山 梨 肺 癌 研 究 会 会 誌22巻2009
当院における肺癌術後補助化学療法の現状 と問題点
山梨 大学医学部 第二外科 第二 内科* 松 原 寛知,官 内 善広,奥 脇 英人,國 光 多望,松 岡 弘泰, 佐藤 亮太*,渡辺 一孝*,菱山 千祐*,西 川 圭一*,進 藤 俊哉, 松本 雅彦 要 旨:は じめに;非小 細 泡肺癌の手術成績は決 して満 足すべ きものではな く,手 術成績の 向上 を目的 として,術 後補 助療法が試み られ てきた.最 近 になってその有効性 を示すevidence が報告 され,非 小細 胞肺癌 にお ける術 後補 助化学療 法は標準治療 にな りつつ ある.今 回 当院 に おけ る肺 術後補 助化学療法 の現状 と問題 点について検討 した.対 象;当 院において2004年1 月か ら2008年7月 まで術後補助化学療 法が施 行され た21例の内,カ ル ボプ ラチ ン とパ ク リタキ セル併用療法の14例を対象 と した.結 果;14例 中13例 が予定の4コース完遂す ることができ た.Grade3以 上の有害事象 と しては,白 血 球減少を3例,吐 き気 嘔吐 を1例に認 めた.再 発 形式では,13例 中2例に早期 に脳 転移を認 めた.ま とめ;CBDCA/TXLは 、肺癌術後補助化 学療 法 と して重篤な有害事象 も少な く,患 者 のQOLを 損な うこ とな く、外 来治療可能 な治療 と考 え られた. キー ワー ド:術 後補助化学療法,非小 細 泡肺癌,カ ル ボプラチ ンとパ ク リタキセル併用療 法 は じめ に 肺 癌 は 日本人 癌 死 亡 の もっ とも多 い 原 因で あ り,全 癌 死の約5分 の1を 占めて い て,毎 年増加 を続 けてい る.成 績 につ い て は依然 として他臓 器の癌 に比 較 し,満 足 すべ き ものではない.肺 癌 患者 の予後が悪 い理 由の一 つは,発 見時 の切除率 が低い こ とがあげ られ る.こ れ は、検 診等 に よる早 期発 見 によ り改善 してい く必 要があ る.他 の理 由 と しては,術 後 の再発率 が高い こ と が あげ られ,こ れ を改 善す るために,複 数 の 臨床 試 験や メタ ア ナ リシ ス に よ り術後 補助 化学療 法の有効性 が証 明 され0鯛,実 地 医療 に導入 されて い る,現 在では、工B期 以 上 の非 小 細 胞肺 癌 術 後 の補 助 化 学療 法 が標 準的治療 とな りつ つ ある. 当科 にお いて も1肺 癌診 療 ガイ ドライ ン 心 に準 じて,IB期 以上の非小 細胞肺 癌で完全 切除症例 に対 しては,補 助 化学療 法 をお こ な って い る.今 回 は,症 例 数が少 ない がそ の現状 と問題点 につい て検 討 した. 撒 2004年1月 か ら2008年7月 まで 当科 に おい て 外 科 的完 全 切 除 が で きた原 発 性 非 小細胞肺 癌141例 中,当 院 にて徳 後補助 化 学療法 が施行 され た21例 を対象 と した. その 内訳 は、カル ボプ ラチ ン とパ ク リタキ セル併用i療法(以 下CBDCA/TXDが14 例で,uFrが4例,カ ル ボプ ラチ ンとジ ェ ム シタ ビンの併用 療法 が3例 で した.今 回は、CBDC醐XLの14例 を検 討 した. 結 果 患 者 背 景 と して は(表1)に 示 す よ うに, 平 均 年 齢 は6]..3歳(45歳 ∼72歳)で,性 一42一平 成21年4月1日
別 で は 男 性9例 、 女 性5例 で あ っ た.PS は全 例1以 上 で,良 好 で あ っ た.病 理 病 期 は,IB期 が3例,皿A期 が3例,皿A 期 が7例,皿B期 が1例 で あ っ た.組 織 型 は,腺 癌10例,扁 平 上 皮 癌2例,大 細胞 癌1例,多 形 癌1例 で あ っ た. 有 害 事 象 はCommonli{11' criteriaforAdverseEventsv3.4 (CTCAE)を 参 考 に した.Grade3以 上 の 有 害 事 象 と して は,白 血 球 減 少 を3例,吐 き 気 嘔 吐 を1例 に認 め た.白 血球 減 少 を認 め た3例 に対 して は,σ{SFを 使 用 す る こ とでs中 止 す る こ とな く施 行 で きた が,吐 き気,嘔 吐 を認 め た1例 は1コ ー ス 目に 中 止 と な っ た.残 りの13例 は 荏 コー ス施 行 で き た,そ の 他 の 有 害 事 象 と して は,4コ ー ス 施 行 した13例 全 例 に脱 毛 を認 め た . 末 梢 神 経 障 害 はGradelで5例,Grade2が 5例 認 め た が,NSAIDの 内服 等 で コ ン トロ ー ル 良 好 で あ った .興 味深 い もの と しては, 3例 に吃 逆 を認 め,baclofenを 前 口 よ り内 服 す る こ とで,抑 え る こ とが で き た.
表1.患 者 背景
お い て は 補 助 化 学 療 法 後 か ら発 見 ま で の 期 間 が,3か 月,6か 月 と非 常 に 短 か っ た. 14例 中13例 が 予 定4コ ー ス を完 遂 で き, そ れ らの13例 にお い て,2コ ー ス 目以 降 す べ て外 来 で 行 え た.表2.再
発形 式
性 別:男 性9例 女 性5例 平 均 年 齢:61.3歳(45∼72歳) PSO11例,PS13例 病 理 病 期;IB期;3例 IIA期;3例 皿A期;7例 皿B期;1例 組 織 型:腺 癌;10例 篇 平 上 皮 癌;2例 大 細 胞 癌;1例 多 形 癌;1例 観 察期 間は術後5か 月か ら4年4か 月で あ るが,13例 中5例 に再発 を認めた.再 発 形 式 を,(表2)に 示す.脳 転移 の2例 に脳 転移:2例
肺 転移:1例
縦隔 リンパ節再 発:1例
癌性胸 膜炎:1例
考察 非 小細 胞 肺癌 術 後 補 助化 学療 法 にお け るCBDCA+TELの 分割投 与 を14例 に施 行 し,1例 が中止 となった.こ の理 由 と し て は,Grade3の 吐 き気,嘔 吐 を認 めた こ とに よるが,制 吐剤等 の使用 に よ り十 分 に 継 続す る ことが で きた と考え られ た.し か し,本 人が治療 の継 続 を拒否 した ため止 む 無 く1コ ー ス 目の途 中で 中止 となった. IB期 にCBDCA/r眠Lを3例 施 行 して い るが,zav4年CALGB9633(ASCO)に おい て,IB期 にお け るCBDCA/TXLの 術後 補助化 学療法 の有効性 が発 表 され,そ れ を も とに施 行 した症 例 が含 まれ て い る ためで ある。Katoら の報告 で,完 全切除 され た病 理病期1期 の肺腺 癌症例999例 を 対象 に した ㎜ 内服群 と手術 単独群 を比 較す る大規模 臨床試験 の結果 が報告 され3}, そ の有効性 が再認識 され た こ とsUFTに よ る術 後 補 助 化学 療 法 と経過 観 察 を比 較 した6つ の無 作為試験(症 例数:2003例) の メ タアナ リシス,そ して2000年 以 降発 表 された5っ の臨床第 皿相 試験 の メタアナ リシスで もそ の有用性 が証 明 された5)6}こ とか ら,現 在 はIB期 につい て は,U冊 一43一山 梨肺 癌 研 究 会 会 誌22巻2QD9 の 内服 を施 行 してい る. 補助 化 学療法後3か 月 と6か 月の短期 間 に脳 転移 を認 めた2例 につ いて は,1例 は 無症 状 で偶 然撮影 したCTで 発 見 され,1 例 は 手 足 の しび れ を認 めて い た.後 者 は CBDCA/0の 有害 事 象(末梢神経障 害) に マ ス ク され ていた 可能 性 も考 え られ る. 両側 対 称 でな い手足 の しびれ に対 して は, 脳転 移 も考え る必 要が ある と思われ た.ま た 、補助 化学療 法 中であ って も脳 転移 をお こす ことは十分 に考え られ るた め,よ り厳 重 に経 過観 察す る必要 が あ る と思われ た. ま とめ 当院 にお け る肺 癌 術 後 補助 化 学 療 法 の 現状 と問題 点 につい て述べ た.CBDCA/ TXL の分割投 与は、肺癌 術後補 助化学療 法 と して重 篤 な 有 害事 象 も少 な く,患 者 の QOLを 損 な うことな く,外 来治療 可能 な 治療 と考 え られた. 2004 ; 350 : 1713-21. 4)EBMの 手法 に よる肺癌 診療ガ イ ドライン 2005日 本肺癌 学会 編