クリニックで泌尿器科医が
行う治療の実際
静岡市 かげやま医院 影山 慎二77歳男性
合併症:心不全、糖尿病、胃潰瘍 現病歴:夜間の切迫性尿失禁がひどくなった 近医内科で、ハルナール0.2mgは 2年前から処方受けている 検査成績:Cre1.38 尿蛋白2+、尿糖+ 長谷川式認知症スケール:28/36点と正常前立腺は大きくない
いわゆるLUTS リポバス(5) 1T/1x エパデールS(900) 3P/3x ベイスン(0.3) 3T/3x アマリール(1) 2T/2x ブロプレス(8) 1T/1x ルプラック(4) 1T/1x アダラートCR(20) 1T/1x ジゴキシン(0.2) 1T/1x ザイロリック(100) 1T/1x たくさんの内服 前立腺20cc、残尿50cc排尿パラメーター
IPSS(5-1-5-5-5-5-3) QOL 5/6 OABSS(1-3-4-4) 前立腺20cc、残尿50cc抗コリン剤追加
ベシケア 2.5㎎ ⇒ 5㎎ IPSS(0-2-1-1-1-1-3) QOL 4/6 OABSS(1-3-4-4⇒1-3-3-3) – 漏れの回数が減った ⇒ 残尿 60ml抗コリン剤増量
エブランチルも追加しながら・・・ IPSS(0-2-1-1-1-1-3) QOL 4/6 OABSS(1-3-3-2) – 漏れは減った でも、残尿 70ml前立腺肥大症患者の主訴
93.4 5 1 蓄尿+排出 蓄尿 排出 (市販後調査1万人の解析.アステラス社内資料)前立腺肥大症に合併した
過活動膀胱を見つけ出す
尿閉には導尿
• 下腹部痛やだらしなく漏れる尿失禁には注意! 下部尿路閉塞に伴う過活動膀胱の発生メカニズム 日本排尿機能学会:過活動膀胱診療ガイドライン,2005. ATP:アデノシン三リン酸 NO:一酸化窒素 PG:プロスタグランジン NGF:神経成長因子 ACh:アセチルコリン 膀胱壁の 部分徐神経 AChに対する 収縮反応増加 膀胱平滑筋の 変化 平滑筋間隙低下 平滑筋易刺激性 上皮細胞より ATP・NO・PG放出 C線維求心路の 活動亢進 仙髄・膀胱壁 NGFの増加 求心路・遠心路 の神経肥大 C線維を介した 排尿反射経路の再構築 尿道求心路の 活動亢進 過活動膀胱(OAB) 尿道伸展 抗コリン剤×
αブロッカー×
× × 抗コリン剤 抗コリン剤×
αブロッカー 膀胱伸展・高圧・虚血泌尿器科診療所の診察内容
(25年前)
前立腺肥大症 前立腺癌 神経因性膀胱 膀胱癌 尿路結石 尿路感染症 前立腺癌:生検 膀胱癌:膀胱鏡 BPH:TUR-p TUR-Bt泌尿器科診療所の診察内容
前立腺肥大症、下部尿路症 前立腺癌 過活動膀胱 膀胱癌 腹圧性尿失禁 性器脱 尿路結石、神経因性膀胱(カテーテル交換) 尿路感染症ED, AGA, LOH 前立腺癌:生検 膀胱癌:膀胱鏡 性器脱:手術(メッシュなど) 腹圧性尿失禁:TVT、TOT手術 BPH:TUR-p TUR-Bt
下部尿路におけるアセチルコリン受容体と
アドレナリン受容体の分布
排尿筋(M、β) 骨盤底筋(N) 膀胱三角部(α) 膀胱頸部(α) 尿道(α) M= ムスカリン受容体 N= ニコチン受容体 α= α1-アドレナリン受容体 β= β3-アドレナリン受容体 外尿道括約筋(α、β)膀胱はアセチルコリンの刺激で収縮する
M3受容体 M受容体 M メカニズム 副交感神経 蓄尿期 アセチルコリン 細胞膜 G 膀胱平滑筋の異常な収縮 異常な膀胱収縮の抑制 膀胱のムスカリン(M)受容体へのアセチルコリンの結合を阻害し、膀胱の異常な 収縮を抑制する 膀胱の 異常な収縮 を抑制
抗コリン薬の作用点と作用機序
病的状態では、蓄尿期においてもアセチルコリン が放出され、膀胱のM受容体に結合し、膀胱の 異常な収縮が起こる。 アセチルコリンの 結合を阻害 抗コリン薬 抗コリン薬 M受容体抗コリン剤の使用のポイント
1. 少量から使用 2. かえって頻尿になった・・・要注意 ⇒尿閉の危険性! 3. 残尿測定を定期的に行うこと膀胱は
・・・アセチルコリン
で収縮する 抗コリン剤は、アセチルコリンの過剰な働きを抑える 抗コリン剤の過剰投与は、膀胱の収縮力を弱める 膀胱の収縮力を落とさない 頻尿治療薬があれば・・・。下部尿路における交感神経支配
NA NA 膀胱 尿道 交感神経 下部尿路は交感神経と 副交感神経による二重 支配下にあり、交感神経 が興奮することで蓄尿が 促成される 抗コリン剤は 副交感神経を制御 蓄 尿 期 に は 交 感 神 経 の 活動が増加する 放出されたノルアドレナリ ン(NA) が排尿筋のβ-AR を活性化する β-AR は尿 道 平 滑 筋 の 収縮をもたらし、蓄尿期に 尿が漏れるのを抑える NA 収縮 (α1AR) 交感神経蓄尿期における尿道のβ-ARの役割
蓄尿期における膀胱のβ-ARの役割
蓄 尿 期 に は 交 感 神 経 の 活動が増加する 放出されたノルアドレナリ ン(NA) が排尿筋のβ-AR を活性化する β-ARは排尿筋の弛緩を もたらし、蓄尿期において 膀胱に多量の尿をためら れるようにする NA 弛緩 (β-AR) 交感神経 収縮に関係する神経には影響を与えない・・・?!ヒト排尿筋における
β-ARサブタイプのmRNA発現量
copies/ng total RNA
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 平均 5.456153928β1 5.274215675β2 357.7956418β3 (ヒト膀胱では)β3-AR mRNAの発現がほとんどを占めていた β1: 1.5% β2: 1.4% β3: 97% 各サブタイプのmRNA発現量が受容体タンパクの発現量を反映していると 仮定するならば、 β3-ARがヒト排尿筋において最も豊富に発現しているサブタイプ 膀胱癌により膀胱全摘手術をうけた男性6例および女性4例(40~75歳、平均年齢 65.3歳)から摘出された 膀胱組織を対象に、TaqManシステム法を用いた定量的リアルタイムRT-PCRにより各β-ARサブタイプのmRNA発現量 を検討した (ABI PRISM 7700 sequence detection system)
対象・方法
Yamaguchi O. Urology 59(Suppl 5A): 25, 2002 Nomiya M, Yamaguchi O. J Urol 170(2 Pt 1): 649, 2003
膀胱容量の増大
選択的β
3作動薬の作用機序
メカニズム 蓄尿期 β3-AR 交感神経 ノルアドレナリン Gs Gs 膀胱平滑筋弛緩 アデニル酸シクラーゼ活性化 cAMP産生 細胞内Ca2+減少 膀胱のβ3-ARに結合し、蓄尿期の膀胱弛緩作用を増強することで 膀胱容量を増大させる β3作動薬 β3-AR β3-AR β3作動薬 β3 膀胱の 弛緩作用を 増強抗コリン剤の使用が
懸念される場合
認知症
パーキンソン病(症候群)
症例 80歳 男
2010年12月初診 主訴:夜間頻尿と軽い切迫性尿失禁 前立腺 33.5cc 残尿25cc PSA 1.93 エコーでは膀胱壁が少し厚い(肥厚) OABSS(1-3-4-4) IPSS(3-5-1-4-2-1-4) QOL6/6 ドーパミン製剤とアリセプト使用中治療経過
1. アルファブロッカー開始
2. 抗アンドロジェン製剤
(5
α還元酵素阻害剤)
3.
?
新規の女性過活動膀胱患者に対する
β
3受容体作動薬(ベタニス)の有用性の検討
かげやま医院 影山 慎二 川原腎・泌尿器科クリニック 川原 和也 宮津武田病院 曽根 淳史 熊本労災病院 吉田 正貴 対象:未治療の女性過活動膀胱患者 方法:ベタニス50mg を1日1回 朝に8週間投与し, ベタニスの有効性と安全 性を検討した。 検討内容:0週、4週後、8週後に質問票(OABSSとIPSS)を用いての調査 0週と8週後に尿流測定と残尿測定(尿流動態への影響の検討) ミラベグロン 50mg/日0w
4w
8w
・OABSS ・IPSS ・OABSS ・IPSS ・尿流測定 ・残尿測定 治療期間中を通じて副作用の調査を行う ・OABSS ・IPSS ・尿流測定 ・残尿測定 新規に受診した 女性OAB患者 【登録基準】 ・閉経後である ・OABSS≧3点 ・Q3≧2点 ・残尿量<100mL対象と方法
女性OAB患者におけるOABSSとIPSSの推移
*** *** *** *** *** * *** *** **OABSS IPSS QOLスコア
n=45 *:p<0.05 、**:p<0.01、 ***:p<0.001 Wilcoxons’s signed ranks test
OABSSの各質問項目の推移
*** *** NS *** ** NS NS NS NS Q1:昼間頻尿 Q2:夜間頻尿 Q3:尿意切迫感 *** *** **n=45 **:p<0.01、 ***:p<0.001 Wilcoxons’s signed ranks test Q4:切迫性尿失禁 4.4% 42.2% 53.3% 75.6% 55.6% 42.2% 20.0% 4.4% 2.2% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 0w 4w 8w 重症 中等症 軽症
OABSSの重症度推移
n=45 0~5点 6~11点 12~15点 4.4 3.7 2.9 0 2 4 6 8 0w 4w 8w ** * NS *** *** ** ** NS ** 蓄尿症状スコア 排尿症状スコア 排尿後症状スコア (残尿感) IPSSの蓄尿症状スコア、排尿症状スコアおよび 排尿後症状スコアの推移*** ** NS
IPSSの蓄尿症状の各質問項目の推移
*** *** * *** *** * Q2:昼間排尿 Q4:尿意切迫感 Q7:夜間排尿n=45 *:p<0.05 、**:p<0.01、 ***:p<0.001 Wilcoxons’s signed ranks test
*** *** NS * NS NS NS NS NS Q3:尿線途絶 Q5:尿勢低下 Q6:腹圧排尿
IPSSの排尿症状の各質問項目の推移
n=45 *:p<0.05 、 ***:p<0.001 Wilcoxons’s signed ranks test
6.9 ± 4.3 7.5± 4.0 NS 16.0 ± 8.9 18.2± 10.0 * 15.4 ± 21.3 16.7± 27.5 NS n=45 *:p<0.05 paired t-test