わないとあなたは不幸に なるというようなことを言っていくわけです。そういう勧誘に対して不法行為,あるい は詐欺,強迫に基づいて取消をして,訴訟を起こしていきました。これは民法を使うわ けです。さらには刑事告訴をしていく。 それから破産を利用しました。破産法を勉強している方はおられますか。現在,個人 破産はわりと行われています。多重債務になった人は破産をしたら従前の負債について は免責されます。しかし,私が弁護士になった当時は,破産申し立てを個人や一般の市 民が使うことはほとんど考えられなかったわけです。破産というのはあくまでも商売を

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している人のための制度と考えられていました。商売をしている人が一定の負債を抱え て倒産した場合に一回だけ救済してもらえる制度です。事業をしている人が,一生負債 を抱えていくのではなくて一旦負債をきれいにして,再建の機会を与えていくものだっ たのです。それをサラ金問題に取り組んでいた弁護士たちが工夫をしながら,破産とい うものを普通の個人にも使っていこうとし,裁判所もそれを認めて広がっていったわけ です。 先ほどの取り立て禁止の仮処分も,既存の制度を工夫していったものです。この当時 は,被害事案に適した制度がなかったので,当時あった様々な法律,それはそれまでは 消費者被害ではあまり使われなかった法律ですね。民法とか,破産法とか保全処分と か,そういう法律を工夫しながらいろいろ使っていって,救済を図っていきました。ま さに被害があって何とかしなくてはいけないからそこでいろんな法律を工夫していくと いうことです。既存の法律制度,法律を使って工夫してきたのがこの年代です。 年代 こういう大きな消費者被害の事件がいろいろあって,弁護士が弁護団を組んでやって きたのが 年代ですが, 年代になると大きな経済的な動きがあります。皆さん も聞いたことはあると思いますが,バブル経済というものです。株が異常に値上がって いき,それから不動産がどんどん右肩上がりで上がっていきます。当時政府はお金をど んどん市場に出していくという政策を取った。お金を市場に出すにはどうするかという と,金利を安くするのですね。昔, 年代ではお金を郵便局に 年くらい預けてお くと, . 倍とか 倍になるような ないし %の預金金利だったのですね。その代わ り借りる時の金利も結構高かった。そうするとみんな貯金をするので,社会にお金を流 すときは金利を下げていくのです。貸すのも,貯金も低金利にするとお金が市場に出て いく。そのお金が株とか,あるいは不動産に流れていってそれらが右肩上がりに上がっ ていくことになりました。 そのバブル経済まで証券や銀行の投資物件に,一般の人は投資してこなかったので す。証券とか株取引は投資のプロがやっていました。しかし,その当時お金が市場に 入ってきて株や不動産が確実に上がっていった。典型的なのがNTT 株ですが,素人で これまで株取引をしなかった人がどんどん参入して買っていったという時代でありま す。投資信託なんかもどんどん買っていったという時代です。 その時,証券会社は,これまで投資のプロしか相手にしていなかったのですが,それ まで相手にしていなかった一般の市民が取引に参入してきた。しかし,販売方法はプロ と同じようにやったのですね。投資の対象の内容は分かっているという前提で,十分な

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説明はせずにいろんな投資商品を売っていった。ワラント債など,一般の人が分からな いような商品をどんどん販売していく。それも,あたかも安全なように,投資が貯金と 同じように誤解させていました。例えば,投資信託は貯金ではありません。投資をプロ に任せているものです。ですから投資信託は,場合によって元本割れすることがありま す。中期国債ファンドという投資信託があり,これも国債の価格が低下すれば元本割れ する可能性はあるのですが,テレビの宣伝では,「中期国債ファンドは便利な貯蓄」と あたかも投資信託は一つの有利な貯蓄のような宣伝をしました。当時貯蓄の金利は低 かったですから,より高い貯蓄に移行しようということで,どんどん投資信託に移行し ていかせました。 このように投資への勧誘を,銀行や証券会社が積極的に行っていた。ところがあると きバブルがはじけるんですね。右肩上がりだった土地や株の価格が,これはあまりにも 異常だということで,政策が金融引き締めに変わるわけです。世の中に出たお金を吸収 していく。貸出金利も上げる,それから預金金利も上げる。そうすると貸し出しはしな くなるし,できるだけお金を預けようとします。そうすると市場からどんどんお金が 減っていくということになります。そのためどんどん株が下がる。下がれば,みんな今 のうちに売っておこうといって売るのでまた下がる。こうしてバブルがはじけて,不動 産価格も,そして証券価格も下がるといった時代になったのです。その中で非常に多く の消費者が大きな損失を被ったということがありました。 私が取り扱った事件では,投資信託事件がありました。ある二世帯家族で若夫婦の奥 さんがお父さん名義,お母さん名義,ご主人名義の,それらの貯金を全部預かっていた んですね。そこへ証券会社の人が来て,預かっていたのは定額預金だったのですが,「そ れは全然だめですよ。投資信託に入れたほうが絶対上がります」「確実に上がりますか ら,貯蓄の一つですから」と勧誘して,管理を任されていたお嫁さんは預金を全部解約 して投資信託に預け変えたわけです。 ところがバブルがはじけてその投資信託の価額が元本の半額以下になってしまいまし た。そこで,元本割れの危険性に対してどれだけ説明していたか。あるいは勧誘員がバ ブルの崩壊,可能性についてどれだけ認識していたかということが問題になり,裁判に なりました。投資信託は元本割れの危険性があるということは仕組み的にはそういうも のなんですね。パンフレットにも書いているわけです。そのため投資信託に関して訴訟 は多く起こしたのですが,次々と消費者が負けていったという歴史がありました。そん な中で,その事例では,素人への勧誘の仕方に問題があるとして,裁判所は説明義務違 反の不法行為責任を認めたのです。ところが過失相殺ってありますよね。不法行為とし ての責任はあるけれども,損害を受けた側についても落ち度がある場合はそこを相殺し

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ますという制度です。その判決では消費者に 割の過失相殺を認定したのです。それま での投資信託の訴訟はだいたい負けていたのですが, 割の過失相殺はあったもの の, 割の損害賠償が認められ,僕たちが勝ったと評価しました。しかし,その奥さん は減額分の 割をもらって,「これは勝ったんでしょうか」と言われたのが印象的でし た。当時の証券会社の対応というのは,市民には非常に自己責任を強調していく一方 で,機関投資家には損失補てんしていく。そういう二つの顔を持って対応をしていたと いう問題がありました。 さらに銀行の提案型融資という問題もありました。例を挙げると,京都は古い町です が,そこは古い借家がたくさんあります。ある高齢者のおばあさんが多くの借家を先代 から相続して持っていまして,戦災に合わなかったから戦前からの非常に古い借家です が, 軒につき , 万円の賃料をもらっていました。 軒くらいあり,これで約 万円月に入ってくるのでそれで生活をしていたわけです。ところがバブル経済によっ て,土地の価格が名目上は上がっていったのですね。すると銀行の人が来て,このまま ではとても高い相続税を相続人であるお子さんたちに負担させてしまいますよといっ て,以下のような提案をしてくるのです。「銀行がお金を貸します。 億円貸します。 その借家のある土地は 億円の価値はあります。これからどんどん上がっていくので 億円, 億円にもなります。この土地を担保に貸付金 億円を用意します。そのうちの 億円で借家人の人達に立ち退きをしてもらいましょう」と,こう言うわけです。たと えば, 軒に 千万円ずつ立ち退き料を払って 億円。そのあと 億円かけてマンショ ンを建てます。マンションを建てたらマンション収入がいくらか入ってきます。それを 借入金弁済に回す。しかも,長期の返済ですから相続時には負債が残るわけです。そう すると高くなってきた土地の評価額と負債を相殺して,相続税の一定の圧縮を図れま す。しかも将来的には弁済が完了して賃料が入ってくるということで,一石二鳥となる というのです。 おばあさんは,「そんなのは要らない。今ある私の生活でいいんだ」と言っていたの ですが,銀行の担当者が何回も何回も来て,ついに根負けして契約をしたわけです。そ して,その時には銀行員は土地の価格の上昇の右肩上がりは続くという前提で話をして いるんですが,そのうちバブルが弾けました。するとかつて 億円だった土地の価格は 億円になってしまうんですね。ちょうどバブルが弾けた時期が借家人の立ち退きをし て古い家を壊して土地が更地になったときだった。 億円借りて立ち退き料を払って更 地にしたころに,バブルが弾けて土地の価値も 億になったんですね。そうすると銀行 員がある日突然来て,おばあさんに対してこれ以上貸せませんと言ってきたのです。「す でに 億円貸したけどもその土地の価格が 億円ですから,これ以上は貸付限度を超え

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ます」と。もう 億円貸してもらわないとマンションが建たないわけです。マンション が建たなければ収入が入ってこない。しかも借家人は立ち退きをしてしまいましたか ら,これまで生活の糧として得ていた 万円の家賃収入がなくなってしまっている。 何が残るかというと, 億円の負債が残るわけです。銀行はどうするかというと,返済 を求め,できなければ抵当権を実行していくわけです。しかも当時は返済資金も借り入 れを積み重ねて返していくことをやっていたわけです。結局融資が止まれば返せません。 そこで,銀行の勧誘に問題があると訴訟をしましたけども,結局おばあさんは負けまし た。裁判官は,借り入れの決断をしたのはおばあさんだというのです。銀行は提案した だけで最終的に決めたのはおばあさんだと言うのが民法の原則というのです。本当はそ れでいいのかという問題があります。 あと, 年代は製造物責任の事件が結構ありました。テレビが発火する,自動車 が暴走するという事件です。いずれも消費者からすると普通の使い方をしていたのに, 企業からは使い方が悪いといわれます。コンセントにほこりがいっぱいたまっているか ら,ショートしたんだ。だから,掃除をしなかった消費者が悪い。あるいは自動車の方 は暴走したのはブレーキとアクセルを踏み間違えたといろいろ言ってきました。それに 対して訴訟活動がされてきたわけです。 訴訟をすると企業にフェアではない対応がみられました。例えば,いろんな客観的証 拠からすれば,こういう説明をしたであろうことが明らかという場合でも,頑としてそ れを否定してきました。それから勧誘時の販売情報も利益になることだけを言っており, リスクなど客観的情報をきちんと説明していないというものが多くありました。 けと いう利益を最優先としてフェアで公正な取引というものは後ろに追いやられている,そ ういう状況がバブル崩壊後の,今述べた様々な事件の中で感じ取られたわけです。 その時に私がすごく思ったのは,日本のリーディングカンパニーである,銀行や証券 会社,電機会社,自動車会社は日本の経済を支えている,日本のマーケットを引っ張っ ていく,そういう企業であるわけですけども,そういう企業でも,利益を上げることを 優先していました。販売の時もそうですし,紛争になってもフェアな対応をしていな かったのです。今でこそコンプライアンスということが非常に強く言われています。と ころがこの当時はまだそういう状況ではなかった。ともに取り組んできた弁護士,学者 の皆さんも含めて,日本全体の市場システムや販売方法の在り方,特に消費者に関係す る場合に問題があるということが認識されてきたわけです。 特に何が問題かというと,事業者と消費者との情報とか交渉力の格差の存在というこ とです。消費者は物を買っています。しかし,例えば皆さんが携帯電話を買う時,ある いはインターネット取引をする時に,自分がどんな契約をしているかどれだけ知ってい

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るのかということです。それから借家というか,どこかにアパートを借りている方もい るかもしれませんが,自分がどんな契約をしているか皆さんご存知ですか。皆さんは, 毎日何かの契約をしているのですが,その契約内容はすべて,基本的にはほとんど事業 者サイドが作った契約内容に依拠しています。しかしその内容についてほとんど知りま せん。しかも携帯電話やパソコンを買う時に,買ったものの機能を,内容を皆さんはど れだけ知っているかということです。それから家に住んでいますが,その家の安全性, 本当に安全な建物かどうか。耐震性を含めて。それをどれだけ知っているか。これは借 家だけじゃなくて持ち家もそうです。一方で建てた者,作った者はどんなものを建てた か分かっているわけです。それから契約を作った人は当然,どんな契約か分かっている わけです。 しかも,仮に,携帯電話の契約書をじっくり読んだとします。それから賃貸借契約書 を読んだとします。読んでそれを交渉によって変えることができるかどうかも問題で す。それを変える申し出をする勇気があるかどうか,知識があるかということです。僕 は自分が締結するいろいろな契約の契約内容に対してこれはおかしいと言っているので すけども,そうすると基本的にはどういう対応になるかというと,「契約しません」と いって,それなら結構ですとなるのです。それが代替性のある物ならいいですが,例え ば電気の使用契約について問題があるという時,あるいは大学に受かったとき,学納金 として払ったものを一切返さないという条項はおかしい場合に,その契約はおかしいか ら削除してくれないかと言った時に,では契約しなくて結構ですと言われて,電気のな い生活,あるいはせっかく受かった大学に入らないことを選択できるかとなると,でき ないわけです。このように消費者が交渉によってそれを変更させることは基本的に不可 能だという状況があります。 そういう中で,企業としては,傾向として自分たちの方に情報がたくさんあるから, 出来るだけ情報を出さないようにしようとします。それから契約書は全部自分たちで作 るわけですから,出来るだけ自分たちに有利にしていこうとします。そういう格差とい うものが事業者と消費者には非常に大きくあるわけで,これを前提として問題処理をし ていかないといけない。これが消費者法の重要なポイントになるわけです。そういうこ とが 年代の時期,痛感させられました。 ただ裁判所では,先ほどお話ししたおばあさんの例,あるいはお嫁さんの例にあるよ うに民法で処理され,消費者が負けてしまっていました。皆さん民法を勉強していると 思いますが,民法では,売買契約などの契約では,原則として売主と買主の当事者は対 等です。民法というのは今から百数十年前,明治時代にできた法律です。明治時代は封 建社会から市民社会になったんですね。封建社会で人は身分が士農工商とそれぞれ違う

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んだということでした。ところが市民社会になると人は皆平等だと考えられた。権利と して平等であるということです。これは正しい思想です。だから契約当事者もそれぞれ 権利者として対等な立場であるという考え方が基本にありました。それから明治時代 は,実際社会においても今の日本のように大きなスーパーがあったり,百貨店があった り,建売住宅なんてなくて,近所の熊さん,八さんみたいな人が建てた長屋に住んで, 行商というんですかね,そういう人たちから買っていました。誰がどこで何を作ったか がだいたい分かるわけです。そういう意味で売買などの契約当事者が対等なものとして も十分通用するわけです。それがずっと今日まで民法の基本的な思想となってきたわけ ですから,消費者事件の訴訟をした時も,契約書を読まないあなたが悪い,パンフレッ トに元本割れするかもしれませんと小さく書いているそれを読まないあなたが悪いと判 断されるのです。セールストークでは別の事を言うのですが,契約書やパンフレットの 記載との齟齬についてはそれをきっちり確認しなかったあなたが悪いというのが基本的 な裁判所の発想だったのです。それを訴訟で,「いや違うんだ。今の社会では格差があ る。」「情報,交渉力すべてに格差がある。その格差を考えて解釈していかないと,実際 の意思を解釈したことにならない」と,多くの紙数をさいて準備書面に書いて主張して いたのがこの時代です。それをどう,法の中で,あるいは社会の中で,紛争解決の裁判 の中で認めさせていくかというのが一つの大きな課題だったのです。それを訴訟におけ る民法解釈で展開していました。民法の不法行為に基づく損害賠償を中心とする理論構 成の中で,格差の存在を主張していくわけです。説明義務について情報格差があるから 事業者には消費者への説明義務がある,買主注意せよではなくて売主に説明義務がある のだと主張していきます。あるいは,事業者には安全な商品を市場に出していく義務が あると主張していきます。そのような義務に反する不法行為があると主張していったの です。 皆さんは民法で詐欺とか錯誤を勉強したと思いますが,この当時の消費者事件の訴訟 では詐欺,錯誤で勝つことはほとんどありませんでした。それは先ほどお話しした,民 法では契約当事者は対等だということがあって,勧誘に問題はあっても取消のできる詐 欺とまでは言えないでしょうという判断となっていました。やむをえないので意思表示 理論ではなく,不法行為理論や信義則上の義務があるということでその義務違反を問う というロジックを展開していったのがこの時代です。 世紀における消費者法の展開 こういう時代を経て 年代の後半になると,やはりこのままではだめで,法その ものを変えていかなくてはならないのだと考えられてきました。まず日本の社会のリー

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ディングカンパニーも含めた経済システムの中に,フェアネス,公正な取引こそ大事 だ,そういう価値観を打ち立てていく取り組みが必要になってきました。それから,も う一つはこれまでお話ししてきた民法とは異なる価値観,すなわち消費者契約は格差が ある当事者間の契約であると言う価値観を法として認めさせていくことです。消費者契 約の契約当事者は,権利としては対等ではあるのですが,実際の取引では対等ではない わけです。実態として対等ではない契約について,それを踏まえた特別法がいるんじゃ ないかという考えの中で,私達も取り組みをさせていただいていたわけです。 二つのアプローチに取り組みました。 ⑴ 企業のコンプライアンス確立へのアプローチ 一つが企業に対してコンプライアンスを求めていく取り組みです。事業者の取締規制 法として業法というものがあります。それぞれのなになに業に対する行政規制法があり ます。たとえば,建築業,不動産仲介業,貸金業,証券業などに対してそれぞれ建築基 準法,宅地建物取引業法,あるいは貸金業法,金融商品取引法などの業法規制がありま す。そういう業法に基づいてきちんと事業者が対処させることを行政に求めていった り,独占禁止法の活用をしました。皆さん経済法として独占禁止法を学んだことがある と思いますが,そこに措置請求をできるという規定があるのを知っていますか。なんび とも独占禁止法に違反をしている行為,例えば不公正な取引方法があった場合は,公正 取引委員会に措置を請求することができ,それに対して公正取引委員会が回答するとい う規定があります。そういう規定を活用してきました。私がやった措置請求は,当時お 酒の販売価格が統一化され,どこでもほとんど同じ値段でした。今はいろんなディスカ ウントショップがあり,店によって値段が違いますが,それが統一化されていたので す。それは,おかしいということで措置請求がされました。どうして統一されていたか というと酒税を取るのに価格がばらばらだと取りにくいということで,価格を統一化さ れていました。たまたまその中で一つの会社がディスカウントをしたところ,そこに他 の酒店がお酒を卸さない。そういう取引拒絶という,公正取引法の不公正な取引方法の 一つをやっていたわけですね。そういう取引拒絶に対して独占禁止法に違反していると いうことで措置請求をしました。 もう一つはタクシー料金には同一地域同一運賃の原則というものがあったのです。そ れはおかしいということで措置請求をしました。京都でMK というタクシー会社があ りまして,そこが価格を下げようとしたことに対して,監督官庁がそれを許さなかった のです。これは,一つの官製のカルテルではないかということです。監督官庁が主張し ている同一地域同一運賃の原則は独占禁止法に反しているということで措置請求をしま

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した。 あと,私は弁護士ですから,顧問先の企業に対して約款,契約書の内容が非常に不平 等でしたから,それを変えるように求めるアプローチをしました。これらは企業そのも のが自ら公正な活動をしていくように変わっていくように,企業に求めていく,そうい うアプローチです。 ⑵ 株主,消費者の権利を強化する法改正へのアプローチ 二つ目のアプローチとしては,企業活動を監視する第三者の権利を強化する制度作り です。第三者とは一つは株主。もう一つは消費者です。株主や消費者が事業者のフェア ネスでない,公正でない行動に対しておかしいと言えるシステムを何とかできないかと いうことです。 ① 株主代表訴訟に関する商法の改正 一つ私が取り組んだのは日興証券の株主代表訴訟です。株主代表訴訟は会社法に規定 があります。株式会社の取締役が会社に損害を与えるような行為をした時,例えば取締 役が会社の利益を相反するようなことをやった時に,会社は取締役に対して損害賠償請 求権が発生します。ところが会社を運営しているのは取締役ですから運営している取締 役が自らを損害賠償することは通常考えられません。

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そういう場合に,会社が有する取締役に対する損害賠償請求権を,株主が会社に代 わって取締役に請求訴訟をしていくという制度です。この株主代表訴訟がうまく機能す れば,取締役がおかしなことをやった時に,株主が会社に代わって損害賠償をすること で闇に葬られることはなくなるわけです。バブル経済崩壊の時にこの株主代表訴訟を日 興証券の取締役にしたのです。取締役がどういう損害を会社に与えたかというと,損失 補てんです。日興証券は,生命保険会社などのいわゆる機関投資家や大きな企業のお金 を預かって運用するような業務をしていたのですが,そういう大きな顧客はバブルが崩 壊して顧客に損失が出ても,日興証券が取締役の判断で損失を補てんしました。その額 は約 億円です。 個人投資家など少額の顧客には「自己責任だ」といって,切り捨てていった一方で, 大きな顧客には損失を補てんしたのです。 億円というのは本来顧客の損失であり, 日興証券としては払わなくていいお金を払ったわけです。一種の贈与ですね。これを会 社の利益から出しており,本来株主に還元すべきものだと考えられます。従って,こう いう払わなくても良い損失補てんをしたことが,会社に損害を与えているということ で,当時の取締役に株主代表訴訟を起こしていったわけです。この事件は最高裁まで 回いって つの最高裁判決があります。 回目の問題は裁判をするには訴額に対応した 印紙代を払わないといけないのですが,その額がいくらになるかということです。東京 地裁に訴状を出したときに 億円の訴額に見合った印紙代を出して下さいと補正命令 が出されました。正確には忘れましたが,数千万円単位でした。日興証券の株主だった トラックの運転手と弁護士が原告になりました。この株主に対して数千万円単位の印紙 を貼れと言ってきたのです。そんな金はありませんし,この株主代表訴訟の訴額は算定 が不能と考えるべきです。算定不能となると,当時 , 円くらいの印紙を貼ればよ かったと思います。 当時の東京地裁は,この 億円が原告である株主の裁判で受ける利益だとの考え方 でした。これに対して私達株主の弁護団は,株主代表訴訟というのは,会社の利益を株 主が代わってやるわけですから,本来お金が入るのは会社であり,株主に入るのではあ りません。損害分を取締役から会社に戻せということを求めて裁判を株主がやるわけで す。従いまして,株主としてはこの裁判に勝訴しても 億円が自分の手に入るわけで はありません。株主の利益は,せいぜい自分の持っている株が,会社に損害賠償された ことによって上がる,それくらいのことです。どれだけ株が上がるかは算定できませ ん。それに対して株主に 億円の経済的利益があるとして,訴額を算定するのはおか しいということで,訴額は算定不能だと主張をしたわけです。裁判は 審では負けまし た。 審は勝ち,最高裁も平成 年 月 日判決で 審判決を維持しました。最高裁

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判決では我々の主張を認めてくれたのです。 それによって商法が改正されまして,株主代表訴訟では訴額は算定不能として扱い, 高額な請求をしてもわずかな印紙を納めるだけでよくなりました。それ以来株主代表訴 訟が多く起こってきました。一部濫用もあって問題もあったのですが,商法改正によっ て,株主代表訴訟が企業のコンプライアンス確保に使われるようになりました。 ② 製造物責任法の制定 それから,あとは法律を変えていく。特に民法の特別法が制定されていきました。ま ず制定されたのが製造物責任法です。これも制定運動をやりましたし,製造物責任に関 する訴訟も取り組まれました。製造物責任法は民法の 条に関する消費者保護のため の特別法です。商品の欠陥に基づく事故において,不法行為責任を求めるには,商品の 欠陥だけでなく,その欠陥の発生について事業者に過失があることの主張立証が必要で す。欠陥商品に関して火を噴くようなテレビを作った,あるいは暴走するような自動車 を作った,あるいは白斑が起きるような化粧品を作って市場に出したということについ て,事業者にどんな過失があったかを消費者が解明しなければならないのが民法の不法 行為に基づく損害賠償請求では必要です。民法では,事業者にどんな過失があって欠陥 商品が作られ,事故が起こったのかということの主張立証責任が消費者に負わされてい ます。この主張立証は非常に難しい。実際に設計ミスがあるかも知れませんが,それを 消費者はわかりません。そこで,消費者が主張立証する民法の過失概念を,より立証し やすい「欠陥」という概念,すなわち「通常有すべき安全性を欠いた製造物を市場に置 いた」ということ,に置き換えたのが製造物責任法です。ですから火を噴くテレビを市 場に置いたこと,白斑が起きるような商品を市場に置いたことさえ主張立証すれば,ど うやってそれが作られたか,どんな落ち度があって置かれたかは主張立証しなくても良 い。このように,製造物責任における民法の不法行為責任を「欠陥」の主張立証でよい と変えたのが製造責任法です。 ③ 消費者契約法の制定 消費者契約法は民法の総則にある 条から 条までの意思表示に関する規程の中の 消費者契約に関する特別法です。あるいは民法 条の公序良俗違反, 条 項の信義 則の消費者契約に関する特別法です。先ほどお話しした,消費者には情報や交渉力,あ るいは立証といったものについて,事業者に比べて格差がある,だから格差があること を前提とした,消費者契約に関する特別法をしっかり作っていく必要性が提案され,立 法運動もされてきました。これが消費者契約法です。 消費者契約において,民法の詐欺,強迫の要件を緩和して,「誤認」「困惑」で契約を 取り消すことができる。あるいは,消費者契約の契約内容において,民法 条にあた

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らなくても,免責条項や損害賠償の予定について一定の場合に無効となり,信義則に反 して消費者に一方的に不利な条項は無効になります。 ④ 消費者団体訴訟制度…消費者契約法の改正 民法の特別法が制定され,次の問題は何かといいますと,この権利を消費者は本当に 行使することができるかと言うことです。例えば皆さんが何らかの欠陥商品による被害 を受けた,そうした時に自分でその請求をするかどうかです。妙な勧誘方法を受けて契 約をしたときに,これに対してそれはおかしいということで契約を取り消すということ を行動するかどうかということです。民法の特別法として,消費者の権利を擁護する法 律はできたけれど,これを行使できなければ意味がないわけです。もし,市場の一方の 当事者としての消費者が,自らの権利を自分で行使してくということができないと,安 心,安全な市場は作れないし,せっかく制定した法律も機能していきません。 そこで,消費者の権利を強化した製造物責任法や消費者契約法の裁判の蓄積が必要な ので積極的に裁判をやってきました。さらには,消費者をまとめる一つの存在として消 費者団体がありますので,この消費者団体の力を強化することによって,消費者の個々 の力を強化することのほか,個々の消費者に代わって消費者団体が事業者に対して一定 の権利行使をすることができるということが考えられてきました。 格差の存在を前提に民法の特別法を作り,作った上でそれをより行使できるようにす る。それは個々の消費者ができるだけ行使できるように,訴訟で支援していくだけでは なく,消費者団体が直接実体法上の権利を持って,消費者に代わって訴訟を起こす,あ るいは改善しなさいという請求ができる,こんな制度を作れないかということが模索を されました。このような制度は外国にはすでにあり,ヨーロッパでは一般的な制度で, それを日本で作ろうということです。そして,消費者契約法を改正することによって, 消費者団体の差止請求訴訟制度が作られました。内閣総理大臣に認定された消費者団体 が事業者の不当な勧誘行為や契約条項の使用を差し止める実体的な権利が付与され,訴 訟も提起できるようになったのです。 例えば最近では携帯電話の 年縛りの条項がありますね。最初の 年は割引があるの で拘束するために仕方ないかも知れませんが, 年経ったらまた 年縛られるわけです ね。これはどういう合理性があるのか不明です。そういうことはおかしいじゃないかと いうことの差止請求を消費者団体がやりました。また,冠婚葬祭互助会といって葬儀を する時までにお金を積み立てていくという制度がありますが,途中でやめる時に多くの キャンセル料を取られる。葬儀をやっていないのに何で多くのキャンセル料がとられる のか不明であり,取りすぎではないかということで消費者団体が事業者に差止請求訴訟 をし,消費者団体が勝訴していますが現在最高裁に係属中です。

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⑤ 消費者教育推進法の制定…消費者市民社会の提唱 それから 年代になると,個々の消費者に,より問題意識を高く持ってもらうと いうための消費者教育の重要性が認識されて,消費者教育推進法という法律ができまし た。消費者市民社会という概念が提唱され,その実現に,消費者教育を強化していくと いう方向付けがされました。消費者団体訴訟も動き出したけれども,消費者団体も消費 者に支えられないと機能していかないので,個々の消費者が自立して行動するための教 育が重要となっています。 ⑥ 消費者裁判手続特例法の制定 消費者団体訴訟制度についてお話ししましたが,消費者団体は差止請求を提起できま すが,将来に向かってやめろというだけで,過去の被害回復は消費者団体としてはでき ませんでした。被害があった時,個々の消費者が実体法に定められた金銭請求などの権 利を確保するためには,個々の消費者が個別に訴訟をしなければなりません。しかし, 訴訟をするということは基本的には非常に高いハードルがあります。そうすると,でき るだけ訴訟をしやすくしないと,せっかく作った特別法の意味がなくなります。先ほど お話した消費者団体の差止請求訴訟制度というのは,やめさせるだけなのですが,これ ら個々の消費者被害を消費者団体が束ねて集団的に被害の回復をすることができれば, 集団的に権利実現が可能となり,権利の実現がしやすくなります。これが,次の課題と なりました。被害回復の必要があるときに,これをまとめて,一人一人の被害金額は小 さいけれども,みんな一つにまとまって消費者団体などがまとめて集めて,裁判をやっ て返してもらったら,消費者はとても助かりますよね。そういう制度が検討され昨年法 律ができました。施行はまだ先です。消費者裁判手続特例法と言います。 消費者法は変化を続けている 消費者法は最初にお話ししたように,民法や業法など既存の法律が適用されてきまし たが,その既存の法律では消費者取引のルールとしては不十分であるところから,新た な民法の特別法としての実体法を作り,さらにその実体法が機能するように消費者団体 の差止請求訴訟というこれまでにない制度を作り,さらに集団的な被害回復のための消 費者裁判手続の特別な制度ができ,個々の消費者の自立の必要から消費者教育を強化す る法もできてきました。このように,消費者法は変化を続けてきています。 ⑴ 消費者法は行政規制の強化からスタートした ここで,消費者法の展開をもう一度整理すると,消費者取引の解決は,もともと民法 に基づき行われていました。高度経済成長において多くの消費者問題が生じてきたとい

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う時に,消費者法は,業法などの行政規制の強化からスタートしています。典型的なの は特定商取引法,割賦販売法です。特定商取引法は訪問販売やマルチ商法を規制する法 律です。割賦販売法はクレジットやカード取引を規制する法律です。規制方法は,行政 が訪問販売などをする業者にこういうことをしなければなりませんという行使義務を課 しています。例えば販売開始時には,氏名を表示しなくてはいけません,法定の事項を 記載した書面を交付しなければなりませんという,氏名等開示義務,書面交付義務です。 割賦販売法も同様に割賦の支払い条件を,きちんと開示しないといけないなどの義務を 課しています。それとやってはいけない事,すなわち禁止事項を課しています。例えば 脅かしてはいけない,閉じ込めて勧誘してはいけないなどです。 行政規制はもしこれに違反したら行政処分をするというものです。行政規制法では, サンクションは行政によって行政指導をしたり,営業停止などの処分をしたり,罰則を 科すことです。もともと消費者法というのはこのような行政規制法が中心でした。しか し, 年代以降,大きな消費者被害や消費者問題が起こると行政規制だけでは追い つかなくなるわけです。大きなトラブルがあると,その事案だけ後追いで規制すること になり,規制が追いつきません。また,行政は監督分野が決まっており,どうしても隙 間ができてきます。しかも,行政は民事不介入というか,当事者間の紛争には介入せ ず,行政規制法は当事者間の事業者と消費者の契約については基本的には触らないとい うことであります。当事者間の契約関係には介入せずに,あくまでも事業者を指導,監 督していくという立場をとっていったわけです。それが最初の頃の消費者法の在り方 だったわけです。 ⑵ 当事者間の被害回復の重要性の認識…行政規制と民事(司法)規制の両輪が必要 ところが実際問題,被害回復など当事者間の金銭に関する問題は解決しなくてはなり ません。大きな被害では,当事者間の被害回復が,民間の力によって実現することが求 められてきました。そのために弁護団が結成されて,民法を使って訴訟をやっていった わけですが,なかなか訴訟では勝てませんでした。各地の自治体に消費生活センターが あり,そのセンターの相談員さんが被害回復に活躍していました。相談員さんは,被害 者が相談に来たら事情をいろいろ聞いて,業者の方も呼んで,両者をあっせんして多く の消費者紛争について解決を図っていました。相談員さんは,行政職員の一人ですか ら,行政規制規程を駆使して,もしこういうことをやったら問題が起こりますよと事業 者を説得して,事業者にお金を返させたりします。ところがかたくなな事業者がいて, あっせんを拒否したら私達弁護士の所に来るんですね。そうすると私たち弁護士は,行 政規制法を使うわけにはいかないわけです。もちろん行政規制法違反は不法行為の一つ

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の根拠にはなりますけどもそれ自体民事上の効果はありません。あくまでも民法の世界 で対処するわけです。そうすると,先ほどお話ししたように民法では対等当事者という ことになりますので,契約を解消したり,損害賠償をする要件はかなりハードルが高 い。行政規制法違反をしても不法行為や債務不履行の責任は認められないことが多い。 ですから行政規制を背景に解決できない人たちが弁護士のところに来ても,なかなか民 法に基づく説得や訴訟では,行政の相談員さん達が解決したような解決レベルに達しな いということが多かったのです。それは先ほど言ったように民法では,契約当事者は原 則として対等だという一つのドグマが,裁判所にあったということです。 先ほどお話ししたバブル経済を一つの契機に,それはおかしいじゃないかということ が顕著になり,大きな展開があったのが民事実体法の展開です。消費者取引の実態にあっ た民事実体法で消費者の権利強化し,法律の変更ということがとても重要だという問題 意識が出てきました。行政規制だけから,行政規制と民事規制あるいは司法規制の,こ の両輪がないと消費者法としてはきちっと機能していかないということが認識されまし た。消費者問題が起こった時に民事的に解決する場合,消費者が自らの権利を主張し, 実現していく上で民法だけでは不十分であり,民法の特別法としての消費者法の重要性 が認識され,実際に検討がされ,特別法が制定されてきたわけです。かつて消費者法を 研究していた大学の先生方は行政法の先生方だったのですが,今は,民法の先生が研究 するようになりました。これはこういう流れがあったからです。このように消費者法の 両輪の中で民法の特別法としての消費者法の重要性というのが認識されて,代表的な法 律として製造物責任法や消費者契約法が制定されていったのです。 ⑶ 代表的な民事特別法である消費者契約法とはどういう法律か 民事特別法の代表である消費者契約法の中身を少し詳しくお話ししたいと思います。 消費者契約法の制定当初は二つの分野で消費者契約における民法の要件を緩和して,消 費者の権利を強化しました。まず,不当な勧誘に対するペナルティーです。民法では詐 欺,強迫が規定されていたのを,「詐欺」を「誤認」という類型に緩和しました。詐欺 は故意にだますことですが,それを誤った情報による勧誘という要件に緩和しました。 効果は意思表示の取り消しで,民法の詐欺と基本的に同じです。 誤認型にはさらに三つの類型がありまして,第 に「不実告知」。すなわち,事実と 違うことを告知したことです。詐欺はだますという故意が必要ですが,不実告知は故意 はいりません。客観的に事実と異なっていれば取消ができます。事業者は知らずに間 違った情報を出すということがあります。例えば中古車を売った時に,購入する消費者 は事故のない,事故履歴のない中古車を買いたい時に,事業者も「この中古車には事故

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履歴はありません」といって売った。ところが,その中古車を業者に売った人が事故履 歴を偽って,実際には事故車だったという場合があります。この場合,売った事業者も 知らない,買った消費者も知らないのですが,客観的には事故車を事故車でないと言っ て売って,事実と違う不実のことを述べています。そういう不実告知事実があった時に 消費者契約法では取り消しができるのです。事実と違うことを告知してはいけない,正 しい情報を出す義務が事業者にはある,そういう義務に違反したということで,これは 取り消しができるとしています。 第 に,「断定的判断の提供」という誤認類型があります。例えば土地の売買で,必 ずこの土地は上がりますと勧誘するとか,株が必ず上がりますと勧誘するような,将来 どうなるか分からないものについて断定した判断を提供して勧誘したらいけない。将来 どうなるか分からないものに対しては,将来どうなるか分からないといって売らないと いけないわけです。これも取り消すことができます。ただし,過去にこうだったという 実績や,予想であると言うのはいいので,実際上の区別はなかなか難しいです。 第 の誤認類型として「不利益な事実の不告知」があります。商品やサービスについ て良いことだけ言って,悪いことを言わないのはだめだということです。例えば化粧の ピーリングや,あるいはアートメイクというのがあります。これは確かにうまくいけば 肌がよくなるし,化粧しなくなってきれいになる良い面があるわけですが,肌に合わず に炎症となる副作用がある可能性があるわけです。そういう副作用を言わずに,皆きれ いになると思って契約したような場合です。あるいは福岡地裁で裁判例がありますが, マンションを購入した例で,眺望がとてもいいです,周りの景色がとてもいいですよと いってマンションの 室を売ったのですが,実はその眺望の見える,一番いい景色の方 に, 年か 年後に購入したマンションより高い建物が建ってしまい,眺望が台無しに なってしまったのです。その際,売り主の事業者は,その事を知っていたわけです。売 る方は数年後に建物が建つのを知っていながら眺望がいいですよと言って売りました。 そういう不利益を言わずに勧誘をしたことから,取消の対象となっています。「不実告 知」は積極的に事実と異なることを言い,積極的に誤った情報を出すことです。他方 で,「不利益事実の不告知」は不利益な情報を出さないという不作為が問題だとされて います。これら, つが誤認類型として取り消しの対象になっています。 続いて,困惑型の類型があります。民法の「強迫」の要件を「困惑」に緩和して取消 を認めたものです。強迫とは,典型的には脅して契約させることです。やくざが「これ を買わないとどうなるかわからへんで」と言って売るようなものでありますが,通常の 取引ではなかなか認められないので,それを緩和して,家に来て,あるいは職場に来て 「もう帰ってよ」と言っても帰らなくて,困って買ったような場合,いわゆる押し売り

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ですね。消費者契約法では,そういう勧誘で困惑した場合についても取り消しができる ようにしました。これを「不退去」といいます。 それから「退去妨害」と言いまして,お店とか展示会に行ったときに,買うまで帰し てくれない勧誘類型にも取り消しを認めました。よくあるのは,展示会などで店員があ れこれ言って,次々と人が来て勧誘し, 時間くらいたっても帰れずにどうしようもな くなって買ったというような場合です。そういう困らせて買うような場合について取り 消しができるということにしました。「不退去」と「退去妨害」の つの困惑類型につ いて民法の強迫の要件を緩和したのです。 それから,消費者契約法の大きな二つ目の分野としては契約の不当条項に対するペナ ルティーです。勧誘には,不当なことはなかった。しかし,契約書の内容を見てみたら とても消費者に不利な条項があった場合の規定です。例えば「 度払ったお金はどんな 理由があっても一切返しません」という条項です。「いったん加入したら, 年間解約 できません」という会員契約などです。いろいろな条項があります。事業者は自ら契約 条項を作るのでそういう消費者に不利益な契約条項を作りやすい。一定の問題がある条 項については民法 条の公序良俗に反して無効という処理がされてきましたが,公序 良俗というのはすごくハードルが高いんです。消費者契約では,それよりも低いハード ルで不当条項の無効が主張できることが必要です。そこで,三つの種類の条項で無効と なる場合を認めています。一つは不当な免責条項,例えば「この駐車場で生じた事故に ついては一切責任を負いません」という条項です。一切責任を取らない免責条項という のは無効です。 二つは不当な損害賠償の予定条項の無効です。解除に伴う解約金,いわゆるキャンセ ル料に多くの消費者トラブルがあります。例えば,大学の入学辞退の時の学納金の不返 還も一つのキャンセル料です。それから結婚式場,貸衣装,エステなど契約してから実 施まで時間がかかるもののキャンセル料です。そういうキャンセル料は,「平均的損害」 という事業者が解除やキャンセルされることによって受ける平均的な損害以上はとって はいけない,と規定されています。解約料は,平均的な損害が上限ですよと定めて,そ れ以上は無効としています。それから三つ目は一般条項と言いまして,契約条項はいろ いろな種類が新たにできるものですから,いろいろな不当条項でも当てはまるように, 「信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項を無効とする」と定めています。 このように消費者契約における勧誘と不当条項に関する民法の特別法としての消費者契 約法ができ,重要な役割を果たしています。

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消費者法の課題…市場と社会の担い手としての消費者役割の強化 年に, 年に制定された「消費者保護基本法」が「消費者基本法」に改正さ れました。何が変わったかというと,法律の名称から「保護」が抜けたのです。具体的 な内容としては,消費者は権利者であるということと,消費者は自立しなくてはいけな いという二つの要素が加わりました。「消費者の権利」「自立する消費者」をキーワード に消費者法が変化してきた。消費者は,権利者として自立できる存在だという認識が出 てきまして,そのためには単に実体法を整備するだけではなくて,消費者が,与えられ た権利行使ができるような力をつけ,その環境整備していかなくてはいけないというの が今の消費者法の課題です。 その環境整備のために,一つは前述した消費者団体に一定の権利を与える,差し止め という権利を与えました。これは 年に,消費者契約法を改正することによって実 現されました。それからさらに 年に消費者庁と消費者委員会の新しい行政機関が 国に設置されました。この新しい行政機関が消費者を支援する体制を作っています。 さらに 年に消費者教育推進法が作られました。個々の消費者の自立する力をつ けていこうというものです。簡単に言えば,行動する消費者を学校教育と地域教育に よって養成していくのです。この教育によって「消費者市民社会」を実現しようという のがこの法律の目的です。この話をもっとしたかったんですが,時間が足りないので簡 単にします。同法には消費者教育を定義して,消費者の自立を支援するために行われる 消費生活に関する教育及び,これに準ずる啓発活動と書いています。とても大事なのは そのほかに,「消費者が主体的に消費者市民社会の形成に参画することの重要性につい て,理解及び関心を深めるための教育を含む」と書いていることです。 そして,「消費者市民社会」を定義して,個々の消費者の特性に配慮すること,消費 者には年齢などそれぞれいろいろな特性があり,その消費生活の多様化を尊重すること であり,私達が商品やサービスを買い,使い,捨てる,という消費活動をすることが現 在はもちろん将来にわたって内外の,内外というのは日本と世界ですね,社会経済情勢 及び地球環境に影響を及ぼしていることを自覚して行動する社会としています。私達が 何を買い,どういうものをどうやって使うか,それからどうやって捨てるかですね。電 気の使い方が典型的な例です。そういうことは環境とかいろいろなものに影響を及ぼし ているんだということを自覚する必要があることを指摘しています。そういうことを消 費者が自覚して消費行動することによって,持続可能な社会になっていく。そういうこ とに積極的に参加するということが消費者市民社会の実現につながります。 そして基本理念として,従来は消費生活に関する知識を習得が重視されていました が,更に適切な行動に結びつける実践的能力の育成という,行動することが重視されて

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