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Windows7 OS Focus Follows Click, FFC FFC focus follows mouse, FFM Windows Macintosh FFC n n n n ms n n 4.2 2

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(1)

重なりあったウィンドウ間を移動可能な

マウスカーソル操作手法の提案

†1

†1,†2 本稿では,マウスカーソルをウィンドウの奥へと潜りこませる操作手法を提案し, そのプロトタイプとなるシステムを実装した.重なり合ったウィンドウ間のファイル 移動を行わせる評価実験では,通常のマウス操作よりもを早くタスクを完了させられ ることが明らかとなった.

A Mouse Cursor Operation for Overlapped Windowing

Shota Yamanaka

†1

and Homei Miyashita

†1,†2

In this paper we propose an operation method for overlapped windowing; a method that the user slides the mouse cursor under the windows in a simple way. We developed the system and conducted an evaluation experiment, and it revealed that the user can transfer the files between the windows faster than conventional style of GUI.

1.

は じ め に

例えば図1のように,手前では動画プレイヤが起動し,奥では動画ファイルの並んだフォ ルダが開かれている状態があるとき,プレイヤに隠れている位置の動画ファイルを開いて閲 覧するためには次のような操作手順が考えられる.

†1 明治大学 理工学研究科 新領域創造専攻 ディジタルコンテンツ系

Program in Digital Contents Studies, Program in Frontier Science and Innovation, Graduate School of Science and Technology, Meiji University

†2 独立行政法人科学技術振興機構, CREST JST, CREST 図 1 手前に動画プレイヤ,奥にフォルダが開かれている状態 ( 1 ) 奥のウィンドウのクリックして最前面に出す ( 2 ) 目的の動画ファイルをプレイヤにドロップする ( 3 ) プレイヤをクリックして最前面に出す この場合,(1)の操作をした時点でプレイヤの一部がフォルダに隠れてしまうため,(3) のようにして最前面のウィンドウを切り替えるか,あるいはウィンドウ同士が重ならないよ うに位置を調整する必要があり,マウス操作,画面の状態共に煩雑なものとなる.Alt+Tab キーでその都度適切に最前面のウィンドウを切り替えてもよいが,作業で主にマウスを使用 する場合には,マウスのみで目的の操作をスムーズに行える方が好ましい.そこで本稿で は,従来の操作方法による煩雑さの原因について述べるとともに,このような状況に対応 できる新しいマウス操作手法を提案する.さらに,本提案手法におけるシステムを実装し, それを用いた実験と考察を行う.

2.

従来のウィンドウ表示とマウスカーソル操作の問題点

複数のウィンドウをディスプレイ内に表示する方法は種々あるが,現在広く採用されてい るのはオーバーラップウィンドウ方式である.これはウィンドウが3次元のレイヤ構造を持 つものであるが,マウスカーソルはこのレイヤ構造とは関係なく常に最前面に表示され,2 次元の移動しか行えない.それ故に,ウィンドウによって隠れた部分は操作できず,不便だ

(2)

と感じることがある.その他のウィンドウ表示方法として,ディスプレイ内にウィンドウを 敷き詰めるタイルウィンドウ方式があるが,個々のウィンドウサイズが小さくなることから 視認性に問題が生じ,オーバーラップウィンドウ方式に比べるとあまり利用されていない. また,ウィンドウフォーカスの問題もある.ウィンドウフォーカスとは,キーボードやマ ウスからの入力を受け付けるウィンドウを示すものであり,フォーカスの当たっている状態 を「ウィンドウがアクティブである」という.Windows7 OSでは,クリックしたウィンド ウにフォーカスが当たる方式(Focus Follows Click, FFC)が採用されているが,この方式 ではアクティブになったウィンドウが最前面に出るため,そのウィンドウに重なっていた手 前のウィンドウが隠れる問題が生じる.現在の作業と全く別のことをする場合にはそのよ うに最前面に出して然るべきであるが,前述のように奥のファイルに対して僅かな操作を する場合であっても,その度にウィンドウの前後関係を変更しなければならない.FFCの 他に,マウスカーソルの座標によってフォーカスが移る方式(focus follows mouse, FFM) があるが,マウスを不意に移動させると作業が妨げられるという問題があり,Windowsや Macintoshで採用されているのは前者のクリック追従方式(FFC)である. このように,現在一般的に用いられているウィンドウ表示方法とマウスカーソル操作方法 はいずれも問題点を抱えている.そもそも,奥にあるものに対して操作を行いたいときに本 来は必要のないウィンドウ操作が求められることは,オーバーラップウィンドウ方式のユー ザインタフェースにおける重大な問題である.

3.

提 案 手 法

本稿で提案するのは,目的のウィンドウまでマウスカーソルを奥へと移動させて操作する 手法である.オーバーラップウィンドウ方式においてウィンドウがレイヤ構造をなしている ことは前章で述べたが,マウスカーソルもこのレイヤ構造に組み込むというものである.従 来のマウスカーソルはウィンドウをクリックして最前面化するという機能を持っていたが, 本提案手法はマウスカーソルがディスプレイ内を3次元移動し,マウスカーソル自身が奥 のファイルやウィンドウに触れに行くような直感的操作を実現する. なお,この操作は通常のウィンドウ切り替え方法と共存し,必要なときのみ利用可能なも のになっている.よって,完全に別の作業を行う際にはウィンドウ切り替えをし,奥のウィ ンドウで僅かな操作を行う際には本提案手法を利用するというように,場面に応じた柔軟な 操作が可能になる.また,操作を行うために専用のデバイスを必要とせず,あくまで一般的 なマウス(左右ボタンとホイールを持ったもの)を用いた操作でカーソルを奥方向へ移動さ せる.

4.

シ ス テ ム

本システムは,ウィンドウ処理部とマウスカーソル処理部に分けて構成されており,この 2つが連動して動作することによって本提案手法を実現している.また,視覚的・聴覚的な 効果によって擬似的な触覚を提示する処理を行っている.以下では,システムの説明で使う 用語を定義した上で,具体的な実装方法について述べる. 4.1 本稿で用いる用語の定義 4.1.1 レ イ ヤ デスクトップを最背面としてウィンドウが重なり合っている状態のとき,最前面にある ウィンドウは0番目のレイヤにあり,そのn個後ろのウィンドウはn番目のレイヤにある ものとする.また,n番目のレイヤにあるウィンドウを「n番目のウィンドウ」と呼ぶこと とする. 4.1.2 同 時 押 し 本システムでは,マウスの左右のボタンのイベントは常時フックされている.左右ボタン が両方とも押下された場合に,先に押下された時刻ともう一方が押下された時刻の差を求 め,一定時間(2ms)以内であったか判定する.判定が真の場合には,左右のボタンが同時 に押下されたものと考え,これを同時押しと呼ぶこととする.この後,左右どちらかのボタ ンが離された時点で同時押しが解除される.判定が偽の場合は,同時押しではないとして, フックしていたボタン押下のイベントを送出する. 4.1.3 衝 突 ウィンドウとマウスカーソル,またはウィンドウ同士の座標を用いて当たり判定を行う. この判定結果が真のとき,それらは衝突していると呼ぶこととする. 4.1.4 対象ウィンドウ マウスカーソルが乗っているウィンドウを対象ウィンドウと呼ぶこととする.ただし,マ ウスカーソルよりも手前のレイヤのウィンドウは含めずに考える.すなわち,マウスカーソ ルがn番目のレイヤにいるとき,n番目以降のウィンドウでマウスカーソルと衝突している 最も手前のウィンドウを指す. 4.2 マウスカーソル処理部とウィンドウ処理部 本システムは,起動している各ウィンドウのタイトル,ハンドラ,座標,サイズ,スタイ ル(透過度や最前面表示などの設定)を取得して,前面のものから順に配列に格納し,以後

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図 2 マウスカーソルが潜りこむ様子 これらを監視し続ける.また,その配列における対象ウィンドウのインデックスを保持する. 同時押しをすると,マウスカーソルは対象ウィンドウと同一のレイヤにいるものとして扱 われる.よって図2のように0番目と1番目のウィンドウがあるとき,1番目のウィンド ウ上で同時押しをすると,マウスカーソルは1番目のレイヤに移動する.つまり,マウスボ タンの左右同時押しはカーソルの奥方向への移動へ充てられている.同時押しをしたままマ ウスを左へと動かすと,カーソルは0番目のウインドウの裏側へと潜り込んだように表示 される.さらにウィンドウが重なっている場合には,同時押しをしたままウィンドウの裏側 へマウスカーソルを移動させることで,順に深いレイヤへと移動していく. 同時押しした時点で,対象ウィンドウよりも手前にあるウィンドウを最前面化設定する (設定が解除されるまで常に最前面にある状態にする)とともに,マウスイベントを透過す るように設定される.これにより,今後クリックやドラッグをしても対象ウィンドウより手 前のウィンドウには操作が行われず,かつ対象ウィンドウにマウスイベントが起こっても ウィンドウの前後関係は変更されない. 同時押しをしていないときには,マウスカーソルは常に手前方向に移動しようとする.つ まり,図2において,0番目のウィンドウの裏側で同時押しを解除し,マウスカーソルと0 番目のウィンドウが衝突しない位置まで動かせば,マウスカーソルは最前面に戻ってくる. マウスカーソルの前面にウィンドウがある状態で同時押しを解除しても,マウスカーソルは 手前方向に移動しない.よってマウスカーソルはそのウィンドウの1つ奥のレイヤに存在し 続ける.すなわち,図2でマウスカーソルが左の位置にあるとき,マウス操作は1番目の ウィンドウに対して行われる.以上をまとめると,マウスカーソルの前後移動については以 下のように動作することになる. 通常時:マウスカーソルは常に手前方向へ移動する.マウスカーソルが最前面に来る か,現在マウスカーソルのいるレイヤよりも手前のウィンドウに当たると,そのレイヤ にとどまる. 同時押し時:マウスカーソルは奥方向へ移動する.マウスカーソルは対象ウィンドウと 同一のレイヤにいるものとして扱われる. ウィンドウの透過度は,現在は半透過(20∼25%程度)を採用している.完全透過させる 方法も考えられるが,平岡の研究1)によると,アクティブウィンドウ以外をタイトルバーの みの表示にするとそれらを見失うと指摘されており,ウィンドウの概形を把握可能な半透過 にとどめることにした. 4.3 視覚・聴覚的触覚提示部 3次元デスクトップ環境でアイコンやウィンドウにマウスカーソルが触れると触覚を提示 するシステム2)では,触覚提示があることによって奥行きが分かりやすいとの評価がされ ている.また,ぱらぱらウィンドウ3)の評価実験において,ウィンドウの消去・表示に合わ せてクリック感がほしいという意見があったと述べられている.これは本提案手法において マウスカーソルがレイヤを移動するタイミングに相当する.よって本提案手法においても, ユーザが奥行きを理解しやすくするために触覚提示が必要と考えられる.しかし,本研究 では3章にあるように,あくまで一般的なマウスのみを用いた操作を提案したい.そこで, マウスカーソルがレイヤを移動したことをユーザに提示するために,視覚効果と音響効果に よる擬似的な触覚提示方法を利用する.視覚効果による触覚の描出効果は渡邊らによって確 かめられており,音による影響も示唆されている4).本システムでは,マウスカーソルがレ イヤを移動すると「マウスカーソルとウィンドウがぶつかる」と捉えることとする.このと き,金属のぶつかる音を鳴らし,マウスカーソルの画像を一瞬だけ縮小・拡大することで段 差を移動したような触覚を提示しようと考えた.また,触覚提示とは異なるが,同時押しま たは左ボタンを押下しているときには,図3のようにマウスカーソルを小さく表示し,マ ウスカーソルを押し付けている感覚が理解しやすいようにした.

5.

操 作 の 例

本章では,本提案手法が有効に機能する例を挙げる.なお,操作環境はWindows7を想 定している.

(4)

図 3 通常時のマウスカーソル(左)と, 押しつけた状態(右)のサイズ比較 図 4 複数のウィンドウの奥に潜ってデスクトップに到達する様子 5.1 デスクトップのアイコンをダブルクリックする場合 図4のように,ウィンドウが複数ある状態でマウス操作をする作業中に,デスクトップ 上のファイルやアプリケーションのショートカットなどをダブルクリックして起動する状況 を考える.通常であれば,手前のウィンドウを移動したり全て最小化させたりしてから目的 のアイコンをダブルクリックするが,操作量が多くなってしまう.これに対し本提案手法で は,デスクトップ上で同時押しをして目的のアイコンをダブルクリックするという一連の操 作のみで完了する. 5.2 奥のウィンドウを操作すると手前のウィンドウが完全に隠れる場合 図5のように,手前のブラウザよりも奥のフォルダのウィンドウサイズが大きい場合(奥 のウィンドウが最大化されている場合も含む)に,奥のフォルダ内のPDFファイルをダブ ルクリックする場面を考える.通常は奥のフォルダを1度クリックした時点で最前面化して 図 5 奥のウィンドウを操作すると 手前のウィンドウが完全に隠れてしまう配置 図 6 奥の隠れたファイルを手前のフォルダに ドラッグアンドドロップする様子 しまい,ブラウザが完全に覆い隠されてしまうため,タスクバーにあるブラウザのアイコ ンをクリックして再度最前面化するか,フォルダを移動させるといった操作が必要になる. 本提案手法では,奥のウィンドウを最前面化せずにPDFファイルを開けるため,ブラウザ を最前面に戻す操作が必要なくなる. 5.3 手前と奥にあるフォルダ間でのドラッグアンドドロップ操作 図6のように2つのフォルダを開いており,奥の隠れた位置にあるファイルを手前のウィ ンドウへドラッグアンドドロップする場面を考える.通常であれば,奥のウィンドウをク リックして最前面化したり,手前のウィンドウを移動したりして,目的のファイルと移動先 のフォルダが同時に見えている状態にしてからドラッグアンドドロップする必要がある.本 提案手法では,ウィンドウに対する操作をせずに直接目的のファイルやフォルダのある位置 へマウスカーソルを移動させることができるため,ドラッグアンドドロップ操作が一連の動 きで可能である.

6.

本提案手法の有効性を確かめるために,被験者が簡単なファイル移動のタスクを完了する までの時間を計測する実験を行った.以下で実験の詳細について述べる.

(5)

6.1 実 験 方 法 異なるフォルダ間でのファイル移動を行うタスクを被験者に与え,操作を完了するまでの 時間を計測した.被験者は大学生及び大学院生の合計6名で,普段PCの操作に用いるの は,マウス,トラックボール,タッチパッドなど,被験者によって様々である.今回の実験 では,操作にマウスのみを用いることとし,既存の手法と本提案手法(マウスカーソルが ウィンドウの下に潜る)とでタスクを5回ずつ行わせた.実験を行うシステムの順序は被験 者毎に変更した.実験で認めた操作は,ファイルの移動,ウィンドウの移動,ウィンドウの 最大化・最小化,ウィンドウのサイズ変更,タスクバーに表示されたウィンドウをクリック することによる最小化と前面移動である.被験者には可能な限り早くタスクを行うように伝 えた. 実験開始時のフォルダの配置を図7のスクリーンショットに示す.また,移動前と移動後 のファイル配置のイメージを図8に示す.デスクトップ上に3つのフォルダA,B,Cが左 から並んでおり,テキストファイル1,2,3がフォルダB,C及びデスクトップに置かれ ている.マウスカーソルはフォルダAの中央に配置される.この状態から,3つのテキス トファイルをのように指定したフォルダへ移動するまでを1回のタスクとした.なお,ここ では便宜上デスクトップも1つのフォルダと見なす. 被験者には,本提案手法によるマウスカーソル操作に慣れさせるため,潜る機能ありで フォルダ間のファイル移動を10∼15分程度行わせた.また,本システムの仕様を説明しな がら,潜る機能を使って素早く操作するためのアドバイスを適宜行った.その後,実験と同 じウィンドウの配置でファイルを移動する練習を,潜る機能なし・ありの両方で行わせた. これは,実験を開始してからファイルを移動する順序やウィンドウを移動する位置などを試 行錯誤しないようにし,操作をスムーズに行った場合の時間を比較するためである.さら に,実験時にファイルを誤ったフォルダに移動してしまったり,意図しないウィンドウの最 大化を行ったりした場合にも,同様の理由でタスクのやり直しを認めた.なお,ウィンドウ の透過率は筆者らが実際にタスクを行って操作しやすいと感じた23%に固定して行ってい る(実際にはユーザによって調整可能である). 6.2 結果と考察 被験者毎の操作時間を表1に示す.また,被験者毎に平均操作時間を比較したグラフを 図9に示す.全被験者について,本提案手法の方が操作時間が短縮される結果となった.平 均操作時間を被験者毎の対応あり両側t検定にかけたところ,有意水準1%で有意に操作時 間が短縮されたことが確認できた. 図 7 実験開始時のウィンドウの配置 図 8 実験開始時のフォルダとファイルの配置(左)と移動後の配置(右) 表 1 潜りなし・ありでの被験者毎の操作時間(秒) 回数 被験者 1 被験者 2 被験者 3 被験者 4 被験者 5 被験者 6 なし あり なし あり なし あり なし あり なし あり なし あり 1回目 10.0 7.8 7.3 5.2 7.3 7.2 7.0 5.9 7.5 6.2 7.2 6.9 2回目 7.7 7.2 7.0 4.5 8.5 7.4 7.3 6.0 8.1 6.0 7.5 6.1 3回目 8.5 6.6 6.3 4.4 9.5 6.6 7.3 6.1 8.4 5.1 7.2 6.9 4回目 10.4 7.2 6.8 5.9 8.5 6.2 8.2 6.9 7.3 5.1 8.8 6.2 5回目 9.0 5.7 6.4 5.1 7.9 5.8 8.2 5.9 7.1 6.3 7.2 6.0 平均 9.1 6.9 6.8 5.0 8.3 6.7 7.6 6.1 7.7 5.7 7.6 6.4 実験後に5段階評価のアンケートを実施し,本システムのユーザビリティについて尋ね た.質問項目と回答結果を表2に示す.さらに,「今回はどちらがタスクをこなしやすかっ たか」という質問に対しては6名全員が潜る機能ありと回答し,「今後,潜る機能ありのマ ウスカーソルを使いたいと思うか」という質問に対しても全員が「そう思う」と回答したこ

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図 9 被験者毎の平均操作時間(秒)の比較 表 2 アンケート項目と回答の平均値 質問項目 回答 左右ボタン同時押しによって潜る,という操作のしやすさ 3.0 常に手前のレイヤに移動しようとするシステムの操作しやすいか 3.5 潜った先での (ウィンドウの裏側での) マウスカーソル操作のしやすさ 3.5 目標のウィンドウへの辿り着きやすさ(意図したレイヤでマウスカーソルを止められるか) 3.8 音によるレイヤ移動の分かりやすさ 4.5 マウスカーソルの拡大・縮小によるレイヤ移動の分かりやすさ 2.8 潜って操作するという機能の便利さをどのくらい感じたか 4.5 潜る機能ありの場合の,操作したいファイルへの辿り着きやすさ 4.5 潜る機能なしの場合の,操作したいファイルへの辿り着きやすさ 2.0 とから,本提案手法が好意的に受け止められていると考えられる. 実験を通しての所感を自由記述で求めたところ,潜っている最中の階層を把握しづらい, 手前のウィンドウの文字が重なって対象ウィンドウが見づらいといった意見が得られた.マ ウスカーソルがレイヤを移動する際のマウスカーソルの拡大・縮小は見えなかったという回 答もあり,狙いであった視覚効果による触覚提示をうまく扱えなかった.この点については, マウスカーソルの拡大・縮小率を上げたり,やや時間をかけて見せたりすることで解決を図 りたい.一方,金属音によるレイヤ移動については好評であり,聴覚提示を用いた移動の提 示は本提案に有効に作用することが示唆された.そのため,今後のシステムにも積極的に 活用していく予定である.今回は左右ボタン同時押しで潜る操作を行ったが,普段行わない 動作なので非常に違和感を覚えたという意見があった.それとは逆に,操作の覚えづらさ・ 操作の行いづらさはなかったという感想もあった.左右のボタンを押下するタイミングがず れるとマウスドラッグになってしまう問題を指摘されたため,同時押しの判定を2ms以内 とするのではなく,ユーザが任意に値を設定できるようにすることを検討している.

7.

改善すべき点

本提案手法に関して得られた意見のうち,改善すべき項目と筆者らの考えを述べる. 7.1 マウスカーソルを任意のレイヤで止められない 「システム概要」で述べたように,マウスカーソルはウィンドウに衝突したときにそのレ イヤに移動する,というアルゴリズムで動作している.冒頭の図1のようにウィンドウが配 置されている場合には本提案手法が有効に働くが,奥よりも手前のウィンドウのサイズが大 きい場合には操作を行いづらい.マウスカーソルを一旦デスクトップまで押し付けて潜り こんでから目的のウィンドウまで手前へ移動させていくことも可能だが,操作が煩雑であ る.また,ウィンドウを最大化して作業している場合も同様であり,こちらはそもそもマウ スカーソルが奥へ移動するための隙間がない.そこで,ディスプレイの端で同時押しをして いる場合にはデスクトップのレイヤまでマウスカーソルを移動させるか,あるいは同時押し している最中は全てのウィンドウサイズを若干小さくしたり,マウスジェスチャでレイヤ移 動を行ったりする仕様を検討している. 7.2 潜ったレイヤでの操作が行いづらい 2,3個程度のウィンドウの下に潜った場合は容易でも,それよりも多くなると操作しづ らいとの意見が多くあった.具体的には,重なったウィンドウが同系色だと操作対象のウィ ンドウが把握できない,ウィンドウが白いとマウスカーソルがどこにあるのか見えない,な どという問題である.これに対しては,対象ウィンドウを赤く縁取りすることで認識しやす くしたり,マウスカーソルの周囲だけウィンドウに穴を空けたように表示することで解決す るという方法や,手前のウィンドウを半透過ではなく枠だけ表示する,手前の2,3枚は半 透過でそれ以降は完全透過にする,奥のウィンドウほど透過度を上げる,といった方法を検 討している. 7.3 3次元移動が可能になることで認知的負荷が増加する 本提案手法による認知的負荷は非常に根本的な問題であり,マウスカーソルを奥方向や手 前方向へ移動させるべきかどうかという議論になる.可能な限り,ユーザに負荷のかからな い操作方法にしていきたい.例えば,マウスカーソルがどの程度奥へ移動したのかを示す方 法として,棒グラフや数値を表示する手法も考案したものの,認知的負荷がかかる懸念が

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あったため,今回実装したシステムでは擬似触覚を利用してレイヤ移動を提示する程度に留 めている. 7.4 レイヤを移動するために,ウィンドウを迂回する必要がある 本提案手法による操作では,ウィンドウを回りこむようにカーソルを動かす必要があるた め,マウスの移動量が多くなるという問題を抱えている.そこで,この問題に対してもマウ スジェスチャでのレイヤ移動をするか,マウスの右ボタンを押しながらホイール回転を行う といった対処をしようと考えている. また,今回のシステムの仕様ではユーザの意図しないタイミングでマウスカーソルが手前 に移動してしまうことがある.具体例を挙げると,潜った先の対象ウィンドウに表示されて いる文章を読むためにマウスカーソルを移動させると,手前のレイヤに移動してしまう,と いったことである.そこで,手前に戻るための操作を用意するのはどうかという提案をされ た.これによって誤操作は減少すると思われるが,その分だけ操作が煩雑になるので,慎重 に検討したい. 7.5 奥のウィンドウ内の,隠れていない部分を操作する場合 冒頭の図1において,動画プレイヤに隠れているファイルではなく,既に見えているファ イルをダブルクリックする場合には,本提案手法は有効に働かず,どうしても一度動画プレ イヤが背面に移動してしまうことになる.このように,本提案手法の有効性はウィンドウの 重なり方やサイズに大きく依存してしまう.よって,どのようなウィンドウの配置やサイズ であっても対応可能なシステムにしたいと考えている.

8.

今後の課題と展望

今回実装したシステムを元に,マウスジェスチャに対応したシステム,潜ったウィンドウ の表示を変更したシステムなどの検討すべきバージョンを実装し,評価を行っていく.また, 奥のレイヤへ潜る際にマウスカーソルの先端をウィンドウに差し込むようなグラフィックに するであるとか,マウスジェスチャ対応バージョンではその場でウィンドウを突き破ること で奥や手前に移動するといった視覚的効果を加え,レイヤを移動したことをより直感的に 理解できるようにする.また,本システムはポインティングデバイスとしてマウスを対象に したものだが,本提案手法はタッチパッドやトラックボールなどでも有効であると考えてお り,それぞれ適した操作方法を追求していきたい. 今後はタブレット型PCやスマートフォンなどの小さなディスプレイ内で起動を行うこと が多くなると考えられる.これらのデバイスで多数のアプリケーションを起動する場合,複 雑さや煩雑さのない動作で操作対象を切り替えられる手法が求められるであろう.そこで, タッチ操作をするデバイスにおいて,押下した圧力を感知することで現在表示されていない アプリケーションを操作するという手法を考案している.このように,最前面に表示されて いるものよりも奥にあるものを操作可能にするという手法が,プラットフォームに関わらず 有効であることを示していきたい.

9.

関 連 研 究

ウィンドウが重なることで発生する問題については様々な解決方法が試みられている.ウィ ンドウ切り替えの煩雑さを解決するために,加藤らはスライダを用いてウィンドウを手前か ら順に非表示にするぱらぱらウィンドウを提案した3).神原らのちらりウィンドウは,ジョ イスティックを操作することで視点を移動させ,前面のウィンドウに隠された部分も閲覧可 能にするシステムである5).久納らは,カメラを用いて実世界での視点移動をディスプレイ 内に反映させるシステムを提案した6).大野は,視線を利用してウィンドウの移動や最大化, 最小化などを行う手法を提案した7).これらはいずれもウィンドウ操作用のデバイスを必要 としているものの,本研究と非常に近い問題設定をしている.また,柴田らは複数のウィン ドウを一括することによってマルチタスクを支援する手法を提案しており,タイルウィンド ウ方式による効率的なウィンドウ操作を実現している8)

RobertsonらのTask Gallery9)は,仮想的な3次元空間表示を利用することでウィンド ウの重なりをなくし,更にウィンドウの配置が記憶されやすくしたシステムである.大内ら は,3次元デスクトップ環境においてマウスが2次元でしか操作できないことを問題視し, 3次元入力が可能なデバイスを使用する手法を提案した2).このシステムでは奥行きを表現 するためにマウスカーソルが奥へ移動するほど小さく表示したり,ウィンドウやアイコンな どにマウスカーソルが接触すると触覚を提示したりするといった,本提案手法に似た機能を 持っている. 小林らは,オブジェクトをドラッグしている最中にマウスホイールを下回転させること で,マウスカーソル直下のウィンドウを手前から順に非表示にする手法を提案している10). このシステムは,通常のスクロール操作との競合を避けるために,利用可能な場面をドラッ グ操作中に限定している. Dragicevicは,マウスジェスチャでウィンドウを紙のようにめくることによって,重なっ たウィンドウ間のドラッグアンドドロップを可能にするシステムfold-and-dropを提案し ている11).本研究での提案手法がマウスカーソルの位置するレイヤを移動するのに対し,

(8)

fold-and-dropはウィンドウ側のレイヤを変更するという手法をとっている.このシステム も,ウィンドウの前後関係を変更せずに別のレイヤにあるウィンドウへの操作を行うことが 可能である. 中村らは2つのマウスを用いてウィンドウを操作する環境を提案している12).また五十 嵐らは,マウスを両手に持って操作することにより,画面内のビットマップ画像を掴んで伸 ばしたり曲げたりするインタラクションが可能にするシステムを提案している13)

10.

ま と め

本稿では,オーバーラップウィンドウ方式においてマウスカーソルをウィンドウの奥へと 潜りこませる操作手法を提案し,そのプロトタイプとなるシステムを実装した.このシステ ムを用いた実験では,通常のマウス操作よりもタスクを早く完了させられることが分かり, 本提案手法の有効性を示した.また,この手法が有効に働く事例と改善点を取り上げた.問 題点も既に多く判明しているため,今後はこれらを解決する方法についても十分に検討して いく.また,操作方法に関してはいくつもの案があり,それぞれの利点・欠点があるため, それらを考慮した上で実装し,評価実験を通してシステムを改善していきたい.

参 考 文 献

1) 平岡 茂夫:ぼかしの効果を活用したインターフェースデザイン,福岡工業大学情報 科学研究所所報 Vol.12,pp.7–13(2001). 2) 大内 勇佑,西野 浩明,宇津宮 孝一,賀川 経夫:触感提示機能を有する3次元 デスクトップ環境の開発,火の国情報シンポジウム2011(2011). 3) 加藤 直樹,小國 健:ぱらぱらウィンドウ:ウィンドウの切り替えを容易にするイン タフェース,インタラクション2003論文集,pp.123–130(2003).

4) 渡邊 恵太,安村 通晃:RUI: Realizable User Interfaceカーソルを用いた情報リア ライゼーション,第27回ヒューマンインタフェース学会研究会「VRの心理と生理」, ヒューマンインタフェース学会研究報告集,pp.35–38(2004). 5) 神原 啓介,安村 通晃:ちらりウィンドウ:隠れたウィンドウを覗き見る,インタ ラクション2004論文集,pp.47–48(2004). 6) 久納 章寛,岡本 壮平,武藤 直美,中島 誠,伊藤 哲郎:層構造の作業環境に おけるユーザ意図の把握,FIT2002情報科学技術フォーラム 情報技術レターズ,pp. 199–200(2002). 7) 大野 健彦:視線を利用したウインドウ操作環境,電子情報通信学会技術研究報告, Vol.HIP99–29,pp.17–24(1999). 8) 柴田 博仁,大村 賢悟:ウィンドウをドッキングすることによるマルチタスキング 支援,インタラクション2011論文集,pp.391–394(2011).

9) George Robertson et al.: The Task Gallery:A 3Dwindow manager, In Proceedings of CHI ’00, pp.494–501(2000).

10) 小林 正朋,五十嵐 健夫:活用:マウスホイール,インタラクション2005論文集,

pp.175–176(2005).

11) Pierre Dragicevic: Combining Crossing-Based and Paper-Based Interaction Paradigms for Dragging and Dropping Between Overlapping Windows. In Pro-ceedings of the 17th annual ACM Symposium on UIST’04, pp.193–196(2004). 12) 中村 聡史,塚本 昌彦,西尾 章治郎:活用:2つのマウスを用いたウィンドウ操

作機構の設計と実装,情報処理学会研究報告,Vol.99,No.35,pp.1–6(1999). 13) 五十嵐 健夫,Tomer Moscovich,John F. Hughes:両手マウスを利用した2次元

参照

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