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Title
「英語の名詞の使い方」に関する一つのモデル
Author(s)
柴家, 嘉明
Journal
歯科学報, 115(6): 565-568
URL
http://doi.org/10.15041/tdcgakuho.115.565
Right
565
教育ノート
「英語の名詞の使い方」に関する一つのモデル
A model of‘How to use English nouns’
柴家 嘉明 東京歯科大学英語研究室 准教授
Yoshiaki Shibaie 略歴 1982年早稲田大学第一文学部卒業,1984年早稲田大学大学院文学研究科英 文学専攻修士課程修了,1989年より東京歯科大学英語研究室専任講師,2000 年より現職。研究テーマ:医学英語教授法 著書:「英語の名詞に関する一発見」 (A Breakthrough Concerning English Nouns)(Meredith K. Hazelrigg, Yoshiaki
Shibaie 東京歯科大学教養系研究紀要17巻,2001年)「歯科医学英語教育への導入 としての一般英語教育:理念とシラバス」(General English Education as Intro-duction to Dental English Education -Concept and Syllabus-)(柴家嘉明,三浦 直 歯科学報112巻1号2012年)他
キーワード:英語の名詞,モデル,特定,不特定,具体化 Key words:English nouns, model, specific, unspecific, concretize
(2015年7月27日受付,2015年9月10日受理,歯科学報 115:565-568,2015.) のモデルでは,あらゆる名詞の最初の分かれ道であ はじめに る「特定」「不特定」の見分け方が,「この___と はじめて本学の教壇に立ってから四半世紀が過ぎ 言える」「この___と言えない」のみであった。 たが,その間私にとって最大の問題は,歯科医学英 これでは不 , 十分であった。つきつめて考えると, 語という医学英語の,その基礎を,いかに工夫す 「特定」とは「他の(意識すべき)___はない」と れば効果的に教えることができるかというもので いうことであることに気がついた。例えば“This あった。同じく本学の同僚であった Dr. Meredith is the dog.”と言う時,この後に語が続くか否かに K. Hazelrigg との幾度にもわたる議論(discussions 関係なく,この表現を発した時点において,他の犬 (over lunch))の中で一種の霊感を得た(inspired)私 は意識されていないのである(言うまでもなくこの は,その基礎力(あるいは形式論理の基礎部分)養成 世に他の犬は無数に存在する)。同様に, “These のための,英語の「名詞の使い方」に関するモデル are the causes.”と言う時,この世に原因というも (フローチャート)の作成を思い付き,以後3年の検 のは無数に存在するが,この表現を発した者にとっ 討を経て一応の完成を見た。 て,この時点において,またはこの現象あるいは研 以下はその「英語の名詞の使い方」1) の改訂版であ 究において,他の原因は存在しない(または意識さ る。 れない)のである。言うまでもなく,「他にはない」 ということは,それが複数である場合,「それらが モデルについて 全てである」という意味に等しい。 今回の改訂版(図1 日本語版)(図2 英語版) 一方,「不特定」とはすなわち,「他の(意識すべ で改善された点は,主に2つある。 , 1つは,2004年 き)___が あ る」と い う こ と で あ る と 考 え た。 ― 61 ―
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(注)1.英語の名詞は,その一つ一つが,それが使われる状況と文脈(context)にしたがって,①特定/不特定,②具体的/抽象的,③数/量の3つ の対の概念により厳しく分けられる。(ただし「特定」の場合は,②,③の区別がかなり隠れる)
2.「抽象的」には2つの種類がある。abstract = of quality or ideas quality(質)とは例えば「大きさ」(size),「色」(color)。ideas(考え)
とは例えば「自由」(freedom)「理想」, (ideal)(この ideas は人間が頭の中だけで了解し合っているもの。目には全く見えないもの)。
図1 日本語版
567 歯科学報 Vol.115,No.6(2015)
図2 英語版
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“This is a dog.”という表現には,「他の犬が(無 数に)存在する」ことがその背景にある。同様に, “These are causes.”は,一般的には“some cau-ses”と言うであろうが,たとえ‘some’がなくと も,「他の原因が存在する(または意識されている)」 ということが,その背景にある。
改善された2点目は,前回のチャートの最終部分 でも,今回同様,あらゆる「数えられない名詞」を 「数えられる名詞」として使うと,‘a kind of/kinds of’の意味になる,としているが,その際の(話し 手,書き手の頭の中での)働きには言及していな かった。今回,その働きが,おおざっぱに言うと 「具体化」「特定化」「個別化」(being concretized, individualized, and brought into a‘specific’mean-ing)であることに気がついたので,これを加えた。 おわりに 上記「はじめに」で述べた「一種の霊感」の瞬間 を,本レポートの最後に敢えて描写してみると,次 のようになる。私は中学あるいは高校の時から,冠 詞‘a(n)’の使い方が全く分からなかった。例えば ある時は‘I have pain.’と言い,ある時は‘I have a pain.’と言う。辞書を引いても文法書を読んで も先生に聞いても,両者の違いが私には分からな かった。しかも教育を受けた英語の native speakers や,私の周りにいる英語の達者な人は皆,冠詞の用 法を正しく身につけていると思われた。やや大げさ に言えば,十年以上もの間抱え込んでいたこの問題 あるいは焦燥感を一気に解決してくれたのが,上記 Dr. Hazelrigg と昼食を取りながら話をしている時 に彼がふと漏らした,“But it means‘a kind. ’”で あった。この一言が私のその後の研究活動を決定づ けた。 これも Dr. Hazelrigg に教わっていたことだが, 英語はその品詞の中で「名詞」が最も重要である。 その総合的重要性において名詞は,形容詞,副詞, さらに動詞にさえ優っている。この名詞と共に使わ れる冠詞(無冠詞を含む)の使い方は,したがってき わめて重要であると言える。つまり「冠詞の使い 方」は「名詞の使い方」に直結する。 以上のような経緯をもって,私は15年ほど前に, 上述のように「名詞の使い方」のモ デ ル(フ ロ ー チャート)の作成を思い付き,3年後に一応完成さ せた。これを参照することにより,英語のすべての 名詞を正しく使うことが,少なくとも私にとって, 以前よりも容易になった。実際,役に立つと言って くれる学部生,大学院生も存在した。その改訂版 が,私たちの使う英語を少しでも正確なものにする 助けとなることを,心から願う次第である。 文 献 1)柴家嘉明:英語の名詞の使い方.東京歯科大学教養系研 究紀要,20:39-41,2004 別刷請求先:〒101 ‐0062 東京都千代田区神田駿河台 2-9-7 東京歯科大学英語研究室 柴家嘉明 ― 64 ―