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〈論文〉英国のパブリックセクターの持続可能性報告指針とその含意

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英国のパブリックセクターの

持続可能性報告指針とその含意

要旨 英国では2011年以降,パブリックセクターの年次報告において持続可能性情報を報告 することを求めており,その特別な指針が毎年公表されている。本稿では,この指針の概要 を紹介し,特徴を明らかにし, その含意を検討している。この指針は, 英国におけるパブ リックセクターの持続可能性報告の将来の発展に影響を及ぼし,報告組織における環境政策 の進捗や持続可能性業績の改善に役立ち,透明性と説明責任を向上させる可能性がある。さ らに,この指針は,組織の財務情報と持続可能性情報を,高い信頼性を備えて,統合された 様式で報告することを確実にする可能性があり,持続可能な発展への貢献に向けた組織の全 体像を提供する可能性がある。

Abstract Since 2011, in the United Kingdom, some public-sector organisations have been required to report sustainability information in their annual reports, and the specific guidance has been published every year. This paper introduces the guid- ance, clarifies its characteristics, and examines its implications. This guidance can influence the future development of the public-sector sustainability report in the United Kingdom, help improve the advancement of environmental policy and sustain- ability performance in reporting organisations, and enhance transparency and accountability. Moreover, the guidance can ensure that an organisation’s financial information and sustainability information are reported with a high degree of credi- bility in an integrated manner, which can provide an overall picture of the organi- sation’s contribution to sustainable development.

Key words パブリックセクター(public sector),持続可能性報告(sustainability reporting), 業績(performance),統合報告(integrated reporting),非財務情報(non-financial reporting)

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Ⅰ は じ め に

持続可能性報告とは,組織の社会や環境への影響をステークホルダーに向けて報告する 説明責任のプロセスである。過去30年にわたって,持続可能性報告の分野に関する学術的 議論が積み重ねられ,関連する実務も進展してきたが,パブリックセクターのこの分野の 議論も実務も未だ萌芽期にある。その要因の一つには,パブリックセクターは,その活動, 調達,政策という3つの側面で社会や環境に広範な相当程度の影響を及ぼすことが容易に 想定されるにも拘わらず,パブリックセクターの持続可能性報告の重要性や必要性が,社 会の人々あるいはこの分野の専門家においても見過ごされてきたことがある。 パブリックセクターの持続可能性報告を検討する場合に問題となるのは,何を測定し, どのように報告するか,それをどのような制度的枠組みで行うかである。市場の競争状況 に曝されないパブリックセクターが同じパブリックセクター間での競争優位を求めて情報 開示をするインセンティブを自主的にもつことは少ないと考えられる。よって持続可能な 発展に関する所定の目標が与えられ,その目標との関係で組織の取り組みの有効性を測定 し報告するような,規範的で強制的な制度的枠組みの方が,透明性や説明責任に効果があ るかもしれない。加えて,制度的枠組みの一つとして,パブリックセクターが制度として 行う年次報告の中で,持続可能性に関する情報開示を行う統合報告の方法の適用が効果的 であるかもしれない。しかし,どのような制度的枠組みで統合報告を行うかについては, 未だ決定的なものは見られない。そこで,本稿では,所定のパブリックセクターの年次報 告・財務諸表で持続可能性報告を義務付けている英国において, 近年公表された, パブ リックセクターのための持続可能性報告の指針を取り上げて,評価し,含意を明らかにし てみたい。このような検討は,わが国のパブリックセクターの持続可能性報告のあり方に 関する政策的議論の基礎を提供するものであり非常に有意義といえる。 本稿の構成は,第2章で先行文献を検討し,第3章で英国のパブリックセクターの持続 可能性報告指針の内容を紹介し,第4章でこの指針の主な特徴を明らかにしつつ,評価を 加え,この指針から得られる含意を考察し,第5章で結論を述べる。

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Ⅱ 先 行 文 献

パブリックセクターの持続可能性報告のあり方を議論する出発点として,まず,持続可 能性報告とは何かの議論を見ていく。持続可能性報告とは,環境的,社会的,経済的な組 織の業績を,組織が年次報告で表すことを確実にするものであり,持続可能な開発への組 織の貢献について報告するものである(NAO 2015)。持続可能な開発とは,将来の世代の 欲求を満たしつつ,現在の世代の欲求も満足させるような開発をいう(WCED 1987)。組 織の持続可能性とは,環境的な社会的な発展と経済的な目標のバランスをとることであり, それを意思決定において考慮することに関連するものである(NAO 2012)。 持続可能性報告がもたらす可能性のある便益には様々なものがある。例えば,財務情報 で典型的に見落とされる社会や環境への影響や機会を含む,組織活動の全ての側面につい ての透明性をもたらし,ステークホルダーへの説明責任を向上させる便益である( NAO 2012)。持続可能性報告によって持続可能性に関する業績についての説明責任を果たし, また非財務情報をビジネス戦略に統合することで,重要な革新の機会をもたらす便益があ る(GRI 2012)。さらに,持続可能性報告は,事業の効率性向上,評判の管理,事業を行 うための社会的ライセンスの取得,地域社会とのより強い関係性の構築,従業員の満足度 向上,リスクマネジメントの改善,長期の安定性,資本へのアクセスの改善,環境や社会 への影響の低減(GRI 2012)という側面で便益をもたらす可能性がある。 次に,パブリックセクターとは何かについては,所有と支配の概念をもとに定義できる。 パブリックセクターとは伝統的に政府によって所有され管理されている国の経済活動の一 部であり,地域社会にユーティリティーやサービスを提供し,伝統的に社会の構造に不可 欠と見なされてきた公的機関で構成されているもの(Broadbent and Guthrie 1992, 3) と定義される。この定義をもとに,パブリックセクターには,1 )国や連邦政府の省庁, 部門,執行機関,2 )権限を委譲された,あるいは州政府の機関,3 )地域および地方政 府機関,健康や緊急時対応サービスの機関, 4 )公的企業やトレーディングファンド 5  )多数の他の研究・教育機関や財団が含まれる(Ball et al. 2014)。 パブリックセクターが,一般に,持続可能性報告とするものは,報告の内容をもとに3 つに分類できる。すなわち,1 )機関の全体的な業績を取り扱う年次報告のような報告,  トレーディングファンドは英国のパブリックセクターの一組織である(三菱 UFJ リサーチ & コンサルティング株式会社 2007)。

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2  )環境計画あるいは持続可能性戦略のような,政策あるいは戦略についての報告,3 ) 環境の状況報告のような地理的範囲(郡,州,地方,都市,または地方政府地域)の現在 の状況を表した報告の3つである(GRI 2012,11)。持続可能性報告では,組織やその活動 の影響を記述することが求められるとするならば,このうち最初の分類の報告が最も持続 可能性の報告に適しており,他の2つの分類の報告は関連情報を提供する(GRI 2012,11) ものといえる。とりわけ,3 つ目の分類は,パブリックセクターの活動が環境へどのよう に影響を及ぼしているかという持続可能性報告が対象とする情報や資料を提供することは まれである(GRI 2012,11)ため,持続可能性報告と本質を異にするといえる。 民間セクターに比較して,パブリックセクターの持続可能報告や説明責任の議論はまだ まだ発展の余地があるといえる。過去20年あまりにわたり,持続可能性報告は企業報告の 重要な側面として増加しつつあり,またステークホルダーとの関係を構築し,企業戦略の 設定にもかかわってきた(NAO 2012)。持続可能性報告をする企業数は1993年においては 100社にも満たなかったが,近年,世界で6千社が行っている(NAO 2012)。パブリック セクターの活動,調達,政策が及ぼす潜在的影響の大きさに鑑みると,持続可能報告や説 明責任の分野でのパブリックセクターの潜在性があるものの,パブリックセクターに関す るこの分野の議論はこれまで見逃されてきている(Ball et al. 2014)。 パブリックセクターが行う持続可能性報告をうまく説明する理論には,制度理論(DiMaggio and Powell 1983; Neu et al. 1998)がある。制度理論を用いると,制度的生活において認 知されている領域を構成する組織からなる分析単位である「組織フィールド」に属する組 織の行為や形式において,同質化することを説明できる。制度理論では,規範的,模倣的, 強制的の3つの同型化のプロセスを用いる。パブリックセクターの場合,パブリックセク ター全体での新しい方針などが示されると,その新しい規範が誘因となって,組織の行為 や形式が同質化していく状況を規範的プロセスとして説明できる(Mussari and Monfardini 2010)。模倣的同型化は組織フィールドで他の組織が成功していると認識して, それをモ デルとして模倣するプロセスをいうが,パブリックセクターの場合には組織の生き残りや 繁栄を懸けた競争状況にないため生じにくいプロセスであるといえる。一方,強制的同型 化は,組織がある状況に適応するために社会の期待に応じて影響を受けるプロセスをいう が,パブリックセクターの場合には社会からの期待に応えるべく,組織の正当性を維持す るために同型化していくプロセスとして説明できる。 パブリックセクターの持続可能性報告を必要とする理由について,パブリックセクター の事業の有効性を評価する点からの議論がある。近年,パブリックセクターでは公的支出

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を削減しており,事業効率性とサービス削減に対して社会からの圧力があるものの,パブ リックセクターの規模や事業からの経済,環境,地域社会への影響は,民間セクターの企 業に比較してかなり大きいものと想定されるため,パブリックセクターの持続可能報告や 説明責任は非常に重要な課題といえる(Ball et al. 2014)。また,パブリックセクターの持 続可能性への政策と行動が首尾一貫していない,また政府機関の持続可能性に関する課題 と資金にも首尾一貫性がない(Ball et al. 2014)との批判的見方がある。すなわち,パブ リックセクターの組織の運営や政策の有効性の評価の観点でも,持続可能性報告が貢献で きることが示唆されているといえる。 この他にも,パブリックセクターの持続可能性報告を必要とする根拠が4つある。まず, パブリックセクターの組織が,社会において幅広い役割を非常に期待されているという状 況に直面していること,2 つ目に,組織が持続可能な開発を支持し,公共の福祉を増進す る方法で,公共財,資源,設備を適切に管理するという市民社会における責任があること, 3  つ目に,持続可能性報告によって,財務業績を重要な資源とその資源に対する依存関係 を結びつけた説明が提供され,また組織の重要業績の情報開示が要求されることで,透明 性と説明責任の便益がもたらされること,4 つ目に,国際的にパブリックセクターの持続 可能性報告の議論や国際統合報告評議会(IIRC)による統合報告の枠組みを巡る議論が盛 んになりつつある状況への対応という,以上4 つの根拠が挙げられる(GRI 2  012)。なお, 統合報告については,実際,英国財務省は,前述の IIRC が公表した国際統合報告フレー ムワーク( IIRC 2013)の考え方がパブリックセクターの持続可能性報告にも適切かどう かを検討するためのネットワークへの参加に同意しており(NAO 2015),英国財務省の統 合報告への理解と関心の高さが伺える。 パブリックセクターが持続可能性報告を行うことには潜在的な効果があるといえる。持 続可能性情報の開示の際にパブリックセクターの職員をもっと関わらせ,持続可能性への 貢献を理解する機会を提供するという効果が期待でき,その点で持続可能性報告は重要な 仕組みといえる(Ball et al. 2014)。 このようなパブリックセクターの持続可能性報告の必要性やその報告の効果が様々に議 論される中で,実務の面では,国際的にパブリックセクターの持続可能性報告を奨励する 実際の動きが見られる。英国,スウェーデン,ドイツ,米国,欧州連合においても,パブ リックセクターに持続可能性報告を奨励している(GRI 2012)。 そして,パブリックセクターの持続可能性報告や説明責任の分野の発展に寄与すること を目的とした,持続可能性報告の実務を支援するための標準的枠組みも開発されてきた。

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例えば,持続可能性報告の枠組みを開発し指針を公表してきた非営利組織のグローバル・ レポーティング・イニシアチブ(GRI)では2005年に試験的なパブリックセクター機関の 補足文書を公表している(GRI 2005)。 英国では2011年度より中央政府の機関の発行する 年次報告で持続可能性報告を義務づけており,その指針を毎年公表している。このような 実務の状況を踏まえて,Ball ら(2014)は,不動産の管理,調達,廃棄物の効率性,交通 などの側面を含むパブリックセクターの事業の影響だけでなく,持続可能性の方針,戦略, プログラム,アウトカムについての広範な情報を網羅する報告のあり方を提案している。 さて,パブリックセクターの持続可能性報告は,問題とする組織の事業や政策の有効性 を測定する仕組みとしても捉えられる。まず,組織の有効性は,技術的・科学的というよ りも概念的・政治的なものといえるため,有効性をどのように測定するかということより も,まず,何を測定するか,定義や技術をどう選定するか,組織の構成,機能,環境的な 関係と,有効性がどう関係するかが問題となる(Kantor and Brinkerhoff 1981)。有効性 の測定の議論において,有効性と業績は相互補完的に用いられるものである(Kantor and Brinkerhoff 1981)。また,組織内外に多元的なステークホルダーが存在し,それらが組織 の利用や業績規準の設定において競い合っている状況がある(Kantor and Brinkerhoff 1981)。そして,組織の比較のための共通の普遍的な次元を発見することよりも,ある測

定システムがどのように発生するか,そのシステムは誰の関心のために使うか,そのシス テムは組織活動を導き,形作るためにどのように機能するかが議論の課題となる(Kantor and Brinkerhoff 1981)。

次に,組織の業績として何を測定するかを,測定対象の定義をどうするかを決めるにあ たり, 3 種類の組織の有効性(Kantor and Brinkerhoff 1981)の考え方がある。まず, アウトプット,結果,効率性のような,仕事の有効性や目標達成(Kantor and Brinkerhoff 1981)で有効性を測定する考え方がある。2つ目に,組織の特徴,構成員の満足,やる気,

コミュニケーションの繋がり,内部の葛藤の解決策,グループ相互の緊張のなさというよ うな,適切な組織の構造やプロセス(Kantor and Brinkerhoff 1981)で有効性を測定す る考え方がある。3 つ目に,変化に直面した際の柔軟性,資源獲得,長期の適応やサバイ バルというような,環境への適応(Kantor and Brinkerhoff 1981)で有効性を測定する 考え方がある。

パブリックセクターの組織の有効性の測定と改善に関していえば,先行文献をもとに4 つに分類できる。すなわち,1 )インプット・アウトプット・アプローチ,2 )システム 全体,政治的アプローチ,3 )クライアント満足度アプローチ,4 )組織的プロセスアプ

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ローチという4つのアプローチに分類できる(Kantor and Brinkerhoff 1981)。このうち, 最初の分類のインプット・アウトプット・アプローチが最も一般的であり,計算と指標化 のためにはインプットとアウトプットの定義と測定方法が必要となる(Kantor and Brin- kerhoff 1981)。パブリックセクターの持続可能性報告において,持続可能な発展に向けた 組織の活動や政策の有効性を測定するには,このようなアプローチも有効であることが伺 える。 最後に,パブリックセクターによる最善の持続可能性報告とはどのようなものかについ ての議論を見ていく。英国の会計検査院(NAO 2015)では, パブリックセクターの持続 可能性報告の表彰制度を踏まえて,最善の報告に重要な5つの要素を指摘している。すな わち,まず,ビジネスと持続可能性の業績を理解するための文脈的な情報を読者に提供す るために,組織の持続可能性のアプローチを説明することである。持続可能性の戦略の概 略を説明する,あるいは組織の幅広い戦略や意思決定に持続可能性がどのように統合され ているかを説明することが重要とされる。2 つ目に,組織の運営に最も重要な持続可能性 の影響が何かを説明することである。3 つ目に,組織運営の持続可能性を向上させる目標 や業績指標を設定することである。短期および長期の両方に関連した持続可能性の目標や 業績指標を設定することである。4 つ目に,よい業績と悪い業績の両方,また達成できた ものと課題として残されているものの両方を含む,バランスの取れた情報開示を行うこと である。そして悪い業績については改善計画を示し,以前よりどの程度改善したかを示す ことである。5 つ目に,持続可能性報告が,簡潔であり,入手可能であり,ベンチマーク による分析を行っていることである。

Ⅲ 英国のパブリックセクターのための持続可能性報告指針

1 持続可能性報告指針の公表の背景 英国政府では,2011年度以降,所定の全てのパブリックセクターの年次報告において, 持続可能性の情報を報告に含めることを求めており,そのための指針が毎年度公表されて いる。この背景には,気候変動法(UK Government 2008)での目標設定と,英国の環境 監査委員会による要請がある。まず,2008年11月の気候変動法では,1990年の正味の温室 効果ガス排出量をベースラインとして,英国の二酸化炭素排出量を2050年までに80%削減 することを国務長官の責務とし(UK Government 2008, sec.1.1),そのため2020年までに 26%削減すること(UK Government 2008, sec.5)を目標に掲げている。この法律で

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は,国務長官が,温室効果ガス排出量の報告義務のある者の活動からの排出に関する報告 を支援するために,温室効果ガス排出量の測定あるいは算定に関する指針を,2009年10月 までに公表し,他の国家機関と相談しつつ,指針を改訂することを定めている(UK Gov-ernment 2008, sec.83)。 この気候変動法を背景に,英国財務省は,パブリックセクターの年次報告における持続 可能性報告を導入すべく,所定の政府機関の年次報告作成のための「政府財務報告マニュ アル(Government Financial Reporting Manual: FReM)」の改訂に関する公開草案(HM Treasury 2009)を2009年8月に公表し, 同年11月までそれに対する意見を求め,2010年 度以降に試行し,2011年度よりパブリックセクターの年次報告において持続可能性報告を 導入した(Monitor 2009, 8; NAO 2015)。

同様に,環境監査委員会による要請によっても,年次報告・財務諸表(annual reports and accounts: ARAs )の中での持続可能性報告が導入された経緯が伺える。 環境監査委 員会は,会計検査院のレビューを利用しつつ,2006年6月に政府の持続可能性報告につい て報告しているが,その際,年次報告・財務諸表の中で持続可能性について報告すること, 各部門の業務と政策立案の両方に関連する部門業績を取り扱うこと,また単独の部門がそ の部門の持続可能性報告の開発に関わる責任をもつことを要請した(NAO 2012)。このよ うな監査委員会からの要請に対して,政府は2006年に同意し,事業の目標に対する成果を 監視するために収集される主要なデータの決定を含めて,部門報告についての指針を提供 することを約束した(NAO 2012)。そして,2010年12月には,政府は中央政府機関による 義務的な持続可能性報告を2011年度より導入することを公表し,さらにこれを2011年2月 に公表された主な持続可能な開発ビジョンでも確認した(NAO 2012)。2011年度の財務年 度において,財務省は,「公的支出年次報告指針」において,業務, 調達, 政策開発で持 続可能性はどのように考慮されるかを部門に要請する内容を,一方で,前述の「政府財務 報告マニュアル」においても,全ての中央政府組織に年次報告・財務諸表の中に持続可能 性報告を含めるよう要請する内容を導入した(NAO 2012)。財務省は,このマニュアルの 要件を満たすための詳細な指針を作成し,そこで持続可能性報告に廃棄物,資源利用,お よび温室効果ガスの排出に関するコメントを含めることを定めた(NAO 2012)。なお,英 国政府では,別途,環境への影響を減らすため,政府省庁や機関が行う行動を定める「環 境配慮の政府コミットメント(Greening Governments Commitments: GGC)」を2011年 度より毎年度公表しているが,この中で温室効果ガスの排出,業務,および調達に関する 中央政府機関の目標と透明性に関してデータの要件を定めている。前述のマニュアルでの

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非財務データの報告要件は,この環境配慮の政府コミットメントの要件と概ね整合してい る(NAO 2012)。 その後,前述の「政府財務報告マニュアル」は改訂を経ているが,2017年度に公表され た「政府財務報告マニュアル」(HM Treasury 2017b )をみると,持続可能性に関する情 報は,最小限行うべき「業績分析」の項目の一つとして取り扱われている。ここでいう業 績分析の目的は,報告組織の業績測定方法の要約,詳細で統合的な業績の分析,長期の支 出傾向の分析を提供することにある(HM Treasury 2017b, 5.2.9)。 そして, この業績分 析の項目において,報告組織は,自然環境に及ぼすその組織のビジネスの影響を含む,環 境問題についての情報を提供するよう期待されており,強制開示の持続可能性報告の要求 事項にも遵守しなければならない(HM Treasury 2017b, 5.2.10)。このような報告は,別 冊の独立した報告ではなく,年次報告・財務諸表を通した統合的な報告になるよう期待さ れている(HM Treasury 2017b, 5.2.10)。例えば,英国政府機関が持続可能性についての 問題を報告する機構として,年次報告の他にも広く様々な報告形態がある(NAO 2015, 9) (図表1)。 図表1 持続可能性問題についての英国政府の報告 範囲 責任 報告 環境配慮の政府コミットメントに対する進捗を含む,一連の要 求事項。 部門 年次持続可能性 報告 出張や持続可能性調達を含む,政府不動産や業務の環境への影 響を低減するための環境配慮の政府コミットメントに対する政 府全体の進捗を記述した年次報告。 環境,食糧,地域 問題省(Defra) および内閣府 環境配慮の政府 コミットメント 報告 環境に配慮した情報通信技術戦略に対する政府の進捗に関する年 次報告。それは環境配慮の情報技術の成熟度モデルとロードマッ プに対する進捗についての報告を含む。2013年7月に最終発行。 内閣府 環境配慮の情報 通信技術戦略 持続可能な経済,社会,および環境に向けた英国の進捗につい ての年次報告。 英国国家統計局 持続可能な発展 指標 生活の質が将来どのように持続可能であるかを含む英国におけ る生活の質に関する6ヶ月報告。 英国国家統計局 国民福祉測定 二酸化炭素排出と気候変動への適応に関する部門ごとおよび政 策の進捗。 中央政府 気候変動委員会 の進捗報告への 政府対応 英国の温室効果ガス排出の年次評価。 エネルギーおよ び気候変動省 排出の年次報告 気候変動への適応についての重要な公的および民間セクター組 織の進捗。 Defra 気候変動への適応 1度限りあるいは定期的な,持続可能性の側面についての他の報 告。例には Defra が発行した,持続可能な開発の埋め込み,農 業指標からの温室効果ガス排出量の改訂とデータセットを含む。 部門 その他の報告 出典 NAO 2015, 9. 筆者訳。

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さらに,環境配慮の政府コミットメントに従って,報告対象となり,また最小限の制限 またはその他の免除が免責されない組織は,温室効果ガス排出量,廃棄物の最小化と管理, および有限の資源の使用とその関連支出に対する持続可能性の目標に対する業績を報告す ることが要請されている(HM Treasury 2017b, 5.2.11)。 2 持続可能性報告指針の概要 「パブリックセクター年次報告:持続可能性報告指針」(HM Treasury 2017a )(以下, 指針)は,英国国務長官によって2017年10月31日に発行されたものであるが,ここで指針 の内容を概括していく。 まず,全体の構成についてみると,第1章「導入」, 第2章「報 告要件―概要」,第3章「温室効果ガス排出:最小限の要求事項」,第4章「廃棄物:最小 限の要求事項」,第5章「有限資源の消費:最小限の要求事項」,第6章「さらなる自主的 報告」の6章で構成され,全体で32頁と簡潔に編集されている。第2章で概要の説明があ り,また最小限の要求事項が一覧表で提供されている。続く第3章,第4章,第5章で, 要求事項について詳細に説明されている。ここでは,この指針の第1章,第2章および第 6章(一部抜粋)の内容を文脈に沿って紹介していく。 第1章   導入 1.1 この指針は,パブリックセクターにおける持続可能性報告に関する指針を示す 文書として,最小要件,最善事例の指針,および情報作成において採用される基本原 則を概説している。首尾一貫性を確保するため,中央政府機関に適用される環境配慮 の政府コミットメントの報告要件の概要と整合している。 1.2 この指針は,環境配慮の政府コミットメントの対象となる,部門,非府省庁, 執行機関,政府外公共機関などの全ての中央政府組織で,かつ,英国財務省の「政府 財務報告マニュアル」に従って年次報告書・財務諸表を作成する組織に適用される これらの組織は,免除されない限り,持続可能性について報告することが義務付けら れている。 1.3 報告機関は,報告書の利用者にとって有用であると考えられる場合,これらの 要件を超えて報告することが奨励される。とりわけ,組織にとって最も重要な経済的, 社会的,および環境的影響,およびこれらが政策,調達,および業務にどのように関  学校や国営保険サービスは除外され,トレーディングファンドは含まれる。

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係しているかを,報告組織が検討し報告したいと希望することが想定され,そのため の追加的な任意の指針がこの指針の第6章に含まれる。 1.4 この指針は,北アイルランド,スコットランド,およびウェールズの分権政府 には適用されず,これらの政府に権限が委託された組織の持続可能性報告に関しては, 独自の取り決めに従う。 第2章   報告要件―概要 要件の概要 2.1 組織は,持続可能性がいかに戦略目標,事業,および政策立案における必要不 可欠な特徴であるかについて,統合報告を通じて,示すことを強く推奨される。統合 を達成することにどのようなリスクがあるか,どのようにそのリスクを管理されてい るかも反映することが重要である。特に重視される分野と組織にとって最も重要な分 野を説明するために,追加の文脈が与えられるべきである。 2.2 政府財務報告マニュアルでは,業績報告が「公正で,バランスがとれて,かつ 理解可能」であることを包括的要件としており,この要件は持続可能性報告にも当て はまる。目標が達成されていない領域を改善するための目標と計画とともに,良い業 績と悪い業績の両方が強調されるべきである。 2.3 中央政府全体の透明性と一貫性を継続的に確保するため,一部の環境持続可能 性測定尺度についての義務的な報告レベルを,年次報告・財務諸表に含める必要があ る。これは特定の民間部門の企業が温室効果ガス排出量を報告するための義務的要件 と整合するが,以下で詳述する要件を含むために範囲が広い。このガイダンスに記載 されている最小限の持続可能性報告の要求事項は,環境配慮の政府コミットメントに 基づいて定められた非財務情報の要求事項と完全に一致している。 2.4 次の表は主な報告領域のそれぞれの最小限の要求事項の概要を示している(図 表2参照)。

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図表2 主な報告領域ごとの最小限の要求事項の概要 財務情報 非財務情報 種類 領域 エネルギー購入に かかる総支出,炭 素削減コミットメ ント・エネルギー 効率化制度 への 支 出, 公 認 オ フ セット購入への支 出,公的出張への 総支出,報告され たエネルギー分野 への支出。 全てのスコープ1の排出量が説明されなければ ならない。これらは組織が所有または支配する 資源から生じる。組織が所有または管理するボ イラーでの放熱や,空調ユニットなどの機器か らの一次的排出の結果としての排出が例に挙げ られる。これには組織が所有する車両(ファイ ナンス・リースの車両を含む)からの排出も含 む。関連するガス消費の Kwh での分析も含め るべきである。 スコープ1(直 接)温室効果 ガス排出 温室効果ガス 排出 全てのスコープ2の排出量が説明されなければ ならない。これらは他の当事者によって供給さ れた消費エネルギー(例えば,建物または支局 での電力供給)や,熱,蒸気,および冷却の購 入によるものである。 関連するエネルギー消費 の Kwh での分析も含めるべきである。 スコープ2(エ ネルギー間接) 排出 組織によって直接支払われる公的出張に関する スコープ3の排出量(請負業者によって再課金 された出張ではない)が説明されなければなら ない。最小限の要求事項には,環境配慮の政府 コミットメントに準拠して,国際線航空または 国際鉄道による出張は含まれない。 スコープ3 公的出張の排出 廃棄物処理に対す る総支出(廃棄物 処理契約,廃棄物 発生の専門家およ び廃棄物の免許の 購入)および左欄 の下から3つの各 分類に対する支出。 最小限の要求事項は,以下の分類で,組織の不 動産(業務的建設廃棄物を除く,管理および業 務は最小限の要求事項ではない)からの廃棄物 の絶対量を報告することである。 ・発生廃棄物の総量 ・埋め立て処分場へ送られた廃棄物(例 残留 廃棄物) ・リサイクル / リユースした廃棄物(リサイク ル,堆肥化,内部または外部での再利用) ・焼却廃棄物 / 廃棄物のエネルギー(例 食品 廃棄物) N/A 廃棄物最小化 および管理 免許の購入を含む 有限資源の購入に 関する総支出。 最小限として,パブリックセクターの組織は水 の消費量を立方メートルで報告しなければなら ない。パブリックセクターの機関はまた,その 使用が重要な他の有限の資源の消費量を報告す ることも考慮しなければならない。 N/A 有限資源消費 要求されない。 組織は生物多様性行動計画や環境配慮の政府コ ミットメントに沿って組織の業績を取り扱う必 要がある。この要件は環境配慮の政府コミット メントの対象組織にのみ適用される。 N/A 生物多様性行 動計画

 炭素削減コミットメント・エネルギー効率化制度(Carbon Reduction Commitment Energy Efficiency Scheme: CRC)は,英国の2008年気候変動法(UK Government 2008)のもとで2010 年より導入された,温室効果ガス排出量取引制度(UK Government 2008)をさす。

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2.5 支出情報は,監査済みの年度末財務諸表と整合し,コスト把握の明瞭性を提供 する財務システムの勘定コードをもって,通常の財務システムを通じて収集されるべ きである。これは年内における監視目的のための組織内部における可視性も提供し, 支出領域における将来の業績管理目標の開発を支援する。 最小限の非財務報告要求事項 2.6 前述の表には最小限の非財務報告要求事項が詳述されている。排出量は温室効 果ガスプロトコル によって3つの異なるスコープの下で定義されている。これらの 要求されない。 組織は環境配慮の政府コミットメントが要求す るように,良質の調達実践の指針(例 フレキ シブルフレームワーク または BS8903),政 府購入基準の使用,サプライチェーンへの影響 の管理に関する調達実務に,どのように持続可 能性を組み込んできたかを報告しなければなら ない。報告にはこれらの特定の政府購入基準の 使用も含まれるべきであり,木材調達方針部門 は,環境配慮の政府コミットメントのために報 告することが求められる。同様にエネルギー業 績契約やリースのような新しいビジネスモデル などのような使用されている他の方法論も含ま れる。組織はまたどこから食料や料理の仕出し サービスを調達するかを含めなければならない。 N/A 持続可能な調達 要求されない。 組織は以下の事項について報告すべきである。 変化する気象,極端な事象,および気候変動に よる海面上昇に直面した際に,長期的な含意を 伴う政策が堅固であることを確実にするための 行動が取られてきたという保証を与える一般的 な声明;昨年度の報告書へのフォローアップ活 動や,気候変動からの影響を受けた主要政策と それがどのように対処されたかを強調する。 N/A 気候変動への 適用 要求されない。 透明性のための環境配慮の政府コミットメント の要件に沿って,部門は,建設または同等の措 置のための政府の購入基準を考慮しつつ,新し い建物や大規模な改装を含むいかなる建設作業 が持続可能性を優先することを確実にするため にどのような尺度を設定するかを報告しなけれ ばならない。 N/A 持続可能な建設 出典 HM Treasury 2017a, 59. 筆者訳。  フレキシブルフレームワークは,時間の経過とともに,組織が持続可能な調達についての組織 の進展を測定し監視することを可能とする自己評価メカニズムであり,英国の環境・食糧・農村 地域省(Defra)によって2011年に導入された(Defra 2011)。

 BS8903 は,英国規格協会(British Standards Institution: BSI)による持続可能な調達の ための英国規格(British Standards: BS)であり,2010年に世界初の規格として制定された国 家規格である。

 温室効果ガスプロトコルは温室効果ガス(Greenhouse Gas: GHG)排出量の算定と報告の基 準をさす(WRI and WBCSD 2015)。

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スコープについてはこの指針の後半で詳しく説明される。 2.7 組織は,温室効果ガス報告に関する最新の利用可能な指針と報告方法論を整合 させなければならない。指針に関する詳細は,「環境報告ガイドライン:温室効果ガ ス排出の義務的報告の指針を含む」(Defra 2013)を参照できる。 2.8 組織は,可能な限り,年間を通してそのような情報の収集を規則化するために, 通常の経理および環境管理システムを利用すべきである。これは新規または既存のシ ステム(例えば物量情報を取り込むフィールド,財務システムにおける追加の主観的 コードなど)またはプロセスへの追加/変更を必要とする可能性がある。 必要な情報 を取得するために必要な変更を加えることができるように,これらはできるだけ早期 に特定される必要がある。 2.9 持続可能性報告に含まれる全ての情報は,4 月1日から3月31日までの通常の パブリックセクターの財務年度(英国の戦略的炭素予算は暦年に設定されていること を認識しつつ)に適合しなければならない。 持続可能性報告の様式 2.10 報告のためにあらかじめ規定された標準的文書はない。 組織は自分の事業に 合った独自の様式を開発すべきであるが,しかし統合報告が強く推奨される。報告様 式は最小限の情報要求事項(ゼロ回答含む)と,少なくとも過去3年間のデータの比 較を提供するべきである(利用可能になり次第)。 ・持続可能性のための全体戦略 ・温室効果ガス排出量 ・廃棄物の最小化と管理 ・有限の資源消費 ・生物多様性行動計画 ・持続可能な調達(食料および料理の仕出しを含む) ・気候変動適応 ・持続可能な建設 2.11 報告が進んでいる組織は,他の側面を取り扱うために追加の項目を加えたいか もしれない。報告組織はまた,他の場所ですでに業績が取り扱われているならば,そ の組織のウェブサイト上の他の関連する公表された報告書を読者に言及することもで きる。

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2.12 報告組織は,主要業績評価指標(KPIs),直接的影響および間接的影響の点に おいて,業績を説明する解説を含まなければならない。解説では,業績を改善させる ために,傾向と組織の戦略的役割を討議しなければならない。適用可能な場合,17の 持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs) のうちの1つに寄

与する業績にフラグを立てるべきである。 2.13 方針と境界における変更に関する追加情報(必要に応じて,より多くのデータ を含む組織のウェブサイトページへの助言とともに)は,報告書の読者に明瞭性を提 供するその他の詳細と一緒に,含められるべきである。これは炭素排出量に関して説 明された領域の詳細が含まれていなければならない。 業績の改善と測定 2.14 この指針は,業績測定,コミットメント,または目標の設定に関する助言を取 り扱っていない。一部のパブリックセクターの組織は,報告しなければならない持続 可能性の尺度をすでに持っている。 政府は環境配慮の政府コミットメントを中央政府 機関に設定している。国営保険サービスは独自の炭素削減戦略を発表しており,持続 可能な発展委員会と共同開発した「良い企業市民権ツール」を使用して業績を評価し ている。 2.15 Defra は民間部門および公共部門が適切な措置および KPIs を特定し設定する ことを支援するために指針を発行している。この指針はパブリックセクターが報告す る関連 KPIs を特定する際に役立つ。詳細については「環境重要業績指標:英国企業 のための報告指針」(Defra 2006)を参照することができる。 測定尺度に対する業績の報告 2.16 関連する測定尺度が設定されている場合,その尺度に対する業績は報告される べきであり,可能な場合,または業績がすでにどこかで公表されているならば,詳細 とリンクした業績の概要の報告が許容される。解説は,業績が改善しているか悪化し ているかについて明確でなければならず,読者が評価指標を理解していることを想定 していない。対策について報告する際,どの年がベースラインとして設定されている  SDGs は2015年9月の国連持続可能な開発サミットで採択され,2016年に発効した「我々の世 界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた17の目標をいう( UN 2016)。

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かが明確でなければならない。同一のベースラインが使用されるべきという一貫性を 確保するための指標の基準年を,環境配慮の政府コミットメントは設定している。 2.17 組織は業績の過去の視点を提供するために,前年度のデータ(例えば,報告さ れた情報が利用可能になるならば3年)を提供しなければならない。基準年度を業績 監視の基礎として使用する場合,基準年度のデータは,会計方針および境界の変更に 合わせて,更新されかつ報告される必要がある。重大な変更が生じた場合,比較目的 で報告された前年度の数字も,説明の提供とともに更新されるべきである。可能であ れば,組織は類似の組織のような他のベンチマークと業績を比較すべきである。 報告された業績の正規化 2.18 最小限の報告要求事項に関する比較を年単位で行うことを可能にするために, 報告書は年間の比較可能性を援助するのに適した,首尾一貫した要素をもって正規化 した業績の詳細を含める必要がある。これは,例えばフルタイム当量の数で正規化し た場合に生じる可能性がある。 部門別の持続可能性報告会計の境界 2.19 部門別の持続可能性報告会計の境界は,原則として,政府財務報告マニュアル に詳述されている部門別の財務報告の境界と一致することを目指す。しかし,境界間 に矛盾がある場合(例えば,国営保険サービス機関と学校が環境配慮の政府報告とそ れに伴う持続可能性報告の範囲外にある場合),2.20項はこれをどのように管理すべ きかを説明しようとする。スコープ1およびスコープ2の排出量の報告の境界を設定 する財務報告指針は,関連する資産および負債が財政状態計算書に含まれているかど うかを決定するものである。環境配慮の政府コミットメントとの一貫性を保つために, 海外事業は報告要件から除外されている。財務報告の境界が,十分な持続可能性報告 のために部門によって使用されたものと異なる場合,財務情報の分析は,持続可能性 報告会計の境界との調整を可能にするために提供されるべきである。これは本質的に, その組織の財務諸表ごとに関連する財務内容を表示して,含まれる団体や領域が含ま れないものと明確に区別されるべきであることを意味する。これは,読者が財務的視 点から重要性を理解するのに役立つ。2.26項は,含まない理由が情報の欠如(例え ば,段階的な実施)による場合の相違点について説明する指針を提供している。 2.21 財務報告指針に従ってパブリックセクターの持続可能性報告会計の境界を設定

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することは,ほとんどの場合,組織が直接管理する全ての領域について報告すること になる。しかし,いくつかのより専門的協定を検討する必要がある。 ・アウトソーシング契約。例 えばスコープ3と見なせる炭素排出量に関しては(よっ て最小限の報告要件の一部とはならない),しかし契約の規模と性質によって,報告 に早期に含めることがより適切になる可能性がある。 ・PFI 契約を含む PPP 契約 2.22 上記の専門的協定について,財務報告処理は,これらの協定の扱いをケースバ イケースで検討するための基礎を提供している。重要なアウトソーシング契約がある 場合,結果として得られる排出量を報告することは,スコープ3の排出量の最善実務 の一部としてできるだけ早く奨励されるが,しかし財務報告処理がそうでないと示唆 すれば,スコープ1または2の排出として扱うべきではない。 持続可能性報告会計の境界内の一貫性 2.23 持続可能性報告の目的は,前年度の組織におけるパブリックセクターの業績に 透明性を提供することである。この目的のために,組織のトップレベル(一般的には 部門)が,この指針で裁量が与えられている領域について明確な会計処理または方針 を伝えることが重要である。要点は,組織内で取扱いが一貫していることと,毎年, 傾向が容易に認識され理解されることを確保することである。会計上の境界内または 異なる年度間での不一致が存在する場合は,それらを説明する必要がある。しかし, これはデータ提供の継続的な改善を損なうものではない。要点は何が報告されている か,何が欠落しているか,情報の開発のためにどのような将来計画があるかを読者が わかることを確保することである。 2.24 組織が戦略的リストラクチャリングを行う場合,または以前に省略された非財 務報告データを開示する場合,これは会計上の境界に影響を及ぼす。したがって,組 織は環境配慮の政府コミットメントの要件に基づいて,ベースラインの再編成の要求 を提出する必要がある。再編成の要求は,裏付けされた証拠とともに,環境配慮の政 府コミットメントの再編成委員会によってレビューされる。その要求が承認された場

 PFI は Private Finance Initiative の略で,公共施設等の設計,建設,維持管理及び運営に, 民間の資金とノウハウを活用し,公共サービスの提供を民間主導で行うことで,効率的かつ効果 的な公共サービスの提供を図るという考え方をいう。PPP は Public Private Partnership の略 で,公民が連携して公共サービスの提供を行うスキームをさす。PFI は PPP の代表的な手法で ある。(日本 PFI・PPP 協会 HP)。

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合,ベースラインの境界はそれに従って修正する必要がある。 最小限度の閾値およびその他の免除 2.25 環境配慮の政府コミットメントの報告と同様に,最小限の閾値やその他の免除 もまた持続可能性報告に関しても適用される。 基礎データの入手可能性:重要な省略および見積りの使用 2.26 最小限の報告要件を満たすための情報が入手できない場合,文書化された明確 な方法論によって推定値を使用しなければならない。組織は記述や組織のウェブサイ トなどで詳細を提供する必要があり,そこではデータ収集を改善するためにどのよう な計画が立てられているかを説明しなければならない。 2.27 堅固な見積りが不可能であり,また情報や結果データの重要な欠落が生じた場 合は,組織のウェブサイトなどで説明の記載をしなければならないし,そこでデータ 収集を改善するためにどのような計画が立てられているのかを説明しなければならな い。 2.28 見積りの方法論は,最も適切なものを使用できることを保証するために,報告 組織の裁量に委ねられる。炭素排出量の見積りに関する指針と助言は,Defra によっ て「環境影響の測定と報告:ビジネスのための指針」(Defra 2015)で公表されてい る。 報告,会計方針,組織の境界の変更 2.29 排出量, 廃棄物および/または有限資源の報告方法または計算方法に重大な影 響を及ぼす会計方針または境界の変更は,説明文書,または組織のウェブサイトなど で読者の注意をひかなければならない。組織は,また,報告された情報の再編成に関 するいかなる方針も述べなければならず,これは環境配慮の政府コミットメントが定 めた指針と一貫していなければならない。 2.30 修正された場合,比較目的で新しい方針または境界を使用して,データが入手 可能な場合には,前年の数値を再表示する必要がある。 前期数値の修正 2.31 場合によっては,省略や計算の誤りなどの要因が出てくる可能性があり,その

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結果,前年度の公表数値に重大な変更が生じる。 そのような状況では,前期間の数値 は年次報告書・財務諸表に再表示されなければならず,変更の性質はより詳細な説明 や,組織のウェブサイトなどとリンクして,読者の注意を引く必要がある。一般に, 重要性の評価は,方針ではなく会計上の判断の問題である。組織との関係で,助言は, 最初に会計担当者から求められるべきである。 2.32 組織は電力の換算係数の変更に合わせて過去の電力データを更新する必要があ る。電力のグリッドの5年間の移動平均値は廃止されている。全ての換算係数は,現 在は特定の年の単一の平均係数に基づいている。これにより組織はグリッドからの最 新の排出量の推定を表す要因を使用して報告することができる。過去5年間の平均値 (過去5年間の平均的な炭素強度の高いグリッド・ファクターを占める)と1年間の 平均データセットの間に顕著な差があるため,この変化を反映させるために,5 年間 のグリッド移動平均に基づく以前の報告は再編成する必要がある。 重要性の概念の適用 2.33 組織は,可能な限り正確さを伴って,最小要件の全てを説明すべきである。重 要性の概念は,読者にとって,公正に表示された見方を提供することに関連して,報 告または報告の改訂の決定にのみ適用されるべきである。データが不完全であるとい う懸念がある場合,組織のウェブサイトでより詳細な説明にリンクさせて,文章で注 記がなされるべきである。 複数の占有サイトを含む共有サービスと施設 2.34 報告組織が他の組織とサービスまたは施設を共有する場合,共有される持続可 能性データを異なる会計境界との関連でどのように分割すべきかについて考慮すべき である。これが2つ以上のパブリックセクター組織に関連する場合,その方法は一貫 性を確保するために共同で合意されるべきである。合意された方法は監査目的のため に適切に文書化されるべきである。 2.35 異なる組織間の影響が重要な場合は,組織ごとに実際の消費量を測定し,適切 に帰属されるコストを確保するために措置を講じる必要がある。 2.36 環境配慮の政府コミットメントの下で,組織が複数の占有サイトの一部であり, それがサブメーターなどによって分離できない場合,以下の指針を採用すべきである。 ・不動産関連の目標に関する全てのデータは,建物全体のレベルで収集する必要

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がある。これは他の政府部門と共有するスペースの所有者が,全ての占有者のた めに報告する必要があることを意味する。部門は対象となる建物の詳細(名前, 町,平方メートルでの純内法面積,フルタイム当量)を照合する予定である。 ・建物が民間部門と共有されている場合,報告組織は,利用可能な最高品質の データを使用して,影響の中央政府分担を報告するだけでよい。 ・小規模の占有者による個々の占有が 1,000m2 より大きく,20人以上のスタッ フを支援しているか,または報告組織の総不動産の20%を超えており,両当事者 が同意する場合,プロジェクトのデフォルトから変えるための申請が提案され, そして組織は占有レベルで報告する可能性がある。 ・報告された非財務データは財務データ(例えば,電力が再充電される電力消費) とは異なる基準で設定される場合がある。 このような状況において,組織は年次報告書における持続可能性の業績について透 明性があるという観点で,組織にとって最良の形式の報告を検討すべきである。 第三者によって提供される情報 2.37 第三者はしばしば以下を含む持続可能性報告に必要な情報を提供する。 ・旅行業者を通じて得られる旅行に関連する炭素データにかかる旅行業者。 ・廃棄物の詳細を提供する廃棄業者。 ・有限の資源の報告にかかる水とエネルギーの供給者。 2.38 このような情報を利用しているパブリックセクターの組織は,この指針の要求 事項に従って計算されていることを保証しなければならない。また監査要求事項を満 たすのに十分な品質であることも保証する必要がある。 2.39 大規模な契約組織にとって,契約者からの持続可能性情報の入手は困難をもた らすかもしれないと認識されている。結果として,情報の隙間が存在する場合,これ らは将来のギャップを埋めるための提案と共に,解説において認識されるべきもので ある。 監査と精査 2.40 報告された数値の外部保証および検証は,持続可能性報告に要求されていない が,業績に関する堅牢なデータを生成するための正しい手順が行われることを確保す るために,全ての組織が関連する監査または精査の取り決めを持つことが重要である。

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この取り決めは,持続可能性報告の一部として含まれる財務および非財務データ,な らびに情報の品質に関する適切な保証を組織の上級管理者に提供すべきである。内部 の取り決めには以下を含むべきである。 ・データを記録し報告するための適切な方針と手順,これは最小限の要求事項に ついての指針と一致し,実際に適用される。 ・データの品質を確保するための適切なシステムとプロセス,手動による介入と データソースの数の最小化 ・関連するスタッフが信頼できる持続可能性情報を作成する技術を有することを 確保するための取り決め ・内部統制と検証の堅牢なシステム 2.41 持続可能性報告および内部保証に関する組織の取り決めは,企業統治声明書に おける既存の責任によって取り扱われるべきである。外部監査人は,年次報告書・財 務諸表に含まれる情報と持続可能性報告についての説明が,財務諸表監査の一部とし て得た情報と矛盾する場合の例外により報告する。 〈以下,第3・4・5章 中略〉 第6章   さらなる報告 最小限の要件を超えて報告を拡張する 6.1 環境情報の報告境界は財務報告ガイドラインに従わなければならない。最小限 の報告要求事項には,報告組織の全てのスコープ1および2の排出量,並びに出張に のみ関連するスコープ3の排出量が含まれる。しかし,持続可能性に関する自らの内 部業績を管理する上で組織がより熟練するにつれて,影響力のある分野で持続可能性 をどのように向上させることができるかを考慮する必要がある。パブリックセクター におけるこのような分野の1つは,調達を通じて,もう一つは政策を通じて業績に影 響を与えている。 6.2 この指針で定められた年次報告書における持続可能性の業績の報告範囲は,温 室効果ガス排出量,廃棄物の最小化と管理,天然資源消費,生物多様性行動計画(概 要解説), 持続可能な調達(概要解説)に限定される。第2章で述べたように,最小 限の要求事項で取り扱われていない他の多くの持続可能性への側面があると認識され る。報告能力がさらに向上した組織は,例えば,経済的,環境的,社会的要因に対応 するために取られた行動によって,組織の戦略の提供がどのように支援され,またそ

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れに依存しているかなど,その他の報告書またはウェブサイトで,追加的な項目を加 えたいと望むかもしれない。この分析を通じて,組織は社会的またはその他の重要な 環境影響に関連する業績が財務成果とどのように関連しているかを記述することもで きる。 〈以下,省略〉

Ⅳ 考     察

1 英国のパブリックセクターの持続可能性報告指針の特徴 前章で紹介した指針には,特筆すべき重要な特徴がある。まず,この指針は年度ごとに 毎年公表され,継続的に更新され,内容の拡充や見直しが図られている点である。所定の パブリックセクターの組織に持続可能性報告を義務付ける法令制度のもとで,環境監査委 員会の要請を受けた会計検査院が法令遵守状況のレビューを行い,その結果の報告を通じ て,指針の実施に対する監視体制が整っている制度的プロセスも特徴的といえる。 次に,この指針は,要求事項のみを限定列挙するに留まらず,最善の実務への取り組み を奨励している点である。この指針は,1 )最小要件,2 )最善実務指針,3 )情報の作 成に採用されるべき原則を提供し,報告組織に対して,最小要件を超えた,積極的で自主 的な取り組みを奨励するように編集されている。 3つ目に,指針の内容を導入する際に報告組織内で生じる負荷に配慮しつつ,将来の開 発を確実にさせる取り扱いが随所に見られる点である。例えば,パブリックセクターの組 織においてまだ十分な報告体制が整っていない場合,その旨を説明し,新規のシステム開 発を含めた対応を促している。情報が不足している場合には,その状況の解消のための将 来の対応策や,情報開示を可能にするための行動計画を記述させるよう求めている。 4つ目に,環境配慮の政府コミットメントという環境政策への遵守を軸として,その他 の関連する環境政策の適用ともうまく連携が図られている点である。Defra は持続可能性 報告を推進する責任部署として位置づけられており,一方,パブリックセクターの各報告 組織は,持続可能性報告の際に,Defra がこれまで公表してきた環境政策推進のための様々 な文書に依拠するよう求められている。このことにより,パブリックセクターの各部門で, 指針の内容の実践や考え方にばらつきが生じないように首尾一貫した方針が掲げられるこ とになり,また,各部門での持続可能な発展への貢献の有効性の測定や評価にも結びつく 可能性がある。その結果,Defra を軸とした環境政策の実効性が向上することにつながる

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かもしれない。 5つ目に,年次報告・財務諸表に,持続可能性情報の開示を統合させる統合報告を要請 している点である。すなわち持続可能性報告のために,単独の報告媒体を追加的に編集し て発行することを要請していない。むしろ組織の年次報告・財務諸表の中で,持続可能性 情報を開示させることを通じて,組織の持続可能な発展に向けた貢献の全体像を簡潔に分 かりやすく読者に提示し,詳細な部分は他の既存の報告を参照させて,統合的な報告とな るように配慮されているといえる。また,財務報告と持続可能性報告の境界の一貫性を求 めており,報告全体の整合性を重視していることが伺える。 6つ目に,持続可能性報告の信頼性について,主な開示の媒体となる年次報告での財務 諸表の信頼性に準じた比較的高いレベルが求められていることである。例えば,持続可能 性報告の適正表示,首尾一貫性,正確性について,財務報告作成の原則と同様の原則が採 用されていることが伺える。持続可能性に関連する財務情報の要求事項については,財務 報告との関連についての表示や説明を加えることを求めており,報告の有用性を高める配 慮が伺える。また,持続可能性報告に対する保証は求められていないものの,財務報告の 内容の首尾一貫性に問題が生じた場合,必要に応じて,監査人が持続可能性報告の内容を 吟味することが示されている。このようなアプローチは財務諸表監査における非財務情報 の取り扱いの一環ともいえるが,持続可能性報告の正確性や適正な表示が間接的に求めら れているともいえる。 7つ目に,開示情報の比較可能性にかなり留意している点である。情報開示の方針や境 界の変更をした場合の説明や,業績指標の基礎となる基準年の再編成をした場合の過年度 の数字を修正再表示することなど,財務報告の際の考え方や手続きに準じた,厳密な取り 扱いを求めている。そして情報開示の方針,開示対象となる範囲や境界についての継続性 を重視している。業績指標の3年分の経年比較や,ベンチマークを可能とするための手続 きとしての,常勤職員数や専有面積数で対象数値を割って求めた正規化した数値の使用や 情報開示など,読者が開示情報を経年比較でき,進捗を評価できる表示を求めている。 8つ目に,重要性の判断基準の適用を求めており,しかも持続可能性の観点からではな く,財務的視点から報告の重要性を判断することが求められている点である。とりわけ重 要性の判断において,会計担当者に相談することを求めており,持続可能性報告の重要性 の判断に会計担当部署がコミットすることで,年次報告・財務諸表全体の信頼性を求めて いるといえる。 9つ目に,報告に見積もりの要素がある場合の恣意性を排除することを求めている点で

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ある。例えば,共有設備や建物について占有レベルで按分計算することや,個別にメータ がない場合の扱いなど,具体的に規定し,それぞれの政府機関が異なる見積もりの手続き や考え方を採用しないように,Defra の指針の適用やその他政府のルールを参照すること を求めている。 10番目に,組織が自己分析を行うことを重視し,読者が理解可能な説明を提供するよう 求めている点である。これはステークホルダーへの説明責任の観点,また,持続可能性の 業績管理やリスク低減の観点から要請されているといえる。特に,KPIs を利用した説明, 正規化された指標の利用,SDGs の観点と結びつけた業績の表示など,分析の説明の際の 工夫を規定している。このような分析や表示をもとに,読者が報告組織の持続可能性への 貢献の進捗度を測ることが可能となる。 最後に,パブリックセクターの政策,調達,事業の3つの側面で環境とどのように関係 しているかを,リスク管理の点から報告を求めている点である。民間セクターに報告義務 を課している温室効果ガス排出に関する報告の領域よりも幅広く,水,生物多様性,廃棄 物などに関連した環境面の項目を扱っており,パブリックセクターが持続可能性報告の手 本を示す意味合いが伺える。また持続可能な調達や持続可能な建設の分野で,政府全体で 適用される共通のフレームワークや基準を適用することを求めており,これらの分野にお ける影響の大きさに配慮した取り扱いも見られる。 2 英国のパブリックセクターの持続可能性報告指針の課題 この指針は,パブリックセクターの持続可能性の業績を向上させ,透明性と説明責任を 向上させる可能性があると評価できるものの,まだ重要な課題が残されているといえる。 まず,この指針は,持続可能性報告のための指針であるにもかかわらず,温室効果ガス排 出量を中心とした環境面の情報のみを扱っており,将来的に社会面の情報も扱うことに検 討の余地がある。この指針では,労働・雇用や人権などの社会情報の報告を扱っておらず, 社会性に関する情報開示の数量的指標や記述項目への言及が見られない。 そこで,パブ リックセクターが,経済,環境,社会の3つの業績指標をバランスよく報告する場合の持 続可能性業績指標の例として, 前述の GRI が試験的に公表したパブリックセクターの持 続可能性報告のための補足文書を参照してみたい(図表3参照)。

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