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事業認定手続とは 国土交通大臣又は都道府県知事 ( 以下 事業認定庁 という ) が申請に係る事業が真に公共のためになるものであり 土地等を収用し 又は使用するに値する公益性を有することについて認定する手続 ) である 一方 裁決手続とは 各県に設置される収用委員会が 土地等の権利者に対する補償金の

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土地収用法に基づく事業の認定

における公益性について一考察

小熊

健太郎

新潟国道事務所 用地第一課 (〒950 - 0912 新潟県新潟市中央区南笹口2-1-65 ) 土地収用制度は、公共の利益となる事業のために必要とされる土地を強制的に取得するという制度であ る。 事業認定庁は、事業認定に関する処分を行うに当たっては、公共の利益の大きさ・程度について判断を しなければならないものであるが、その判断には性質上裁量判断が認められているとされている。 当該判断に関して、過年度認定事例を整理・類型化したものについて検討を行い、若干の分析を行うも のである。また、今後の土地収用制度活用への若干の方策を示し、公共用地の早期取得に寄与することを 目的とする。 キーワード 土地収用法、事業認定、公益性 1.はじめに 土地収用制度に関しては、「事業認定等に関する適期 申請等について」(平成15年3月28日付け地方整備局長 等あて本省総合政策局長、都市・地域整備局長、河川局 長、道路局長、港湾局長、航空局長通達)がなされ、国 土交通省の直轄事業について、起業者には、適期申請ル ールの徹底が求められている。 他方、制度活用に当たっては、慎重な手続が要請され ていることから、実務上時間を要することもしばしばあ る。 本稿は、事業認定時において想定される処分庁の判断、 近年の傾向を示すとともに、土地収用制度活用へ向けた 若干の方策を示し、公共用地の早期取得に寄与すること を目的とする。 2.土地収用法 土地収用法(昭和 26 年法律第 219 号。以下「法」と いう。)は、憲法 29 条第3項の「私有財産は、正当な 補償の下に、これを公共のために用ひることができる」 との規定に基づき公共の利益となる事業に必要な土地等 の収用又は使用について、「公共の利益の増進と私有財 産との調整を図り、もって国土の適正且つ合理的な利用 に寄与することを目的」(法第1条)として定められた ものである。 詳細な手続きについては、図-1法における主要手続 図を参照されたい。 図-1 法における主要手続図 事前説明会の開催(起業者) 事 業 認 定の 申 請(起業者→事業認定庁) 事 業 認 定の 告 示(事業認定庁) 事 業 認 定 手 続 (主 と し て 事 業 の 公 益 性 の 認 定 ) 補償金の支払い(起業者→土地所有者等) 権利取得・明渡し(土地所有者等→起業者) 裁決申請(起業者→収用委員会) 権利取得裁決・明渡裁決 (収用委員会→起業者・土地所有者等) 裁 決 手 続 ( 主 と し て 補 償 金 額 の 確 定 ) 申請書の公告・縦覧(起業地の存する市町村で2週間) 第三者機関からの意見聴取 (事業認定庁) 公聴会の開催 (事業認定庁が主催) 専門家・関係行政機関からの 意見聴取(事業認定庁) 収用委員会審理 土地調書・物件調書の作成(起業者) 裁決申請書の作成(起業者) 処分庁: 国土交通大臣 又は 都道府県知事 公聴会請求があった場合 その他必要があると認めるとき (必要があると認め るとき ) 事業認定庁と反対の趣旨 の意見書があった場合 (事業認定理由の公表) 処分庁: 都道府県収用委員会

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事業認定手続とは、国土交通大臣又は都道府県知事 (以下「事業認定庁」という。)が申請に係る事業が真 に公共のためになるものであり、土地等を収用し、又は 使用するに値する公益性を有することについて認定する 手続1)である。 一方、裁決手続とは、各県に設置される収用委員会が、 土地等の権利者に対する補償金の額、起業者が土地等の 権利を取得する時期、土地等の権利者が土地等を明け渡 す期限等を決定(裁決)する手続1)である。 収用制度は、時には権利者の意思を無視し強制的に私 有財産を公共の利益の増進のため用いることができるこ とから、法手続きに携わる行政庁に対して厳正公正な判 断が求められる。これは憲法第31条又は13条の精神から 求められるところ2)でもある。具体的には、事業認定手 続における事業認定庁においては、事業の公益判断、収 用権付与される起業地の範囲等が挙げられ、また裁決手 続における収用委員会においては、損失補償についての 判断等が挙げられる。 3.事業認定 (1) 定義及び効果 法は、その第1条に「この法律は、……公共の利益の 増進と私有財産との調整を図り、もって国土の適正且つ 合理的な利用に寄与することを目的とする。」と規定し ており、この理念を最も表している条項の1つが法第 20 条である。 事業認定とは、法第3条に該当する事業(以下「収用 適格事業」という。)について、起業者の能力、起業地 及び事業計画を検討し、当該事業が高い公益性を有し、 かつ土地の適切かつ合理的な利用に寄与するものである ことを審査し、当該事業のために土地等を収用する必要 があることを事業認定庁が認定する行為である3) これにより、行政処分である事業認定により起業者に 対して強制収用権が付与されることとなる。 (2) 事業認定の要件 事業認定庁は、法第 20 条に基づき事業認定申請に係 る事業が次の4つの要件をすべて満たすときは、事業の 認定をすることができる。 (法第 20 条第1号要件)事業が法第3条各号のいずれ かに掲げるものに関するものであること (法第 20 条第2号要件)起業者が当該事業を遂行する 充分な意思と能力を有する者であること (法第 20 条第3号要件)事業計画が土地の適正且つ合 理的な利用に寄与するものであること (法第 20 条第4号要件)土地を収用し、又は使用する 公益上の必要があるものであること それでは、各号の要件について、事業認定庁は、どの ような視点から判断しているのか、各号毎に検討してみ る。 (3) 法第 20 条第1号要件 本号要件は、申請に係る具体の事業が法が定める収用 適格事業に該当するか否かを審査するものであり、申請 事業に収用権を付与するための当然の前提である 4)とさ れている。 本号要件は、覊束行為であることについて異論をみな い5)とされていることから、申請事業が、収用適格事業 に該当するか否かにより判断される。 例えば、一般国道に関する事業は、道路法(昭和27年 法律第180号)第3条第2号に掲げる事業であることか ら、法第3条第1号に掲げる道路法による道路に関する 事業に該当するものと判断される。 (4) 法第 20 条第2号要件 本号要件は、起業者が実際に事業を遂行しうる各種の 準備が整えられているか否かを審査するものである 4) されている。 本号に掲げる「「意思」には事業遂行に必要な免許等 を取得していることが含まれており、「免許」とは、事 業を施行する法的、経済的、実際的(企業的)能力を指 称するものと解すべきである」(東京地裁平成2年4月 13 日判決)と判示されている。 多くの認定例では、当該事業が道路法第 13 条第1項 の指定区間に該当すること又は河川法(昭和 39 年法律 第 167 号)第9条第2項に規定する指定区間に指定され ていないこと、予算措置が講じられていることなどから、 本号要件への該当性を判断している。 (5) 法第 20 条第3号要件 本号要件は、その判断事項が収用制度の根幹に関わる ものである。 本号要件への適合性は、「その土地がその事業の用に 供されることによって得られるべき公共の利益と、その 土地がその事業の用に供されることによって失われる利 益(この利益は私的なもののみならず、時としては公共 の利益をも含むものである。)とを比較衡量した結果前 者が後者に優越すると認められる場合に存在するもので あると解するのが相当」(東京高裁昭和 48 年7月 13 日 判決)であり、比較衡量の解釈が示されたのは日光太郎 杉事件の一審判決(宇都宮地裁昭和 44 年4月9日判 決)を以て嚆こう矢し6)とする7)とされている。 a) 得られる公共の利益 得られる公共の利益とは、その事業が施行されること によって得られる公共の利益をいう。事業の種類に応じ て申請事業の目的及び効果について、特定将来における 計画論として妥当か否かの観点から審査される。当該部 分は事業毎に相違があることから、類型化した詳細は後 述を参照されたい。 また、事業施行により発生する大気質、騒音、振動等 の生活環境への影響については、「当該事業内容が道路 建設事業でそのルートが集落等又はその付近を通過する 場合に、とりわけ、それが相当規模の道路であるときは、 生活環境等に継続的に何らかの影響を及ぼすことは避け

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られず、法第 20 条第3号の要件の判断に於ける比較衡 量の対象である「得られるべき公共の利益」の減殺事由 としての要因の発生が予想される」(秋田地裁平成8年 8月9日判決)と判示されていることなどから、得られ る公共の利益から控除するものとして整理されていると 考えられる。 しかし、法第 25 条の2第1項に基づく社会資本整備 審議会(以下単に「社会資本整備審議会」という。)か らの意見にて「人の生活環境に影響を与える要素として、 従来の騒音などのほか、将来的には景観の議論なども必 要となるのではないか」、「人の生活に影響を与える要 素が、得られる公共の利益のマイナス要因の中で記述さ れても、失われる利益として記述されないという事業認 定理由の構成の仕方については、議論の余地がある」 (平成23年4月8日社会資本整備審議会公共用地分科会 議事要旨より)との意見もあり、今後、検討を要する事 項であるとも考えられる。 b) 失われる利益 失われる利益は、失われる私的ないし公共的価値等の 諸要素、諸価値であり、起業地に係る居住の利益、営 業・営農・山林経営等の経済的利益、景観的・宗教的・ 文化的価値、環境の保全等が考えられる 8)とされている。 近年の認定例の多くは、保全すべき動植物、文化財の 影響がその代表例として挙げられ、それらの検討結果に よると、動植物であれば環境影響評価法(平成9年法律 第 81 号)等に基づく環境影響評価等の結果、文化財で あれば周知の埋蔵文化財への影響及びその措置方法につ いて、その結果で「ない又は軽微である」とされている 場合は、失われる利益についても「ない又は軽微であ る」とされている。 また、社会資本整備審議会からの意見にて「貴重な植 物については、専門家の指導助言を受け、工事箇所だけ でなく、広域的に見たときに個体群の存続に支障がある かを判断したうえで、適切な措置を講じることが重要」 (平成23年4月8日社会資本整備審議会公共用地分科会 議事要旨より)など動植物への保全措置について意見が 出されている。 c) 事業計画の合理性 申請事業の事業計画については、代替案との比較検討 の実施等や当該事業計画が道路構造令(昭和 45 年政令 第 320 号)等の法令に定められた基準に適合しているか 否かという観点から審査されるものである。 (6) 法第 20 条第4号要件 本号要件は、「当該事業が……土地収用という手段を とることについて公益上の必要に欠けるところはないか どうかを審査するものである」9)とされている。その判 断事項は「収用又は使用という取得手段をとることの必 要性があり、公益目的に合致する場合に同条4号要件を 充足していることになる。」(秋田地裁平成8年8月9 日判決)と判示されている。 近年の認定例では、事業を早期に施行する必要性、起 業地の範囲及び収用又は使用の別の合理性から判断され ており、事業を早期に施行する必要性とは、現時点で事 業認定を行う必要性を検討し、かつ、周辺自治体等の早 期完成に関する要望も判断されている。これは判例にお いても「法第 20 条第4号要件の審査に当たり考慮され る事情には、……事業の推進について各自治体が望んで いるかどうかということや知事、議会の意見はどうかと いったことも含まれる。」(岡山地裁平成 17 年7月 27 日判決)と判示されている。 なお、第3号要件との関係については、その考慮され るべき内容に連続性が存すると考えられるが、それぞれ の要件が意味するところは、第3号が、当該土地が事業 の用に供されることによって得られるべき公共の利益と、 失われる私的ないし公共的価値等との比較において、前 者が後者に優越することによって満たされるのに対し、 本号要件は、広く公益的見地からあらゆる諸条件を別な 観点から検討して収用又は使用する必要がある場合に満 たされるものである。 (7) 判断の裁量性 法第 20 条第3号及び第4号要件に係る事業認定庁の 判断に関しては、裁量権を有するとされており、判例に おいても「その性質上、必然的に政策的、専門的技術判 断を伴うものであり……裁量権の逸脱又は乱用にわたる と認められない限り、違法をもたらすものではない」 (名古屋地裁平成 14 年3月 27 日判決)と判示されてい る。 (8) 事業認定申請に関する留意点 このような見地から、起業者は様々な観点から申請事 業について説明責任を尽くさなければならない。 他方で事業認定は、微妙・困難な価値判断を要する場 合があること、上述の事業認定庁の判断において裁量権 を有するものであることなどから、起業者はそれらを十 分に考慮し、事業認定申請書等の書類を作成する必要が ある。 4.事業認定の近年の傾向 (1) 事業認定件数の推移 全国での事業認定件数(本省認定分)を、表-1に示 す。 表-1 過去3ヶ年での事業認定件数の推移 18 26 36 1 1 2 0 5 10 15 20 25 30 35 40 H21 H22 H23 全国 北陸 (本省ホームページ10)より集計)

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全国的には公共事業に係る事業費は減少しているも のの、事業認定件数は、平成 21 年度は 18 件に対し、 平成 23 年度は 36 件と着実に増加していることがわか る。 これは、公共事業に係る現状は真に必要な社会資本 整備が求められている反面、公共事業のスピードアッ プなどへの対応のほか、東日本大震災により被害を受 けた被災地の早期復興支援が求められており、こうし た中で、土地収用制度についても、事業効果の早期発 現を図る観点から積極的活用が求められ、増加傾向に あると推察される。 (2) 事業毎の内訳 上記認定案件について、その内訳を表-2に示す。 表-2 認定件数の内訳(事業毎) 7 10 5 9 11 25 2 2 5 2 1 1 0 5 10 15 20 25 30 35 40 H21 H22 H23 新幹線 ダム 河川改修 一般国道 高速道路 認定件数のうち、近年では道路事業がそのほとんど を占めていることがわかる。特に一般国道事業が過半 数を占めている。また、河川改修事業は増加傾向にあ ることがわかる。 これに対し、ダム事業については、平成21年度に示 された「できるだけダムにたよらない治水」への政策 転換を受け、さらに、今後の治水対策のあり方に関す る有識者会議で提言された検証手続きの実施等が行わ れている背景もあり、近年は年間1、2件であると推 察される。 (3) 直轄事業における内訳 また、上記認定件数のうち、直轄事業での内訳を表 -3に示す。 表-3 直轄事業の内訳 4 6 4 6 4 10 3 2 2 3 7 3 1 1 1 1 2 2 4 2 0 5 10 15 20 25 30 35 H21 H22 H23 ダム 河川改修 歩道 立体化 交差点改良 現道拡幅 バイパス 地域高規格 一般国道自専道 高速自動車国道(新直轄) 直轄事業では、近年、高規格幹線道路である高速自動 車国道(新直轄)及び一般国道の自動車専用道路が半数 程度を占めており、また、バイパス事業及び河川改修事 業は増加傾向にあることがわかる。さらに、平成 23 年 度では交差点改良、歩道設置事業及び立体化事業といっ た珍しい事例についても認定されている。 (2) 事業類型別の事業認定理由 a) 高規格幹線道路 高規格幹線道路とは、自動車の高速交通の確保を図る ため必要な道路で、全国的な自動車交通網を構成する自 動車専用道路11)である。北陸地方整備局(以下「北陸地 整」という。)管内では、高速自動車国道日本海沿岸東 北自動車道(以下「日沿道」という。)、一般国道 470 号能越自動車道等が該当する。 北陸地整管内では、平成22年1月18日付け認定告示済 の日沿道において、その公益性を、当該地域での物流を 挙げたうえで、現在の問題点(以下「現道隘路」とい う。)を「一般国道7号の交通量は、村上市新町地内で 20,673台/日、混雑度は2.12」を挙げ、「本件事業の完 成により……新潟県外への高速交通ネットワークが形成 され、首都圏や関西圏等との所要時間が短縮されること から、物流の効率化等により、新潟県県北地域の活性化 に寄与することとなる。さらに、一般国道7号が担って いる通過交通を本件区間が分担することから、一般国道 7号の混雑の緩和が図られ、安全かつ円滑な交通の確保 に寄与することが認められる。」と判断されている。 これは、高速交通ネットワークは高速自動車国道法第 4条に掲げる「全国的な自動車交通網の枢要部分を構 成」に適合し、高速交通ネットワークが完成することに より、本件地域での物流の活性化及び現道隘路の解消が

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認められていることになる。 つまり、他の高規格幹線道路も概ね同様の理由から認 定されていることから考えると、高規格幹線道路におい ては、高速交通ネットワークの形成、具体例な物流品目、 現道隘路の解消が必要な要件ではないかと推察される。 b) 地域高規格道路 地域高規格道路とは、高規格幹線道路と一体になって、 地域発展の核となる都市圏の育成や地域相互の交流促進、 空港・港湾等の広域交通拠点との連絡等に資する路線12) である。北陸地整管内においては、一般国道 404 号長岡 東西道路、一般国道 253 号上越三和道路及び八箇峠道路、 一般国道 159 号金沢東部環状道路等が該当する。 北陸地整管内での認定事例は無いが、他地整での事例 を見てみると、上述高規格道路の判断と概ね同様の判断 と推察される。 c) バイパス事業 バイパス事業とは、現道隘路解消のため現道の2地点 間を別経路で接続する事業であり、北陸地整管内での事 業は多い。 北陸地整管内では、平成23年11月18日付け認定告示済 の一般国道8号改築工事(入善黒部バイパス)において、 現道隘路を「現道の自動車交通量は、魚津市木ノ下新地 内で24,982台/日であり、混雑度は1.73」と挙げ、当該 事業が完成することにより、現道の通過交通を本件区間 が分担することから、現道の交通混雑の緩和が図られる など、安全かつ円滑な自動車交通の確保に寄与すること が認められる。」とされている。 つまり、バイパス事業については、現道隘路(特に交 通混雑解消)の存在とその解消が必要な要件であると推 察される。 また、過年度認定理由を見てみると現道隘路は交通混 雑が多いものの、それのみならず、線形不良及び通行止 めを現道隘路にしている事例も存する。 d) 現道拡幅事業 現道拡幅事業とは、現道隘路解消のため現道を拡幅し 交通容量を確保するものである。全国的に事業は多いと 思われるが、認定件数はそれほど多くはない。 北陸地整管内での認定事例は無いが、他地整での事例 を見てみると、上述バイパス事業での判断とほぼ同様で あると推察されるが、バイパス事業との相違点は、交通 混雑のみを現道隘路としている点である。 e) その他の道路事業 他にも近年では立体化事業、歩道事業などが認定され ている。 北陸地整管内では、平成24年1月20日付け認定告示済 の一般国道8号改築工事(坂東交差点立体化事業)にお いて、現道隘路を「現道の自動車交通量は、射水市坂東 地内で53,700台/日であり、混雑度は1.40となっており、 坂東交差点を先頭に富山市方面へ向かう最大渋滞長 1,800m」と挙げ、「本件事業の完成により、坂東交差 点が高架構造(オーバーパス)となり、現道の直進交通 が主要地方道新湊庄川線との平面交差を回避することに なるため、坂東交差点における交通混雑の緩和が図られ るなど、安全かつ円滑な自動車交通の確保に寄与するこ とが認められる。」とされている。 つまり、当該事業の完成による現道隘路解消を認めて いることから、混雑度の緩和又は渋滞長解消を認めてい ると推察される。 f) 河川改修 年間数件ではあるものの、河川改修事業についても認 定されており、近年は増加傾向にある。 近年の認定例では、現在の流下能力が洪水防御計画 (河川整備基本方針に基づく河川整備計画での説明事例 が多い)に定める計画高水を下回っていることから、洪 水等の被害が発生する可能性が極めて高く、事業効果と して、洪水防御計画が前提とする大規模降雨が発生した 際にも、安全に流下させることをその目的としている例 が多い。 したがって、事業効果では「本件事業は、無堤で河道 が狭小なことなどから、流下能力が低く、水害の危険性 が極めて高い本件区間について、河道配分流量を安全に 流下させるために計画された河川改修事業であり、本件 事業の完成により、本件区間の流下能力の向上が図られ、 水害の軽減に寄与することが認められる。」などと記載 されている。 (2) 近年の認定例からの示唆 近年の認定例を事業ごとに類型化したものを総合的に 勘案すると、事業によりその求められる公益性は当然異 なり、また、事業認定庁が事業計画の内容は、できる限 り数字をあげて説明すること(定量的な説明)13)と指導 されているとおり、いずれの事業においても、現道隘路 及び事業効果を定量的に述べていることがわかる。 それでは、歩道設置事業等の小規模事業における土地 収用制度の活用は可能だろうか。 事業認定を受けるにあたっては、事業規模の大小では なく「事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与す るものであること」(法第 20 条第3号要件)について 説明できるかどうかで判断すべきではないだろうか。 すなわち、前述の現在の問題点及び事業効果を告示を 受けている事業と同様に説明可能な事業については十分 可能と解される。現に平成 17 年度、18 年度、19 年度及 び 23 年度では、歩道設置事業など小規模事業において も認定されている事例も存する。北陸地整においても平 成 18 年9月4日付け一般国道 157 号改築工事(野町広 小路交差点改良)が認定されている。 したがって、起業者は、小規模事業等における収用制 度の活用可否について、その事業規模の大小で判断する ものではなく、その事業の公益性が法第 20 条に照らし、 定量的に説明し尽くせるか否かの観点から判断すべきで ある。

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5.土地収用制度活用への方策 本稿では、土地収用制度の中での事業認定の法的性格、 近年の事業認定の傾向等について挙げてきたが、そのポ イントをまとめると以下のようになろう。 土地収用制度は冒頭で述べたとおり、適宜申請時期等 が定められ、その積極的活用が起業者に求められている 状況にある。これは、言うまでもなく、土地収用制度を 活用することにより事業用地の計画的な取得、事業効果 の早期発現を図るという考えからのものである。 他方、制度活用に当たっては、事業認定庁による微 妙・困難な価値判断による比較衡量が求められるなど、 慎重な手続きを経なければならないこともあり、実務上 時間を要するケースもしばしばある。 そこで、起業者としては、事業認定庁の考え方を十分 に認識したうえで、事業認定申請書等の書類作成を行う ことが重要となる。 すなわち、事業認定庁の考え方は法第 26 条に基づき、 事業の認定をした理由を官報で告示し、また、国土交通 省ホームページにおいても掲載されている。起業者はそ れらを活用し、現在事業認定庁が事業の認定を行ううえ で、どのような観点に基づき判断を行っているか、把握 するよう努めるべきである。 それらの情報を収集・分析することにより、起業者と して申請を予定する事業が事業認定庁の考えに適合して いるか否かを事前に検証することができるため、より円 滑な土地収用手続への移行判断が可能だと考えられる。 なお、本稿で述べた公益性以外にも申請事業に係る事 業計画(構造)が適切かつ合理的でなければならず、さ らに、「起業地の範囲は必要最小限でなければならず」 (行判大正8年 10 月1日)と判示されており、その事 業計画が事業認定のための審査に耐えられるものでなけ ればならない。 そのためには、事業計画段階など極力早期の段階から 関係部局間において十分な調整を行う必要があると考え られる。 <注・参考文献> 1)事業認定申請マニュアル第四次改訂版 国土交通省総合政 策局総務課土地収用管理室監修 P1 2007 2)小澤道一:逐条解説土地収用法(上) P43 2003 3) 事業認定申請マニュアル第四次改訂版 国土交通省総合政 策局総務課土地収用管理室監修 P12 2007 4)同 P68 2007 5)小澤道一:逐条解説土地収用法(上) P331 2003 6)嚆矢とは、物事のはじまりを意味する。 7)同 P336 2003 8)事業認定申請マニュアル第四次改訂版 国土交通省総合政 策局総務課土地収用管理室監修 P77 2007 9)同 P82 2007 10) 国土交通省総合政策局総務課土地収用管理室ホームペー ジhttp://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/land_expropriation/index.html(最 終アクセス 2012年5月30日) 11)全国道路利用者会議:道路行政平成18年度 P281 2007 12)同 P305 2007 13)事業認定申請マニュアル第四次改訂版 国土交通省総合 政策局総務課土地収用管理室監修 P114 2007

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