高齢者理学療法研究の立場から
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(2) 高齢者理学療法研究の立場から. 703. 指し,我が国高齢者の有病率は 10 ~ 20%とされる。サルコペ. トレーニングよる転倒予防効果は認められていない。自験的に. ニアの判定にも幾つかの方法が存在するが,その中で 2014 年. も,身体機能レベルの高い高齢者に対しては二重課題処理能力. にアジアのサルコペニアワーキンググループ(AWGS:Asian. を向上させるようなトレーニングプログラムが転倒予防に有用. Working Group for Sarcopenia)によって報告されたアルゴリ. であることが示されており,高齢者の転倒予防を行う際には機. ズムを紹介する。このアルゴリズムでは,この骨格筋量減少. 能レベルに応じた内容を選択すべきであるといえる。. に加えて運動機能の低下(握力低下および歩行速度低下)が 認められるものをサルコペニアと定義している 6)。ここでは,. おわりに. 通常歩行速度の基準値は≦ 0.8 m/sec,握力は男性< 26 kg,. このように高齢化率が増加の一途を辿る我が国において,要. 女性< 18 kg,それに骨格筋量(SMI:Skeletal muscle mass. 介護状態を予防するという取り組みは重要な課題であり,この. index)は二重エネルギー X 線吸収法の場合であれば男性<. 課題に対して我々理学療法士が貢献していくことが求められて. 2. 2. 7.0 kg/m ,女性< 5.4 kg/m ,生体電気インピーダンス法の場. いる。フレイル予防,サルコペニア予防,転倒予防,それに認. 合であれば男性< 7.0 kg/m2,女性< 5.7 kg/m2 をそれぞれ基. 知機能低下抑制等の介護予防周辺領域に関しては様々な研究が. 準としている。サルコペニアの予防・改善を目的に介入を実施. 報告されるようになり,我々は適切に情報収集を行い,そして. した研究をメタ解析すると,①介入頻度は 2 ~ 3 回/週,②介. 実践に活かしていく必要がある。このような社会貢献を促進. 入期間は 24 週間以上,③ 1 回あたりの運動時間は 60 分程度,. し,世界に発信していくことこそが高齢者理学療法研究領域の. ④運動の内容としてはレジスタンストレーニングを含める,さ. 責務であり,超高齢社会で求められている姿であると考えて. らに⑤アミノ酸,タンパク質といった栄養療法を併用すると. いる。. いった内容を遵守することによって,骨格筋量増加および筋力 増強効果が得られやすいことが示唆された。 3.転倒予防 高齢者における年間の転倒発生率は約 30%とされており, 身体機能レベルによって転倒発生率および転倒要因が異なる ことが示されている。つまり,身体機能レベルの低い高齢者 (TUG:timed up & go test ≧ 11.0 秒)では下肢筋力低下が主 たる転倒要因となり年間の転倒発生率は 40 ~ 50%になるのに 対して,身体機能レベルの高い高齢者(TUG < 11.0 秒)では 二重課題処理能力の低下が主たる転倒要因となり転倒発生率 は 20%程度となる. 7). 。各々の機能レベルの高齢者に対する介. 入研究のメタ解析からは興味深い結果が得られており,身体機 能レベルの低い(≒フレイル)高齢者に対する介入ではレジス タンストレーニングによる転倒予防効果が明確に示されるのに 対して,身体機能レベルの高い高齢者に対してはレジスタンス. 文 献 1) 理学療法士の名称の使用等について(厚生労働省医政局医事課長 通知),平成 25 年 11 月 27 日. 2) Yamada M, Arai H, et al.: Community-based exercise program is cost-effective by preventing care and disability in Japanese frail older adults. J Am Med Dir Assoc. 2012; 13: 507–511. 3) フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント.http:// www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20140513_01_01.pdf (2015 年 10 月 10 日引用) 4) Fried LP, Tangen CM, et al.: Frailty in older adults: evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2001; 56: M146–M156. 5) Shimada H, Makizako H, et al.: Combined prevalence of frailty and mild cognitive impairment in a population of elderly Japanese people. J Am Med Dir Assoc. 2013; 14: 518–524. 6) Chen LK, Liu LK, et al.: Sarcopenia in Asia: consensus report of the asian working group for sarcopenia. J Am Med Dir Assoc. 2014; 15: 95–101. 7) Yamada M, Aoyama T, et al.: Dual-task walk is a reliable predictor of falls in robust elderly adults. J Am Geriatr Soc. 2011; 59: 163–164..
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