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若者言葉における程度表現 : 会話コーパスとアンケート調査から 利用統計を見る

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若者言葉における程度表現

-会話コーパスとアンケート調査から-

陳  蕾 蕾・羅 鵬・江 崎 哲 也 要  旨  本研究では、若者言葉の程度表現のうち、「超」、「めっちゃ」、「くそ」、「鬼」、「やばい」の5つを取り 上げ、その使用状況を探るため、コーパスを用い、共起しやすい表現を抽出した。また、実際に若者の 使用意識を検討するため、友人同士が1対1で話す場面を設定し、「超」、「めっちゃ」、「くそ」、「鬼」、「や ばい」という5つの程度表現が同様の文において、「言う」か「言わない」かを選択させるアンケート調 査を行った。その結果、若者言葉の程度表現の使用には品詞によって差があること、また男女差がある ことがわかった。 キーワード : 若者言葉、程度表現、使用状況、共起、男女差 1. はじめに  日本語学習者にとって、いわゆる「若者言葉」の習得 は非常に難しいと考えられる。多くの日本語学習者は学 習がある程度進んでも、若者言葉の程度表現については 用法の理解の段階に留まり、使用状況や対話の条件など については深く理解していないと思われる。また、若者 言葉に関する研究では、使用状況についてはあまり言及 されていない。つまり、現在の若者言葉の程度表現は実 際にどのように使用されているか先行研究でも明らかに なっていないことが多い。 2. 先行研究  若者言葉ついては、米川(2006)は「若者ことばとは、 中学生から三十歳前後の若い男女が仲間内で娯楽・会話 促進・連帯・イメージ伝達・隠蔽・緩衝・浄化などのた めに使う、規範からの自由と遊びを特徴に持つ特有な語 や言い回しである」と定義している。本研究では若者言 葉を米川の定義に基づき、若者言葉の程度表現の使用に 対して調査を行い、分析を試みる。程度副詞について濱 本 (2015) は「程度表現とは何らかの段階性を持つ述語 を修飾し、その述語の持つ意味特性のより高い程度での 適応を示す強意的作用か、あるいは述語の持つ意味特性 の量的程度を示す作用を持つ ものという。」と定義してい る。本研究ではこれらの定義 にしたがい、若者言葉の程度 表現の使用について調査を行 う。  『広辞苑 第七版』(岩波書 店) は、 超 」、「 め っ ち ゃ」、 「くそ」、「鬼」、「やばい」と いう5つの語を以下のように 説明している。 (1) 超 ① (接頭辞的に) に超える意を表す。「超満員」     ② (俗に) その語の内容をはるかに超えてい ること。「超忙しい」 (2) めっちゃ (副)(「めちゃ」を強めた若者言葉) 非常に。度はずれた。とても。「めっちゃ 腹立つ」 (3) 鬼 (接頭) 名詞に冠して、勇猛・無慈悲・異形・ 巨大の意を表す。「鬼武者」「鬼婆」 (4) くそ (接頭) その他の語につけて、卑しめ、の のしり、または強めていうのに用いる語。 ストーリー「くそ度胸」「くそまじめ」「く そおもしろくない」 (5) やばい (形) ①不都合である。危険である。「や ばいことになる」         ②のめり込みそうである。「この曲 はくせになってやばい」  以上から見ると、「超」、「めっちゃ」、「くそ」という 3つの語について程度副詞の用法はすでに存在している ことがわかった。  次に、『現代用語の基礎知識』は初出年と 2019 年版に 掲載されている意味と用法をまとめると、以下のように なる(表1参照)。 表1 『現代用語の基礎知識』での意味と用法

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 以上のように、若者言葉における程度表現は様々な意 味と用法を持ち、異なる場面と状況による用いられるが、 本稿は上記の副詞の意味と用法を研究対象とする。  中村(2013)は「「超」今や若者言葉という範疇を超 えて、いわば一般語として認知されつつある。」と述べ ている。「めっちゃ」については、長澤 (2008) が「めっ ちゃ」の使用形態と意味について分析を行っている。関 西方言の「めっちゃ」は現在の若年層をはじめ、3、40 代の壮年層でも幅広く使用され、もはや全国規模となっ ており、程度副詞「とても」「非常に」の関西方言であ る「めっちゃ」には現在さまざまな用法、意味が存在す ると指摘している。「やばい」については、洞澤(2009) が若者の新しい用法として、副詞的用法の「やばい」が 程度を表す用言を修飾し、それを強調する程度副詞とし て「やばい」が使われると指摘している。たとえば、「や ばいキモイ。」、「やばいマズイ。」、「やばいかわいい。」 などがそれである。「くそ」、「鬼」については管見の限 り研究が見当たらない。こ のように、現在の若者言葉 の程度表現はある程度研 究 さ れ て い る も の の、 そ れらが実際にどのように 使用されているか疑問が 残る。  そこで、本研究では、若 者言葉のうち、「超」、「めっ ちゃ」、「くそ」、「鬼」、「や ばい」の5つの程度表現 を 取 り 上 げ、 そ の 使 用 状 況 を 探 る。 こ れ ら の 程 度 表現が現在どのように使 用されているのかに注目 し、コーパスを用いて共起 しやすい表現を抽出する。 ま た、 ア ン ケ ー ト 調 査 を す る こ と に よ っ て、 若 者 がどのような意識を持っ ているのか分析する。   以 下 で は、 ま ず、 会 話 コ ー パ ス を 用 い、 若 者 言 葉の程度表現の使用状況 と 分 析 す る。 次 に、 ア ン ケート調査とその結果に ついて述べる。最後に、実 際の使用状況を見ながら、 カ イ 二 乗 検 定 を 試 み、 若 者言葉の程度表現の使用 の男女差を検討する。 2. コーパスから見た使用状況  ここでは、「日本語日常会話コーパスモニター公開版」 と「名大会話コーパス」を用い、若者言葉の程度表現と 共起しやすい表現を抽出する。  若者言葉の程度表現は現在程度副詞のように使用され ていると言われている。コーパスから見ると、若者言葉 の程度表現表は「くそ」、「鬼」、「やばい」と共起する語 の数が少なかったので、「超」、「めっちゃ」と共起する 品詞のうち、出現頻度が高い語(つまり、共起しやすい 語である。)を 20 個抽出した。表2は「日本語日常会話 コーパスモニター公開版」と「名大会話コーパス」の2 つのコーパスにおいてそれぞれどのような品詞と共起し ているかを示している。  なお、抽出した基準は以下のとおりである。  ①動詞、ナ形容詞:出現数3回以上、異なり話者2名   以上  ②イ形容詞:出現数9回以上、異なり話者7名以上 表2 抽出された語

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 この表から、「日本語日常会話コーパスモニター公開 版」と「名大会話コーパス」では、若者言葉の程度表現 と共起する品詞のうち、イ形容詞の出現頻度がもっとも 高いことがわかる。すなわち、「超」と「めっちゃ」は イ形容詞がもっとも共起しやすいものであることがわ かった。 3. アンケート調査 3. 1 調査時期と協力者  2019 年6月 10 日から6月 21 日まで学部生・大学院 生を対象として若者言葉の程度表現に関するアンケー ト調査をウェブ上で行った。114 名の回答者のうち、回 答が信頼できない 60 名の回答(アンケートの前部と後 部に一回ずつ出題した同じ質問に対する回答が異なっ た者)を集計から排除し、54 名分を有効回答者として 分析した。54 名の回答者の内訳を表 3-1、3-2、図 3-1、 3-2、3-3 に示す。 表3-1 7-12 歳時の居住地 表3-2 13-18 歳時の居住地 図3-1 調査協力者の性別 図3-2 調査協力者の年齢 図3-3 調査協力者の所属学部

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3. 2 質問内容  本調査では、友人同士が1対1で話す場面を設定し、 「超」、「めっちゃ」、「くそ」、「鬼」、「やばい」という5 つの程度表現を同様の文において、「言う」か「言わな い」かを選択肢にあげ、また、調査語と共起する可能性 があるものとしてイ形容詞、ナ形容詞、動詞、「~たい」 のグループという4つのグループを設定した。  (アンケートの内容は  https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeKfuyU DJNtPY9fu9klvBMbRz3EKNw8g5oiLs03aRx0oczNag/ viewform?usp=sf_link を参照のこと。) 4. 結果と考察 4. 1 若者言葉の程度表現の使用率  表 4-1 は程度表現の使用率を示している。表 4-2 は 表4-1 若者言葉の程度表現の使用率 「言う」と答えた比率の高い項目から並べ替えしたもの を示している。程度表現の使用率は「めっちゃ」、「超」、 「くそ」、「鬼」、「やばい」という順になる。また、「めっ ちゃ」、「超」、「鬼」、「やばい」という4つの程度表現の ばらつき度は低く、一方、「くそ」のばらつき度は高い ことがわかる。また、「めっちゃ」と「超」は使用率が 高いのに対し、「鬼」と「やばい」は使用率が低い。つ まり、「めっちゃ」と「超」は程度表現としての用法が 既に定着していると言える。一方、「くそ」は場合によっ て言わない人もいることがうかがえる。「鬼」と「やば い」は使用率が非常に低いが、程度副詞として日常生活 で使う人もいると言える。また、コーパスのデータと比 較すると、程度副詞としての用法で「くそ」、「鬼」、「や ばい」が言えると思っている人が増えつつあることがわ かった。 表4-3 共起する品詞の傾向 表4-2 調査語との共起ランキング * 濃い色: 使用率が高いもの   薄い色: 使用率が低いもの

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4. 2 共起する品詞の傾向  表 4-3 に各品詞との共起率を示す。まず、「めっちゃ」 と共起する品詞のうち、イ形容詞の共起率がもっとも高 く、その次に、動詞、ナ形容詞という順に並んでいる。 また、そのほかの4つの語も全てイ形容詞、動詞、ナ形 容詞という順に並んでいる。つまり、この5つの語の共 起する傾向は全く同じで、イ形容詞、動詞、ナ形容詞と いう順に並んでいる。もっとも共起しやすいのはイ形容 詞で、もっとも共起しにくいのはナ形容詞であることが わかった。 4. 3 男女差 4. 3. 1 分析方法  ここでは、「カイ二乗検定」を用い、男女差の検証を 行った。「カイ二乗検定」とは、独立性の検定 (独立な 標本間の比率の差の検定) として用いられる統計方法で ある。本研究では、若者言葉の程度表現の使用の男女差 を考察するために、帰無仮説(男女差がないという仮 説)を立て、カイ二乗検定を用い、二乗値(p 値)を計 算する。 4. 3. 2 若者言葉の程度表現の男女差  ここでは、全体から見る男女差を検証する。  表 4-4 に程度表現ごとの使用の男女差を示す。「めっ ちゃ」のp 値は5%を超え、帰無仮説を棄却出来ないの で、男女差がないと言える。「めっちゃ」は男性も女性 もどちらもよく言うことがわかる。次に、「超」のp 値 は1%に満たないため、帰無仮説が棄却され、男女差が あると言える。「超」の場合は、男性より女性がより積 極的に使っていることが読み取れる。また、「くそ」と 「鬼」は「超」と同じようにp 値は1%より低く、帰無 表4-4 若者言葉の程度表現の男女差 し、「くそ」と「鬼」を言うのは女性より男性のほうが 多いようである。最後に、「やばい」のp 値は5%を超 え、帰無仮説を棄却できないため、男女差がないと言え る。「やばい」は男性も女性もどちらもあまり言わない ことがわかった。  次に、男女差がある程度表現「超」、「くそ」、「鬼」を 取り上げ、使用の男女差を検討したいと思う。 4. 3. 3 「超」の使用の男女差  ここでは、「超」を取り上げ、男女差を検討する。  表 4-5 に、「超」と共起する各品詞と男女差を示す。 イ形容詞と「~たい」のグループのp 値は5%を超え、 帰無仮説を棄却できず、男女差がないと言えるのに対 し、ナ形容詞と動詞のp 値は5%に満たないので、帰無 仮説が棄却され、男女差があると言える。すなわち、「超」 の使用についてはナ形容詞と動詞の使用には男女差があ ること、また男性より女性のほうがよく使うことを意味 している。以上のように、「超」の使用の男女差はナ形 容詞と動詞の使用に関わると考えられる。 4. 3. 4 「くそ」の使用の男女差  ここでは、「くそ」を取り上げ、男女差を検討する。 表4-5「超」と共起する各品詞と男女差 表4-6 「くそ」と共起する各品詞と男女差

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 表 4-6 に「くそ」と共起する各品詞と男女差を示す。 イ形容詞、ナ形容詞、動詞、「~たい」のグループ、こ の4つのグループのp 値はいずれも1%未満で、帰無仮 説が棄却され、いずれの場合でも使用の男女差があるこ とを示している。また、「くそ」を「言う」と一回以上 答えた女性の内訳を表 4-7、4-8、図 4-1、4-2、に示す。 これらから、女性で「くそ」を使う人は非常に少なく、 意識して「くそ」を使うのを回避していると言える。こ のように、程度表現として「くそ」を使うとき、いずれ の場合でも女性より男性のほうが積極的に使っていると 言える。また、女性は「くそ」を言うのを意識的に回避 していることを示している。 表4-7 「くそ」を言うと答えた女性の7-12 歳時の居住地 表4-8 「くそ」を言うと答えた女性の 13-18 歳時の居住地 図4-1 「くそ」を言うと答えた女性の所属する学部・専攻 図4-2 「くそ」を言うと答えた女性の年齢 4. 3. 5 「鬼」の使用の男女差  ここでは、「鬼」を取り上げ、男女差を考察する。  表 4-6 に「鬼」と共起する各品詞と男女差を示す。鬼 はイ形容詞、動詞、「たい」のグループと共起するとき、 p 値が5%に満たなかった。すなわち、「鬼」の使用に ついてはイ形容詞、動詞、「たい」のグループの使用に は男女差があると言える。しかし、その一方で、ナ形容 詞と共起するとき、p 値は5%を越えたため、男女間に 使用に差がないことが読み取れる。このことは、「鬼」 は使用率の低いものとして、程度表現がナ形容詞と共起 しにくいことにも関わると考えられる。 5. まとめと今後の課題  本稿では、若者言葉の程度表現「超」、「めっちゃ」、「く そ」、「鬼」、「やばい」の5つを取り上げ、その使用状況 を探るために会話コーパスを用い、また、アンケート調 査をすることによって、実際に若者の使用意識から考察 した。その結果、以下のことがわかった。  1)使用率については、「めっちゃ」のもっとも高く、 次に、「超」、「くそ」、「鬼」、「やばい」という順に並ん 表4-9 「鬼」と共起する各品詞と男女差

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でいる。「めっちゃ」と「超」は日常生活で程度表現と して既に定着していると言える。一方「くそ」は場合に よって言わない人もいることがうかがえる。「鬼」と「や ばい」は使用率が非常に低いが、程度副詞として日常生 活で使う人もいると言える。また、程度副詞としての用 法で「くそ」、「鬼」、「やばい」が言えると思っている人 が増えつつあると考えられる。  2)共起率について、この5つの程度表現とある品詞 が共起する傾向はイ形容詞、動詞、ナ形容詞という順で 並んでおり、その傾向は5つとも全く同じであるという こと、また、もっとも共起しやすいのはイ形容詞で、もっ とも共起しにくいのはナ形容詞である。  3)使用の男女差については、「超」、「くそ」、「鬼」 という3つの程度表現には使用の男女差がある。「超」 の使用については、ナ形容詞と動詞の使用には男女差が あること、また男性より女性のほうがよく使う。これは 「超」の使用の男女差がナ形容詞と動詞の使用に関わる ことに起因すると考えられる。「くそ」については、イ 形容詞、ナ形容詞、動詞、「~たい」のグループ、いず れの場合でも使用の男女差がある。程度表現として「く そ」を言うとき、どのような場合でも女性より男性のほ うが積極的に使っていると見える。これは女性が「く そ」を意識して回避していることを示している。「鬼」 の使用については、イ形容詞、動詞、「~たい」のグルー プの使用には男女差があると言える。しかし、その一 方、ナ形容詞と共起するとき、使用の男女差がないこと が読み取れる。このことから、「鬼」は使用率の低いも のとして、程度表現がナ形容詞と共起しにくいことにも 関わると考えられる。  以上のように、若者言葉の程度表現の使用状況が明ら かになった。しかしながら、回答者がどのように想像し ながら答えたかわからず、アンケートの限界を感じた。 また、本調査の対象者が若者だけであったため、中年層 などがどのような意識を持っているのかが明らかになら なかった。これらを解決するには、まず、アンケートだ けでなく、インタビューを行い、回答者の使用状況を詳 しく調査すること、また若者のみならず、中高年層の使 用状況をさらに考察すること必要であろう。これは今後 に残された課題である。 参考文献 [1] 米川明彦. 若者ことば研究序説. 言語. 35(3). 大 修館書店.2006. 20-25 [2] 新村出. 広辞苑第七版. 岩波書店. 2018 [3] 佐藤優ほか. 現代用語基礎知識. 自由国民社. 2019 [4] 濱本秀樹. 程度表現の意味論. 近畿大学大学院文芸 学研究科紀要. 12. 2015. 89 [5] 中村純子. 「超」 の用法. 松本大学研究紀要. (11). 2013. 205-216 と意味の拡大. 葛野. 12. 2008. 1-24 [7] 洞澤伸. 若者たちの間に広がる「やばい」の新し い用法. 岐阜大学地域科学部研究報告. 25. 2009. 39-58 [8] 国立国語研究所. 日本語日常会話コーパスモニター 公開版 https://chunagon.ninjal.ac.jp/cejc/search(2019 年1月 参照) [9] 国立国語研究所. 名大会話コーパス https://chunagon.ninjal.ac.jp/cejc/search (2019 年2月 参照)

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