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周産期喪失のケアに従事する看護者を対象とした認知行動理論に基づくコミュニケーションスキルプログラムの開発と評価

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日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 30, No. 1, 4-16, 2016

原著:30周年記念論文

*1聖路加国際大学(St. Luke's International University, School of Nursing, Tokyo) *2岡本ウーマンズクリニック(Okamoto Women's Clinic, Nagasaki)

*3米国パロアルト大学院博士後期課程(Palo Alto University, Pacific Graduate School of Psychology, USA)

2015年6月4日受付 2015年11月12日採用

周産期喪失のケアに従事する看護者を対象とした認知行動理論に

基づくコミュニケーションスキルプログラムの開発と評価

Development and evaluation of a CBT-based communication skills

training for perinatal loss care providers

蛭 田 明 子(Akiko HIRUTA)

*1

堀 内 成 子(Shigeko HORIUCHI)

*1

石 井 慶 子(Keiko ISHII)

*2

堀内ギルバート祥子(Shoko Gilbert HORIUCHI)

*3

抄  録 背景と目的  患者のケアニーズを引き出し,患者中心のケアを提供するために,コミュニケーションは重要な鍵と なる。しかし,周産期喪失は予期せずして起こり,患者の感情と自分自身の感情の双方に対処する難し さから,多くの看護者がコミュニケーションの難しさを経験する。本研究は,周産期に子どもを亡くし た両親にケアを提供する看護者を対象に,認知行動理論に基づくコミュニケーションスキルプログラム を開発し,その有用性を評価することを目的とした。 方 法  一群による事前事後評価研究。対象は周産期喪失のケアに従事する看護師/助産師。プログラムのゴー ルは,対象者の態度・行動に変容が認められること。有用性の評価指標は,自己効力感,ケアの困難感, 共感満足と共感疲労,コミュニケーションの変容とし,プログラム実施前,実施後,実施1か月後の3 時点で測定した。 結 果  47名の看護師/助産師が1日のプログラムに参加,内37名(78.7%)が1か月後の質問紙まで終了した。 ①自己効力感は実施後有意に上昇し(p=.000),1か月後も実施前より有意に高かった(p=.000)。②ケア の困難感は実施後有意に減少し(p=.000),1か月後も有意に低かった(p=.000)。③共感満足と共感疲労は, 実施前後で有意差はなかった。サブグループ解析により,実施前に自己効力感が低くケアの困難感が高 い群(13名)では,共感疲労の要因である二次的トラウマが有意に減少した(p=.001)。④実施1か月後の コミュニケーションの態度・行動の変容を感じている者が28名(75.7%)であった。

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結 論  本プログラムは,看護者の自己効力感を高め,困難感を軽減することに機能し,その変化は1か月後 も持続していた。さらに,看護者の認知の変容をもたらし,コミュニケーションにおける態度・行動の 変容をもたらしていることが示された。 キーワード:看護者,周産期喪失,コミュニケーション,認知行動理論,自己効力感,共感疲労 Abstract Background & Purpose

Effective communication is essential to understand the needs of patients and to provide patient-centered care. However, in cases of perinatal loss, which tend to occur unexpectedly, clinicians often experience difficulty com-municating effectively as they need to deal with both the patients' emotions and their own emotional reactions. The purpose of the present study was to develop and to evaluate the effectiveness of a communication skills training based on cognitive behavioral theory (CBT) designed for nurses who work with parents who lost their babies dur-ing the perinatal period.

Methods

This is a single-group experiment with a pre- and post-test research design. Licensed nurses and midwives who provided perinatal loss care were recruited for this study. The training goal was to precipitate changes in attitudes and behaviors of the clinicians. The effectiveness of the training was assessed by measuring self-efficacy (SE), sense of difficulty, compassion satisfaction (CS), compassion fatigue (CF), attitude about communication, and communica-tion behaviors. These were measured at three points: pre- and post-intervencommunica-tion as well as at a one-month follow-up. Results

Forty-seven nurses and midwives participated in the study and received a one-day communication skills train-ing, of which 37 (78.7%) completed the questionnaires given at the pre- and post-intervention as well as at a one-month follow-up. The results included the following: (1) SE significantly increased after the training (p=.000), and SE remained higher at the one-month follow-up compared to pre-intervention (p=.000); (2) sense of difficulty sig-nificantly decreased after the training (p=.000) and at the follow-up (p=.000); (3) although no changes in CS and CF were found, the additional subgroup analysis revealed that participants who had low SE and high sense of difficulty prior to the intervention (n=13) reported significantly reduced secondary traumatic stress, which is one of the ele-ment of CF, after the training (p=.001); and (4) at one month following the training, 28 participants (75.7%) reported that they experienced changes in their attitudes and behaviors toward communication.

Conclusion

Nurses and midwives who received the CBT-based communication skills training reported increased self-effi-cacy and reduced sense of difficulty in providing perinatal loss care, and these changes were maintained one month after the intervention. The findings also suggested that the training program may contribute to changes in perinatal loss care providers' cognition, attitudes, and behaviors toward patient-clinician communication.

Key words: nurse, perinatal loss, communication, cognitive behavioral theory, self-efficacy, compassion fatigue

Ⅰ.研究の背景

 ト月十日の日々を経て初めて我が子の産声を聞き, 喜び歓喜する出産がある一方で,祝福の言葉に躊躇す る,産声のない静かな出産がある。周産期医療に従事 する者にとってこの静かな出産への立ち会いは,通常 とはあまりに異なるインパクトの大きなものである。 多くの医療者が周産期の中にある死にとまどい,子ど もを亡くした両親やその家族にかける適切な言葉を失 い,そのケアを困難に思う(McCreight, 2005, pp.439-448;岡永,2005,pp.49-58;Roehrs, Masterson, Alles,

et al., 2008, pp.631-639)。  さらに周産期の喪失では,多くの場合看護者は子ど もの死の時に初めて両親と出会う。危機的な状況にあ る両親に,関係性のないところからケアを始めていく 不確かさは,ケアにおける困難感を一層強くする。ま た喪失に由来する両親と自分の感情,それぞれに対 処することへの難しさも看護者は感じている(Roehrs, Masterson, Alles, et al., 2008, pp.631-639)。

 こうした不確かさや感情に対処できる自信がない場 合,医療者は自分自身を不安にするものや苦痛を感じ させるものを避けようとする。すなわち,患者の感情

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に向き合おうとせず,患者との間に距離をとり,コ ミュニケーションを回避,あるいは表面的なコミュ ニケーションですませることがある(Betcher, 2010, pp.101-105; Maguire, 1985, pp.1711-1713; Wilkinson, 1991, pp.677-688)。  しかし,医療者とケアの受け手である患者のコミュ ニケーションがうまく成立しない場合,時として双方 に好ましくない影響が及ぶ。患者とコミュニケーショ ンをうまくとれない医療者は,タスク思考のケアを提 供する傾向があり,ケアの達成感は低く,ストレスが 強く,バーンアウトに陥りやすい。一方で,患者はケ アに対する不満を抱き,病気に対する不安は軽減され ず,治療へのコンプライアンスが低下する(Bragard, Etienne, Merckaert, et al, 2010, pp.1075-1081; Ramirez, Graham, Richards, et al., 1996, pp.724-728)。事実,研 究者らが運営している周産期に子どもを亡くした両親 のセルフヘルプグループ(堀内,2013,p.13)では,表 面的な会話に終始する看護者の態度に,「腫れものに 触れるかのような」ケアだと感じ,傷ついた体験を語 る両親も少なくない。よって,周産期の喪失という難 しい状況においても,医療者と患者の間にコミュニ ケーションが成立するための支援が必要である。  コミュニケーションスキルのトレーニング(Com-munication Skill Training;以下CSTとする)は,1990 年代より欧米を中心に,特にがんの分野で開発と研究 が盛んである。その多くが,コミュニケーションにお けるテクニックを講義で教え,ロールプレイで実演 し,ディスカッションをする構成となっている。しか し,CSTによりこうしたテクニックの使用に一定の効 果があることは立証されているものの,コミュニケー ションにおける患者の満足度に有意な上昇はみられて いない(Moore, Rivera, Grez, et al., 2013, p.15)。一方で, 医療者自身の認知と感情,行動の関連に注目し,その 対処を含むコミュニケーションスキルのプログラムで は,患者やその家族とのコミュニケーションにおける 医療者の困難感やストレスが軽減したとの報告がある (Arranz, Ulla, Ramos, et al., 2005, pp.233-239; Bragard,

Etienne, Merckaert, et al., 2010, pp.1075-1081)。  そこで,本研究では認知行動理論を用いて,コミュ ニケーションにおける態度に影響を及ぼす看護者自身 の認知や感情に焦点をあてたCSTのプログラムを開発 する。その理由は,医療者と患者の間にコミュニケー ションが成り立ち,患者のニーズに沿ったケア,すな わち患者中心のケア(Patient Centered Care)を提供す

るためには,患者と向き合い,関係性をつくろうとす る医療者の態度が第一に重要だからである。

Ⅱ.研究の目的

 本研究の目的は,周産期に子どもを亡くした両親に ケアを提供する看護者を対象に,認知行動理論に基づ くコミュニケーションスキルトレーニングプログラム を開発し,その有用性を評価することである。本プロ グラムの開発により,両親のニーズを見出し,患者中 心のケアを提供しうる看護者の育成に貢献すると考え る。

Ⅲ.研究方法

1.研究デザイン  1群における事前事後の評価研究である。 2.プログラムの概要 1 ) プログラムの目的と目標  本プログラムの目的は,周産期に子どもを亡くした 両親に対して患者中心のケアを提供しうる看護者を育 成することである。両親とのコミュニケーションに臨 む看護者の態度・行動に変容が認められることをその ゴールとし,アウトカム指標に以下の4つを設定した。 ①周産期に子どもを亡くした両親とのコミュニケーシ ョンに対する自己効力感が高くなる。②周産期喪失の ケアにおける困難感が低くなる。③周産期喪失のケ アにおけるストレスが軽減する(共感満足が高くなり, 共感疲労が低くなる)。④両親とのコミュニケーショ ンにおける態度・行動の変容がみられる。 2 ) プログラムの開発と概念枠組み  プログラムは,助産師,臨床心理士と,グリーフカ ウンセラーであり周産期喪失体験者である4名で開発 した。プログラムの開発に先だち,文献検討,及び研 究者らがこれまでに行ったペリネイタル・ロス看護者 教育プログラムや講習会等で出会った看護者の声をも とに,周産期喪失を経験した家族をケアする看護者の 思いや感情を分析し,対象者のニーズを抽出した。  その結果,家族とのコミュニケーション以前に,ケ アを実施する前から周産期喪失のケアを「困難」と捉 えてしまう看護者の認知にアプローチすることが必 要と考えられた。既存の文献に,医療者のビリーフ (belief)が変わることにより,医療者の態度が変わり,

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コミュニケーションの質が変わることが示されており (Levinson & Roter, 1995, pp.375-379),認知行動理論を

プログラムの概念枠組みとした。  すなわち,認知行動理論では,ある状況における感 情や行動は,その人のもつ瞬時の自動思考の影響を受 けているとする。この認知行動理論に基づき,周産期 喪失のケアにおいて看護者がネガティブな感情を抱い たとき,自分はなぜその感情を抱いたのかを分析し, 思考の癖を修正してみる。これにより,困難感の軽減 と,両親のそばに行き,両親と関係性を作ろうとする 看護者の態度や行動の変容が起こりうると考え,講 義と合わせてA.エリスの論理療法に基づく機能分析 (ABC理論)を行い,自分の思考スタイルを分析する ワークを組み込んだ。  また,多くの看護者が自分の行ったケアに「これで よかったのか」と自信を持てず,困難感を払拭できず にいる。そこで,「困難」と捉えてしまう自己のビリー フを変え,行動変容に影響を与える要因として自己効 力感をプログラムの重要な概念に位置付け,プライマ リーアウトカムとした。バンデューラによれば,自己 効力感を育む源には以下の4つがある。①自分で実際 に行い,成功体験をもつこと。②うまくやっている他 人の行動を観察すること。③自己強化や他者からの説 得的な暗示を受けること。④生理的な反応の変化を体 験してみること(坂野,2002,pp.5-7)。よって,VTR 教材とロールプレイ,その後のデブリーフィングによ り,モデルとなるコミュニケーションを見ること,ス キルを活用してコミュニケーションを実践すること, 自己のコミュニケーションを内省すること,以上を反 復して体験できるプログラム構成とした。教材となる VTRは,臨床の場で困難事例としてよく語られる状 況をもとに作成した。シナリオに2つの状況を設定し, それぞれの状況において助産師役は異なるアプローチ をとる。すなわち,最初の設定は同じだが,コミュニ ケーションスタイルの違いにより,ケアが異なる帰結 となることが分かるように工夫した。  なお,本プログラムでは,看護者の「困難感」を取 り除き,患者と関係性を構築しながら共にケアニーズ を見出すようなコミュニケーションを目指す。よって, アメリカのがん研究所で推奨されており,患者の感情 を探索し,寄り添い,対応するための総合的なスキル と言われるNURSEのスキル(關本,2010,p.489)をプ ログラムの中で紹介し,VTRにおいても解説を加えた。  さらに,周産期の喪失のように子どもを亡くした両 親に共感的に関わろうとする際,医療者には少なから ずストレスが生じる。Stamm(2005)によれば,専門 職のQOLはポジティブな側面(共感満足)とネガティ ブな側面(共感疲労)を包含する。共感的に関わろう という思いが強く,ケアにおけるストレスが大きく 残留するほど共感疲労のリスクは高くなるが,一方 で共感疲労が高くても両親との関わりから得られる満 足感(共感満足)が高い場合,バーンアウトへと至る ことが予防できることも示唆されている(藤岡,2011, pp.202-23)。よって,アウトカム指標である看護者の ストレスを,共感満足と共感疲労の概念を用いて測定 することとした。  プログラムは実施前に助産師を対象に数回テストラ ンを行い,実施方法の細部で修正を行った。 3 ) プログラムのアウトライン  1日約8時間のプログラムである。プログラムの構 成を(表1)に示す。実施者は,本プログラムを開発し た4名である。 3.測定用具とデータ収集内容 1 ) 自己効力感  コミュニケーションにおける自己効力感を測定する 用具として,Parle, Maguire & Heaven(1997, pp.231-240)が作成した質問紙があり,多くの研究でこの質 問紙を用いてCSTの介入効果が測定されている(Am-mentorp, Sabroe, Kofoed, et al., 2007; Doyle, Copeland, Bush, et al., 2011; Gulbrandsen, Jensen, Finset, et al., 2013)。しかし,Parleらの質問紙はがん患者とのコミ ュニケーションを想定したものであり,周産期喪失の ケアの場面におけるコミュニケーションとは状況も対 象も異なる。そのため,研究者らで新たに質問紙を作 成した。  Parleらの質問紙から,患者とのコミュニケーショ ンに一般的な項目4項目を利用し,周産期喪失のケ アに特異的な3項目を追加,計7項目の質問紙とした。 この質問紙は,7つのコミュニケーションタスクに対 する自信を項目ごとに0∼100点の間で得点化しても らい,7項目の平均点でコミュニケーションに対する 自信を測るものとした。点数が高いほど自信があるこ とを示す。助産師5名にプレテストを実施し,内容妥 当性を検討した。 2 ) ケアの困難感  文献検討,及び研究者らが実施する教育プログラム で聞かれる看護者の声や講習会でのアンケートをも

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とに,研究者らが作成した。5件法の10項目からなり, その合計得点でケアの困難感を評価するものとした。 点数が高いほど困難感が強いことを示す。自己効力感 同様,質問紙の内容妥当性を検討し,問いを一部修正 した。 3 ) ProQOL-R-Ⅳ(専門職のQOL)  Stamm(2005)により開発された尺度であり,後 藤(2005-2006)により翻訳された日本語版(専門職の QOL)を使用した。この尺度は共感満足と共感疲労の 2つの概念に基づくが,共感疲労の概念はバーンアウ トと二次的トラウマの2つの要素に分かれている。よ って,ProQOLの下位尺度は,共感満足とバーンアウ ト,二次的トラウマの3つとなっている。  共感満足は,仕事がうまくいくことから得られる喜 びであり,高得点であるほど,仕事の面で効果的な援 助を提供できる能力に関する満足度が大きいことを表 す。バーンアウトは,無力感や仕事を遂行すること, 手際よくすることの困難さと関連し,身体的・心理的 に疲弊した状態であり,トラウマを体験した患者と関 わらなくても起こりうる。二次的トラウマは,仕事を 通じて他人のトラウマ体験に接したことにより起こる 二次的トラウマ受傷であり,苦しんでいる人を助けた いと思うことから生じるストレスである。バーンアウ トと二次的トラウマは,得点が高いほどそのリスクが 高く,ストレスは大きいことを示す。  3つの下位尺度はそれぞれ10項目からなり,0∼5の 6件法で回答,下位尺度ごとにその合計点で評価する。 英語版での信頼性αはStammらにより確認されており, 共感満足(.87),バーンアウト(.72),二次的トラウマ (.80)である。 4 ) 態度・行動の変容  プログラム参加後,実践においてどのような変化が あったか,プログラム実施1か月後に自由記載を得た。 なお,周産期喪失の頻度は施設によっては非常に少な く,年間に数例程度というところもある。そのため, 周産期喪失のケアに関与する機会がなかった場合には, 厳密には異なるが周産期喪失に類似した難しい場面で のコミュニケーションの変容を記載してもらうことと した。 5 ) 基礎情報  勤務先の概要,周産期における経験年数,周産期喪 失のケアの経験回数,所属先でのサポート状況,周産 期喪失の学習経験,CSTへの参加経験等の対象の基礎 情報を,プログラム実施前に収集した。 4.調査手順 1 ) 研究対象者 (1)対象の選択基準  臨床に勤務する助産師/看護師で,次の条件を満た す者とした。①これまでに,周産期に子どもを亡くし た両親のケアを実施した経験がある者。②周産期に子 どもを亡くした両親にケアを提供する機会が現在ある 者。③本研究の目的,及び本プログラムの目標と内容 を理解し,研究への協力を自ら希望する者。 (2)対象の人数  サンプルサイズは自己効力感の変化量を基準に算出 した。その際,Parleらの研究を参考に変化量を見積 もった。Parleらの研究では,プログラム前後で各質 問項目に11.9∼27.1点の得点差があった。そこで本プ ログラム実施後の効果の大きさを同程度と想定し,得 表1 プログラムの構成 テーマ 内容 時間配分 Section 1:オリエンテーション ・研究の説明と質問紙記入 ・チェックイン 40分 Section 2:支援者のストレス ・講義:支援者のストレスを理解する 30分 Section 3:セルフケア ・講義:認知行動療法の基本のモデルとセルフケアへの活用 45分 Section 4:ケア提供者の思考スタイルと      感情の分析トライアル ・講義:機能分析(ABC理論)と認知再構成 ・VTR視聴①② ・ワーク:機能分析の実践(VTR事例) 80分 Section 5:自分の思考スタイルと感情に向き合う ・ワーク:機能分析の実践(自分の場合編) 40分 Section 6:家族の感情を知る ・VTR視聴③・講義:子どもを亡くした当事者の感情 30分 Section 7:家族の感情に向き合う ・講義:NURSEの技法を用いたコミュニケーション・VTR視聴④ 30分 Section 8:コミュニケーション実践トライアル ・NURSEの技法を用いたロールプレイとデブリーフィング・VTR視聴⑤ 80分 Section 9:クロージング ・プログラムの振り返り ・質疑応答 ・質問紙記入 40分

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点変化を最小の10点,その差のSDを20と想定,α= 0.05,β=0.2で計算し,1群に必要なサンプル数は32 名となった。さらに脱落率を20%と予測し,必要な サンプル数は40名とした。 (3)対象のリクルート  東京及び神奈川の周産期医療センターの看護部及び 産科・NICU病棟師長宛てにプログラムのポスターを 郵送し,掲示や回覧,配布等各施設の方法でプログラ ムの案内を依頼した。ポスターには本プログラムが研 究を目的として実施される旨明記していたが,メール による申し込み受付後,改めて研究の説明,及び研究 における倫理的配慮を記した書類を一人ひとりに郵送 し,正式に研究協力を依頼した。 2 ) データ収集方法  一人の対象につき,データ収集は計3回行った。1回 目はプログラム当日,プログラム開始前に,①自己効 力感,②ケアの困難感,③ProQOL,④基礎情報の回 答を会場で得た。2回目は,①及び②の回答をプログ ラム実施直後に会場で得た。3回目はプログラム実施 1か月後に,①②及び③と,⑤態度・行動の変容の質 問紙を返信用封筒と共に郵送し,回答を得た。すなわ ち,自己効力感とケアの困難感は3時点の測定であり, ProQOLは過去30日間を想起して答えるため,プログ ラム実施前と実施1か月後の2時点での測定である。 3 ) データ収集期間  2015年2月∼4月 4 ) 分析方法  量的分析は,統計ソフトSPSS Ver.22を使用して行 った。自己効力感,ケアの困難感,及びProQOLに関 して,調査時期別に得点を算出し,平均を対応のあ るt検定により比較した。また,対象者の特性による サブグループ解析も同様に行った。なお,自己効力感, 及びケアの困難感は3時点の比較であり,多重性を避 けるため,Bonferroniにより調整を行った。  質的分析は,コミュニケーションにおける態度・行 動の変容の記述をBerelson(舟島,2007,pp40-78)の 方法を参考に内容分析した。 5 ) 倫理的配慮  研究の趣旨,研究協力は自由意思であること,協力 しない場合も不利益を被ることはないこと,研究への 協力のとりやめはいつでもできること,連結可能匿名 化のための具体的な方法,データの厳重管理と破棄に ついて,以上を申込み受付後の郵送書類に明記すると 共に,プログラム開始前にも口頭で説明し,同意を得 た。また,プログラムにより過去のケアの経験が想起 され,気持ちに動揺があった場合の対応策も講じてプ ログラムを開催した。聖路加国際大学研究倫理審査委 員会の承認を得て実施した(承認番号:14-078)。

Ⅳ.結   果

 プログラムを2回開催し,計47名が参加,全員が 1回約8時間のプログラムを終了した。このうち,38 名(80.9%)よりプログラム実施1か月後の回答を得た。 しかし1名は欠損値が多すぎたため分析の対象から除 外し,37名(78.7%)を分析の対象とした。 1.対象の属性  対象は,助産師28名(75.7%),看護師9名(24.3%) であった。経験年数は1年未満から29年目まで幅広く, 最も多かったのは7年目であった。勤務場所は,産婦 人科30名(81.1%),NICU6名(16.2%),混合病棟1名 であった。職場におけるグリーフケアチームの有無は ほぼ同数で,有が19名(51.4%)であった。また,職 場においてサポートをしてくれる人の有無は,有が 21名(56.8%)であった。さらに,周産期喪失の学習 経験は有の人が28名(75.7%)であったが,CST参加 経験のある人は15名(40.5%)と少なかった。 2.アウトカム指標 1 ) 自己効力感  自己効力感7項目の平均点は,100点満点のうちプ ログラム実施前49.5点( 18.8),実施後65.1点( 11.5), 実施1か月後67.6点( 10.3)であった。実施前を基準 に,実施後と実施1か月後にそれぞれで有意な差が 認められた(実施後t=-6.393, p=.000:1か月後t=-6.967, p=.000)(図1)。  項目別にみると,7項目すべてが実施前より有意に 上昇し,1か月後も上昇を続けていた。プログラム実 施前に最も点数が低かったのは,「患者が直面する困 難な状況とその対処法を一緒に考え,共有して話し合 いを終わらせる」44.4点( 21.0)であり,実施後もこ の項目の得点が一番低かった。しかし実施直後62.3点 ( 13.2),1カ月後65.0点( 11.6)と,時間を経て有意 に上昇していた(実施後 5.778, p=.000:1か月後 t=-6.972, p=.000)。また,「看取りから火葬までのプロセ スにおける患者の希望について話し合う」,「感情の波 などの今後の状況について予期的な説明をする」,「不

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合理な後悔や自責の念であっても否定せず寄り添う」 の周産期喪失に特異的なコミュニケーション3項目 は実施前後での得点差が大きく,中でも「不合理な後 悔や自責の念であっても否定せず寄り添う」は実施前 50.7点( 23.2)であったが,実施後71.4点( 12.3),1 カ月後73.2点( 11.9)と20点以上の得点差があった。 2 ) ケアの困難感  ケアの困難感は10項目の合計50点のうち,プログ ラム実施前33.1点( 8.2),実施後26.1点( 6.2),実施 1か月後27.0点( 6.8)であった。実施前を基準に,実 施後と実施1か月後,どちらも有意に差があった(実 施後t=5.351, p=.000:1か月後t=4.570, p=.000)(図2)。  項目別にみると,10項目中9項目は実施前後で有意 に得点が低下し,中でも「感情を表出せず,無反応な 両親のそばにいること」は,5件法で実施前には3.8で あったが,実施後2.7と困難感が大きく減少していた。 しかし1か月後には3.1となった。また,有意な変化 が認められなかった唯一の項目は「激しく泣いている 両親のそばにいること」(実施前2.7:実施後2.3:1か 月後2.4)であった。 3 ) ProQOL  ProQOLの3つの下位尺度(共感満足,バーンアウト, 二次的トラウマ)はいずれも実施前と実施1か月後の 得点の変化が小さく,有意な差は認められなかった (表2)。 4 ) 自己効力感とケアの困難感によるサブグループ解 析  プログラム実施前の自己効力感,及びケアの困難感 の中央値を基準にして,【自己効力感が低く,ケアの 困難感が高い】A群(13名),【自己効力感が高く,ケア の困難感が低い】B群(13名),【自己効力感が低く,ケ アの困難感が低い】C群(5名),【自己効力感が高く, ケアの困難感が高い】D群(6名)の4群で,サブグルー プ解析を行った。  4群の背景を比べると,【自己効力感が低く,ケアの 困難感が高い】A群は,他の3群に比べ,職場にグリー フケアチームのない者が多かった(A群69.2%:B群 46.2%:C群20.0%:D群33.3%)。また,自己効力感 の高いB群,D群は自己効力感の低いA群,C群に比べ, 周産期喪失の学習経験のある者が多く(B群84.6%:D 群83.3%:A群69.2%:C群60.0%),CST経験のある 図1 自己効力感(平均±SD) (n=37) 図2 ケアの困難環(平均±SD) (n=37) 表2 ProQOL下位尺度別実施前後の得点比較(n=37) 測定変数 実施前 実施1か月後 p値 mean SD mean SD 共感満足 33.73 6.3 34.19 5.6 0.512 バーンアウト* 二次的トラウマ* 25.7821.35 5.17.3 26.0520.22 4.27.3 0.7040.140 *共感疲労の要素 ・参考(stammによる平均値と下位尺度のカットオフ値)  共感満足   :(平均)37点 (カットオフ)33点以下  バーンアウト :(平均)22点 (カットオフ)27点以上  二次的トラウマ:(平均)13点 (カットオフ)17点以上

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者も多かった(B群61.5%:D群50.0%:A群23.1%: C群20.0%)。 (1)ProQOL  4群で比較すると,【自己効力感が低く,ケアの困難 感が高い】A群は,プログラム実施前4群の中で最も 共感満足が低く(30.8点),バーンアウトと二次的トラ ウマは最も高かった(バーンアウト28.0点:二次的ト ラウマ25.2点)。  また,A群のみ二次的トラウマが実施前25.2点から 1か月後20.9点へ有意に減少した(t=­4.117, p=.001)。 共感満足,バーンアウトは,4群共に実施前と実施1か 月後で有意な変化はみられなかった。 (2)自己効力感・ケアの困難感  自己効力感は,すべての群でプログラム実施後有 意に上昇した。特に,プログラム実施前に自己効力 感が低かったA群とC群はその変化量が大きく(A群 26.8点:C群21.3点),20点以上の上昇がみられた。一 方,実施前に自己効力感の高かったB群とD群の変化 量は,B群が5.5点,D群8.8点であった。D群を除く3 群で,実施1か月後も上昇を続けていた(図3)。  ケアの困難感は,プログラム実施前に困難感が高か ったA群,及びD群で実施後有意に低下し(A群­12.5 点:D群­11.7点),1か月後の得点もプログラム実施 前と有意な差がみられた。一方,プログラム実施前に 困難感が低かったB 群,C群は,ケアの困難感に3時 点でほとんど変化がみられなかった(図4)。 5 ) 態度・行動の変容  プログラム実施1か月後のコミュニケーションにお ける態度・行動の変容は,変化を感じている者が28 名(75.7%)であった。この28名には,周産期喪失の ケアに従事する機会がなかった者3名が含まれており, そのコミュニケーション場面は 早産や入院による不 安・悩みを抱えて泣いている患者とのコミュニケーシ ョン であった。また,変化を感じていない者が6名 (16.2%),無回答3名であり,この9名に周産期喪失 のケアに従事する機会のなかった7名が含まれた。  自由記載は,文脈単位34,記録単位68となり,こ のうちプログラムへの感想や要望など,研究の問いに 直接回答していないもの11を削除し,57単位を内容分 析した。態度・行動の変容は7つのカテゴリーに分類 された(表3)。 (1)in actionの変化  両親との直接のコミュニケーションにおける態度・ 行動の変容として,5つのカテゴリーが抽出され,【向 上志向の変化】と【自然体への変化】の2つの変化が見 出された。 【向上志向の変化】 〈沈黙をケアに必要な時間として活用する〉  沈黙の時間の意味をロールプレイで実感したので実 践している,沈黙してみたことで両親の語りや想いを 引き出すことができた,という記述が含まれる。 「やはり沈黙はつらくなかった。むしろ沈黙を体験 図3 自己効力感 4群の平均の変化 図4 ケアの困難感 4群の平均の変化 A群:自己効力感が低くケアの困難感が高い(n=13) B群:自己効力感が高くケアの困難感が低い(n=13) C群:自己効力感が低くケアの困難感が低い(n=5) D群:自己効力感が高くケアの困難感が高い(n=6)

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し,相手が必ず話し始めることを実感した。『何か やりたいことはありますか?』と言った時に,『子ど もを抱っこしたい』とひと言,言ってくれました。」 〈患者中心のケアを意識する〉  ケアニーズを意識するようになった,患者の時間と 空間を大事にしようと思うようになった,寄り添うこ との意味を考え,積極的に相手を知ろうとそばに行く ようになった,という記述が含まれる。 「席をはずすタイミングや戻るタイミングなど少し ずつではあるが,考えが変わり,時間の使い方に気 を付けられるようになった。」 〈思考の癖を意識してケアに臨む〉  プログラムで学んだ思考の歪みがもたらす感情や行 動を自覚しながらケアに臨んでいる,それにより両親 に対する態度やコミュニケーションのとり方に違いを 感じている,という記述が含まれる。 「プログラムに参加することで,まず自身の感情の 傾向を理解し,今のその患者様に対してよりよい対 応を考えながら介入できたように感じます。」 【自然体への変化】 〈ケアに対するかまえがなくなる〉  ケアに対する重圧から解放され,今の自分でいいと 楽に考えることができるようになった,とにかく両親 のそばにいってみようと思える変化があったと,いう 記述が含まれる。 「IUFDの患者さんのケアに対して,これまでは心の 中に『少しいやだな』と思うところがあった。苦手 意識が少なからずあった。今でも全くないとは言え ないが,なんと言われても,言われなくても,ど んなことを思っても,『いーんじゃない?』と思って おおらかに対面することができるようになったと思 う。」 〈患者のそばにいて見守る心の余裕ができる〉  このカテゴリーには最も多い12単位の記述が得ら れた。苦手だった沈黙が怖くなくなった,両親のあり のままの感情を受け止めて落ち着いて対応できるよう になった,という記述が含まれる。 「これが今の姿なのだ,気持ちなのだと受け止める ことができ,落ちついて関わることができたと思っ ています。」 (2)on actionの変化  両親とのコミュニケーションを終えたあとの態度・ 行動にも変化がみられた。 〈自分自身をケアする〉  このカテゴリーも10単位と多くの記述が得られた。 自分の感情に目を向けて,自分に対するケアを実践す るようになった,ケアによる自分の気持ちへの影響が 少なくなった,という記述が含まれる。 「 共感性疲労 に関して知らなかった時は,自分は どうしてこんなにも対象に対して感情移入してし まうのだろうかなど悩んだ時もありましたが,先日 IUFDのプレグラを担当した時に, つらくて当たり 表3 態度・行動の変容 分類 カテゴリー サブカテゴリー n=57 in actionの変化 【向上志向の変化】 沈黙をケアに必要な 時間として活用する 沈黙の時間を経て患者の語りを得る沈黙の時間を大事にする 8 患者中心のケアを意 識する ケアのニーズを意識する 7 患者の時間と空間を尊重する 積極的に患者に寄り添い患者を知ろうとする 思考の癖を意識して ケアに臨む 思考の癖を意識してケアに臨む 6 【自然体への変化】 ケアに対するかまえ がなくなる 精一杯やれば完璧でなくてもいいと思える 9 ケアを実施することに対する消極的な思いがなくなる ケアに入る前の困難感が軽減する これでよいと自信をもってケアに臨む 患者のそばにいて見守 る心の余裕ができる 沈黙に対する怖さがなくなる患者の前で落ち着いていることができる 12 on actionの変化 自分自身をケアする 自分自身もケアの対象であることを意識する 10 自分の感情にも目を向ける ケアによる自分の気持ちへのネガティブな影響が少なくなる 無変化 変化がない 変化が持続しない 5 変化を感じない

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前なんだ,この感情を否定するのではなく,医療者 自身も悩み苦しんでいる。それに焦ることなく対処 していけばよい と思えるようになりました。」 (3)無変化 〈変化がない〉  変化を感じない,プログラムから時間が経ってまた 元の苦手な気持ちに戻ってしまった,という記述が5 単位あった。 「グリーフケアを最後にしてから数か月死産の場面 に出会わないと,また最初の頃のグリーフケアとで きれば関わりたくない気持ちに戻ってしまう気がす る。」

Ⅴ.考   察

 開発した認知行動理論に基づくコミュニケーション スキルトレーニングプログラムは,周産期に子どもを 亡くした両親にケアを提供する看護者の自己効力感を 高め,ケアの困難感を低下するのに有用であった。ま た,75.7%の看護者が臨床の場面でのコミュニケーシ ョンにおける態度・行動に,以前との違いを実感して いた。この変容は,看護者の認知の変容に起因するこ とが記述より考えられた。 1.コミュニケーションに対する自己効力感の向上  本研究では,自己効力感はプログラム実施後に高ま り,1か月後はさらに高くなっていた。また,サブグ ループ解析により,変化量に4群で違いはあるものの, すべての群でプログラム実施後有意に上昇することが 確認された。よって,介入前の自己効力感の程度によ らず,本プログラムはコミュニケーションにおける自 己効力感を高めることに広く有用であることが示唆さ れた。  自己効力感はある特定の場面で遂行される特定の行 動に影響を及ぼし,当面の行動選択に直接的な影響を 及ぼすと考えられている(坂野,2002,p.8)。1か月後 の態度・行動の変容では,【向上志向の変化】にみられ たように,プログラムで実感したことを実践に取り入 れてみよう,今までのケアよりさらによいケアを提供 しよう,という前向きな姿勢がみられた。これは自己 効力感のtask-specificなレベルでの行動変容であると 推測される。  また,自己効力感は第2のレベルとして,当面の行 動に影響するだけではなく,長期的にも影響を及ぼ すことが指摘されている(坂野,2002,p.9)。本研究 では自己効力感の向上を1か月後までしか追えていな いが,Ammentorp, Sabroe, Kofoed, et al.(2007, pp.270-277)の研究では,プログラムにより高まった自己効 力感が実施直後から6か月,下がることなく持続して いたことを示している。また,Gulbrandsen, Jensen, Finset, et al.(2013, pp.180-185)は3年後まで追跡調査 をし,自己効力感が持続すること,さらにコミュニ ケーションのパフォーマンスもプログラム実施前より 高かったことを報告している。プログラムの後,実践 で成功体験をもつことで自己効力感の向上が持続する ことが考えられ,研究者らが開発したプログラムによ り,自己効力感がこの後も維持されることが期待され る。  しかし,1か月後の自由記載では「元の苦手な気持ち に戻ってしまう」という声もあった。先述のAmmen-torpら,及びGulbrandsenらのプログラムは,4週間 以上間をあけてプログラムを2回実施し,その間フォ ローができる構成となっている。コクランのシステマ ティックレビューでは,フォローアップの実施の有効 性に関して結論が出ていないが(Moore, Rivera, Grez, et al., 2013, p.16),向上した自己効力感が持続し,定 着するためには,フォローアップのプログラムが必要 である可能性がある。よって,今後は長期的な自己効 力感持続のために何が必要か,実践での体験と自己効 力感との関係を分析していくことが課題である。 2.ケアの困難感の低下  ケアの困難感はプログラム実施後,及び1カ月後は, 実施前に比べて有意に低くなっていた。Arranz, Ulla, Ramos, et al.(2005, pp.233-239)は,本プログラム同様 コミュニケーションスキルだけではなく,難しい状況 でのコミュニケーションにおける看護者側の感情に目 を向け,その対処を組み込んだプログラムを実施して いる。その結果,医療者の困難感が軽減し,その状態 がプログラム実施2か月後も維持されていたことは本 研究の結果に類似する。  さらに,本研究ではサブグループ解析により,介入 前に困難感が高かったA群とD群でプログラム実施後 困難感が大きく低下し,介入前より困難感の低かった B群とC群ではプログラムによる変化はほとんど見ら れなかった。この結果より,本プログラムはケアに困 難感を強く抱いている看護者が,ケアの困難感を軽減 する上で特に有用であると考える。

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 1か月後の態度・行動の変容では,〈ケアに対するか まえがなくなる〉〈患者のそばにいて見守る心の余裕 ができる〉とケアにおける重圧から解放され,自然体 で臨める姿勢への変化がみられた。この【自然体への 変化】は,認知行動理論をベースに,ケアの場面にお ける自分の思考の機能分析を行うワークの効果が大き いと考えられる。すなわち,周産期喪失のケアを非常 に困難に思う看護者が自分の思考の癖に気が付き,そ の癖が修正されたことが,A群及びD群の困難感の大 きな低下につながったとも考えられる。  よって,認知行動理論のアプローチをプログラムに 用いることは,ケアにおける看護者の困難感の持続的 な軽減に有用であると推測する。 3.ケアにおけるストレスの軽減  ProQOLを用いて共感満足と共感疲労を測定したが, 37名全体ではプログラム実施前と1カ月後に変化はな かった。しかし,サブグループ解析では,プログラム 実施前に【自己効力感が低く,ケアの困難感が高い】A 群で,1か月後の二次的トラウマが有意に低下してい た。

 Potter, Deshields, Berger, et al.(2013, pp.180-187)は, がん看護師に対するレジリエンシープログラムを行い, 本研究同様ProQOLを用いて介入の効果を評価してい る。その結果,プログラム後に二次的トラウマだけ が低下した。Bragard, Etienne, Merckaert, et al.(2010, pp.1075-1081)が行ったCSTとストレスマネジメント スキルのトレーニングを組み合わせたプログラムでは, コミュニケーションにおけるストレスは低下し,コ ミュニケーションとストレスマネジメント,それぞ れに対する自己効力感は向上したものの,バーンアウ トのスコアに有意差はなかった。こうした先行研究か ら,共感疲労のうちバーンアウトには,職場の体制や サポートなど,患者との関わり以外にも様々な要因が 影響を及ぼすため,介入による直接の変化が難しいこ とが考えられる。一方,二次的トラウマのように侵入 的な思考や感情を処理し,トラウマを抱えることを回 避するスキルは,介入により習得できる可能性がある。  本研究では【自己効力感が低く,ケアの困難感が高 い】A群のみで二次的トラウマが低下した。この群は, ProQOLにおいて共感満足は最も低く,共感疲労は最 も高かった。すなわち,自己効力感が低く,ケアの困 難感が高いという特性は,患者とのコミュニケーショ ンに高いストレスを抱えやすいことが示された。認知 行動理論を用いた本プログラムは,こうした特性を持 つ看護者が二次的トラウマを回避するスキルを身につ け,ケアに起因するストレスの緩和を得るのに有用で あると考えられる。 4.コミュニケーションにおける態度・行動の変容  本研究では,75.7%の協力者がプログラム実施1カ 月後のコミュニケーションにおける態度・行動の変容 を感じていた。その変容として,in actionとon action の変化が抽出され,コミュニケーションスタイルがい かに看護者の認知により影響を受けるかが浮き彫りに なったと考える。両親とのコミュニケーションはテク ニックでは成立しない。両親のそばにいこう,その声 を聴こうとし,関係をつくることが何より重要であり, それができて初めて両親を中心としたケアの提供が可 能となる。  しかし,本研究には周産期喪失ではないケアの場面 におけるコミュニケーションの回答も少数含まれてい る。また,態度・行動の変化は本人の自覚による評価 である点が,限界としてある。トレーニングの評価指 標として最も重要なのは患者アウトカムであり,今後 アウトカムの測定方法を検討していく必要がある。 5.研究の限界と今後の課題  アンドラゴジー・モデルでは,学習へのレディネ スはニーズに基づくものである,学習者の経験が用 いられるべきである,という前提がある(Cranton, 1992/2006, pp.18-20)。本プログラムは開発の過程で, 現場で日々悩む看護者の声をVTRのシナリオやロー ルプレイの設定に反映させるように努めた。これによ り,プログラムで学習した状況をそのまますぐに実践 にあてはめることができる内容であったことが,本研 究で得られた自己効力感の向上に寄与したと考えられ る。また,VTR教材により実践の見本を示し,どの ようにコミュニケーションをとればよいかを考えなが らロールプレイを実践し,振り返りを行う機会を設け たこと,加えて,自分のケアの場面を想起し,自分の 思考を客観的に眺めるワークをしたことが,メジロー のいう「意味パースペクティブ」の再形成を促し,「意 識変容の学習」につながったとも考えられる(Cranton, 1992/2006, pp.205-242)。そして,これによりケアの 困難感の低下や,看護者のコミュニケーションにおけ る態度・行動の変容がもたらされたと考える。  本プログラムは認知行動理論のアプローチを取り入

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れ,ケアを提供する看護者側の感情と認知・行動の関 連に注目した。その結果,協力者はセルフケア行動の 実践を行い,両親とのコミュニケーションやケアに楽 に臨めるようになっている。こうしたプログラムは本 邦,ことに周産期の領域ではまだ見られず,オリジナ リティが高いと考える。  しかし,本プログラムは有用であると考えられるも のの,効果を検証しうる測定用具の検討をまだ十分に できていない点に,研究の限界がある。また,測定時 期がプログラム実施1か月後という短いスパンである こと,サンプルサイズが小さいことも結果に影響を与 えている可能性がある。今後は測定用具を洗練させ, プログラム評価を反映させてプログラムを再構成し, 長期的な効果を立証して現任教育に広く普及させてい くことが課題である。

Ⅵ.結   論

 本プログラムは,周産期に子どもを亡くした両親と のコミュニケーションに対する看護者の自己効力感を 高め,ケアにおける困難感を軽減することに機能し, その変化は1か月後も持続していた。さらに,看護者 の認知の変容をもたらし,コミュニケーションにおけ る態度・行動の変容をもたらしていることが示された。 謝 辞  本研究にご協力くださいました看護者の皆様,大学 院生の皆様に心より感謝申し上げます。本研究は公益 財団法人聖ルカ・ライフサイエンス研究所の助成金を 受けて行った。 文 献

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