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フッ素四ケイ素雲母ナノシート液晶とポリ-N-イソプロピルアクリルアミドの複合化による異方性ヒドロゲルの合成

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Academic year: 2021

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(1)

Title

フッ素四ケイ素雲母ナノシート液晶とポリ-N-イソプロピルアクリル

アミドの複合化による異方性ヒドロゲルの合成

Author(s)

蒲池雄一郎、宮元展義

Citation

福岡工業大学研究論集 第43巻2号(通巻66号) P117-P122

Issue Date

2011-2

URI

http://hdl.handle.net/11478/1325

Right

Type

Departmental Bulletin Paper

Textversion Publisher

福岡工業大学 機関リポジトリ 

FITREPO

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フッ素四ケイ素雲母ナノシート液晶とポリ-N-イソプロピル

アクリルアミドの複合化による異方性ヒドロゲルの合成

雄 一 郎

(工学研究科生命環境科学専攻)

(工学部生命環境科学科)

Synthesis of anisotropic hydrogels of poly(N -isopropylacrylamide)

hybridized with nanosheet liquid crystal of fluortetrasilicic mica

Yuichiro K

AMACHI

(Department of Life, Environment and Materials Science, Graduate School of

Fukuoka Institute of Technology)

Nobuyoshi M

IYAMOTO

(Department of Life, Environment and Materials Science)

Abstract

Anisotropic hydrogels were synthesized by radical polymerization of N-isopropylacrylamide in the liquid crystal-line aqueous colloids of fluortetrasilicic mica (FTSM) nanosheets. As the concentration of FTSM and/or chemical crosslinker (N,N -methylenebisacrylamide) increased, the swelling degree at equilibrium decreased, while the gels became more elastic but more brittle. The gels synthesized in a thin glass capillary showed unilateral orientation of the optical axis over whole the gel domain (several cm)due to concentrically aligned nanosheets in the cylindrical gel. Birefringence index increased as the nanosheet concentration increased. The diameter of the capillary and the lateral size of the nanosheets also affected . Due to the anisotropy in the structure of the hybrid gels,the gels also showed anisotropy in thermally-induced volume phase transition at around 34℃ upon increasing the temperature. The degree of shrinkage as well as its anisotropy basically decreased as the content of FTSM increased.

Key words:nanosheet, liquid crystal, hydrogel, anisotropy

1. 緒言 自然界に存在する粘土鉱物などの無機層状結晶を溶媒中 で剥離・ 散することで得られる無機ナノシートが最近注 目を集めている 。無機ナノシートは極めて異方的な形状 を有するナノ粒子であり,優れた化学的・熱的安定性や, 無機物特有の電気的・磁気的特性を有している。特に粘土 鉱物は入手が容易で低コスト・低環境負荷の材料である。 例えば高 子材料のフィラーとして用いた場合,機械的強 度やガスバリア性,難燃性を向上させる事が可能で,工業 的にも広く利用されている。 さらに最近では,アンチモリン酸塩 や,層状ニオブ酸 塩 から得られるナノシートの 散液において,ナノシー トが排除体積効果 により自発的に配向して液晶相を形成 することが見いだされた 。さらに我々は最近,粘土鉱物の フルオロヘクトライト(FHT)およびフッ素四ケイ素雲母 (FTSM)ナノシートの液晶相を見いだした 。ナノシート 液晶はメソゲンの形状異方性が極めて大きいため,他のラ イオトロピック液晶と比較して,極めて低い濃度で液晶転 移する。 一方,ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(PNIPA) などの機能性高 子ゲルは外部刺激への優れた応答性,物 質の保持・放出,生体との親和性に優れるなどといった特 徴を持つ。その反面,脆弱な機械的強度や構造の制御が難 しいといった欠点も併せ持っている。このような欠点を克 服するために,可動的な架橋点を導入した環動ゲル やダ ブルネットワーク構造を持つゲル などが報告されてき た。一方粘土鉱物などのナノ構造を持つ無機物をゲルと複 合化することは,ゲル物性を改善するためのもう1つの有 効な手段である。原口らは,粘土鉱物の合成ヘクトライト と複合化したポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) (PNIPA)のゲルが極めて優れた機械的強度を示すことを 報告した 。 このように,さまざまな方法によってゲルの力学物性の 向上が実現してきたが,精密に異方的に制御された構造を 平成22年10月30日受付

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高 子ゲルに導入することはまだ難しい。そこで我々は液 晶相を形成する粘土鉱物である FHT と PNIPA の複合化 によって構造の制御されたゲルの合成を試みた 。複合ゲ ルはナノシート液晶の構造を反映して光学異方性を示し た。またこの複合ゲルは異方的な熱誘起体積相転移を示し た。しかし,このような粘土鉱物系のナノシート液晶を利 用した複合ゲルの物性の制御に関してまだわかっていない ことが多い。 本研究では,粘土鉱物ナノシート液晶/PNIPA 複合ゲル の機械的強度や光学異方性などの物性を効果的に制御する ための指針を得るために,ナノシート種,ナノシート粒子 径,ナノシート濃度,化学架橋剤濃度がゲル物性に与える 影響について検討した。ナノシートとしては,これまで我々 が用いてきた FHT の代わりに,FTSM を主に用いた。 FTSM は FHT と類似のフッ素化層状粘土鉱物であり,そ のナノシート 散液が液晶相を形成することが最近明らか となった。しかし,溶液の粘性,液晶相転移濃度,SAXSで 同定される構造など多くの点で FHT 系と違いがあること も明らかとなっている 。したがって,ナノシート間あるい はナノシート 高 子鎖間の相互作用が異なり,ゲルの物 性に影響を与えることが期待できる。 2. 実験 2.1. 試薬 フッ素四ケイ素雲母(FTSM)とフルオロヘクトライト (FHT)はそれぞれトピー工業製の DMA-350 と NHT -ゾ ル B2 を 用 し た。合 成 ヘ ク ト ラ イ ト に は ROCK-WOOD 社のラポナイト RD を 用した。N-イソプロピル アクリルアミド(NIPA)と N,N -メチレンビスアクリルア ミドおよびペルオキソ二硫酸アンモニウム,特級トルエン, 特級ヘキサンは和光純薬の試薬を 用した。N,N,N ,N -テトラメチルエチレンジアミンは SIGMA 社の試薬を 用 した。 なお,DMA-350は8wt.%の水溶液を調製後,遠心 離 (15000rpm, 20℃, 60 )を行い,クリストバライト等の 不純物を含んだ沈殿物を除去することによって精製した。 NHT-ゾル B2(約5wt.%の水溶液)も同様の手順で遠心 離(10000rpm, 20℃, 60 )により精製した。また,精製 時の FTSM ゾルを5.11wt.%に希釈して,超音波処理を24 時間行いナノシートを破砕し,平 粒径の制御を行った。 超音波処理を行った試料と行っていない試料を大塚電子製 の DLS-8000を用いて,動的光散乱測定をしたところ,粒径 はそれぞれ0.3μmおよび1.7μmだった。NIPA は再結晶に より重合禁止剤を取り除いてから 用した。NIPA25g に対 してトルエン62.5ml,およびヘキサン125mlを加え2回再 結晶を行った。 2.2. 合成 粘土鉱物(FHT, FTSM, またはラポナイト)0∼0.4g, 溶媒の蒸留水10g,モノマーの NIPA0.73g,化学架橋剤 N, N-メチレンビスアクリルアミド0∼0.20g を混合して一 日攪拌した。窒素 囲気下で重合開始剤のペルオキソ二硫 酸アンモニウム0.02g と重合促進剤の N,N,N ,N -テトラ メチルエチレンジアミン0.012mlを加え,溶液中にキャピ ラリー管を投入して,ラジカル重合(20℃, 48時間)によ り複合ゲルを合成した。また,ガラス板とシリコンゴムで 作った型枠に反応溶液を流し込むことで,板状のゲルも合 成した。なお,合成したゲル試料は粘土鉱物名,粘土鉱物 含有量,化学架橋剤含有量をつなげた略称で表記する。例 えば,FTSM を2wt.%,BISを0.1%含む複合ゲルの場合, FTSM2-BIS0.1-gelと表記する。超音波処理を行ったナノ シートを用いた場合は,FTSM2(sonic)-BIS0.1-gelのよう に表記する。 2.3 物性測定 2.3.1 含水率および機械的強度の評価 型枠から取り出したゲルを1週間以上純水中で保管して 平衡膨潤状態として重量を測定した。さらに平衡膨潤状態 のゲルを90℃の乾燥機内で水 が無くなるまで5∼24時間 乾燥させ乾燥重量を測定した。式1により平衡膨潤状態の ゲルの含水率を求めた。 含水率(%)=平衡膨潤時の重量−乾燥重量 平衡膨潤時の重量 ×100 ⑴ ゲルの機械的強度(応力−歪み曲線)は平衡膨潤状態の 円柱状ゲルを厚さ約5mmにスライスした試料を用いて, オリエンテック製の STA-1150万能試験機で3mm/minの 条件で圧縮することで評価した。 2.3.2 偏光顕微鏡観察および複屈折率測定 ゲルの偏光顕微鏡観察にはオリンパス社製 BX51を用い た。複屈折率測定には,偏光顕微鏡に挿入したベレックコ ンペンセータを用いた。ベレックコンペンセータでは試料 の特定の位置でのレターデーション が得られる。一方, 試料は円柱形状で,それを側面から観察しているため観察 する位置によってゲルの試料厚 は式2のように変化す る。 = 1− ⑵ は,ゲルの中心から観察位置までの距離である。そこで レターデーション測定と同時に測定位置 を記録して を 求め,式3より複屈折率 を求めた。 複屈折率 =レターデーション 試料厚 ⑶ 2.3.3 熱誘起体積相転移挙動の評価 まず2枚のスライドガラスに厚さ2mmのシリコンゴム フッ素四ケイ素雲母ナノシート液晶とポリ-N-イソプロピルアクリルアミドの複合化による異方性ヒドロゲルの合成(蒲池・宮元) 118

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シートで作ったスペーサーを挟み込み,測定用のセルを作 成した。その中に内径0.63mmのキャピラリー管中で合成 したゲルと蒸留水を入れて密封した。30℃の恒温水槽にセ ルを入れて,30 以上放置した後,光学顕微鏡で観察した。 その後,30∼40℃まで1℃おきに温度変化させて同様の測 定を繰り返し,温度変化によるゲル形状の変化を観察した。 3. 結果と 察 3.1 ゲルの性状 FTSM 1∼4%,BIS 0∼0.2%の範囲で 種々の FTSM 含有複合ゲルの合成を試み,すべての場合でゲルが得られ たが,その機械的特性などは大きく異なっていた。 化学架橋剤(BIS)を添加せずに合成した FTSM4-BIS0 -gelの写真を図1a,bに示す。図1aは合成直後の写真 で,図1bは8日間水中で保存して平衡膨潤状態となった 後の写真である。このように合成後に大きく膨潤すること がわかる。平衡膨潤時と乾燥時のゲルの重量を測定したと ころ,平衡膨潤時の重量が1.6048g,乾燥時の重量が0.0166 g となっており,含水率は約99%という結果となった。一方 このゲルは非常に柔らかく,かつ破壊しにくいという機械 的特性を有していた。図2⒞に FTSM4-BIS0-gelの応力− 歪み曲線を示す。低応力域プロファイルからヤング率を求 めたところ7.1×10 kPaであり,80%まで圧縮したときの 応力も5kPaに満たない。しかしゲルをカッターで切断し ようとしても,切断は困難であった。定量的な評価は行っ ていないが,高い伸長性を有することも推測される。原口 らがラポナイト/PNIPA 系で報告しているように ナノ シートが可動的な超多官能架橋点として作用して PNIPA 鎖を物理架橋しているために,このような特性が生じてい るものと推測される。 化学架橋剤(BIS)を添加したゲルでは,BISを含まない ゲルと大きく異なる性質を示した。図1cおよびdは,BIS を0.05%または0.1%含む平衡膨潤状態のゲルの写真であ る。BISを含まない場合に比べて膨潤の度合が小さいこと がわかる。BIS濃度が上昇することにより含水率が低下し ている事がわかる(表1)。また,機械的特性にも大きな変 化が見られた。BISを0.1%添加した FTSM4-BIS0.1-gel ではヤング率が1.0×10 kPaとなり FTSM4-BIS0-gelと 比較して14倍に向上していた(図2a)。ところが,この FTSM4-BIS0.1-gelを カッターで 切 断 し た と こ ろ, FTSM4-BIS0-gelより切断が容易になっていた。 一方 FTSM を添加することによる機械的物性の変化も 顕著である。FTSM0-BIS0.1-gelと FTSM4-BIS0.1-gelを 比較すると,FTSM の添加によってゲルの弾性率が向上し ていることが確認された(図2)。 また,平衡膨潤状態の FTSM4-BIS0-gelは高い透明性を 示した(図1b)。しかし,合成直後では透明性は低く(図 1a),膨潤過程で何らかの構造変化が起きた可能性もあ る。BISを含有するゲルは平衡膨潤状態でも透明性は低 かった(図1c,d)。 3.2 光学異方性 クロスニコルを用いて各ゲルを観察したところ,FTSM を1%以上を含むすべての複合ゲルで光学異方性が観察さ れた。しかし,厚さ1mm,平面の大きさが5cmほどの板 状に成形したゲル(FTSM3-BIS0.1gel)ではゲル内の配向 ドメインの大きさが数 mm程度であり,ゲル全体にわたる 巨視的な異方性は見られなかった(図3)。ナノシートは自 発的に配向して,一定以上の大きさの配向ドメインを形成 するが,外的要因がなければ大きな配向ドメインは形成さ れないためであると えられる。ここで言う外的要因とは, せん断や電場などの外場や容器界面との相互作用である。 したがって,容器に反応溶液を注入する際に生じるせん断 や容器自体の形状が,巨視的な配向に影響すると えられ る。 そこで内径0.28mmおよび0.63mmのキャピラリー管中 図1 各複合ゲルの 写 真:⒜ FTSM4-BIS0-gel(合成直 後 ), ⒝ F T S M 4-B I S0-g e l( 平 衡 膨 潤 状 態 ), ⒞ FTSM4-BIS0.05-gel(平衡膨潤状態),⒟ FTSM4-BIS0.1-gel(平衡膨潤状態) 図 2 圧 縮 に よ る 応 力−歪 み 曲 線:⒜ FTSM2-BIS0.1-gel,⒝ FTSM0-BIS0.1-gel,⒞ FTSM4-BIS0-gel

表1 各複合ゲルの含水率 試料名 含水率/wt% FTSM4-BIS0-gel 99 FTSM4-BIS0.05-gel 96 FTSM4-BIS0.1-gel 94 Laponite4-BIS0-gel 95

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で合成を行うと,ゲル全体にわたって巨視的な配向を有す る試料が得られた。このゲルをクロスニコル下,鋭敏色板 を用いて観察した結果が図4である。このようなセット アップで観察した場合,試料の光軸と鋭敏色板の光軸のな す角が0°の時は青,45°の時は紫色,90°の時は黄色の干渉色 が観察される。図4a,b,cでそれぞれ青,紫,黄の干 渉色が観察されたことから,ゲルの光軸(すなわちナノシー トの配向方向)はキャピラリー管の長軸に って配向して いることが明らかとなった。さらにゲルを切断し,断面を 観察した場合,断面の右上と左下で黄色,左上と右下で青 色の干渉色が観察された(図4d)。この結果より,ゲルの 断面ではナノシートが同心円状に配列していることが か る。以上の事よりキャピラリー中で合成したゲルは図5の ような巨視的配向をとっていることが明らかとなった。 このような巨視的な配向は,キャピラリー管壁での界面 張力および反応溶液がキャピラリー管に導入される際のせ ん断応力によって誘起されたものと推測される。 このようにして得られた巨視的な異方性を有するゲルの 光学異方性についてより詳しい検討を行うため,ゲルの複 屈折率 Δ の評価を行った。ナノシートが図5のように配 向していれば,ゲルを側面から観察した場合,観察する相 対的な位置 によって Δ に違いが生じる。Δ はゲルの 中心( =0)では最も小さく,ゲルの端( =1)で最も大 きくなることが期待される。図6に Δ と の関係を示す が,実際に予想通りの結果となった。以後,異なる試料を 定量的に比較するため, =0.875に固定して複屈折率 Δ の測定を行った。 図7は複屈折率の濃度依存を測定した結果である。濃度 が増加するほど,複屈折率が上昇している事がわかる。 FTSM ナノシート 散液ではその濃度が上昇するほど液 晶相が占める体積 率が上昇し,複屈折も増加する。キャ ピラリー管内部にナノシートの配向が固定化されているた め,複合ゲルの Δ も増加したと えられる。 ナノシートの平 粒径も Δ に影響を与えた。複屈折率 が0となる臨界濃度を粒径制御前後でそれぞれ外挿により 求めたところ,粒径が小さい場合(0.3μm)は約0.8wt.%(図 7),大きい場合(1.7μm)0.5wt.%になった。これらの臨 界濃度は,FTSM 単独のコロイド溶液の液晶相転移臨界濃 度とほぼ一致している。しかし,FTSM 濃度が4wt.%にな ると,より液晶性が強いはずの大粒径試料の方が(0.3μm) の方が大きな複屈折率を示した。これは高濃度時において 大粒径 FTSM の粘性(ナノシート間のせん断応力)が上昇 するため,液晶の巨視的な配向が阻害されるためと推測し ている。なお,複屈折率に対する BIS濃度の影響はあまり ないようだった(表2)。 さらに,粘土鉱物の種類による影響についても検討した。 FTSM2-BIS0.1-gelと 同 条 件 で 合 成 し た FHT2-BIS0.1-gelを比較したところ,FHT2-BIS0.1-gelの方が高い複屈 折率を示した。 散液の粘性が高い FTSM では,FHT と比 べ,配向ドメインの形成が容易でないため複屈折率が小さ くなったものと えられる。 最後に合成したキャピラリー管の内径の影響についても 検討した。表2からもわかるとおり,内径が小さい方が大 きな複屈折率が得られている。このことについては径が小 さい方が,界面張力などの巨視的配向を誘起する要因が強 図3 板状に成形した FTSM3-BIS0.1-gelの写真(左)お よびクロスニコルと鋭敏色板を用いて観察された写真 (右)。 図 4 内 径0.63mmの キャピ ラ リー管 中 で 合 成 し た FTSM4-BIS0.1-gelをクロスニコル及び鋭敏色板(530nm) を用いて観察した写真。⒜,⒝,⒞は側面,⒟は断面。 図5 キャピラリー管を用いて合成したナノシート液晶/ PNIPA 複合ゲルの模式図 図6 キャピラリーの測定位置別の複屈折率 Δ 120 フッ素四ケイ素雲母ナノシート液晶とポリ-N-イソプロピルアクリルアミドの複合化による異方性ヒドロゲルの合成(蒲池・宮元)

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く働くためではないかと えている。 3.3 熱誘起体積相転移 PNIPA ゲルは下限臨界共溶温度(34℃)前後における高 子鎖のコイル-グロビュール転移により,体積相転移を起 こす事がよく知られている 。そこでキャピラリー管を用 いて得られた巨視的な配向を有する FTSM1-BIS0.1-gel の熱誘起体積相転移挙動について検討したところ,下限臨 界共用温度の前後で熱誘起体積相転移挙動が観察された。 さらに異方性複合ゲルの体積相転移を顕微鏡により測定し たところ,ゲルの収縮に異方性が見られることがわかった。 図8に示したように,ゲル中のナノシート配向と平行な方 向よりも,垂直な方向において,ゲルはより大きく収縮し た。この原因は,剛直なナノシートが存在することで,ナ ノシート面と水平方向の変形が阻害されたためであると えられる。 このようにして,配向した FTSM ナノシートが体積相転 移に大きな影響を与えていることがわかったので,ナノ シート濃度が体積相転移挙動に与える影響についてさらに 検討を行った。30℃のゲルのサイズに対する,45℃のゲル の相対的なサイズをナノシート濃度の関数としてプロット したものが図9である。FTSM 濃度0∼2%までは光学異 方性の増加と対応して濃度が上昇するほど収縮の異方性も 増加した。対照的に,2%から4%への増加時に FTSM 濃 度0から2%までは異方性に増加が見られたが,2%から 4%にかけては異方性が減少した。ナノシートの配向と垂 直方向では体積相転移前後のゲルの相対的なサイズが増加 し続けているが,平行方向は2%と4%で相対的なサイズ を比較してサイズが減少していた。この原因については現 在のところ不明であり,この後より詳しい検討を行ってい きたい。 4. 結論 液晶相を形成した FTSM ナノシート 散液中で NIPA の重合を行うことで,巨視的な異方性を有する複合ゲルの 合成に成功した。合成をキャピラリー管中で行うことで, ゲル全体にわたって巨視的な配向を有するゲルが得られ た。FTSM ナノシートの濃度,その粒子径,化学架橋剤の 添加,キャピラリー管の径などの様々な要因によって,機 械的強度,平衡膨潤時の含水率,複屈折率,熱誘起体積相 転移時の変形率や異方性が制御されることがわかった。ま た用いるナノシート液晶物質の種類によっても,ゲルの特 性が変化した。本検討で得られた知見をベースとして,よ り最適な物質を探索し諸条件を最適化していくことによ り,マイクロバルブ,アクチュエーター,生体類似の反応 場(異方性・階層構造のヒドロゲル)などに応用可能な高 図7 複屈折率 Δ と FTSM ナノシート濃度・平 粒径の 関係。エラーバーは4ヶ所で測定した Δ の最大値と最小 値を,各プロットはその平 値を示す。点線は最小二乗法 によって得られた近似線である。 表2 キャピラリー管の内径,粘土鉱物の違いがゲルの複 屈折率に及ぼす影響 試料 キャピラリー 管の内径/ mm 複屈折率 Δ FTSM2-BIS0-gel 0.28 3.1×10 FTSM2-BIS0-gel 0.63 2.2×10 FTSM2-BIS0.1-gel 0.63 2.1×10 FTSM2-BIS0.2-gel 0.28 3.3×10 FHT2-BIS0.1-gel 0.63 2.7×10 図8 温度を上昇させた時の FTSM1-BIS0.1-gelのゲル 内のナノシートの配向と垂直( )および平行(×)方向 の相対的なサイズの変化。 図9 BIS0.1%-gelの30℃と45℃での相対的なサイズ変 化の FTSM ナノシート濃度に関する依存性

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性能のゲルへの展開が期待される。 5. 謝辞 本研究の一部は日本板硝子材料工学助成会平成20年度研 究助成,コンソーシアム福岡平成21年度研究助成からの支 援により実施しました。ここに記して感謝いたします。 参 文献 1) 黒田一幸,佐々木高義編「無機ナノシートの科学と応 用.」株式会社シーエムシー出版,(2005). 2) Gabriel,J.-C.P.,Camerel,F.,Lemaire,B.J.,Desvaux, H.,Davidson,P.& Batail,P. Swollen Liquid-Crystalline Lamellar Phase Based on Extended Solid-Like Sheet Nature Vol. 413, pp.504, (2001).

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図 2 圧 縮 に よ る 応 力−歪 み 曲 線:⒜ FTSM2‑ BIS 0.1‑

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