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カクレガニ類の最近の話題

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カクレガニ類の最近の話題

西 光 一

カクレガニは他 の動物と共生関係をもっ特異な グループで,これまでに多くの研 究者の関 心 を引 いてきた . これはわが国に限ったことではなく , オ ラ ン ダ か ら iCrustaceorum calatogusJ のー っ として , この科 の全世 界の種と関連文献の リス ト が発行されており (Schmitt.et al.. 1972), この変 わったカニへの関心 の深さがうかがえる . また こ の仲間 はアサ リやカキなどの水産種に寄居するこ とが多く ,貝の身入りとの関係など産業面でも注 目される . しかしながら この仲間 に関しては分か らないことが非常に多く ,一方ではまとまった形 で情報を得る機会 は少な い. そこで1980年代から 1994年現在までに発表された 論文を基に , わが国 を中 心 とした最 近 の 知 見 について分 野別 に紹介 し,今後への参考資料 として 供 したい .

. 分 類 わが国に生息する種類について桝井 (1976), 三宅( 1983) では29種が挙げ、られている . 1995年 現在では以下の様になっている .

カク レガニ科 (F amil y Pinnotherid ae) カク レガニ! A科 (Subfamily Pinnotherinae)

シロピンノ属 (G enusP in notheres) P . p holadis D e H aan, 1835 カギヅメピンノ P . parvulus Stimpson, 1858 シロピンノ P. boninel1sis Stimpson, 1858 クロピンノ

P. sinensis S hen, 1932 オオシロビンノ P . a lcocki Rathbun, 1909 ヒラ ピンノ P. cyclinus Shen, 1932 マルビ ンノ P . corbiculae Sakai, 1939 シジミビンノ P . bidentatus Sakai, 1939 フタノ、ピンノ P. laquei Sakai, 1961 ホ ウスキピンノ

Kooichi K ONISI-II: So m e topics on pea crabs of Japan

セスジピンノ属 (G enusD u rckheim ia) D. caeca Burger, 1895 セスジピンノ

サザエピンノ属 (Genus 0γthotheres) O. turboe Sakai, 1969 サザエ ビンノ

ツメナシピンノ属 (G enus O stracotheres) O. subg lobosus (s aker. 1907) ツメナシピンノ O . t01l1,e叫tipesT akeda et K onishi . 1994

ケフ守カツメナシビンノ ヘソピンノ属 (GenusXωtthasω) X m urigera White. 1846 へソピンノ フジナマコガニ属 (G e口usPin naxodes) p_ major O rtm ann, 1894 フジ ナマコ ガニ P. m u t叫ensisSakai, 1939 ムツビン ノ マメガニダマシ属 (G enusSakaina) S. yokoyai (G lassell, 1933) ヨコヤ マメガニダマシ S _ asiatica (Sakai, 1933) マメガニダマシ S. japonica Serene, 1964 ニホンマメガ、ニダマシ S. incisa Sakai, 1969 ヤハズマメガニダマシ

マメガニ亜科 (Subfamily Pinnotherelin ae) マメガニ属 (GenusP仰 山a)

P. tωnida Stimpson. 1858 シロナ マコガニ p_ rathbuni Sakai. 1934 ラスノfンマメガニ P. balanoglossa附 Sakai,1934 ギボシマメガニ

P. haem atosticta Sakai, 1934 アカホシマメガニ ウモ レマメガニ属 (GenusP seu dopinnixa) P. carilla ta O rtm ann, 1894 ウモレ マメガニ

ミナミヨコナガピンノ属 (G enusT etrias) T. fisheri (A _ Milne E d ward s, 1867)

ミナミヨコナ ガビンノ

ヨコナガピンノ並科 (Subfamil y A sthenognathin ae) ヨコナガモドキ属 (G enusA sthenog叩 thu s)

A _ inaequiPes Stimpson, 1858 ヨコナガモ ドキ オヨギピンノ属 (G enusT ritody叩 m ia)

(2)

T. horvathi N obili, 1905 オヨキ、ピンノ T. japonica Ortmann, 1894 ヨコナガピンノ T. rathbuni Shen, 1932 オオヨコナ ガピンノ

メナシピンノ亜科(Subfa m ily Xenophthalmin ae) メナシピンノ属 (G enusXenoththalmus)

x.

p

問 問。theroidesW h ite, 1846 メナシピンノ 以上のように 4亜 科13属31種 が 報 告 さ れ て い る. 10年前から見て, 2つの新種が加わり,新た に1種の分布が確認されている . また海外では多 I 1 11 -U M . A M M V

o

t- -1 1 1 4 U 0. く の 新 属 や 新 種 が 記 載 さ れ つ つ あ る (例 え ば M anning, 1993など) . 以 下わが国で普通に凡ら れる種や,種名が変わったものなどに分けて簡単 に紹介したい . {よく見られる種] オオシロビンノ: わが国で最も普通に見られ るカク レガニと 甘 える . 原記載地はその種名が示 す通り中国である . 同1に示すように分布は太平 洋側 では九州、

1-

岩手県 (大槌湾) まで, 日本海側 では九州、│ー北海道( 石狩湾) までと広く,宿主も 40。 380

...---3 6。

---34・ 32。 30。

---図1. わが国におけるオオ シロビンノの分布

(3)

イガイ類,アサリ ,ハマグリ,オニアサリ,カキ, オオノガイなどと多種多様であ る. より好みの少 ない点も分布が広い理由の ーっかも 知 れない. 最 近では ,街主の 一つであるアサリの移舶に伴い , 他の地域からカニも一緒に移って来たとの報告が ある (伊藤 ,1993). なお 本種にはタイラギガイ に 寄 居 す る 亜 種 (タ イ ラ ギ ピ ン ノ P. sil1ensis atrinae) が知られている . 術主 に対する影響とし ては,身入りの減少などマイナスlujを指摘する場 合が多い( たとえば阪口 ,1979). ク口ピンノ: 原記載地は小笠原諸

l

誌で,本州 の暖流域に分布する. 外形はオオシロピンノに 似 るが,

1

本が黒紫色であるのが特徴で, ケガキある いはオハグロガキに寄! 討する. また第 4 歩脚指節 には輪生する │刷毛はない. 上記のオオシロピンノ とは異なり ,

1A

主選択の幅は狭いようである. カギ ツメピンノ: アズマニシキなどの 二枚貝 に待川し,広く分布する種類である . 歩!闘の指節 は鈎状で,オオシロピンノとは容易に区別出 米る. 本種も合めて貝の 中に寄居ーする種類は ,その成長 段│精や雌雄で外観が若しく異なり , まるで別種の 様に比える . 実際,かつては雌がカイガクレ (P. cardii) ,雄がカギツメピンノ (P. tholadis) と"1-ょ うように別種で記載されていた . ム ツ ピンノ : 北方系カクレガニの代表であ り,外観はカギヅメピンノに良く似ていて 間違わ れることが多い. 宿主は二枚以であるが,

.

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は海 藻に付者して見つかることも多い.

I'i)

じ属で砕j方 系のフジナマコガニでは巻

w

のツメ夕方イからの 記 録 も あ る (池田, 1993). 本種の色は通常は淡 黄色ーオレンジ色であるが,大槌湾で採集された 伽│体 には黒 っぽいものが見られた (武 田・小丙, 199 1) . ラスパンマメガ二: 本種はベントスとして 一人 量に出現することがあり ,マコガレイなと成生魚 の餌とな っている例もある . 幼生から成体群への 加 入過程に関しては , 関口らによる研究がある (Sekiguchi, 1988). オヨギピンノ: しばしば大群泳するので話題 にな ることの多い種類で ,宮 内( 1935) など古く から報告例には事欠かない( 荒川, 1973 ;三宅, 1976 ; 船越, 1989 ; 干

i

f

釈,1989 ; 松尾 ,1991など)• 東京湾で大発生した│ 療にはこれを飽食したススキ の魚肉が普通とは異なる黄色 ・燈色を 呈する個体 が

IIJ

,現 して問題にな ったこともある (Saka iet al.. 1980) . 通常は多毛類と共存しているとされるが, 生前! と全体ゃなぜ大発生するのかについてはほと んとご分か っていない. [珍しい種] 記載されてからその後ほとんど報告のない種類 は,フタハピンノ , シジミピンノ , ウモレマメガ ニなどである. また 4 種においてまだ雄が知られ ていない . [新種 ・新記録 ・種名変更 ] ヒラピンノ (新称 ) : おもにカ リガネエガ イ の外套JJ主に寄!日{ する種類で, 雌雄 の形 ・大きさが 図2. ヒラピンノl雌雄 (左,広島県向島産 ) とヨコヤマメガニダマシ雄 (右,北海道興部産 ) の生体写真

(4)

異なり( 図2 左),雌 は一見オオシロピンノに似る.

しかし全体に 偏平であり,また第 4 8去!拘lの指節の

先端に短い剛毛の櫛状列 がなく ,剛毛も輪生して

いないので区別できる( 図3). 本種は比較的最

近になって分布が確認された例である (Takeda & Kon ishi . 1988). 分布は瀬戸内海から紀伊半島 にかけて確認されているが,調査が進めばより広 がる可能性がある . ツメナシピンノ: 今までこの種は,.Ostracotheres subquadratus SakaiJ の学名で知られていたが, Prezen zer (1988) の砂

f

究によりオーストラ リア に分布する種と 同一で、あることが示された. この 属は第3顎脚の先端に指節がないのが特徴である . ケブカツメナシピンノ (新 称 ) : 沖縄か ら記 載された新種のツメナシピンノであり ,歩脚 に剛 毛 が 密 生 す る の が 特 徴 で あ る (Ta lぽda & Konishi. 1994). ヨコヤマメガニダマシ: これまで原記載地の 陸奥湾以外からは知られ ていなか ったが,北海道 のオホーツク海沿岸を中心に広 く分布することが 絞近確認さ れた (T akedaet al.. 1991 ) . マメガニ 夕、マシ属としては大型で、あり,背叩の形状は北米 同

i

毎日の Parati附!ua属に近い (同2右) 北海道 では主にj州安'1全多毛類(Pseudototamilla reniformis) その他には,わが国から記録のなかったAtha 1!odaclylus属が由紀地方で採れたとの情報もあり (野IU恭一氏ね七) , また新種の可能性がある標本 も何られており,今後検知数は

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えると思われる .

2 .

発 生 このやや問 の幼生は形態が特殊な上 に,同 ー の属 内でも,通常の科かそれ以上のレ ベルの変異があ ることが知られている . たとえば北米産のシロピ ンノ属の P.ostreurnとP. m acu la tus は同 一属であ りながら,足節の形態が前者は 三葉型,後者は 二 父型である( 同4). 通常このような差異は科が 異なる場合にしか比られない. このような事情か らか,系統分類との関係から多くの種類で幼生発 生の記載が行われており,全体の3 2 %に当たる3 亜科 にわたる 10種で一部または全部の幼生則が分 かっていて, 12編も研究例がある. また全幼生期 が分かっているのは,オオシロピンノ( 八坂 ・岩 崎, 1979 ; Konishi, 1983 ; Sook, 1991),カギツ メピンノ (村岡, 1979a ; 福田, 1983 ; Konishi, 1983) ,クロピンノ (村岡, 1977) , フジナマコガ ニ (H ong,1974 ),ムツピンノ (Konishi ,1981b), ニホンマメガニダマシ (Koni shi ,1981a ; 1983), ラ ス パ ン マ メ ガ ニ (Sekiguchi , 1978 ; 村│司, 1979b ; Kon ishi, 1983) ,オヨギピンノ( 村 │前1. 1983 ; 大作 ・村一│両, 1990) , ヨコナガピンノ (寺 田, 1987) の計 9 種である . またあまり係集例の な い ウ モ レ マ メ ガ ニ で も 幼 生 が 知 ら れ て い る (Muraoka, 1985). この科のゾエア幼生はオヨギ ピンノのように普通のカニの形のものから,オオ シロピンノのようにかなり特殊化したものまで,実 に変化 に叫んでいる. これらの中間的な形態のグ ループとしてはフジナマコガニ属や,わが国には 図3. ヒラピンノ( 左) とオ オシロビ ンノ( 右)の第 4 歩脚指節の先端を走査型電顕で 見たもの. 後者には櫛状にならんだ剛毛列が2 71Jある.

(5)

属での例 (Pohle,1984 ; 1994) があげられる . 今後はヘソピンノ属 , メナシピンノ属,サザエピ ンノ属などでの研究が待たれる .

3 . 生理

特殊な環境中で生活するカクレガニについて は,どの様にして生きているのかその生理学的似IJ 而に興味が持たれる所であるが,研究例は少ない. 退化した形態で外敵に対しては丸腰とも云えるこ の仲間が生きていけるのは不思議であるが, これ については,ある穣の防御物質を出すからだと云 う説が米国のカキに寄居する種類での実験を基に

ILJ'Iされている (Luckenbach & Orth. 1990). 行動

の面からは ,成体の生息域と幼生の光波長に対す る 反 応 性 の 関 係 を 調 べ た 研 究 も 行 わ れ て い る

(F'orward & Cronin. 1979).

幼生の生理学的な面では,ヨーロッパで各種の 十脚目幼生の体成分の分析が行われた中に Pill

l10theres pisum が含まれている (A nger & H arm s.

1990) .

4.

生態 特異な生活様式を送るこの仲間については当然、 その生活史に興味がもたれるが,まだ充分に解明

頭胸甲

2

触角

υ

r

されていない 術主との関係についてはいろいろ な意見があるが,英国の H aines ら( 1994) に よ れば宿主とは相互作用の概念で言えば,雄は偏筈 (am ensali sm) で雌は寄生 (parasitism) だとして いる . この仲間の宿主内での摂餌生態については, 今世紀初頭の古典的な研究以来,あまり行われて いない . また米国のイガイ類によく見られる種類 の研究では街主民の成長に悪影響を及ぼすとされ ている (Bierbaum & F'erson, 1986). 個体群の動 態については植田 ・河野( 1987) によってオ オシ ロピンノで行われている. 囲内ではまだないが, 個体群の遺伝的解析がStevens (1990, 1991) に よりニュージーランドに生息する種のアイソザイ ムで行われている. 生活史の全体像はまだ

t

l

日命の 域を出ていないのが現状であるが, これまでの研 究から同5 に示すようなものが考え得る . 宿主の種類は多岐にわたり,二枚貝の外套

l

佳が 最も多いが,マメガニ属のようにどちらかと 言 え ば自由生活に近いグループでは多毛類の綾管中に 入るものが多い .

9

1には サザエ ピンノのように 雌 雄ペアでチョウセンサザエの胃の中に入 って いる 種もいるが,この場合どのような生活! とであるの かは見当もつかない . 以上この仲 間をめぐる状況を簡単に紹介して来

尾節

P.osterum

P. maculatus

4.

シロビンノ属内のゾ エア形態の変異例 (共に北米産の二枚貝 に寄居する種 )

(6)

稚ガニ

._---ω E

場 圃

j

ι

ア (前

期)場

ふ 化

く主コ

図5 . 考え られるカクレガニの生活史 分野別に} よると , 分 類 が

20

秘iで、披も多く,ついで 発 生

20

編 で あ る . こ の 中 で 発 生 は

yJJ1

二の 形 態 を 記 載 し て 系 統 分 煩 と 結 び つ け て い る の が ほ と ん ど で, これも分類学のグルー プに合め ると ,全体 の 約7剖 は 記 載 的 な 研 究 で あ る . こ の 系 統 的 に 謎 の 多いグループに対して ,染 色 体, アイソザイムに よる系群解析.

D N A

レベルでの系統解析などの 分野で知見が増すことが史まれる . また「生きた ままで体の 内 部が見えるl唯一 の カ ニ 」 と い う 特 性 を生かした研究は 出米ないものであろうかつ i成後に,原稿に目を. i f f i し て下さった 国友科学 博 物 館 の 武 田 正 倫 博 士 に 感 謝 しま す. 参考文献

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参照

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