エ コ ツ ー リズ ム概 念 を活 用 した地 域 活性 化 に関 す る研 究-I
Study on Vitalizing
a Region
by Using the Concept
o Ecotourism-I
-エ コツー リズムの定義 および その活用 に関す る-考
察--Study
on the definition
of Ecotourism
and its Applicable
Way-金田岩光 近藤健雄
Iwamitsu Kaneta, Takeo Kondo
日本 大学 大 学院 理工 学研 究科 海 洋建 築工 学 専攻 〒274-8501千 葉 県船 橋市 習 志野 台7-24-1
Nihon University College of Science & Technology Department of oceanic Architecture & Engineering, 7-24-1 Narashinodai, Funabashi. Chiba, 274-8501 Japan
ABSTRACT
This study was to research the definition of Ecotourism and to propose the new concept of Ecotourism and its
applicable way. The new definition of Ecotourism could be characterized as three.
(1) To experience and learn the intact natural environment, culture, and historical buildings and spots.
(2) To minimally discontinue the impact to the regional resources by tourism and enhance endeavors to conserve
its value.
(3) To give the pleasure from experiences and the message of the real meaning of preservation and conservation to
tourists.
Then, it is linked to the vitalization of the region. Also, it offers the activities to preserve regional environment,
cooperating with both tourists and residents.
Clarifying Ecotourism clears the two types of Ecotourism. One is "Preservation Type of Ecotourism", and the
other is "Symbiosis Type of Ecotourism". In Japan, the region, which needs the plan of regional vitalization, has
been developed."Symbiosis
Type of Ecotourism" is adapted as the new concept of Ecotourism in this study, and it
is used as the main concept for vitalizing regions.
Finally, the application of "Symbiosis Type of Ecotourism" for vitalizing regions is described."Symbiosis
Type of
Ecotourism" is composed of six components, "residents, tourists, travel agencies, local government, researchers, and
developers". They have to cooperate with each other to form the region balanced between natural and historical
resources, existing tourism resources, and development
Key words: Ecotourism, Definition of Ecotourism, Mass tourism, Preservation Type of Ecotourism, Symbiosis Type of Ecotourism
(2001年1月24日 受 付,2001年4月4日 受 理) 1.緒 言 我 が 国 の 地 方 自治 体 の多 くは,少 子高 齢 化 や 人 口 の過 疎 化 な どの 輻 〓 した社 会 問 題 を抱 え,近 年 の 経 済不 況 を 背 景 と した税 収 の減 少 な ど に よっ て衰 退 の 一 途 をた ど っ て い る。 こ の よ うな 閉 塞 的 な社 会 状 況 を脱 す る た め に, 地 方 自治体 は様 々 な活 性化 策 を試 み よ うと して い る。 そ の よ うな中 で,新 た な地 方 自治体 の活 性 化 方 策 と し て,エ コツ ー リズ ム に代 表 され る 自然 学 習お よ び体験 型 観 光 とい わ れ る地 域 既存 資 源 の 高 度活 用 方 策 が 注 目 され る よ うにな っ た。 こ れ らの 背景 に は,地 球 サ ミ ッ ト(1992年 ブ ラ ジ ル)
に よっ て提 唱 され た 「地 球 環 境 問題 」 と 「持 続 可 能 な 開 発」(1)とい う新 た な概 念 を社 会 の潮 流 と して 位置 づ け る傾 向が 高 ま った こ とが あげ られ る。 一 方,従 来 の エ ン トロ ピー増 大 型 の 工業 団 地 造 成,大 企 業 誘 致,雇 用機 会の 創 造 に よ る人 口 移入,税 収 の 増 大 とい う構 図 が破 綻 した 結 果 を反 省 して,地 域 の 豊 な 自然環 境 を資 源 とす る体 験 型 観光 に よ って 交流 人口 の拡 大 を図 り,併 せ て地 域 の 消 費 経 済 を活 性 化 しよ う とす る試 み が生 じて きて い る。 エ コ ツー リズム は ,こ の よ う な背 景 を も とに,注 目 さ れ る新 たな 観光 形 態 と して,地 方 に波 及 しよ う と して い る。 エ コツ ー リズ ム の バ リエ ー シ ョ ンと して,農 林 水 産 省 が 推 進 す る グ リー ンツ ー リズム や ブ ル ー ツー リズ ム な どが あ る。 こ れ ら を も とに して 地 方 自治 体 が 推 進 す る農 林 水 産 業,原 初 的 な 工 業 な どの 体験 観 光 な ど もエ コ ツ ー リズ ムの バ リエ ー シ ョンの一 つ と位 置づ け られ る 。 持 続 可能 な開 発 をふ ま えた 地域 活 性 化 方 策 を推 進 して い くに あ た り,エ コ ツー リズ ム の概 念 に沿 った 自然 や文 化環 境 を保 全 しつ つ,そ の 地 域 の 自然 や 文 化 を体 験 して い く形 態 は,ま さに 自然 との 共生 を図 って い く上 で 重 要 な 意味 を も って い る。 しか し,各 地 域 で 行 わ れ て い るエ コツ ー リズ ム に よる 地域 活 性 化 方 策 は,観 光収 入 の 増 加 や 税収 の増 加 な どの 過剰 な期 待 が あ り,住 民 と推 進 者 との 間 で コ ンフ リ ク トが 生 じる な どの諸 問 題 が 多 い 。 またエ コツ ー リズ ム は 概念 が 確 立 され て い ない た め,取 り扱 う者 に よ って様 々 な定 義 が 存 在 す る。 そ の 結 果 と して,推 進 す る地 域 で 混 乱が 生 じて お り,そ の 推 進 方 策 も様 々な も の が提 案 され る こ ととな る。 2.研 究 の 目的 お よび 方法 エ コツ ー リズ ム を基 調 とす る秩 序 あ る 地 域 活性 化 を図 る ため に は,エ コ ツー リズ ム の 定義 を 明確 化 し,エ コ ツ ー リズ ム を活用 した新 た な地 域 活性 化 方策 の 考 え 方 を明 ら か にす る こ とが重 要 であ る と考 える。 そ こで,本 研 究 で は エ コ ツー リズ ム を活 用 した 地 域活 性 化 方 策 を検 討 す る初 期 段 階 と して,エ コ ツー リズ ムの 定義 を明 確 に し, 新 た なエ コ ツ ー リズ ム の 考 え方 を提 案 し, そ の活 用 法 を見 い だす こ とを 目的 とす る。 また,研 究 の 方 法 と して は,文 献 調 査 お よびエ コ ツー リ ズム を推 進 す る 関連 機 関 が 主催 す る セ ミナ ー や シ ンポ ジ ウ ム な ど に参 加 し〓,専 門家 や 講演 等 の ヒア リン グや 資 料 の 収 集 に よっ て,以 下 を明 らか にす る。 1) エ コ ツ ー リ ズ ムの 経 緯 お よ び諸 定 義 の抽 出 2) エ コ ツー リズ ム の分類 3) 新 た なエ コツー リズムの考 え方 の提 案 4) 地域 活性 化 方 策 と して の エ コ ツー リズ ムの 活 用 5) 新 たな エ コ ツー リズム の仕 組 み 3.調 査 結 果お よ び考 察 3.1 エ コ ツ ー リズ ム概 念 の発 生 経緯 現 在,世 界 的 な工 業 化,都 市 化,人 口増 加 に伴 っ て地 球環 境 も悪 化 の 一 歩 をた ど って い る 。 また,19世 紀 後半 に始 ま っ たマ ス ツ ー リズ ム は,現 在 の 旅行 形 態 の 主流 と な っ てお り,大 量 に 集 中 す る旅 行 者 に よっ て,訪 問 地域 に利 益 を もた らす 以 上 に,観 光 開発 に よる 自然 や伝 統 文 化 資 源 の 喪 失,観 光客 に よる無 作 為 な 自然 採 集 や 建 造 物 へ の 損 傷 な ど,地 域 に悪 影響 を もた ら して い る こ とが 指 摘 されて い る。 1976年 にG.Budowskiが 「観 光 と保 全:ぶ つ か り合 い, 共 存 そ れ と も相 利 共 生 」(2)とい うタ イ トルの 論 文 か ら観 光 と保 全 の相 互 関 係 が 論 じられ,1980年 代 後 半 か らエ コツ ー リズ ム(Ecotourism)と い う言 葉 が 使 わ れ は じめ た。 また,エ コ ツー リズ ム が 世 界 中 に 受 け 入 れ られ て行 っ た 経 緯 と して,1972年 の 国 連 人 間 環 境 会 議(ス トッ クホ ル ム 会議)が 端 緒 で,1980年 の 世 界環 境 保 全 戦 略(IUCN, WWF,UNEP)の 発 表 に 書 か れ た 「持 続 可 能 な 開発 」 が Table 1 Ecotourism chronological table (The source: Japan Ecotourism Society
Table 2 Japanese activities groups of Ecotourism 始 ま りで あ った 。 そ の 後,地 球 サ ミ ッ ト(ブ ラ ジル)で 「環 境 」 と 「持 続 可能 な開発 」 の 問題 が 取 り上 げ られ て か ら世 界 各 国 で 実践 され る よう にな り,我 が 国 にお い て は 1997年 にエ コツ ー リズ ム推 進 協 議 会(JES)が 発 足 した。 これ を契機 に,各 地 にエ コ ツー リズ ム推 進 団 体 が 発 足 し た。 現 在 で は西 表 島エ コ ツー リズ ム協 会 な ど11団 体 が活 動 中 であ る 。Table 1にエ コツー リズ ムの概 略 年 表お よび Table 2に 我 が国 の エ コ ツー リズ ム活 動 団体 を記す 。 3.2 エ コ ツー リズ ム の語 源 観 光 の 語 源 をみ る と,中 国の 古 真 「易 経 」 の 中 に 「観 光 之 光,利 用 賓 干 王(国 の 光 を観 る は,も つ て 王 に賓 た る に よろ し)」 に も とづ くもの といわ れ てお り,本 来 は他 国 の輝 か しい 文 物 を視 察 す る意 であ る と ころ か ら,国 際 的 な もの を指 した。 「観 」 は 「み る」 と同 時 に,「 しめす 」 の 義 も併 せ もっ て い る ため,観 光 の 語 は 受 入 国側 か らみ れ ば 国 威 発揚 の意 味 があ っ た。 今 目で は 「観 光 」 の 語 は ツー リズ ム の意 に 用 い られ て いる。(3) エ コ ツー リズ ム は,EcoとTourismの 造 語 と して位 置 づ け られ る。Ecoと はEcology(エ コロ ジ ー)で あ る。 エ コ ロジ ー とい う言 葉 は 「生 態 学」 と訳 され て いた。 つ ま り, あ る地 域 の 生 物 群 が ど うや って生 活 して いる か を経済 的 な 見 地 に 立 っ て研 究 す る 分 野 で あ っ た 。 語 源 的 に も EcoIogyはEconomy(エ コ ノ ミー)か ら派 生 して い る。 エ コ ノ ミー は,環 境 破 壊 が 進 行 して い る 今 日,人 間 と 自 然 との 関 わ りを見 直 し,環 境 破 壊 を阻 止 しよ うと い う新 しい分 野 に発 展 し,グ ローバ ルな見 地 に 立 って,生 体 と環 境 を考 え てい く意味 に変 化 した もの であ る。(4,5) 3.3 エ コ ツー リズ ム の藷 定義 エ コ ツー リズ ム は マ ス ツー リズ ム に よ る大 量 消 費 に よ る地 域へ の悪 影 響 を是 正 す る もの と して位 置 づ け られ る。 そ の た め,エ コ ツ ー リ ズ ム は 一 般 に, 地 域 固 有 の 自然 や 歴 史,文 化 な ど を保 全 す る た め に 資 源 管 理 に対 す る責 任 が 発 生 し,地 域 に対 す る 影 響 を最 小 限 に と どめ よ う とす る マ ス ツー リズ ム に相 対 す るツー リズ ム の 考 え 方 が存 在 す る。 しか し前 述 した よ うに,こ の よ うな 一 般 解 で は,広 義 で あ る た め エ コツ ー リ ズ ム を理解 しよ うとす る人 の 数 だ けそ の 解釈 は 多様 に存 在 す る結 果 とな っ た。 そ こ で,多 様 に存 在 す る定 義 が どの よ うな傾 向が あ るの か を文 献 に よっ て 把 握 し,エ コ ツ ー リ ズ ム定 義 特 定 化 を 図 る た め に,こ れ ま で 世界 各 国 で発 表 され て き たエ コ ツ ー リ ズ ムの 定 義 を抽 出 した。 そ の 結 果,エ コ ツ ー リズ ムの 定 義 を 掲 げ る 関係 機 関 を整 理 す る と,政 府 観 光 機 関,エ コ ツ ー リ ズ ムの 協 会 や 組 織 な どの推 進 機 関,研 究 者 や 専 門 家 の3つ に分類 す る こ と が で きた 。 これ らの定 義 を要約 した もの を以下 に 記す 。 (1) 政府 観 光 機関(6,7,8,9,10) 1) マ レーシア文 化 ・芸術 ・観 光省:保 護 を促 進 し,来 訪者 の 影 響 を低 く抑 え,地 元住 民 の利 益 とな る活 発 な社 会 経 済 的 関与 を可 能 に させ る 自然(過 去 と現 在 の文 化 的 関 連 事物)を 楽 しみ,享 受 する ため に,比 較 的 荒 らされ てい ない 自然 地域 へ の環 境 に責任 あ る旅 行 および訪 問。 2) タイ政府 観 光庁:エ コツ ー リズ ム とは,持 続 可 能 な観 光 と環 境 的 に管 理 され た もの の 下で,共 同の 教 育 と地 元 社会 の 参加 とい う手 段 に よ り,生 態 学 的お よび環 境 面 の 関連対 象 へ の認 識 を高 め る こ と に寄与 して い るエ コシ ステ ム に関 わ るい か な る文化 的,歴 史的 構成 要素 を も含 む,自 然地 域 におけ る責任 を有 す る観 光 で ある。 3) ネパ ール観 光 ・民 間航 空省:エ コ ツー リズム は,一 般 的 に は,エ コ ツー リズ ムが 多 くの 地 域 で保 存 ゾ ー ンの 基金 や 地元 住 民の 所 得 力の 向 上 に貢 献 して,望 ま ない 環 境 的 影響 や 社会 文 化 的変 化 を最 小 限化 して い る,多 様 な 自然観 光の 複合 体 で あ る と理 解 される 。 4) ラ オ ス政府 観 光局:エ コ ツー リズ ム とは,エ コシ ス テ ムの 保全 を行 い,か つ資 源 を保 護 す る こ とが 地元 住 民 の 利益 と なる経 済 的機 会 を生 み出 しつ つ,環 境 の文 化 お よ び 自然 に 関 わ る歴 史 を理 解 す る こ と を 目的 と し て,自 然 地域 へ旅 す る こ とで あ る。 5) ベ トナ ム政府 観 光 局:エ コツ ー リズ ム とは,環 境 と文 化 の保護 にプ ラス影響 とな る生態 学 と環境 に関す る高度 の教 育 を伴 う自然 観光 の形 態 であ り,か つ地 元 の社 会 に 財政 的利 益 を提供 し,保 護主 義 に貢献 す る もので ある。 6) ニ ュ ー ジー ラ ン ド観 光 局:エ コ ツー リズ ム とは ,自 然 のみ を対象 に した もの で は な く,ツ ー リズ ム を全 般 と
して 自然 との共 生,異 文 化 との共 生 を図 り,自 然 へ の 影 響 を最 小 限 に抑 え つつ,現 地 の 経 済活 動 に も寄与 す る観 光 で あ る。 7) 日本 運輸 省 「エ コツー リズ ム ・ワー キ ンググ ル ーブ 」: 観 光 に よる文 化 や 自然 環境 に関 す る教 養 の 向 上,観 光 に よ る地域 文 化 や 自然 環境 の保 全 に対 す る 貢献 等 の 面 に重 点 を置 きつ つ,文 化 や 自然環 境 な どの観 光 資 源が よ く保存 され た地 域 にお い て受 入地 域 と観 光 産 業 が相 互 に連携 して,観 光 と環 境 が バ ラ ンス よ く調 和 した新 しい旅 行 形態 であ る。 8) 日本 環 境庁(13):エ コッ ー リズ ム とは,地 域 の 自然 や 文 化 の保 全 に 貢献 す る よ うな 自然 志 向型 の 観 光。 エ コ ツー リズ ム は,(1)地 域 の 自然環 境 や 文化 の保 全 に貢 献 す る,(2)地 域 経 済 の 活性 化 に 貢献 す る,(3)観 光業 等 関 連 産 業 に適 切 な利益 を もた らす,(4)地 域 住民 お よ びツ ア ー参 加 者 の環 境 に対 す る 意識 を向上 させ る ,こ れ ら が狙 い であ る。 (2)推 進 団 体(6,11,12,13,14,15,16,17) 1) 国連 ア ジア太 平 洋経 済 社 会委 員 会:エ コツ ー リズ ム と は,社 会の 広 い分 野 に利益 を もた らす 環境 的 か つ文 化 的 に積極 性 を もつ観 光 。 2) 米 国 エ コ ツー リズ ム協 会:エ コツ ー リズ ム とは環 境 を 保 全 し地 域 住民 の 福 祉 を改 善 す る 自然 地域 へ の責 任 あ る旅 行 で あ る。 3) 米 国旅 行 業 者 協 会(ASTA):エ コ ツー リズ ム は,環 境 との調 和 を重 視 した旅 行,す なわ ち野生 ・自然 その も の や環 境 を破 壊 せ ず に 自然 や文 化 を楽 しむこ とであ る。 4) ハ ワ イエ コツ ー リズ ム協 会:エ コ ツー リズ ム とは,生 態 学 的 に維 持 で き,地 域社 会 の 幸福 に耐 え る性 質,そ して 文化 的 な基礎 を築 か れ た旅 行で あ る。 また,そ の 考 え方 として,(1)自 然,地 域 社 会お よび国 有 の 文化 と の 接 触 を必 要 とす る訪 問 者 へ の ア ピー ル を行 う こ と, (2)訪問 者 や 産 業 に よ る地 域 へ の 自然環 境,文 化 環 境, 経 済的 な環境 に対 す る イ ンパ ク トを考慮 す る こ と,(3) 自然 と調和 して,そ の 活 動が で きる ように努 力す るこ と,と してい る。 5) オー ス トラ リ アエ コ ツ ー リズ ム協 会:エ コツ ー リズ ム とは,観 光 を通 じて環境 な らび に文 化 的 な理解 を深 め, そ の与 えて くれ る もの へ の感 謝 と保 護 す る こ と を促 進 し,生 態 環境 的 に持 続 してい く観 光 産 業 であ る。 6) ベ リー ズ エ コ ツー リズ ム協 会(中 米):エ コ ツ ー リズ ム とは,観 光 に よっ て 引 き起 こ され る イ ンパ ク トに対 し,敏 感 に公 害防 止 や環 境へ の 関心 を もたせ るた め に, 地 域住 民 と来 訪 客 に これ らの教 育 を提 供 し,環 境 に対 して責 任 あ る観 光 を行 うこ と。 7) ア ル メ ニ アエ コ ツー リズ ム協 会(東 欧):エ コ ツー リ ズ ム は,自 然 お よ び文 化 遺産 の よ りよい 理解 に貢 献 す る こ と。 そ して,地 域 の価 値 を高 め,地 域の 環 境 を守 る こ とに よって 地 域社 会 に十 分 な利 益 を もた らす こ と が で きる観 光 。 8) PANOS(英 国エ コ ツー リズ ム非 営 利 団 体):エ コツ ー リズム とは,野 生 生物 や 自然植 物 を保 全 しつ つ,イ ン パ ク トを最 小 限 にす る観 光 産 業 であ る。 そ して,生 態 学 的 に,文 化 的 に資 源 の イ ンパ ク トに対 して 責 任 を伴 う旅行 であ る 。 また,こ れ らの責 任 は,観 光 業 者,環 境保 護 者,政 府 官僚,旅 行 者 か ら地 域 住 民 な ど,そ の 地域 にふ れ る もの すべ てが 関係 す る もの であ る。 9) イ ン ドネ シア ・エ コ ツー リズ ム協 会:そ の地 域 ・場所 の 美 し さ を楽 しむ と と もに教 育 的 面 を有 し,自 然保 護 の 努 力 を理 解 ・指 示 し,ま た 地 元 社 会 の収 入 を高 め る こ とを 目的 と して,自 然 の ル ー ル に従 っ て管 理 され る 自然 地 も しくは地 域 を訪 れ る責任 あ る観 光 活動 。 10) 日本 旅 行業 協 会(JATA):エ コ ツ ー リズ ム は 自然 観 察 を中心 と してそ の 土 地 に存 在 す る生 態 系(エ コロ ジ ー) を守 り,そ の イ ンパ ク ト(悪 影響)を 最 小 限 に しよ う とす る ツア ー を実 践 す る 運動 で あ る。 さ らに,そ の生 態 系 の 中 に生 き る住 民 の 生 活 を含 ん で い る こ とか ら, 先 住 民 に対 す る 「観 光 に よ る 自立 」 を支 援 す る活 動 も 重 要 な 要素 で あ る。 11) エ コ ツ ー リズ ム推 進 協 議 会(JES):(1)自 然 ・歴 史 ・ 文 化 な ど地 域 固 有 の資 源 を生 か した観 光 を成 立 させ る こ と,(2)観 光 に よっ て地域 の資 源 が 損 な われ る こ とが ない よう,適 切 な管 理 に も とづ く保 護 ・保 全 を 図 る こ と,(3)地 域 資源 の 健 全 な存 続 に よ る地 域 経 済へ の波 及 効 果 が 実 現 す る こ と を狙 い と す る 。 「資 源 の保 護 」+ 「観 光 業 の 成立 」+「 地域 振 興 の 融 合 を 目指 す観 光 」 の 考 え方 で あ る。 そ れ に よ り,旅 行 者 に魅 力 的 な地 域資 源 との ふ れ あ う機 会 が永 続 的 に提 供 さ れ,地 域 の 暮 ら しが安 定 し,資 源 が 守 られて い くこ とを 目的 とす る。 (3)研 究 者 お よび専 門 家(6,12) 1) H.Ceballis-Lascurain:風 景 や 野 生 植物 ,動 物 お よび見 出 され た 現存 の 文 化創 造 物(過 去 お よ び現 在 の もの) を特 別 に研 究,鑑 賞,享 受 する 目 的 で 比 較 的 荒 らされ てい ない,も しくは汚染 され てい ない 地域 を旅 する こと。 2) P.Williams:エ コ ツー リズ ム とは,従 来 の伝 統 的 な観 光 以外 の もの であ り,訪 れ た地 域 の 自然 お よび 人 的文 化資 源 を破 壊 しな い よ う に す る旅 で あ っ て,経 済 面 , 社会 面,環 境 面 の利 益 を増 大 させ る もの で あ る。 3) K.Ziffer:エ コ ツー リズ ム は 野 生 生 息 地 や 自然 資 源 を 非 消 費 的 な形 で の利 用 で慣 れ親 しみ ,そ の 地 の保 全 に 直 接 役 立つ こ と を 目的 とす る労働 も し くは財 政 的方 法 で 訪 問地 に貢献 す る。 4) P.S.Valentine:エ コ ツ ー リズ ム は 以 下 の通 りの 観 光 分 野 に 限 るべ きで あ る と考 えて い る 。(1)比較 的荒 ら され て い な い 自然 地 域 をベ ース とす る こ と,(2)損 害 を与 え る こ とな く,悪 化 もさせ ない こ と,(3)利 用 され る保 護 地 域 の 継 続 的 な 保 護 と 管 理 へ の 直接 的 貢 献 で あ る こ と.(4)適 切 な管 理 体制 下 にあ る こ と。
5) Elizabeth Boo:エ コ ツー リズ ム とは, (1)保護 地 域 の た め の 資 金 を 作 り出 し,(2)地 域 社 会 の 雇用 を創 出 し,環 境 教 育 を提 供 す る こ とに よ り,自 然 保 護 に貢 献 す る 自然 志 向型 の 観 光 で あ る。 6) Janet Richardson:エ コ ツー リズ ム とは,自 然 がベ ー ス と な り,環 境 保 全 を考 え,自 然 体 験 や ス ポー ツ,冒 険,そ して エ コ ツ ア ー を体験 す る観 光 で あ る 。 そ して,生 物 学 的 に,地 域 の 環境 お よ び文 化 を解 釈 し,他 の 人 々 に そ の情 報 を伝 達 す る 自然 文 化 大使 とな りうる。 7) CELSS学 会:エ コツ ー リズム が現 在 内 蔵 す る 問題 を科 学 的 に 追求 し,エ コツ ー リ ズ ムの 進 め 方 を確 立 してい く活 動 を始 め た 。 第1回 の シンボ ジ ウム で は,エ コ ツ ー リズ ム の原 則 と して,(1)エ コ シス テム,(2)生 態 系 の 一 員,(3)科 学 的視 点,(4)高 齢 化 社会,(5)物 質循環 型 社 会,(6)レ ン ジ ャー,(7)意 藏 改 革,(8)環 境修 復,に 関 し て声 明 を発 表 した。 また,自 然環 境 の利 用 と保護,経 済 活 動 とバ ラ ンス され る こ と,そ して,人 に よる 自然 破 壊 や人 工 環境 下 な どの歯 止 め の ない拡 張 を阻止 す る た め,人 間 が 一定 な生態 系 の バ ラ ンス の範 囲 内で 自然 を楽 しま な くて は な らな い と定 め てい る(19,20,21)。特 徴 と して は,原 則 の 中に 「高 齢 化社 会 」につ いて 述べ られ て い るこ とであ る。 この 背景 には世 界 に類 を見 ない 日本社 会が将 来,超 高齢化 に向か って い くこ とが 挙 げ られ る。 3.4 エ コ ツ ー リズム の定 義 前 節 の 結 果 を も とに,政 府機 関,推 進 団 体,研 究 者 お よび専 門家 に よ るエ コ ツー リズ ム の定 義 の特 性 をみ てみ る とFigure 1の よ うに な る。 これ らを整 理 す る と,政 府 機 関 は学 習 を重 視 しつ つ環 境 保 全 を図 る傾 向 に あ るの に 対 し,推 進 団 体 は 経 済 的 活動 や地 域 活 性 化 に焦 点 が 置 か れ る傾 向 に あ る。 研 究 者 お よ び専 門家 の 視点 は利 用 者 の 立 場 で 地 域 経 済 や保 護 管 理 な どの 仕 組 み に置 か れ,定 義 づ け が 行 わ れ て い る。 そ こで,エ コツ ー リズ ム定 義 に お け る 最 大公 約 数的 に ま とめ る と,以 下 の よう に整 理 す る こ とが で きる。 (1)ツー リズ ムの 対 象 資 源:人 為 的 開発 行 為 の 少 な い 自然 環 境 あ る い は原 自然,か な り古 い歴 史的 な 文 化 や建 造 物,史 跡 等 を体 験,学 習 す る観 光 で あ る 。 す な わ ち, 原 自然 お よび古 文 化 を資 源 とす る ツー リズ ム と位 置 づ け る こ とが で きる。 (2)ツー リズ ム の意 義:(1)の 地 域 資 源 に対 し観 光 が 与 え る 悪 影 響 を最 小 限 に と どめ,地 域 資 源 の保 全 に努 め,そ の 価 値 を高 め る た め の 観 光 で あ り,そ の ため に,エ コ ツ アー 専 門 ガイ ドが対 象資 源保 全 お よ び体 験 の た め に
Figure 1 Related to the definition of Ecotourism when it was classified in the Government agency, Public institution, Researcher and Specialist.
重 要 な翻訳 者 の役 割 を果 たす 。 (8)ツー リズ ムの 目的:観 光 客 に対 して は体 験 や 環 境 学 習 をす る 楽 しみ,自 然 ・文 化 環 境 の保 護 や保 全 の 意味 を 伝 え る こ とが で き,地 元 の 経 済 振興 が可 能 で あ り,観 光 客 と住 民 両 者 が協 力 しあ っ て 地域 資 源 の保 全活 動 を 行 う こ とが で きる観 光 形態 で あ る。 4.新 た なエ コ ツー リズ ムの 提案 現 在実 践 され て い るエ コ ツー リズ ム は,世 界 遺 産(世 界 文 化 遺産 お よび 世界 自然 遺 産)に 登 録 され た もの を資 源 とす る もの が 多 数 を 占め て い る。 これ らは,比 較 的 人 間 の 開発 行 為 が 少 ない 地 域 に お い て,そ の 地 域 に既 存 す る 固 有 の太 古 か ら継 続 す る 自然 や,数 千 年 以 上経 た歴 史 お よび文 化 を,体 験 し,学 習 す る こ と に よっ て観 光 客 に 自然 や文 化 の保 全意 識 高 揚 を触 発 させ る こ とで あ る。 そ して,エ コ ツー リズ ム実 践 地域 を持 続 的 に保 全 して い く た め に地 域 住民 が 協 力 し,日 常 生 活 を通 して地 域 の 保 全 を積 極 的 に 実行 す る こ と。 ま た観 光 客 と住 民 との間 にエ コ ツ アー 専 門 ガ イ ドを介 在 させ,観 光 客 と住 民 の 保 全 意 識 を向 上 させ る役 割 を もつ とい う形 態 で あ る。 ま た,観 光 客 は資 源 と コ ミュニ ケ ー シ ョン を もと う とす る と き, ガ イ ドを通 した客 観 的 ツ ア ー形 態 と な ら ざ る を得 ない 。 本研 究 で は これ を保 全 型エ コツー リズム と位 置 づ け る。 一 方,エ コ ツー リズ ムの 概 念 を尊重 しつ つ,地 域 活 性 化 を希 求 す る地 方 自治 体 は数 多 くあ る の も事 実 で あ る 。 す な わち, (1)近代 にお い て 開 発行 為 が 進 ん だ 地域 で,残 す べ き希 少 な 自然(数 世 代 に わ た り継 承 され て きた3次 的 自然) や 歴 史 文 化(数 百 年 に わ た り継 承 さ れ て き た地 域 固 有 の 伝 統 文 化 や建 築 物 な ど)が あ り,し か も消 失 した 自 然 や歴 史 文化 を含 む こ と (2)既存 の 現代 的 な観 光 施設 や 観 光資 源 を含 む こ と (3)原初 的な 産 業 と して の農林 水 産 業 を資源 と して活 用 し,
併 せ て手 工業 的 な 産業 を保 全 しつつ 活用 す る こ と (4)原初 的 な 産 業 の担 い手 が 自 ら指 導 者 あ る いは ガ イ ドと して 介在 し,観 光 客 が 主 体 的 に 参 加す る ツ アー の 形態 で あ る こ と (5)住民 の 日常 的 生活 の 延 長 が 経 済行 為 で あ り,地 域 の 活 性 化 を促 す もの で あ る こと 本 研 究 で は これ を共 生 型 エ コ ツー リズ ム と して 位 置づ け,エ コツ ー リ ズ ムの 概 念 に 則 っ た地 域 の 自然 お よび 文 化 の 保全 を推 進 しなが ら地域 活 性 化 を図 る 方 策 を提 案 す る もの であ る。 既 存 観 光 形 態 であ るマ ス ツー リズ ムは,一 般 に 「大 衆 観 光 ま たは 大 量 観光 」 と訳 され,多 くの 観 光 客 を一 つ の グ ル ー プ単 位 と し,移 動,観 光 を行 うこ とで あ る 。 現 在 採 り上 げ られ て い る 問題 点 と して,一 地 域 に多 くの 観 光 客 が 集 中す る た め,大 量 の ゴ ミの 発 生,観 光 客 に よる 自 然 ・文 化環 境 の 破壊 な どの 問 題 を生 じる こ とが 挙 げ られ る。 そ して,こ の 問題 は,ー グル ー プの 人数 が 多 す ぎる ため に,観 光 客 一 人 ひ と りに ゴ ミや 自然 ・文 化 環 境 に対 す る配 慮 を伝 え る こ とが 困 難 で あ る こ と,団 体 が 故 の 移 動 型 の 観 光 に よっ て,地 域 の 自然 ・文化 環 境 へ の 享 受 が な され に くい こ とな ど に よ って 解 決 す る こ とが 困 難 にな って い る。 また,マ ス ツー リズ ムに よ る観 光開 発 は, 1) 観光 対 象 で あ る 自然 的 ・人文 的諸 資 源 に 一定 の 加工 を 加 え るた め に資 源 の価 値 に美 観 ない しは歴 史 的風 土 な ど,絶 対 的価値 の減 殺 とみ な され る場 合 が あ る こ と。 2) 関係 地域 住 民 の生 活 や要 求 とは原 則 的 に無 関係 なほ か, 観光 客 の 行動 ない しは要 求 に対 応 す る 開発 で あ る ため 両者 の 間 に しば しば矛盾 を もた らす場 合 が あ る こ と。 これ ら2つ の問 題 が 挙 げ られ,マ ス ツ ー リズ ムの 推 進 とと もに地 域 の 自然 ・文 化 環境 を悪化 させ て き た。 本研 究 の新 しい概 念 の提 案 に よ り,従 来 のマ ス ツー リ ズ ム の 自然 ・文 化環 境 消 費 型 の 開 発 か ら,持 続 可 能 な 開 発 へ と導 き,保 全 型 エ コ ツー リズ ム に適 合 しない 地 域 で あ って もエ コ ツ ー リズ ム を実 践 す る こ と に よ って 観 光 客 の 行 為 に よる 自然 ・文 化 環 境 の悪 化 を防 ぐこ とが で きる と考 え る。 また,共 生 型 エ コ ツー リズ ム は,マ ス ツー リ ズ ム の 大 量観 光 を行 い なが ら,エ コツ ー リ ズム に よる 地 域 の 自然 ・文 化 環 境 の 保 全 お よび 享受 す る こ とが で き う る もの と考 え る。 す な わ ち,マ ス ツ ー リ ズ ム と保 全 型 エ コ ツー リズ ム の 間 に位 置 し,マ ス ツ ー リズ ム と保 全 型 エ コ ツー リズ ム の特 性 を併 せ もつ新 た な観 光 形 態 で あ る と い え る。 我 が 国 にお け る地 域 活性 化 方策 が 必 要 な地 域 は,人 為 的 開 発 行 為 が 多 い 地域 が 大 半 を占 め て い る。 そ の た め, 本研 究 で提 唱 す る共 生 型 エ コ ツー リ ズ ム を活 用 した 地域 活性 化 方 策の 検討 が必 要 であ る と考 え る。 本 研 究 にお け る,保 全 型 エ コ ツ ー リズ ムお よ び共 生 型 エ コ ツー リズ ムの概 念 図 をFigure 2お よびFigure 3に 示 す。
Figure 2 The general idea of preservation type of Ecotourism
Figure 3 The general idea of symbiosis type of Ecotourism
5.共 生型 工 コツ ー リズ ム の方 向 性 共 生 型エ コ ツー リズ ム の 今 後 の 方 向 性 と して,そ の実 践 形 態 を考 慮 し,併 せ て その 活 用 法 に つ い て考 察 し以 下 に整 理 して示 す. 5.1 地 域 活性 化 と しての 経 済 的 課題 我 が 国 にお ける 地 方 の 活 性 化 方 策 は急 務 で あ る と考 え る。 地 域 活性 化 方 策 と して のエ コ ツー リズ ム をみ た場 合, 活性 化 が どの よ う な意 味 に な るの か を文 献 や エ コ ツー リ ズ ム 関係 者 に ヒ ア リ ン グ した結 果 ,次 の よ うな こ とが 明 らか とな っ た。 従 来 の エ コ ツー リズ ム の 経 済 的課 題 と して は,少 人 数 制 で あ る こ と か ら入 れ込 み客 数が 多 く見 込 め な い 観 光 で あ る こ とが あ げ られ る 。 マ ス ツ ー リズ ム で あ る な らば , 観 光客 の総 人 数が 多 い た め に 薄利 多売 で も採 算 性 が 見 込 まれ る が,少 人数 が 基 本 で あ るエ コ ツ ー リズ ム で は,経 済 的 に潤 う活 性 化 方策 とな る に は困 難 が見 込 まれ る。
他 方,エ コ ツ ー リズ ム 方 策 の採 用 に よる 多 くの プ ラ ス の 波 及 効 果 が見 込 まれ る。 す な わ ち,地 域 資 源 が顕 彰 さ れ 保 全 され る よ う に な る と,地 域 住 民 の 地 域 へ の愛 着 意 識 の 高揚 が促 さ れ,観 光 客 も地域 の価 値 を再 発 見 し,地 域 の 魅 力 を 知 っ て も ら う こ とが で き る ため,地 域全 体 の 価 値 が 向 上 す る。 これ は,人 間 の内 面 的 な 潤 い につ なが るた め,心 の活 性 化 と して位 置づ け る こ とが で き る。 つ ま り,保 全 型 エ コ ツ ー リズ ム に よる 地 域 活 性 化 方 策 は, 地 域 の価 値 を創 出 させ る こ とが 主 題 で あ り,経 済振 興 に 偏 っ た地 域 活 性 化 を追 い 求 め る こ とは で きな い もの で あ る とい え る。 本 研 究 で 提 案 す る共 生 型エ コ ツー リズ ム は,開 発 に よ る 新 た な施 設 や 資 源 等 と,地 域 固有 の 自然 や歴 史,文 化 が相 互 に相 乗 的 に 共 生 す る こ と に よ って,連 携 あ るい は 連帯 して 地 域 を形 成 し,環 境 保 全 を考 え た観 光 を行 って い くこ とを 目的 と して い る 。従 来 の マ ス ツー リズ ムで は, 観 光 開発 行 為 者 と住民 と の 間 には 物 理 的,精 神 的 な 乖 離 が 大 きい とい う問題 が あ った 。 本 提 案 で は,地 域 の 生 活 に根 ざ した 原初 的 な産 業 で あ る農 林 漁 業 や手 工 業 的 な 産 業 の 担 い 手 自身が ガ イ ドとな り,観 光 客が 求 め る 新 た な 要 請 に対 応 しつ つ,高 次 なサ ー ビス を提 供 す る産 業 に 変 換 す る もの であ る。 つ ま り,エ コツ ー リズ ムの 考 え 方 を あ らゆ る 方面 に活 用 す る事 に よっ て地 域 の価 値 を創 出 さ せ,経 済面,心 理 面 の 両 者 か ら地域 活 性 化 方 策 が検 討 で きる もの と考 える。 5.2 共生 型 エ コツ ー リズ ムの 仕 組 み 5.2.1 自然 ・文 化 資源 の特 牲 本 研 究 に お け る 共 生 型 エ コ ツ ー リズ ム資 源 の特 性 は, 開発 行 為 に よっ て 希 少 とな っ た,ま た は 消失 した 自然 ・ 文 化 資 源 を保 全 型 エ コ ツー リズ ム に 追加 す る こ とで あ る。 その ため 自然 ・文 化資 源 は,世 界 遺 産 や 国 立公 園 な どの ま と ま った 規模 の原 自然 や 国 また は 県 指 定の 重 要 文 化 財 等 に つ いて,た とえ古 い 歴 史性 を有 さず と も,地 域 の 特性 を醸 しだ す 自然 や 文 化 をその対 象 と して位 置 づ け る。 1) 自然 資 源:数 世 代 に わた って住 民 が共 有 して きた原風 景 と しての 農林 漁 業環 境 であ る棚 田や稲 田,花 卉畑,入 会林, 漁港,現 状 の 生活 圏 域 の風 景 な どであ る。また,生 活 圏域 に存 在 す る 国立 公 園や 国定 公 園 な ど も含 まれ る。 2) 文 化 資 源=自 然 資 源 に 関 わ る 地域 の 経 済 を担 う原 初 的 な産 業 形 態 は 勿 論 の こ と,そ れ を担 う産 業 従 事 者 も文 化 資 源 と位 置 づ け る 。 ま た,各 種 指 定 の文 化 財 も資 源 と して位 置 づ け る。 さ らに,地 域 を特 徴 づ け る 既 存 の 伝 統 文 化 お よび 消 失 した伝 統 文 化 の 再 生 も この範 囲 に 含 まれ る 。 3) ガ イ ド:特 別 な ガイ ドを養成 す る だ けで は な く,地 域 の 自然 資 源 を保 全す る知識 を有 す る者 や そ れ を保 全 す るた め に関 わ る産 業従 事者 もエ コ ガ イ ドと して位 置 づ け られる。 5.2.2 共生 型 工 コツ ー リズ ムの主 体 の役 割 共 生 型 エ コ ツ ー リズ ム に よ る地 域づ く りと して,そ れ を 形成 す るた め には住 民,観 光 客,観 光 業 者 注2),行 政, 研 究 者,開 発 業者 が 主 体 と位 置 づ け られ る。 その 主 体 の 役 割 につ い て下 記 に記 述 す る と と もに,そ の 主 体 関 係 に つ い てFigure 4に 示 す。 1) 住民 の役 割 現状 の 住民 は,日 常 生活 の 中 で 自然 や文 化 資源 に対 し 無意 識 に接 して い るた め,資 源 に 対 す る情報 はあ ま り に も乏 し く,見 慣 れ た もの で あ るた め保 全 意識 も また 乏 しい傾 向 を もって い る。 そ のた め,地 域 資源 の 情報 の獲 得,地 域 資源 の価 値 を見直 す こ とに よっ て保 全 意 識 が 高 まる と考 える 。 さ らに,地 域 資 源 に つ いて の情 報 とそ の価 値 を幅 広 く把 握 した住民 は,ガ イ ドと して の役 割,保 全活 動 の 主体 に な り,地 域 運 営 の 中心 的存 在 とな る。 2) 観 光客 の役 割 共 生 型エ コツ ー リズ ム にお いて,人 数 の 制 限 を無視 す る こ とは地域 資 源 を保 全 してい く上 で 大 きな困 難 を伴 う。 その 対 策 と して,地 域 資 源 の情 報 お よび共 生 型エ コ ツー リズ ム に関 す る知識 を事前 に学 習 し,保 全 意 識 を高 め させ る こ とが 考 え られ る。 そ して,地 域資 源 の 理 解 者 とな り地 域資 源 の保 全 活動 に協 力 し,か つ地 域 の 経 済的利 益 を もた らす主 体 とな る。 さ らに,共 生 型 エ コツ アー を享 受 しつ つ,自 己実 現 や,自 己 充実 を図 る契 機 とな りうる もの であ る。 3) 観光 業 者 の役 割 観 光 業者 は,住 民,研 究者,行 政 な どに よ る地域 資 源
の 情 報 を もとに 商 品 を開 発 し,観 光客 に提 供 す る役 割 を も って い る。一 連 の ツ ア ー にお い ては,既 存 の 観光 資 源,共 生 型 エ コ ツー リズ ム資 源 をバ ラ ンス よ く活用 し,旅 行 業 者 は 引率 す る ガ イ ドの育 成 お よび地域 産 業 の 活 用,観 光 施設 や お土 産 品 な どの 各 店舗 は地元 で生 産 され た物 品 を扱 う主体 と して,環 境 整備 を促進 す る べ きであ る。 4) 行 政の 役 割 行 政 は,地 域 住 民,ガ イ ド,研 究 者 等の 意 見 や要 望 を 取 り入れ,地 域 資 源 の保 全 をふ まえ た整 備 と開発,観 光 業者,住 民 お よび観 光 客へ の 地域 資 源 の保 全 に 関 す る 法 規制 お よ び ガ イ ドラ イ ンの 策 定,ガ イ ドの 育成, 調査研 究 の促 進,地 域 資 源の 保 全 に対 す る セ ミナ ー な どに よ る情 報 の提 供 な ど開発 へ の監 視 お よびバ ッ クア ップ を行 うこ とに よ って,よ り よい地 域づ くりへ の経 済面 を含 め たサ ポ ー トをす る こ と,そ して,地 域 情 報 の 発 信 源 とな るべ き主 体 であ る 。また我 が 国の 場合 は, 高 齢 化 社会 を考慮 にい れ たバ リア フ リーお よびユ ニ バ ーサ ル デザ イ ン社 会基 盤 を整 備 す るべ きで あ る。 5) 研 究者 の 役割 研 究 者 は 地域 資 源 に対 し,科 学 的,自 然 的,歴 史 的, 文 化 的 に意味 づ け,価 値 づ け や接 し方 な ど管 理の た め の情 綴 を創 出 し,行 政 や開 発 業者,観 光 業 者 お よ び住 民 に情 綴 を公 開 す る役 割 を もって い る。 これ らの 情 報 を提供 す る こ と よっ て地 域 は地 域 資 源 につ い て明 確 に 理解 す る こ とが で き,保 全対 策 に対 して的 確 に判 断 す る基 準 と して位 置 づ け る こ とが で きる と考 え られ る。 6) 開 発 業者 の役 割 開 発 業 者は 保全 の対 象 とな る資 源 を把 握 し,景 観,交 通 な ど に配慮 した 開発 を行 う こ とが 求 め られ る。また, 住民 や行 政 な ど に 自然 ・文 化環 境 の 保 全 を念 頭 に地 域 社会 と共 存共 栄 す る た めの 開発 へ の 理 解 を求 め る た め に努 力 をす るこ とが 重 要 であ る と考 え る。 6.結 び 本 研 究 で は,多 様 に 存 在 す る エ コ ツ ー リ ズム の 定 義 を 整 理 し,実 践 され て い る エ コ ツ ー リズ ムの 分 析 を行 い, さら に保 全 型 エ コ ツー リズ ム と共 生 型 エ コ ツー リズ ム に 大 別 した。 また,地 域 活性 化 に あ た り,汎 用 性 の あ る 共 生 型 エ コ ツー リズ ム の あ り方 を示 し,併 せ て その プ ロ グラ ム の 方 向 性 を示 した。 エ コ ツ ー リズ ムの 方 向性 と して は,新 た な概 念 と して,本 研 究 で提 案 した 共 生 型 エ コツ ー リズ ム が 一つ の候 補 とな る であ ろ う。 7.謝 辞 本 研 究 はエ コ ツー リズ ム推 進協 議 会 設 立 記 念 シ ンポ ジ ウ ム大 会,JATAエ コ ツー リズ ムセ ミナ ー,CELSS学 会 エ コ ツ ー リズ ム シ ンポ ジ ウム への 参 加 お よ び西 表 島 エ コ ツ ー リズ ム 調 査 に よ って行 っ た もの であ る 。 こ こ に関 係 各位 に謝 意 を表 す る。 8.注 釈 注1)エ コ ツ ー リズ ム を推 進 す る 関連 機 関が 主催 す る シ ンポ ジ ウ ム お よ びセ ミナ ー と して,エ コ ツ ー リズ ム推 進協 議 会 に よ る三 周 年 記 念 大 会(2000)21世 紀 へ のエ コ ツ ー リズ ムの展 望,日 本 旅 行 業協 会 に よる 第11回(1998), 第12回(1999)国 際観 光 会議,CELSS学 会 に よ る 第2回 (1999)エ コ ツー リズ ム シ ンポ ジウ ムへ の 参 加 。 注2)本 研 究 に お け る 観光 業 者 とは,ツ アー を企 画 し 販 売 す る旅 行 業 者 お よび,観 光 地 で営 む お 土 産 品 店,観 光 施 設等 をい う。 注3)省 庁 再編 に よ って2001年1月6日 を もっ て環 境 省 に変 名 され た。 本 研 究 で は,参 考 文 献(8,9)に 示 す文 献 を使 用 したた め,日 本 環 境庁 と表 記 した。 9.参 考 文献 1) 環 境 庁:地 球 サ ミッ トの フ ォ ロー ア ップ
URL:http://www.eic.or.jp/eanet/info/files/syou-72/72-5/summit.htm
2) G.Budowski:観 光 と保全:ぶ つ か り合 い,共 存 それ と も相 利 共 URL:http://www.catie.ac.cr/research/research.asp?page=colecgerm3 3) 足 羽 洋 保(1997):観 光 資 源 論1-7,中 央 出 版 社 4) 軽 部 征 夫(1993):バ イ オ ソ サ エ テ イ ー35-37三 田 出 版 会 5) 総 合 研 究 開 発 機 構 ほ か(2000):循 環 型 社 会 の 先 進 空 間 81-83農 文 協 6) 小 方 昌 勝(2000):国 際 観 光 とエ コ ツ ー リ ズ ム175文 理 閣 7) ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド観 光:URL:http://purenz.com 8) 環 境 庁 自 然 保 護 局(1999):地 域 活 性 化 の た め の 広 域 移 動 型 エ コ ツ ー リ ズ ム 調 査 報 告 書1-11 9) 沖 縄 開 発 庁 ・環 境 庁(1999):エ コ ツ ー リ ズ ム 促 進 プ ラ ン6-28 10) (財)日 本 自 然 保 護 協 会(1994):NACS-Jエ コ ツ ー リズ ム ・ガ イ ドラ イ ン4-611) Hawaii Ecotourism Association:
URL:http://planet-hawaii.com/hea
12) Australia Ecotourism Association:
URL:http://ecotourism.org.au
13) Belize Ecotourism Association:
URL:http://www.belizenet.com/bete.html
14) Armenia Ecotourism Association:
URL:http://www.ecotourismarmenia.com/puges/frames.html
15) PANOS:
URL:http://www.oneworld.org/panos/briefing/ecotour.htm
16) JATA(1998): JATA Ecotourism Handbook 16-97
17) エ コ ツ ー リ ズ ム 推 進 協 議 会(1999):エ コ ツ ー リ ズ ム の 世 界 へ10-61
18) Janet Richardson(1993): Ecotourism Nature-based H
19) CELSS学 会(1999):第 一 回 エ コ ツ ー リズ ム シ ンポ ジ ウ ム-人 と 自然 との 共存 を科 学 す る-概 要 集 20) CELSS学 会(2000):第 二 回 エ コ ツ ー リズ ム シ ンポ ジ ウ ム-国 際 エ コツ ー リズ ム 年 に 向 けて:知 的 ・健 康 的刺 激 の す すめ-講 濱概 要 集 21) CELSS学 会(2000):第1回CELSS学 会 エ コ ツー リズ ム シ ン ポ ジ ウム 講 濱 録CELSS JOURNAL Vol .12-2 25-73