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46 和泉瑶伽 谷口武士 毛惠平 山本福壽 山中典和 2 年間における乾燥ストレスに対する生理生態的反応の樹種間差を明らかにすることを目的として調査を行った 2. 調査地調査は, 中国内蒙古自治区のオルドス高原北部に位置するクブチ砂漠 (4 18 N, E, 標高 1,8 m) の砂丘斜

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* 連絡先著者(Corresponding author):〒680-0001 鳥取市浜坂 1390 E-mail:[email protected]

論文

ORIGINAL ARTICLE

中国内蒙古自治区クブチ砂漠に植栽されたヤナギ科樹木

3 種の

生存,生理および成長

和泉瑶伽

1)

・谷口武士

1)

・毛 惠平

2)

・山本福壽

3)

・山中典和

*1)

1) 鳥取大学乾燥地研究センター Arid Land Research Center, Tottori University

2) 内蒙古大学生命科学学院 College of Life Science of Inner Mongolia University

3) 鳥取大学農学部 Faculty of Agriculture, Tottori University

摘要:中国内蒙古自治区クブチ(庫布其)砂漠で,小葉楊(Populus simonii Car.),新疆楊(Populus alba var. pyramidalis Bunge) および垂柳(Salix babylonica L.)のヤナギ科樹木 3 種を 2013 年 4 月に砂丘斜面へ植栽し,植栽後 2 年間の生存,生理および成長 の樹種間比較を行った。2012 年と 2013 年には降水量が多く,すべての樹種で生存率が高かった。乾燥した 2014 年には,すべて の樹種で葉の炭素安定同位体比の増加や浸透圧調節物質の蓄積などによる耐乾性の向上がみられた。しかし,浸透圧調節物質の含 有量には樹種間に大きな差がみられた。新疆楊では先枯れによる負の成長や,他樹種より小さい気孔コンダクタンスが確認され, 新疆楊はクブチ砂漠の砂丘斜面への植栽には不適切であると考えられた。 キーワード:クブチ砂漠,乾燥ストレス,浸透圧調節物質,小葉楊,新疆楊,垂柳

IZUMI, Yuka, TANIGUCHI, Takeshi, MAO, HuiPing, YAMAMOTO, Fukuju and YAMANAKA Norikazu: Survival, growth and physiological features of 3 Salicaceae plants planted in Kubuqi desert in Inner Mongolia, China

Abstract: The survival rate, physiology and growth of Populus simonii, Populus alba var. pyramidalis and Salixbabylonica trees planted in April, 2013, on a dune slope in Kubuqi desert, Inner Mongolia, China, were studied in August, 2013 and 2014. Their survival rate was high because of much precipitation in 2012 and 2013. The drought tolerance of all species seems to be improved because of raised δ13C and osmolytes accumulation in leaves in 2014. However, P. alba is considered to be unsuitable

for planting on dunes in Kubuqi desert because P. alba showed stem die-back and low stomatal conductance in dry year. Key words: Kubuqi desert, drought stress, osmolytes, Populus simonii, Populus alba var. pyramidalis, Salix babylonica

1. はじめに 近年,世界の乾燥地では砂漠化の進行が問題となっており, 中国は深刻な影響を受けている国の1 つである。中国の国土 の約52 %は乾燥地域および半乾燥地域に分類され25),砂漠 化の危険がある土地は推定で33.4 万 km2に達し,すでに砂 漠化した土地は約17.6 万 km2に及んでいる13)。砂漠化は中 国北部の地域で最も深刻であり22),その大部分は内蒙古自治 区で起きているといわれている18)。内蒙古自治区クブチ(庫 布其)砂漠は,元来草原であったが,過放牧,過開墾および 薪炭材の過剰搾取などの人為的攪乱により裸地化し18, 24),固 定砂丘から流動砂丘へと砂漠化が進行することにより22),年 々砂漠面積が拡大している13)。砂漠化の進行に伴い,砂嵐の 発生頻度が増加しており8, 13),日本においても黄砂飛来頻度 の増加が生じている7) このような砂漠化の対策として,中国内蒙古自治区では多 くの緑化植物が植栽されている。しかし一方で,緑化にあた り植栽個体の植栽後数年間における枯死率の高さが大きな問 題となっている。乾燥地における植物が生育阻害および枯死 を引き起こす主な原因に,土壌の水分欠乏による乾燥ストレ スが挙げられる21)。特に,砂丘斜面に生育する植物において, 砂丘上部は地下水からの距離が遠いことから,生育阻害や枯 死の発生が確認されている3, 5, 9) 一般的に,乾燥などの悪環境に生育する植物は,様々な方 法でストレスを回避することが知られている。その1 つに, 気孔を閉鎖し蒸散抑制を行うことで,樹体内の水分欠乏を防 ぐことが挙げられる23)。また,糖,糖アルコールおよびベタ インなどの浸透圧調節物質を蓄積することにより,細胞内の 浸透圧を高め,水の吸収を可能にする6, 10)。しかし,このよ うな耐乾性の強さは樹種によって大きく異なる1, 6, 23)。した がって,乾燥地域の緑化に用いる植栽樹種の選択にあたり, その樹種の生理生態的特性の情報は重要である23)。しかしな がら,実験条件下では樹種間の生理生態特性の比較が行われ ているものの1, 6, 20),砂漠化地域の同一条件下で比較した研 究例は少ない。そこで本研究では,中国内蒙古自治区クブチ 砂漠の同一砂丘斜面上にヤナギ科樹木3 種を植栽し,植栽後

論 文

(2)

2 2 年間における乾燥ストレスに対する生理生態的反応の樹種 間差を明らかにすることを目的として調査を行った。 2. 調査地 調査は,中国内蒙古自治区のオルドス高原北部に位置する クブチ砂漠(40°18′N, 109°41′E, 標高 1,080 m)の砂 丘斜面(斜面方位 N80W, 平均斜度 6.2°)で行った。クブ チ砂漠はオルドス高原の毛烏素砂地の北側,黄河の南側に位 置する,長さ400 km,幅 15~50 km の砂丘群からなり,総 面積約16,100 km2をもつ15)。図-1 に調査地より 80 km 南に 位置する東勝(Dongsheng, 39°6′N, 109°6′E, 標高 1,466 m)における過去10年間の年降水量および気温を示す。 年平均気温は7.7℃,最高気温および最低気温は 36.0 ℃,- 27.0 ℃であった。年平均降水量は 200~300 mm 程度である が,2012~2014 年にかけて降水量が多かった。クブチ砂漠 は砂漠地帯の中では降水量が比較的多い。また,黄河が近い ことから地下水位は高く2, 18),地表面より1~4 m に位置す るといわれるが,砂丘の地勢によって異なる 2)。植生はマメ 科の花棒(Hedysarum scoparium Fisch & Mey)やアカザ 科の沙米(Agriophyllum squarrosum L.)などの低木,葦 (Phragmites communis Trin.), 沙鞭(Psammochloa

villosa(Trin.)Bor.)などが優占する草原地域である 2, 21)。 1998 年以来,砂丘や砂地を固定するため,成長の早いポプラ 類が200km2に渡り植林されている2)。 3. 材料と方法 3.1 調査対象木 調査対象木は,内蒙古自治区の植林に用いられている小葉 楊(Populus simonii Car.),新疆楊(Populus alba var.

pyramidalis L.),垂柳(Salix babylonica Bunge)を用いた。 小葉楊はヤナギ科ハコヤナギ属の高木種であり,寒さや乾燥 に耐えるため,砂地造林や保護林用として植栽されており, クブチ砂漠の緑化においても多く用いられている。その木材 は建築材や家具,薪炭材などに適している。新疆楊はヤナギ 科ハコヤナギ属の高木種であり,灌漑可能な荒漠周辺やオア シスに植栽され,優良な防護林用として利用されている。小 葉楊と同様に,材は建築や家具などに利用される。垂柳は, ヤナギ科ヤナギ属の高木であり,荒漠地帯の町や,黄河と長 江流域に多く植栽されている。堤防を強め,街路や庭園の緑 化に利用され,木材は家具として,樹皮はカッチの抽出や製 紙に利用可能である16, 18)。 3.2 植栽方法 2012 年 9 月に,砂丘斜面上に 1 m×1 m の草方格を設置し た。草方格とは,麦わらなどを砂中に挿し込み格子状の柵を 作成し,風による砂の移動を抑制する方法である 26)。2013 年5 月に,草方格 1 格子あたりに根の付いた苗を 1 個体ずつ, 地表面から深さ50 cm の穴を掘り植栽した。植栽位置による 違いを除くため,各樹種とも草方格1 列につき 70 個体を 3 列ずつ交互に,計210 本ずつ植栽した。表-1 に植栽時の苗木 の地際直径および樹高を示す。 3.3 調査方法 3.3.1 植栽個体の生存および成長 2013 年 8 月および 2014 年 8 月に,植栽個体の生存および 枯死を確認し,生存率を求めた。測定した個体は,周囲の影 響を除くため,調査地内中央部で同じ比高の各樹種180 本に ついて行った。生存個体については樹高成長量を測定した。 3.3.2 炭素安定同位体比(δ 𝐶𝐶13 )の分析 各樹種とも同じ比高の位置から選木し,2013年 8月(n=20) および2014 年 8 月(n=13~14)に,樹冠上部の陽葉を採取 した。葉は実験室に持ち帰り,乾燥機を用いて80℃で 48 時 間乾燥させた。その後粉砕し,錫カプセルに1 mg 量り取り, 質 量 分 析 計 (Flash2000 & Delta S, Thermo Fisher Scientific. MA, USA)を用いて植物の長期的な水利用効率の 指標として用いられる炭素安定同位体比(以降,δ 𝐶𝐶13 とする)

4)の分析を行った。

3.3.3 クロロフィル蛍光収率(Fv/Fm)の測定

2013 年 8 月に各樹種とも同じ比高の位置から 14 個体ずつ 選木し,携帯型PAM クロロフィル蛍光測定器(MINI-PAM, WALZ Con. Germany)を用いて,20 時以降に各個体樹体上 部の葉1 枚を対象に,クロロフィル蛍光収率(以降,Fv/Fm とする)を測定した。

図-1 調査地より 80 km 南に位置する東勝における年降水量お よび気温

Fig. 1 Annual precipitation and temperature at Dongsheng located 80 km south of Kubuqi

表-1 植栽時の苗木の地際直径および樹高(2013 年 5 月) Table 1 Diameter and height of planted saplings (May,2013)

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 0 100 200 300 400 500 600 700 20 05 20 06 20 07 20 08 20 09 20 10 20 11 20 12 20 13 20 14 T em pe ra tu re (℃ ) A nn ua l p re ci pi ta ti on (m m ) precipitation max. ave. min. Populus simonii 5 21.5 ± 1.0 192.5 ± 5.5 Populus alba var. Pyramidalis 5 25.5 ± 0.4 179.9 ± 7.2 Salix babylonica 5 17.2 ± 0.9 175.9 ± 1.3 Plant species n Diameter(mm) Height(cm)

(3)

3 図-2 各樹種における生存率

測定本数;植栽1 年目が各樹種 n=180,植栽 2 年目は小 葉楊がn=139,新疆楊が n=147,垂柳が n=169。 Fig. 2 Survival rate in each species.

The numbers of individuals ; n=180 in each species in the first year, and Populus simonii(n=139), Populus alba var. pyramidalis(n=147)and Salix babylonica (n=169)in the second year.

図-3 各樹種における樹高成長量

エラーバーは標準誤差を表し,異なるアルファベットは 種間で有意な差があることを示す(Scheffe, p<0.05)。 測定本数(植栽1 年目,植栽 2 年目);小葉楊(n=139, n=138),新疆楊(n=147,n=135),垂柳(n=169,n=166)。 Fig. 3 Height increment in each species

Bars indicate standard errors and different letters indicate significant differences among species (Scheffe, p<0.05). The numbers of individuals(the first year, the second year ) ; Populus simonii

(n=139,n=138), Populus alba var. pyramidalis (n=147,n=135, Salixbabylonica(n=169,n=166) 3.3.4 気孔コンダクタンス(𝑔𝑔𝑠𝑠)の測定

2014 年 8 月にはポロメーター(AP4 Porometer, Delta-T Devices Inc., Cambridge, UK)を用いて,葉の気孔コンダク タンス(以降,𝑔𝑔𝑠𝑠とする)を測定した。各樹種とも同じ比高 の位置から13~14 本ずつ選木し,9 時 25 分から 10 時 10 分 に樹体上部の葉1 枚について測定した。 3.3.5 浸透圧調節物質の分析 1) 糖および糖アルコール 2013 年 8 月および 2014 年 8 月に,各樹種とも同じ比高の 位置から 14 個体ずつ選木し,樹冠上部の陽葉を採取した。 電子天秤を用いて採取直後の葉を生重で0.5 g 量り取り,80 %エタノールを 5 ml 入れた 15 ml プラスチックバイアルに採 取した。実験室に持ち帰りサンプルを粉砕し,遠心分離(5,000 回転, 10 分)した後,上澄みを回収した。さらにエタノール 5 ml を加え,粉砕および遠心分離を行い,上澄みを回収した。 この粉砕し上澄みを取る工程を計3 回行った。15 ml の上澄 みが入ったプラスチックバイアルを 50℃に設定した乾燥機 に入れエタノールを蒸発させた後,10 ml にメスアップし, 分析直前に濾過した。分析には高速液体クロマトグラフ HPLC(RF-10AxL, Shimadzu Co., Japan)を用いて,ポス トカラム法 12)により糖および糖アルコール含有量の測定お よび解析を行った。糖含有量としてスクロース,マルトース, ラムノース,マンノース,フルクトース,ガラクトース,グ ルコースを,糖アルコール含有量としてピニトール,イノシ トール,マンニトール,ソルビトールの検出を行った。 2) ベタインの分析 2013 年 8 月および 2014 年 8 月に,各樹種とも同じ比高の 位置から植栽個体を選木し,樹冠上部の陽葉を採取した(n= 6~10)。採取した葉の生重を測定し,80℃で 48 時間以上乾 燥させ,乾燥重量を測定した。サンプルを粉砕し,μチュー ブにサンプル65 mg と蒸留水 1 ml を加えて混ぜ合わせ,イ ンキュベーターを用いて75℃で 20 分間熱抽出した。分析直 前にフェナシルエステル化反応させ,キャピラリー電気泳動 装置(CAPI-3300, Otsuka Electronics Inc., Japan)でベタ イン含有量の測定を行った。ベタイン含有量として,グリシ ンベタイン(以降,GB とする),β-アラニンベタイン(β -AB),γ-ブチロベタイン(γ-BB)の含有量を求めた。 4. 結果 4.1 植栽個体の生存および成長 図-2 に 2013 年(以降,植栽 1 年目とする)および 2014 年(植栽2 年目)の樹種別生存率を示す。植栽 2 年目の生存 率は,植栽1 年目の生存個体数を分母として求めた。各樹種 ともに植栽1 年目には,生存率が 75 %以上であり,植栽 2 年目にはすべての樹種において90 %以上であった。植栽後 2 年間の生存率は,小葉楊は76.7 %,新疆楊は 75.0 %,垂柳 で92.2 %であった。 図-3 に植栽 1 年目および 2 年目の樹種別樹高成長量を示 す。植栽1 年目には,小葉楊および新疆楊の樹高成長量が, 垂柳より有意に大きかった。植栽2 年目には,新疆楊で樹高 成長量はマイナスの値を示した。小葉楊においても1 年目よ り樹高成長量が小さい傾向がみられたが,垂柳では成長量が 大きい傾向がみられた。植栽後2 年間の樹高成長量は,小葉 楊で33.2 cm,新疆楊で 8.9 cm,垂柳は 35.5 cm であった。 0 20 40 60 80 100 Populus

simonii Populus albavar. pyramidalis Salix babylonica Su rv iv al r at e ( % ) 2013.5-2013.8 2013.8-2014.8 a a b B C A -30 -20 -100 10 20 30 40 Populus

simonii Populus albavar. pyramidalis Salix babylonica am ou nt o f g ro w th (c m ) 2013.5-2013.8 2013.8-2014.8

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4 図-4 各樹種における葉の炭素安定同位体比(δ C13 ) エラーバーは標準誤差を,異なるアルファベットは樹種 間に有意な差があることを示し(Scheffe, p<0.05),ア スタリスクは調査年度間に有意な差があることを示す (Student’s t test, *: p<0.05, **: p<0.01)。

Fig. 4 Stable carbon isotope(δ13C)of leaf in each species

Bars indicate standard errors and different letters indicate significant differences among species(Scheffe, p<0.05 ) . Asterisks indicate significant differences between years (Student’s t test, *: p<0.05, **: p<0.01)

-5 各樹種における気孔コンダクタンス(𝑔𝑔𝑠𝑠

エラーバーは標準誤差を表し,異なるアルファベットは 有意な差があることを示す(Scheffe, p<0.05)。 Fig. 5 Stomatal conductance(𝑔𝑔𝑠𝑠) in each species

Bars indicate standard errors and different letters indicate significant differences among species(Scheffe, p<0.05) 4.2 乾燥ストレスに対する生理的応答 4.2.1 炭素安定同位体比(δ C13 -4 に植栽 1 年目および 2 年目の樹種別 δ C13 を示す。植栽 1 年目には,樹種間における差はみられなかった。2 年目に は垂柳が他樹種より有意に大きかった。また,植栽2 年目は 1 年目と比較して,小葉楊および垂柳で δ C13 が有意に大きく, 新疆楊でも大きい傾向がみられた。 4.2.2 クロロフィル蛍光収率(Fv/Fm) Fv/Fm は,植物がその生育環境下で受ける慢性的な光阻害 の評価として用いられ,植物がストレスを受けていない時に は約0.8 を示し,光阻害が生じるほど値は低下する。植栽 1 年目に測定したFv/Fm において,小葉楊は 0.831±0.004, 新疆楊は0.836±0.006,垂柳は 0.829±0.005 であり,樹種 間に有意な差はみられなかった。 4.2.3 気孔コンダクタンス(𝑔𝑔𝑠𝑠) 図-5 に植栽 2 年目に測定した𝑔𝑔𝑠𝑠の値を示す。小葉楊と垂柳 の間では,有意な差は認められなかったが,新疆楊は他樹種 よりも有意に小さい値を示した。 4.2.4 浸透圧調節物質 図-6 に植栽 1 年目および 2 年目の各樹種における糖,糖ア ルコールおよびベタイン含有量を示す。全樹種において糖は スクロース,フルクトース,ガラクトース,グルコースの蓄 積がみられた。小葉楊は,両年ともに他の2 種と比較して, フルクトースおよびグルコース含有量が有意に多く,スクロ ース含有量が有意に少なかった。 糖アルコールについては,両年ともにピニトールおよびイ ノシトールの蓄積がみられた。ピニトール含有量は,両年と もに小葉楊で有意に多かった。イノシトール含有量は,両年 ともに小葉楊で有意に小さく,垂柳で有意に多かった。 ベタインは,GB およびβ-AB の蓄積がみられたが,GB はごく微量であった。また,β-AB は小葉楊で有意に小さか った。 5. 考察 5.1 植栽個体の生存,生理および成長に年降水量の変動が与 える影響 植栽1 年目にはすべての樹種において,生存率が 75 % 以 上であった(図-2)。クブチ砂漠でポプラの植栽後に灌漑を 行った事例では,生存率は約75 %と報告されている14)。本 研究では,灌漑を行っていないにも関わらず,同程度の生存 率に達していた。これは,植栽前年にあたる2012 年,植栽 1 年目にあたる 2013 年の年降水量が平年より多く(図-1), 湿潤な環境であったと考えられ,植栽個体の生存,生理およ び成長に影響を与えているものと考えられた。また,Fv/Fm においても,植栽1 年目はすべての樹種で 0.8 以上の値を示 し,慢性的な環境ストレスを受けていなかった。これも,植 栽1 年目の湿潤な環境が影響しているものと考えられた。 しかし,植栽2 年目にあたる 2014 年は,降水量は平年並 みであり,1 年目より乾燥した環境であった。その結果,植 栽2 年目には小葉楊の樹高成長量の減少および新疆楊のマイ ナス成長がみられたと考えられる。 また,植栽1 年目と比較して 2 年目では δ C13 が,小葉楊お よび垂柳で有意に大きく,新疆楊でも大きい傾向がみられた。 このことから,乾燥した植栽2 年目には,植栽個体が気孔閉 鎖により蒸散抑制を行っていることが示唆された。さらに, ベタイン含有量は小葉楊を除いて,植栽2 年目で多かった。 これらのことから,乾燥した植栽2 年目には 3 樹種ともに, a a a B B A -28 -27 -26 -25 Populus simonii Populus alba var.

pyramidalis babylonicaSalix

St ab le c ar bo n is ot op e ra ti o in le af (‰ ) 2013.8 2014.8

*

**

n=20 n=14 a b a 0 100 200 300 400 500 Populus

simonii Populus albavar. pyramidalis Salix babylonica gs (m m ol /m ²/s ) n=14 n=13 n=13

(5)

5 図-6 各樹種における糖(上)・糖アルコール(中)・ベタイン (左下:GB,右下:β-AB)含有量 測定本数:糖(n=14),糖アルコール(n=14),ベタイ ン(2013: n=20,2014: n=14),エラーバーは標準誤差 を表し,異なるアルファベットは有意な差があることを 示す(Scheffe, p<0.05)。

Fig. 6 Contents of sugar(upper), sugar alcohol(center) and betaine(left side in lower part: glycine betaine, right side in lower part).

The numbers of individuals are ; sugar(n=14), sugar alcohol(n=14),Betain(n=20 in 2013, n=14 in 2014), Error bars indicate standard errors and different letters indicate significant differences ( Scheffe, p<0.05) 気孔閉鎖と浸透圧調節物質の蓄積により耐乾性が向上したと 考えられた。 5.2 植栽個体の生存,生理および成長における樹種間比較 植栽個体の生存率は,すべての樹種において高く,垂柳で は2 年間を通して高い値を示した。樹高成長量については, 植栽1 年目の垂柳が他樹種より有意に小さかった。しかし, これは垂柳が他樹種と比較して,苗木の下部から枝が発生し ているためであり,樹高成長量が過小評価されたと考えられ る。これに対し,植栽2 年目の樹高成長量については,垂柳 では旺盛な成長がみられたが,小葉楊および新疆楊では1 年 目より小さく,特に新疆楊ではマイナスの値を示した。新疆 楊は乾燥に対して必要な水分量を抑制するため,先枯れを起 こす23)ことが確認されており,本調査地においても同様の理 由により成長量がマイナスの値を示した。また,気孔コンダ クタンスにおいて,新疆楊は他樹種より有意に小さく,蒸散 量および光合成量が抑制されていると考えられる。これらの 点から,新疆楊は他2 樹種と比較して乾燥ストレスへの耐性 が弱いと考えられた。 浸透圧調節物質については,すべての樹種で蓄積が確認さ れたが,その含有量には樹種間で差がみられた。ベタイン含 有量はすべての樹種で少なく,浸透圧調節の役割としては小 さいものと考えられる。宮崎ら(2014)はクブチ砂漠に生育 する小葉楊の浸透圧調節物質を調べ,ソルビトールおよびマ ンニトールを含めた糖アルコールが多く蓄積された11)ことを 報告しているが,今回それらは検出されなかった。また,同 様に小葉楊でγ-BB の蓄積11)が報告されているが,本研究で は検出されなかった。 現在,クブチ砂漠での緑化には,小葉楊が多く用いられて いる。本研究においても,小葉楊は乾燥条件下で気孔閉鎖や 多量の糖を含む浸透圧調節物質を蓄積することで耐乾性を高 め,高い生存率を維持していると考えられた。また,小葉楊 は埋砂により個体のほぼ全体が埋砂されたとしても不定根を 発生させ 11),伸長成長を促進させる11, 17)ことが知られてい る。さらに,小葉楊は水平根を地表面からごく浅い深さに伸 ばし,根萌芽を形成する種である20)といわれており,流動砂 丘の植栽に適していると考えられる。一方で,新疆楊は先枯 れによる樹高成長量の減少や,小さい蒸散量などから,小葉 楊に比べて乾燥ストレスに弱いことが示唆された。また,目 視により新疆楊の樹勢を観察したところ,植栽2 年目には葉 がかなり乾燥しており,今後乾燥した環境が継続すれば,枯 死個体が増加することが予想された。これらの点を踏まえる と,新疆楊はクブチ砂漠の砂丘斜面への植栽に不適切な樹種 であると考えられる。 現在,クブチ砂漠の緑化には小葉楊が多く用いられている が,垂柳は生存率および成長量が大きく,乾燥に対する耐性 が強いことが示唆され,垂柳はクブチ砂漠の砂丘斜面への植 栽に適した樹種の1 つであると考えられた。 6. おわりに 本研究では,中国内蒙古自治区クブチ砂漠の同一砂丘斜面 上にヤナギ科樹木3 種を植栽し,植栽後 2 年間における乾燥 b b a a n.s. a a a a a b b b b b a a c b a c b 0 100 200 300 400 500 2013 2014 2013 2014 2013 2014 2013 2014 sucrose fructose galactose glucose

su ga r co nt en t ( μm ol /g D W ) Populus simonii

Populus alba var. pyramidalis Salix babylonica a a b b b b a b c b a a 0 20 40 60 80 100 120 2013 2014 2013 2014 pinitol inositol su ga r al co ho l c on te nt (μ m ol /g D W ) b c a b a a 0 10 20 30 40 2013 2014 β-A la ni ne b et ai n co nt en t ( μm ol /g D W ) n.s. n.s. 0 0.2 0.4 0.6 0.8 2013 2014 gl yc in e be ta in c on te nt (μ m ol /g D W )

(6)

6 ストレスに対する生理生態的反応の樹種間差を求めた。乾燥 した植栽2 年目には,すべての樹種において耐乾性の向上が みられた。しかし,新疆楊は先枯れによるマイナス成長およ び気孔コンダクタンスの低さから他樹種より耐乾性が弱いと 考えられ,クブチ砂漠の砂丘斜面の緑化には不適切であるこ とが示唆された。本研究では,枯死率の高い植栽直後の生存 ・生理および成長に着目したが,流動砂丘の固定のためには, それらに関する長期的な評価が必要であり、今後の課題と考 える。 謝辞:本研究は,文部科学省特別経費事業「東アジア砂漠化 地域における黄砂発生源対策と人間・環境への影響評価」の 一環として行われました。また,一般社団法人地球緑化クラ ブの原鋭次郎氏,チャオクー氏およびスチン氏には現地調査 において多大なご協力いただきました。ここで厚く御礼申し 上げます。 引用文献 1) 渥美裕子・山本福壽・玉井重信・山中典和(2001)異なる 水分条件におけるヤナギ属 3 種の生理生態的反応, 日本緑 化工学会, 27(1)102-107.

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7) 黄砂問題検討会(2005)黄砂問題検討会報告書.

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12) Murata, H., Iwanaga, F., Ailijiang, M., Imada, S., Tanaka, K. and Yamanaka, N.(2013) Significant improvement of salt tolerance with 2-day acclimatization treatment in Elaeagnus oxycarpa seedlings. Environmental and Experimental Botany 77: 170-174. 13) 王 林和・三木直子・李 玉霊・楊 霊麗・吉川 賢(2008) 中国の砂漠化防止に関する歴史および現在. 日本緑化工学 会誌, 33(4): 554-560. 14) 太田誠一(2007)中国における緑化活動 15 年の実績と問題 点-特集「中国乾燥地における緑化技術とその将来」(Ⅲ) -. 日本緑化工学会誌, 32(4): 480-483. 15) 大手信人・鈴木雅一・小橋澄治(1990)中国, 内蒙古自治 区毛烏素沙地における旱柳(Salix matsudana Koidz.)の 成育形態に及ぼす土壌水分条件の影響(Ⅰ). 日本緑化工 学会誌, 15(4): 20-30. 16) 劉 媖心・徳岡正三(2002)中国砂漠・沙地植物図鑑木本 編. 東方書店. 17) 立石麻紀子・宮崎寛大・山本福壽・毛惠平・岡田憲和・山 中典和(2013)中国内蒙古クブチ砂漠に植栽された小葉楊 (Populus simonii Carr.)の水利用と成長に及ぼす埋砂の 影響, 日本緑化工学会誌, 39(1): 68-73.

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19) Weather Underground. “Baotou, Nei Mongol Zizhiqu.” Weather Underground のホームページ

http://www.wunderground.com/

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Fig. 1  Annual precipitation and temperature at Dongsheng  located 80 km south of Kubuqi
図 -3 各樹種における樹高成長量
図 -5 各樹種における気孔コンダクタンス(
Fig. 6 Contents of sugar ( upper ) , sugar alcohol ( center ) and betaine(left side in lower part: glycine betaine,  right side in lower part )

参照

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