IFLDiscussionPaperNo.1
佐 藤 義 明
科 学政策
未来学
科学哲学
社会科 学
腰
人 文学
政策法学
法社会 学
法哲学
未来法学の構想
佐 藤 義 明1 は じめ に 1.「 法 ・未 来 学 」:未 来 学 の 半 世 紀 2.「 未 来 ・法 学 」:政 策 法 学 の 問題 提 起 3.未 来 法 学 研 究 所 の課 題 お わ りに 付 録1:「 トロ ッ コ問題 」 と 自動 運 転 車 の設 計 に つ い て 付 録2:汎 用 技 術 の 開発 の規 制 につ い て 「未 来 とわれ われ の 能 力 とを評 価 す る こ とに よっ て の み 、 われ わ れ は未 来 の旅 に備 え る こ とが で き る」2。 「未 来 を 予 測 す るた め の 一番 い い 方 法 は 、未 来 を発 明 す る こ とだ 」(ア ラ ン ・ ケイ)3。 1成 膜 大 学 法 学 部 教 授 ・未 来 法 学 研 究 所 長 。 本 稿 は 、2019年6.月13日 に 開 催 さ れ た 成 膜 大 学 未 来 法 学 研 究 所 第1回 研 究 会 に お け る 報 告 に 基 づ く。 コ メ ン トを 下 さ っ た 参 加 者 の 方 々 に 感 謝 申 し 上 げ る 。 本 稿 が 表 明 す る 見 解 は 筆 者 個 人 の も の で あ り、 個 々 の 見 解 す べ て を 所 員 が 共 有 し て い る わ け で は な い 。 2HarrisonBrownetal .,TheIVextHundredYears:Man'sNaturalandTeehno70gieal Rθsoureθs(1957),p.4[ハ リ ソ ン ・ブ ラ ウ ン 他 、寺 村 誠 一 、上 妻 斉 訳 『百 年 後 の 世 界 』(1958 年)15頁].「 繰 り返 し危 機 が 到 来 す る 時 代 に 未 来 を 予 測 す る 能 力 が な い と い う こ と は … 時 限 爆 弾 付 き の 人 生 を 送 る と い う こ と で あ る 」 と も い わ れ る 。 べ ・ ド ン チ ョル 、 チ ェ ・ ユ ン シ ク 、 金 泰 旭 訳 『富 の 未 来 図:2030年 』(2011年)78頁 。 「最 悪 の 事 態 を 予 測 す る こ と こ そ が 、最 悪 を 回 避 す る 最 善 の 手 段 」 で あ り 、 「予 測 す る と い う行 為 の 最 大 の 敵 は 怠 慢 」 で あ る 。 「最 悪 の 事 態 が 訪 れ て も 立 ち 向 か う気 力 が な く 、 尽 力 し な け れ ば そ こ か ら逃 れ ら れ な い の に 、 そ の こ と を 怖 く て 認 め よ う と し な い 」 な ら ば 、 そ の 結 果 を 甘 受 す る し か な い 。 ジ ャ ッ ク ・ア タ リ 、 林 昌 宏 訳 「日本 の 読 者 へ 」 『2030年 ジ ャ ッ ク ・ア タ リ の 未 来 予 測:不 確 実 な 世 の 中 を サ バ イ ブ せ よ!』(2017年)3頁 参 照 。 同 序 文10頁 も 参 照(「 現 代 人 が い た る と こ ろ で 社 会 が 自 滅 す る の を 傍 観 し続 け た こ と 」 は 、 未 来 の 歴 史 家 に と っ て 「謎 と な る だ ろ う」 と 慨 嘆 す る)。 ア タ リ に は 、Ullθbr∂vθhistoirθdθ1'avθllir(2006)[『21世 紀 の 歴 史: 未 来 の 人 類 か ら 見 た 世 界 』(林 昌 宏 訳 、2008年)]と い う著 作 も あ る 。 3モ バ イ ル 社 会 研 究 所 編 『き み が つ な ぐ み ら い:モ バ イ ル ビ ジ ョ ン2030』(2006年)20-21 頁 。 具 体 的 に は 、 「未 来 の 予 測 よ り も 重 要 な こ と は 、 ジ ョー ジ ・オ ー ウ ェ ル の 『1984年 』 の よ う な 未 来 を 阻 止 す る こ と で あ る 」と い わ れ る こ と も あ る 。SeeArthurC.Clarke,Forward toMillennialEdition,inProfi7θsoftheFuturθ:AnEnquiryintothθLimitsofthθ Possib7θ(1999),pp.1,3.は じめ に 日本 は課 題 先 進 国 で あ る とい わ れ る4。 社 会 的 な対 応 を必 要 とす る課 題 が他 国 に先 ん じて 発 生 して い る とい う意 味 で あ る。 課 題 先 進 国 に は 、課 題 解 決 先 進 国 とな る こ とが期 待 され る5。 課 題 先進 国 は 、 自国 よ りも後 で 同 じ課 題 に 直 面す る他 国 が対 応 策 を考 案 す る ま で 無 為 にす ごす 猶 予 は な い。 後 に触 れ る 「政 策 法 学 」 の観 点 か ら強 調 され る よ うに 、 「国 産 の 理 論 づ く り」 に よっ て 自国 の課 題 の解 決 を模 索 しな けれ ば な ら な い の で あ る6。 例 え ば、 これ ま で の 日本 の 医療 は 、必 要 に応 じて 「つ ま み食 い 的 に 」海 外 の事 物 を取 捨 して き た こ とか ら、総 合 的 シ ステ ム を発 展 させ る こ と に失 敗 して きた とい われ る7。 日本 の 医療 が、 課 題 解 決 後 進 国 で あ る こ とを 自覚 して い た 時 期 に 、課 題 解 決 先 進 国 で あ っ た海 外 に追 い つ くた め に 、 自国 は失 敗 の危 険 を 引 き受 け る こ とな く、他 国 の経 験 に 「た だ 乗 り(フ リー ライ ド)」す る とい うア プ ロー チ を採 用 した こ とは 賢 明 で あ っ た か も しれ な い。 しか し、東 洋 医学 の伝 統 に加 えて 、西 洋 医学 の輸 入 につ い て も、1774年 の 『解 体新 書』 JohannAdamKulmus,OntieedkundigeTafe7θn(GerardDictentrans1., 1734)の 前 野 良沢 に よ る翻 訳一 一 の刊 行 か ら245年 が経 ち、国家 と して 「智 識 ヲ 世 界 二 求 メ」 る こ とを表 明 した1868年 の 「五 箇 条 の御 誓 文 」 公 表 か らです ら 151年 が経 過 した現 在 で も、同 じア プ ロー チ を と り続 け る と した ら、医療 の 点 で 日本 が 課題 解 決 先 進 国 とな る 見込 み は ほ とん どな い 。 とい うの も、 日本 よ りも 課 題 後 進 国 で あ る他 国 が 当該 課 題 の解 決 先 進 国 にな る ま で 、 日本 はそ の課 題 を 放 置 し、 対 応 の 時機 を逸 す る こ と にな る か らで あ る。 国力 が相 対 的 に上 昇 して い る隣 国 な どに対 して 、 日本 の 国 力 は相 対 的 に低 下 して い る8。 そ の よ うな状 況 4日 本 は1980年 に は す で に 「不 安 だ ら け の 超 大 国 」お よ び 「世 界 で 最 も 悩 み 多 い 『超 大 国 』」 で あ る と 指 摘 さ れ て い た 。 ア ル ビ ン ・ トフ ラ ー 、 ハ イ ジ ・ ト フ ラ ー 「超 大 国 日本 の 神 話 」 ア ル ビ ン ・ トフ ラ ー 、 鈴 木 健 次 他 訳 『第 三 の 波 』(1980年)639,642頁 参 照 。 そ れ と 同 時 に 、 日 本 人 は 「と り わ け 未 来 へ の 志 向 性 が 強 く 、 未 来 に 対 す る 関 心 が 高 い 」 の で 、 「日本 の 書 物 や テ レ ビ は 未 来 論 で あ ふ れ て い る 」 と も い わ て い れ た 。 同 論 文658-659頁 参 照 。 5小 宮 山 宏 「人 類 史 の 転 換 期 に お け る 国 家 戦 略:プ ラ チ ナ 社 会 へ 向 か う課 題 解 決 先 進 国 」 自 由 民 主 党 国 家 戦 略 本 部 編 『日本 未 来 図2030:20人 の 叡 智 が 描 く こ の 国 の す が た 』(2014 年)13,15,22頁 参 照 。 6大 橋 洋 一 「『政 策 法 学 』 と 行 政 法 学:阿 部 泰 隆 著 『政 策 法 学 の 基 本 指 針 』」 『自 治 研 究 』72 巻11号(1996年)121,124,132頁 参 照 。 トフ ラ ー 、 トフ ラ ー 前 掲 論 文(注4)660頁 も 参 照(日 本 は こ れ ま で の よ う に 西 欧 を 模 倣 し て い る だ け で は す ま な い と 警 告 す る)。 7船 山 信 次 『毒 と 薬 の 世 界 史 』(2008年)181頁 参 照。 8SeeNatinoalIntelligenceCounci1 ,U.S.,Globa17}θllds2030:AltθrnativθWorlds (2012),p.17[米 国 国 家 情 報 会 議 編 、 谷 町 真 珠 訳 『2030年 世 界 は こ う変 わ る:ア メ リカ 情 報 機 関 が 分 析 し た 「17年 後 の 未 来 」』(2013年)36頁 参 照 。 日本 の 領 土 を 占領 し て い る ま た は 侵 略 す る 意 図 を 表 明 し て い る 国 家(地 域)か ら の 軍 事 的 ・政 治 的 な 脅 威 を 受 け つ つ 課 題
で 、ひ とた び 対応 の時 期 を逸 す る と、日本 が挽 回 し うる見込 み は きわ め て低 い。 日本 が 課題 解 決 先 進 国 に なれ るか ど うか は結 果 論 の 問題 で あ る。 しか し、 そ う な ろ うとす る意 思 と努 力 が な けれ ば 、 日本 が そ うな る可能 性 は皆 無 で あ る9。 他 国 に先 が け て 日本 が 直 面 して い る課 題 は 、一 言 で い え ば 、 不確 実 性 の増 大 した 「リス ク社 会 」へ の対 応 で あ る。 人類 史 の 開始 か ら17世 紀 まで の 「遠 い過 去 」 の 時 代 に は 、未 来 は過 去 お よび 現 在 と変 わ らな い も の で あ る とみ な され て い た。18世 初 頭 か ら20世 紀 後 半 まで の 「昨 日」、す な わ ち、(主 と して 西洋 の) 資 本 主 義 ・工 業 社 会 の 時 代 に は 、未 来 は現 在 よ りも良 い もの に な る と信 じ られ て い た。 しか し、 「今 日」 で は 、未 来 が 現在 よ りも良 い もの で あ る どこ ろか 、過 去 お よび 現 在 と断絶 した 脅 威 に満 ちた も の で あ る と考 え られ る脱 工 業 化 社 会 一 一 「明 日」 へ と変化 しつ つ あ る と考 え られ て い る10。人 々 は 、歴 史 的文 脈 に 照 ら して未 来 を理 解 す る こ とが で き な い とい う 「方 向喪 失 感 」 の な か で 、 「驚 愕 と衝 撃 」 で あ る未 来 に対 面 す る こ とに な り、 「歴 史 の な か に、 そ して歴 史 の た め に生 きた祖 先 の 人 た ち と違 っ て 、 … 行 方 も知 らず 漂 流 して い る」11の で あ る。 この よ うに、 過 渡 期 に あ る と考 え られ る社 会 が 、経 験 値 を十 分 もた ない 要 因 の 規 定す る課 題 を解 決 す るた め に は 、 「高 度 の柔 軟 性 と進 化 能 力 」 が 必 要 で あ り、 法 学 も隣 接 諸 学 と協働 し、 法 解 釈 学 の 狭 い 領 域 を超 え て課 題 を制 御 す る統 一 的 な社 会 理 論 の構 築 に参 画 す る こ とが必 要 とな る12。 課 題 先 進 国 が 「国産 の理 論 づ く り」を試 み る際 に は、社 会 実験 が 必 要 とな る。 社 会 実 験 は、 全 国規 模 の もの も重 要 で あ る が 、 自治 体 単位 で の もの が と りわ け 先 進 国 で あ る こ と は 、 日 本 に と っ て 大 き な 挑 戦 で あ る 。 9「 先 進 事 例 」 を み ず か ら 創 り 出 し た 例 と し て 、 ソ ウ ル 市 冠 岳 区 の 「人 に や さ し い 図 書 館 (humanlibrary)」 が 挙 げ ら れ る 。 塚 原 正 彦 『み ん な の ミ ュ ー ジ ア ム:人 が 集 ま る 博 物 館 ・ 図 書 館 を ま ち な か に た く さ ん つ く ろ う:博 物 館 ・ 図 書 館 未 来 学 』(2016年)139-140頁 参 照 (同 区 の 職 員 は 「本 と 生 活 を 結 ぶ 数 々 の 学 び の プ ロ グ ラ ム を 開 発 し 、 実 証 実 験 を 展 開 し た 」 と 紹 介 す る)。 10SeeRobertHeilbroner ,VisionsoftheFuturθ(1995),pp.6-16[ロ バ ー ト ・ハ イ ル ブ ロ ー ナ ー 、 宮 川 公 男 訳 『未 来 へ の ビ ジ ョ ン:遠 い 過 去 、昨 日 、今 日 、明 日 』(1996年)6-19頁].See alsoJohnTiffin,TheHyperRealityParadigm,inHyperreality:Paradi辞mfortheThird Mi71θnzlium(JohnTiffin&NobuyoshiTerashimaed.,2001),pp.25,41[ジ ョ ン ・テ ィ フ ィ ン 「ハ イ パ ー リ ア リ テ ィ ・パ ラ ダ イ ム 」JohnTiffin&NobuyoshiTerashima編 、 寺 島 信 義 監 訳 『ハ イ パ ー リ ア リ テ ィ:第 三 千 年 紀 の パ ラ ダ イ ム 』(2002年)26,48-49頁]. 11RobertL .Heilbroner,TheFuturθasHistory・'ThθHistoricCurrθntsOfOurTimθand thθ.OirθctioninMZhiehThey.4rθTaking.4mθriea(1960),p.15[ロ バ ー ト ・L・ ハ イ ル ブ ロ ー ナ ー 、 松 田 銑 訳 『歴 史 と し て の 未 来:現 代 の 歴 史 的 動 向 と ア メ リ カ の 進 路 』(1970年) 13頁]. 12E・ シ ュ ミ ッ ト=ア ス マ ン、海 老 原 明 夫 訳 「ド イ ツ 行 政 法 の 最 近 の 発 展(上)」 『自 治 研 究 』 72巻9号(1996年)3,7頁 参 照(「 リ ス ク 社 会 」 と い う 概 念 は 、 行 政 法 学 を 行 政 学 な ど と 架 橋 す る 契 機 に な る と 指 摘 す る)。
重 要 で あ る と考 え られ る13。そ の 理 由の1つ は 、社 会 実験 の 実施 は小 規 模 な 単位 の もの の 方 が大 規 模 な も の よ りも相 対 的 に容 易 で あ る こ とで あ る。 そ れ と同 時 に 、政 策 の成 否 が 地域 ご との条 件 に依 存 す る問題 が 少 な くな い か らで もあ る。 例 えば 、 自動 運 転 シ ス テ ム の導 入 につ い て 、法 律 の 制 定 を待 つ こ とな く、過 疎 や 過 密 な ど地 域 ご とに特 有 の課 題 を もつ 自治 体 が 、 そ れ ぞ れ 「我 が 町 の走 行 環 境 条 件 」 を特 定 し、 そ れ を前 提 に 導入 を試 行 す る こ とが必 要 で あ る と指 摘 され て い る14。ま た 、新 しい 技術 が 受 け入 れ られ るか ど うか が 、地域 文 化 に依 存 す る 場 合 も あ る。 例 えば 、 音 声 イ ン ター フ ェー ス技 術 の 導 入 が可 能 で あ るか ど うか につ い て 、「言 葉 で 指 示 す る の は恥 ず か しい と思 う人 が い る」とい う障壁 が あ り、 そ の よ うな人 の割 合 はア ジ ア で 高 く、 欧 米 で は そ れ ほ ど高 くな い とい う調 査 が あ る。「言 語 や 文 化 の 違 い もUX[UserExperience]デ ザ イ ンで は個 別 に対 応 して い く必 要 が あ[る1」 の で あ る15。 社 会 実 験 が 成 功 す れ ば 、 そ の実 験 の 条 件 に適 合 す る範 囲 で 、 そ の 適 用 を拡 大 させ る こ とが可 能 に な る。 そ の な か か ら、 最 善 実行(ベ ス ト ・プ ラ クテ ィ ス) と して 普 及 す る もの が あ る か も しれ な い 。 しか し、 実 験 で あ るか らに は 、 それ が失 敗 す る こ と もあ る。 そ の場 合 に も、 社 会 実 験 が 無 駄 で あ るわ けで は な い。 い わ ゆ る 「失 敗 学 」 や 「危 険 学 」 の観 点 か ら指 摘 され てい る よ うに、 そ の情 報 を 共有 す れ ば 、 同 じ課 題 に直 面す る者 が 失 敗 に 終 わ る試 み を 回避 で き る とい う 意 義 を もつ か らで あ る16。 「な に が な し得 な い か を知 る こ とは、 な に が な し得 る か を知 る こ と と同様 に重 要 」17な の で あ る。 な お 、 「失 敗 学 」 の 手 法 は法 学 に お い て も採 用 され つ つ あ る。 例 え ば、 従 来 、 「誤 判 研 究 」 が確 立 して こな か っ た の は、 「誤 判 」 とは何 で あ るか に つ い て 共通 認 識 が確 定 され て こな か っ た こ とが 理 由 で あ っ た。 そ こ で 、 下級 審 が 有 罪 判 決 を 下 した が、 上 級 審 が 下 級 審 に よ る事 実 認 定 に合 理 的 な疑 い を 抱 き、 当該 判 決 を破 棄 した 場 合 に 、 そ の よ うな判 決 を 「誤 判 」 と して 「失 敗 学 」 の 方 法 を適 用 す るべ き で あ る と提 唱 され て い る18。また 、法 学教 育 につ い て も、解 釈 論 の 学習 13阿 部 泰 隆 『政 策 法 学 の 基 本 指 針 』(1996年)38頁 参 照。 14日 経BP総 研 編 『ビ ジ ネ ス を 揺 る が す100の リ ス ク:日 経BP総 研2030展 望 』(2018年) 169頁 参 照 。 な お 、2019年3H8日 に 閣 議 決 定 され た 道 路 交 通 法 改 正 案 が 国 会 を 通 過 す る と 、 公 道 に お け る 条 件 付 き の 自 動 運 転(「 レ ベ ル3Dが 承 認 さ れ る こ と に な る 。 15河 野 道 成 『音 声 に 未 来 は あ る か?』(2018年)167 ,279頁 参 照 。 16畑 村 洋 太 郎 『失 敗 学 の す す め 』(2005年)14頁 参 照 。 「失 敗 学 」 は す で に発 生 した 失 敗 を 分 析 す る 手 法 を 、 「危 険 学 」 は 、 危 険 が 存 在 し て い る が 、 失 敗 が ま だ 発 生 し て い な い 状 況 を 分 析 す る 手 法 を 意 味 す る 。畑 村 洋 太 郎 『危 険 学 の す す め:ド ア プ ロ ジ ェ ク トに 学 ぶ 』(2006 年)244頁 参 照 。
17ArthurC .Clarke,PrOfi7θsofthθ1PTuturθ ・'AnEnquiryintothθLimitsofthθPossib1θ
(1999),pp.8,9[ア ー サ ー ・C・ ク ラ ー ク 、福 島 正 実 、川 村 哲 郎 訳 『未 来 の プ ロ フ ィ ル 』(1966 年)7,11頁].
の み な らず 、具 体 的 な 「失 敗 例 」に関 す る学 習 も重 要 で あ る と指 摘 され て い る19。 「誤 判 研 究 」 は この よ うな法 学 教 育 に も貢 献 す る と考 え られ る。 さ らに、 「政 策 法 学 」 が 指 摘 す る よ うに、 法 制 度 の 目的 が十 分 達成 され な い とい う失 敗 は例 外 で は な く、 法 制 度 が 最 適 な あ り方 に到 達 す るま で に は常 に生 じ うる こ とを受 け 入 れ るべ き で あ り、 す べ か ら く法 制 度 の設 計 は 、失 敗 した場 合 の訂 正 可 能 性 と そ の方 法 を考 慮 に入 れ た もの に され るべ き な の で あ る20。 も っ とも 、社 会 実 験 が 失 敗 す る と、 国 民 は政 府 の 責任 を追 及 しが ちで あ る。 き っ き ん そ こで 、 客 観 的 に は 喫 緊 の 課 題 で あ る も の につ い て も、 国民 が 当該 課 題 の存 在 を認 識 して い な か っ た り、 そ の存 在 は認 識 して い て も、 迅 速 に対 応 す る必 要 が あ る と認 識 して い な か った り、迅 速 な 対 応 を要 求 して い て も、提 案 され て い る 対 応 が 社 会 実 験 と して 成 功 す る確 率 が 低 か っ た りす る場 合 一 一 い わ ば 国 民 に 「病 識 」 が な い場 合 一 一 に は 、政 府 は 、 必 要 な社 会 実 験 を 回避 しよ うと しが ち に な る。 そ も そ も、 政府 は 、情 報 を歪 曲 し、課 題 の 存 在 を 隠蔽 した り、 それ は 認 め て も、 対 応 がす ぐに必 要 な もの で は ない とみ な す よ うに 国 民 の 認 識 を操 作 く し た りす る か も しれ な い 。 国 民 の 社 会 情 勢 に 関 す る 認 識(perception)は 、 政 府 に よ る広 報(publicrelations)に 大 き く依 存 す るか らで あ る21。政 府 に正 確 な情 報 を公 開 させ 、社 会 実 験 を適 時 にお こな わせ るた め に は 、社 会 実 験 が失 敗 して も、 そ れ は最 適 な 政 策 を確 立 す るた め に不 可避 な 場 合 が あ る こ とを 国 民 が 受 け入 れ 、政 府 を委 縮 させ な い こ とが必 要 で あ る。 日本 にお い て は 、科 学 的 方 法 に よ る実 験 的 事 業 が お こ な われ る こ とは 「まず な く」、社 会 実 験 は濫 用 と不 当な 忌避 の 両 方 の危 険 に直 面 して い る とい わ れ る22。 そ の代 わ りに 、理 念 法 の み が制 定 され る こ とが少 な くない 。 例 え ば、 最 も深 刻 な課 題 の1つ で あ る少 了 化 につ い て 、 日本 は2003年 に 、少 了 化 社 会 対 策 基 本 法 お よび 次 世 代 育成 支 援 対 策 推 進 法 を制 定 して い る。 この2つ の法 律 は 、 日本 が 景 咬 先 生 古 稀 祝 賀 論 文 集 下 巻 』(2001年)699,710-711頁 参 照 。 弁 護 士 実 務 に 「失 敗 学 」 の 適 用 を 試 み る 著 作 も 刊 行 さ れ て い る 。 高 中 正 彦 他 編 『弁 護 士 の 失 敗 学:冷 や 汗 が 成 功 へ の 鍵 』(2014年)。 19柳 田 邦 男 「解 説:『 組 織 文 化 』を 変 え る 失 敗 学 」畑 村 洋 太 郎 『失 敗 学 の 法 則:決 定 版 』(2005 年)248,254-255頁 参 照 。 20大 橋 前 掲 書 評(注6)124頁 参 照。 後 述8-9頁 も 参 照 。 21政 治 に お い て は 「『実 体 』 は 重 き を な さ な い 。 人 び とが 『実 体 』 と思 う こ と す な わ ち バ ー セ プ シ ョ ン が 『実 体 』 と み な さ れ 、 そ の も と で す べ て の パ ワ ー ・ゲ ー ム が 進 行 」 す る こ と が あ り 、 そ の 場 合 に は 「『虚 構 』 が い つ の ま に か 『実 体 』 に な り か わ る 」 と指 摘 さ れ る 。 近 藤 誠 一 『歪 め ら れ る 日本 イ メ ー ジ:ワ シ ン ト ン の バ ー セ プ シ ョ ン ・ゲ ー ム 』(1997年)4 頁 参 照 。 22白 取 耕 一 郎 「行 政 に お け る 『実 験 』 の 機 能 ・方 法 と 限 界:構 造 改 革 特 区 ・モ デ ル 事 業 ・ 交 通 社 会 実 験 等 、 方 法 的 に 厳 密 で な い 『実 験 』 の 研 究 」(2007年)16頁 参 照 。
「す ごい 政 策 を推 進 して い る」 印象 を与 え る。 しか し、 そ の よ うな 印 象 を受 け て い た 外 国 の研 究者 が そ れ らの 実 体 を知 る と、肩 透 か し され た よ うな顔 をす る とい われ る23。例 え ば、 後 者 は10年 間 の 時 限 的 立法 で あ る とい う社 会 実 験 立法 の よ うな 性 質 を もつ もの の 、制 裁 を とも な う義 務 を課 し、実 効 的 な 政 策 を推 進 す る こ との な い 単 な る理 念 法 だ か らで あ る24。 日本 の 「法 学 者 」 は 、 この よ うな 状 況 に もか か わ らず 、他 国 の経 験 を 日本 に紹 介 す るだ けの研 究 者 が 「○ 国 で は 」 じ ょ う と う く で わ の か み を 常套 句 とす る 「出羽 守 」、 「外 国 の こ とを語 っ て 『日本 は … 』 と撫 然 とす る」 「蟹 箭 等 」 と椰 楡 され てい る蹴 法 学 者 に か ぎ られ ず 、 「日本 の学 者 は世 界 的 に 権 威 づ け られ た こ とに は熱 心 で も、 目の前 につ きつ け られ た事 実 に は冷 淡 な の で あ ろ うか」26と 問 わ れ て い る こ とは少 な くない 。 失 敗 の 危 険 を抑 えつ つ 課 題 へ の 最適 な政 策 を模 索 す る た め に は 、 実 地 の社 会 実 験 の 前 に 、 さま ざま な学 問分 野 で 思 考 実 験(「 図 上 演 習 」)が 試 み られ る こ と が重 要 とな る。 そ の 際 に は 、次 の2つ の方 法 が 重 要 とな る。 第1に 、現 在 か ら 未 来 を予 測 す る 「フォ ア キ ャ ス ト」 に加 え て 、未 来 の 視 点 か ら現在 を検 討 す る 「バ ッ ク キ ャ ス ト」 をお こ な うこ とで あ る。r未 来 の 時 点 に 立 っ て み る こ とは 、 歴 史 の 岐路 を よ り深 刻 に再 考す る機 会 を与 えて くれ る」27からで あ る28。第2に 、 社 会 的 な 選 択 が お こな わ れ る分 岐 点 にっ い て 、選 択 され な か っ た選 択 肢 を含 め 23阿 藤 誠 「日本 の 少 子 化 対 策 と今 後 の 展 望 」 毎 日新 聞社 人 口 問題 調 査 会 編 『人 口減 少 社 会 の未 来 学 』(2005年)139,151-152,168頁 参 照 。 24同 じこ と は 、LGB(同 性 愛 お よび 両 性 愛 を性 的 指 向 とす る)個 人 に 対 す る差 別 の解 消 に つ い て もい え る。 日本 国 政 府 は 、異 性 愛 者 に認 め て い る 婚 姻 す る 権 利 をLGB個 人 に は保 障 しな い とい う法 律 上 の 差 別 を維 持 しつ つ 、2000年 に 人 権 教 育 及 び 人 権 啓 発 の 推 進 に 関 す る 法 律 を 理 念 法 と して 制 定 し 同 法 自体 は 差 別 禁 止 事 由 と して 「性 別 」 を 挙 げ っ っ 、 性 的 指 向 は 挙 げ て い な い 、 同 法 に 基 づ く施 策 と して 、 国 民 に よ るLGB個 人 に対 す る 事 実 上 の 差 別 を解 消 す る た め に 、 そ の 教 育 と啓 発 をお こ な う とす る の で あ る。 佐 藤 義 明 「オ リ ン ピ ッ ク とLGB(中 一2)」 『成 膜 法 学 』91号(2019年 、 近 刊)。 理 念 法 の 下 で お こ な わ れ る 行 政 指 導 に つ い て は 、 そ れ が 功 を 奏 さな い と 、 い っ そ う実 効 的 な 法 の 制 定 が 課 題 と され る ど こ ろ か 、 「規 制 が 放 置 され て しま う こ とす ら少 な く な い 」 と指 摘 され る。 大 橋 洋 一 『行 政 法 学 の構 造 的 変 革 』(1996年)24頁 参 照(日 本 で は 、 近 代 法 モ デ ル 自体 が 未 発 達 な の で 、 超 近 代 的 な 法 モ デ ル を導 入 し よ うとす る の で は な く、 近 代 法 モ デ ル の構 築 に さ らに努 め 、 必 要 な 場 合 に は ハ ー ドな 手 法 を貫 徹 し うる よ うに す る こ と が 課 題 で あ る と指 摘 す る)。 25樋 口 陽 一 『ふ らん す:「 知 」 の 日常 を あ る く』(2008年)15-16頁 参 照 。 26根 本 順 吉 「訳 者 あ とが き 」 ジ ョナ サ ン ・ワ イ ナ ー 、根 本順 吉訳 『次 の百年:地 球 は ど う な る?』(1990年)300,302頁 。 27佐 藤 仁 「開 発 と援 助 の 未 来 学:特 集 に あ た っ て 」 『東 洋 文 化 』97号(2017年)1 ,4頁 。 28バ ッ ク キ ャ ス トを適 用 した 著 作 と して 、例 えば、モ バイル 社会 研 究所編 前掲 書(注3) 15-16,95-97頁 参 照 。
て 「シ ナ リオ ・プ ラニ ン グ」29す る こ とで あ る。 もち ろ ん 、構 想 され るシ ナ リオ は 、 で き る か ぎ りデ ー タ に基 づ き、 経 済 学 や 社 会 学 の 知 見 が反 映 され た もの で な けれ ば な らな い。 そ れ と同 時 に 、 日本 にお い て は 「法 律 に よ る行 政 」 の原 則 の 下 で 、 政 策 は法 令 とい う形 式 で 実 現 され る こ とにな る の で 、 当該 シナ リオ に 含 まれ る政 策 が 、 憲 法 の 下 で許 容 され る もの で あ るか 、 法 令 や 判 例 と整 合 的 な もの で あ るか 、 さ らに 、制 裁(sanction)刑 罰 や 過 料 な どの 「負 の制 裁 」 と 補 助 金 な どの 「正 の 制 裁 」 の組 み合 わせ が受 け入 れ られ る もの で あ るか な ど も重 要 な要 素 とな る30。 法 制 度 に 「完 成 品 」 は 存 在 しな い。 そ れ は 「生 物 が 進 化 して い った の と同 じ よ うな形 で進 化 を遂 げ る」 ので あ り、 「後 戻 りで き る 自由 は絶 えず 担 保 しな が ら 実 験 をす る」 とい う 「撤 退論 を備 えた 実験 志 向 の制 度 論 」が必 要 で あ る31。 この 観 点 か ら、 比 較 法 は他 国 の法 を 「地 球 レベ ル で の 実 験 」 とみ なす 研 究 で あ り、 法 制 史 は 「歴 史 上 の 時 点 を変 え る こ とに よっ て 、 実 験 的 な成 果 を求 めた 」 法 を 研 究 す る分 野 で あ る32。比 較 法 の 興 味 深 い 例 と して 、 ドイ ツ にお け る 「実験 法 律 」 が あ る。 ドイ ツ で は 、 規 制 を手 段 とす る行 政 か ら、 学 習 と進 化 に 開 か れ た行 政 へ と大 き な変 革 が 図 られ て い る。 そ こで 、 政 府 が新 た な義 務 を負 うこ とは認 め られ る よ うに な っ た。 す な わ ち 、 法案 提 出 の 際 に、 複 数 の選 択 肢 の うち そ の案 が採 用 され た理 由 を詳 細 に記 載 す る義 務 、 そ して 、 当該 法 案 が採 択 され た後 に 立法 事 実 の変 化 を観 察 し続 け 、法 律 を維 持 ・修 正 ・廃 止 い ず れ とす るか を適 時 に審 査 す る義 務 な どが認 め られ る よ うに な っ た の で あ る33。ドイ ツ に お い て この よ うな 「実 験 法 律 」 の 法 理 が定 着 した とす れ ば 、 そ れ が受 け入 れ られ た 条 件 を 解 明 した うえ で 、日本 で 同法 理 を採 用 す るべ きか 、採 用 す るべ き で あ る場 合 に 、 日本 の 条 件 に合 わせ て そ れ を修 正 す る必 要 が あ るか ど うか な ど を検 討 す る こ と 29木 下 理 英 、角和 昌浩 「シナ リオ ・プ ラニ ン グ:不 確 実性 へ の対 応 」城 山英 明他編 『日本 の未 来 社 会:エ ネ ル ギ ー ・環 境 と技 術 ・政 策 』(2009年)30,33-34頁(社 会 の基 本 構 造 が 変 化 して い る と き に は 、過 去 の 延 長 線 上 に未 来 が あ る とい う仮 定 に 基 づ く予 測 は 有 用 で は な い の で 、複 数 の 可 能 性 を 考 察 す る こ と に よ っ て 未 来 へ の 意 思 決 定 を 支 援 す る 「シ ナ リオ ・ プ ラ ニ ン グ 」 が有 用 に な る と指 摘 す る)。 同 書x頁 も参 照 。 同 書 に 所 収 され て い る城 山英 明 「公 共 政 策 プ ロセ ス の 再 構 築 」 は 、 ス テ ー ク ホ ル ダ ー との 非 公 式 な コ ミュ ニ ケ ー シ ョン に よ っ て 情 報 と問題 意 識 を 収 集 し、 ま た 、 方 向 性 を示 唆 し、 誘 導 す る従 来 の 「ビジ ョ ン行 政 」 が 、 透 明 性 の 要 求 な ど を 受 け て 維 持 しに く く な っ て い る と して 、 ス テ ー ク ホ ル ダ ー 分 析 と シ ナ リオ 分 析 が公 共 政 策 プ ロ セ ス の マ ネ ジ メ ン トを 再 構 築 す る道 具 に な る と指 摘 す る。 同 書214,217-218頁 参 照 。 30規 制 と給 付 とい う直 接 的 活 動 に 加 え て 、誘 導 と媒 介 とい う 「市場 を経 由 させ る」 国家 の 活 動 が 増 加 しつ つ あ る とい う指 摘 と して 、原 田大 樹 「人 口減 少 時 代 に お け る政 策 実 現 手 法 の 展 開 」 『レ フ ァ レ ンス 』782号(2016年)3,14-15頁 参 照 。 31大 橋 洋 一 「法 政 策 学 に つ い て 」 『新 世 代 法 政 策 学 研 究 』7号(2010年)1 ,7頁 参 照 。 32同 論 文13頁 参 照 。 33大 橋 前 掲 書(注24)19 ,294-296頁 参 照 。
が有 用 とな るの で あ る。 この よ うな立 法 手続 に関 す る提 言 に加 え て 、 実体 規 定 も 「挑 戦 」 を許 容 す る 内容 にす るべ き で あ る とい う提 言 が あ る34。法 は二 面 性 を もつ 。一 方 で 、それ は 、 社 会 の イ ン フ ラス トラ クチ ャ ー と して 、 技 術 の進 化 と と もに 、未 来 を予 測 す る 際 に 考 慮 され るべ き要 因 で あ る。 他 方 で 、 法 令 の 改廃 や 判 例 の 変 更 は、 未 来 を 操 作 す る手 段 で あ り、 技 術 の進 化 を促 進 した り抑 制 した りす る こ とが で き る。 た しか に 、法 に よ って 技術 の進 化 を制御 しよ う とす る試 み が な い わ けで はな い35。 しか し、 各 国単 位 で 技 術 の進 化 を抑 制 す る こ とは 不 可 能 で あ る。 あ る国 が あ る 技 術 の 開 発 を抑 制 して も、 他 国 が そ れ を奨 励 す れ ば 、 当該 技 術 は 開 発 され る。 そ うす る と、前者 に対 す る後 者 の 国 力 の優 位 が確 立 され る こ とにな る36。技 術 の 開発 につ い て は 、普 遍 的 に拘 束 力 を も ち、履 行 が確 保 され る規 則 を確 立す るか 、 それ が で き な い か ぎ り、 他 国 に先 駆 けて そ れ を遂 行 す る か とい う二 者 択 一 しか な い の で あ る。 課 題 とな る の は 、 遅 か れ 早 かれ 開発 され る技 術 が社 会 の福 利 に 反 して利 用 され な い よ うに 、 「他 人 と仲 よ くや って 行 くこ と、他 人 と意 思 を通 じ 合 い 、 そ の英 知 と創 造 力 を人 類 の 直 面 す る 問題 に協 力 に適 用 す る こ との で き る よ うに 、人 類 を組 織 す る こ とに あ る」37と考 え られ る。核 兵 器 の例 の よ うに 、法 は 、技 術 の進 化 を抑 制 す る こ とは で き ない が 、 当該 技 術 の利 用 を抑 制 す る こ と は で き る か も しれ な い 。 人 類 の未 来 は 、 法 学 を含 む 社 会 科 学 に依 存 して い る と い え るか も しれ な い。 現 代 で は、 国家 が 目標 を特 定 し、 そ れ を追 求 す る とい う産 業政 策 は有 効 で は な く、 「少 しで も状 況 が改 善 して い る よ うな環 境 整 備 以 外 に[国 家 が1で き る こ と が な い こ とは 自明」 で あ る とい われ る38。 日本 法 は 、憲 法 以 外 の ほ とん どの分 野 で 大 陸 法 を継 受 して お り、 許 容 され る行 為 を規 定 し、 規 定 され て い ない 行 為 は 違 法 で あ る と推 定す る。 そ の よ うな 法 文 化 の な か で 、 ア メ リカ 的 な コ ン プ ライ ア ンス が 強 調 され る よ うに な り、 日本 企 業 は 、 明確 に許 容 され て い ない こ とへ 34そ も そ も、 法 律 の な か に 実 験 的 な も の と そ うで な い も の が 存 在 す る と い う よ り も 、 「立 法 は 人 間 の 運 命 を 用 い た 実 験 で あ る 」 こ と か ら 、 「実 験 と し て の 法 律 」 と い う理 解 を 提 唱 す る 立 場 も 存 在 す る 。 同 書281,287-288頁 参 照 。 35例 え ば 、AI(人 工 知 能)の 開 発 を 制 御 す る た め 、2017年7.月 に 総 務 省AIネ ッ トワ ー ク 社 会 推 進 会 議 は 「国 際 的 な 議 論 の た め のAI開 発 ガ イ ドラ イ ン 案 」 を 公 表 し て い る 。 同 案 は 2018年3.月 のG7雇 用 ・イ ノ ベ ー シ ョ ン 大 臣 会 合 議 長 サ マ リ ー 付 属 書Bに お い て 言 及 さ れ て い る 。 同 付 属 書 は 、availableat https:〃www.soumu.go.jp/menu _news/s-news/01tsushinO6_02000117.html.し か し 、 そ の よ う な(拘 束 力 を も た な い)ガ イ ドラ イ ン す ら ま だ 採 択 さ れ て お らず 、 ま し て 法 的 拘 東 力 を も つ 規 則 は 締 結 さ れ て い な い 。 36「 付 録2:汎 用 技 術 の 開 発 の 規 制 に つ い て 」(後 述43-48頁)参 照 。
37Brownetal .,suρranote2,p.153[邦 訳198頁].Seealsoid.p.154[邦 訳199-200頁]. 38坂 村 健 「360年 後 の 世 界 」 あ ら た に す 編 『2030年 の 日本 へ:あ ら た に す 「新 聞 案 内 人 」 の 提 言 』(2012年)96,98頁 参 照 。
の挑 戦 に それ ま で以 上 に消 極 的 とな り、イ ノベ ー シ ョンが 生 まれ に く くな っ た。 「今 の 日本 は昔 に 比 べ 、 ガ バ ナ ンス や コ ン プ ライ ア ン ス ば か り気 に して 、失 敗 を恐 れ る よ うに な っ て しま っ た」39ので あ る。これ に 対 して 、英 米 法 の 国 々 で は 、 「ベ ス トエ フ ォ ー ト」 の 哲 学 に基 づ い て 、 制 定 法 で 禁 止 され て い る こ と以 外 は や っ て み て 、問題 が 生 じた と きに裁 判 で それ を解 決 して い く もの とされ て い る。 英 米 法 は 挑 戦 促 進 的 な の で あ る。 イ ノベ ー シ ョン を生 み や す くす るた め に は 、 日本 は英 米 法 の 国 々 に な ら う必 要 が あ る とい われ る40。 本 稿 が 追 究 し よ う とす る 「未 来 法 学 」 は 、伝 統 的 な 法 学 の方 法 に基 礎 を置 く とい う意 味 で 「未 来 を構 築 す る法 学(jurisprudenceforfuture)」 で あ る。未 来 に 向 けて 必 要 な政 策 を法 体 系 の な か に位 置 づ け 、最 適 な法 制 度 ・法 解 釈 を案 出 す るた め に 、伝 統 的 な 法 学 の蓄 積 の うえ に 「創 造 性 と想 像 力 」 を駆使 し よ うと す る もの で あ る41。この ア プ ロー チ は、法 学 の な か で も、行 政 法 学 を母 体 と して 提 唱 され た 「政 策 法 学 」の 蓄積 の うえ に、それ を発 展 させ る もの で あ る42。ま た 、 「未 来 法 学 」 は 、経 済 学 や 社 会 学 の応 用 に大 き く依 拠 す る 「未 来 学 」 の専 門 的 な方 法 に よ る 「法 に 関す る未 来 学(futurologyoflaw)」 で も あ り、 「未 来 学 」 の 一 翼 を担 お う とす る もの で も あ る。 これ ら2つ の性 質 は 、「未 来 ・法 学 」 と 「法 ・ 未 来 学 」 と表 記 す る こ とが で き る、 これ らの学 問 的 営 み は不 可 分 な も の と して 相 補 的 に 「未 来 法 に 関す る学(studyoffuturelaw)」 を構 成 す る とい うこ と も で き る。 1.「 法 ・未 来 学 」:未 来 学 の 半 世 紀 39喜 連 川 優 「情 報 爆 発 が 人 工 知 能 を 新 次 元 に:も のづ く りはデ ー タ 活 用 で 変 わ る」 『日経 コ ン ピ ュ ー タ 』870号(2014年)36,39頁 。 40坂 村 前 掲 論 文(注38)100-102頁 参 照 。 法典 を前提 と して、 そ の解釈 を任務 として きた 大 陸 法 的 法 学 の影 響 の 下 に あ る 日本 の 私 法 学 を 念 頭 に 、 生 命 倫 理 に 係 わ る 法 な ど に お い て は 、「後 追 い 的 で あ る け れ ど も 、しか し、そ れ が 先 導 的 な 意 味 を もつ 、機 能 を 果 た す とい う、 学 問 的 ケ ー ス ・ロー と い う もの を 目指 す べ き で は な い の か 」 と い う指 摘 が あ る。 石 井 紫 郎 「ク リテ ィ ッ ク と して の歴 史 的 素 養 」 村 上 淳 一 編 『法 律 家 の歴 史 的 素 養 』(2003年)134, 140-142頁 参 照 。 41E・ シ ュ ミ ッ ト=ア ス マ ン 、海 老原 明夫訳 「ドイ ツ行 政法 の最 近 の発 展(下)」 『自治研 究』 72巻10号21,24頁 参 照 。 同論 文28頁 も参 照(「 行 政 法 総 論 は 、 特 定 の 新 しい 課 題 に 適 合 的 な 手 段 を 見 つ け だ さ な けれ ば な ら な い と き に 、 準 拠 枠 を提 供 す る」 と い う 「発 明機 能 」 を 果 た す と指 摘 す る)。 42「 政 策 法 学 」 の提 唱 と 同 じ志 向 が 、医学 にお い て も 「処方 分析 」 として提 唱 され てい る。 日本 人 は 分 析 を お こな え ば そ れ で 完 了 と しが ち で あ る が 、 「ア メ リカ 人 は 『どれ だ け の効 果 (利益)を ど う出す か 』 を重 要 視 しま す 」 と して 、 分 析 を 臨床 に架 橋 す る 「処 方 分 析 」 の 導 入 が 提 唱 され る の で あ る。 西 村 周 三 他 「最 先 端 テ ク ノ ロ ジ ー が 導 くヘ ル ス ケ ア 革 命:AI は 医 療 課 題 を解 決 す る救 世 主 と な れ る の か 」西 村 周 三 監 修 『医 療 白書2017-2018年 版 』(2017 年)12,24頁 参 照(山 田昭 雄 発 言)。
(1)1970年 前 後 の 未 来 学 ブ ー ム 「未 来 学(Futurology)」 と い う用 語 は 、1943年 に フ レ ッ チ ハ イ ム に よ っ て 鋳 造 さ れ た と い わ れ る43。 当 時 は 、 第2次 世 界 大 戦 の た だ な か の 「危 機 の 時 代 」 で あ り 、 現 在 が 現 在 と し て 実 感 さ れ に く く 、 不 可 逆 的 に 失 わ れ る 過 去 と 革 命 的 に 新 し い 未 来 の 間 の 転 換 期 と し て 実 感 さ れ る と い う認 識 が 存 在 し た44。 そ の よ う な 時 代 を 生 き 抜 く た め に 、 未 来 を 展 望 し た い と い う 欲 求 が 生 ま れ た も の と 考 え ら れ る 。 そ し て 、1960年 代 に 入 っ て 、例 え ば 、ArthurC.Clarke,Profi7esofthθ Future・'.4nEnquiryintotheLimitsoftheRossib7e(1962)が 刊 行 さ れ 、 同 書 の 邦 訳 が1966年 に 刊 行 さ れ る な ど 、 未 来 学 へ の 関 心 が 高 ま っ た45。 こ の 時 代 も 、 1962年 の 「キ ュ ー バ 危 機 」 の 経 験 絶 望 一 一 と 、 デ タ ン ト(緊 張 緩 和) 希 望 一 一 と に 揺 れ た 時 代 で あ っ た 。 同 書 は 、 「過 去 は 、 ヒ ン ト こ そ 提 供 す る が 、 確 た る ガ イ ダ ン ス は 何1つ 与 え て は く れ な い 」46と し て 、未 来 を 予 言 す る こ と は 不 可 能 で あ る と 認 め つ つ 、 未 来 と い う 「辺 境 地 域 を 測 量 し 、 そ の 拡 が り の 程 度 に つ い て な に が し か の 概 念 を 掴[む1」 こ と は 可 能 で あ る と す る47。1960年 代 後 半 か ら1970年 代 に か け て も 、 未 来 学 に 関 連 す る 多 く の 業 績 が 刊 行 さ れ て い る48。 こ の 時 期 に は 、 画 期 的 な 技 術 の 進 化 が み ら れ た こ と に も 注 意 す る 必 要 が あ る 。 例 え ば 、1970年 代 半 ば に は 、 感 染 症 領 域 の 診 断 シ ス テ ム と し てMYCINと い う プ ロ グ ラ ム が 開 発 さ れ た り 、 心 電 図 検 査 に 基 づ く 自 動 診 断 が 実 用 化 さ れ た り し て い る49。 未 来 学 が 日本 に お い て 最 も 注 目 を 集 め た の は 、 お そ ら く 、1970年 の 大 阪 万 国 43SeeAmyWebb ,ThθSigna7sArθTa7king∵J7VhyToday'sFringe.lsTon?orrow's Mainstream(2016),pp.9-10[エ イ ミ ー ・ウ ェ ブ 、 土 方 奈 美 訳 『シ グ ナ ル:未 来 学 者 が 教 え る 予 測 の 技 術 』(2017年)11-12頁]. 44SeeOssipK .Flechtheim,HistoryandFuturology(1966),p.63. 45な お 、 ク ラ ー ク は1982年 に 、 「1人 あ た り4ト ン も の 爆 薬 を 蓄 積 し て い る 種 は 、 そ の 他 の 点 を 問 題 とす る ま で も な く 、 す で に 生 物 学 的 に 存 続 す る 適 格 性 を も た な い か も し れ な い 」 と 述 べ て い る 。CitedinSimonWelfare,Futurology(1989),p.61.似 た 指 摘 は 少 な く な い 。 「自然 界 の 未 来 図 は 暗 い 。 絶 滅 危 惧 種 が あ ま り に も 多 い の で 、 こ の 時 代 の 化 石 を 遠 い 未 来 の 地 質 学 者 が み た ら 、 爬 虫 類 時 代 を 終 わ らせ た 大 量 絶 滅 の 化 石 資 料 と 同 列 に 扱 う か も し れ な い 」 と い う指 摘 が そ の 例 で あ る 。 ジ ョナ サ ン ・シ ル バ ー タ ウ ン 編 、 太 田 英 利 監 訳 、 池 田 比 佐 子 訳 『生 物 多 様 性 と 地 球 の 未 来:6度 目 の 大 量 絶 滅 へ?』(2018年)5頁 参 照 。 46Clarke ,suρranote17,p.89[邦 訳100頁]. 47Seeid .p.5[邦 訳3頁].な お 、 ク ラ ー ク は 、 一 般 的 に 未 来 学 は 短 期 的 に は 過 度 に 楽 観 的 で 、 長 期 的 に は 過 度 に 悲 観 的 で あ る が 、 未 来 学 は 自 己 実 現 預 言(self」fulfillingprophecy) と な る 可 能 性 が あ る こ と か ら 、 悲 観 的 で あ る よ り 楽 観 的 で あ る べ き で あ る と し て い た 。See Welfare,躍 ρ盟note45,p.62.未 来 に 楽 観 的 で あ る べ き で あ る と す る 主 張 と し て 、 竹 内 均 監 修 『近 未 来 と 上 手 に っ き あ う法:ハ イ テ ク 時 代 な ん て 怖 く な い 』(1984年)17頁 参 照 。 48こ の 時 期 に お け る 未 来 学 に つ い て 、 例 え ば 、seeArneJensen,7}affie,0ρ θrational Rθsθarch,Futurolog7(1980),chap.12. 49沖 山 翔 「人 工 知 能 と 医 師 は 共 存 で き る か:AIの 進 展 と 医 療 現 場 へ の 影 響 」 西 村 周 三 監 修 『医 療 白 書2017-2018年 版 』(2017年)40,44-45頁 参 照 。
博 覧 会 の前 後 で あ っ た50。例 え ば、1967年 の座 談会 に お い て 、 「万 国博 を考 え る 会 」会 員 で あ っ た梅 樟 忠 夫 が 、東 南 ア ジ ア諸 国 な どにお い て は 「未 来 論 は ま だ 出 て こな い です 。 そ うい うと こ ろで は未 来 は あ るの だ か らね。 か な りは っ き り した未 来 像 が描 か れ て い る。 過 去 の 日本 がそ うや った 」 と発 言 し、 同 じ く同会 会 員 で あ っ た加 藤 秀 俊 が 「日本 に は そ うい う未 来 が な い か ら、 一 生 懸 命 に未 来 をっ く らな けれ ば な らな い 」 と受 け て い る51。翌年 、同会 を発 展 させ て 日本 未 来 学 会 が創 設 され た。 同 会 の事 務 局 は(公 益 財 団 法 人)未 来 工 学研 究 所 が 担 っ て き た。 この年 に は、経 済発 展 協 会 か ら 『20年 後 の 産 業 と人 間:産 業未 来 学序 説 』 (1968年)も 刊 行 され て い る。 な お 、 この年 は 、後 に述 べ る とお り、成 践 大学 の政 治 経 済 学 部 が 法 学 部(法 律 学 科 お よび 政 治 学科)と 経 済 学 部 とに発 展 的 に 分 割 され た年 で もあ る(こ の うち、経 済 学 部 は2020年 に新 た な経 済 学部 と経 営 学 部 に分 割 され る予 定 で あ る)。 そ して 、 万 国博 の 開催 され た1970年 に 、 日本 は 高齢 化 社 会 に突 入 した52。 法 学 関 連 で は 、 国 際未 来 学 会 に参 加 した 経 験 を受 けて 著 され た 、 森 田康 『法 の未 来 学 』(1971年)が 刊 行 され て い る53。同 書 は 、 「地 上 に ユ ー トピア[を1実 現 [す る1未 来 を公 約 す る コ ン ピ ュー ター 文 化(computopia)が 、 人 工 冬 眠 を完 成 す る 日は あ る い は遠 くない 」 とす るな らば 、長 期 ・短 期 の冬 眠 人 が 多 数 現 れ 、 家 族 関係 法 な どは 、 そ の 安 定 性 ・実 用 性 ・正 当性 な どが根 本 か ら動 揺 を受 け る こ とに な る と指 摘 して い る54。また 、未 来 学 は 国 内 法 ・国 際 法 に条 件 づ け られ る が 、未 来 学 も 国 内 法 学 と国 際法 学 にお い て勘 案 され るべ き もの で あ る と して 、 と りわ け、 世 界 法 へ と変 質 しつ つ あ る国 際 法 は 、未 来 学 と 「盾 の 両 面 」 と して 構 成 され るべ きで あ る と提 唱 して い る55。続 い て 、 山本 草 二 他 『未 来 社 会 と法 』 (1976年)が 刊 行 され て い る。 同書 は 、 「宇 宙 法 」、 「国 土 計 画 」、 「情 報 産 業 」、 そ して 「原 了 力 法 」 と題 した 論 文 を所 収 して い る。同 書 を編 集 した伊 藤 正 己 は 、 社 会 的 変 動 期 で あ る現 代 にお い て 、新 奇 性 の 際 立 つ これ らの分 野 は 「近 代 法 の 原 理 や 思 考 を こ えた現 代 法 を要 請 す る」 と して 、 「公 私 法 に わ た っ て 多 くの領 域 に か か わ りつ つ 考 察 しな けれ ば な らな い … 専 門 的 に分 極 化 した 立 場 で は な く、 50佐 藤 前 掲 緒 言(注27)2頁 参 照 。 「小 塩 篤 史 先 生 イ ン タ ビ ュ ー 『デ ー タ サ イ エ ン ス と未 来 学:今 ま で と こ れ か ら に っ い て 』」 『人 工 知 能 』194号(2019年)264,265頁 も 参 照(小 塩 教 授 は 「未 来 学 を 専 門 と さ れ て 」 い る と紹 介 す る)。 51佐 藤 同 緒 言1頁 参 照。 52河 合 雅 司 『未 来 の 年 表:人 口減 少 日 本 で こ れ か ら 起 き る こ と 』(2017年)25頁 参 照(1994 年 に 日 本 は 高 齢 社 会 を 迎 え た こ と も 紹 介 す る)。 53こ の 年、 「第8回 世 界 未 来 学 会 議 」 を 舞 台 と す る ス タ ニ ス ワ フ ・レ ム 、 深 見 弾 、 大 野 典 宏 訳 『泰 平 ヨ ン の 未 来 学 会 議 』(改 訳 版 、2015年)の 原 著 が 刊 行 さ れ て い る 。映 画"TheCongress" (2013年)[邦 題 「コ ン グ レ ス 未 来 学 会 議 」]は 本 書 を 原 作 と し て い る 。 54森 田 康 『法 の 未 来 学 』(1971年)20頁 参 照。 55同 書32-33 ,34,333-334,356-359頁 参 照 。
総 合 的 見 地 か ら の 究 明 を 必 要 と す る 」 と 指 摘 し て い る56。 1970年 代 か ら1990年 代 に か け て 、ア ル ビ ン ・ ト フ ラ ー に よ る 三 部 作 が 刊 行 ・ 邦 訳 さ れ て 、 人 口 に 膳 衆 さ れ た 。 す な わ ち 、AlvinToffler,FuturθShoek(1970) [『未 来 の 衝 撃:激 変 す る 社 会 に ど う対 応 す る か 』(徳 山 二 郎 訳 、1970年)]、Alvin Toffler,ThθThirdWave(1981)[『 第 三 の 波 』(1980年)]、AlvinToffler, Pomzershift!1㎞o幅 θ4如,Wealth,alldViolelleeattheEdgeOfthe21st O肋6昭 γ(1990)[『 パ ワ ー シ フ ト:21世 紀 へ と変 容 す る 知 識 と 富 と暴 力 』(徳 山 二 郎 訳 、1990年)1で あ る 。 こ れ ら の う ち 例 え ば 『パ ワ ー シ フ ト』 は 、 「日本 人 は 心 配 し て い る 。 … 個 々 の 日 本 人 は 経 済 一 般 に つ い て だ け で な く 、 自 ら の 将 来 に つ い て も 心 配 し て い る 」57こ と や 、 「日 本 は 未 来 意 識 に 漬 か っ て い る 」58こ と な ど を 指 摘 し て い た 。 ま た 、未 来 学 の 教 科 書 と し てSimonWelfare,Futurology(1989)が 刊 行 さ れ て い る 。 未 来 に 関 す る 教 育 は 、 現 在 と未 来 の 難 問 か ら 逃 避 す る こ と な く 、 そ れ ら を 直 視 さ せ る た め に 有 用 で あ る 。 そ の よ う な 教 育 は 、 教 科 書 に 沿 っ て 定 型 的 に お こ な う だ け で は 十 分 な も の に は な り え ず 、 「真 に 創 造 的 な 教 師 」 に よ っ て 初 め て 可 能 に な る と も い わ れ る59。 し か し 、 「真 に 創 造 的 な 教 師 」 で あ っ て も 、 練 り あ げ ら れ た 教 育 を 無 か ら創 造 す る こ と は 困 難 で あ る 。 そ れ ゆ え 、 こ の 教 科 書 の よ う に 、 未 来 に 関 す る 多 様 な 「問 い 」 を 準 備 し て お く こ と は 有 用 で あ る と 考 え ら れ る 。 例 え ば 、 こ の 教 科 書 は 、JohnLangdon-Davis,.4ShortHistoryofthθ Future(1936),p.197が 「1960年 ま で に 労 働 は1日3時 間 に か ぎ られ る よ う に な っ て い る 」と し て い た こ と な ど 、未 来 の 予 測 に 失 敗 し た 例 を7つ 挙 げ て い る60。 た し か に 、 ラ ン グ ド ン=デ イ ビ ス の こ の 予 測 は 当 た ら な か っ た 。 し か し 、 か れ は 、 労 働 か ら 解 放 さ れ た 人 間 が 余 暇 を 「平 和 的 な 哲 学 的 推 論 や 自 然 美 に 関 す る 熟 考 」 に 費 や す こ と は あ りそ う に な い と も し て い た61。 こ の 点 で は 、 そ の 予 測 は 正 し か っ た と 考 え ら れ る 。 多 く の 論 者 は 、 「低 レベ ル の 労 力 か ら解 放 さ れ る こ と で 、よ り 高 度 な 活 動 に 人 間 の 能 力 を 振 り 向 け ら れ る よ う に な る 」62と考 え て き た 。 56伊 藤 正 己 「は し が き 」 山 本 草 二 他 『未 来 社 会 と 法 』(1976年)1 ,2-4頁 参 照 。 57AlvinToffler ,1Povvθrshifr:Kinovvledge,Wealth,andVio7eneeattheEdgθofthθ21st Century(1990),p.119[ア ル ビ ン ・ ト フ ラ ー 、 徳 山 二 郎 訳 『パ ワ ー シ フ ト:21世 紀 へ と 変 容 す る 知 識 と 富 と 暴 力(上)』(1990年)185頁].
58AlvinToffler ,Powθrshift!Kinow1θdge,〃 盈11勉,andVio7θneθatthθEdgθofthθ21st
Century(1990),p.444[ア ル ビ ン ・ ト フ ラ ー 、 徳 山 二 郎 訳 『パ ワ ー シ フ ト:21世 紀 へ と 変 容 す る 知 識 と 富 と 暴 力(下)』(1990年)298頁](ア メ リ カ は 「現 在 」 に 焦 点 を 当 て 、 欧 州 は い ま だ に 過 去 志 向 が 強 い と 指 摘 す る). 59SeeFlechtheim ,supranote44,pp.66-67. 6〔〕SeeWelfare ,suρranote45,p.32. 61SeeJohnLangdon-Davis ,.4ShortHistoryofthθFuturθ(1936),pp.207-208. 62た だ し、 例 え ば 、 移 動 技 術 へ の 依 存 は 、 脚 力 の 減 退 や 、 生 活 習 慣 病 の 発 症 の 誘 発 と い う 副 作 用 も 発 生 さ せ う る 。 暦 本 純 一 「人 間 拡 張 学 の 展 望 」 暦 本 純 一 監 修 『オ ー グ メ ン テ ッ ド ・
しか し、 例 え ば 、 ス ポ ー ツ基 本 法 の 下 で 振 興 され るべ き もの と され る ス ポ ー ツ 観 戦 が 「よ り高 度 な 活 動 」 で あ るか ど うか は1つ の問題 で あ る。ハ クス リー は 、 『素 晴 ら しい新 世 界 』 にお い て ス ポ ー ツ を愛 好 す る よ うに条 件 づ け られ る は 、 人 間 の5つ の 階級 の うち下 か ら2番 目の 階級 な ど「大 衆 」の 乳児 で あ る と した63。 ケ イ ンズ も 、人 間 ら しい 「真 の 問題 」 は 「人 生 の 問題 ・人 間 関係 の 問 題 ・創 作 と行 動 と宗教 の 問題 」64で あ り、 「熱 烈 な観 照 と交 わ り とにふ さわ しい主 題 は 、 最 愛 の 人 、 美 、 お よび 真 理 で あ り、 人 生 にお け る主 た る 目的 は 、 愛 で あ り、美 的体 験 の創 造 と享 受 で あ り、 そ して知 識 の 追 求 で あ っ た」65と す る。 もっ と も、 かれ が 自認 す る よ うに、 か れ は 「最 後 のユ ー トピア 論 者 、 あ るい は時 お り世 界 改 良論 者(meliorist)と 呼 ばれ る もの に属 して い た 」66。 かれ は 、 「体 制 変 革 の 期 待 に お い て 素朴 で あ り、少 な く ともあ ま りに も賢 人支 配 者 の傾 向 が あ った 」67 と評 され て い るの で あ り68、一 般 に は そ の よ うな思 想 は古 臭 い もの と考 え られ る か も しれ な い。 1970年 前 後 の ブ ー ム の 後 の 日本 にお い て も、 「未 来 学 」 とい う言 葉 を冠 す る 著 作 は散 発 的 に刊 行 され て き た69。一一例 を挙 げれ ば、塚 原 正彦 『み ん な の ミュ ー ヒ ュ ー マ ン:AIと 人 体 科 学 の 融 合 に よ る 人 機 一 体 、 究 極 のIFが 創 る 未 来 』(2018年)455, 460-461頁 参 照 。 63SeeThθColleetθdMZorksofAldousUuxle7Vol .22!BravelVewl7Vorld:.4Nove1(1958), p.17[オ ル ダ ス ・ハ ク ス リ ー 、 大 森 望 訳 『す ば ら し い 新 世 界 』(2017年)34頁]. 64PrefacetoThθCol1θetθdWritillgsOfJohllMayllardKeynθs ,Vo7.■X・'Essaysill Persuasion(1972),atxvii,xviii[宮 崎 義 一 訳 「序 文 」『ケ イ ン ズ 全 集 第9巻:説 得 論 集 』(1981 年)xxiii,XXV頁]. 65MyEarlyBeliefs ,inThθCol1θetθdJ7VritillgsofJohnMayllardKe7nθs,Vo7.X.'Essays inBiography(1972),pp.433,436-438[大 野 忠 男 訳 「若 き 日 の 信 条 」 『ケ イ ン ズ 全 集 第10 巻:人 物 評 伝 』(1980年)565,570,572頁]. 661d .p.447[邦 訳583頁]. 67こ の 評 言 の 後 に 「し か し 、 よ りよ い 世 界 に か んす る こ の 見 解 は 、 か れ の 経 済 学 者 と して の 活 動 を 支 配 し た 」 と続 け ら れ る 。D.E.Moggridge,Keynes(3ded.1993),p.170[D・E・ モ グ リ ッ ジ 、 塩 野 谷 祐 一 訳 『ケ イ ン ズ 』(1979年)207頁]. 68ク ラ ー ク も 、 「思 考 機 械 」 が 日常 的 な 仕 事 を お こ な うよ うに な る と、人 間 は 「も っ と高 尚 な 思 考 」 に 集 中 で き る と い う。SeeClarke,suρranote17,p.203[邦 訳218頁].そ し て 、 真 に 価 値 の あ る 行 為 は 「知 識 の 探 求 と 美 の 創 造 で あ る 」、 文 明 は 「そ の 知 的 達 成 」 と 「そ の 芸 術 作 品 」 に よ っ て 評 価 され る(id.p.83[邦 訳93頁])、 真 に 価 値 あ る も の は 、 「美 と 知 慧 、 笑 い と 愛 」 な の で 、 「淫 逸 き わ ま る 快 楽 主 義 」 に 陥 っ た 「完 全 に 飽 満 し た 倦 怠 」 に 代 え て 、 「働 く 必 要 が た と え な い と し て も 、 生 涯 を 幸 福 に 過 ご せ る 」 よ うに 人 類 を 文 明 化 す る こ と が 「未 来 に 残 さ れ た 最 大 の 課 題 」 で あ る(id.p.150[邦 訳160-161頁])と す る の で あ る 。 な お 、 佐 藤 が2012年 に ハ ー バ ー ド大 学 で 参 加 し た 研 究 会 に お い て 、 若 い 非 日本 人 の 間 で 、 「日本 文 化 を ア ニ メ で 代 表 させ る べ き で は な く 、 源 氏 物 語 な ど で 代 表 さ せ る べ き で あ る 」 とい う趣 旨の 発 言 と、 「高 級 文 化(上 位 文 化)と 大 衆 文 化 の 区 別 に 意 味 は な く、 日本 文 化 を ア ニ メ で 代 表 させ る こ とに 問題 は な い 」 とす る趣 旨の 発 言 の応 酬 が あ っ た 。 69例 え ば 、 『医療未 来 学:バ イ オ が変 え る医療 新 時代 』(1993年)お よ び 毎 日新 聞 社 人 口 問題 調 査 会 編 『人 口減 少 社 会 の 未 来 学 』(2005年)が あ る。
ジ ア ム:人 が集 ま る博 物 館 ・図書 館 を ま ち な か にた く さんつ く ろ う:博 物 館 ・ 図書 館 未 来 学 』(2016年)が あ る。 同書 は、 博 物館 法(1951年)の 下 の博 物 館 や 図書 館 法(1950年)の 下 の 図 書館 は、 そ の役 割 が 限 定 的 な もの とされ 、 それ らに期 待 す る こ との で き る はず の役 割 を十 分 果 た して い な い と して 、 そ れ ら を 古 典 古 代 の 「ムセ イ オ ン」の伝 統 を受 け継 ぐ 「ミュー ジ ア ム」、す なわ ち、 「人 、 モ ノ、 情 報 を収 集 し、 そ れ らを縁 結 び しな が ら、新 しい知 を想 像 し続 け 、人 々 の 限 りな い 成 長 を促 す 」機 関へ と位 置 づ け直 し、 そ れ を活 用 した 「知 と学 び 」 を通 して 、 新 しい社 会 をデ ザ イ ンす る 「ミュ ー ジ ア ム未 来 学 」 の樹 立 を提 唱 し て い る70。 (2)50年 後 の未 来 学 再 興 近 年 、 「未 来 」 が ブ ー ムで あ る。 国 は 、 内 閣 官房 の 日本 経 済 再生 総 合 事 務 局 の 下 に未 来 投 資 会 議 を設 置 し、2018年6月15日 に 「未 来 投 資 戦 略2018:『Society 5.0』 『デ ー タ駆 動 型 社 会 』 へ の変 革 」 を公 表 した り71、総 務 省 の情 報 通 信 審 議 会 の 下 に 「10T新 時 代 の未 来 づ く り検 討 委 員 会 」 を設 置 し、2018年4月 に 「未 来 をつ か むTECH戦 略(中 間 と りま とめ)」72を 公 表 した りして い る。 ま た 、大学 の名 前 と して 、公 立 は こだ て 未 来 大 学 や 東 京 未 来 大 学 な どが 存 在 す る。さ らに 、 大 学 の 部 局 の名 前 と して 、 大 阪大 学 の 未 来 戦 略機構 や 千 葉 大 学 の 国 際 未 来 教 育 基 幹(運 営組 織)73が 存 在 す る ほ か 、東 京 電 機 大 学 に未 来 科 学 部 、 田園調 布 学 園 大 学 に子 ど も未 来 学 部 が設 置 され て い る74。大 学 に お け る実 践 的教 育 プ ロ グ ラム と して は 、 「地(知)の 拠 点 大学 に よ る地方 創 世 推 進 事 業(COC+)」 の枠 組 み の 下 で 、和 歌 山大 学 の 「わ かや ま未 来 学 副 専攻 」 も開設 され て い る75。高等 学校 と 7〔〕塚 原 前 掲 書(注9)40-41 ,45-49頁 参 照(「 ミ ュ ー ジ ア ム 」 を 「人 と未 来 を 結 ぶ 創 造 装 置 で あ り 、 未 来 を デ ザ イ ン し 、 発 明 す る 中 核 施 設 」 と位 置 づ け る)。 同 書63頁 も 参 照(「 学 び が 核 に な っ て す べ て が 未 来 志 向 で 動 い て い く の が 『知 の 成 長 社 会 』 で あ る と す る 」)。 塚 原 正 彦 、 デ ヴ ィ ッ ド ・ア ン ダ ー ソ ン 、 土 井 利 彦 訳 『ミ ュ ー ジ ア ム 国 富 論 』(2000年)に 寄 せ た 「序 に か え て:ミ ュ ー ジ ア ム ・ ビ ッ グ バ ン:知 の 大 爆 発 が 始 ま っ た 」 に お い て 、 望 月 照 彦 は 、 市 民 を 「知 民 」 へ 、 地 域 を 「知 域 」 へ 変 え る 「ミ ュ ー ジ ア ム ・ビ ッ グ バ ン 」 に 日本 を 導 く も の と し て 、 同 書 を 位 置 づ け て い る(11-12頁)。 71狩 猟 社 会 、農 業 社 会 、 工 業 社 会 、 情 報 社 会 に 続 い て 、IoT(モ ノ の イ ン タ ー ネ ッ ト)や AIな ど の イ ノ ベ ー シ ョ ン を 特 徴 と す る 第4次 産 業 革 命 に よ っ て 成 立 さ せ る べ き も の が 「Society5 .0」 で あ る と さ れ て い る 。 政 府 は 、2016年1.月22日 の 閣 議 決 定 「第5期 科 学 技 術 基 本 計 画 」 以 降 、 「Society5.0」 の 実 現 を 目標 と し て 掲 げ て い る 。 72こ の 中 間 と り ま と め は 、 人 口減 ・高 齢 化 な ど を 「静 か な る有 事 」 と 呼 ぶ(1頁)。 「静 か な る 有 事 」 に つ い て 、 河 合 前 掲 書(注52)11,145,192頁 参 照 。 河 合 雅 司 『未 来 の 年 表2: 人 口減 少 日 本 で あ な た に 起 き る こ と 』(2018年)14頁 も 参 照 。 73千 葉 大 学 の 倉 阪 秀 史 教 授 は 「未 来 カ ル テ 」 の 作 成 で 知 ら れ て い る 。 同 カ ル テ の サ イ トと し て 、seehttp:〃opossum.jpn.org/. 74梅 光 学 院 大 学 子 ど も 学 部 に は、 子 ど も未 来 学 科 が 存 在 す る 。 75冨 永 哲 雄 「地 域 志 向 教 育 の 教 育 効 果 と課 題 に 関 す る 一 考 察:わ か や ま 未 来 学 副 専 攻 を 事
して も、福 島県 立 ふ た ば未 来 学 園高 等 学 校 な どが76、 中学校 と して も、鳥 取 市 立 福 部 未 来 学 園 中 学校 な どが 存 在 す る。 小 学 校 に お け る 「プ ロ グ ラ ミン グ教 育 」 を推 進 す るた め に 、文 部 科 学 省 な どは2017年 に 「未 来 の学 び コ ン ソー シア ム」 を設 立 して い る77。2020年 度 か ら小 学 校 に お い て 、意 図す る一 連 の活 動 を 実践 す るた め に 、 どの よ うな動 き の組 合 せ が 必 要 か 、個 々 の動 き に 対応 す る記 号 を どの よ うに組 み 合 わせ るべ き か 、 そ して 、 そ の組 合 せ を どの よ うに改 善 す れ ば 意 図 した 活 動 に近 づ くか な どに 関 す る 「論 理 的 思 考 」 で あ る 「プ ロ グ ラ ミ ン グ 的思 考 」 を育 成 す る教 育 が 開始 され る予 定 で あ る78。 民 間機 関 と して も、例 えば 、 リクル ー トキ ャ リア に2013年 に設 立 され た就 職 み らい研 究 所 な どが 存 在 す る79。 ま た 、 「未 来 」 を表題 に含 む雑 誌 の特 集 や80、 論 文 な ど も少 な くな い。例 え ば 、星 野俊 也 「未 来 共 生 に よ る人 間 の 平 和論 」(2015 年)は 、 「よ りよい 明 日」 が実 現 す る保 証 は な い もの の 、 それ に 向 か い 、 「過 去 や 現 在 の 思 考 や 方 法 に止 ま らず 、創 造 的 ・革 新 的 な発 想 や 手 段 を通 じて 『イ ノ ベ ー シ ョン』 を もた らそ うとす る姿 勢 」 に よ る 「未 来 共 生 」 とい う理 念 を提 案 す る81。 それ は 、 「自 ら と他者 の尊 厳 に対 す る深 い理 解 と敬 意 に立 脚 し、 多様 で 異 な る文 化 的 背 景や 社 会 的 属 性 を有 す る人 び とが 互 い を高 め合 い 、 共 通 の未 来 に 向 け た斬 新 な共 生 モデ ル を導 き 出す 知 識 ・技 能 ・態度 ・行 動 力 」82を意 味す る 例 と し て 」『大 学 地 域 連 携 研 究:地 域 と 大 学 を 繋 ぐ コ ー デ ィ ネ ー タ ー ネ ッ ト ワ ー ク 構 築 事 業 』 5号(2018年)43頁 参 照 。 福 島 大 学 も 、 ふ く し ま 未 来 学(COC)推 進 室 事 務 局 を 設 置 し 、 『ふ く し ま 未 来 学:地 域 とつ な が る 。 と も に 学 ぶ 。 』(2018年)お よ び 『「ふ く し ま 未 来 学 」 の5年 間 の ま と め 』(2018年)を 刊 行 して い る 。 76高 校 生 向 け 教 材 と し て 、 栃 木 県 教 育 委 員 会 事 務 局 生 涯 学 習 課 編 『じぶ ん 未 来 学:と ち ぎ の 高 校 生 』(2016年)が 刊 行 さ れ て い る 。 同 書 は 「自 分 ・親 ・子 ど も ・家 族 ・地 域 ・社 会 」 と い う視 点 か ら 、 高 校 生 が 自 分 の 将 来 を 考 え る 学 習 で あ る と さ れ て い る が(4-5頁)、 技 術 の 進 化 を 受 け た 社 会 の 変 化 な ど は 強 調 し て い な い 。 77同 コ ン ソ ー シ ア ム の サ イ ト と し て 、seehttps:〃miraino-manabi.jp. 78総 務 省 「平 成30年 版 情 報 通 信 白 書:ICT白 書:人 口減 少 時 代 のICTに よ る 持 続 的 成 長 」 340頁 参 照 。 791965年 創 業 の 未 来 工 業 も 「日本 一 社 員 が し あ わ せ な 企 業 」 と し て 取 り あ げ ら れ る こ と の あ る 株 式 会 社 で あ る 。 ま た 、 未 来 予 報 株 式 会 社 と い う会 社 も 存 在 し た が 、VISIONGRAPH Inc.へ と 改 名 し て い る 。 80例 え ば、 「地 方 国 立 エ ッ ク ス 大 学 、2040年 の 未 来 予 想 図 」 『文 教 速 報 』8565号(2018 年)2頁;「 発 進!SDGsビ ジ ネ ス:2030年 ま で の 成 長 戦 略 」 『国 際 開 発 ジ ャ ー ナ ル 』739 号(2018年)12頁;「 『不 動 産 業 ビ ジ ョ ン2030』 策 定 」 『.月刊 不 動 産 流 通 』2019年8.月 号 76頁 参 照 。 81星 野 俊 也 「未 来 共 生 に よ る 人 間 の 平 和 論 」 神 余 隆 博 他 編 『安 全 保 障 論:平 和 で 公 正 な 国 際 社 会 の 構 築 に 向 け て 』(2015年)503,506,518頁 参 照 。 「未 来 共 生 学 」 は 大 阪 大 学 未 来 戦 略 機 構 第5部 門 、 「未 来 共 生 イ ノ ベ ー タ ー 博 士 課 程(RESPECT)プ ロ グ ラ ム 」 に お い て 創 案 さ れ た 概 念 で あ る 。 同 プ ロ グ ラ ム の サ イ ト と し て 、see http:〃www.respect.osaka-u.ac.jp. 82同 論 文507頁 。
と され る。 そ して、 「未 来 共 生 秩 序 」 と して 、 主権 国 家 の 間 で機 能 す る国 際社 会 を 「イ ン ター ・ヒュー マ ン な社 会 」 で あ る 「グ ロー バル な社 会 」(世 界社 会)へ と変 質 させ て い く こ と を構 想 す るの で あ る83。さ らに 、注 目され るシ リー ズ刊 行 と して 、三 菱総 合 研 究 所 の総 合 未 来 読 本 「フ ロネ シス 」84シ リー ズ 、ナ カ ニ シ ヤ 出版 の 「メデ ィア の未 来 」85シ リー ズ を挙 げ る こ とが で き る86。 この よ うに未 来 に注 目が集 ま る理 由 と して は 、3つ 考 え られ る。 第1に 、 技術 の進 化 の加 速 化 に よ る未 来 の 不確 実性 の増 大 で あ る。 例 えば 、 世 帯 普 及 率 が10%に 到 達す るま で の期 間 は 、電 話 が76年 で あ った が 、イ ンタ ー ネ ッ トは5年 で あ った87。 この よ うな速 度 は 、人 間 に とって の1年 が そ の 生涯 に とっ て7年 分 の意 味 を もつ とい われ る犬 の 時 間 、す な わ ち ドッ グイ ヤ ー の速 度 で あ る とい われ る88。さ らに 、ドッ グイ ヤ ー とい う概 念 で も十 分 で は な い と して 、 そ の2倍 の速 度 を意 味 す る 「ダ ブル ・ ドッグイ ヤ ー」89や 、 人 間 の18倍 の速 度 を意 味す る 「マ ウスイ ヤ ー 」goな どの概 念 も用 い られ る。実 際 に、AIの 進 化 は 、 デ ィー プ ラー ニ ン グ(深 層 学 習)を 用 い る こ と に よ っ て 、 ブ ロ ッ ク崩 しゲ ー ム で遊 ん で い た3歳 児 が 、3年 後 に囲 碁 の 世 界 的 な プ ロ棋 士 を破 り、さ らに2年 後 に 医 師 と同 じ水 準 で 眼 病 を検 出 で き る よ うに な る よ うな速 度 で あ る とい われ る 91。多 様 な 問題 を解 決 す る多 角 的 な能 力 を 自身 で獲 得 し、設 計 時 の想 定 を超 え た 83同 論 文511-512頁 参 照 。 84『2030年 の 「ク ル マ 社 会 」 を 考 え る 』(2009年)を 第1巻 と し て、 『2030年 の 「食 と農 」 を 考 え る 』(2010年)、 『2030年 の 「住 ま う」 を 考 え る 』(2010年)な ど 、 『新 イ ン フ ラ 論: 「イ ン タ ー ス トラ ク チ ャ ー 」 が ス マ ー トな 未 来 を 創 る 』(2019年)ま で20巻 が 刊 行 さ れ て い る 。 85池 田 理 知 子、 松 本 健 太 郎 編 『メ デ ィ ア ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 論 』(2010年)に 始 ま り 、 第11巻 に あ た る 岡 本 健 、 松 井 広 志 編 『ポ ス ト 情 報 メ デ ィ ア 論 』(2018年) ま で 刊 行 さ れ て い る 。 86な お、 「ト ラ ス ト未 来 フ ォ ー ラ ム 研 究 叢 書 」 も2018年 ま で に83の 書 籍 を 刊 行 し て い る が 、 そ の 内 容 は 必 ず し も 「未 来 」 を 焦 点 と す る も の と は か ぎ ら な い 。 87志 村 幸 雄 「ド ッ グ イ ヤ ー 的 進 化 を 遂 げ るITの 今 後 」『あ さ ひ 銀 総 研 レ ポ ー ト』166号(2001 年)16頁 参 照 。 88吉 井 博 明 「ド ッ グ イ ヤ ー 時 代 の 複 眼 行 政 シ ス テ ム 」 『消 防 科 学 と情 報 』60号(2000年) 4-6頁 参 照 。 日垣 秀 彦 「ド ッ グ イ ヤ ー の サ イ エ ン ス 」 『バ イ オ メ カ ニ ズ ム 学 会 誌 』32巻2号 (2008年)53頁 も 参 照(ド ッ グ イ ヤ ー の 速 度 で 進 化 す る 再 生 医 療 は 、 宗 教 や 倫 理 の 世 界 に 踏 み 込 ん で い る こ と か ら 、 「サ イ エ ン ス に お い て 、 も し 、 ド ッ グ イ ヤ ー の 先 に バ ブ ル 崩 壊 が あ る と す れ ば 、 人 類 の 生 存 に 深 く 影 響 す る と 危 惧 す る 」 と 警 告 す る)。 89室 田 泰 弘 「今 や ダ ブ ル ・ ド ッ グ イ ヤ ー の 時 代!:何 で こ ん な に 速 い?IT革 命 の ス ピ ー ド レ ー ス 」 『エ コ ノ ミ ス ト』3481号(2000年)70頁 。 go坂 村 前 掲 論 文(注38)96-97頁 参 照。 91日 経 ク ロ ス ト レ ン ド編 『デ ィ ー プ ラ ー ニ ン グ 活 用 の 教 科 書:先 進35社 の 挑 戦 か ら読 む AIの 未 来 』(2018年)2頁 参 照 。AIは 、 そ れ が 提 唱 さ れ た1956年 以 来 、 不 断 に 進 化 し て き た わ け で は な く 、1960年 代 の 第1次 ブ ー ム 、1980年 代 の 第2次 ブ ー ム 、 そ の 後 「AI冬 の 時 代 」 を 経 験 し た う え で 、2010年 代 に 第3次 ブ ー ム が 生 じ た と い わ れ る 。 山 田 誠 二 「AI