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新刊紹介 山岸良二文・さかいひろこ絵 『親子でまなぶ たのしい考古学』

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Academic year: 2021

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─ 30 ─

 

 

 

山岸良二文

さかいひろこ絵

『親子でまなぶ

 

たのしい考古学』

 

  

本書の本文を著された山岸良二氏は、前方後円 墳の前身 ・ 淵源として当時脚光を浴び解明を期待 さ れ て い た 方 ほう 形 けい 周 しゆう 溝 こう 墓 ぼ に つ い て、三 十 歳 と い う 若 さ で『方 形 周 溝 墓』 (ニ ュ ー ・ サ イ エ ン ス 社) を 刊行し、考古学研究者に精確で完備した基礎デー タを広く提供した俊英としてつとに知られている。 その後も弥生時代の墓制や 独 どつ 鈷 こ 石 いし を軸とした研究 を進めながら『関東の方形周溝墓』 、『原始 ・ 古代 日本の墓制』 、『原始 ・ 古代日本の集落』 、『原始 ・ 古 代 日 本 の 祭 祀』 (以 上、同 成 社) な ど の 学 術 研 究 書を編まれ、また日本考古学協会委員 ・ 理事を務 めて学界 ・ 学徒を身をもって導いてこられている。 そうした専門家としての顔の一方で、考古学の 普及 ・ 発展に努められ、 『縄文人 ・ 弥生人 101の謎』 (新人物往来社) 、『入門者のための考古学教室』 (同 成 社) 、『日 曜 日 の 考 古 学』 (東 京 堂 出 版) な ど を 出 されてきた。本書もそうした啓蒙 ・ 普及活動の成 果の一つであるが、いままでの経験を踏まえた工 夫もなされている。 本 書 は 以 下 の よ う に、前 後 に「は じ め に」と 「お わ り に」を 置 き、そ の 間 に「第 1話」 「第 2 話」というように二十五の興味深いタイトルを掲 げた著述が区切られずに並べられている。 はじめに   考古学ってどんなことを研究するの? ①今もナゾにみちたエジプトのピラミッド ②縄文土器は世界でいちばん古い土器? ③縄文人は何を食べてた? ④日本人はどこからやってきた? ⑤中国最初の皇帝   秦の始皇帝の巨大な墓 ⑥銅鐸や銅剣は何に使われた? ⑦弥生時代のいろいろな墓 ⑧日本で最初のクニ 「 邪馬台国 」 はどんなクニ? ⑨アジアの原人は日本人の祖先? ⑩古墳ってなんなの? ⑪古墳の周りになぜハニワを置いた? ⑫高松塚古墳になぜ絵が描かれてた? ⑬古代日本と関係の深い百済   武寧王陵のナゾ ⑭法隆寺はほんとうはいつ建てられた? ⑮日本でいちばん古いお金は? ⑯平城京はどのくらいの大きさだった? ⑰大噴火にうもれた古代の都市ポンペイ ⑱信長や秀吉の城もわかってきた! ⑲江戸時代の町や村も発掘されてる ⑳発掘される明治 ・ 大正 ・ 昭和 ㉑ 密林のなかに発見された大仏教寺院アンコール ワット ㉒発掘調査ってどのようにやるの? ㉓今から何年前ってどうしてわかるの? ㉔むかしの人はどれくらい遠くまで移動してた? ㉕考古学によって地震の予測もできる! おわりに   考古学はこんなにおもしろい 以上の二十七篇である。便宜的にかつ大雑把に 分けると、Ⅰ①~⑪が原始から縄文 ・ 弥生時代を へて古墳時代までの、Ⅱ⑫~⑰がほぼ飛鳥時代以 降の、Ⅲ⑱~㉑が中世以降近現代までの、Ⅳ㉒~ ㉕が時代横断のテーマとなっている。 内容としては、きわめて広範囲な時代に話題を 学苑   第九四八号   三〇 ~ 三三(二〇一九 ・ 一〇) 2018 年 7 月 31 日発行 同成社 A5 判 168 頁 定価 本体 1,700 円+税

(2)

─ 31 ─ 親が、ついで子が読んで二度味わえるといっても よい。年齢も理解力も異なる読者を想定した便利 な本で、よい企画を考えつかれたと思う。 ここまでは日本の考古学についての書として紹 介してきたが、本書のところどころには世界の考 古遺物 ・ 遺跡の話として、①でピラミッド、⑤に 秦の始皇帝陵、⑨に 猿 えん 人 じん ・ 原 げん 人 じん ・ 旧人、⑬に 百 く だ ら 済 の 武 ぶ 寧 ねい 王 おう 陵、⑰にイタリアの都市遺跡 ・ ポンペイ、 ㉑にカンボジアの仏教寺院遺跡 ・ アンコールワッ トが取り上げられている。日本の墓制や都市など との比較のための関連記事という記述でもあろう が、目の前にある日本の考古遺物に興味を持たせ るだけでなく、子の目を広く世界にまたより大規 模で特異なものに向けさせたいとの配慮だろう。 自分の国の歴史を理解するだけでなく、世界のな かの日本の歴史として理解すること。日本と同時 代の世界についての広い視野と足もとの日本の遺 跡を深く観察する確かな目を二つながら備えた子 への成長を期待する著者の強い思い入れがあって の構成と思う。 著者撮影の写真も多く、さかいひろこ氏の絵も 楽しい。ぜひとも、親子での一読をお勧めしたい。 (ま つ お   ひ か る    早 稲 田 大 学 エ ク ス テ ン シ ョ ン セ ン ター講師) 原爆ドームなどの戦争遺跡にまで話が及び、考古 学が現代社会を対象として成果を出していること が如実にわかる。そもそも文献史料は書記者の認 識というフィルターを通しており、書かれている ことがその通りの事実 ・ 実態だったとは限らない。 また日常生活も、関心事となりにくい。そうした 実態的研究を考古学がリードしていく日の近いで あろうことが、否応なく理解できる。 さて、本書にはほかの書にない工夫がある。ふ つう子ども向けには子ども専用の本があり、大人 は大人向けに書かれた本を読む。それが本書の場 合、各テーマの最初に子ども向けの記述があり、 ついでやや字を小さくして親向けの記述がなされ ている。㉓でなら子どもにはC 14や年輪年代測定 法の話でとめて、親にはさらに詳しく金属製品の 産地分析などの話へと深めているし、②では子へ の貝塚の話にはじまって、円形遺構という繋がり から親には環状列石 ・ 環状木柱遺構などへと話を 発展させている。つまりまずは子どもに読ませ、 ついで親が子の理解力や関心を持った事柄にあわ せて、話を掘り下げたり周辺の話に広げつつ語り 合っていけるようにしてある、という企画である。 本書タイトルの「親子でまなぶ」というのはこ うした意味だったわけで、同じ一冊を親子がいっ しょに楽しめるといってもよいし、一冊をまずは 亘らせるとともに、⑪の埴輪の配置、古墳群と墓 の主、天皇と陵墓との関連性など、おのおののテ ーマの最新の研究状況に注意を払ってもいる。 考古学といえば、日本人が日本文を書き記す文 字を持っておらず、そのために政治制度 ・ 社会経 済から行住坐臥のすべてに亘って記す文献が存在 しない時代を扱うものと思われてきた。だから旧 石器時代から古墳時代ごろの実相を探る学問とみ なされ、文献史料のある時代では歴史学の補助学 と位置づけられてきた。とくに室町時代や江戸時 代ともなれば、文献史料や絵画資料によるイメー ジで十分に実相に迫り得ていて、考古学の扱う時 代でないかのような先入観がある。 しかし、いまの考古学はそうした理解を超えて いる。本書の⑱で取り上げられた越前朝倉氏の一 乗谷で復原された町並みは驚きをもって紹介され、 安土城本丸で見つかった清涼殿と同企画の殿舎址 は信長と天皇の関係をめぐる新たな議論を呼び、 青 森 の 十 と 三 さ 湊 みなと の 町 を 拠 点 と す る 安 東 氏 の 日 本 海 交易の盛衰は目に見えるものとなった。⑲の島原 の 乱 の 舞 台 と な っ た 原 はら 城 じよう の 破 壊 ぶ り と 埋 葬 さ れ た戦死者や東京都江東区の旧一橋高校跡地で出土 した性病痕のある一般庶民の姿からは、戦国 ・ 江 戸時代の文献より厳しい惨状が看て取れる。さら に⑳の明治時代の新橋ステイション 転 てん 車 しや 台 だい の話や

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