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第 図 物価関連指標の動向 消費者物価 ( コアコア ) は 216 年後半以降前年比 前月比ともに % 近傍 (1) 消費者物価指数 2.5 ( 前年同月比 %) 2. 総合生鮮食品及び 1.5 エネルギーを除く総合 生鮮食品を除く総合

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Academic year: 2021

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第3節 デフレ脱却に向けた動き

本節では、物価 の現状について概観し、長期 にわたる景気回復によりデフ レ 脱 却 に 向け局面変化が 着実に見られていることを確 認する。またその局面変化を確 実 に デ フ レ脱却に結び付けるためには どのような課題があ るかについても考 察する。 最 後 に 、 最近の金融市場 の動向についても触れる。

1 デフレ脱却に向けた局面変化

(物価動向について)

消費者物価の動 向を、生鮮食品を除く総合( コア)でみると、2016 年に入 り 、円 高 方向への動きやエネルギー価 格の低下等により 、前年比で低下し ていたが、20 16 年 後半からのエネルギー価格の 上昇などにより、2017 年に入 ってからプラス に 転 じ 、 2017 年 11 月時点において0%台後半 で推移している(第1-3- 1図)。 他方、物価の基調について、「生鮮食品 及びエネルギーを 除く総合(いわ ゆ る 「 コ アコア」)」でみると、2016 年後半以降 は前年比、前月比とも0%近傍の動き と な っ て いる。これは、原材料費の上昇などにより一 般食料工業製品などが上昇し、ま た イ ン バウンドが好調 であることなどを背景に宿泊 料が上昇しているほか、単身世 帯 の 増 加 もあって外食が 上昇している一方、携帯電話 機や携帯電話通信料などが下落 し て い る ことが主な要因 である。 また、民間エコノミス トによる予想物価上昇率は、2012 年以降徐々 に上昇し、2 01 5 年は1%程度で 安定的に推移した後 2016 年 に入って低下した。その後、原 油 価 格 の 影響等により再 び上昇したが、足下では1% 弱程度となっている。一方で、家 計 の 予 想物価上昇率に ついては、食料品の値上がり 等の影響を受けやすいことから 民 間 エ コ ノミストによる 予想物価上昇率に比べれば高 い水準で推移しているものの、2 % 程 度 で落ちついてい る。

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第1-3-1図 物価関連指標の動向 消費者物価(コアコア)は 2016 年後半以降前年比、前月比ともに0%近傍 (1)消費者物価指数 (2)ドバイ原油とエネルギー (3)消費者物価(コアコア)の寄与度分解 (前年同月比、%) (月) (年) (百円/バレル) (月) (年) (前年同月比寄与度、%) (月) (年) -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 11 2012 13 14 15 16 17 生鮮食品を除く総合 生鮮食品及び エネルギーを除く総合 総合 80 85 90 95 100 105 110 115 0 20 40 60 80 100 120 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 11 2012 13 14 15 16 17 (2015年=100) エネルギー(目盛右) ドバイ原油 (円ベース) -0.8 -0.4 0.0 0.4 0.8 1.2 1.6 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 1011 2014 15 16 17 公共サービス 家賃 耐久消費財(携帯電話機など) 食料 他の財 個人サービス (宿泊料、外食など) 携帯電話通信料 生鮮食品及びエネルギー を除く総合(折線)

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(4)予想物価上昇率

(景気回復の長期化もありGDPギャップはプラスに転じる)

景気循環を 均した 平均的 な供給 力を示 す潜在 GDP と実際 に需要 された G D P 水 準とのかい離率 であるGDPギャップは、こ れまでマイナスの期間が多かっ た が 、長 期にわたる景気回復もあり、 プラスに転じている (第1-3-2図)。GD P ギ ャ ッ プがプラスにな るということは経済全体で需 給が引き締まっている状態であ る 。こ れ までの消費者物価(コア)と GDPギャップのデ ータを用い、両者 の相関を 見 る と 、 GDPギャ ップの 上昇か ら半年 程度の ラグを 伴って 消費者 物価も 上昇する 傾 向 が 見 られること( 付図1-3)から、今後は、G DPギャップの引き締まりが消 費 者 物 価 の押上げに寄与 することが見込まれる。ただ し、過去のデータから推計され る 関 係 式 からは、GD Pギャップの変化が消費者物価(コア)を押し上げる効 果は限 定 的 18 ある点には留意 が必要である。これは、デフ レが長期化したことにより、賃 金 や 価 格 設定の行動様式 が慎重化したこと等が反映さ れている可能性がある。 18 CPI(コア)の前年比に対し、GDPギャップの水準の計数は 0.2 程度であるため(推計式 のα/(1-θ)に相当)、例えばGDPギャップがプラス1%の水準になってもCPI(コア)の押 し上げは 0.2%にとどまる。 (月) (年) (備考)1.内閣府「消費動向調査」(二人以上の世帯)、総務省「消費者物価指数」、 日経NEEDS、日本銀行「外国為替市況」、日本経済研究センター「ESP フォーキャスト調査」、Bloombergにより作成。 2.(1)について、連鎖基準。また、(1)及び(3)について、消費税率 引上げの影響を除いたもの。 3.エネルギーは、電気代、都市ガス代、プロパンガス、灯油、ガソリンから構成される。 4.消費動向調査は、一定の仮定に基づき試算したもの。2013年4月から郵送調査への 変更等があったため、それ以前の訪問留置調査の数値と不連続が生じている。 点線部は郵送調査による試験調査の参考値。 5.BEIはそれぞれの時点で残存期間が最長のもの(BEI(旧)は旧物価連動国債、 BEI(新)は新物価連動国債(残存10年物))を使用。 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 11 2008 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (%) 消費動向調査 (家計の物価予想) ESPフォーキャスト (民間エコノミストの物価予想) BEI(旧) BEI(新) (金融市場参加者の物価予想)

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第1-3-2図 GDPギャップ、コアの要因分解 GDPギャップは消費者物価(コア)と正の相関がみられるが、コアの押上げ効果は限定的 (1)GDPギャップ (2)消費者物価(コア)の要因分解 -8.0 -7.0 -6.0 -5.0 -4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (%) (期) (年) -2.4 -1.8 -1.2 -0.6 0.0 0.6 1.2 1.8 2.4 Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (前年同期比寄与度、%) (期) (年) 為替要因 GDPギャップ要因 消費者物価 (実績、折線) 輸入物価要因 前期の消費者物価要因 予想物価要因 その他要因 (備考)1.内閣府「国民経済計算」「消費動向調査」、総務省「消費者物価指数」、日本銀行「企業物価指数」 「実効為替レート」等により作成。消費税率引上げの影響を除いたもの。 2.GDPギャップは、内閣府による試算値。 GDPギャップ=(実際のGDP-潜在GDP)/潜在GDP 3.予想物価上昇率は消費動向調査より一定の仮定に基づき試算したもの。 4.消費者物価(コア)の推計式は以下のとおり。ただし、 CPI:消費者物価(コア)前年比、GAP:GDPギャップの水準、EXP:予想物価上昇率、 IPI:輸入物価(契約通貨)前年比、EX:名目実効為替レート前年比、データ期間は1999年以降。 CPI(t)=αGAP(t-2)+βEXP(t)+γIPI(t-1)+δEX(t-3)+θCPI(t-1) 推計結果は以下のとおり。括弧内の数値はt値。 β、γ及びθは5%水準で有意。δは10%水準で有意。 α=0.105(4.31)、β=0.208(4.69)、γ=0.010(3.06)、δ=-0.007(-1.78)、θ=0.431(5.65)

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(人手不足感が四半世紀ぶりの高水準となり、パートを中心に賃上げが続く)

前節で見たよう に、景気回復の長期化により 雇用・所得環境は改善を続け 、人 手 不 足感は四半世紀ぶりの高水準 となっている(第1 -3-3図)。また、雇用 環 境 の ひ っ迫によりパー トを中心に賃金が上昇してい る。 賃金の伸びをマ クロ的にみるために、生産一 単位当たりの労働コスト(ユ ニ ッ ト レ ーバーコスト、以下、「ULC 」という。)の 変化を生産性要因と賃金要因に 分 解 す る と、賃金要因が 生産性要因を上回っているため 2014 年半ば以降前年比でプ ラ ス が 続 いている。UL Cの上昇は、生産性の上昇以 上に賃金が上がっていることを 意 味 す る ため、企業に とってはコストプッシュ要因 19となる。消費 者物価のコアコア と U L C の関係を見ると 緩やかな正の相関が長期的に 確認できるため、今後はプラス で 推 移 し ているULCと ともにコアコアも緩やかに上 昇することが期待される。 第1-3-3図 雇用判断DI、賃金、ULC、消費者物価(コアコア)とUL Cの関 係 人手不足感は四半世紀ぶりの高水準 (1)雇用人員判断DI (2)一般労働者とパートの賃金 19 賃金上昇により雇用者の所得が増加することで需要が高まるため、中期的にはディマンドプ ルの効果も考えらえられる。 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 1980 83 86 89 92 95 98 2001 04 07 10 13 16 18 全産業 非製造業 製造業 「過剰」超 「不足」超 予 測 (「過剰」-「不足」、%ポイント) (年) 95 100 105 110 115 120 125 1993 95 97 99 2001 03 05 07 09 11 13 15 16 一般(所定内給与) パート(時給) (1994年=100) (年)

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(3)ULC(4四半期移動平均) (4)消費者物価(コアコア)とULCの関係

(企業物価は最終財価格も上昇し始め、一部の消費者向けでの価格転嫁の動き)

企業物価の動 向を 需 要 段階 別 で 見 ると 、 資 源 価格 の 回 復に よ り 素 原材 料 価 格 が 2017 年に入り前年比 で大きく上昇し、 その動きが中間財、 さらには最終財 に も 波 及 しつつある(第 1-3-4図)。 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 199091 92 93 94 95 96 97 98 99200001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (前年同期比(4四半期移動平均)、%) 賃金要因 生産性要因 ULC(折線) (年) (1993Ⅳ-1998Ⅳ) y = 0.11x + 0.47 R² = 0.31 (2.95) (1999Ⅰ-2012Ⅳ) y = 0.14x - 0.30 R² = 0.33 (5.10) (2013Ⅰ-2017Ⅲ) y = 0.13x + 0.40 R² = 0.17 (1.86) -2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 (消費者物価(コアコア)前年同期比、%) (ULC前年同期比、%) (備考)1.内閣府「国民経済計算」、厚生労働省「毎月勤労統計調査」、総務省「労働力調査」 「消費者物価指数」、日本銀行「全国企業短期経済観測調査」により作成。 消費税引上げの影響を除いたもの。 2.一般労働者は所定内給与、パートは時給(=所定内給与/所定内労働時間)を用いている。 3.ULC=名目雇用者報酬/実質GDP =(名目雇用者報酬/労働投入)/(実質GDP/労働投入) =単位賃金/労働生産性 4.内閣府「国民経済計算」は、1994年以降は2011年基準、1990年から1993年までは2000年基準 を接続して使用。 5.(4)について、括弧内の数値は、xの計数のt値

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企業物価の最終 財のうち、消費 財と消費者物価(財)との時 差相関をみる と 、企 業 物価の消費財の 上昇から半年程度のラグを伴 って消費者物価(財)が押し上 が る と 見 込まれる(付図1-4)。また、人件費 の上昇による運送 料の上昇やインバ ウ ン ド 需 要の高まり による 宿泊料 の上昇 などに より企 業向け サービ スも緩 やかに増 加 を 続 け ており、価格転 嫁の動きが企業物価では着実 に進行していることがうかがえ る 。景 気 回復局面におい ても企業向けのみで上昇を続 けていた配送料については、2017 年 1 0 月からは消費者 向け価格でも上昇の動きがみ られる。また、外食でも価格が 上 昇 し て いる。ただし、小売全体でみると、仕入れ価格が上昇してい るものの、販売 価 格 の 上 昇はわずかであ り、今後は価格転嫁がスムー ズに行われるか否かが注目され る。 第1-3-4図 企業物価と消費者物価 企業物価は最終財価格も上昇し始め、一部の消費者物価も上昇の動き (1)国内企業物価及び需要段階別企業物価 (2)企業向けサービス価格(総平均(国際運輸を除く)) 70 80 90 100 110 120 130 140 150 92 94 96 98 100 102 104 106 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 11 2012 13 14 15 16 17 (2015年=100) 最終財 素原材料 (目盛右) (2015年=100) 中間財 国内企業物価 (月) (年) -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 11 2012 13 14 15 16 17 (前年同月比、%) (月) (年)

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(3)価格上昇がみられるサービス品目 (4)販売価格と仕入価格(小売・全規模) 95 97 99 101 103 105 107 109 111 113 115 117 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 2012 13 14 15 16 17 (期) (年) テーマパーク入場料 宿泊料 企業向け運送料 外食 消費者向け運送料 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 199091 92 93 94 95 96 97 98 99200001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 (「上昇」-「下落」、%ポイント) (年) 販売価格判断DI(折線) 販売価格判断DI-仕入価格判断DI 仕入価格判断DI(折線) 「上昇」超 「下落」超 予測 (備考)1.総務省「消費者物価指数」、日本銀行「企業物価指数」「企業向けサービス価格指数」 「全国企業短期経済観測調査」により作成。消費税率引上げの影響を除いたもの。 2.素原材料、中間財、最終財は、国内企業物価及び輸入物価を需要段階別に分類したもの。 3.国際運輸は、国際航空旅客輸送、定期船、不定期船、外航タンカー、国際航空貨物輸送、 国際郵便。 4.運送料、外食、テーマパーク入場料は原数値。宿泊料は内閣府による季節調整値。 企業向け運送料は「企業向けサービス価格指数」の宅配便。 5.(3)について、2017年第Ⅳ期は10-11月の平均値。 (2012年=100)

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(物価を取り巻く環境の局面変化)

以上で確認した ように、物価を取り巻く環境 については、GDPギャップ が プ ラ ス に転じるととも に、人手不足感が四半世紀ぶ りの高水準になっている。こう し た 需 給 のひっ迫に加え 、第1節でみたように企業収 益が過去最高を更新する中で、春 闘 で は 過去4年間にベ アを含む賃上げが実現し、緩 やかではあるが賃金も上昇し、U L C も 僅かながらプラ スとなっている。加えて価格 転嫁が企業物価では着実に進行 し 、配 送 料など一部では その波が消費者物価に及びつ つある。このように、物価を取 り 巻 く 環 境には局面変化 がみられるが、消費者物価の 基調が現状では横ばい圏内にと ど ま っ て いることを踏ま えると、物価の持続的な上昇 につながるためには、まだ課題 も 残 っ て いる。次項では こうした局面変化をデフレ脱 却に確実につなげるための課題 を 確 認 す る。

2 デフレ脱却に向けた今後の課題

(国際的にみても賃金の上昇が物価の押し上げに重要)

我が国のみなら ず、アメリカやEUなど他の 先進国においても、景気回復 の 割 に は 賃金や物価 上昇率 が過去 と比べ て低い 水準に とどま ってい るとの 指摘がな さ れ て い る。こうした背 景には、相対的に賃金水準の 低い非正規労働者の比率が高ま っ て い る こと20や、ネット を通じた電子商取引が拡大す る中で価格競争が激化してい る こ と 等 が指摘されてい る。こうした要因の影響があ るとしても、我が国の物価上昇 率 は 他 の 先進国と比べて も低い水準にとどまっており 、これら以外の要因も我が国の 物 価 上 昇 率を抑制してい ることが考えられる。そこで、日本、アメリ カ、ユーロ圏の 物 価 上 昇 率について、財 とサービス価格に分けて動向 をみてみると、経済のグローバ ル 化 に 伴 い安い財を輸入 できることもあり、これら先 進国・地域の財の価格は横ばい 圏 内 で 推 移している(第1-3-5図)。他方、 サービス価格の動 向について、日米 欧 を 比 較 すると、アメリ カ及びユーロ圏のサービス価 格は一貫して日本のサービス価 格 の 伸 び を上回って推移 しており、こうしたサービス 価格の動向の相違が、物価全体 の 動 向 の 違いを生み出し ていることが示唆される。サ ービス業においては、財と比べ て 人 件 費 比率が高いこと から、サービス価格の動向は それぞれの国・地域の雇用・賃 金 動 向 を 大きく反映して いると考えられる。実際に、時間当たり賃金の伸びを、日米 欧 で 比 較 すると、我が国 の賃金上昇率は、一貫してア メリカやドイツの賃金上昇率を 下 回 っ て いる。 20 OECD(2017)

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こうしたことを 踏まえると、デフレ脱却に向 け持続的な物価上昇を実現す る た め に は、賃金上昇率 を高めていくことが重要な課 題であると考えられる。 第1-3-5図 物価と賃金の国際比較 日本は賃金の伸びが弱く、サービス物価上昇率も低水準 (1)財物価・サービス物価の国際比較 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10 ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 2008 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (期) (年) (前年同期比、%) 日本 アメリカ ユーロ圏 財物価の国際比較 -2 -1 0 1 2 3 4 5 ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 2008 09 10 11 12 13 14 15 16 17 サービス物価の国際比較 (前年同期比、%) (期) (年) 日本 アメリカ ユーロ圏

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(2)賃金の国際比較

(人手不足感が高まっても、一般労働者の賃金の上昇は緩やか)

我が国の労働市 場においては、労働需給が引 き締まり方向で推移している 中 で 、既 にみたように、パートの時給は上昇している ものの、一般労働者の定期給与 の 伸 び は 緩やかとなって いる。主な産業別に労働者の 過不足感と一般労働者の所定内 給 与 及 び パートタイム労 働者の時給の上昇率の相関を みると、パートでは労働者不足 の 産 業 ほ どパート時給の 増加が高いという関係が見い 出せるが、一般労働者ではその 関 係 を 見 出すことができ ず、所定内給与の増加幅も小 さいことから、人手不足感が高 ま っ て も 一般労働者 の賃上 げには あまり 結びつ いてい ないこ とが確 認でき る(第1 - 3 - 6 図)。 こうした背景に は、人手不足への対応として 、一般労働者の賃上げで対応 す る と 企 業にとって中長 期的にコスト増につながるの で、比較的調整のしやすいパー ト で の 賃 上げでこれまで 対応してきたと考えられる。ただし、労働需給のひっ迫もあ り 、雇 用 形態としては、パートタイム等の増加より正 社員の採用や登用の増加で対応 す る 意 向 がみられる。具 体的には、企業が労働者不足 にどのように対応しているかを 厚 生 労 働 省「労働経済動向調査」でみる と、「臨時・パートの増加」で対応す る企業よ り も「 正 社員採用・登用の増加」で対応する企業の割 合が高い。なお 、人手不足への 対 処 方 法 は、外部からの 人員確保だけではなく、労働 条件の改善や省力化投資による 対 応 な ど 様々な手法とな っており、今後はさらなる賃 上げの実現や省力化投資の増加 が 期 待 さ れる。 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢ 2008 09 10 11 12 13 14 15 16 17 日本 アメリカ ドイツ (期) (年) (前年同期比、%)

(備考)1.総務省「消費者物価指数」、厚生労働省「毎月勤労統計調査」、Bureau of Labor Statistics "Consumer Price Index"、Eurostat、ドイツ連邦統計局により作成。

2.ユーロ圏の消費者物価指数(HICP)のサービス物価には持家の帰属家賃が含まれない ため、日本及びアメリカについても持家の帰属家賃を除くサービス物価を使用。 3.日本は、内閣府で消費税率引上げの影響を除いたもの。

4.(2)について、非農業の平均時給。

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第1-3-6図 一般、パートの労働者過不足感と賃金、労働者不足の対処方法 一般労働者の賃金の伸びは緩やか (1)一般・パートの人手不足感と賃金 (2)労働者不足の対処方法 建設業 製造業 運輸業・郵便業 卸売業・小売業 宿泊業・飲食サービス業 医療・福祉 調査産業計 -1 0 1 2 3 10 15 20 25 30 35 40 45 一般労働者の所定内給与と人手不足感 (所定内給与の上昇率、%) (DI、「不足」-「過剰」、%ポイント) 建設業 製造業 運輸業・郵便業 卸売業・小売業 宿泊業・飲食 サービス業 医療・福祉 調査産業計 y = 0.13x + 2.71 (3.57) R² = 0.76 0 2 4 6 8 10 12 0 10 20 30 40 50 60 パートの時給と人手不足感 (時給の上昇率、%) (DI、「不足」-「過剰」、%ポイント) 0 10 20 30 40 50 60 70 正社員採用・ 登用の増加 臨時・パート の増加 派遣労働者 の活用 在職者の労働 条件 の改善(賃金 ) 在職者の労働 条件 の改善(その 他) 求人条件 の緩和 離転職の防止 策の 強化、定年延 長等 配置転換・ 出向者の受入 れ 省力化投資・ 外注化、下請 化等 (%) 外部からの人員確保 労働・求人条件の改善 内部の人員確保 (備考)1.厚生労働省「毎月勤労統計調査」、「労働経済動向調査」により作成。 2.時給と所定内給与は、2012年第3四半期から2017年第3四半期への上昇率。 3.人手不足感は、2012年8月調査から2017年8月調査までの雇用形態別の労働者過不足判断DIの平均値。 4.労働者不足の対処方法は、労働者不足に対処した企業の内訳で、2016年8月から2017年7月

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(ベア実現のためには生産性上昇、成長見込みの上昇が重要)

春闘においては 、これまでと比べると、過去 4年間で2%程度の高い賃上 げ 率 が 達 成されている。賃上げは定期昇 給とベースアップ( ベア)に 分けられるが、定 期 昇 給 がマクロでみた 賃金上昇に与える影響につい ては、労働者全体の年齢構成が 変 化 し な い場合、全体 でみると相殺 21され ることになる。このため、マクロでみた賃 金 を 上 昇 させるためには 、ベアをどの程度確保できる かが重要となる。ただし、これ ま で み た ように、人手不 足にもかかわらず企業は中長 期的なコスト増になる一般労働 者 の 定 期 給与増には慎重であり、ベア は過去4年間、0% 台半ばの上昇率に とどまっ て い る 。 ベアを企業の成長率見込み、 労働生産性、CPI (総合)(いずれも1期 前 ) で 要 因分解すると、これまでのベア の動きを、相 当程度、この3 要因で説明でき る( 第 1 -3-7図)。労働 生産性は企業の収益 に直結するのでベ アにも影響される こ と に 加 え、ベアは将来 的な企業のコスト増につなが るため企業の将来の成長見込み に も 影 響 されること、ま た労働側としては足下の物価 上昇を踏まえて来年度の賃上げ 交 渉 を す ることから 1 期 前のCPIが重要な要素にな ると考えられる。 このことからベ アを確実に実現するためには 労働生産性を高めるとともに 、企 業 が 将来にわた り高成 長が続 くとい う見込 みを持 てる環 境を整 備する ことが重 要 で あ る といえよう。ただし、今回の景 気回復局面の動きを見ると、特に 2014 年度から 2 01 6 年度におい ては実 際のベ アがこ れら3 要因で 説明で きる推 計値よ り大幅に 下 回 っ て いる。企業が過 去最高の企業収益を更新して いることも踏まえると、今後は こ れ ま で 以上の高いベア の実現が期待される。 21 年齢構成比が変わらないとし、ベアがゼロだった場合、60 歳の労働者が退職しても 59 歳の労 働者が1年前に 60 歳だった労働者の賃金を受け取ることになり、以下、他の年齢層においても 同じことがおきるだけで全体の賃金水準は変化しない。

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第1-3-7図 ベースアップ率の要因分解 労働生産性や成長率の見通しが高いほどベースアップ率は高まる

コラム1-4 労働者の年齢構成の変化が賃金に与える影響

賃金カーブはお おむね 50 歳代前半をピーク としていることから、賃金水 準 の 高 い 中高年の労働者 が増加することにより、全年 齢を平均した一人当たりの賃金 が 押 し 上 げられるが、逆 に賃金水準の高い高年齢の労 働者の退職や賃金水準の低い若 年 の 労 働 者の増加により 、一人当たりの平均賃金が押 し下げられることになる。その た め 、団 塊世代(1947 年~1949 年生まれ)の退職に 伴い、構造的に一人当たりの平 均 賃 金 が 上がりにくくな っているとの指摘がされるこ とがある。 そこで、一般労 働者の定期給与の変化を、年 齢構成が変化することによる 要 因 と 各 年齢の賃金水準 の変化による要因とに分解し 、過去 10 年の動きを分析する と 、 年 齢 構成による効果は、2002 年以降もプラ スに寄与しているも のの、賃金を決 め る 要 因 としては、各年 齢の賃金水準の変化による効 果が大半を占めていることがわ か る( コ ラム1-4図)。 2007 年~2011 年頃は、団塊世 代の賃金水準が大幅に落ち込む 60 歳代に差 し 掛 か る ことで年齢構成 効果のプラスの寄与が減少し ていたが、団塊の世代の退職が 進 み 賃 金 -2 -1 0 1 2 3 4 (前年度比、%) 消費者物価指数の上昇率 労働生産性の上昇率 ベースアップ率 今後3年間の実質経済成長率の見通し (年度) (備考) 1.内閣府「国民経済計算」、「企業行動に関するアンケート調査」、厚生労働省「毎月勤労 統計調査」、労務行政研究所「モデル賃金・年収調査」、総務省「消費者物価指数」、 「労働力調査」により作成。 2.ベースアップ率の推計式は以下のとおり。ただし、 CPI:(消費税引上げの影響を除く)消費者物価指数(総合)前年度比、 LP:労働生産性上昇率、EGF:今後3年間の実質経済成長率の見通し。 ベースアップ率=α×CPI(-1)+β×LP(-1)+γ×EGF(-1) 推定結果は、以下のとおり。括弧内の数値はt値。 α=0.34(3.51)、β=0.24(4.46)、γ=0.21(4.32)

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水準も低くなった 2012 年以降 は、主に団塊ジュニア 世代(1971~1974 年生 ま れ ) が 賃金水準の高い 50 歳代前半に近づきつつあ ることで、プラスの寄与が再び 増 加 し て いる。また、若年の労働者の割合は少子 化の影響等により長期的に減 少傾向 22に あ る ため、年齢構成 効果に対するマイナスの寄与 はしていない。 さらに、一般労 働者の賃金カーブの 2002 年から 2016 年への変化を 見ると 、2 0 歳 代の若年層の賃 金が上昇し、30 歳代後半から 40 歳代の中年 層の賃金が減少し て い る 。 こうした中年層 は、団塊ジュニア世代とも重 なることから、賃金水準の低下 し て い る 中年層の割合が 増加していることは、一人当 たりの平均賃金の伸び悩みの要 因 の 一 つ として考えられる 23 コラム1-4図 年齢構成と賃金 22 ただしこのところは景気回復の長期化に伴う雇用環境の改善により新卒採用も増加しており、 若者の雇用者数は正規雇用を中心にやや増加傾向にある。 23 黒田(2017)は、就職氷河期に新卒を迎えた中年層の賃金が低下していることが、平均賃金の 押し下げ要因として影響を与えていることを指摘している。 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 ~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~ 一般労働者の年齢構成 団塊ジュニア世代 団塊の世代 2002年 2007年 2012年 (%) 2016年 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 2002~2006 2007~2011 2012~2016 一般労働者の賃金の要因分解 年齢構成変化による要因 その他の要因 (各年齢の賃金水準変化 による要因) (%) 賃金の前年比(期間平均) (年) (歳)

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(生産性向上とともに、大幅な賃上げが重要)

企業は労働生産 性を高めることで収益向上を 実現し、労働者への賃上げも 可 能 と な る。我が国の労 働生産性と賃金の動向を製造 業、非製造業に分けてみると、製 造 業 は 労働生産性が向 上しているもののそれに見合 った賃上げができておらず、そ の た め U LCも低下が続 いている(第1-3-8図)。90 年代半ばについては急激に 円 高 が 進 んだため、労働 生産性が向上しても賃上げで はなく円ベースで見た販売価格 の 引 き 下 げを選択していた可能性があ る。ただし、現在は かつてのような円 高局面で は な く 、 第1節で確 認した ように 交易条 件も改 善して いるた め今後 は労働 生産性上 昇 に 見 合 った賃上げが期 待される。 非製造業は ICT 資本の 利活用 の遅れ などに より労 働生産 性が上 がって い な い た め賃上げが難し く、ULCも横ばいの動きと なっている。我が国は少子化も あ り 生 産 年齢人口が減少しており、潜 在成長率を高めるた めにも生産性の向 上は急務 で あ る 。 特に労働生産性 の伸びが緩慢な非製造業は、産業構造の変化もあり、GDP 、雇 用 面 で見ても我が国 経済の多くの部分を占めるた め、今後は非製造業を中心に、労 働 生 産 性を大きく向上 させることが重要であるとと もに、製造業も含め大幅な賃上 げ が 期 待 される。 10 15 20 25 30 35 40 45 ~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~ 一般労働者の賃金カーブ 2016年 2002年 (万円) (備考)1.厚生労働省「賃金構造基本統計調査」により作成。 2.一般労働者の定期給与(月額)を用いている。 3.年齢構成変化による要因は、年齢構成が前年と同様だった場合の賃金上昇率を算出し、 それを実際の賃金上昇率から引くことで算出している。 (歳)

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第1-3-8図 製造業と非製造業の生産性 非製造業は労働生産性の伸びが緩慢なため賃上げが困難

(消費者への価格転嫁のためには需要面の強さも重要)

消費者物価にお いて、価格が最近上昇してい る一部のサービス価格の動向 の 背 景 を みると、当該サ ービスに対する需要増加によ り価格転嫁が可能となっている 面 が み ら れる。日銀短観 の各産業の販売価格判断DI と仕入れ価格判断DIの差を価 格 転 嫁 の 程度とみなし、当該産業の需給判断DIを需 要の強さを示すものとみなして 、両 者 の 相関をみると、総じて需要の強い産業におい て価格転嫁が進んでいる傾向が み ら れ る (第1-3-9 図)。 60 80 100 120 140 160 180 1990 92 94 96 98 2000 02 04 06 08 10 12 14 15 製造業 労働生産性 名目賃金 ULC (1990年=100) (年) 60 80 100 120 140 160 180 1990 92 94 96 98 2000 02 04 06 08 10 12 14 15 非製造業 労働生産性 名目賃金 ULC (1990年=100) (年) (備考)1.内閣府「国民経済計算」、厚生労働省「毎月勤労統計調査」、総務省「労働力調査」 により作成。 2.内閣府「国民経済計算」は、1994年以降は2011年基準、1990年から1993年までは2000年基準 を接続して使用。 3.労働生産性=実質GDP/(労働時間×雇用者数) 名目賃金=名目雇用者報酬/(労働時間×雇用者数) 4.労働生産性、名目賃金はマン・アワーベース。

(18)

既にみたように 、企業は消費者物価への価格 転嫁に慎重な姿勢がみられる が 、こ う した背景を確認 するために、ある財の価格が 上昇した際に、当該財の需要が ど の 程 度 変化するかを示 す、財別の需要の価格弾力性 を推計した。この結果をみると 、耐 久 財 の価格弾力性が 1.4 程度と最も高く、食品等 を含む非耐久財の価格弾力性が 0. 5 程 度 とその次に高くなっている。 特に、食品等を含む 非耐久財の価格弾 力性につ い て は 、 その多くが必需 品であり、本来は価格弾力性 がほとんどないと考えられるが 、時 系 列 で価格弾力性の 変化をみると、近年上昇傾向 がみられており、消費者が食品 や 日 用 品 などの価格変化 に敏感になっている可能性が 示唆される。 こうした点を踏 まえると、今後、消費者物価 レベルでの価格上昇が広くみ ら れ る よ うになるために は、コスト面の押し上げだけ でなく、需要面の強さも重要で あ る こ と が示唆される。こうした観点からは、賃金の上 昇によって、家計の勤労所得が 増 加 し 、 それに見合って 消費需要も強くなることが期 待される。 第1-3-9図 需給と価格 需要の強い産業では価格転嫁が進む傾向 (1)非製造業の国内需給判断DIの変化幅と「販売価格判断DI-仕入価格判断DI」の変化 幅の関係 y = 0.29x + 1.44 (2.25) -2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 -5 0 5 10 15 20 25 30 35 建設 不動産・物品賃貸 卸売 運輸・郵便 通信 鉱業・採石業・砂利採取業 小売 宿泊・飲食サービス 対事務所サービス 情報サービス (国内需給判断DIの変化幅、%ポイント) (販売価格判断DI-仕入価格判断のDI変化幅、%ポイント) その他情報通信 全産業 製造業 非製造業 対個人サービス

(19)

(2)消費の価格弾力性(形態別) (3)非耐久財の価格弾力性の変化 コラム1-5 運送料が上昇した場合の物価 全体への影響 人手不足感の高 まりに伴う人件費の上昇等に より、企業向け運送料が上昇 し て い る 点については既 に述べたとおりだが、ここで は、企業向け運送料の上昇が、消 費 者 が 直面する物価 24にどの程度の影響 を及ぼすかについて見てみよ う。 各産業が財・サービスを生産・販売する際 には、別の産業から原材料やサ ー ビ ス 等 を購入している 。この連鎖的なつながりを表 したものが産業連関表である。こ の 産 業 連関表(54 部門)に基づき、54 部門の価格 がそれぞれ1%上昇し、これが 投 入 さ れ る産業にお いて全 て価格 転嫁さ れたと 仮定し た場合 におけ る物価 全体の上 昇 率 を 試 24 物価全体の上昇率について、各部門の価格上昇率を産業連関表の家計消費支出でウエイト付け して加重平均することで算出しており、総務省「消費者物価指数」とは一致しない点に留意。 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 耐久財 半耐久財 非耐久財 サービス 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 2005 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年度) (備考)1.内閣府「国民経済計算」、日本銀行「全国企業短期経済観測調査」により作成。 2.(1)について、2012年10-12月期から2017年7-9月期までの変化幅。直線は 非製造業の各産業の値を回帰したもの。ただし、電気・ガスの価格は原油等の 価格に左右されるため、回帰式には含まない。 3.回帰式の下の括弧内はxの係数のt値。 4.価格弾力性については、内閣府「平成23年度年次経済財政報告」を参考に、 形態別実質消費支出(前年度比)を被説明変数とし、定数項及び 名目純可処分所得(前年度比)、形態別消費支出デフレーター(前年度比) に回帰することで推定した。データ期間は1980年度~2015年度。 1980年度~1994年度は旧基準(2000年基準・93SNA)。 5.(2)は形態別消費支出デフレーターの計数の絶対値。 白抜きは係数が1%水準で有意でなかったもの。 6.(3)は1981年度~2005年度までの25年分の推定を起点に、 1年度ずつ推定の始点と終点を後ろにずらした場合の係数の推移を表す。 破線部及び×印は係数が5%水準で有意ではなかった年。

(20)

算した。その結 果、54 部門の 平均は 0.03% となったのに対し、運送業の定 義 に 近 い 道路貨物輸 送が含 まれる 運輸・ 郵便部 門が1 %上昇 した場 合の物 価全体の 上 昇 率 は 0.09%となり、平均を大きく上 回った。この 背景としては、運輸・郵便部門 は 様 々 な 産業に利用され ており、価格上昇が物価全体 の押上げにつながりやすいこと が 挙 げ ら れる。 次に、具体的 にどの産業への影響が大きい かを確認するため、産業連関表 に お い て 道路貨物輸送の価格が上昇し た場合の影響につい て同様の手法を用 いて試算 す る と 、 特に飲食品部門 や対個人サービス部門等の価 格押上げに寄与するとみられる 。こ れ は 飲食品部門や対 個人サービスにおいて、特に 運送業が利用される割合が高い こ と が 要 因である。 実際に価格 上昇に 伴うコ スト増 加を販 売価格 にどの 程度転 嫁する かは各 企 業 の 判 断になるため、ある程度の幅を持って見る必 要があるものの、他部門との関 連 の 強 い 品目の価格上昇 は、広い範囲の財・サービス 価格を押し上げる可能性がある こ と が 示 唆される。 コラム1-5図 各部門の価格が1%上昇した場合の物価上昇率 (1)各部門の価格が1%上昇した場合の物価全体の上昇率 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 商 業 対 個 人 サー ビ ス 飲 食 料 品 運 輸 ・ 郵 便 そ の 他 の 対 事 業 所 サー ビ ス 医 療 ・ 福 祉 石 油 ・ 石 炭 製 品 電 力 通 信 ・ 放 送 農 林 水 産 業 0.09 全部門平均:0.03 (%)

(21)

(2)道路貨物輸送の価格が1%上昇した場合の他部門の物価上昇率

3 金融市場の動向と家計の資産運用

(金融市場の動向)

この1年の金融 市場の動向を見ると、日本銀 行の「長短金利操作付き量的 ・質 的 金 融緩和」の効果もあり、10 年債利回り はおおむね0%程度 のプラス圏で安 定 的 に 推 移した(第1-3-10 図)。また、アメリカのF ED(連邦準 備制度)が利 上 げ を 行 う中、インフレ 率の低位安定等を背景にアメ リカの長期金利も大きな変動が な か っ た ため、日米の金利差は安定的 に推移、ドル円の為 替レートも変動が 少なく推 移 し た 。 なお、2016 年以降の 日本銀行の金融政 策の変遷と、その 間の国債利回り の 動 向 を 振り返ると、金融政策につ いては、2016 年1 月には、「量」・「 質」・「 金利」 の 3 つ の 次元で金融緩和 を進めていく「マイナス金利 付き量的・質的金融緩和」の導 入 を 決 定 0 0.001 0.002 0.003 飲食 料品 対個 人サ ービ ス 金融 ・保 険・ 不動 産 商業 その 他の 製造 工業 製品 医療 ・福 祉 乗用 車 運輸 ・郵 便 電力 農林 水産 業 (%) (備考)1.経済産業省「平成26年(2014年)産業連関表(延長表)」により作成。 2.各部門の価格上昇率は、以下の式から算出。 ΔP=t((I-(I-M)A)-1)ΔV なお、Pは生産者価格ベクトル、Iは単位行列、Mは輸入係数行列、Aは投入行列、 Vは付加価値ベクトル、tは転置行列を表す記号とする。 3.物価上昇率は各部門の価格上昇率を産業連関表の家計消費支出でウエイト付けして加重平均 したもの。 4.(1)は各部門の価格がそれぞれ1%上昇した場合における物価全体の上昇率の上位10部門。 ただし、金融・保険・不動産を除く。 5.(2)は道路貨物輸送の価格が1%上昇した場合における他部門の物価上昇率の上位10部門。 ただし、運輸・郵便は道路貨物輸送を除く。

(22)

した。また同年9月の金融政策決定 会合においては、「量的・質 的金融緩和」及 び「 マ イナス金利付き 量的・質 的金融緩和」の下での経済・物価動向と政策 効果につ い て「 総 括的な検証」を行い、イールドカーブ・コントロール等を盛 り込んだ「長短 金 利 操 作 付き量的・質的 金融緩和」を導入した。この 間の国債利回りの動向をイール ド カ ー ブ の変化を通じて 概観すると、従来からの長期 国債買入れと組み合わせたマイ ナ ス 金 利 政策の導入によ って、金利にさらなる下押し 圧力が加わったことで、イール ド カ ー ブ 全体が低下した ほか、特に長い年限の金利水 準が大きく低下したことによっ て 、イ ー ルドカーブはフ ラット化した状態となった。その後は、2016 年9月 に導入さ れ た「 長 短金利操作付き 量的・質的金融緩和」の下で 、短い年限の金利水準は小幅の マ イ ナ ス 圏で推移し、10 年債 利回りはおおむね ゼロ%程度のプラス 圏で安定的に推 移 す る な かで、長い年限の金利水準は 上昇した。その結果 イールドカーブは、「長短 金 利 操 作 付き量的・質的 金融緩和」導入時を上回って 推移している。 一方、企業収益 が過去最高を更新しているこ となどもあり、日経平均株価 は 年 後 半 に上げ幅を拡大 し、バブル崩壊後の戻り高値 であった 1996 年の水準を超え る 水 準 に まで回復した。 第1-3-10図 金融市場の動向 2017 年後半に日経平均株価は上げ幅を拡大 (1)金融市場の動向 -1 0 1 2 3 80 90 100 110 120 2017 (2017/1/4=100) (%) 10年債利回り (目盛右) 日経平均株価 ドル円レート (月) (年) 日米金利差 (目盛右)

(23)

(2)イールドカーブの変化

(家計の金融資産の動向)

前項で確認したように株価の 上昇などによる資産 効果も消費を押し 上げて い る が 、 人生百年時代を 迎える中、将来への備えとな る家計の安定的な資産形成とい う 観 点 か らも金融資産の 動向は重要である。家計の金 融資産残高の動きを見ると、緩 や か に 増 加を続けている が、現預金の比率が一貫して 高水準で推移し、株式などのリ ス ク 性 資 産の割合は低位 にとどまっている(第1-3 -11 図 )。 2014 年1月にスタート したNISAは、個人投資家のため の税制優遇制度 で あ り 、 総口座数は増加 しており、累積買付額は 11 兆円超となっている。NISA 以 外 に も ジュニアNIS A、つみたてNISA、iD eCOなど投資を促進する制度 が 次 々 と できており、今 後は、将来への備えとなる安 定的な資産形成の実現に向けた 動 き が 促 進されること、また「貯蓄から投資へ」の流 れが促進されることで家計から 企 業 へ の 資金供給が拡大 し、経済が成長するとともに 、家計も潤い、さらなる投資に つ な が る という好循環が 生みだされることも期待され る。 -0.6 -0.3 0.0 0.3 0.6 0.9 1.2 1.5 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 15 20 30 40 (%) (年) 2016/1/28 マイナス金利付き量的・質的金融緩和導入前日 2017/12/29現在 2016/9/20 長短金利操作付き量的質的金融緩和導入前日 2016/7/6 40年債利回り最低 (備考)1.Bloombergにより作成。 2.日経平均株価、10年債利回りは当日終値、ドル円レートはインターバンク直物中心相場。 3.日米金利差は10年債利回りの差。

(24)

第1-3-11図 NISA口座などの状況

投資を促進する様々な制度が発足

(1)家計の金融資産の保有動向 (2)NISA口座開設数・買付額

(3)各種制度の概要

NISA ジュニア NISA つみたて NISA iDeCo

対象者 20 歳以上 0~19 歳 (運用管理 者 は 二 親 等以 内 の 親 族 ) 20 歳以上 20 歳以上 60 歳未満 対象商品 株式・投資信託等 一定の投資信託 預貯金、保険商品、 投資信託、信託等 非課税投資枠 上限 120 万円/年 (最大 600 万円) 上限 80 万円/年 上限 40 万円/年 (最大 800 万円) 年間掛金×年数 非課税期間 最長 5 年 最長 5 年 最長 20 年 制限なし 投資可能期間 2014~2023 年 2016~2023 年 2018~2037 年 - 税制優遇 運用益が非課税 ① 掛金が全額所 得 控 除 ② 運用益が非課 税 ③ 受給時の退職 所 得 控 除 等 払出し 制限なし 原則 18 歳まで制限 あり 制限なし 原則 60 歳まで制限あり 0 20 40 60 80 100 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 2000 02 04 06 08 10 12 14 1617 (兆円) (年) (%) その他 保険・ 年金等 現預金 リスク性資産 現預金比率 (目盛右) リスク性 資産比率 (目盛右) 0 2 4 6 8 10 12 14 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1 3 6 12 3 6 9 12 3 6 9 12 3 6 9 2014 15 16 17 (万口座) (兆円) (月末) (年) 総口座数 累積買付額 (目盛右) (備考)1.日本銀行「資金循環統計」、金融庁資料、厚生労働省資料により作成。 2.(1)の現預金比率は、家計の金融資産に占める現預金(外貨預金除く)の割合。リスク性資産 比率は、家計の金融資産に占めるリスク性資産(株式等、投資信託受益証券、債務証券、外貨預 金および対外証券投資の合計値)の割合。2016年までは年末、2017年は9月末の数値。

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