社会系教科教育学会『社会系教科教育学研究』第20号 2008 (pp.1-9)
社会的読解力を育成する社会科授業の構想
A Design of Social Studies Lessons to Develop Social Reading Literacy
はじめに 2003年に行われた経済協力開発機構(OECD) による国際学習到達度調査(PISA)の結果,厂読 解力」の得点が平均程度まで低下していることが 明らかになり1),社会科の授業研究においても, 匚社会的読解力の育成」が指摘された。 2007年に 実施された全国学力実態調査では,このPISA型 読解力の実態を捉えようとするBの問題2)が注 目された。こうした新しい要素を加味した学力を 育成するためには,学び方や体験中心であったり, 知識を注入したりするだけの社会科授業では不十 分である3)。こうした学力は,子ども同士の学び 合いにおいて,社会に関する科学的な知識を構造 化していく過程で高めることのできるものである。 社会科の授業において,教師の役割は,指導性を 発揮して,子ども一人ひとりの学習を成立させ, 社会科として必要な力を身に付けさせ,社会を認 識させていかなければならないと言われている几 また, 2008年2月に公表された新学習指導要領案 においても,匚地域社会の社会的事象の特色や相 互の関連などについて考える力,調べたことや考 えたことを表現する力を育てるようにする」こと が各学年の目標として明記されている5)。これま でも言われてきたように一方的な指導に終わるの ではなく,学級という集団のなかで,子どもたち が自らの考えを出し合い,高めあっていく授業の 中で,社会科としての読解力(社会的読解力)を 発揮し,高めていくことが求められている6)。 そこで本論では,子ども一人ひとりの個の学習 が成立し,子どもたちが自らの考えを出し合い, 社会的読解力を高め合っていく授業設計の理論を 提案し,授業実践,評価を行い,その有効甌を検 -I− 馬 野 範 雄 (大阪教育大学) 井 上 伸 一 (大阪教育大学附属池田小学校) 証していきたい。 I 社会的読解力を育てる小学校社会科授業の あり方 1 社会的読解力 一般に社会認識が広がった,深まった,高まっ たとはどのような児童の変容が見られたときなの か,知識の構造から整理する。岩田(1991)は, 問いと知識の関係から,知識を構造化し,習得さ れる知識の違いを明らかにし,事実関係的知識と 価値関係的知識(規範的知識)に分類した‰そ して社会科の基礎・基本として,概念的知識,説 明的知識,分析的知識を挙げている8)。また,北 (2007)は知識のピラミッド型構造図を示し,概 念的知識,説明的知識を上位の知識としている9)。 これらの知識は,他の社会的事象への応用・転移 が可能となり,活用できる知識である。しかしな がら,それらの知識の習得は,調べただけやそれ をまとめただけでは,習得が不可能な知識である。 授業の中で調べたことの中から,整理され,蓄積 された具体的な知識をもとに,それぞれの社会的 事象が意味づけられ,関連づけがなされなければ こうした上位の知識は習得されない。さらに規範 的知識は蓄積された知識をもとに合理的意志決定 され習得される1,)ので,規範的知識の質は,蓄 積された知識の質そのものが問われるのである。 決して知識量の多さだけによって規範的知識の質 が決定されるのでなく,整理,分析,説明され, 抽象化された知識によって価値判断することで, その質が高め一方,上位のられ知識や規範的知識は子ども一人だた規範的知識となる。 けの学習では習得は難しい。クラスの中で,子ど
もたち一人ひとりが追究活動を行い,その追究活 動によって獲得された知識を,多面的,合理的, 批判的に交流し,探究11)し合うことによって, 知識の質的な高まりが期待される。はじめは主観 的な社会認識であっても,交流し,探究し合うこ と昨よって,客観的な社会認識にいたる。また, 梶田(1994)は,教育目標の分類体系(タキソノ ミー)を示し,「知識」「理解」「応用」「分析」 「総合」「評価」の重要性を指摘している气知識・ 理解の能力は,主に記述的知識の獲得に必要であ り,応用・分析の能力は,分析的知識や説明的知 識に必要であり,総合・評価の能力は,概念的知 識や規範的知識に深
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くかかわっていると考えられ111mm
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深まり る。 以上のことを整理すると,社会科学習は,子ど もの主体的で協働的な追究活動において,自らの 匚知識」匚理解」「 ̄応用」「分析」匚総合」「 ̄評価」と いった諸能力を駆使して社会的事象に対する知識 を深め,さらに子ども同士の交流をとおして,合 理的,批判的に高め合い,上位の知識によって概 念化,抽象化し,価値判断していくプロセスであ るといえる。社会的読解力とは,このプロセスに おいて駆使され,さらに高まっていく社会的思考 力や判断力,表現力などの総合的な諸能力である といえる。これを図で表すと,図1のようになる。に
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高まり 図1 社会的読解力を育成するモデル −2−2 社会的読解力を育てる学習過程 社会認識の高まり,深まりは,知識の構造化と 子ども一人ひとりの追究活動,子ども同士の交流 による探究し合いによって可能となる。それが可 能となるには,子ども一人ひとりが社会的読解力 を駆使し,さらに高めていくことが必要である。 したがって,それを意図した学習過程を計画し, 実践しなければならない。 (1)目標の明確化 目標の明確化の必要性についてはこれまでも指 摘されてきた气目標に書かれてあるのは,授業 後の一人ひとりの子どもの姿である。したがって 個の学習が成立した具体的な姿で明記しなければ ならない。 (2)課題設定の場の構成 目標の具現化を図るためには,子どもの興味・ 関心を高め,問題発見などその授業の課題や活動 の見通しを持つことが必要である。そのため,授 業の課題設定段階では,課題提示を工夫しなけれ ばならない。 (3)自力活動の場の構成 課題設定の場で興味・関心を高め,課題や活動 の見通しを持つことができても,子ども一人ひと りが学習活動に参加することがなければ,個の学 習は成立せず,目標の具現化は不可能である。し たがって,提示された課題について,子どもたち 一人ひとりが自ら考え,工夫して取り組む場が必 要となる。つまり,観察や資料活用などを発揮し, 事実判断や推理を行うといった主体的な問題解決 力を育成するために,目標達成に向けた自力活動 の場を構成しなければならない。この活動は,一 人ひとりの子どもが,交流によって探究し合うた めの前提となるものである。 (4)交流活動の場の構成 自力活動の場で意識された子どもの考えを,子 ども同士がお互いに交流し,探究し合う場を構成 しなければならない。自力活動の成果を出し合う ことによって,お互いの考えのよさを認め合い, さらに高め合っていくことが可能となる。その際, 次の三つ活動を構成することによって,知識の構 造化が図られ,交流が容易となる。 ① 位置づけ 交流活動の中で,匚同じような意見は,ないか な」匚それぞれの意見は,どんな言葉でまとめる といいかな」というように,共通性や類似性に着 目させ分類するなど社会的事象を位置づけ,類型 化を促す② 。意味づけ 交流活動の中で,匚この立場の人たちは,どう してこのように考えたのかな」というように,そ れぞれの考え方の意味や理由を問い,因果関係を 明らかにするといった論理的な思考を促す。 ③ 関連づけ 交流活動の中で,厂友だちの考えを聞いて,改 めて考えたことはないかな」「 ̄自分が一番賛成で きるのは,どの意見かな」というように,自分の 意見と他の意見とを比較しながら,意見同士の差 異や関連性に着目させ,概念化を促す。 (5)評価活動の場の構成 学習の終末に,学習活動や内容に対する感想を 話し合ったり,ノートやワークシートに記述した りする評価活動の場を構成しなければならない。 この評価活動の場では,自他のいろいろな立場か ら追究活動の結果を交流することを通して,社会 的事象を多面的に見直し,社会認識を深め,価値 判断することができる14)。つまり,交流の中で, 自分の意見や考えを価値づけることを促すのであ る。その際,「 ̄一番,大切だと思うことは,∼」 といった発問や,厂はじめ∼と思っていたけど, 調べてみると∼ということがわかった。」匚∼とい う友だちの意見は参考になった。しかし,自分は ∼だと思う」「∼という友だちの意見は参考になっ た。だから∼にちがいない。」というような発表 の仕方を指導したり,書き出しの言葉を指導した りすると,その活動がより活発になり,自己評価 の学習効果を高めることができる。 −3−
II
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健
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社会
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おけ
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々の
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つ い て , 地 域 の 安 全 を 守 る 関 係 諸 機 関 が, 相 互 に 連 携 し な が ら, さ まざ ま な 働 き を し て い る こ と を, 自 分 だ ち と の か か わり で 調 べ, 働 き につ い て 考 え るこ と を 中 心 に単 元 を 構 成 し て い る。 本 授 業 で 事 例 と し て 取 り 上 げ る 厂こ ど も110 番 の 家 」 は, 学 校 , 警 察 , 家 庭 と 連 携 , 協 力 し , 地 域 ぐ る みで 子 ど も を守 る ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 で あ る。 小 宮(2005) 15) は, 犯 罪 に 強 い 三 要 素 と し て , 匚領 域 性 」 匚抵 抗 性 」 厂監 視 性 」 を あ げ , こ れ ら の 要 素 が そ ろ って ハ ー ド 面 , ソ フ ト 面 共 に 高 け れ ば 高 い ほど 犯 罪 機 会 が 減 る と し, こ れ ら三 要 素 があ っ て こ そ 地 域 の 安 全 は守 ら れ る と し て い る 。 厂こ ど も110 番 の 家 」 運 動 は, そ の 点 か ら も地 域 の 安 全 を 守 る シ ス テ ム を 補 完 す る も の で あ る。 子 ど も た ち の身 近 で は, 警 察 だ け で も, 家 庭 だ け で も, ま た学 校 だ け で も難 し い 安 全 の問 題 が あ る。 地 域 の 安 全 を 守 る そ れぞ れ の立 場 の人 び と が 協 力 し, そ の 連 関 の中 に子 ど も自 らが 主 体的 に 関 わ る こ とで , 地 域 の 安 全 詮 はよ り 高 ま る ので あ る。 本 単 元 は, 地 域 の 安 全 を 守 る取 り 組 み に つ い て , 警 察 , 学 校 , こ ど も110 番 の 家 そ れ ぞ れ の 立 場 か ら そ の工 夫 や 努 力 につ い て 考 え る こ とを 通 し て , 人 々 の安 全 を 守 る た め の諸 活 動 に つ い て の社 会 認 識 を 形 成 し , 自 分 と 社 会 と の か か わ り の 中 で 客 観 的 に 価値 判 断 で き る能 力 を 育 成 で き る よ う に す る。 2 授業 モデ ル (1) 単 元 第 4学 年 単 元 名 厂こど もIIO番 の 家」(児童37名) (2) 単元 の目標 ○ 匚こど もIIO番 の家」 運 動 に 関心 を もち, 地 域 の安全 を守 る地域 の人 びとや警 察 の取 り組 みを 調 べ, 子 ど もの安 全を守 る ために それぞ れ工 夫や努力 を しな が ら, 相互 の連携を して い るこ とを 考え, そ れぞ れの立場 の人 びとが 子ど も たちの安全 を守 る ために協力 ・連携 し てい る ことを理 解す ることが でき るよ うにす る。 ○ 匚こ ど もIIO番 の家 」 運動 によ って, 地 域 全 体が関 わ ることで 自分や人 び との安全 が保 だ れる こと のよさに気 づ き, 地域 社会 の一 員 と して適切 な判 断がで き るよう にす る。 (3) 指導計 画 表 1指 導計 画参照 表 1 指 導 計 画 時 段 階 主 な 問 い 目 標 資 料 I 情 報 の 収集 情 報 の比 較 学 習 問 題 の 発 見 予 想 の 提示 ・ 池 田 市 のど こ で 子 ど も へ の 被 害 が多 い で す か。 ・ 池 田 市 の子 ど も へ の被 害 状 況 か ら ど の よ う に し た い で す か。 ・ 子 ど も の安 全 を 守 っ て い る の は ど ん な 人 た ち で す か 。 ○ 統 計 資 料 , 地 図 資 料 を 調 べ, 池 田 市 の 犯 罪 の実 態 を 知 り , 警 察 署 や 地 域 の人 び と , こ ど も110 番 の 家 そ れ ぞ れ の 子 ど も の安 全 を 守 る取 り 組 み につ い て , 関 心 を 高 め る。 ・ 池 田 市 周辺 の 子 ど も へ の 危 害 分 布 図 ・ パ ト カ ー の 写 真 ・ 校 章 の図 ・ こ ど も110 番 の 家 の 旗 写 真 2 3 4 仮 説 の設 定 仮 設 の 根 拠 と な る 資 料 の収 集 ・ 池 田 市警 察 署 は子 ど もを 守 る た めに ど ん な こ とを し て い ま す か。 ○ 池 田 市 警 察 署 を 見 学 し , 子 ど も の安 全 を 守 る取 り 組 み につ い て , 関 係 諸 機 関 と 連 携 し な が ら取 り 組 ん で い る 様 子 を 調 べ る 。 ・ 池 田 警 察 署 5 6 7 /'`丶 本 時 は 7 / 色 仮 説 の 根 拠 と な る 資 料 の 収 集 検 証 ・ こ ど も110 番 の 家 は 子 ど も を 守 る た め に ど ん な こ と を し て い ま す か 。 ・ 学 校 , 警 察 , こ ど も110 番 の 家 の そ れぞ れ の立場 の人 たち か ら, ほ か の立 場 の 人 た ち へ言 い た い こ と はな い か な 。 ○ こ ど もIIO 番 の 家 の人 に イ ン タ ビ ュ ー し, 子 ど も の 安 全 を 守 る 取 り 組 み に つ い て , 池 田 警 察 署 や 地 域 の人 び と と 連 携 し な が ら取 り 組 ん で い る 様 子 を 調 べ る 。 ○ 見 学 や イ ン タ ビ ュ ー, 資 料 で 調 べ た こ とを 通 し て , 池 田 警 察 署 , こ ど も110 番 の 家 が 連 携 し て, 犯 罪 か ら く ら しを 守 る取 り 組 みを す る わけ を 考 え る。 ・ こ ど も110 番 の家 ・ 池 田 警 察 署 見 学 資 料 ・ こ ど も110 番 の 家 ィ ン タ ビ ュ ー 資 料 − 4 −
8 新 し い 問 い の 発 見 ・ 犯 罪 を 減 らす取 り 組 み につ い て , 自 分 た ち で で き る こ と は な い か な 。 ○ 防 犯 活 動 につ い て 調 べ, 犯 罪 か ら く らし を 守 る た め に さ ま ざ ま な 工 夫 や 努力 が さ れ て い る こ とを 理 解 し , 自 分 に で き る こ と につ い て 考 え る。 ・ こ ど も110 番 の 家 ヮ ー ク シ ート (4) 本 時 の 目 標 地 域 の安 全 を 守 る取 り 組 み の 社 会 的 事 象 の 構 造 理 解 と 仮説 の 検 証 の た め の 観点 を 目 標 に明 示 す る 。 ・ 学 校 , 池 田 警 察 署 , こ ど も110 番 の 家 の 犯 罪 か ら く ら し を 守 る 取 り 組 みを 通 し て , そ れ ぞ 表2 れ が 連 携 し て 匚地 域 の 安 全 を 守 る 」「 ̄よ り よ い く ら し を す る」 と い う 取 り 組 み の わ けを 考 え る。 (5) 本 時 の展 開 表 2 本 時 の 展 開 参 照 本時 の展開 学 習 過 程 学 習 活 動 お よ び内 容 指 導 上 の 留 意 点 課 題 設 定 の場 交流 活動の場・ 位 置 づ け 自力 活 動 の場 交 流 活 動 の場 ・ 意 味 づ け ・ 関 連 づ け 評 価 活 動 の場 ・ 価 値 づ け 自力 活 動 の場 1. こ ど も110 番 の家 , 池 田 警 察 署 の 取 り 組 み の 工 夫 や 努 力 に つ い て , 話 し 合 う 。 ○取 り 組 み の 工 夫 や 努 力 の 様 子 を 意 識 づ け る た め , 見 学 や イ ン タビ ュ ー で 調 べ た こ と を 想 起 さ せ る 。 ○ 児 童 の意 見 を 「 こ ど も110 番 の家 」 匚池 田警 察 署 」 等 を 観点 に , 板 書 に 整 理 す る。 ○ そ れ ぞ れ の取 り 組 み に着 目 さ せ , 工 夫 や 努 力 の わ けを 考 え る こ と が で き る よ う にす る。 ○ ワ ー ク シ ート へ の書 き込 み の 状 況 を 見 て 回 る。 ○ 予 想 が 書 き に く い 児 童 に は , 取 り 組 み の関 係 あ る 部 分 の で き ご と に着 目 す る よ う に 助 言 す る。 ○ ワ ー ク シ ー ト の記 述 内 容 を ね り合 う 場 を 構成 し , 児 童 の 意 見 を 厂地 域 の 安 全 を 守 る 」 匚よ り よ い く ら し 」 と い っ た 観 点 か ら整 理 す る 。 ○ そ れ ぞ れ の取 り 組 みが 人 び と の く ら しを 守 る た め に 連 携 し て い る こ と を と らえ さ せ る。 ○ 授 業 を ふ り かえ る 場 を 構 成 し , 安 全 な く らし の た め に 自 分 にで き る こ とを ワ ーク シ ート に 書 か せ, ね り 合 う こ と に よ っ て , 次 時 の学 習 へ の見 通 しを 持 た せ る 。 学 校 池 田 警 察 署 こ ど も110 番 の 家 2 . こ ど も110 番 の家 , 池 田 警 察 署 の 工 夫 や 努 力 の わ けを 考 え , 自 分 の 考 え を ワ ー ク シ ー ト にま と め る。 ・ 犯 罪 を 予 防 ・ 子 ど もを 守 る 3 . こ ど も110 番 の 家 , 池 田 警 察 署 の工 夫 や 努 力 の わ け に つ い て , 話 し 合 う 。 ・ 地 域 の安 全 を 守 る ・ よ り よ い く ら し 4. 授業 のふ り か え り を す る 。 ・ 地 域 の 人 び と と ふ れ あ う − 5 −
(6) 本 時 の 授業 の 構 造 協 力 す るこ とで さ ら に被 害 が 減 る。 領 域性 ・抵 抗 性 ・ 監 視性 地 域 が一 体 と な る と, 安 全 一安 心 な まち づ く り が で きる 。 安 全 ・ 安 心 な ま ちづ く りの た めに , あ い さ つ を し な けれ ば な ら ない 図 2 本 時 の 授 業 の 構 造 3 本 時 の 授 業 の 考 察 (1) 位 置 づ け の 分 析 位 置 づ け に つ い て , 課 題 設 定 の場 で 構 成 し た 問 い を も と に, 学 校 , 警 察 , こ ど も110 番 の家 そ れ ぞ れ の 取 り 組 みを , 地 域 の安 全 を 守 る 社 会 構 造 の 立 場 と し た。 そ し て そ れぞ れ の取 り組 み につ いて , 児 童 は 調 査 し て 得 た 情 報 を , 表 の よ う に そ れ ぞ れ の 立 場 に 分 類 す る こ と が で き た。 教 師 も 目 標 に明 示 し た 観 点 を も と に, 子 ど も た ち の 意 見 を 板 書 に そ れぞ れ 位 置 づ け た こ と で, 子 ど も た ち は分 類 が 表 3 位置づけ られた記述 的知識 事 象 記 述 的 知 識 学 校 安 全 マ ッ プ , 電 波 バ ッ ジ, 防 犯 ブ ザ ー, 立 ち 当 番 警 察 緊 急 通 報 , パト ロ ー ル, 安 ま ち メ ー ル, 呼 び かけ , 相談 , 交 番, 現 在 地認 知 シ ステ ム こ ど も110 番 の 家 マ ニ ュ ア ル , 旗 ・ 看 板 木 刀 , 登 下 校 見 守 り 容 易 と な り , そ の 後 の 地 域 の安 全 を 守 る 社 会 構 造 を 理 解 す る た め の 基 礎 的 条 件 と な っ た。 (2) 意 味 づ け ・ 関 連 づ け の 分 析 位 置 づ け さ れ た 基 礎 的 条 件 か ら , ど の 程 度 , 意 味 づ け ・ 関 連 づ け さ れ た か に つ い て , 厂学 校 , 警 察 , こ ど も110 番 の 家 の そ れ ぞ れ の立 場 の 人 た ち か ら, 他 の立 場 の人 たち へ 言 い た い こ と は ない か。」 の 発 問 に対 す る ワ ー ク シ ー ト の 記 述 か ら分 析 し た。 あ る立 場 か ら ほ か の 立 場 へ の 関 連 性 に 着 目 し て , そ れ ぞ れ の 社 会 的 事 象 を 矢 印 で 結 ぶ な ど し て 。 表 4 意 味づけ・関 連づけ の結果 意 味づ け・関 連付け 人数 % 6項目間 13 35.1 5項目間 13 35.1 4項目間 6 16.2 3項目間 4 10.8 2 項 目間 工 2.7 - 6 −
学 枝 こと も110 番 Q家 譬 察 4年 組名前 .杣 乙.は婀汢 决人t廴傀ヽヽすこぃ鬢は あ うかもしれなぃけご それ匕全 部 自 分 自惱てこ守って冶 侭配ちで意、蘊 勺勺勹うしかいこ枦 乙ぺ んてヽヽひ か い のケ 良い 町 に 記 て い 包t い。 図 3 ワ ー ク シ ー ト の 記 述 例 ( 6項 目 間 ) こ亡2も110 蓍Q家 警 察 4 年 給名前 学 校
11叫 の な か ? こI - u 'A口√( はU
l )】jコ4,J.写ヽ芍`a ぺ いい ち 習 気.邨・ てJa廴い ふ り か 廴 り( M n UI, 十司六 μ廴、tつは 冖tQ −rt tひヽ、ヽちいぅし てぃ4 けt‘ │・α妬J りんなりしt なLヽん むf あ … ヽこ 叱、 て い た・けて冫に ぅ ぃ う し t ヽヽぺ 。t .、6令4 ち 吮4 9. d冫ぅ4 応,七 図 4 ワ ー ク シ ー シ ー ト の 記 述 例 ( 2項 目 間 ) − 7 −
学 校 幗 鈴 ことsHO 麕Q 眼 謦 察 4 年 岨名前 Åり仇ul. 訌 ぶ袗有一妝もとい)てとぐ冖ぃ≒才蔵 叭旡/・4 に、やふ ぼしX心 気 図 5 ワ ー ク シ ー ト の 記 述 例 ( 他 の 立 場 か ら の み ) 上 位 の知 識 を 獲 得 し た と 考え ら れ る 匚警 察 と学 校」 匚警 察 と こ ど も110 番 の家 」「 学 校 と こ ど も110 番 の 家 」「子 ど も と 警 察 」「 子 ど も と こ ど も110 番 の 家 」 「 子 ど も と 学 校 」 の そ れ ぞ れ の 項 目 間 の 記 述 数 を 算 出 し た 結 果 が 表 4 で あ る O 結 果 か ら明 ら か な よ う に , ほ と ん ど の 子 ど も は 上 位 の知 識 を 獲 得 し た と い え る。 図 3 は 6項 目 間 で 記 述 が み ら れ た ワ ー ク シ ート で あ る。 意 味 づ け ・ 関 連 づ け を 多 く の項 目 間 で 行 う こ と の で き た 子 ど も は , 地 域 の安 全 を 守 る取 り 組 み の 因 果 関 係 や , 領 域 性 , 抵 抗 性 , 監 視 性 か ら の安 全 面 の 強 化 が も た ら さ れ る と い っ た 概 念 化 ま で 知 識 を 高 め る こ と が で き た。 一 方 で ,2 項 目 間 で 記 述 し た ワ ー ク シ ー ト が 図 4 で あ る 。 こ の 子 ど も は, そ れ ぞ れ の取 り 組 み の 因 果 関 係 が 十 分 に 理 解 さ れ て い な い 。 つ ま り, 応 用 ・ 分 析 の 能 力 の 高 ま り が 不 十 分 な の で あ る。 授 業 の な か で , そ れ ぞ れ の 取 り 組 み の わ け を 考 え さ せ た り , そ れぞ れ の立 場 の差 異 に 着 目 さ せ た り す る な ど の 指 導 が 今 後 必 要 で あ る と 考 え て い る。 − 8 − (3) 価値 づけ の分析 授業 の終 末に評 価活動 の場 を設定 し, 授業 のふ り かえ りを させ, ワ ーク シートに記述 さ せた。 価 値づ けがど の程度 行 われた かについ て, 子 ど も自 らが 価値判 断し行動 規範 を規定 し たワ ーク シート の記述 か ら, 分析 した結果 が表 5で ある。 表5 価値づけの結果 価 値 づ け 人 数 % 自 分 と ほ か の立 場 か ら 行 動 規 範 を 規 定 し た も の 7 18.9 自 分 の立 場 か ら行 動 規 範 を 規 定 し た も の 29 78.4 ほ か の立 場 か ら 行 動 規 範 を 規 定 し た も の 1 2.7 価 値 づ け は す べ て の子 ど も が 行 っ て い た。 自 分 の 立 場 か ら 価 値 判 断 で き た の は, 授 業 の中 で , 応 用 ・ 分 析 の能 力 が 高 め ら れ , 評 価 の能 力 が 高 め ら れ た か ら だ と いえ る。 価 値 づ け さ れ た 記 述 の中 で , 他 の立 場 か ら 行 動 規 範 を 規 定 し た 記 述 の 内 訳 を 見 て み る と , 警 察 5事 例 , こ ど も110 番 の 家 4 事 例 ,
学校3事例,市民3事例である。ほかの立場を記 述した子どもの多くが,複数の立場を総合して記 述していることにその特徴がある。このなかで, 特に市民の立場で記述した児童は,概念的な知識 の広がりが見られ,これらのことから,授業の中 の自力活動や交流活動の場において,知識・理解 や総合の能力を高めたことは明らかである。 図5は,評価活動の中で,他の立場からのみ行 動規範を規定した児童のワークシートである。こ の児童の記述に,自分の立場からの価値判断が見 られないのは,自分とのかかわりで総合的に価値 判断することが十分にできていいないからである。 匚∼という友だちの意見と同じで,自分たちでも ∼しなければならない」匚友だちは∼と言ってい たけれど,自分たちは∼しなければならない。」 といった合・評価の自己評価の学習を継続的に能力を高める指導が必要である。していき,総 おわりに 本稿では,子ども一人ひとりの個の学習を成立 させながら,社会的読解力を高めるには,課題設 定,自力活動,交流活動,評価活動の場を設定し, 位置づけ,意味づけ,関連づけ,価値づけを行う 授業を実践することを提案した。 しかし,このような授業は,毎時間できるもの ではない。時間的な制約の中で,その単元でもっ ともふさわしい場面を研究し,意図的に設定する ことが大切である。そのために,単に教材の内容 を研究するだけではなく,学級の子どもたちの実 態とらえ,その教材における子どもの反応を予想 することまで含めた教材研究が必要である。 さらに,このような授業を実践していくために は,互いに認め合い,高め合うことができる学習 集団づくりが不可欠であるとともに,学習に意欲 的でない子どもや,知識の習得・活用が十分でな い子どもに対する指導と評価の一体化の工夫が必 要である。 学級づくりと授業づくりの一体的な指導力が求 められる。 【参考・引用文献】 1)文部科学省,『読解力向上に関する指導資料-PISA −9− 調査(読解力)の結果分析と改善の方向−』東洋館 出版, 2006, p.l, PISA型読解力について,匚自らの 目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,効 果的に社会に参加させるために,書かれたテキスト を理解し,利用し,熟考する能力」としている。 2)『平成19年度全国学力・学習状況調査解説資料小学 校算数』『平成19年度全国学力・学習状況調査解説資 料小学校国語』国立教育政策研究所教育課程研究セ ンター,2007 3)安野功「社会科で取り組む読解力向上の戦略」『読 解力向上を目指した授業づくり』東洋館出版, 2006, pp.82-85 4)今谷順重『新しい問題解決学習と社会科の授業設 計』明治図書1996, pp.20-23 5)文部科学省h卯://www.mext・go-jp/ 6)安野功『社会科授業が対話型になっていますか』 明治図書, 2005, pp.49-77 7)岩田一彦『小学校社会科の授業設計』東京書籍, 1991, pp.3 8-44 8)岩田一彦『社会科固有の授業理論・30の提言一総 合的学習との関係を明確にする視点−』明治図書, 2001, pp.40-49 9)北俊夫「改めて,社会科の匚知識」を問う」『学習 研究』第427号, 2007, pp56-61 10)岩田,前掲書7), pp.43-44 11『社)片上会認識宗二匚教育の社会構認識教造改革−育のニ構ュー造改革・パー一視点スと展ペク望テ」ィ ブにもとづく授業開発−』明治図書, 2006, p.20,探 求とは,匚問いを紡ぎだしていく行為」であるとして いる。 12)梶田叡一『教育における評価の理論n 学校評価 とブルーム理論』金子書房, 1994, ppl53-157 13)岩田,前掲書8), pp.99-101 14)馬野範雄・井上和夫『子どもの倍歐を生かす複線 型社会科授業の構想』明治図書, 1997, pp. 15-27 15)新小宮信書, 2005,夫『犯罪は匚 pp.44-46この場所』で起こる』光文社