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JAIST Repository: オープン・イノベーション化に伴うR&Dの効率化構造の変容に関する分析

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Academic year: 2021

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JAIST Repository

https://dspace.jaist.ac.jp/ Title オープン・イノベーション化に伴うR&Dの効率化構造の 変容に関する分析 Author(s) 大塚, 俊; 渡辺, 千仭 Citation 年次学術大会講演要旨集, 23: 542-545 Issue Date 2008-10-12

Type Conference Paper

Text version publisher

URL http://hdl.handle.net/10119/7621

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す るものです。This material is posted here with permission of the Japan Society for Science Policy and Research Management.

(2)

0 500 1000 1500 2000 2500 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 研 究 開 発 費 武田 第一三共 アステラス 0 20 40 60 80 100 120 ラ イ フ サ イ ク ル の 短 縮 率 5年前と比較 100.8 91.3 93 90.6 90.6 88 87.4 83.3 82.7 76.5 72.6 59.9 鉄鋼自動 車 非 鉄・ 化学 機械 情報 通信 電子 デバ 精密 機器 その 他電繊維 食品 家電

2A27

オープン・イノベーション化に伴う

R&D の効率化構造の変容に関する分析

○大塚俊, 渡辺千仭(東工大社会理工学)

1. 序

1.1. 研究の背景 従来の研究開発は社内の技術を活用し、製品開 発を行っていく、垂直型研究開発が主流であった。 しかし近年、技術の高度化・複雑化が進んでおり 技術開発のコストは上昇傾向にある(図1)。ま た他分野間の技術の融合によるイノベーション の創出などといった状況が生まれてきている。一 方、顧客層の多様化・顧客ニーズの多様化により、 製品のライフサイクルは短縮化傾向にあり(図 2)、企業は短い時間で製品を開発していかなけ ればならない状況になってきている。そこで研究 開発から製品化まですべて自社内で行う垂直型 研究開発から、他社の技術を取り入れ研究開発効 率・スピードを上げるオープン・イノベーション が注目されている。 図2.ライフサイクルの短縮率 オープン・イノベーションを実践している例と して、IBM、P&Gなどの欧米の企業があげら れる。特許行政年次報告書 2008 年度版によると、 IBMではオープン・イノベーションを企業の明 確な方針として打ち出しており、社内と社外の両 方のソースを自社の研究開発機能と捉えて、社外 の技術を活用した研究を進めている。P&G社で は 2003 年から「コネクトアンド デベロップメ ント」と呼ばれる、社外リソースの力を商品開発 に生かす戦略を推進しており、社外技術から生ま れた製品の割合を 50%以上にまで高めるという 数値目標を設定している。P&G社はこのコネク トアンド デベロップメントによりR&D 効率が 約60%向上し、対売上高研究開発費率も 30%近 く低下したという調査結果もでている。 1.2. 既存研究 富士通総研 経済研究所の研究レポート「オー プン・イノベーションと研究成果の無償公開」絹 川真哉(2008)によれば、IBM のビジネスモデ ルを1990 年代以前のクローズド・イノベーショ ンと1990 年代以降のオープン・イノベーション とで分けたときに、共同研究のあり方が変化して きている。図3は Dittrich, Duysters , and Man ( 2007 )がまとめた「利用戦略」と「探求戦略」 の共同研究ネットワークの違いである。 IBMが行う共同研究はオープン・イノベーシ ョン化が進むにつれ、1990 年代半ばを境に、「利 用戦略」から「探求戦略」へと移行し、2000 年代 にはその傾向がさらに強まっている。 図1.主要製薬産業の研究開発費推移

(3)

「利用戦略」では特定の相手と、従来からの得 意分野の開発が目的であるため、提携相手と閉じ たネットワーク内で対応が可能であり、クローズ ド・イノベーションに近い。 一方、「探求戦略」では、新技術分野の開発が目 的であり、特定企業と閉じた関係では対応できず、 外部のオープンなネットワークにアクセスして 新しい提携相手を見つけ出す必要があり、提携相 手も流動的である。よってオープン・イノベーシ ョンに近い。 IBMのオープン・イノベーションへの転換は、 共同研究開発の技術分野とスタイルにあらわれ ている。またクローズド型では、2企業間の提携 が多かったが、オープン型に移行するにしたがっ て複数企業による提携が増えてきている。また、 IBMは研究結果の無償公開を行っているが、国 際戦略上の重要性がより高いと思われる技術は、 特許取得前に無償公開されていない傾向がある ことが示唆されており、これは、IBMがオープ ンな戦略だけでなく、従来型のクローズドな戦略 を組み合わせた戦略をとっていることが推測さ れる。 1.3. 仮説 以上の先行研究から、日本企業においても、オ ープン・イノベーション化が進めば、共同研究に その性質の違いが現れると考えられる。また、I BMの例から示唆されるように、重要な発明は公 開される場合も特許取得しようとするクローズ ドな戦略の重要性も減っていないことから、重要 な共同研究の成果は、共同特許出願として現れる と考えられる。そこで、日本企業の特許共同出願 人を調べ、その性質を調べることにより、日本企 業のオープン・イノベーション化が進んでいるか を知ることができる。また、その結果とR&D効 率を比較することにより、オープン・イノベーシ ョンとR&D効率の関係について分析すること ができると考えられる。 2. 分析フレームワーク 2.1. 分析方法 本稿では、まず東証 1 部上場企業のうち、日経 中分類で電気機器に属する企業のR&D効率を 調べる。R&D効率の優れた企業と企業の共同出 願人を調べ、オープン・イノベーションへの移行 具合を調べ、R&D効率とオープン・イノベーシ ョンの関係について考察する。 電気機器業界の研究開発費と営業利益の関係 を見るために回帰分析する(図4)。近似直線よ り上にいる企業は研究開発費に対し営業利益が 多く、研究効率が良いと考えられる。研究効率が 優れていると推測される企業として株式会社デ ンソーとシャープ株式会社、劣っていると推測さ れる企業として株式会社日立製作所と東芝株式 会社を取り上げ、共同出願とR&D効率について 調べていく。 利用戦略 探求戦略 提 携 相 手 を 変 えるスピード 新しい提携相手が共 同ネットワークに参 加 す る こ と が 少 な く、提携相手を変え るスピードは遅い 多くの新しい提携相 手が共同ネットワー クに参加するため、 提携相手を変えるス ピードは速い 資本関係がない場合 が多い 提 携 相 手 タ イ プ 同様の技術・ビジネ ス分野 異なる技術・ビジネ ス分野 提携タイプ 資本関係がある場合 が多い y = 0.7081x + 7412.9 R2 = 0.8385 -50000 0 50000 100000 150000 200000 250000 300000 350000 0 100000 200000 300000 400000 500000 研究開発費 営 業 利 益 シャープ 東芝 日立 デンソー 図3.「利用戦略」と「探求戦略」の違い 図4.営業利益と研究開発費(2006)

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デンソー シャープ 日立 東芝 傾き 0.046 0.088 0.051 0.045 R2 0.8868 0.8425 0.1563 0.1477 2.2. データ構築 デンソー、シャープ、日立、東芝の 4 社のR& D効率として (R&D効率)=(営業利益)/(研究開発費) を用い、R&D効率の推移を調べる。 また同4社の 2006 年と 1998 年の特許共同出願 から共同出願人を調べる。このデータについて、 それぞれ、 ① 共同出願人が異業種であるか否か ② 共同出願人が大学・研究機関であるか否か ③ 前年に同じ出願人と共同出願しているか否か (新しい共同出願人であるか否か) を調べる。 3. 実証分析 3.1.分析結果 R&D効率の推移については図5、共同出願人 の各項目の割合については図6のようになった。 図5.R&D効率の推移 図6.共同出願人の割合(2006) 3.2.結果の解釈 図5において 2006 年を見るとデンソー、シャ ープは日立、東芝よりR&D効率が優れているこ とがわかる。 表1はそれぞれの企業のR&D効率を線形近 似したときの直線の傾きとR2である。R2が大き いデンソー、シャープでは近似直線が有意である と考えられるので、R&D効率は改善されている と考えられる。 表1 R&D効率推移の近似曲線の係数とR2 図6では、①「共同出願人が異業種である割合」 の項目を見ると東芝が少ないものの他はほぼ同 じ水準である。②「共同出願人が大学・研究機関 である割合」、③「新しい共同出願人である割合」 の項目ではデンソー、シャープがそれぞれ他社に 対し高い水準をもっていることがわかる。よって ②、③の項目でそれぞれ高い水準を持っている分 だけダイソー、シャープは日立、東芝に比べオー プン・イノベーションへの移行が進んでいると考 えられる。 3.3.考察 分析の結果、オープン・イノベーションへの移 行が進んでいると考えられる企業のほうが、R& D効率が優れているという結論になった。このこ とはオープン・イノベーションがR&D効率に重 要なファクターであるという知見に一致する。 次にR&D効率の推移とオープン・イノベーシ ョンへの移行について考察する。 図7、8、9 は4企業の①、②、③の各項目の割合の推移であ る。 -0.60 -0.40 -0.20 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 R & D 効 率 デンソー シャープ 日立 東芝 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% ① ② ③ デンソー シャープ 日立 東芝

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①の項目を見るとシャープが大きく上昇してお り、②の項目ではデンソーが大きく上昇している。 しかし、③の項目ではすべての企業で減少してい る。よってこのデータからはこれらの企業が本当 にオープン・イノベーションに移行しているかは わからなかった。 4. 結論と今後の発展 4.1. 結論 以上の考察から、オープン・イノベーション型 により移行していると考えられる企業の方がR &Dの効率はよい。 しかし、日本の企業がオープン・イノベーショ ン型に本当に移行しているかどうかは今回の研 究では明らかにすることができなかった。 4.2.今後の発展分析 本稿の分析では、対象企業が4企業と少なかっ たために、データに偏りが生じていると考えられ る。今後、対象企業を増やし同様の分析を進める ことにより、より偏りのないデータが採取できる と考えられる。 また共同出願人を調べたのも 1998 年と 2006 年 のみにとどまったため、間にどのような変化が生 じたかを無視してしまっている。 データ数を増やすことにより、本稿では明かす ことのできなかった日本企業のオープン・イノベ ーション型への推移がおこっているか解明され ると考えられる。 また今回は定性的にR&D効率とオープン・ノ ベーション化との関係を考察したが、より発展的 に分析していくためには統計的手法を用い、定量 的に両者の関係を調べていく必要がある。その際、 今回はR&D効率をオープン・イノベーション化 のみで計ろうとしたが、実際には様々な要因があ ると考えられる。よって更に厳密にR&D効率を 研究していくには、オープン・イノベーション化 の指標として今回のデータを用い、R&D効率を 説明係数、オープン・イノベーション化の指標と その他の要因と考えられるもの従属変数として 用いて、重回帰分析などによって分析していく必 要がある。 参考文献 1.特許庁,特許行政年次報告書 2008 年版,2008. 2.絹川真哉,「オープン・イノベーションと研究成果の 無償公開」,富士通総研 経済研究所 研究レポート,2008 3.調査資料,「オープン・イノベーションと知的財産を 巡る現状等について」,知的財産戦略本部 知的財産による 競争力強化専門調査会,2008

4 . Dittrich, K., G. Duysters, and A-P de Man, “Strategic repositioning by means of alliance network: the case of IBM”, Research Policy, Vol.36, pp.1496-1511 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 1998 2006 デンソー シャープ 日立 東芝 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 1998 2006 デンソー シャープ 日立 東芝 30% 40% 50% 60% 70% 80% 1998 2006 デンソー シャープ 日立 東芝 図8.②共同出願人が大学・研究所の割合の推移 図7.①異業種の割合の推移 図9.③前年に出願してない共同出願人の割合の推移

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