• 検索結果がありません。

⑥香取 徹.indd

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "⑥香取 徹.indd"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1.はじめに 不祥事を起こした企業や組織が社会的責任を追 及されることがしばしば報道される。以前は、環 境汚染や政治家への贈収賄などの違法が摘発され、 原因と結果がはっきりしてから企業の責任が問題 とされたが、最近では建築物の耐震偽装、食品の 表示偽装や県の教育委員会の贈収賄など結果が はっきり出る前に責任が問われることが多くなり、 遡っていつどこで責任を問われるかわからない状 況になった。 このような社会的な責任に対して、企業や組織 はどのように対応したらよいのであろうか。と くに、企業経営者の責任はどこまで問われるのか。 この問題に管理会計は何ができるのか。これを検 討するのが本稿の目的である。

企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility: CSR)に関する研究は主に経営学で盛んにおこ なわれてきたが[森本 1994][十川 2005][谷本 2004]、管理会計の分野からのアプローチは極め て少ない[伊藤 2004]。そこでまず、第2章では、 社会的責任とはどのようなものなのかを考えてお くことから始めよう。責任とは何か、責任は個人 にあるのか集団にあるのか。これらを踏まえた上 で、第3章では、今まで問われてきた社会的責任 は何を問題としてきたのかを振り返える。一方管 理会計とは一体企業の中でどのような役割を果た してきたか、その役割から社会的責任とどうかか わってきたかを考える。そして第4章では、社会 的責任を組織全体として取り組むための戦略と管 理レバーについて検討し、概念フレームワークを 提示する。 2.企業の社会的責任 2.1 企業の目的 企業には社会的責任はあるのだろうか。責任と は何か。企業とは何だろうか。物の本質を見極め ることにどんな意味があるか。人間を取り巻く外 界に存在する事物のうち、少なくとも人間が作り 出したあらゆるものはすべて目的を持っている。 何の意味もなさそうなものでさえ人間が作り出し たものは何かのために作られたのである。世界は

我が国における企業の社会的責任と管理会計

香 取   徹

Corporate Social Responsibility and Management Accounting in Japan

Toru Katori

〈要旨〉 企業の社会的責任が問われている。この問題に対して、企業や組織はどのように対応したらよいのであろ うか。企業経営者の責任はどこまで問われるのか。この問題に管理会計は何ができるのか。本稿では責任の 実体を検討したうえで何が社会的責任として問われてきたかを明らかにし、その結果を管理会計の枠組みの 中で戦略と結びつけて考察し、その概念フレームワークを提示する。 〈キーワード〉 企業の社会的責任、管理会計、戦略、CSR

(2)

有効な道具に満ちているのである。しかし、道 具は、目的に対する手段の役割であり、そこに真 理があるわけではない[Popper 1963]。したがっ て道具の本質を探ろうとすること自体には意味は ない。本質を厳密に定義すればするほど、その定 義の本質を定義しなければならなくなり、無限に 定義を繰り返す無限後退に陥ってしまい、実り豊 かな成果は得られない。しかも、本質とはその時 代の状況・社会によって意味や内容が変わるので、 本質を厳密に求めることに意味はない[Popper 1957]。 企業も人間が作り出した道具である。道具であ れば目的がある。では企業の目的は何か。1602年 に設立された株式会社東インド会社は基本的に会 社と株主の二者だけで構成されていたが、産業革 命によって都市に労働者が急速に集中し、従業員 やサプライヤー、債権者など様々な利害関係者 (ステークホルダー)が企業を取り巻くようにな り、ついに一国の国内総生産(GDP)を上回る売 り上げのある企業も出現した。また、ステークホ ルダーとしての環境に対して配慮することも社会 的に求められている。このように様々なステーク ホルダーをもつまでに成長拡大した企業の目的は、 企業を利用するまたは企業と関わる多くの人々を 豊かにすることである。東インド会社では、会社 が利益をあげ、出資者も利益を得ることで、会社 の目的は達成されたかもしれないが、現在では、 会社は利益を含め、企業の価値を高めてステーク ホルダーを豊かにすることである。利益は価値を 可視化した一つの指標にすぎないのである。確か に利益を上げることで、従業員も給与や賞与を得 て、経営者は報酬を得る。その結果、株主も株の 値上がり益や配当を得る。それ以外にも、企業に 材料を納入している業者、資金を貸し出している 銀行、この企業の製品を購入する顧客も企業と関 わることで便益を得る。この利益や便益を「価 値」とよぶ。ここでいう価値とは財産のような有 形なものからブランドのような無形のもの、また 満足感・充実感などきわめて多様なものが含まれ る。[Drucker 1974]は、価値は最終的には顧客 が決めるのであり、「顧客を創造」しなければな らないという。確かに顧客の価値判断を重視する 顧客志向の経営は価値を生み出す有力な方法であ る。顧客が判断した価値は、企業ではステークホ ルダーに共有され分配される。価値を創造できな い企業は、企業の目的を達成できないことになり、 企業にかかわる人々を豊かにすることができない のである。 2.2 企業と責任 企業には責任があるか。あるとすればそれは何 を意味するか。企業という組織に責任があるのか、 それとも個人や責任者に責任が帰するのか。責任 という概念は社会的な産物である。人間が一人し かいない世界では責任は意味をなさない。自分の した行為に対して責任を果たす相手がいないから である。一つの行為に責任が伴うかどうかは、そ の結果が社会的に判定されたときにはじめて意味 をもつ。法律に違反した場合には責任を取らなけ ればならないが、この法的責任は責任が社会的で ある典型である。それ以外にも道義的責任、政治 的責任などといわれる責任は、社会的な意味で責 任があるかどうかを問うているのである。ここで いう社会とは、国や時代や社会状況など固有なも のであるが、実態としてはっきりとしたものでは ない。はっきりとしていない社会が判定を下すと いうことは、以前は責任があると考えられていな かった事例が現在では責任を果たすことを要求さ れることにもなる。つまり、責任という概念は単 に現在のわれわれの世界観を反映しているにすぎ ないのである。 ここで責任における過去と未来を考えておこう。 責任には責任を負うという未来の行為に対するも のと、責任を問うという過去の行為に対するもの に分けて考えることができる。「社長として顧客 の満足度を高めるような経営を行う責任がある」 という言明は、これから未来の行為を現在のもの と引き受けることを意味する。一方、「社長とし て食品偽装をした責任を問われる」という言明は、 取り返しのつかない過去にかかわって罪を現在引 き受けることを意味する。ところが、未来への責 任を負うといっても、これから起こる事柄をあら かじめすべて予測しておくことはできないし、過 去に対して責任を問われても、済んでしまったこ とすべてを元に戻すことはできない。死んでし まった人は帰ってくるわけではないのである。つ

(3)

まり、責任の範囲は未来の場合も過去の場合も同 じように不確定なのである[小浜 2005]。責任の 実体も範囲も不確定だとすると、責任に対してで きることは、未来に対して責任を問われることの ないように努めること、過去の行いに対して努め て償うことでしかない。企業の目的が価値を創造 することによってステークホルダーを豊かにする ことだとすれば、この目的を遂行することに責任 を負う企業や人間は、違法行為を行わず、本業を 全うすることに専心し価値を創造することによっ て未来の責任に対して備えることである。また、 もし、企業や人間が行った行為によって企業の価 値を損なうようなことが生じて社会的責任を問わ れることになれば、責任を取るということでその 減少を最小限度にとどめることである。 企業とは社会に存在する道具であるから、これ を利用した者、関わった者の意図がどうであれ、 その行為の結果は常に企業の社会的責任として問 われる可能性がある。そしてその責任の所在は、 まず企業を構成し直接関わった者、多くは企業経 営者、そして社員にある。顧客、債権者や株主な ど現代の大企業では間接的にしか企業を利用でき ないものにも及ぶこともある。では企業の行為に おける責任は組織としての企業にあるのかそれと も個人にまで及ぶのか。とくに法的責任とは異な る道義的な責任は、人類の普遍的な価値として一 般に理解されているが、企業には個人の責任とは 別に道義的責任が存在するのだろうか。 2.3 道義的責任 集団の責任についての例として戦争犯罪を考え てみよう。たとえば日本の戦争犯罪に対する道義 的責任は日本人にあるのか。もし、この戦争責任 の道義的責任を日本人とは別に日本に責任がある とすれば、日本人には責任はないことになる。日 本という国が犯した犯罪であり個人には責任がな いという論理になる。では、日本ではなく日本人 に責任があるとすれば、どうか。今度は、その当 時の日本人がそれぞれの果たした役割の分だけの 道義的責任を負えばいいことになるし、当然現在 のわれわれには責任はないことになる。また、逆 に日本人の責任とは別に国としての日本に責任が あるとした場合、この場合も日本としての責任を 個人は負わないことになるのである。このように、 いずれの場合も、集団としての日本の責任が日本 人に及ばないならば、集団としての責任を問う意 味はない。一方、戦争当時生まれていなかった人 に対してまでも国の犯した戦争の道義的責任はあ るといえるか。[小坂井 2008]は、国家と集団と を区別したうえで、集団(企業)では、社員が入 社前にその会社が犯した行為に対して道義的責任 を感じることがあると指摘する。つまり、自らが 行為に加担していなくとも、その集団と同一化し て我が身の存在を恥じる、と説く。犯罪に関わり を持つことで自分が穢れたように感じること、こ れが集団としての道義的責任の正体であると。 日本では家族や会社の部下が不祥事を犯すと、 その家族や会社の上司が責任を感じる。警官や教 員が飲酒運転で事故を起こせば、刑事罰以外にも 組織内で処分を受け、また県警本部長や学部長と いった上司が「世間や社会の皆様に対してお騒が せしたことに対し、申し訳ありませんでした。」 と深く頭を下げ、社会に対して謝罪する記者会見 の様子がテレビに写しだされる。集団として企業 犯罪に関わると「組織ぐるみの犯罪」と呼ばれて、 組織のトップが責任を問われ道義的責任を取って 辞任することは日常的にみられることである。で はここで行われる責任を取るという行為はなぜ生 まれるか。 [小坂井 2008]は、この道義的責任の正体を 「社会的秩序の維持・回復」に求める。犯罪と責 任を考えると、犯罪とは社会あるいは共同体に対 する侮辱であり、反逆に他ならない。社会秩序が 破られるとそれに対して社会の感情的反応が現 れ、民衆の怒りや悲しみを鎮め社会秩序を回復す るために犯罪を破棄しなければならない。しかし 犯罪はすでに起きてしまっているので犯罪自体を 無に帰すわけにはいかない。そこで犯罪を象徴す る対象が選ばれ、この犯罪のシンボルが破壊され る儀式を通じて共同体の秩序が回復される。こ こに責任という社会装置が機能する。「犯罪の代 替物として適切だと判断され、この犯罪に対す 罰を引き受ける存在が責任者として認められる」 [Fauconnet 1928]。日本で最近よくみられる親が 子供の犯罪に、上司が部下の犯罪に謝罪するとい う道義的な責任の機能は、社会的秩序の回復のた

(4)

めの儀式なのである。 2.4 社会的責任 前節までの検討からわかったように、責任とは 根本的に社会的な機能を担ったものであり、この 国の時代や状況によって、その意味内容は変化す る。人類社会にとって有用な道具である企業が社 会で存在するのは、価値を創造して企業を取り巻 く多くのステークホルダーを豊かにするという目 的を達成するためである。価値を創造することが できず大きな損失を生じれば、従業員の給料は減 額され、あるいは解雇される。経営者も報酬を減 らしその地位を失う。株価は低下し、社会的信用 を損なう。ここに企業の存立の社会的責任が問わ れることになるのである。社会的責任は損失の計 上や倒産することだけにとどまらない。企業に関 する法律、商法や法人税法、証券取引法など法的 責任のみならず、企業に直接間接に関わる個人が 犯した犯罪、犯罪にはならず間接的に関わっただ けだとしても、社会的責任を問われることもある。 そしてその責任には道義的責任も含まれる。犯罪 とはならなくても、ある事件が一旦明るみに出る と、その責任は企業の従業員個人であろうと集合 としての企業であろうと企業が今まで築いてきた 価値、創造された価値を棄損する可能性がある。 そのため失われた価値や秩序を回復するという機 能が責任を果たすということである。責任は、意 図を持って行われた行為の結果として損害の発生 という事態が生じ、それに対して責任が問われる のではない。起きてしまった事態があり、それに 対する収まらない感情が責任を問うという意識を 芽生えさせ、その上でどのような意図のもとで行 為がなされたかを推測していくという論理的な時 間とは逆の順番で遡及されるのである。 3.企業と社会的責任の変遷 我が国の社会で企業の社会的責任が問われるこ とになったのは、1960・70年代の公害問題や消費 者問題からであろう。それ以後、現在まで様々な 社会的責任が問題とされてきた。では、一体何が 社会的責任として問題とされてきたのだろうか。 この半世紀の変化を把握することから何が得られ るか。 3.1 1970年代まで 1970年代までの日本企業の企業とその現場では 何が起きていたか。戦後日本の製造業は、粗悪品 からの脱却を目指して、現場改善が盛んにおこな われていた。1951年に品質管理(Quarity Control: QC)を促進するためにデミング賞が創設され、 品質を優先する思想が初めて植え付けられた。ま た同年、東亜燃料工業はアメリカの(Preventive Maintenance: PM)を導入して予防保全を行った。 これは失敗が生じてから修理するという発想から の転換である。在庫管理もEOQ(Economic Order Quantity)分析が導入され最適発注量が計算から 求められることが理解された。このような50年代 の新技術の導入は、日本にとって少ない資源で効 率的に品質を向上させることを成功させたのであ る。新技術を日本流に改良して、全員参加型の一 体的な活動を特徴とする日本的現場管理が1970, 80年代に誕生し完成する。高度経済成長期にはい ると、多くの企業が売上高や生産規模の拡大と いった規模の経済によるシェア拡大、量的拡大を めざした。管理会計の損益分岐点分析、直接原価 計算や設備投資の経済性計算が普及したのはこの 時期である。 しかし、1970年代以降、重化学工業にかわって 電気製品や自動車といった加工組立産業が成長す る。この時期の日本の現状について[岩井 2003] によると、1950年代の高度経済成長を支えてきた のは、農村から都市への大量の人口移動であった。 この都市労働者の低い賃金の上昇率が生産性の上 昇率よりも下回っている限り、産業資本主義を維 持することができたのである。しかし、60年代の 後半になると、農村部の人口が減少し、農村から 都市への人口移動のスピードは急速に減退した。 そのため大きな設備や機械を持っているほど利益 を生み出せなくなっていったのである。70年代か らは産業資本主義的構造、製鉄、造船といった重 厚長大産業の地盤沈下が始まり、ポスト産業資本 主義へと移行せざるを得なくなったのである。そ してこの高度経済成長のひずみが企業の社会的責 任を問う問題となるのである。 第二次世界大戦前より、従業員は労働者として の基本的な権利を求めて経営者・資本家と対立し ていたが、イデオロギーをともなった労働運動

(5)

として展開された。この一連の活動は、今から考 えれば企業の社会的責任の範疇で議論することが できるが、当時は労働問題として考えられていた。 初めて企業の行動が社会的な影響を与え、それが 問題視されたのは公害問題である。高度経済成長 によって臨海工業地帯が急成長をとげ、コンビ ナートが各地に広域化して拡大し、その結果公害 が1950年ころより徐々に顕在化し深刻化した。そ れにつれて公害への世論の批判は高まり、住民運 動が全国で展開された。これは企業の自由な行動 が招いた外部不経済の一例であり、いわゆる「市 場の失敗」の典型である。1956年の経済同友会 全国大会では、「経営者の自覚と実践」が決議さ れ、そのなかで企業の利益がそのまま社会の利益 と調和した時代は終わり、経営者が積極的にその 調整に努力しなければ国民経済の繁栄・発展はで きないとはっきりと市場の失敗を認め、経営者の 自覚を促している[経済同友会 2003]。このよう な動きを受けて成立した「公害基本法」は、汚染 物質などがもたらした社会的費用は企業が負担す るという「汚染者負担の原則」、企業に過失がな くても企業活動と被害との因果関係があれば企業 に賠償責任があるという「無過失責任の原則」が 明文化された。また、森永ヒ素ミルク事件(1965 年)、サリドマイド事件(1972年)、カネミ油症事 件(1973年)など食品添加物の不当表示、欠陥商 品、薬害、過大広告などの高度経済成長のひずみ で生じた消費者問題は、消費者運動として展開さ れ、石油危機にともなう便乗値上げや買い占め・ 売り惜しみ、その結果狂乱物価とよばれた物価上 昇は消費者生活、経営者、従業員などすべてのス テークホルダーの生活に大きく影響した。このよ うな背景から消費者保護基本法の制定、商法の改 正が行われ、企業の社会的責任に関心が集まった のである。この時期の社会的責任として問題に なったのは、今まで問題となっていなかった企業 の行動が消費者や住民に対して影響を及ぼし被 害が生じたことから、被害の原因として責任が問 われたのである。被害をもたらすかもしれない公 害の原因物質を川に放出したとき、企業にはその 時点で被害が生じるかどうかは分かっていなかっ たとしても、あとで社会的責任を問われた時には、 それは問題にはならない。つまり、どのような意 図でその行為をしたかは、あとになってしまえば、 物語でしかないのである。 3.2 1980年代 1980年代は、我が国の企業は独自の現場管理 手法を完成させていた。品質管理(QC)は、全 員参加による日本的品質管理TQC(Total Quarity Control)へと発展し、PMはこれも全員参加によ る 予 防 活 動TPM(Total Productive Maintenance) として、1969年日本電装によってはじめておこな われて以来、現在まで我が国の工場管理の基礎と なった。日本流の在庫のムダ排除であるかんばん 方式(Just in Time: JIT)もこの時期に世界的に認 められた。このような効率的な生産技法が組立加 工業でさかんに活用されたこと、そしてバブル景 気が重厚長大型の重工業の衰退をカバーしていた のであり、産業資本主義からポスト産業資本主義 への転換を遅らせることにもなったのである。IT 化による情報の商品化と技術、グローバルな資本 や人の移動、金融市場が開放され時間やリスクに よる差異が利潤を生み出すポスト産業資本主義へ 移行するのは1990年代に入ってからである。 1980年代ではバブルについて言及しなければな らない。バブルの原因についてはいろいろの考え があるが、1999年の日本学術会議経済制度研究連 絡委員会報告「金融ビックバンの根底にあるも の」から素描してみよう。バブルの原因は85年の プラザ合意による円高を防ぐために行われた金融 緩和政策にあるといえる。急速な円高によって我 が国の輸出産業は、賃金の安いアジア諸国へ進 出せざるを得なくなった。政府も財政再建という 理由で景気対策においてしばしば金融政策にウェ イトをかけてきたが、物価が安定していたことか ら日銀が必要資金を供給していると考えたことが 直接の原因である。他方、銀行も運用資金が増大 し業務の拡大に走りだし“押し込み貸出”の形で 争って融資を拡大した。企業は低利だと思われた 潤沢な資金を資本市場から直接調達することがで きた。このようにして集められた資金は、本来の 企業の事業に投下されるよりも株式や土地などの 過剰な設備や資産に投下されていったのである。 一方では、円高によって輸出に頼っていた多くの 中小製造業は大きな打撃を受け、安い人件費や土

(6)

地を求めて海外へとグローバル化せざるを得なく なり、その結果国内産業の空洞化が生じたのであ る。加工組立産業では、原価の効率的な削減のた めに原価企画が導入され、部品点数の削減や共通 化、系列の見直しなど生産の源流での原価管理が 行われるようになったが、親会社や大手取引会社 から原価の引き下げ要求にサプライヤーの疲弊を 生んだのも事実である[加登 1993]。このバブル 期の景気が生んだ様々な弊害が後に社会的責任を 問われることになる。 また、この時期の企業の社会貢献活動として話 題となったのが、フィランソロピー、メセナ活動 である。80年代から海外に進出した企業は、欧米 において「良き企業市民」としての行動を要求さ れた。欧米では単に金銭的な寄付ばかりではなく、 人的な貢献や社会貢献することが一市民としての 企業であるというフィランソロピーの理念が根付 いていたのである。この理念を我が国でも普及さ せる目的で企業メセナ協議会が設立され多くの 財団が発足した。経団連の「1%クラブ」は1990 年11月に設立されている。芸術文化活動を支援す る「メセナ協議会」、経常利益か可処分利益の1% を社会貢献活動に使用するために拠出する企業の 集まりである「1%クラブ」が設立された[島田 1993]。では、社会への貢献活動は社会的責任で あろうか。 少なくとも1980年代の欧米ではすでに「良き企 業市民」としての企業の貢献が社会的に認知され ていた。海外へ進出した日本企業が良き市民とし て寄付や地域への献身を怠れば、当然社会的責任 を果たしていないという批判を浴びたのである。 しかし、日本では社会貢献をしていないという理 由で社会的責任を問われる土壌はまだ育成されて いるとは言えなかった。80年代のバブル期には確 かに日本国内でもフィランソロピーの機運が高 まりを見せたが、90年代のバブル崩壊以降勢いを 失ってしまったことを考えると日本では少なくと もまだ欧米型の社会貢献は根付いていないという のが現状である。しかし、社会的責任がその時代 を反映していることを考えれば、将来責任を問わ れることも予測される。 3.3 1990年代以降 1991年ころより急激な地価の下落が始まり、バ ブル経済は崩壊した。その過程で一部企業の不祥 事、利益供与、地球規模での環境問題の顕在化、 それに対する意識の高まりから企業と社会の持続 可能性、また長引く不況など様々な社会的現象が 生じた。まず、証券会社による大口投資家への損 失補填の発覚、山一証券・北海道拓殖銀行の破綻 など、バブルが崩壊して以来総額100兆円もの公 的資金が投入されることになった。バブル崩壊の 後遺症は、今もなお払拭されたとは言い難い状態 である。1991年9月に経済団体連合会は「企業行 動憲章」を公表し、「わが国企業の行動が内外に 多大な影響を与えるものとなっている今日、自ら の行動に企業は極めて重大な責任を有している。 それだけに証券・金融業界の一連の事件を契機に、 国民から信頼され、国際的にも通用する企業行動 の確立が求められている。とりわけ企業行動の展 開における経営トップの役割の重大さが改めて認 識され、その自省・自戒とともに自社の高いモラ ルの維持に対するリーダーシップの発揮が強く望 まれている。」と述べた上で、企業が社会的役割 を果たすための7原則を示した[日本経済団体連 合会 1991]。このようにバブル崩壊以降の証券・ 金融・銀行業界は社会的責任を求められたのであ る。ではバブルを引き起こしたことで政府・日銀、 銀行、企業は責任をどう果たしたのか。 バブル崩壊後の景気の低迷が10年間も続き、そ の間に企業はリストラを繰り返して、多くの従業 員を解雇し、正規労働者は減少し非正規雇用によ る労働者が増えている。またバブル期の投資は量 的な拡大が利益を生む構図であったため、量的に は大きくとも効率がいいとは言えないものも含ま れていた。それが過剰投資である。バブル崩壊は バブル期に膨張した間接費の処理、不採算な事業 からの撤退を余儀なくされ、倒産や事業縮小した 中小企業や二次三次サプライヤーはかなりの数に のぼった。そのために管理会計技法の活動基準原 価計算(Activity Based Costing: ABC)などの技法 によって間接費を絞り込み事業の見直しが行われ たのである。このバブルの崩壊に伴うリストラの 社会的責任はだれが取ったのか。

(7)

である。1992年のリオ地球サミットでは「環境と 開発に関するリオ宣言」が出され、具体的な行 動計画「アジェンダ21」が採択された。ここでは、 大気保全、森林減少、持続可能な農業、砂漠化、 生物の多様性、水資源、有害物質の管理などの問 題を具体的な行動指針として国レベルの対応を提 示している。70年代までの公害問題と90年代の環 境問題が大きく異なるのは、70年代は特定の企業 が特定の地域、住民に対して因果関係がはっきり とした責任が問われたのに対して、90年以降現在 までの環境問題は、一企業の環境の問題にとどま らず、地域・国・世界レベルで起きている人類の 営みが原因となって特定できない地域や住民に被 害が拡大する恐れがあり、それが地球自身に対す る責任となっている点である。つまり、環境を守 ることが責任なのではなく、地球全体に対する責 任、地球というよりもむしろ、人類に対する責任 が問われているといえる。この責任はだれが負う のか。 このように社会的責任の範囲は、社会であり国 であり人類にまで拡大したのである。また一方で 新たな問題も生じた。 90年代から会社法関連の規制が緩和された。株 式分割や株式交換による企業合併・買収が行われ るようになり、バブル崩壊によって意気消沈して いた企業に刺激が与えられた。それまで日本の株 主は安定株主と呼ばれ、株式の相互持合い、メイ ンバンクによる株式所有など経営者にとって批判 的な存在ではなかった。しかし、金融の規制緩 和によって90年代には外国人株主や機関投資家が 「物言う株主」として株主総会に登場したのであ る。2005年のライブドアによるニッポン放送・フ ジテレビ株式取得から始まる一連の買収劇は、市 場を通じた株式取得による経営権の奪取が容易に 行われることを示した。しかもその買収提案は買 収される企業への何の提案だったのか、また買収 される側の防衛も企業価値とは無縁の単なる経営 者の保身が明らかになるにつれて、企業は誰のた めにあるのか、という問いを投げかけた。この事 件は行き過ぎた市場主義の好例として多くの人々 に記憶されているが、その結末は粉飾決算という 古典的な社会的責任の問題に帰してしまった。こ の事件が典型的に示していることは、企業の資本 提携や敵対的あるいは友好的買収・合併が日常的 に行われるようになったということである。株式 取得による買収とそれに対する防衛は、今まで企 業が考えていなかった株主からの提案なのである。 企業の本来の目的から考えれば、企業の株主 が誰であろうと企業の目的が変わるわけではな い。しかし、大量の資金で株式を購入し株価が上 昇したときに売り抜けるという投機的な株式の保 有が可能になったため、株主の一時的な株式買収 によって企業の価値を棄損する可能性もでてきた。 また、逆に買収に対抗する策として買収行為を阻 止するポイズンピル(poison pill)を株主総会で 承認させようとする経営者も単なる保身から対抗 策を講じているとすれば、それも等しく企業の価 値を損なう恐れがある。いずれの場合にしても問 題は企業に関わるステークホルダーを豊かにする ことであり、それが損なわれたとき責任の問題が 生じるのである。このような株主の市場主義的な 行動は企業に対して株主のための経営を行うこと を確かに強く意識させ、ステークホルダーの要求 を経営に取り入れることが要求されたのである。 1990年代には株主資本利益率(Return on Equity: ROE)がよく用いられ管理会計の指標として経済 的付加価値(Economic Value Added: EVA)といっ た株主を重視した指標が紹介され導入が図られた。 また、多様なステークホルダーの要求や無形の企 業価値を高めるためのバランスト・スコアカード (Balanced Score Card: BSC)も利用されている。

[小林 2005]は、企業は確かに利益を上げなけ れば存続できないが、日々の従業員の自己犠牲が なければ立ち行かない。そのためには従業員に とって企業が高い理念や理想の対象でなければ自 己犠牲などできないという。従業員の視点に立つ という知見はしばしば日本で主張されてきた[伊 丹 2000][ドーア 2001]。従業員はすべての工程、 主たる活動やその支援活動すべてに関わっている のは事実である。購買、製造、物流、販売、サー ビスなどの主活動や人事・労務、技術開発、調達 などの支援活動すべてにかかわっているのは、ス テークホルダーのなかで従業員である。従業員の 満足度を高めないことには顧客に対しても高い価 値提案はできないともいえる。株式の資本提携や 買収提案についても従業員の視点で考えることも

(8)

必要であろう。それが欠落すると企業の価値は損 なわれ社会的責任が果たされず責任を問われるこ とにもなるのである。 4.管理会計における社会的責任 4.1 管理会計の展開 管理会計がどのように定義されるとしても、そ の概念は人間が作り出したものである。本稿で考 察したように人間が作り出した物すべてに目的が あり有効な道具となる。管理会計は企業の内部で 経営者のための管理技法として企業の価値創造の ための有効なツールや考え方である。これらの技 法は単に経営者のトップダウンによって実現され るのではなく、従業員一人一人に至るまでその理 念や方法が理解されて初めて効果をあげる。戦後 アメリカから導入された多くの技法が効果を上げ たのは、全社一丸となった協力体制のもとで行わ れた結果であり、それが日本的経営を育んだので ある。戦後の少ない資源で効率的に品質を向上さ せるためにアメリカからの導入技法を改良して日 本型の技法を開発した。高度経済成長期には、売 上高や生産規模の拡大といった規模の経済による シェア拡大、量的拡大をめざした技法が利用され、 損益分岐点分析、直接原価計算や設備投資の経済 性計算などが普及した。1970年代後半から80年代 には、日本型の管理会計技法が完成した時期であ る。JIT、原価企画、TQCなどである。90年代に は株主重視の経営が求められ、EVAなどの指標や 戦略実行のためのBSCが利用されている。 競争戦略という発想は1980年代より生まれたも のである[Porter 1980]。1980年代までの日本企 業はTQMや継続的な改善の実践を通じて、有機 的で一体的な活動にコストリーダーシップを確立 し差別化に集中していた。M. E. Porterはそこに相 互に連結したシナジー効果の達成と多角化する日 本企業の全体最適の将来像を見たのではないか。 それまでのアメリカは生産性や品質、スピードを 追求して業務の効率化を図ることに成功していた が、効率的な業務の達成だけでは同時に競合他社 にも同じような競争の機会を与えることになって しまったのである。組織全体の方向付けがどうし ても必要であり、そのために戦略が利用されたの である。現在、管理会計における戦略はバランス

ト・スコアカード(Blanced Score Card: BSC)や 戦略マップ(strategy maps)によって利用しやす い表や図として可視化され、戦略の実効性を高め ている。しかもBSCの特徴は、株主、従業員、経 営者、サプライヤーそして顧客などのステークホ ルダーの要求を組み込み、金銭以外の無形の価値 をも考慮することが可能な表なのである。日本型 の管理会計システムでは全社的な方向付けが日常 的に行われていたため、戦略という語はよく使わ れてはいたが、その内容は明かではなかった。実 は戦略自体存在しなかったのかもしれないし、ま た必要が無かったといってもいい。それがアメリ カから1990年代に表や図として目に見える形で戦 略を実行するための管理会計技法として日本に上 陸したのである。 一方、管理会計技法は企業の経営者にとっての 有用な道具ではあったが、社会的責任を視野に入 れたものではなかった。1つ1つの技術や考え方が 単に経営管理者のために利用されただけであり、 地域住民への公害、従業員のリストラによる解雇、 地球環境に対する配慮を考慮したものではなかっ たのである。管理会計が企業の価値創造に貢献で きるとすれば、それは社会的責任を組み入れたも のでなければならない。管理会計が経営者のため の有用な情報や技法であったとしても、またその 結果企業が利益を上げることができたとしても、 社会的な責任を問われないということはない。上 述のようにABCや原価企画は、確かに不況期の 企業の立て直しに功を奏し在庫削減を達成したか もしれないが、そのために効率的なリストラや中 小企業の疲弊を生んだのも事実である。ただ、そ れが当時の社会的責任として問われなかっただけ なのである。戦略やBSCについても社会的責任を 組み入れたものは最近まで少なかった。1つ1つの 技法が経営者にとって有用なものであっても、そ れを利用することで社会的責任が発生するとした ら、その利用にあたって社会的責任を念頭に置い て考えなければならない。しかも、不断に変化す る企業環境を考えると、社会的責任を果たすこと を全社的に志向するために戦略を活用することが 考えられるのである。ではどのように社会的責任 を戦略に組み込むことができるのだろうか。

(9)

4.2 戦略とコントロール・レバー 社会的責任を戦略に組み込むために、まず戦略 をどのように管理するかを最近の戦略をめぐる議 論から整理しておこう。そのうえで社会的責任の 内容を戦略に関連付けることにする。 1960年頃からどうすれば効率的に組織を管理で きるか、そのためのシステムはどのような構造か という研究が始まった。[Anthony 1965]のマネ ジメント・コントロール・システムは伝統的理論 として多くの研究の比較対象となってきた。彼の コントロール・システムでは戦略の策定という戦 略的計画(strategic planning)はトップが行うの で、策定と実行プロセスの議論が分離されたトッ プダウン方式の戦略形成・実行システムであっ た。しかも計画的な標準化と効率化によって不測 の事態が起こらないように対応するという前提の もとで成立していたのである。しかし、競争が 激しく不確実性の高い環境下では、これらのフ レームワークと技法では十分には機能しなくなっ た。現在のマネジメント・コントロールに求めら れるのは、顧客・市場指向型の戦略と弛まぬ革 新、顧客ニーズへの敏感な対応である。競争の激 しいしかも不確実性の高い環境では組織全体が明 確な方向付けと組織的な協力活動に集中・促進す るための戦略が必要とされている。様々な戦略を 検討したうえでMintzberg[1987a, b]は、少なく とも4つの意味で戦略という言葉は使われている という。全社的視点(perspective)、競争上の位 置(position)、計画(plan)そして行動パターン (pattern of action)である。 ①パースペクティブ(perspective):全社的視点 から戦略的意義を考えるものである。これは、 全社的な理念やミッション・ステートメント のように組織員が分かち合えるような共通の 価値観の表明という意味での戦略である。 ②ポジショニング(position):どのようにして 顧客の価値を創造し差別化できるか、どの市 場に事業を展開するかという視点から戦略を 考えようとするものである。 ③プランニング(plan):意図した戦略(intended strategy)の計画と目標を設定し、方向性を 組織全体に伝えるために使う。 ④パターン(pattern of action):組織内の双方 向型のコミュニケーションを通じて、自主的 に創意工夫される創発型(emergent strategy) の行動パターンをコントロールして不確実性 に対処しようとするものである。 そしてこの4つを組み合わせることで組織に 戦略性を与えることができる、としている。R. Simonsは、この分類を利用して戦略をコントロー ルするためのレバーを提案した[Simons 1995, 2000]。 ①パースペクティブ戦略は、信条・理念シス テム(beliefs systems)というレバーによっ てコントロールされる。このシステムを利用 して組織に対してビジョンを伝達し、中核的 な価値を明確にすることによって、組織ぐる みの機会探索・開拓を奨励して正しい方向へ と導く。ジョンソン&ジョンソンのクレドー 「我が信条」のように戦略の実行にあたって 何らかの問題が生じたときに社員がどのよう に対処し、どのような解決策を追及すべきか を自分で判断できるように社員を支援するシ ステムである。このシステムは社員に理想と する価値を提示し、精神的な高揚を促す。 ②ポジショニング戦略は、事業戦略といわれる もので、戦略の方向性を示す事業境界システ ム(boundary systems)によってコントロー ルされる。事業戦略の戦略的境界を明らかに して、事業の限界と回避すべきリスク、プ レッシャーと誘惑から逃れて、正しい事業の 戦略領域を維持することが示される。企業の 行動規範のようにしばしば禁止を含む表現で 最低守るべき法律やルールを示す。それは、 「独占禁止法に違反する行為をしてはならな い。」「未公開情報に基づく株式取引をしては ならない。」などの不法行為を禁止するよう なものが含まれる。 ③プランニング戦略は、一般的に戦略といわ れる計画と目標のことで、診断的コントロー ル・システム(diagnostic control systems)に よって、組織に戦略の計画と目標が示される。 その成果を監視し、基準からの乖離を修正し、 意図した戦略の実現・目標を達成するために 調整しモニターされる。通常の利益計画や予 算がこれに含まれる。このシステムでは統制

(10)

と効率が要求され、その成果が経済的報酬の 増大と、何かを達成し他人に認められたいと いう願望によって動機づけられる。

④パターン戦略は、相互作用的コントロール・ システム(interactive control systems)あるい は対話型統制システムとよばれるレバーに よってコントロールされる。これは、戦略を 創造するために、組織内対話によって学習と イノベーションを行うことが中心となる。こ れによって組織を活性化して不確実な競争市 場に対応する。 戦略とそれを管理するコントロール・レバーの 内容をまとめると、以下の表が考えられる。 以上のように、戦略によって戦略を管理するコ ントロール・レバーを使い分け、あるいは複数の レバーを管理することで戦略を実行する。そして、 この戦略のコントロール・レバーと現在行われて いる企業活動、管理会計技法と組み合わせると以 下のような分類表が得られる。 表1 戦略レバーと管理会計技法 コントロール・レバー 戦略の意義 人の欲望 目的 伝達 経営上の解決策 内容 信条・理念 perspective 貢献 権限委譲と機 会追求 活動の拡大 ビジョン 基本的価値観 とミッション の伝達 ミッションステートメント ビジョンステートメント クレド 目標ステートメント 事業境界 position 正しいこと をする 自由の限界を明示 戦略領域 ルールの明確化と強制 企業行動規則戦略的計画システム 資産買収システム 営業ガイドライン 診断的 コントロール plan 達成 意図した戦略の実現の調整 とモニター 計画と目標 明確な目標の 設定と支援 利益計画と予算目標システム バランスト・スコアカード ブランド収益モニタリング 戦略計画システム 相互作用的 コントロール pattern 創造 創発戦略の刺激と誘導 戦略の不確実性 組織内対話による学習の活 性化 利益計画システム バランスト・スコアカード プロジェクトマネジメントシステム ブランド収益モニタリング 情報システム Simons[2000]より作成 表2 システム・戦略と企業活動・管理会計技法 信条・理念システム 全社の視点からの戦略 環境ビジョン・グリーンコンパス、GREEN21(日立2001)富士ゼロックス企業理念(1979)、“私たちが目指すもの”“私たちが大切にすること”(1998) リコーグループCSR憲章 ベネッセ企業行動宣言・行動基準、ファミリー・フレンドリー企業、女性の登用、育児・介護施設、 6つの経営理念と3つの特別宣言(企業市民、企業倫理、環境)、企業市民憲章(オムロン) IYG企業行動指針(イトーヨーカ堂) NECガリレオクラブ サバイバルのための環境活動(ユニリーバ) 事業・境界システム 顧客・差別化戦略 日立製作所ビジネス倫理ハンドブック(2003)ソニーグループ行動規範、グリーンパートナー環境品質認定制度 社員行動規範(管理職向け倫理研修、社員向け倫理研修、情報倫理・情報セキュリティ教育) 富士ゼロックス リコーグループビジネス行動規範、環境経営、ビジネスプロセス・リスクマネジメント、コ ンプライアンス、クライシスマネジメント 執行役員制によるコーポレートガバナンス(ベネッセ) ECS2000(ミツエーリンクス) 環境負荷低減活動、カンパニー環境経営評価制度(オムロン) イオン行動規範

(11)

戦略を実行する場合に欠かせないことの一つは 内部統制である。予期できない事や状況が目標 とする事業戦略を実行する際に大きな障害となる ことがある。これを戦略リスクという[Simons 2000, p322]。前述した戦略の分類に従えば、戦略 リスクを統制するためのレバーは、信条・理念シ ステムと事業境界システムである。これらのレ バーが企業行動と戦略の双方の活動境界を効果的 に規定するからである。この理念のシステムと境 界のシステムは、基本的な価値観と禁止行動を示 しているが、それだけでなく無意識の過失や経験 のない従業員による誤処理など小さなミスが責任 を問われ大きな代償を支払うことが生じる可能性 がある。このようなミスの発生を未然に防ぐため の統制と予防のためのシステムの導入が求められ る。このシステムは内部統制システムといわれ、 取引プロセスの非効率や不正確な情報をもとに行 われた誤った意思決定や詐欺行為などを防ぐこと が目的である。わが国でも2008年4月より内部統 制報告書の作成と公認会計士による監査制度が導 入され、企業の内部の統制の内容に社会的関心が 高まっているが、これは多くの企業が引き起こし た不祥事が企業の内部の統制に問題があったため であると考えられているからである。 4.3 社会的責任のレベル 前節では戦略とその管理のためのレバーを説明 した。本節では社会的責任を戦略に組み込むため に、社会的責任の内容を具体的に企業活動にかか わらせて考えてみよう。そこでまず社会的責任の 内容を企業と社会とのかかわりから分類しておこ う。[谷本 2004]によると、社会的責任は3つの レベルに分類することができるという。 レベル1:日常的な経営活動のレベル。日常的 な経営活動のプロセスにおける社会的公正や倫理、 環境や人権などのへの配慮を取り込んでいくレベ ル。製品の品質や安全性に加えて、環境対策、人 権対策、情報公開など法令や基準を遵守し違法な 行為をしない等、企業の本業のリスクを回避しな がら業務活動を行うレベルである。法令を守らな いことによる損失を回避するという基本的なレベ ルである。成熟期の企業の多くがこの範疇にはい る。 レベル2:社会的事業や製品のレベル。社会的 なニーズや市場の動向によって新製品開発、新規 事業を行うレベル。ここでは、環境配慮型製品の 開発、障害者・高齢者支援の商品・サービスの開 発、地域再開発、フェアトレード、社会的責任投 資など新しい社会的価値の創造など新規事業へと 進展させたレベルである。成長が期待される事業 ではあるが、それだけに効率性という視点も加え られる。 レベル3:社会貢献活動のレベル。企業の持つ 経営資源を活用してコミュニティへの積極的な支 援活動を行うレベル。金銭的な寄付、非金銭的な 社会貢献や本業や技術を活用したフィランソロ ピーを行うレベルである。コーズ・リレイティッ ド・マーケティングや戦略的なフィランソロピー への取り組みがこのレベルに含まれる。 社会的責任の3つのレベルとその要素を示した ものが以下の表3である。 診断的 コントロールシステム 戦略実行 環境問題対応型保険商品、エコファンド(三井住友海上火災保険)

SRI(Socially Responsible Investment)11本1,024億円(日本2004.3)、2兆2,750億ドル(米国 2003)3,482億ユーロ(欧州2003.9) アクセシビリティ商品開発(IBM) マテリアルフロー会計(田辺製薬、日東電工、タキロン、キャノン) ライフ・サイクル・コスティング(米国防総省、日本建築学会、リコー、アサヒビール、BASF社) バランスト・スコアカード(リコー、東京三菱銀行)、サステナビリティ・バランスト・スコアカード 相互作用的(対話型) コントロールシステム 学習と創造 日立ボランテイア・セミナー、日立ヤングリーダース・イニシアチブ Someone needs you プログラム(ソニー)

Make your mark、スターバックスファンデーション

kidsSmart幼児教育支援プログラム、Try Scienceプログラム(IBM) 医療・バイオ・ライフサイエンス事業、ユニバーサルデザイン(日立) Commitment to Origins、コーヒー生産者への持続可能性の確保と高品質コーヒーの安定購入、 フェアトレード、有機栽培、環境保全コーヒー(スターバックスコーヒー) エコプロダクツの開発、地雷除去プロジェクト(オムロン) コーズ・リレイティッド・マーケティング、NPOとのフランチャイズ、フィランソロピー

(12)

4.4 社会的責任と戦略 社会的責任の概念を戦略に組み込んでみよう。 そのために社会的責任のレベルに応じた戦略とそ れを管理するコントロール・レバー・内部統制シ ステムとの関連はどのようなものになるか。各活 動レベルごとにその事業の段階や環境によってレ バーを使い分け、あるいは複数のレバーを管理す ることで戦略を実行することができる。 CSRのレベル1:日常的な経営活動のレベル。 日常的な経営活動のプロセスにおける社会的公正 や倫理、環境や人権などへの配慮を取り込んでい くこのレベルでは、製品の品質や安全性に加えて、 環境対策、人権対策、情報公開など法令や基準 を遵守し違法な行為をしない等、企業の本業のリ スクを回避しながら業務活動を行うために、企業 のミッションやステートメントを提示し、事業の 方向性、境界を明確に再確認することが必要とな る。不確実な環境では大きな組織全体でのコミュ ニケーションを図り対応することがむずかしくな るので、情報を共有するために学習と議論できる 対話型の組織が必要となる。また、大きな組織こ そ小さな失敗が及ぼす影響は大きく広がる。その ための日常的な内部統制制度への取り組みは欠か せないものとなる。 CSRのレベル2:社会的事業や製品のレベル。 社会的なニーズや市場の動向によって新製品開 発、新規事業を行うこのレベルでは、環境配慮型 製品の開発、障害者・高齢者支援の商品・サービ スの開発、地域再開発、フェアトレード、社会的 責任投資など新しい社会的価値を創造する事業へ と進展させる。そこでは成長が期待される事業で あるだけに収益性や効率性も求められるようにな る。新規の事業では成長のための独立性を重視す る一方、当初の社会的目標や理念・信条が忘れら れ、隣接する事業との関連があいまいになる恐れ がある。事業の方向を示すためにも基本的価値観 や理念の表明が必要なレベルである。 CSRのレベル3:社会貢献活動のレベル。企業 の持つ経営資源を活用してコミュニティへの積極 的な支援活動を行うこのレベルは、金銭的な寄付、 非金銭的な社会貢献や本業や技術を活用したフィ ランソロピーを行う。事業として発展するかどう かわからないものが含まれ、創業期の企業形態で ある。コーズ・リレイティッド・マーケティング (cause related marketing)や戦略的なフィランソロ ピーがこのレベルに含まれる[谷本 2004]。小規 模の組織であるので、目的意識や理念が明確にさ れており、それが情熱となって浸透し献身的な努 力を引き出すことを可能にしている。対顧客との コミュニケーションをとることが容易なため機敏 に対応することができる。とくに制度化されたシ ステムを必要としないが情報を信頼のおけるもの とするために内部統制が必要となる。 このレベルは、企業にとって収益性・経済性と 表3 社会的責任の3つのレベルと要素 レベル1 日常的な経営活動のプロセスに社会的公正・倫理性・環境への配慮の組み込み 日常的環境対策、人権対策、製品の品質・安全性、労働環境、情報公開など レベル2 社会的事業・商品・サービス、新規事業の開発 環境配慮型商品の開発、障害者・高齢者支援商品の開発、社会的責任投資など レベル3 社会貢献活動 寄付や非金銭的貢献、企業の経営資源を活用した社会貢献、コミュニティへの支援活動、フィランソロピーなど 谷本[2004]から修正作成 表4 社会的責任の各レベルの活動をコントロールするレバー 信条・理念 ○ △ 事業・境界 ○ △ 診断的コントロール ○ ○ 相互作用的コントロール ○ ○ 内部統制システム ○ ○ ○ レベル1 日常の経営活動 社会的事業・製品レベル2 社会貢献活動レベル3

(13)

結びつかない分野と考えられてきた。寄付や社会 的貢献などの活動は、企業の評判を良くしたり従 業員の士気を高めることはあっても、企業競争力 の改善にはならないと考えられてきた。確かに多 くの企業の寄付行為や社会貢献プログラムは戦略 的ではなかった。しかし、企業の専門能力を提供 することで、この分野に社会的目標と経済的目標 を同時に取り込み、企業と社会の双方がメリット を得られるような戦略的な仕組みが考えられてい る[Porter & Kramer 2003]。

また、企業と非営利組織(NPO)との協働が 成果を上げている例が報告されている。[Austin 2000]では、シティ・イヤー(City Year)とティ ンバランド(Timberland)、ネーチャー・コンサー バンシー(The Nature Conservancy)とジョージァ パシフィック(Georgia-Pacific)、アムネスティ・ インターナショナル(Amnesty International)と リーボック(Reebok International)、スターバック ス(Starbucks)とケア(CARE)など数々の協働 による成功・失敗の事例が記述されている。 5.結び 企業の社会的責任とは何か、この責任に管理会 計はどう取り組むことができるかという問題を検 討した。責任という実体のない社会的な虚構、し かしそれが一旦社会から問題点として突きつけら れたときに経営者は事実を隠ぺいする、責任を転 嫁する、無罪を主張する、そして謝罪する。今ま での多くの経営者がとった行動である。実体のな い責任、それが社会的に問われた時多くのステー クホルダーからの信頼は失われ、今まで築いてき た企業の価値は破壊される。管理会計は企業の価 値を高めるべく経営者にとって有効な道具として 機能してきた。しかし、それが結果として企業の ステークホルダーに損失を与えたことも事実であ る。管理会計という道具そのものに、またその使 い方に社会的責任のレベルに応じた工夫を取り入 れることが必要になっている。社会的責任を戦略 の中に組み込み、戦略を管理するコントロール・ レバーを組み合わせることが、少なくとも企業の 価値を棄損する可能性を減らすことになる。そし て社会に対して積極的に価値を創造することに よって従業員の士気を高め、ステークホルダーを 豊かにすることに資することを願っている。 参考文献 [森本 1994]森本三男『企業社会責任の経営学的研究』 白桃書房、1994年 [十川 2005]十川廣國『CSRの本質』中央経済社、2005年 [谷本 2004]谷本寛治編著『CSR経営』中央経済社、 2004年 [伊藤 2004]伊藤和憲「CSRにおける管理会計の役割」 企業会計Vol.56(9) pp.1281-1287、2004年 [小坂井 2008]小坂井敏晶『責任という虚構』東京大学 出版2008年、第5章 [小浜 2005]小浜逸郎『「責任」はだれにあるのか』 PHP新書、2005年、pp.192-216 [経済同友会 2003]経済同友会『第15回企業白書「市場 の進化」と社会的責任経営』2003年3月 [島田 1993]島田晴雄『開花するフィランソロピー』 TBSブリタニカ、1993年 [岩井 2003]岩井克人『会社はこれからどうなるのか』 平凡社 第七章 [加登 1993]加登 豊『原価企画:戦略的コストマネジ メント』日本経済新聞社 [日本経済団体連合会 1991]『企業行動憲章』 [小林 2005]小林慶一郎『経済ニュースの読み方』朝日 新聞社、2005年、第14章 [伊丹 2000]伊丹敬之『日本型コーポレートガバナンス』 日本経済新聞社、2000年 [青島・加藤 2003]青島矢一、加藤俊彦『競争戦略論』  東洋経済新報社、2003年 [天野・大江・持続可能性研究会2004]天野明弘、大江 瑞絵、持続可能性研究会『持続可能社会構築のフ ロンティ』関西学院大学出版会、2004年 [國部 2002]國部克彦『マテリアルフローコスト会計』 日本経済新聞社、2002年 [櫻井 2004]櫻井通晴『管理会計』同文館出版、2004年 [清水 2004]清水 孝『戦略マネジメント・システム  企業・非営利企業組織のバランスト・スコアカー ド』東洋経済新報社、2004年 [日本規格協会 2004]日本規格協会編『CSR企業の社会 的責任事例による企業活動最前線』、2004年 「変革のベスト・プラクティス BSC成功企業10社の実 践プロセス」「東京三菱銀行」ダイヤモンド・ハー

(14)

バード・ビジネスレビュー、2003年8月号 [峰 2000]峰如之介『リコーの環境価値マネジメント』  ダイヤモンド社、2000年 [湯田・矢沢2004]湯田雅夫、矢沢秀雄『環境管理会計 概論』税務経理協会、2004年 [吉澤 2001]吉澤 正『リコーにおける環境マネジメン トの実際』日科技連、2001年

[Fauconnet 1920]P. Fauconnet, La Responsabilitē. Ētude de sociologie, Paris, Alcan, 1928, p234

[Austin 2000]J. E. Austin, The Collaboration Challenge: How Nonprofits and Business Succeed Through Strategic Alliances, Jossey-Bass Publisher, San Francisco [Dore 2000]Ronald Dore, Stock Market Capitalism:

Welfare Capitalism, 藤井眞人訳『日本型資本主義と 市場主義の衝突』東洋経済新報社、2001年 [Anthony 1965]R. N. Anthony, Planning and Control

Systems: A Framework for Analysis, Harvard University Press 1965 高橋吉之助訳『経営管理会計システムの 基礎』ダイヤモンド社、1967年

[Anthony & Govindarajan 1992]R. N. Anthony & V. Govindarajan, Management Control Systems, 7th edi.

Irwin

[Porter 1980]M. E. Porter, Competitive Strategy, The Free Press, 1980 土岐坤他訳『競争の戦略』ダイヤモン ド社、1982年

[Porter & Kramer 2003]M. E. Porter & M. R. Kramer, "The Competitive Advantage of Corporate Philanthropy", Harvard Business Review, Dec 2002, pp.57-68 「競争優 位のフィランソロピー」ダイヤモンド・ハーバー ド・ビジネスレビュー、March, 2003、pp.24-43 [Drucker 1974]Peter. F Drucker, The Practice of

Management, Harper & brothers Publishers, New York, 1975, p37, 『マネジメント』野田一夫監修、現代経 営研究会訳、p46、ダイヤモンド社、1987年

[Popper 1957]Karl R. Popper, The Poverty of Historicism, Poutlege & Kegan Paul, London, 1957, pp.27-40, 『歴 史主義の貧困』市井三郎・久野収訳、中央公論社、 1961年、pp.49-60

[Popper 1962]Karl R. Popper, Conjectures and Refutations: The Growth of Scientific knowledge, Harper & Publishers, New York, Hagerstown, San Francisco, London, 1963, pp244-245, 『推測と反駁 科学的知識 の発展』藤本隆志・石垣壽郎・森 博訳、法政大 学出版局、1980年、pp415-416

[Mintzberg 1987a]H. Mintzberg, Five P's for Strategy, California Management Review, 1987, Fall 30 (1), pp.11-24

[Mintzberg 1987b]H. Mintzberg, Crafting Strategy, Harvard Business Review, July-Aug 1987, pp.66 ∼ 75「戦略ク ラフティング」ダイヤモンド・ハーバード・ビジ ネスリビュー、2003年1月号、pp.72 ∼ 85

[Mintzberg et al 1998]H. Mintzberg, B. Ahlstrand and Lampel, J, Strategy Safari: A Guided Tour Through the Wilds of Strategic Management, Simon & Schuter; 1st edi. 斉藤他訳『戦略サファリ戦略マネジメント・ガ イドブック』東洋経済新報社、1999年

[Mintzberg 1994]H. Mintzberg, The Rise and Fall of Strategic Planning, Prentice-Hall. 中村監訳『戦略計画、 創造的破壊の時代』産能大学出版、1997年

[Simons 1994]R. Simons, Levers of Control: How Managers use Innovative Control Systems to Drive Strategic Renewal, Harvard Business School press. 中 村他訳『ハーバード流「21世紀経営」4つのコント ロール・レバー』産能大学出版、1998年

[Simons 2000]R. Simons, Performance Measurement and Control systems for Implementing Strategy, 1st edi. Prentice-Hall. 伊藤監訳『戦略評価の経営学』ダイ ヤモンド社、2003年

参照

関連したドキュメント

Abstract: In this paper we consider the affine discrete-time, periodic systems with independent random perturbations and we solve, under stabilizability and uniform observability

Based on the stability theory of fractional-order differential equations, Routh-Hurwitz stability condition, and by using linear control, simpler controllers are designed to

In [2], the ablation model is studied by the method of finite differences, the applicable margin of the equations is estimated through numerical calculation, and the dynamic

The evolution of chaotic behavior regions of the oscillators with hysteresis is presented in various control parameter spaces: in the damping coefficient—amplitude and

In [11, 13], the turnpike property was defined using the notion of statistical convergence (see [3]) and it was proved that all optimal trajectories have the same unique

Where a rate range is specified, the higher rates should be used (a) in fields with a history of severe weed pressure, (b) when the time between early preplant tank mix and

Flexstar GT 3.5 may be applied as a preplant or preemergence burndown application in cotton or as a postemergence directed application in glyphosate-tolerant (GT) cotton* and as

TriCor 4F herbicide tank mix combinations are recommended for preplant incorporated applications, pre-emergence surface applications, Split-Shot application and Extended