序 章
は じ め に
第 一 章
議 論
第 二 章
体 験 談
第 三 章
社 会 発 信
終 章
お わ り に
・京論壇とは
2
・代表挨拶
3
・京論壇 2011 の概要
8
・国家イメージ
15
・ジェンダー
32
・インターネット
48
・京論壇 2012 挨拶
90
∼ 7 年目を迎えて∼
・ご協賛 ご協力
92
・源飛輝 (インターネット分科会) 65
・劉原君 (インターネット分科会) 69
・林思朗 (国家イメージ分科会)
72
・周宓 (ジェンダー分科会)
75
・―駒場祭企画―
81
「納得できます?海外出ろ論」
1
1 3
6 3
7 9
8 9
国家イメージ分科会 北 京 で の 三 菱 商 事 様 へ の フィールドワーク
議論で用いた ホワイトボード
報告会の看板を立てました
バー全員を懐石料理にご招待していただきました。 このような貴重な機会を設けていただきましたこと、心 よりお礼申し上げます。
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はじめに
京論壇(Jing Forum)は、東京大学と北京大学の学生によ る議論の場です。両大学から、スタッフ・参加者合わせて 50 名近くが参加し、毎年夏、互いに北京と東京を訪れ、テーマ 別に議論を行っています。双方の学生は、英語という共通の 外国語を通して、対等に議論を行います。 きっかけは 2005 年の日中関係の悪化でした。この事態に危 機感を抱いた2人の学生が、「学生にできることは何か」を考 え、日本と中国の若者が、実際に顔を合わせてお互いを理解 する場を設けようとしたのです。そうして創られた京論壇は 今回で 6 年目を迎えました。 京論壇では、「共創未来」を理念としています。「共創未来」 とは、密接な関係を持つ日中の学生が、協力して未来を創っ ていくという強い意志を表しています。この理念の実現のた め、私たちは議論という手段を選びました。 忌憚のない、質の高い議論。お互いの本音をぶつけ、「なぜ?」 を徹底的に追及することで、その先にある深い相互理解と信 頼関係の構築が達成でき、そうして初めて、真に共に未来を 創る「仲間」となれるのだと、私たちは信じています。 日中関係はより重要性を増し、私たちはお互いを意識せざる をえなくなってきています。しかし私たちはどれほど「相手」 のことを理解し、共に未来を創ろうとしているのでしょうか。 京論壇 2011 は、この一年を通して得た経験を基に、日中の より良い未来を目指して、動き始めたばかりです。京論壇とは
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文責:田中宏樹 1. はじめに 読者の皆様、京論壇 2011 報告書をお手に取って下さり、誠 に 有 難 う ご ざ い ま す。 一 年 間 代 表 を 務 め さ せ て 頂 い た、 私 の 原 動 力 と な っ て い た の は、 京 論 壇 内 外 の 方 々 が、 京 論 壇 と い う 場 に 魅 力 を 感 じ、 そ の 魅 力 を 育 て て い く こ と が 今 後 の 日 本 に と っ て 資 す る、 と 有 難 く も 思 っ て 下 さ っ て い る と い う 事 で し た。 例 え ば、 京 論 壇 ア ラ ム ナ イ( 卒 業 生 ) の 方 々 は、 京 論 壇 と い う 場 に 強 い 魅 力 を 感 じ、 継 続 的 に そ の 担 い 手 と な っ て 下 さ い ま す。 昨 年 3 月 に 発 生 し た 東 日 本 大 震 災 直 後、 京 論 壇 メ ー リ ン グ リ ス ト に、 お 見 舞 い の 言 葉 の み な ら ず、 現 地 の 情 報が次々寄せられ、ネット上で議論が始まっていた事、或いは、 昨 年 夏 に、 京 論 壇 ア ラ ム ナ イ が 北 京 に 再 集 合 す る イ ベ ン ト が アラムナイ主導で催され、20 人以上の社会人が再集合し、熱 く 議 論 を し ま し た。 加 え て、 同 年 代 か ら ご 年 配 の 方、 大 学 関 係 か ら ビ ジ ネ ス で 活 躍 な さ る 方 ま で 多 く の 方 か ら、 一 年 を 通 し激励の言葉を頂戴しました。 それでは、京論壇の魅力とは何か、と問われれば、私は「自 身 が 社 会 を 担 う 存 在 に な ろ う と い う 能 動 的 な 気 概 が 脈 々 と 受 け 継 が れ て い る 事 と、 そ の 気 概 を 議 論 と い う 場 で 徹 底 的 に ぶ つけあえることだ」と答えます。 2.「価値観の議論」 前述のように、京論壇で私たちが特に大事にするのは、自身 が 社 会 を 担 う 存 在 に な ろ う と い う 能 動 的 な 気 概 と、 そ の 気 概代表挨拶
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を徹底的に議論という場でぶつけあうということです。 京論壇が目指す議論は、「価値観の議論」です。この言葉は、 社 会 を 担 う 存 在 を 目 指 す と い う 能 動 的 な 気 概 を、 端 的 に 表 し ています。京論壇では、議論でも、「各々の価値観に根差した 意 見 を 語 る こ と 」、 つ ま り 能 動 的 に 当 事 者 意 識 を 持 っ て 考 え、 自分自身の言葉で意見を語ること、が求められます。これは、 論 理 の 穴 を 指 摘 し 合 う だ け の よ う な 一 般 的 な イ メ ー ジ の 議 論 とは一線を画すものです。 よく、日本人は海外で主張が出来ないと言われます。その理 由 と し て、 英 語 が 苦 手 と い っ た 言 語 の 問 題 が よ く 挙 げ ら れ ま す が、 よ り 問 題 な の は、 社 会 を 担 っ て い く 気 概、 自 分 の 言 葉 で 意 見 を 主 張 す る 能 力 を 醸 成 し き れ て い な い と い う 点 で あ る と、 私 は 思 っ て い ま す。 例 え ば、 日 本 で「 エ リ ー ト 」 と い う と 否 定 的 な 感 覚 を 持 つ と い う の は、 社 会 を 担 う と い っ た 能 動 的な気概が醸成しきれていない一例なのではないでしょうか。 社 会 を 担 う 存 在 に な ろ う と い う 能 動 的 な 気 概 が あ れ ば、 社 会 に 対 す る 視 点、 行 動 に も 活 力 が で ま す。 そ の よ う な 人 が 多 く な れ ば な る ほ ど、 活 力 の あ る 社 会 に な り、 海 外 へ の 発 信 力 も 増していくのではないでしょうか。 私たちは京論壇での議論を通じて、自分の考えを本音で主張 し、 同 時 に 相 手 の 意 見 を 真 摯 に 聴 き ま す。 そ し て、 互 い に 対 し 反 論 を 加 え つ つ、 相 手 の 意 見 を 基 に 自 省 し 自 分 自 身 の 意 見 を 相 対 化 し て い き ま す。 も ち ろ ん、 こ の 主 張 は 正 し い 認 識 に 基 づ い た も の で な け れ ば な ら ず、 論 理 の 誤 り に 関 し て は、 積 極 的 に 指 摘 し 合 い、 正 し て い き ま す。 こ の よ う に し て、 相 当 に 説 得 的、 一 方 で 各 々 の 言 葉 で そ れ ぞ れ 異 な っ た 意 見 を 主 張 し 合 い ま す。 さ ら に、 議 論 で は 相 手 の 言 葉 を 受 け 止 め る 作 業 は 欠 か せ ま せ ん。 相 手 が 当 然 だ と 思 っ て い て、 論 理 関 係 が 自 分 の 視 点 か ら 見 れ ば 理 解 の 範 疇 を 超 え る 論 理 で あ る こ と。 同 じ 事 実 を 基 に し て も、 そ の 事 実 の 捉 え 方 が 全 く 人 に よ っ て 異はじめに
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な る こ と。 強 い 主 張 が、 実 は 本 人 の 過 去 の 体 験 に 根 差 し て い た こ と。 と い っ た よ う に、 相 手 の 主 張 を 聴 き、 理 解 し て い く 過 程 は、 議 論 を す る 一 つ の 面 白 み で す し、 相 互 理 解 を 進 め る に は 必 要 不 可 欠 で す。 こ の よ う に、 互 い の 主 張 を 繰 り 返 し ぶ つ け て い っ た 先 で、 さ ら に 重 要 と な る の は な ん で し ょ う か。 それは、互いを比較材料として、互いの意見を相対化する事、 そ し て 互 い の 意 見 か ら 学 び 合 う 事 で し ょ う。 北 京 大 生 と 2 週 間 の 共 同 生 活 を 通 し 徹 底 的 に 議 論 す る こ と は、 同 世 代 の 北 京 大生、中国人、中国社会の新たな側面を知ることになります。 そ れ ら を 比 較 対 象 と す る こ と で、 東 大 生、 日 本 人、 日 本 を 深 く考察する事にもつながるでしょう こうして相互理解を強固にすることが、より良い日中の未来 に 資 す る た め に、 私 た ち が 学 生 と し て 特 に こ だ わ る こ と の で き る 部 分 で す。 そ し て、 特 に 今 年 度 は、 相 互 理 解 に 加 え、 互 い を 相 対 化 し 学 び 合 う 事 を 特 に 意 識 し、 そ う い っ た「 高 め あ う 関 係 」 を 目 指 す よ う 理 念 と し て 掲 げ ま し た。 も は や、 日 本 と 中 国 の 関 係 は 二 国 で 終 始 す る も の で は な く、 世 界 の 中 の 日 中 と し て 他 国 を 牽 引 す べ き 二 国 で す。 そ う い っ た 環 境 下、 私 たちは、対立を乗り越えるための相互理解はもちろんのこと、 さ ら に 切 磋 琢 磨 し 学 び 合 う 姿 勢 が 重 要 な の で は な い で し ょ う か。 そ う し た 姿 勢 は、 縛 る も の 事 の 少 な い 私 た ち だ か ら こ そ 積 極 的 に 実 践 す る こ と が 必 要 で す。 私 た ち が 2 週 間 も の 長 く 濃 密 な 時 を か け て 得 た、 相 互 理 解、 そ し て 互 い か ら 学 び 合 う 姿 勢 が よ り 良 い 日 中 関 係 の 一 助 と な る こ と を 願 っ て や み ま せ ん。 3. 思いを社会へ 今、 お 手 に 取 っ て 下 さ っ て い る ブ ッ ク レ ッ ト は、 私 た ち が 社会に対し能動的であろうという姿勢の表れです。私たちは、 議 論 し た だ け で 終 わ り と す る の で は な く、 2 週 間 の 議 論 を 終はじめに
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え た 後 も、 様 々 な 形 で「 社 会 発 信 」 を す る と い う こ と を、 議 論と同様に重視しています。もちろん、社会で活躍なさる方々 か ら 見 れ ば、 未 熟 な 部 分 が 多 々 あ る 一 方 で、 私 た ち だ か ら こ そ 出 来 る 価 値 が あ る こ と を 信 じ て い ま す。 で は、 私 た ち に 何 が出来るのでしょうか。 まず、私たちの「社会発信」が、様々な方々が集い議論でき る 場 と な り、 日 本 が も っ と 活 性 化 す る 様 な 方 向 に、 皆 さ ん を 巻 き 込 み た い と 思 っ て い ま す。 例 え ば、 普 段 な ら ば な か な か 出 会 わ な い よ う な 方 々 が、 学 生 の 活 動 を 通 し て ネ ッ ト ワ ー ク を 作 る こ と で す。 大 学 教 授 の 方 と 企 業 の 方 が、 或 い は 御 年 輩 の 方 と 若 い 方 が、 京 論 壇 の イ ベ ン ト で 熱 く 議 論 を し て い る 姿 を 拝 見 す る た び に、 と て も 嬉 し く 思 い ま す。 ま た、 特 に 今 年 は 同 世 代 の 若 者 を 巻 き 込 む と い う 点 を 特 に 意 識 し ま し た。 そ れ は、 若 者 の 社 会 に 対 す る 能 動 性 を 喚 起 で き れ ば、 も っ と 日 本 が 元 気 に な る と い う 強 い 思 い か ら で す。 駒 場 祭 で 若 い 世 代 を 対 象 に し た イ ベ ン ト を 行 っ た の も そ の よ う な 強 い 思 い か ら でした。 そして、日中という軸で考えても、私たちが出来ることが少 な か ら ず あ る と 思 っ て い ま す。 活 動 を す る 中 で、 御 支 援 下 さ る皆さんから最も頻繁に頂いた質問は、「北京大生は何を考え て い る の か?」 と い う 疑 問 で、 社 会 レ ベ ル で 両 国 の 相 互 理 解 を 促 す 余 地 は ま だ ま だ あ る よ う と 感 じ ま し た。 こ の 点 で、 私 た ち 自 身 が 議 論 を 通 し 相 互 理 解 を す る こ と に 加 え、 京 論 壇 で 得 た 経 験 を 発 信 し、 誤 っ た イ メ ー ジ を 正 し て い く 事 も 期 待 さ れ て い る の だ と 思 い ま す。 京 論 壇 で は、 結 論 だ け で は な く、 2 週 間 も か け 価 値 観 の 違 い を ど う 浮 き 彫 り に し、 相 対 化 す る か と い う 議 論 の 過 程 に も 特 に こ だ わ り ま す。 で す か ら、 こ の ブックレットでは特に、臨場感あふれる「2 週間」の様子をお 伝えするように意識しました。私たちの「2 週間」を通し、各 ト ピ ッ ク に 対 し 日 中 の 若 者 が 抱 い た 思 い、 そ し て、 議 論 を 通はじめに
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し 発 見 し た、 中 国 人 そ し て 中 国 社 会 に 対 す る 新 た な 視 座 を 楽 しんで頂ければ幸いです。 4. 最後に 本 年 度 は 昨 年 3 月 11 日 に 発 生 し た 東 日 本 大 震 災 の 影 響 で、 京 論 壇 も 一 時 は 開 催 が 危 ぶ ま れ ま し た。 私 た ち は 安 全 状 況 に 関 す る レ ポ ー ト を 作 成 し、 北 京 側 の 不 安 軽 減 に 努 め る 一 方、 東京開催のバックアップとして代替地の確保に奔走しました。 様 々 な 方 や ス タ ッ フ の 力 を 借 り な が ら、 最 終 的 に は、 北 京 側 も納得した上で東京セッションを開催することが出来ました。 対 応 に あ た る 私 を 支 え て い た の は、「 真 心 」 で し た。 平 素 京 論 壇 で は、 国 境 を 越 え た 強 力 な ネ ッ ト ワ ー ク を 築 く よ う 強 調 し ま す。 け れ ど も、 長 年 か け て 私 た ち が 築 い た 絆 の 真 価 は、 本 当 に 困 難 な 状 況 で 耐 え 抜 け る か 否 か だ と 思 い ま す。 昨 年 度 は、 尖 閣 問 題 を 巡 る 問 題 で 開 催 が 危 ぶ ま れ る 中、 北 京 側 の 努 力 に よ り 無 事 開 催 が で き、 私 は 参 加 者 と し て 彼 ら の「 真 心 」 を垣間見ました。ですから本年度、今回は自分たちが「真心」 を見せる番だ、との思いが私を突き動かしました。 被災地・被災者の皆様には心よりお見舞い申し上げるととも に、 今 年 の 開 催 に お 力 添 え 頂 い た 皆 様 に は 心 よ り 感 謝 申 し 上 げます。それでは、私たちの「2 週間」をどうぞお楽しみくだ さい。はじめに
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<理念> 京論壇 2011 では、北京大学と東京大学の学生が「高 め 合 い 学 び 合 う 関 係 」 を 実 現 す る こ と を 目 標 と し、 周 到 な 準 備 に よ る 質 の 高 い 議 論 と、 個 々 人 の 価 値 観 に基づく意見の掘り下げを重視しました。 <参加メンバー> 京 論 壇 の メ ン バ ー は 参 加 者 と ス タ ッ フ の 2 種 類 に 分 か れ ま す。 参 加 者 は 議 論 に 注 力 し、 ス タ ッ フ は そ の 議 論 を 支 え る 運 営 の 仕 事 を 行 い ま す。 今 年 度 は 東 大側がスタッフ 13 名、参加者 12 名、北京と合わせ て 合 計 48 名 の メ ン バ ー が 参 加 し ま し た。 ま た メ ン バ ー は 多 様 性 に 富 ん で お り、 学 部 生・ 院 生、 文 系・ 理系とさまざまな分野から集まっています。概要
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<スケジュール> 京 論 壇 の 一 年 は 大 き く、 リ ク ル ー ト か ら セ ッ シ ョ ン ま で の 事前準備期間、北京と東京での計 2 週間にわたるセッション、 そしてその後の社会発信・広報の三つに分かれます。 事前準備期間は、分科会ごとの議論の準備(議論プロセスの 構築、リサーチ、フィールドワーク、北京側との情報共有等) の ほ か、 英 語 ト レ ー ニ ン グ や、 ア ラ ム ナ イ と の 意 見 交 換 を 行 い ま す。 今 年 は 分 科 会 で の 勉 強 会 に 加 え、 全 体 で の 勉 強 会 を 定期的に開き、日中関係や、北京大学の学生生活、英語といっ たテーマで事前に学ぶ機会を設けました。 2 週間のセッションでは、ほとんどの日程が大学や宿舎で缶 詰 に な っ て 議 論 を し ま す。 北 京 セ ッ シ ョ ン で は 主 に 北 京 大 学 の 教 室、 東 京 セ ッ シ ョ ン で は オ リ ン ピ ッ ク セ ン タ ー の 会 議 室 を 使 い 議 論 を し て い ま す。 東 京 セ ッ シ ョ ン で は 同 じ 宿 舎 で 一 週 間 生 活 を す る こ と で、 議 論 以 外 の 日 常 生 活 の 面 で も 多 く の 発 見 を 得 ら れ る よ う に プ ロ グ ラ ム を 組 ん で い ま す。 ま た、 議 論の参考とすべく分科会単位でのフィールドワークの実施や、 大 学 教 授 の 講 義 な ど を 設 け る と と も に、 互 い の 社 会 を よ り 深 く理解するため、北京及び東京での一日観光も行いました。 セッション後は、京論壇での学びを社会に発信します。東京 セ ッ シ ョ ン 最 終 日 に、 東 京 大 学 駒 場 キ ャ ン パ ス で 行 っ た 最 終 報 告 会 を は じ め、 駒 場 祭 で の 講 演 会、 報 告 書 作 成 な ど、 さ ま ざ ま な 形 で よ り 多 く の 人 に 京 論 壇 の 活 動 を 知 っ て も ら い、 新 たな発見を得ていただければと考えています。はじめに
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12 月 京論壇 2011 発足
1 月 スタッフリクルート
2 月 京論壇 2011 の方針策定
3 月 北京でミーティング(代表・副代表)
4 月 分科会テーマ決定
5 月 参加者リクルート
顔合わせ合宿
6 月 タフな東大生企画 佳作受賞
日中間学生交流団体合同ミーティング
2 0 1 0 年
東大側 4 名、北京大側 4 名が京論壇 2010 より継続
運営スタッフを新規に募集、9 名が加入
東大、北京大でそれぞれ案を練る
京論壇 2011 の理念、分科会テーマについて
国家イメージ、インターネット、ジェンダーの3分科会
3 倍以上の応募者から 12 人を採用
セッションの下見を兼ね、オリンピックセンターにて、
英語ディベートや京論壇についてのガイダンスを実施。
日中学生会議、京英会と合同で、ワークショップ。
2 0 1 1 年
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7 月 第 1 回全体ミーティング
北京大講座
勉強会
8 月 第 2 回全体ミーティング
9 月 15-23 日 北京セッション
10 月 1-9 日 東京セッション
11 月 駒場祭企画
各分科会進捗共有、アラムナイとの意見交換
講師:銭一帆さん(京論壇09北京大スタッフ)
北京大の大学生活、受験、進路など
講師:宮本雄二前駐中国日本大使
日中関係等様々なテーマについてお話をいただく
各分科会進捗共有、アラムナイとの意見交換
22日に北京大学で中間報告会
8日に東京大学で最終報告会
江川雅子様、田村耕太郎様、加藤嘉一様を招き、
若者が海外で活躍する意義について
パネルディスカッションを行う
はじめに
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議論
この章では、「国家イメージ」「ジェンダー」「インターネット」 の 3 分 科 会 で の 議 論 の 様 子 を ご 紹 介 し ま す。 私 た ち は 二 週 間 の セ ッ シ ョ ン の 間、 分 科 会 毎 に 一 つ の テ ー マ に つ い て 議 論 を 行います。日程は下記のようになっております。 ■北京セッション■ 9 月 16 日 開会式(北京大学にて) 17 日 議論(分科会ごとに、フィールドワークや講義を含む) 18 日 議論 19 日 議論 20 日 一日観光 21 日 議論 22 日 中間報告会(北京大学にて) ■東京セッション■ 10 月 1 日 開会式(東京大学本郷キャンパス) 2 日 議論 3 日 一日観光、鳳明館宿泊 4 日 議論 5 日 議論、懐石料理体験(株式会社ニチレイ様による) 6 日 議論 7 日 議論分科会報告
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文責:幸松大喜 1. はじめに 反日・反中運動が過熱した 2005 年から早 6 年、日中関係は 改 善 し 協 調 路 線 へ と 歩 み だ し つ つ あ る。 し か し 尖 閣 諸 島 問 題 や中国の軍事拡大・宇宙開発は、日本人に対し脅威として映り、 最 近 の 高 速 鉄 道 脱 線 事 故 で は イ ン タ ー ネ ッ ト に 中 国 を 批 判 す る書き込みが相次いだ。日本人の実に 80% がいまだに中国に 負のイメージを抱いているというデータ(言論 NPO, 北京東京 フ ォ ー ラ ム、 第 7 回 日 中 共 同 世 論 調 査 ) が あ る よ う に、 日 本 人 は 漠 然 と だ が 確 か に「 中 国 は 脅 威 だ 」、「 中 国 は 変 だ 」 と い うイメージを抱いている。対する中国人も「日本は反中的だ」 と い う イ メ ー ジ を 抱 い て お り、 そ れ が 両 国 の 溝 に 繋 が っ て い る。 で は そ の イ メ ー ジ は 真 実 な の だ ろ う か、 ま た ど う す れ ば 改 善 す る こ と が で き る の か。 イ メ ー ジ の 根 源 を 探 る こ と で そ の 答 え を 見 つ け だ せ る の で は な い だ ろ う か? そ う い っ た 思 い からこの分科会はスタートした。 1.1 議論前の中国のイメージ ま ず 中 国 の「 イ メ ー ジ 」 の 定 義 で あ る が、 こ こ で は 中 国 人、 中 国 政 府 を 包 含 す る、 国 と し て の 中 国 全 体 へ の イ メ ー ジ の こ と を 指 す。 ざ っ く り 言 え ば、 中 国 と 言 っ た と き に 頭 に う か ぶ もの全てが中国の「イメージ」だということだ。 議 論 前 に 東 大 側 で 中 国 の イ メ ー ジ に つ い て 意 見 交 換 し た 際、 そ の 経 済 力 や 国 民 の 上 昇 志 向、 積 極 性 な ど 良 い 面 も 出 た が、 そ れ 以 上 に 悪 い イ メ ー ジ が 目 立 っ た。 先 ほ ど も 述 べ た「 中 国国家イメージ
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政 府 は 何 を 考 え て い る か わ か ら な い 」、「 脅 威 だ 」 と い う 意 見 の 他 に も、 例 え ば「 中 国 人 は 反 日 的 だ 」 と い う 意 見 が 出 た。 こ れ は 共 産 党 に よ る 歴 史 教 育 の 在 り 方 や メ デ ィ ア を 通 じ て 見 る 過 激 な 反 日 派 の 人 々、 そ し て 何 よ り 我 々 日 本 人 も 中 国 に 対 する若干の対抗意識を持っていることなどが原因なのだろう。 他 に も 毒 ギ ョ ー ザ 事 件 や 高 速 鉄 道 脱 線 事 故 な ど、 中 国 の 製 品 の 質 の 悪 さ が「 中 国 人 は 他 人 の こ と を 思 い や ら な い 」 と い っ た 悪 い イ メ ー ジ に つ な が っ て い る こ と が 挙 げ ら れ た。 事 実、 統 計 で も 反 日 活 動 や 製 品 の 問 題 が 大 き な 影 響 を 与 え て い る こ とが示されている。 対する北京大側もこうした愛国主義的活動、製品の与えるイ メ ー ジ は 非 常 に 重 視 し て お り、 そ の 根 源・ 影 響 や、 あ る の で あ れ ば 誤 解 の 所 在 に つ い て 徹 底 的 に 議 論 し た い と の こ と だ っ た。 こ う し た 背 景 の も と、 コ ン テ ン ツ 産 業 な ど 文 化 輸 出 を 重 視 す る 北 京 大 側 の 希 望 も 取 り 入 れ、 国 家 イ メ ー ジ 分 科 会 は 主 に 政 治・ 社 会 面 と し て「 愛 国 主 義 」、 経 済 面 と し て「 製 品 」、 文 化 面 と し て「 ポ ッ プ カ ル チ ャ ー」 の 3 つ を 軸 に、 イ メ ー ジ 改 善 の ヴ ィ ジ ョ ン 構 築、 そ し て 自 分 の 価 値 観 の 再 認 識 を 目 指 し、 そ れ ら が ど の よ う に 両 国 の イ メ ー ジ 形 成 に 寄 与 し て い る のか議論をすることにした。 議論は簡単ではなかったが、根気強くイメージの根源を深く 深 く 掘 り 下 げ る 作 業 を 通 じ て、 北 京 大 側 に し か な い ユ ニ ー ク な 価 値 観 を 多 く 発 見 す る こ と が で き た し、 自 分 た ち が 無 意 識 に 持 っ て い る 価 値 観 の 発 見 も で き た。 そ し て そ う し た 価 値 観 の ぶ つ け 合 い は、 大 き く で は な い に せ よ、 そ れ で も 確 実 に 自 分たちの持つイメージを変えるにいたった。 以下、3 つのテーマにおける議論の過程を、どのような価値 観 の 相 違 が み ら れ た か、 そ し て そ れ が ど の よ う に 自 分 の 価 値 観、 イ メ ー ジ に 影 響 を 与 え た の か に 着 目 し な が ら 述 べ る。 そ し て 最 後 に、 そ れ ら を 踏 ま え た う え で こ れ か ら の 日 中 関 係 にはじめに
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向けての展望を述べる。 2. 愛国主義 こ こ で は ま ず 愛 国 主 義 に つ い て 議 論 す る こ と の 背 景 と な っ た、 愛 国 主 義 と い う 側 面 に お け る、 議 論 前 の 両 国 に 対 す る イ メージについてまとめる。 ま ず 両 国 共 に、 相 手 の 国 に は 過 激 な 愛 国 主 義 者 が い る と い う イ メ ー ジ が あ が っ た。 そ う い っ た 愛 国 主 義 者 は、 単 純 に 排 外 思 想 を 持 つ だ け で な く、 日 常 的 フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン の 捌 け 口として過激なデモや大使館の襲撃、抗議行動を行っている。 そ し て メ デ ィ ア も ま た そ れ ら の 行 動 を 大 き く 取 り 上 げ、 そ れ が 結 果 と し て 両 国 民 を 刺 激 し 過 激 化 さ せ て い る。 ま た 過 激 で ないにせよ、幼少時からの教育の結果国民は強い愛国心を持っ ており、それが多少なりとも他国への対抗意識を生んでいる。 こ れ ら は 北 京 大 東 大 両 サ イ ド が、 多 少 の 違 い は あ れ 互 い の 国 に持っていたイメージである。 2.1 確かな誤解の存在 愛国主義について議論するにあたり、参加者はまず、両国の 若 者 に も、 愛 国 主 義 に よ る 過 激 な 反 日・ 反 中 感 情 の 持 ち 主 が い る は ず だ、 と い う 推 測 の も と、 過 激 な 反 日 反 中 感 情 に つ い てそれぞれの国に関する情報交換をすることにした。 北京大・東大側の参加者全員の間で、自分自身としてはその よ う な 思 想 は 持 た な い、 し か し 両 国 に そ う い っ た 人 は 一 定 数 い る と い う コ ン セ ン サ ス は す ぐ に と ら れ た。 京 論 壇 に 参 加 す る よ う な 北 京 大 生 が 過 激 な 反 日 反 中 感 情 を 持 た な い こ と は 想 定 の 範 囲 内 だ っ た が、 で は 何 故 一 部 の 中 国 人 が 排 日 的 で あ る のか尋ねてみると、「日本を侵略国家として恐れている人が多 い」という答えが返ってきた。中には 「 私 の 父 親 は 反 日 な ん だ け れ ど、 今 で も 日 本 は 右 翼 の 影 響 力はじめに
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が 強 く、 中 国 を 侵 略 す る つ も り だ と 思 っ て い る の。 私 は 日 本 が 好 き だ か ら 何 度 も 誤 解 を 解 こ う と し た ん だ け れ ど、 全 然 わ かってくれようとしないわ。」 と言う参加者もいた。 ある程度誤解があることは予想していたが、目の前で「日本 が ま た 攻 め て く る 」 な ど と 言 わ れ る と、 そ の 誤 解 の 存 在 を 改 め て 実 感 し た。 ま た 親 が 反 日 で も は っ き り と 自 分 は 親 日 だ と 公 言 す る 北 京 大 生 の 言 葉 に、 世 代 に よ る 考 え の 違 い を 強 く 感 じ、同時に日中関係の未来に明るさを感じた。 さ て こ う し た 誤 解 が 反 日 運 動 の 一 因 と な っ て い る こ と が わ か っ た が、 一 方 こ う し た 人 々 は ご く 一 部 で あ る と い う こ と も 北 京 大 側 は 強 く 主 張 し た。 北 京 大 生 を 含 む 若 者 は、 現 代 日 本 を 戦 時 の 日 本 と あ る 程 度 区 別 し て 考 え て お り、 現 在 の 日 本 に 特別な敵対心は抱いていないというのが彼らの理由だった。 「 そ も そ も 日 本 に 好 感 を 持 つ 学 生 が 京 論 壇 に 入 っ て い る の で あり、他の学生についてはそうでもないのではないか」 東大側も何度も率直な疑問をぶつけたが、それでも北京大生 が意見を変えることはなかった。 「このキャンパスで反日活動は見ないの?」 レストランへ移動中、参加者の一人に尋ねてみた。 「ないことはないよ。でも 2005 年以降、数は減っているし、 そ れ 以 上 に 日 本 好 き の 人 の 方 が 目 立 つ か な。 あ そ こ に も コ ナ ンの看板があるよ。」 そ う い っ て 彼 は サ ー ク ル の 勧 誘 活 動 の 看 板 を 指 差 し た。 よ く見ると他にも日本のアニメキャラクターがあちこちにあり、 こ こ が 中 国 で あ る こ と を 忘 れ て し ま う ほ ど だ っ た。 結 局 北 京 セッションを通じて反日らしき活動にめぐりあうことはなく、 少 な く と も 若 者 が 目 立 っ て 日 本 が 嫌 い と い う こ と は な い の だ と 感 じ た。 若 者 の 日 本 へ の 敵 対 心 は 想 像 以 上 に 低 い と い う こ とには、ある程度確信が持てたと言える。はじめに
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北京大では少なからず反日が定着していて、彼らは排外的な 愛 国 主 義 に 対 し て も 日 本 以 上 に 好 意 的 な の で は な い か? こ の よ う な、 東 大 生 と 北 京 大 生 で、 愛 国 主 義 に 対 す る 考 え に つ い て 大 き な 違 い が 見 ら れ そ う だ と い う 期 待 は、 結 果 的 に 裏 切 ら れ た。 こ れ か ら は そ の 細 か な 違 い か ら、 根 本 的 価 値 観 の 差 を 掘り起こす作業に入っていく。 2.2 意外な中国の潜在的恐怖心 続いて、日中の排外的な愛国主義に違いはみられないかとい う 疑 問 か ら、 次 は な ぜ 自 分 の 国 が 好 き か と い う 議 題 に つ い て 議 論 す る こ と に な っ た。 実 は そ こ で 両 国 の 違 い が 徐 々 に 浮 き 彫りになってきた。 まず中国人は自国の壮大な歴史、慣習や価値観に現れる伝統 に 強 い 誇 り を 持 つ の に 対 し、 日 本 側 は 日 本 の 社 会、 日 本 人 へ の 愛 着 心 が 先 ん じ て あ げ ら れ る と い っ た 差 が み ら れ た。 さ ら に 言 え ば、 中 国 人 は 中 国 を 好 き に な っ た 結 果、 中 国 人 に も 愛 着 を 感 じ る の に 対 し、 日 本 人 は 自 分 と 似 た 性 質 を 持 つ 日 本 人 が 好 き に な っ た 結 果、 日 本 に 愛 着 を 感 じ る と い う こ と も で き る だ ろ う。 そ し て 東 大 側 に と っ て 歴 史 や 伝 統 が 重 要 な も の で あ る の は 理 解 が で き る が、 か と い っ て そ れ が 自 分 の 国 を「 愛 す る 」 こ と に つ な が る ほ ど の も の で は な く、 そ の 違 い は ど こ から生じるのか新たに疑問が生まれた。 ここで理由としてあがったのは、中国は経済格差など社会へ の 不 満 抑 制 の た め、 排 外 的 で は な い に せ よ 愛 国 的 教 育 が 行 わ れている点。そして中国は人口が多く多民族国家であり、「中 国 人 」 と い う 単 一 の 概 念 へ の 愛 着 は 抱 き に く い の に 対 し、 日 本 は 単 一 民 族 国 家 で あ り、 自 分 と 共 通 点 の 多 い「 日 本 人 」 へ の 愛 着 を 抱 き や す い と い う 点 で あ る。 少 な く と も 両 国 の 愛 国 心の性質には違いがありそうである。 で は 次 に、 そ の 程 度 の 差 を 分 析 す る べ く、「 ど の 程 度 自 分 のはじめに
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国 に 犠 牲 を 払 え る か 」 と い う 質 問 を 設 け た。 具 体 的 に は、 生 命 や 財 産 を 犠 牲 に で き る か、 あ る い は ボ ラ ン テ ィ ア を ど の 程 度やることができるか、全ての参加者に聞いてみたのである。 どの参加者も 「 少 し の ボ ラ ン テ ィ ア と 財 産 な ら い い け ど さ す が に そ れ 以 上 はなあ」 と い う 具 合 に 北 京 大 生 と 東 大 生 の 間 に 根 本 的 に 大 き な 差 は み ら れ な か っ た が、 い か な る 犠 牲 も 払 わ な い と い う 人 が 東 大 側 の み に 現 れ た。 こ れ は た ま た ま 生 じ た 差 か も し れ な い が、 そ う い っ た 人 た ち に 対 す る 反 応 で は 東 大 生・ 北 京 大 生 で 明 ら か な差があった。 「犠牲を払おうとしない人を受け入れられるか」。 東 大 側 が こ の 質 問 を 提 示 す る と、 北 京 大 側 は な ん と 全 員 が、 強くはないにせよ東大側に比べ明白に嫌悪感を示した。 「 そ う い っ た 考 え は 理 解 は で き る。 で も、 ど う し て も 感 情 的 に受け入れられない」 「 そ れ は な ぜ か? 犠 牲 を 払 わ な い の も 個 人 の 自 由 で あ り 否 定 する根拠はない」 疑問を感じた東大側が反論すると、北京大側もそれを理解し つつ、 「それでもやはり感情的に受け入れられない」 やはり同じ答えが返ってきた。感情面の話ではあれど、そこ に 価 値 観 の 差 を 感 じ た 東 大 側 は そ の 理 由 を 追 及 す べ く 粘 り 強 く質問・反論を繰り返した。 「 中 国 人 は 幼 い こ ろ か ら 学 校 で、 国 の ま と ま り は と て も 大 事 で、 人 は 互 い に 助 け 合 わ な け れ ば な ら な い 教 え ら れ る ん だ。 もしかしたらそういったことも原因かもしれない。」 北京大のこうした発言があり、中国には国としてのまとまり、 そして助け合いを重視する伝統・教育が存在することがわかっ た。そしてさらに質問を繰り返すこと数十分、はじめに
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「 国 の ま と ま り を 重 視 す る の は、 そ れ を 強 い る 恐 怖 の 対 象 が あるのでは」 この東大側の指摘が新たな発見につながる。 「 そ れ は 事 実 だ ろ う。 他 国 か ら 侵 害 さ れ る、 そ う で な く と も 孤 立 さ せ ら れ る の で は と い う 恐 怖 心 が あ り、 そ れ が 国 と し て まとまらなければならないという意識を生んでいる」 こちらが持ち続けた疑問に、ようやく一つの答えが返ってき た瞬間であった。他国からの侵略などが現実的ではなくても、 他 国 か ら の 侵 略 を 強 調 す る 幼 少 時 か ら の 教 育 や、 他 国 が 中 国 に 対 抗 心 を 抱 い て い る と い う 日 々 の 報 道 が、 そ う い っ た 潜 在 的 意 識 を 彼 ら に 植 え 付 け て い る。 政 治 的・ 経 済 的 権 力 の 伸 長 著 し い 中 国 が 強 国 た る 姿 勢 を と ら な い の は、 戦 略 的 意 図 が あ るだけでなく、こうした恐怖心が背景にあるのかもしれない。 感 情 の 背 景 を 掘 り 下 げ る と い う 作 業 に よ っ て、 日 本 人 と は 異 な る 中 国 人 の 側 面 を 直 接 体 感 す る こ と が で き た の で あ り、 こ の部分は全体の議論の中でも非常に印象深いものであった。 2.3 顕在化した日本の薄い存在感 ここまで愛国心の違いを議論してきが、両国の愛国心が明確 に 衝 突 し た の が、 尖 閣 諸 島 問 題 で あ る。 予 想 通 り、 こ の 問 題 に議題を移すと議論は白熱した。 島を失ったとしたら「どちらかと言えば嫌である」とのコン セ ン サ ス は す ぐ に と ら れ た。 京 論 壇 メ ン バ ー 内 で と ら れ た ア ン ケ ー ト で も、 そ の 答 え が 圧 倒 的 多 数 で あ る こ と を 考 え る と それは当然だろう。そして国の権威が失われてしまうことが、 自 分 と は 直 接 関 係 な く と も な ん と な く 嫌 だ と い う 意 見 も 共 通 していた。しかし、その理由を尋ねると意外な発見ができた。 東大側には、島を失いたくないという気持ちの裏に「中国に 負 け た く な い 」 と の 思 い が み ら れ た。 一 方、 北 京 大 側 は「 日 本 に そ の よ う な 特 別 な 対 抗 心 は な い 」 と 全 員 が き っ ぱ り と 否はじめに
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定 し た の で あ る。 日 中 は こ れ ま で 何 度 も 対 立 を 繰 り 返 し て き ており、東大側は自分たちにとって中国がそうであるように、 中 国 に と っ て も ま た 日 本 は あ る 意 味 特 別 な 存 在 で あ る と 予 想 していた。しかし実際は、「日本は米国やフランス、ロシアと 完 全 に 同 等 の く く り で 見 ら れ て お り、 そ こ に 特 別 な 感 情 は な い 」 と の こ と だ っ た。 質 問、 反 論 を 繰 り 返 し て も 北 京 側 の 意 見 は 覆 ら ず、 む し ろ 日 本 が 中 国 に そ う し た 意 識 を 持 つ こ と が 疑 問 で あ る よ う だ っ た。 お そ ら く こ れ も 日 本 へ の 敵 対 心 が 薄 れ て き て い る こ と の 現 れ で あ り、 そ れ 自 体 は 良 い こ と な の だ ろ う が、 こ の と き、 東 大 生 は 驚 く と と も に 微 妙 な む な し さ を 感 じ た。 こ こ に、 近 年 存 在 感 が 高 ま り 他 国 か ら 強 烈 に 意 識 さ れ る よ う に な っ た 中 国 と、 存 在 感 が 低 下 の 一 途 を た ど る 日 本 との大きな差が現れたように感じたのである。 3. 製品の与えるイメージ 次 に 両 国 の 製 品 に 対 す る 議 論 前 の イ メ ー ジ で あ る が、 双 方 の 学 生 で、 日 本 の 製 品 は 米 国 や ド イ ツ ほ ど で は な い に せ よ ク オ リ テ ィ が 高 く、 安 全 な だ け で な く カ ス タ マ ー サ ー ビ ス も 充 実しているのに対し、中国製品は低価格でクオリティが低く、 食 品 を 中 心 に 安 全 面 で 不 安 が あ る と い う イ メ ー ジ が あ げ ら れ た。 こ れ は 単 な る ブ ラ ン ド 力 だ け で な く、 日 々 製 品 を 使 う 中 で実感することだった。 こ の よ う に 北 京 大 生 の 日 本 の 製 品 へ の イ メ ー ジ は 概 し て 良 く、 東 大 生 の 中 国 製 品 へ の イ メ ー ジ は あ ま り 良 い も の で は な い。 こ れ は 完 全 に 予 想 の 範 疇 で あ り、 両 国 の イ メ ー ジ に は 一 見 新 し い 発 見 が な い ま ま 話 が 進 ん で い く よ う に 思 わ れ た が、 意 外 な 視 点 か ら 自 分 た ち 東 大 側 は 自 身 の イ メ ー ジ の 根 源 と そ の脆さを垣間見ることになる。はじめに
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3.1 自分の価値観のバイアスへの気づき 議論のなかで、自分が 2008 年の毒ギョーザ事件が中国の国 と し て の イ メ ー ジ を か な り 悪 く し た 話 を す る と、 面 白 い 指 摘 が東大生から飛んできた。「BSE 問題では米国のイメージが大 幅 に 下 が る こ と は な か っ た で は な い か 」 と い う の で あ る。 さ ら に は「 中 国 で は、 ト ヨ タ の リ コ ー ル 問 題 も、 毒 ギ ョ ー ザ ほ ど 日 本 の イ メ ー ジ を 悪 く し て い な い 」 と い う 指 摘 を さ れ た。 そ の 理 由 を 考 え る う ち に 一 つ の 仮 説 が 生 ま れ る こ と に な る。 「既存のイメージが影響を左右している」というものである。 確かにもともと悪いイメージを持っている場合、毒ギョーザ 事 件 の よ う な 問 題 が 発 生 す る と、 人 々 は「 そ れ み ろ 」 と 自 分 の 既 存 の イ メ ー ジ を 疑 う こ と な く、 一 面 的 に 強 固 に す る の に 対 し、 既 存 の イ メ ー ジ と 反 対 の 事 件 が 起 き た 場 合、 そ れ を 疑 い な し で は 受 け 入 れ な い。 こ の 仮 説 は 納 得 が い く も の で あ っ たし、心理学的裏付けもあった。 「 そ れ で は そ も そ も 何 が 中 国 の 製 品 の 悪 い イ メ ー ジ を 作 り 出 していたのか?」 という質問になると、東大側は説得力のある話ができず言葉 に 詰 ま っ た。 結 局、 ① 中 国 は 途 上 国 で あ る こ と、 ② 中 国 人 は 客 の 安 全 を 気 に か け な い と い う イ メ ー ジ が あ る こ と、 が お そ ら く の 理 由 で は あ る と 考 え た が、 見 て の 通 り こ れ ら は 根 拠 の 薄 い も の で あ り、 こ の 曖 昧 な 理 由 が そ も そ も の 中 国 製 品 へ の 悪 い イ メ ー ジ の 根 源 か も し れ な い こ と は、 自 分 た ち 東 大 側 に とってショックでもあった。 こ れ ほ ど に 曖 昧 な イ メ ー ジ が 毒 ギ ョ ー ザ 事 件、 そ れ に 関 す る報道のあり方などにより大きな影響を持つようになる一方、 逆 に 米 国 製 品 に は 先 進 国 で あ る と い う「 漠 然 と し た 」 良 い イ メージがあり、結果 BSE 問題が生じても影響は比較的小さかっ た の で あ れ ば、 自 分 の イ メ ー ジ は バ イ ア ス の か か っ た も の だ と 結 論 付 け ざ る を 得 な い。 事 実、 自 分 の 周 り で 中 国 製 品 に よはじめに
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り 危 害 が 生 じ た と い う 話 が な い こ と が そ れ を 示 し て い る。 自 分 が あ た か も 常 に 合 理 的 判 断 を 下 せ て い る と い う 根 拠 の な い 自 信 は、 も ろ く も 崩 れ た の で あ る。 し か し、 こ れ は 北 京 大 生 と の 議 論 だ っ た か ら こ そ で き た 大 き な 発 見 だ っ た。 今 持 つ イ メ ー ジ か ら、 そ れ を 形 成 し た 一 つ 一 つ の 出 来 事 に よ る 影 響 を 丁 寧 に 切 り 離 す こ と で、 イ メ ー ジ の 根 源 に 近 づ く こ と が で き たのである。 4.ポップカルチャー 政治面での日本のプレゼンスの低さはすでに述べた通りであ り、経済面でも日本の存在感は中国によってかすみつつある。 そ れ で は 文 化 面 で は 日 中 間 に ど う い う イ メ ー ジ の 差 異 が あ る のだろうか。 日本に好感を持つ中国人は、若者を中心に意外と多い。北京 大 生 に と っ て 日 本 を 特 別 た ら し め た の は、 ア ニ メ・ 漫 画 を 中 心 と す る ポ ッ プ カ ル チ ャ ー で あ り、 東 大 側 メ ン バ ー が 中 国 の 文 化 に 強 い イ メ ー ジ を 持 っ て い な い こ と も あ り、 こ の ト ピ ッ ク で は 主 に、 な ぜ 日 本 の ポ ッ プ カ ル チ ャ ー が 魅 力 的 で あ り、 そ れ が 国 の イ メ ー ジ に ど う 影 響 を 与 え て い る か に つ い て 議 論 が交わされた。 そもそも日本のアニメや漫画が北京大生にとってなぜ魅力的 な の か と い う と、 ま ず 人 の 心 理 描 写 が 非 常 に う ま い の だ と い う。たしかに日本のアニメや漫画は、人の葛藤の描写が多く、 そ れ が 米 国 な ど 他 国 の ア ニ メ・ 漫 画 に 見 ら れ な い こ と に は 納 得 が い っ た。 そ の 他 に も ス ト ー リ ー が 多 様 で 面 白 い こ と、 ま た絵が精巧なことがあげられた。 次にアニメや漫画を通じてどうして日本が好きになるのか聞 くと、①こうした文化を持つ国として好意を持つ、②日本人、 日 本 文 化、 日 本 社 会 の 良 さ を 垣 間 見 る こ と が で き る、 ③ 日 本 に 興 味 を 持 つ こ と が で き、 し か も ア ニ メ や 漫 画 は と て も と っはじめに
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つ き や す い、 と い う 3 点 が 挙 げ ら れ た。 例 え ば ア ニ メ や 漫 画 で 描 か れ る 友 情 や 主 人 公 の 苦 悩 と 成 長 は 日 本 人 に と っ て は あ り き た り の も の に 思 え る が、 他 国 か ら す れ ば ア ニ メ と い う 分 野 に お い て は 非 常 に 新 鮮 で 魅 力 的 に 映 る よ う で あ る。 教 育 を 通 じ て 日 本 に 対 し 悪 い イ メ ー ジ を 持 つ よ う に な る 前 の 子 供 に も親しまれやすいというのも、一つの要因と言えそうだ。 とはいえアニメがそこまで日本の良いイメージに寄与してい る の か、 と 疑 問 に 思 う 人 は 多 い し、 自 分 も そ う い っ た 疑 問 を 北京大生にぶつけた。しかし彼らのの意見は変わらなかった。 「アニメ・漫画なしでは日本を好きにならなかったかもしれな い 」 と い う 北 京 大 生 も い た く ら い で あ る。 む し ろ 日 本 人 が 自 分 た ち ほ ど ア ニ メ を 評 価 し て い な い こ と を、 意 外 に 感 じ た よ うだ。日本にしかないものといえば「経済力」、「伝統的文化」 で は な く「 ア ニ メ 」 と い う の も 複 雑 な 心 境 で は あ る が、 東 大 側はその価値を大きく再認識した。 5. まとめにかえて 一通りの議論を通じて、自分たち東大側が思っていた以上に ・中国は日本に特別な対抗心をもっていない ・製品、文化を通じて日本に好感を持つ中国人はとても多い ・中国の若者で日本に反感を持つ人は予想していた以上に少 ない という点で中国のイメージは変わったし、製品の章で述べた よ う に、 自 分 た ち の 中 国 へ の 悪 い イ メ ー ジ に は バ イ ア ス を 含 む も の も 多 か っ た。 し か し そ れ が 自 分 た ち の 中 国 へ の イ メ ー ジ を 根 本 的 に よ く し た か と い う と、 そ う で は な い と 言 わ ざ る を 得 な い し、 具 体 的 な 解 決 の ヴ ィ ジ ョ ン が う か ん だ わ け で は な い。 む し ろ 感 じ た の は 両 国 間 の 小 さ い に せ よ は っ き り と 存 在 す る「 違 い 」 で あ っ た。 ど れ だ け 北 京 大 の 主 張 に 違 和 感 を 抱 い て も、 ど れ だ け そ れ を 指 摘 し よ う と も、 彼 ら も 譲 ら な いはじめに
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と こ ろ は 譲 ら な い し、 よ り 上 の 世 代 で あ れ ば な お さ ら 自 分 た ち は「 わ か り あ え な い 」 だ ろ う。 で は こ れ か ら 日 中 で は ど の ような関係を築いていけばいいのだろうか。議 論 の 間、「I can t understand your idea, but I can accept that」という発言がみられた。しかも東大・北京大両 サ イ ド か ら 幾 度 に わ た っ て で あ る。 自 分 は こ の 発 言 の 中 に こ そ、日中間の関係の指針がつまっていると思う。 た し か に 自 分 た ち は 互 い に 共 感 し え な い 部 分 は 多 い し、 完 全 に は わ か り あ う こ と は で き な い。 し か し こ れ だ け 長 時 間 に わたる議論を終えたとき、これだけ本音をぶつけあったとき、 共感はできなくとも間違いなく、「尊重し合う」姿勢は生まれ た し、 こ の 姿 勢 が あ れ ば 多 少 の 溝 が あ っ て も 未 来 は よ り よ い ものにできると参加者全員が感じていた。 「 そ も そ も 両 国 の 信 頼 関 係 っ て 必 要 な の?」 東 京 セ ッ シ ョ ン 終 了 後、 東 大 側 の 参 加 者 が こ ん な こ と を 言 っ て い た。 も ち ろ んその時自分が驚いたのは言うまでもない。 だ が 少 し 考 え て み る と、 そ れ は ま っ た く お か し な 話 で は な い。 こ れ だ け「 違 う 」 日 本 と 中 国 が 親 友 の よ う に 方 を 並 べ る のは難しいし、そんな信頼関係はそもそも誰も求めていない。 おそらく自分たちが求める両国の信頼関係とは、「互いに競争 関 係 で あ り な が ら、 問 題 が 生 じ た と き に オ ー プ ン な 姿 勢 で 話 し あ う 」 そ う い っ た も の だ ろ う。 そ う い っ た 相 手 を 尊 重 す る 姿勢があれば、理不尽な問題が発生することはないだろうし、 む し ろ「 違 う 」 両 国 だ か ら こ そ 刺 激 し あ え る だ ろ う し、 時 に は 協 力 も で き る は ず だ。 こ う い っ た 未 来 の「 指 針 」 を 両 国 が 共 有 す れ ば、 間 違 い な く 両 国 は 良 い 競 争 関 係 で あ り 続 け る だ ろう。