験 震 時 報 第57巻
(1994)13"""21頁 13
伊立大島火山の挙動と周辺域の地震活動との関連性について
安藤邦彦*・和田郁夫*The Relation between Volcanic Activity at Izu-Oshima and the associated Seismic Activity Kunihiko ANDO and Ikuo W ADA
(Received July 26, 1993) ~ 1. はじめに 伊豆大島から伊豆半島にかけての地震活動は, 1974年 伊豆半島沖地震以後活発化し特に1978年1月の伊豆大 島近海地震以後は伊豆半島東方沖を中心とした海域での 活動が顕著となっており, 1989年7月には伊東沖の海底 で噴火が発生し新たに海底火山手石海丘を生成した. 一方,伊豆大島火山は1986年11月15日から23日にかけ 三原山山頂での噴火,カルデラ内及び外輪山北西山麓で の割れ目噴火が発生,その後同年12月18日, 1987年11月 16日から19日, 1988年1月25日, 27日, 1990年10月4日 に三原山山頂で、小噴火が発生した. また,三原山直下を発生源とする火山性微動が約12年 ぶりに1986年7月から記録され始め, 1986年及び1987年 の噴火直後に約1カ月間活動が停止した期間を除き,活 発な状態が1990年4月まで継続した. カルデラ内が震源とみられる地震の活動は1987年l月 から始まり, 1987年及び1990年の噴火の約4カ月前頃か ら活動の急速な活発化,噴火後の急速な衰退という変化 を繰り返しながら,現在も続いている.C山岡他, 1989, 安藤, 199,1 1992 a, 1992 b) これら伊豆大島火山周辺で発生する地震活動と伊豆大 島火山の挙動との関係について,最近までに発表された 論文等の例を以下に示す. 1 ) 1974年5月9日の伊豆半島沖地震の本震発生の数 10時間前から,三原山におけるマグマ頭位の上昇と それに密接に関係すると思われる微動振幅の増大が 発生した.C中村・田沢, 1974,中村・田沢, 1975) 2 ) 伊豆大島のカルデラ内に掘られている深さ369m の井戸の中で,深さ約150mの地点から漏れ出して いる蒸気の温度は, 1989年6月30日から始まった伊 豆半島沖の群発地震の中で,群発地震の活発化した 7月初めから温度勾配の顕著な変化, 7月11日の火 *大島測候所 山性微動の開始に対応して急激な温度変化が観測さ れ,再び温度が上昇した後の13日に海底噴火が発生 した.CNotsu et al., 1991) 以上のように,伊豆大島火山は周辺で発生する地震活 動の影響を受けて,火山活動に変化が生じていると思わ れることから,これらに関する調査・研究は重要である. ~ 2. 1987年以降の伊豆大島火山の活動及び周辺域の地 震活動の推移 現在の大島測候所における火山監視体制は1986年11月 の噴'火以後整備されたものであり,整備後
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点〔三原山 山頂の北北西約1.lkmのカルデラ内に設置されている震 動観測点(速度型,上下動成分,固有周期1.0秒,記録 方式・熱ぺンレコーダー)Jに記録されている火山性微 動(以下微動という)の験測を1987年4月から実施する とともに,カルデラ内が震源とみられる地震C
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2. 0秒以下,記録振幅4mm以上(速度振幅0.7XI0-3cm/ sec),以下地震という〕の験測を同年5月から開始した. なお,A
点に記録される微動の形態が時間の経過とと もに複雑な変化を示したことから,微動の形態をタイプ 別に分類しその記象例を第1図に示した. タイプ連続的な微動(振幅の変化が小さい微動が24 時間以上継続して記録される微動) タイプI
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連続的な微動が記録される中で,間欠的に振 幅の増大する微動が重なって記録される微動. タイプi
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間欠的な微動(連続的な微動が停止した状態 の中で,間欠的に記録される振幅の増大した 微動) 験測により得られたタイプEの微動の中で間欠的に振 幅の増大する微動及び間欠的な微動の旬毎最大振幅・発 生回数及び地震の発生回数と伊東市鎌田における旬毎地 震回数の推移を第2図に示した. 推移の概要は次のとおりである. 1 ) タイプEの微動の中で間欠的に振幅の増大する微 動及び間欠的な微動 q J 4Eiタイプ1 1990年2月25日 00時00分-01時00分 タイプn 1989年1月11日 08時00分-09時00分 タイプm 1989年4月13日 05時00分-06時00分 主 盟 閣 制 国 幽 刷 臨 幽 糊 醐 時 叫 岨 岨 胸 骨 ! “ 叫 叫 品 川 届 叫 第l図 微 動 の タ イ プ 別 記 象 例 1988年 8月から 1990年 2月にかけて活発な状態が 続いたが, 3月に入って急速に衰え4月-26日を最後 に記録されなくなった.その後1993年 3月 3日から 7月 6日にかけ時々継続時間の短い,振幅の小さい 孤立型の微動が記録された.
2
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地震の回数 1987年 5月に験測を開始して以来同年 11月にかけ 次第に増加し, 11月16日から 19日の噴火直後に急速 に減少, 1988年 3月から再び増加し始めたが,同年 9月をピーグに減少に転じた.その後 1990年 2月か ら3月及び同年8月頃から 10月頃にかけ地震が増加 しているが,前者についての経過は本報文の中で示 した.なお,後者については 10月4日の噴火後減少 している. 3 ) 伊東市鎌田における地震回数 この期間内に発生した伊豆大島近海から伊豆半島 東方沖にかけての群発地震は,次のとおりである. 1987年 5月 6日--6月 4日 伊豆半島東方沖 1988年 2月14日--2月23日 伊豆半島東方沖 1988年 4月25日--4月30日 伊豆半島東方沖 1988年 5月31日--6月 4日 伊豆半島東方沖 1988年 7月26日--8月25日 伊豆半島東方沖 1989年 5月21日--6月12日 伊豆半島東方沖 1989年 6月30日--9月28日 伊豆半島東方沖 1990年 2月20日--3月29日 伊豆大島近海 1991年 8月20日--8月29日 伊豆半島東方沖 A H τ 唱 Z A 1991年 12月24日--1992年 1月 3日 伊豆半島東方沖 1993年 1月10日--1月18日 伊豆半島東方沖 1993年 5月26日--6月21日 伊豆半島東方沖 本報文では,これらの群発地震の中で地震活動が活発 化した後に,伊豆大島火山で発生している微動・地震の 活動に類似した変化が生じた例として, 1990年 2月20日 から3月29日にかけて発生した伊豆大島近海の地震及び 1993年 5月26日から 6月21日にかけて発生した伊豆半島 東方沖の群発地震前後の伊豆大島火山の挙動について報 告する. ~ 3. 現象の経過 (1) 1990年 2月20日--3月3日 1 ) 伊豆大島近海の地震活動 伊東市鎌田における地震の3時間合計回数の推 移を第3
図に,E
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により決定した震央分布 を第4図に示した. 2月20日15時,53分伊豆大島近海を震源とするM =6.5の 地 震 が 発 生 し 大 島 測 候 所 で は 震 源 町l 回を含む45回の有感地震を観測,余震活動は3月 29日頃まで続いた.2
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伊豆大島火山の活動 1987年11月18日に停止した微動は同年 12月18日 から再び記録され始め, 1990年 3月始めにかけて タイプ1,タイプE
又はタイプEの微動が入り交 じって記録された. (安藤, 1992 a) この中で, 1990年 2月から 3月にかけて記録されたタイプE の徴動の中で間欠的に振幅の増大する微動の平均 振幅,平均継続時間,回数の3時間毎の推移を第 5図に,連続的な微動の3時間毎の振幅の推移及 び地震の3時間毎合計回数の推移を第6図に,微 動の記象例を第 7図に,地震の記象例を第 8図に 示した. タイプE
の微動の中で間欠的に振幅の増大する 微動の活動は 2月13日に急速に衰え,振幅は減少, 継続時間も短縮した.一方,連続的な微動の振幅 は,小さな状態が続いた.なお,図では 15日頃ま では連続的な微動の振幅が大きく示されているが, これは験測時間の前後に間欠的に振幅の増大する 微動が記録されたことから,見かけ上大きくなっ ているものである. その後, 20日になって微動の発生形態に変化が 見られるようになり, 24日にかけてはタイプ Iの 微動に, 25日から 26目前半にかけてはタイプ Eの 微動に, 26日後半から 28日にかけてはタイプ Iの伊豆大島火山の挙動と周辺域の地震活動との関連性について 15 10-3 C町/c,pr
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第2図 1987年以降の伊豆大島火山の挙動と伊東市鎌田における地震回数の推移ω
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の微動の中で間欠的に振幅の増大する微動及び間欠的な微動の旬毎最大娠幅 巴) タイプE
の微動の中で間欠的に振幅の増大する微動及び間欠的な微動の旬毎回数(
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地震の旬毎回数 の) 伊東市鎌田における旬毎地震回数 微動に, 3月1日からはタイプ Eの微動へと変化 した. この中で25日06時30分頃から連続的な微動の振 幅が著しく増大し,その状態が3月 2日まで続き, また間欠的に振幅の増大する微動の振幅が25日後 半から26日前半及び3月 1日に増大した. 一方,地震は少ない状態が続いていたが, 28日 から3月 2日にかけて急速に増加, 3日以降は急 速に減少した. (2) 1993年5月26日--6月 4日 1 ) 伊豆半島東方沖の地震活動 伊東市鎌田における地震の3時間合計回数の推 移を第9図に, EP OSにより決定した震央分布 を第10図に示した 5月26日16時59分頃から伊豆半島東方沖で群発 地震が発生し始め,盛衰を繰り返しながら6月21 日頃まで続き,大島測候所では震度m
1回を含む 13回の有感地震を観測した. 2 ) 伊豆大島火山の活動 1993年5月17日から6月10日にかけての連続的 な微動の3時間毎の微動の振幅及び地震の3時間 合計回数の推移を第 11図に,微動の記象例を第12 F h d . , AN
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地震の 3時間毎合計回数 巴) 連続的な微動の3時間毎振幅 円 t 噌 E i1990年2月25日 06時00分-07時00分 第7図 微 動 の 記 象 例 1990年3月1日 09時00分-10時00分 第8図 地 震 の 記 象 例 図に,地震の記象例を第13図に示した. 1990年4月26日を最後に記録されていなかった 微動は, 1993年3月3日から継続時間の短い,振 幅の小さな孤立型の微動が時々記録されるように なった.その後, 5月30日16時11分頃から連続的 な微動が記録されるようになり24時頃にかけ振幅 が増大, 31日00時以降は次第に減少, 6月 l日か ら6月4日24時頃にかけては振幅の小さな状態が 続き, 5日以降は記録されなくなった. 一方,地震は3月上旬頃から記録振幅4mm以下 の地震がやや増加していたが, 5月31日から6月 2日にかけて記録振幅4mm以上の地震が急速に増 加,
3
日には急速に減少した. ~4
.
変化の類似性 以上の2つの事例について,現象を見比べるために推 移を模式化して第14図に示した. 1 ) 1990年2月20日から始まった伊豆大島近海の地震 活動は本震・余震型であり, 1993年5月26日から始 まった伊豆半島東方沖の地震活動は群発型である. 2) それぞれの地震発生後約5日を経過して,伊豆大 島火山では連続的な微動の発生あるいは振幅の増大 が認められ,この活動は約 6日間継続した.また, 伊豆大島近海の地震では地震発生後約 9日を経過し て,伊豆半島東方沖の地震では地震発生後約 7日を 経過して,伊豆大島火山では地震が急速に増加し この活動は約 2日間継続した. ~5
.
まとめ 以上のように,震源域の異なる2つの伊豆大島周辺の 地震活動に伴って,伊立大島火山で連続的な微動の発生 あるいは振幅の増大及び地震の急速な増加という類似し た現象が現れたことを示した.なお, これらの現象に対 応するような,表面現象の明瞭な変化は観測されなかっ た. 本報告をまとめるにあたり,査読者各位,気象庁地震 火山部地震予知情報課担当者はじめ多くの方から,貴重 なご意見,ご指導を頂きました.また,伊豆大島周辺の 地震活動に関する資料は,気象庁地震火山部地震予知情 報課松田慎一郎技術専門官に便宜を図って頂きました. これらの方々に心から御礼申し上げます. 参考文献 安藤邦彦(1991)伊豆大島の1987年以降の火山活動に ついて-1987年4月から1987年11月16日--19日三原山 山頂の噴火まで一,験震時報, 54, 25 -46. 安藤邦彦(1992a) 伊豆大島1987年以降の火山活動に ついて(第2報)-1988年12月から1990年7月まで一, 験震時報, 55, 15-41. 安藤邦彦(1992b) 伊豆大島1987年以降の火山活動に ついて-1990年4月から1990年12月一,験震時報, 55, 43-67. 中村一明・田沢堅太郎(1974) : 1974年伊豆半島沖地震 と三原山小噴火の関係,火山第2集, 19, 159-160. 中村一明・田沢堅太郎(1975) : 1974年伊豆半島沖地震 に先行した伊豆大島三原山のマグマ頭位上昇と微動振 幅の増大,地震予知連絡会会報,第13巻, 75ー78. 山岡耕春・井田喜明・山科健一郎・渡辺秀文(1989) 1987年11月伊豆大島噴火直前の地震活動と噴火メカニ ズム,火山第2集, 34, 263-274.NOTSU,
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apan,Geophys. Res. Lett, 18, 191-193.
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