<更新日:2003/7/15> <企画調査部 大井 一伴>
台湾:新設LNG火力発電所向けにカタールからの供給が決定
(2003 7/7 Lloyd’s List, Platts, 7/4 Reuters, Platts, 6/27 東奥日報, 3/27 Taiwan Headlines,三菱重工 HP, 他)
1.入札の結果 1.国営台湾電力が実施した大潭(Tatan)LNG 火力向けガス供給入札を台湾の国営中国石油 が落札。中国石油は台湾唯一のLNG 輸入者であり、同火力向けに供給するガスをカタール (RasgasⅡプロジェクト)から LNG で調達することにしている。 2.現在のレベルより約30%安い価格が落札の決め手になった模様。 3.LNG 購入者である中国石油はカタール(RasgasⅡ)の権益(5%)を求める方向。
7 月 4 日、台湾の国営中国石油(CPC:Chinese Petroleum Corporation)は国営台湾電力 (Taipower:Taiwan Power Company)によって新設される大潭 LNG 火力発電所向けの入札に 競り勝ち、2008 年から 25 年間にわたって最大 1.68 百万 t/年のガスを供給することになった。こ のためにCPC はカタール(RasgasⅡプロジェクト[*1])から LNG を新規に輸入する(表 1) ことが内定している。なお、落札額は2,982 億台湾$(86.7 億 US$:0.03US$/台湾$)であった。
*1:出資構成は Qatar Petroleum 70%、ExxonMobil 30%。生産能力 4.7 百万 t/年の LNG トレーンを 2 系列 建設する。これまでに印Petronet 向け 7.5 百万 t/年(本年末に Dahej 向け 5 百万 t/年の供給開始予定。 25 年間)、伊 Edison 向け 3.5 百万 t/年(2005 年開始予定。25 年間)の LNG 売買契約を締結している。 (参考:大潭LNG 火力発電所の概要) ・立地:台北から西へ約50km(桃園県観塘工業区) ・発電能力:4,200 千 kw(700 千 kw×6 系列) ・稼動開始:第 1 フェーズ(2 系列)2005 年 6 月~2006 年 9 月 ・・・ ガス・軽油混焼 第2 フェーズ(4 系列)2008 年 2 月~2010 年 5 月 ・・・ ガス専焼 ・ガス消費計画:2008 年:0.69 百万 t、2009 年:1.13 百万 t、2010 年:1.54 百万 t、 2011 年以降:1.68 百万 t/年 ・備考:本年6 月に三菱重工・三菱商事の受注が決定。世界最大のガスタービンコンバイ ンドサイクル発電プラント。
<表1:CPC の LNG 輸入契約(全て Ex-ship)> 供給国 プロジェクト 年間契約数量(百万 t) 契約期間 BadakⅢ 1.58 1990~2009 インドネシア BadakⅥ 1.84 1998~2017 マレーシア MLNGⅡ 2.25 1995~2015 合計 5.67 (各種資料より作成) <台湾関係図> 南北幹線P/L (310km) 永安LNG ターミナル 海底幹線P/L (238km)
(CIA World Factbook 2002 を元に作成)
2.入札の条件
本件はガス・ベースの持届け条件であり、落札者(CPC)は LNG 調達・輸入だけでなく、貯 蔵、再ガス化、Taipower へのガスの受け渡しまで責任を持つ。さらに、台湾北部の LNG 受入基 地(台湾にはCPC の永安 LNG ターミナルが南部にあるのみなので、新たに建設する必要がある)
からガスを供給する(2011 年以降)ことも条件になっているため、CPC は台中港にこれを建設 するとの見方が有力である。 しかし、LNG ターミナルの設備規模や大潭火力までの P/L 敷設等、詳細は明らかにされてお らず、基地建設コストも本年3 月時点の報道では 200 億台湾$(6 億 US$)となっているが、こ の見積もりが変ることなく今回の落札額の内訳となっているかは不明。 なお、上述の「台湾北部のLNG 受入基地」については、14 万 kl タンク 3 基の規模で大潭火 力の隣接地に建設する計画が存在する。このプロジェクトは後述するTung Ting Gas が推進して おり、2001 年 5 月に一部着工している。
かねてより政府は、将来のガス需要の増加への対応として台湾北部にも LNG 受入基地を設け ることを計画しており、今回の入札の条件である「北部 LNG 基地の建設」もこうした政府のプ ランの一環といえる。特に、Taipower の大潭火力への近さから、Tung Ting Gas の LNG 受入基 地計画はこの発電所に対する有力な燃料供給拠点になるものと見られていた。
3.価格について
CPC 以外の応札者は、オマーンを LNG ソースとする日台合弁の東鼎液化瓦斯興業(Tung Ting Gas[*2])、サハリン LNG の供給を目論む TaLNG(Shell と Asia Cement(台)の折半 JV)、 およびインドネシアTangguh プロジェクトから LNG を調達する United Resources(台湾の Kuo Yang Construction の系列企業)であった(図 1)が、この競争の中から CPC が最安値で落札で きた決め手になったのは、台湾で唯一のLNG 輸入者・ガス P/L 供給事業者としての実績もさる ことながら、現在のレベルと比べて約30%安いガス価格にあると見られる。 *2:出資構成:台湾資本(中華開発興業銀行、大台北ガス等) 62.25%、三菱商事 20.25%、伊藤忠商事 11.25%、 関電インターナショナル(関西電力100%) 3.125%、ガスアンドパワーインベストメント(大阪ガス 100%) 3.125% 実際の価格の値については少なからず判然としないが、報道されているところでは、発電所持 届けベースでの価格比較しか見られないものの、Taipower 関係者の話として、現在 CPC が Taipower 向けに供給しているガス価格が 8.33 台湾$/m3(約 6.6US$/mmbtu)であるのに対して、 今回の落札価格は5.69 台湾$/m3(約 4.5US$/mmbtu)とされており、32%の格差がある。
加えて、CPC 筋の話として、落札価格の中で LNG コストと国内インフラ投資の占める比率は 80:20 との報道もある。しかし一方で、CPC は落札総額こそ明らかにしたものの、その主要な 内訳である国内インフラ投資額の公表を落札後は拒否しており、そうすると上述の比率は必ずし も信頼できる数値ではない。 <図1:本件のイメージ> [LNG 供給] [受入基地建設・ガス供給] [ガス購入] (CPCが落札) LNG 供給 LNG 供給 LNG 供給 LNG 供給 ガス供給入札 RasgasⅡ CPC
オマーン Tung Ting Gas
サハリン TaLNG
Tangguh United Resources
Taipower 大潭火力
また、インドネシアではPurnomo 鉱業エネルギー相が、Rasgas の CPC 向け LNG 価格はイ ンドネシア国内のガス価格(表 2)よりも安いと発言しており、さらに、今回の入札において Tangguh の 提 示 し た 価 格 が 2.7~2.8US$/mmbtu であったのに対して Rasgas の価格は 1.8US$/mmbtu であった、とするインドネシア国会議員の発言を報じる同国メディアもある。
これらは恐らく、LNG 売主から LNG 買主への販売価格を FOB ベースで論じているものと思 われるが、台湾側・カタール側とも本件におけるLNG 自体の FOB 価格ないし Ex-ship 価格には 触れていない(LNG の受渡し条件自体、各プロジェクトとも公表していない)。
<表2:インドネシア国内向け燃料ガス価格(単位:US$/mmbtu)> 肥料 1.00-2.00 鉄鋼 2.00 電力 2.45-3.00 セメント 2.70-3.00 製紙 1.30 精油 1.49 製材 0.97
(Petroleum Report Indonesia 2001(在インドネシア米国大使館発行)より作成)
4.プロジェクト権益の取得と既存契約の更新への影響 今後、CPC は落札決定から 90 日以内に Taipower と本契約を締結しなければならない。 これと間を置かずしてRasgas との LNG 売買契約も調印する予定であるが、これを機に CPC は、大潭火力向けを含めてRasgas からの購入数量を全体で 3 百万 t/年とし、引き換えに同プロ ジェクトの権益(5%以下)を取得する方向で話し合いを進める様子である。 また、この3 百万 t/年の中で、大潭火力向けに供給される残りの LNG 数量(1.32 百万 t/年) の引取りについてCPC 関係者は、BadakⅢプロジェクトとの 2009 年の契約満了を意識したもの であり、インドネシア側からの契約更新の条件次第では Rasgas で代替することも考えている、 としている。インドネシアにとっては、大潭火力を取りこぼした以上のマイナスの影響が及びか ねない気配である。 (参考:台湾のガス事情) (1)供給 台湾では1990 年に LNG 輸入が開始され、天然ガスは一次エネルギー供給の 6.6%(2000 年) を占めている(グラフ1、表 3)。 LNG の輸入・貯蔵・再ガス化・P/L 輸送は CPC が独占的に行っている。同社は初の LNG 輸入時より永安LNG ターミナル(受入能力:7.44 百万 t/年[推定])と国を南北に縦断する 幹線ガスP/L を所有・運営し、2002 年 12 月には永安から通霄に至る海底 P/L を完成させてい る。また、同社はガスの卸売りや Taipower 等への大口供給など各種のガス供給事業も展開し ており、台湾のガス供給の約10%を占める国産天燃ガスの生産も行っている。
表1 に示したとおり、約 5.7 百万 t/年の LNG 契約を現在 CPC は持っており、昨 2002 年の LNG 輸入実績は 5 百万 t であった。 (2)需要 政府は天然ガス利用促進の方針を取っており、2010 年には 13 百万 t、2020 年には 16 百万 t のガス消費目標を立て、LNG 輸入に係る関税等を撤廃するなどガス需要の拡大を図っている。 2000 年にはガス需要全体の 6 割以上を発電用途が占めており(グラフ 2、表 4)、さらに、 発電需要全体の中での天然ガスの位置付けを見ると、グラフ3・表 5 に示すとおり、構成比こ そ 10%にやや届かないものの、1990 年以降の 10 年間の平均で年率 30%を越すペースで大き く伸びてきている。一方で原子力の伸びは小さく(1.6%/年)、発電電力量に占めるシェアを大 幅に落としている。 (3)脱原発 陳水扁政権(民主進歩党)は脱原発を公約のひとつに掲げており、LNG・天然ガスにとって は政策面で間接的な追風となっている。具体的には第4 原発(全国の発電電力量の 10%を担う) の建設中止に取り組んでいる。 ところが、2000 年 10 月に一旦は建設中止を決定したものの、中止決定には法的不備がある という司法判断(原発推進派(国民党)の審査請求に基づく)、建設工事の解約金問題(第 4 原発は中止決定時点で既に着工済み)、今後の電力需給対策等の懸案も絡み、未だにこの問題 の決着はついていない。しかし陳総統は、来年3 月の総統選挙までに第 4 原発建設の是非を問 う住民投票を行う考えを6 月 27 日に表明し、解決への兆しを示した。
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 1 天然ガス 6.6 45.0 35.4 12.1 石油 石炭 原子力 水力等 0.9 <グラフ2:用途別天然ガス消費比率[%](2000 年)> <グラフ1:一次エネルギー供給比率[%](2000 年)> 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 1 発電用 62.0 12.5 11.5 14.0 工業用 家庭用 その他 <グラフ3:燃料別発電電力量比率[%]の変化>
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 1 1.2 25.4 25.4 38.5 9.6 天然ガス 石油 石炭 原子力 水力 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 1 天然ガス 8.9 17.9 48.7 20.0 4.6 石油 石炭 原子力 2000 年 1990 年 水力 <表3:一次エネルギー供給量(単位:千 TOE)> 2000 年実績 (構成比) 天然ガス (5,470 6.6%) 石油 (37,317 45.0%) 石炭 (29,415 35.4%) 原子力 (10,034 12.1%) 水力等 (0.9%) 763 合計 (100.0%) 82,999
(出所:IEA「Energy Balances of Non-OECD Countries 2002 Edition」)
2000 年実績 (構成比) 発電用 (62.0%) 3,392 工業用 (12.5%) 682 家庭用 (11.5%) 628 輸送用 (0.0%) 0 その他 (14.0%) 768 合計 (100.0%) 5,470
(出所:IEA「Energy Balances of Non-OECD Countries 2002 Edition」)
<表5:燃料別発電電力量の変化(単位:GWh)> 1990 年実績 (構成比) 2000 年実績 (構成比) 年平均伸率 天然ガス 1,035 (1.2%) (17,134 8.9%) 32.4% 石油 (21,686 25.4%) (34,515 17.9%) 4.8% 石炭 (21,684 25.4%) (93,975 48.7%) 15.8% 原子力 (32,866 38.5%) (38,503 20.0%) 1.6% 水力 (8,188 9.6%) (8,870 4.6%) 0.8% 合計 (100.0%) 85,495 (192,997 100.0%) 8.5%
(出所:IEA「Energy Balances of Non-OECD Countries 2002 Edition」)