中国の対東南アジア戦略 早稲田大学法学部 古田潤
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中国の長期的国家戦略
「世界秩序を律するルール・メーカーとして国際舞台に登壇する」
「覇権主義、すなわち圧倒的軍事力を保有するアメリカへの抵抗」
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習近平 総書記
中華民族の偉大な復興は中国の夢であり、その夢の実現には、国家の富強が欠かせない。
強固な国防と強大な軍隊なしには、中国の夢は実現は保障できないと述べている。
この「偉大な復興」のために南シナ海掌握と東南アジアは極めて重要なポイントとなる。
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王立東 国防大学出版社副社長
「国際反華勢力は強大な中国の崛起を見ることを望まず、ある国家 は一極世界と覇権的
1戦略を建立するという要求から、中国のいっそうの力強い発展の勢いを極力抑制するに違
いない。それゆえ中国は必ず総合国力向上に努め、半華勢力の中国の 西洋化 、 分裂化
という画策を粉砕し、覇権主義の中国に対する海上封鎖を打破し、世界各国との政治、経
済そして安全協力を強化して、アジア太平洋と世界の多極化という発展を推進しなければ
ならない」
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「南シナ海は中国の核心的利益 」
3 1.東南アジア・南シナ海の重要性 ①6億人を抱え、拡大を続けるASEANマーケット 4 ・中国-ASEAN間貿易2003年783億ドル→2013年4435億ドル ・ガス田 5!
②インド洋、太平洋の海上輸送ルート、マラッカ海峡などのチョークポイントの安全確保 ・マラッカ海峡を通過する船舶の60%が中国船 ・輸入石油の70%が通過 ・米国がシンガポールのチャンギー基地駐屯権を取得済み!
③複雑で、平均水深は千二百十二メートル、潜水艦の理想的な活動地域である海底地形 ある国家(有的国家)は米国をさしている。 1 「中国の海洋進出」海洋政策研究財団 2013年 成山堂書店 2 2010年米中・戦略経済対話の席上で、クリントン米国務長官に対して、戴秉国中国国務委員が「南シナ海は中国の核 3 心的利益」と述べた。 中川忠洋「中間層を核に拡大するASEAN消費市場」みずほリサーチ2011 みずほ総合研究所 4 中国商務部国際貿易経済合作研究院「中国の対ASEANアプローチ」2013年 みずほ総合研究所 5・海南島南部に亜竜湾原子力潜水艦基地が建設中。原潜用桟橋が三カ所建設され、南シナ海艦隊 が大規模になることが予想される 。 6
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2.中国の東南アジアにおける政戦略の基本
①東南アジア諸国が結束し、米国、日本など域外の大国を引き込んで、南シナ海での領土問題を 国際問題にすることを抑止すること。!
・ASEAN 諸国が「大国間のバランス戦略」をとり、米国の圧力を利用して中国の域内での台頭を 押さえ込もうとして、米軍に南シナ海での軍事的浸透の機会を与えるのを警戒している。他方、 フィリピン、ベトナムは、南シナ海での領有権争いの問題では多国間の協調行動を採ろうとしてお り、米国や日本などの域外勢力を南シナ海の問題に引き込もうとしており、南シナ海の安全問題 に悪影響を与えていると考えている 。 7 南沙諸島の主権争いについて、中国は当事国とだけ交渉することを主張し、多国間交渉を行おう としない 。 8!
②各国ごと個別に、中国の軍事的優位と経済的依存関係を利用して圧力を加え、時には軍事力も 行使し、領土の占有という既成事実または中国の領土主権を認めさせること。各国の対中姿勢に 応じて対応する(模式図 )。 9!
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中国人民解放軍軍事科学院戦争理論和戦略研究部 張世平少将 『中国海権』 【中国の海洋戦略の根底には、グローバル化の時代にあって、世界規模に拡大した中国経済を支え るためには、外洋海軍の整備がますます重要になっているとの認識がある。中でも南シナ海は、 田中三郎「人民解放軍海軍潜水艦部隊の脅威」軍事研究4月号 2013年4月 6 矢野善明「東南アジアと中国の軍事的関連」 2014年 7 曹雲 華 鄧 仕超訳「グローバル化時代の中国の対東南アジア政策」2009年3月 8 山影進 「大国を「飼い慣らす」ことをめざす小国の戦略」日本国際問題研究所 2012年3月 9①経済成長に必要な資源の輸入ルート、特に中東からの石油輸入ルートの安全確保、②インド洋、 太平洋の貿易品の海上輸送ルート、特にマラッカ海峡などのチョークポイントの安全確保、③豊 かになった沿岸部の海上からの脅威に対する防衛等の要因により、戦略的重要性がますます増大 しているとみている。 南シナ海は、中国にとり、インド洋と太平洋に出るための中枢となる、両洋を通るシーレーンが 集約された要域であり、また総面積三百五十万平方キロに達する最大の辺縁海である。南シナ海 には、バシー海峡、シンガポール海峡、マラッカ海峡などが存在し、アジア、アフリカ、欧州を 結ぶ、世界で最も過密な海上航路となっている。また南シナ海には、①中国の資源総量の三分の 一に上る豊富な海底ガス田が埋蔵され、②インド洋と太平洋の結合部があり、③南シナ海を緩衝 地帯として利用できれば海南島の周囲数十海里しかない華南地区の戦略縦深が約千海里に拡大で きる。さらに④南シナ海は、「群れた鼠が大きな猫に戯れる」かのように、五六の小国が中国と いう大国に挑んでいる地域であり、それを放置しておいては中国の大国としての面目が保てないた め領有が必要。さらに、南シナ海では、百四十三万平方キロの係争地域があり、その中の四十三 の島嶼を五カ国が不当に占拠しているが、八〇年代のような「争いは棚上げにして、ともに開発す る」などという自制は必要ない。勝手に自国の利益を掠めたられているのを見過ごすわけにはい かない 】 10
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3.東南アジア・南シナ海における対処
①インフラ整備 中国は雲南・チベット正面から東南アジアに対しても、高速道路網などの陸上インフラを整備し ており、東南アジアの内陸部から南シナ海、インド洋の沿岸部との陸上接近ルートの拡充にも力 を入れている。約二千キロに及ぶ「曼昆高速道路」もその一例である。ベトナム正面に対しても、 南寧から中越国境の友誼関を経てホーチミンに至る道路網があり、二〇一三年十月の APEC 首脳 会議でも李克強首相は、ベトナム側に海路と陸路の交通インフラの整備を提唱している。このよ うに中国は、陸海両正面から東南アジアに対する交通インフラの整備を働きかけている 。 11!
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12 同上・矢野善明 10 泉克夫「中国が進める東南アジアの裏庭化」新潮社フォーサイト 2010年10月 11 昆曼公路 带你跨境自驾游中老泰 http://www.kaichewan.com/roadbook/1408.html 2014.9.5access 12!
②CCTV(中国中央テレビ)による対外宣伝工作 CCTV は中国政府の意向を受け,西側メディアの国際放送による西側価値観に対抗する国際世論 の「中国化」を目指している 。特に東南アジアでの放送体制は強化されており、メディア外交が13 積極的に行われている。 海外でCCTVの中国語国際放送チャンネルが視聴可能となることにより、海外華人への影響は大 きくなると予想される。視聴者数が増加すれば、情報戦略による政治的影響も出てくると思われ る。台湾問題や尖閣諸島問題に見る日中関係報道、南シナ海の領有問題等、中国政府の主張を放 送し続けることにより、海外華人の民族主義を刺激すると思われる。CCTV の政治コンテンツが 海外華人に向けての対外宣伝工作の役割を担っており,海外華人への大衆動員を実現することが 可能となる。 中国政府は,メディアの海外放送を利用した国際交流を積極的に行っている。2008 年 4月に中 国・アセアンラジオテレビサミット(中国-東盟広播電視高峰論壇)が開催された。このサミット では、中国の放送局とアセアン地域の放送局が共同で番組を制作し,交流を通して国際社会にお けるアジアの声を強化し、アジアのイメージを作り上げることを目的としている。また、このサ ミットでは、放送局間の協力関係の強化だけではなく、中国とアセアン地域の政府高官の相互訪 問も提議されている 。 14!
③中国の人的ネットワーク 2014年1月中国国務院僑務弁公室がこのほど発表した「華僑・華人研究報告(2013)」によると、 世界各地に住む華僑・華人は5000万人を超え、その約7割が東南アジアに住んでいる。現在、東 南アジアに住む華僑・華人の総数は約3508万人。うち、2011年の統計・試算によると、シンガポー ル、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシアの5カ国に住む華僑・華人だけで約3000万にい る 。インドネシアに767万人(人口比率3.3%)、タイに706万人(11%)、マレーシアに639万15 (23%)人、シンガポールに279万人(50%)、ベトナムに126万人(1.4%)、フィリピンに115万人 (1.1%)、ミャンマーに110万人(2%)、カンボジアに34万人(2.2%)が点在している。 中国の工作機関は競合関係となる国に移住する人々(永住者)によって形成されたコミュニティ を利用するインテリジェンス活動を得意とする。!
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山田賢一「対外発信強化に動く中国」放送研究と調査 2010年12月 13 平野孝治「中国の対外宣伝工作と中国中央テレビの国際放送戦略」2011年 14「東南アジアの華僑・華人3500万人、日本は73万人」Record China http://www.recordchina.co.jp/ 15