国際社会と法(2010)期末試験
第1問 【マークシート方式】 以下の問
1~問 5 のイ~ホは、日本に関係がある国際法の諸問題に関す
る記述であるが、それぞれ1つ以上の間違いが含まれている。間違いの数(1つ~5つ)をマークしな
さい。(イ~ホのどれが間違っているかを問うているわけではありません)(5点×5問=25点)
※第 1・2 問は正答率に著しい違いがありますので、良く出来た問題の配点を加算する「傾斜配点」としました。傾斜 配点によりほとんどの方の点数がアップしましたが、不利になる一部の方には、不利にならないような配慮をしました。問1
2003~2004 年のイラク戦争に関して
×イ アメリカとイギリスは、イラクへの武力行使に法的根拠がなかったことを公式に認め謝罪している。
○ロ 当時の日本政府は、アメリカ等のイラクへの武力行使が合法であることを認め支持した。
○ハ アナン国連事務総長(当時)は、イラク戦争が違法であったことを後日確認している。
×ニ 日本政府は、自衛隊のイラク派遣は国連憲章 51 条の集団的自衛権に基づくものだと主張している。
○ホ イギリスは、開戦当時、イラクへの武力行使は安全保障理事会の議決に根拠があると主張していた。
[正解:間違いは2つ][正答率:48%、44%(国際社会と法1、2の順。以下同じ)] [解説] 種々の批判が出ていますが、アメリカ政府もイギリス政府もイラク戦争が違法であったと認めているわ けではありません。日本の小泉首相(当時)は、アメリカ等の武力行使が合法であることを何の法的根拠も挙げず に認めました。アナン国連事務総長による評価については「講義レジュメ(第2 回資料)」参照して下さい。日本 政府は、イラクが戦闘地域ではないため自衛隊の派遣は憲法に反しないと述べておりました。そもそも、日本の政 府見解では集団的自衛権は憲法上行使できないとされています。イギリスの主張については「講義レジュメ(第2 回)」参照のこと。何よりも「イラク戦争は日本の問題」ということを見落としてはいけません!
問2 竹島・尖閣諸島の領有権に関して
×イ 竹島に対する韓国政府の領有権の主張は 1970 年代に突然始まった。
○ロ 日本政府は、竹島領有の根拠は 17 世紀(1600 年代)にまで遡る実行にあると主張している。
×ハ 現在では、竹島と尖閣諸島のいずれについても、日本が実効支配している。
○ニ 「中華民国」(台湾)も尖閣諸島について領有権を主張している。
○ホ 尖閣諸島の日本への編入措置は、清が下関条約により台湾を日本に割譲するよりも先にとられた。
[正解:間違いは2つ][正答率:42%、46%] [解説]韓国政府による竹島についての明確な領有権の主張は、遅くとも1951 年のサンフランシスコ平和条約締 結過程には始まっている。韓国は領有権の根拠として12 世紀以来の歴史的文書に記録があることを挙げているの に対して、日本政府の挙げる根拠は17 世紀以来の幕府の認可に基づく日本人による竹島の「利用」により同島が 日本の固有の領土となったということ、および1905 年の日本による編入措置にあります。現在、尖閣諸島は日本 が実効支配していると言えますがが、竹島については韓国が実効支配しています。台湾の中華民国は公式には「中 国全土(含、大陸)」を代表するというものですから、当然に尖閣諸島も中国の一部と主張しています。尖閣諸島 は、下関条約により日本が台湾を割譲されるよりも先に日本に編入措置がとられたため、割譲された台湾の一部で あるという主張は妥当性が乏しいと思われます。問3
1905 年の日韓保護条約に関して
○イ 1905 年の同条約締結以前に韓国には日本軍が派遣され・駐留するようになっていた。
×ロ 韓国は、同条約は 1905 年の締結当時に無効だったわけではないが、その後の国際法の発展により
無効化されたと主張している。
×ハ 1905 年当時の国際法では、条約締結権者個人に対する身体的脅迫であれ、国家全体に対する強迫
であれ、強制による条約は無効であると考えられていた。
×ニ 1965 年の日韓基本条約において、日本政府は 1905 年条約が締結当時から無効な条約であったこと
を公式に認めた。
○ホ 今日の国際法では、武力による威嚇によって締結された条約は無効であると考えられる。
[正解:間違いは3つ][正答率:66%、62%] [解説]1905 年の日韓保護条約の有効性に関しては、条約締結過程において、韓国という国家そのものに対する 強制と韓国皇帝・大臣たちへの強迫のどちらがあったのかが問題となります。当時の国際法では前者は条約の有効 性に影響を及ぼしませんが、後者であれば条約の無効原因となりました。韓国には1882 年から日本公使館警備兵 などが駐留するようになり、1894 年の日清戦争、1904 年の日露戦争などで日本軍が大規模に派遣されていました。 そのような経緯から、また、締結当時の日本代表の言動から、少なくとも締結当時に「韓国という国家に対する軍 事的強制」はあったと考えるべきでしょう。争いがあるのは締結にあたって皇帝らへの個人的な強迫が行われたか どうかです。韓国は個人的な強迫の存在を理由に「日韓保護条約は締結当初から無効だった」と考えていますが、 日本政府は、少なくとも個人的強迫はなかったので「締結当時は有効だった」と考えていました(います)。この 対立が原因で戦後の関係正常化が遅れ、日韓基本条約は妥協として、2 条において、当時の条約が「もはや無効」 であるという「どちらともとれる」表現を置くことになりました(日本政府は正式に「当初より無効」と認めたわ けではない)。今日では、いずれにせよ武力による威嚇によって締結された条約は無効だと考えられます(条約法 条約52 条)。問4 国際司法裁判所(ICJ)における「南極海捕鯨事件」について
×イ この事件は、シー・シェパード(SS)による日本捕鯨船に対する危険行為が国連海洋法条約
(UNCLOS)に違反するとして、日本がオーストラリアを訴えた事件である。
×ロ この事件は、日本の行っている「捕鯨」の合法性について国際捕鯨委員会(IWC)が ICJ に勧告的
意見を求めたという事件である。
×ハ この事件は、日本とオーストラリアが付託協定の締結により ICJ に付託した事件である。
×ニ この事件で、オーストラリアは、日本が近年正式に再開した「商業捕鯨」が国際法に反することを
主張している。
×ホ この事件は、日本鯨類研究所と SS が訴訟当事者として争っている事件である。
[正解:間違いは5つ][正答率:10%、12%] [解説]まさか全部間違っているとは思われなかったのでしょうか。極端に正解率が低かったです。だからといっ て、問題が難しいわけではありません。事実経過をお話しした通り、本件は ICJ の争訟事件(国家間紛争)とし てオーストラリアが日本を一方的に訴えた事例です(勧告的意見手続とは違います)。管轄権の根拠は選択条項受 諾宣言(ICJ 規程 36 条 2 項参照)であり、アドホックな「付託協定」は締結されていません。日本政府は国際捕 鯨取締条約で禁止された「商業捕鯨」を再開することを認めてはおりませんが大規模な調査捕鯨(これは条約上許 されている)を行っています。この「調査捕鯨」が実は隠れた「商業捕鯨」だというのがオーストラリアの主張で す(裁判の焦点です)。なお、ニュースなどでよくとりあげられるシー・シェパードによる妨害については、日本 政府により国際海洋法裁判所に訴えることが検討されたことはありますが、今回の訴訟とは関係がありません。当 然ですが、ICJ では国家以外の私人(団体)は当事者とはなれません
。問5 日中大陸棚境界画定問題に関連して
○イ 中国は、「陸地の自然の延長」に沿って広範な大陸棚が中国に配分されると主張している。
○ロ UNCLOS は、向かい合う国の間の大陸棚の境界画定について、明確な基準を定めていない。
×ハ 最近の判例の傾向では、日本が主張するような等距離中間線がそのまま最終的境界線とされている。
○ニ 最近の判例の傾向では、「陸地の自然の延長」であるという地質学上の事情は重視されていない。
○ホ 中国の主張は、少なくとも排他的経済水域の境界画定についてはあてはまらない。
[正解:間違いは1つ][正答率:69%、63%] [解説]中国の「沖縄トラフまで」が自国の大陸棚だという主張は、そこまでが中国大陸の自然な延長であるという認識によります。しかし排他的経済水域EEZ(海底も含まれる)の範囲については、200 海里までという距離 基準しかありません。大陸棚についても 200 海里までは機械的に沿岸国の主権的権利の下に置かれます。よって 少なくとも 200 海里までは、中国が言う自然延長論・海底地質学上の事情は今日では考慮されません(なお、東 シナ海の日中間の距離は400 海里に満たず、日本と中国からそれぞれ 200 海里はかると重複してしまいます。)。 少なくともEEZ の境界画定については中国の主張は妥当しません。そうなると、EEZ の境界と大陸棚の境界が「別 の境界線」となる可能性が出てきます。EEZ の海底部分と大陸棚という二つの制度が重なり合う同一区域につい て、境界線がそれぞれの制度について異なっている(同じ海底が「EEZ としては日本、大陸棚としては中国の主 権的権利の下に置かれる」?)という不自然さについて、中国にはさらなる説明が求められます。UNCLOS は 74 条・83 条で大陸棚・EEZ の境界画定について言及していますが「衡平な解決」が得られるように「合意により」 解決するようにと、曖昧に規定しているだけです。判例の動向をみると、等距離中間線が「衡平」な境界線の基礎 とされており、自然延長論は否定されています。ただし日本が主張するような中間線が自動的に最終的境界線とさ れているわけではなく、あくまでも境界画定の「基礎」に過ぎず、種々の要素を考慮して修正したうえで、境界線 とされています。
第2問 【マークシート方式】 以下の問
6~問 13 の①~⑤の文章には、それぞれ「明らかに間違い」
と言えるものが1つずつ含まれている。「明らかに間違っている」記述の番号をマークしなさい。(5点
×8問=40点)
問6
① 復仇とは本来違法な行為によって相手国の先行する違法行為に対抗する措置をいう。
② 国家は他国の意思に従属しない国際法上の権利を有する。
③ 国際公益のために締結される条約は非締約国をも法的に拘束する。
④ ICJ は、国際紛争平和的解決義務は国際慣習法の原則となったと認めている。
⑤ 今日の国際法では自衛のための武力行使は禁止されていない。
[正解:3が間違い][正答率:90%、90%] [解説]国際法の一般的性質に関する設問。国際法は「合意法規範」であり、何らかの形で国家の同意がなければ 当該国家を拘束することはできません。国家には主権(=他国の意思に従属しない権利)があるからです。したが って、明示的合意たる「条約」という形態をとる限り、その拘束力の範囲は締約国にとどまります。その条約(多 数国間条約)という形式の合意によって国際社会の共通の利益を達成しようとする場合、どうしても非締約国を拘 束できないということが制度上のネックとなっています。問7
① 先占は今日では無効な領域権原である。
② 人が住んでいる土地も無主地として先占されることがあった。
③ 先占の確立のためには発見・命名などの象徴的行為のみでは十分ではない。
④ 先占の確立のためには他国の承認は必要とされない。
⑤ オーストラリアは無主地として英国に先占された。
[正解:1が間違い][正答率:89%、83%] [解説]先占は「人が住んでいても」一定の土地を「無主地」とみなして領土とする方法で、欧米列強の植民地獲 得を支えた制度ですから、国際法が抱える「負の遺産」であることは間違いないでしょう。今日的な視線からの批 判はあり得ます。例えばオーストラリアは、先住民アボリジニを無視してイギリス領とされたわけですが、本当に 無主地であったのか、先住民の権利の主張が高まるにつれて見直しが進められています。しかし、時際法の論理も あり、今日でも領域権原としては無効とされていませんので①は完全に間違いです。ただし今日、地球上に、どこ の国にも属さない「無主地」は残っていません。また、どのような国家も対等だとみなされており、非文明的な「ク ニ」であってもこれを無視して当該地域を「無主地」扱いすることは出来ません。よって現実的に、これから新た に先占を行うというのは非現実的ではあります。問8
①
ICJ は国連総会決議の存在を国際慣習法成立の根拠の 1 つとして認定したことがある。
② 全会一致で採択された国連総会の決議は国連加盟国に対して法的拘束力を持つ。
③ 国際慣習法は全ての国家を拘束しうる。
④ 国際慣習法の成立には国家実行とともに法的信念(確信)が必要である。
⑤ 国際慣習法の法典化は国際連合の主要な任務の
1 つと考えられている。
[正解:2が間違い][正答率:67%、68%] [解説]これは国際慣習法について基本的な知識があれば正答できる問題です。③を選んだ人も多いようですが、 特別法たる条約とちがって、国際慣習法は「国際社会の一般的な合意」として一般法とみなされています=すべて の国家を拘束することができるわけです。確かに「一貫した反対国」などが例外的に慣習法の拘束を受けないこと があったり、条約により特定国の間で慣習法の適用を排除すること(「特別法は一般法を破る」)があったりはしま すが、原則として「すべての国家を拘束することが『できる』」のです(教科書等を参照してください)。 国連総会決議の存在そのもの(そのような国際社会の一般的な意思の表明として)、または個別国家の投票行動 は、国際慣習法の成立要件たる「国家実行」ないし「法的信念の表明」とみなされる可能性はあります。このこと はニカラグア事件において ICJ が承認していますが、その立証の際は「慎重な判断が必要」とも強調されていま す。国連憲章10 条・11 条にあるように、総会決議そのものは「勧告」としての効果しか持ちません。全会一致で 採択されたとすれば、慣習法が存在することの証拠としてそれなりの重みはありますが、法的拘束力とは直接には 関係しません。問9
① 条約の一方的終了が認められる原因は条約法条約に限定列挙されている。
② 日本国憲法の下では、国民の権利を制限する内容の条約は国会承認が必要である。
③ 多数国間条約の中には、留保を付すことを一切認めないものがある。
④ 現在の日本では、すべての条約が国会承認の対象とされている。
⑤ 今日では条約の批准が省略されることもある。
[正解:4が間違い][正答率:82%、81%] [解説]国際社会の相互依存が高まるにしたがって、国際法(条約)が取り扱うべき問題が増え、締結される条約 の数が激増しましたので、条約締結手続の簡略化が必要とされ、今日では批准を必要としない条約(行政協定)な どが多数存在します。しかし、それと同時に条約が国民の権利や生活に大きな影響を及ぼすことも増え、条約締結 手続(かつては国王や政府の専権事項とされた)への民主的コントロールが必要です。日本国憲法では、憲法 73 条3 号において条約「締結=批准」権を内閣に与えつつ、国会による承認を必要だと規定しています。しかし、す べての条約を国会承認の対象とするのは非現実的であると考えられ、現実には、国民の権利を制限する内容(立法 事項)を含む条約、国費の支出を伴う(財政条項)条約は、それぞれ憲法41 条、85 条の観点から国会承認が必要 であるとされ、また政治的に重要な条約についても民主的コントロールの観点から国会承認が必要だと考えられて いますが(大平三原則)、それ以外の(大多数の)条約は国会承認の対象とされていません。 ③を選択した方も多かったです。今日では、多数国間条約の「普遍性」確保のため、一部の規定を留保して加入 することが認められることが多いですが、条約の中には一切の留保を認めないものもあります。例えば、国連海洋 法条約UNCLOS は、政治的な対立の激しいテーマを扱い、全体としてパッケージで合意された条約で、個々の国 家が留保を付け始めると際限がなくなりますので、留保が禁止されました。問
10
① 朝鮮民主主義人民共和国は国連加盟国であるが、日本は国家承認を与えていない。
② 国連安保理は、国際法に反する方法で成立した国家を承認してはならないと決議したことがある。
③ 人民自決権の確立により、伝統的な国家承認の性格付けに疑問が呈されるようになった。
④ ある集団が独立を宣言すれば、自決権を尊重するため、他国はこれを承認する義務がある。
⑤ 伝統的国際法の下では、国家承認が「国際社会」への受けいれの承認として機能していた。
[正解:4が間違い][正答率:88%、90%] [解説]国家承認は、かつては文明国が「非文明国」を国際社会という「会員制クラブ」に迎え入れるような意味 を持っていました。しかし人民の自決権を重視するならば、既存の国家が新国家を形成しようという人民の意思を 否定することは妥当ではないと考えられるようになりました。そうは言っても、国家承認は今日でも承認する側の 「一方的・裁量行為」と考えられており、一定の条件を満たす新国家を承認する義務はありません。例えば日本が 国連加盟国たる北朝鮮を承認していないように、国連加盟国として認められていても国家承認を拒否し続けること は可能です。そのような「不承認」政策は、違法な方法で成立した国家を法的に否定する手段としても、国連など の集団的決定によりとられることがあります。その意味で、日本の北朝鮮不承認は日本の政治的裁量として許され る行為ですが、何らかの「意味」(北朝鮮に対する批判的な意思の表示)を持つと捉えられている点には注意が必 要です(核問題などで「制裁」には賛成しつつ、国家承認はしているという国が西側先進国にも増えているので)。問
11
① 公海上の船舶に対しては、当該船舶国籍国以外の国が管轄権を及ぼすことは原則としてできない。
②
UNCLOS では、同条約が列挙した以外の理由でも公海海上警察権が行使できると考えられる。
③ 国際法上すべての国が海賊を拘束し訴追する権利を持つと考えられている。
④ いずれかの国の領海内で略奪行為に従事している場合には
UNCLOS 上の海賊とみなされない。
⑤
UNCLOS では、安全保障上の理由で公海上の外国船舶を臨検することは認められていない。
[正解:2 が間違い][正答率:46%、37%] [解説]大事な問題なのに正答率が低かったので、去年と同じ問題を(微調整して)出題してみましたが、今年も 正答率が低迷しました(昨年よりはマシでしたが)。去年のコメントをそのまま掲載します。 「公海自由の原則により、基本的に公海上の船舶は旗国以外の統制を受けることはありません。その例外として海 賊が考えられてきました。…海賊以外にも公海上における他国船舶の取り締まりは可能ですが、UNCLOS110 条 によれば、同条約はその理由を『限定的に』列挙しており、列挙された以外の理由での取り締まりは、たとえ安全 保障上の理由での取り締まりといえども許されていません。…アメリカでも『大量破壊兵器をテロリスト集団に売 却しようとしている不審船』を捕まえようにも、法律的にどうすることもできず困っているのです。日本[も]… 某国船舶が公海上で日本の工作員に電波を発しているような状況でも、UNCLOS の下では手を出すことはできま せん。UNCLOS に根拠のない取り締まりを行うと『戦争行為』とみなされることすらあります。つまり、それぐ
らい旗国主義・公海自由の原則は絶対なのだ
ということを良く覚えておいてください。」問
12
①
ICJ の判例では、暫定措置(仮保全措置)命令は法的拘束力を持つとされる。
②
ICJ が管轄権を有するかどうかを決定する権限は ICJ 自身にある。
③
ICJ が管轄権を有するのは当該事件に関する当事者間の付託合意が締結された場合のみである。
④
ICJ の判決は法的拘束力を有する。
⑤
ICJ の判決が履行されない場合、安保理は強制措置をとることができる。
[正解:3 が間違い][正答率:38%、34%] [解説]この問題も正答率が低かったです。特に紛らわしかったのが②のようです。確かにICJ において管轄権 の根拠は紛争当事国の同意にあるというのが原則ですから、紛争当事国は一方的に提訴された場合に「先決的抗弁」 を提起して管轄権の有無を争うことが出来ます。また多くの事例で、「管轄権の不存在」を被告国が一方的に主張 し、裁判手続に全く応じないこと(欠席戦術)もあります。しかし、ICJ 規程 36 条 6 項によれば、管轄権の有無 に争いがある場合は裁判所の判決によってこれを決定すると規定されています(条約集持ち込み可だったのに…)。「同意(合意)原則」が管轄権の根拠ですが、講義で説明したとおり、合意の存在形態は、事件ごとのアドホック な合意(付託合意)には限られません。「裁判条約」、「裁判条項」、「選択条項受諾宣言制度(規程36 条 2 項)」に よる事前の一般的合意などもあり得ることをよく思い出していただきたいと思います。その他①④⑤の選択肢もか なり選んだ人があり答えにバラつきがでました。規程59 条によれば ICJ の判決には法的拘束力があります(あく までも裁判手続ですから)。そのような法的拘束力ある決定によって紛争を解決する機能を十分に果たすためには、 裁判終結までの間裁判主題となっている当事者の権利を保全するための「暫定措置」(仮保全措置)命令もまた、 法的拘束力がなければならないというのが、ICJ の立場(ラグラン事件)で、今日の通説です。判決に拘束力はあ っても、守らない国はあります。そのような場合を想定して(ICJ 規程と表裏一体をなす)国連憲章は、94 条 2 項において、安保理を利用した履行確保の制度を置いています。